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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】積層体、眼鏡用レンズ及び眼鏡
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/155 20060101AFI20230411BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20230411BHJP
【FI】
G02F1/155
G02F1/15 503
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022158556
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】西野 哲史
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-154175(JP,A)
【文献】国際公開第2022/075017(WO,A1)
【文献】特表2016-509264(JP,A)
【文献】特開2020-160439(JP,A)
【文献】特表2015-503773(JP,A)
【文献】特表2017-526949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0223878(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0303565(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0035217(US,A1)
【文献】国際公開第2017/168478(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097895(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13,1/137-1/141
G02F 1/1343-1/1345,1/135
G02F 1/15-1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロクロミックシートと、
前記エレクトロクロミックシートが積層されたレンズ材と、を備え、
前記エレクトロクロミックシートは、
第1基板と、
第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とに挟持されたエレクトロクロミック素子と、
前記第1基板と前記第2基板とに挟持され、前記第1基板と前記第2基板との間に設定される着色領域を区画する封止部と、
前記エレクトロクロミック素子と電気的に接続し、前記第1基板又は前記第2基板の表面に設けられた端子部と、を備え、
前記エレクトロクロミック素子は、前記第1基板側に設けられた第1透明電極と、
前記着色領域の周囲に配置され前記第1透明電極と電気的に接続された第1補助電極と、
前記第2基板側に設けられた第2透明電極と、
前記着色領域の周囲に配置され前記第2透明電極と電気的に接続された第2補助電極と、
前記第1透明電極と前記第2透明電極とに挟持され、前記着色領域に配置され、電圧の印加により着色するエレクトロクロミック層と、を有し、
前記端子部は、前記第1補助電極と電気的に接続する第1端子部と、
前記第2補助電極と電気的に接続する第2端子部と、を有し、
前記第1端子部は、前記第1基板又は前記第2基板を貫通し、前記第1補助電極と電気的に接続する第1導通部と、
前記第1基板又は前記第2基板の表面に設けられ、前記第1導通部と接続する第1端子と、を有し、
前記第2端子部は、前記第1基板又は前記第2基板を貫通し、前記第2補助電極と電気的に接続する第2導通部と、
前記第1基板又は前記第2基板の表面に設けられ、前記第2導通部と接続する第2端子と、を有し、
前記第1導通部は、一端が前記第1補助電極に接し、他端が前記第1基板又は前記第2基板の表面に露出して前記第1端子と接続し、
前記第2導通部は、一端が前記第2補助電極に接し、他端が前記第1基板又は前記第2基板の表面に露出して前記第2端子と接続する積層体。
【請求項2】
前記端子部は、外部機器と接続する外部接続端子をさらに有する請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記エレクトロクロミック層は、前記第1透明電極に積層する第1エレクトロクロミック層と、
前記第2透明電極に積層する第2エレクトロクロミック層と、
前記第1エレクトロクロミック層と前記第2エレクトロクロミック層との間に充填された電解質層と、を有し、
前記第1エレクトロクロミック層は、酸化反応によって着色を呈する材料を含み、
前記第2エレクトロクロミック層は、還元反応によって着色を呈する材料を含む請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1に記載の積層体が備えるエレクトロクロミックシートを、前記第1補助電極及び前記第2補助電極の外周に沿って切削して得られたエレクトロクロミック部と、
前記エレクトロクロミック部が積層されたレンズ本体と、を備える眼鏡用レンズ。
【請求項5】
積層体が備えるエレクトロクロミックシートを、切削して得られたエレクトロクロミック部と、
前記エレクトロクロミック部が積層されたレンズ本体と、を備え
前記積層体は、前記エレクトロクロミックシートと、
前記エレクトロクロミックシートが積層されたレンズ材と、を備え、
前記エレクトロクロミックシートは、
第1基板と、
第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とに挟持されたエレクトロクロミック素子と、
前記第1基板と前記第2基板とに挟持され、前記第1基板と前記第2基板との間に設定される着色領域を区画する封止部と、
前記エレクトロクロミック素子と電気的に接続し、前記第1基板又は前記第2基板の表面に設けられた端子部と、を備え、
前記エレクトロクロミック素子は、前記第1基板側に設けられた第1透明電極と、
前記着色領域の周囲に配置され前記第1透明電極と電気的に接続された第1補助電極と、
前記第2基板側に設けられた第2透明電極と、
前記着色領域の周囲に配置され前記第2透明電極と電気的に接続された第2補助電極と、
前記第1透明電極と前記第2透明電極とに挟持され、前記着色領域に配置され、電圧の印加により着色するエレクトロクロミック層と、を有し、
前記端子部は、前記第1補助電極と電気的に接続する第1端子部と、
前記第2補助電極と電気的に接続する第2端子部と、を有し、
前記第1端子部は、前記第1基板又は前記第2基板を貫通し、前記第1補助電極と電気的に接続する第1導通部と、
前記第1基板又は前記第2基板の表面に設けられ、前記第1導通部と接続する第1端子と、を有し、
前記第2端子部は、前記第1基板又は前記第2基板を貫通し、前記第2補助電極と電気的に接続する第2導通部と、
前記第1基板又は前記第2基板の表面に設けられ、前記第2導通部と接続する第2端子と、を有し、
前記エレクトロクロミック部は、前記エレクトロクロミックシートを、前記第1補助電極及び前記第2補助電極の外周に沿って切削して得られる眼鏡用レンズ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の眼鏡用レンズと、
前記眼鏡用レンズを保持するフレームと、を備えた眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、眼鏡用レンズ及び眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミズムは、電圧を印加することで酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象である。このような現象を利用した素子として、エレクトロクロミズムを示す材料を用い電圧印加により色を制御するエレクトロクロミック素子が知られている。
【0003】
エレクトロクロミック素子は、例えば、電圧の印加により発色及び消色するエレクトロクロミック層と、透明電極とを備える。透明電極は、エレクトロクロミック層を挟持し、エレクトロクロミック層に電気的に接続されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
エレクトロクロミック素子を備えるエレクトロクロミックシートは、例えば、サングラスなどのアイウエアの材料として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-167317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成で用いる透明電極は、高い電気伝導性と高い可視光透過率とを有する材料を用いて形成される。透明電極の材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)などの酸化物が知られている。
【0007】
一方、上記材料は、金属材料と比べると電気抵抗が高い。そのため、ITO製の透明電極に挟持されたエレクトロクロミック層では、電流が伝わりやすい領域と伝わりにくい領域とが生じ、エレクトロクロミック層の変色(発色、消色)に色ムラが生じ易い。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、発色及び消色を遅滞なく行うことが可能なエレクトロクロミックシートを有する積層体、眼鏡用レンズ及び眼鏡用レンズを有する眼鏡を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決のため、透明電極の導電性を補う補助電極を併用する構成について検討を行った。一般に、補助電極は、透明