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特許7259993配線モジュール、および、蓄電モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】配線モジュール、および、蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20230411BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230411BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230411BHJP
【FI】
H01M50/204 401D
H01M10/48 301
H01M50/249
H01M50/209
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021565410
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043737
(87)【国際公開番号】W WO2021124814
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2019226509
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 暢之
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 慎一
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀夫
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072181(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110409(WO,A1)
【文献】特開2019-074327(JP,A)
【文献】実開平06-080141(JP,U)
【文献】特開2016-018634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/204 - 216
H01M 10/48
H01M 50/249
H01M 50/298
H01M 50/502 - 526
H01M 50/569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を備える蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、
可撓性基板と、
前記可撓性基板に実装されたセンサ部品と、
前記電極に固定される接続部材と、
前記可撓性基板と前記接続部材とを接続するとともに、前記センサ部品を保持する保持部付き中継部材と、を備え、
前記保持部付き中継部材が、
前記可撓性基板と前記接続部材とに固定される基部と、前記基部に連なる保持部とを備える中継部材本体と、
前記保持部によって前記基部に対して近接または離間する方向に変位可能に保持されるとともに、前記可撓性基板において前記センサ部品が実装された部分に固定される台座部と、
弾性力を有し、一端が前記基部に保持されて、前記台座部を前記基部から離間する方向に付勢する付勢部材と、を備え
前記基部は、前記可撓性基板と前記接続部材との双方に対して接続可能な金属材料からなる、配線モジュール。
【請求項2】
前記中継部材本体が、前記基部と前記保持部とを備える単一の部材である、請求項1に記載の配線モジュール。
【請求項3】
前記中継部材本体が、前記基部と、前記基部とは別体の部材であって前記基部に固定される前記保持部とを備える、請求項1に記載の配線モジュール。
【請求項4】
車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであって、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項5】
電極を備える蓄電素子と、
前記蓄電素子に取り付けられる配線モジュールとを備え、
前記配線モジュールが、
可撓性基板と、
前記可撓性基板に実装されたセンサ部品と、
前記電極に固定される接続部材と、
前記可撓性基板と前記接続部材とを接続するとともに、前記センサ部品を保持する保持部付き中継部材と、を備え、
前記保持部付き中継部材が、
前記可撓性基板と前記接続部材とに固定される基部と、前記基部に連なる保持部とを備える中継部材本体と、
前記保持部によって前記基部に対して近接または離間する方向に変位可能に保持されるとともに、前記可撓性基板において前記センサ部品が実装された部分に固定される台座部と、
弾性力を有し、一端が前記基部に保持されて、前記台座部を前記基部から離間する方向に付勢する付勢部材と、を備え
前記基部は、前記可撓性基板と前記接続部材との双方に対して接続可能な金属材料からなる、蓄電モジュール。
【請求項6】
車両に搭載されて用いられる車両用の蓄電モジュールであって、請求項5に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、配線モジュール、および、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池と、この蓄電池の表面温度を検知するための温度センサと、温度センサを保持する保持装置とを備える蓄電装置が知られている。保持装置は、弾性体を備えており、この弾性体が、温度センサを蓄電池の表面に押し当てるように付勢している。これにより、蓄電池の表面温度を安定的に検知することができる。このような保持装置は、弾性体からの反力を受けるための構造を必要とするため、例えば蓄電池を収容する筐体や、配線部材を支持する支持基材などの、蓄電装置に備えられる何らかの構造物に支持されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-206619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、軽量化、コスト削減等を目的として、筐体や支持基材などの構造物を備えない蓄電装置が提案されている。しかし、このような蓄電装置では、上記のような、センサ部品を付勢しつつ保持する構造を支持する場所を確保することが困難となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される配線モジュールは、電極を備える蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、可撓性基板と、前記可撓性基板に実装されたセンサ部品と、前記電極に固定される接続部材と、前記可撓性基板と前記接続部材とを接続するとともに、前記センサ部品を保持する保持部付き中継部材と、を備え、前記保持部付き中継部材が、前記可撓性基板と前記接続部材とに固定される基部と、前記基部に連なる保持部とを備える中継部材本体と、前記保持部によって前記基部に対して近接または離間する方向に変位可能に保持されるとともに、前記可撓性基板において前記センサ部品が実装された部分に固定される台座部と、弾性力を有し、一端が前記基部に保持されて、前記台座部を前記基部から離間する方向に付勢する付勢部材と、を備える。
【0006】
また、本明細書によって開示される蓄電モジュールは、電極を備える蓄電素子と、前記蓄電素子に取り付けられる配線モジュールとを備え、前記配線モジュールが、可撓性基板と、前記可撓性基板に実装されたセンサ部品と、前記電極に固定される接続部材と、前記可撓性基板と前記接続部材とを接続するとともに、前記センサ部品を保持する保持部付き中継部材と、を備え、前記保持部付き中継部材が、前記可撓性基板と前記接続部材とに固定される基部と、前記基部に連なる保持部とを備える中継部材本体と、前記保持部によって前記基部に対して近接または離間する方向に変位可能に保持されるとともに、前記可撓性基板において前記センサ部品が実装された部分に固定される台座部と、弾性力を有し、一端が前記基部に保持されて、前記台座部を前記基部から離間する方向に付勢する付勢部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示される配線モジュール、および蓄電モジュールによれば、センサ部品を付勢しつつ保持する構造を配線モジュールに配置することで、筐体や支持基材などの構造物を備えない蓄電モジュールにも、センサ部品を付勢しつつ保持する構造を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1の蓄電モジュールが搭載された車両を示す模式図である。
図2図2は、実施形態1の蓄電モジュールの平面図である。
図3図3は、実施形態1の蓄電モジュールの部分拡大斜視図である。
図4図4は、図2のA-A線断面図である。
図5図5は、図2のB-B線断面図である。
図6図6は、実施形態1の保持部付き中継部材と実装部の斜視図である。
図7図7は、配線モジュールが蓄電素子に固定された状態を図2のA-A線と同位置で切断して示す部分拡大断面図である。
図8図8は、実施形態2の蓄電モジュールの平面図である。
図9図9は、図8のC-C線断面図である。
図10図10は、図8のD-D線断面図である。
図11図11は、実施形態3の保持部付き中継部材を図2のA-A線と同位置で切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
(1)本明細書によって開示される配線モジュールは、電極を備える蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、可撓性基板と、前記可撓性基板に実装されたセンサ部品と、前記電極に固定される接続部材と、前記可撓性基板と前記接続部材とを接続するとともに、前記センサ部品を保持する保持部付き中継部材と、を備え、前記保持部付き中継部材が、前記可撓性基板と前記接続部材とに固定される基部と、前記基部に連なる保持部とを備える中継部材本体と、前記保持部によって前記基部に対して近接または離間する方向に変位可能に保持されるとともに、前記可撓性基板において前記センサ部品が実装された部分に固定される台座部と、弾性力を有し、一端が前記基部に保持されて、前記台座部を前記基部から離間する方向に付勢する付勢部材と、を備える。
【0010】
上記の構成によれば、可撓性基板と接続部材とを接続する保持部付き中継部材が、センサ部材を付勢しつつ保持する構造を備える。このように、センサ部品を付勢しつつ保持する構造を配線モジュールに配置することで、筐体や支持基材などの構造物を備えない蓄電モジュールにも、センサ部品を付勢しつつ保持する構造を設けることができる。
【0011】
(2)前記中継部材本体が、前記基部と前記保持部とを備える単一の部材であってもよい。このような構成の中継部材本体は、例えば金属板材を打ち抜き加工および曲げ加工することによって、少ない工程で簡易に製造可能である。
【0012】
(3)前記中継部材本体が、前記基部と、前記基部とは別体の部材であって前記基部に固定される前記保持部とを備えていてもよい。このような構成によれば、基部と保持部とを、それぞれ好適な材料により形成することができる。
【0013】
(4)車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであってもよい。車両からの振動が配線モジュールに伝わった場合でも、付勢部材によってセンサ部品を蓄電素子に付勢することができる。これにより、センサ部品の測定精度を向上させることができるので、配線モジュールを、走行時に振動が発生する車両に好適に用いることができる。
【0014】
(5)本明細書によって開示される蓄電モジュールは、電極を備える蓄電素子と、前記蓄電素子に取り付けられる配線モジュールとを備え、前記配線モジュールが、可撓性基板と、前記可撓性基板に実装されたセンサ部品と、前記電極に固定される接続部材と、前記可撓性基板と前記接続部材とを接続するとともに、前記センサ部品を保持する保持部付き中継部材と、を備え、前記保持部付き中継部材が、前記可撓性基板と前記接続部材とに固定される基部と、前記基部に連なる保持部とを備える中継部材本体と、前記保持部によって前記基部に対して近接または離間する方向に変位可能に保持されるとともに、前記可撓性基板において前記センサ部品が実装された部分に固定される台座部と、弾性力を有し、一端が前記基部に保持されて、前記台座部を前記基部から離間する方向に付勢する付勢部材と、を備える。
【0015】
(6)車両に搭載されて用いられる車両用の蓄電モジュールであってもよい。車両からの振動が蓄電モジュールに伝わった場合でも、付勢部材によってセンサ部品を蓄電素子に付勢することができる。これにより、センサ部品の測定精度を向上させることができるので、蓄電モジュールを、走行時に振動が発生する車両に好適に用いることができる。
【0016】
[実施形態の詳細]
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
<実施形態1>
本開示を車両1に搭載される蓄電パック2に適用した実施形態1が図1から図7を参照しつつ説明される。蓄電パック2は、電気自動車、またはハイブリッド自動車等の車両1に搭載されて、車両1の駆動源として用いられる。以下の説明においては、複数の部材については一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0018】
[全体構成]
図1に示されるように、車両1の中央付近には蓄電パック2が配設されている。車両1の前部にはPCU3(Power Control Unit)が配設されている。蓄電パック2とPCU3とは、ワイヤーハーネス4によって接続されている。蓄電パック2とワイヤーハーネス4とは図示しないコネクタによって接続されている。蓄電パック2は複数の蓄電素子10を備えた蓄電モジュール5を有する。
【0019】
図2に示すように、蓄電モジュール5は、複数の蓄電素子10と、これらの蓄電素子10に取り付けられる配線モジュール20とを備える。
【0020】
[蓄電素子10]
蓄電素子10は、例えば、二次電池である。各蓄電素子10は、図2に示すように、全体として扁平な直方体状であって、一面(図2の正面)に配置された2つの電極端子11A、11Bを備えている。2つの電極端子11A、11Bのうち一方は正極端子11Aであり、他方は負極端子11Bである。複数の蓄電素子10は、一列に並べられている。隣り合う2つの蓄電素子10は、異なる極性の電極端子11A、11Bが互いに隣り合うように、つまり、一の蓄電素子10の正極端子11Aと、これと隣接する他の蓄電素子10の負極端子11Bとが互いに隣り合うように並べられている。電極端子11A、11Bは、平坦な接続面を有している。
【0021】
[配線モジュール20]
配線モジュール20は、図2に示すように、可撓性基板30と、電極端子11A、11Bに固定されるバスバー90(接続部材の一例)と、可撓性基板30とバスバー90とを接続する中継部材40および保持部付き中継部材50と、を備えている。可撓性基板30は、例えば、フレキシブルプリント基板である。
【0022】
[バスバー90]
バスバー90は、導電性を有する金属板材からなる。バスバー90の材質としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。本実施形態では、バスバー90は、アルミニウム製である。バスバー90は、図2に示すように、隣り合う一対の電極端子11A、11Bの接続面に重ねられ、レーザ溶接により固定される。これにより、隣り合う一対の電極端子11A、11Bが接続される。
【0023】
[可撓性基板30および温度センサ34]
可撓性基板30は、可撓性を有するシート状の基板であって、図3に示すように、帯状の基板本体31と、この基板本体31から延びる細い帯状の実装部32とを備えている。この可撓性基板30は、複数の導電路33と、導電路33を覆う樹脂フィルムとを備えている。導電路33は、銅または銅合金などの金属からなる。基板本体31に配される導電路33の一端は、保持部付き中継部材50を接続するための接続ランド33Aとなっている。接続ランド33Aは、樹脂フィルムから露出されている。
【0024】
実装部32には、図4に示すように、蓄電素子10の表面温度を検出するための温度センサ34(センサ部品の一例)が実装されている。温度センサ34は、例えば、サーミスタである。温度センサ34は、一対の端子部を備えており、一対の端子部は、樹脂フィルムから露出された一対の導電路33の端部に、はんだ付けにより接続されている。
【0025】
実装部32において、温度センサ34が実装されている面とは反対側の面(図4の下面)には、補強板35が貼り付けられている。補強板35は、板状であって、温度センサ34が配置された位置の真裏に、例えば接着剤によって接着されている。これにより、可撓性基板30において温度センサ34が実装された部分が補強されている。補強板35は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金などの熱伝導性に優れた金属からなることが好ましい。
【0026】
[中継部材40、および保持部付き中継部材50]
中継部材40、および保持部付き中継部材50は、いずれも、導電路33とバスバー90とを電気的に接続する部材である。互いに対となる接続ランド33Aとバスバー90とを、中継部材40および保持部付き中継部材50のいずれかが接続している。
【0027】
中継部材40は、導電性を有する金属製の板材である。中継部材40は、導電路33とバスバー90との双方に対して良好に接合可能な金属材料からなることが好ましい。本実施形態では、中継部材40は、ニッケル製である。中継部材40の一端部が、接続ランド33Aに対し、例えばはんだ付けにより接続されている。また、他端部が、バスバー90に対し、例えばレーザ溶接により接続されている。
【0028】
保持部付き中継部材50は、図4図5、および図6に示すように、中継部材本体51と、ハウジング61(台座部の一例)と、付勢部材71と、一対の補助保持片81とを備えている。
【0029】
中継部材本体51は、導電性を有しており、第1主板52(基部の一例)と、この第1主板52から延び、ハウジング61を保持する2つの第1保持片53(保持部の一例)と、第1主板52から突出する第1保持突部54とを備えている。中継部材本体51は、第1主板52と、第1保持片53と、第1保持突部54とが1枚の基材から一体的に形成され、継ぎ目を有さない単一の部材である。中継部材本体51は、導電路33とバスバー90との双方に対して良好に接続可能な金属材料からなることが好ましい。本実施形態では、中継部材本体51は、ニッケル製である。
【0030】
第1主板52は、図4および図6に示すように、長方形の板状であって、互いに平行な一対の側縁52Aを有している。図3に示すように、第1主板52の一端部は、接続ランド33Aに対し、例えばはんだ付けにより接続されている。また、他端部は、バスバー90に対し、例えばレーザ溶接により接続されている。
【0031】
2つの第1保持片53のそれぞれは、図4および図6に示すように、第1主板52の側縁52Aのそれぞれから延びている。図4に示すように、2つの第1保持片53は、互いに向かい合って配置されている。各第1保持片53は、第1主板52から延びる保持片本体53Aと、この保持片本体53Aの先端から延びる係合片53Bとを備えている。係合片53Bは、内側に向かって、すなわち相手側の第1保持片53に向かって延びている。
【0032】
第1保持突部54は、付勢部材71の一端を位置決め状態に保持するための円柱状の突部であって、図4および図5に示すように、2つの第1保持片53の中間位置に配されている。
【0033】
ハウジング61は、合成樹脂製であって、図4および図6に示すように、中継部材本体51に保持され、実装部32に固定されている。ハウジング61は、全体として両端に開口を有する角筒状であって、図4および図5に示すように、4つの側壁62、63を備えている。4つの側壁62、63のうち2つは、互いに平行な第1側壁62であり、他の2つは、第1側壁62に対して垂直な第2側壁63である。ハウジング61は、一方の開口端が第1主板52に相対するようにして、第1主板52に対して垂直な向きに配置されている。ハウジング61において、第1主板52側(図4の上側)の約半分が、内部に付勢部材71を収容可能な第1収容部64となっており、それとは反対側(図4の下側)の約半分が、内部に温度センサ34を収容可能な第2収容部65となっている。
【0034】
第2収容部65の開口端は、図4および図5に示すように、実装部32の表面に、例えば接着剤により接着されている。温度センサ34は、第2収容部65の内部に収容されている。
【0035】
第1側壁62の外側面には、図4に示すように、第2収容部65の開口端(図4の下端)から第1主板52に向かって延びる保持溝66が配されている。2つの第1保持片53が、ハウジング61を挟んで配置されている。各保持片本体53Aが各第1側壁62に沿って配され、各係合片53Bが各保持溝66に入り込んでいる。これにより、ハウジング61が中継部材本体51に保持されている。
【0036】
係合片53Bは、保持溝66の内部を、保持溝66の延び方向(図4の上下方向)に沿って移動可能となっており、これにより、ハウジング61は、第1主板52に対して近接または離間する方向(図4の上下方向)に変位可能となっている。保持溝66の第1主板52側の端(図4の上端)には、第1側壁62の外側面に対して垂直な係止壁66Aが配置されており、係合片53Bが係止壁66Aに突き当たることで、ハウジング61が第1主板52から外れることが規制される。
【0037】
図4および図5に示すように、第2収容部65の内壁は、第1収容部64の内壁よりも内側に張り出しており、第1収容部64と第2収容部65との境界位置には、段差面がある。この段差面は、第1主板52に対向し、付勢部材71が当接する当接面67となっている。
【0038】
付勢部材71は、図4および図5に示すように、SUSなどの金属線材が螺旋状に巻回された金属製のコイルばねであって、軸線方向に弾性変形可能とされている。この付勢部材71は、一端が第1主板52に当接し、第1保持突部54が付勢部材71の一端から内部に入り込んでいる。これにより、付勢部材71の一端が第1主板52に位置決め状態で保持され、付勢部材71が第1主板52に対して傾いた不正な姿勢になることが防がれる。また、付勢部材71の一端を除く大部分は、第1収容部64に収容されており、付勢部材71の他端は、当接面67に当接している。付勢部材71は、第1主板52と当接面67との間で僅かに圧縮された状態で保持されている。
【0039】
補助保持片81は、中継部材本体51とは別体の部材であって、図5および図6に示すように、第1主板52に接続され、第1保持片53によるハウジング61の保持を補助している。補助保持片81は、第1主板52に対して良好に接合可能で、安価な金属材料であることが好ましい。本実施形態では、補助保持片81は、鉄製である。
【0040】
2つの補助保持片81は、図5に示すように、ハウジング61の両側に配置されている。各補助保持片81は、図5および図6に示すように、第1固定片82と、規制壁83と、2つの規制片84とを備えている。第1固定片82は、板状であって、第1主板52に対してはんだ付けにより固定されている。規制壁83は、板状であって、第1固定片82から延び、第2側壁63に沿って配されている。2つの規制片84は、細長い板片状をなし、規制壁83から、互いに反対方向に延びている。各規制片84は、第1側壁62に沿って、保持溝66の近傍まで延びている。補助保持片81によって、ハウジング61が第1主板52に対して傾いた不正な姿勢になることが防がれる。
【0041】
[配線モジュール20の蓄電素子10への取り付け]
配線モジュール20が蓄電素子10に取り付けられていない単体の状態では、図4および図5に示すように、付勢部材71により、ハウジング61が第1主板52から離間する方向に付勢されている。ハウジング61と第1主板52との間には、隙間がある。この状態では、実装部32に貼り付けられた補強板35の表面(図4の下面)から第1主板52までの距離が、配線モジュール20が蓄電素子10に組み付けられた状態での蓄電素子10の表面と第1主板52との距離よりも大きくなっている。
【0042】
配線モジュール20が蓄電素子10に取り付けられる際には、配線モジュール20が並列した複数の蓄電素子10の表面に保持され、バスバー90が電極端子11A、11Bにレーザ溶接により固定される。
【0043】
配線モジュール20が蓄電素子10に取り付けられた状態では、図7に示すように、ハウジング61と、このハウジング61に固定されている実装部32とが、第1主板52と蓄電素子10の表面とによって挟まれた状態となり、補強板35が蓄電素子10の表面に当接する。付勢部材71は、当接面67と第1主板52とによって挟まれて弾縮した状態となり、その弾性復元力によって、ハウジング61と実装部32とを蓄電素子10に向かって付勢する。これにより、補強板35の表面が蓄電素子10の表面に押し付けられた状態となる。蓄電素子10から発生した熱は、補強板35および実装部32を介して温度センサ34に伝えられる。
【0044】
[作用効果]
以上のように本実施形態によれば、蓄電モジュール5は、電極端子11A、11Bを備える蓄電素子10と、この蓄電素子10に取り付けられる配線モジュール20とを備える。配線モジュール20は、可撓性基板30と、可撓性基板30に実装された温度センサ34と、電極端子11A、11Bに固定されるバスバー90と、可撓性基板30とバスバー90とを接続するとともに、温度センサ34を保持する保持部付き中継部材50と、を備え、保持部付き中継部材50が、可撓性基板30とバスバー90とに固定される第1主板52と、第1主板52に連なる第1保持片53とを備える中継部材本体51と、第1保持片53によって第1主板52に対して近接または離間する方向に変位可能に保持されるとともに、可撓性基板30において温度センサ34が実装された部分に固定されるハウジング61と、弾性力を有し、一端が第1主板52に保持されて、ハウジング61を第1主板52から離間する方向に付勢する付勢部材71と、を備える。
【0045】
上記の構成によれば、可撓性基板30とバスバー90とを接続する保持部付き中継部材50が、温度センサ34を付勢しつつ保持する構造を配線モジュール20に配置することで、筐体や支持基材などの構造物を備えない蓄電モジュール5にも、温度センサ34を付勢しつつ保持する構造を設けることができる。
【0046】
また、中継部材本体51が、第1主板52と第1保持片53とを備える単一の部材である。このような構成の中継部材本体51は、例えば金属板材を打ち抜き加工および曲げ加工することによって、少ない工程で簡易に製造可能である。
【0047】
本実施形態にかかる配線モジュール20は車両1に搭載されて用いられる車両用の配線モジュール20である。また、本実施形態にかかる蓄電モジュール5は車両1に搭載されて用いられる車両用の蓄電モジュール5である。車両1からの振動が配線モジュール20および蓄電モジュール5に伝わった場合でも、付勢部材71によって補強板35を蓄電素子10に接触させることができる。これにより、蓄電素子10から発生した熱を、補強板35を介して温度センサ34に伝えることができるので、温度センサ34の測定精度を向上させることができる。このように本実施形態にかかる配線モジュール20および蓄電モジュール5は、走行時に振動が発生する車両1に好適に用いることができる。
【0048】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図8から図10を参照しつつ説明する。本実施形態の配線モジュール100は、実施形態1と同様に、複数の蓄電素子10に取り付けられる。この配線モジュール100は、図8に示すように、可撓性基板30と、電極端子11A、11Bに固定されるバスバー90と、可撓性基板30とバスバー90とを接続する中継部材40および保持部付き中継部材110とを備える。可撓性基板30の実装部32には、実施形態1と同様に、温度センサ34が実装されている。本実施形態において、実施形態1と同等の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
保持部付き中継部材110は、図9および図10に示すように、中継部材本体111と、ハウジング61と、付勢部材71と、一対の補助保持片115とを備えている。中継部材本体111は、図9に示すように、第2主板112(基部の一例)と、一対の第2保持片113(保持部の一例)と、第2保持突部114とを備えている。
【0050】
第2主板112は、導電性を有する金属製の板材である。第2主板112は、導電路33と、バスバー90との双方に対して良好に接合可能な金属材料からなることが好ましい。本実施形態では、第2主板112は、ニッケル製である。実施形態1と同様に、第2主板112の一端部が、接続ランド33Aに対し、例えばはんだ付けにより接続されている。また、他端部が、バスバー90に対し、例えばレーザ溶接により接続されている。
【0051】
第2保持片113は、図9に示すように、第2主板112とは別体の部材であって、第2主板112に接続され、ハウジング61を保持している。第2保持片113は、第2主板112に対して良好に接合可能で、安価な金属材料であることが好ましい。本実施形態では、第2保持片113は、鉄製である。
【0052】
各第2保持片113は、第2固定片113Aと、保持片本体113Bと、係合片113Cとを備えている。第2固定片113Aは、板状であって、第2主板112に対してはんだ付けにより固定されている。保持片本体113Bは、板状であって、第2固定片113Aから延びている。係合片113Cは、板片状であって、保持片本体113Bの先端から延びている。2つの第2保持片113は、互いに向かい合って配置されている。係合片113Cは、内側に向かって、すなわち相手側の第2保持片113に向かって延びている。
【0053】
第2保持突部114は、図9に示すように、第2主板112とは別体の部材であって、第2主板112に接続され、付勢部材71の一端を保持している。この第2保持突部114は、円柱状をなし、第2主板112に対してはんだ付けにより固定されている。第2保持突部114は、2つの第2保持片113の中間位置に配されている。
【0054】
2つの第2保持片113が、ハウジング61を挟んで配置されている。各保持片本体113Bが各第1側壁62に沿って配され、各係合片113Cが各保持溝66に入り込んでいる。これにより、ハウジング61が中継部材本体111に保持されている。ハウジング61は、第2主板112に対して近接または離間する方向に変位可能となっている。
【0055】
2つの補助保持片115は、図10に示すように、ハウジング61の両側に配置されている。各補助保持片115は、図9および図10に示すように、第3固定片116と、規制壁117と、2つの規制片118とを備えている。第3固定片116は、図10に示すように、板状であって、第1主板52に対してはんだ付けにより固定されている。規制壁117は、図10に示すように、板状であって、第3固定片116から延び、第2側壁63に沿って配されている。2つの規制片118は、細長い板片状をなし、規制壁83から、互いに反対方向に延びている。各規制片118は、図9に示すように、第1側壁62に沿って、保持溝66の近傍まで延びている。補助保持片115によって、ハウジング61が第1主板52に対して傾いた不正な姿勢になることが防がれる。
【0056】
本実施形態の配線モジュール100によっても、実施形態1と同様の作用効果が奏される。加えて、中継部材本体111が、第2主板112と、第2主板112とは別体の部材であって第2主板112に固定される第2保持片113とを備えるから、第2主板112と第2保持片113とを、それぞれ好適な材料により形成することができる。
【0057】
<実施形態3>
次に、実施形態3を図11を参照しつつ説明する。本実施形態の保持部付き中継部材210は、中継部材本体51と、ハウジング211(台座部の一例)と、付勢部材71とを備えている。本実施形態において、実施形態1と同等の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
ハウジング211は、円形の底壁212と、この底壁212の周縁から延びる円筒状の周壁213とを備えている。周壁213において底壁212と反対側の一端は、開口部を有している。ハウジング211は、開口部側の一端が第1主板52に相対するようにして、第1主板52に対して垂直な向きで配置されている。ハウジング211の内部空間は、付勢部材71を収容可能な第3収容部214となっている。
【0059】
ハウジング211は、底壁212の外面から凹む収容凹部215を有している。収容凹部215は、第3収容部214の内部に配され、底壁212と平行な上げ底部215Aと、この上げ底部215Aの周縁から延び、底壁212に連なる円筒状の立設壁部215Bとで定義される凹部である。
【0060】
底壁212は、実装部32の表面に、例えば接着剤により接着されている。温度センサ34は、収容凹部215の内部に収容されている。
【0061】
周壁213の外側面には、底壁212から第1主板52に向かって延びる2つの保持溝216が配されている。2つの第1保持片53が、ハウジング211を挟んで配置されている。各保持片本体53Aが周壁213に沿って配され、各係合片53Bが各保持溝66に入り込んでいる。これにより、ハウジング211が中継部材本体51に保持されている。
【0062】
係合片53Bは、保持溝216の内部を、保持溝216の延び方向(図11の上下方向)に沿って移動可能となっており、これにより、ハウジング211は、第1主板52に対して近接または離間する方向(図11の上下方向)に変位可能となっている。保持溝216の第1主板52側の端(図11の上端)には、周壁213の外側面に対して垂直な係止壁216Aが配置されており、係合片53Bが係止壁216Aに突き当たることで、ハウジング211が第1主板52から外れることが規制される。
【0063】
付勢部材71は、一端が第1主板52に当接している。付勢部材71の一端を除く大部分は、第3収容部214に収容されており、他端は、底壁212に当接している。付勢部材71の一端から第1保持突部54が内部に入り込み、他端から収容凹部215が内部に入り込んでいる。付勢部材71は、第1主板52と底壁212との間で僅かに圧縮された状態で保持されている。
【0064】
本実施形態によっても、実施形態1と同様の作用効果が奏される。加えて、ハウジング211の内部において、底壁212からその反対側の開口端までの全体が付勢部材71を収容するための第3収容部214となっているので、実施形態1と比較して、保持部付き中継部材210を低背化できる。
【0065】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、付勢部材71が圧縮コイルばねであったが、付勢部材は、例えば、板ばねであってもよく、ゴム製の弾性体であっても構わない。
(2)実施形態2では、第2保持片113が金属製であったが、例えば保持部が樹脂製であり、基部に対して接着剤により固定されていても構わない。
(3)上記実施形態では、センサ部品が温度センサ34であったが、センサ部品が、例えば振動センサや角度センサであっても構わない。
(4)上記実施形態では、第1保持突部54、第2保持突部114により付勢部材71が位置決めされていたが、例えば、基部に切り起こし加工を施すことにより形成された切り起こし片によって付勢部材が位置決めされていても構わない。
【符号の説明】
【0066】
1:車両
2:蓄電パック
3:PCU
4:ワイヤーハーネス
5:蓄電モジュール
10:蓄電素子
11A:正極端子(電極端子)
11B:負極端子(電極端子)
20、100:配線モジュール
30:可撓性基板
31:基板本体
32:実装部
33:導電路
33A:接続ランド
34:温度センサ(センサ部品)
35:補強板
40:中継部材
50、110、210:保持部付き中継部材
51、111:中継部材本体
52:第1主板(基部)
52A:側縁
53:第1保持片(保持部)
53A、113B:保持片本体
53B、113C:係合片
54:第1保持突部
61、211:ハウジング(台座部)
62:第1側壁
63:第2側壁
64:第1収容部
65:第2収容部
66、216:保持溝
66A、216A:係止壁
67:当接面
71:付勢部材
81、115:補助保持片
82:第1固定片
83、117:規制壁
84、118:規制片
90:バスバー(接続部材)
112:第2主板(基部)
113:第2保持片(保持部)
113A:第2固定片
114:第2保持突部
116:第3固定片
212:底壁
213:周壁
214:第3収容部
215:収容凹部
215A:上げ底部
215B:立設壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11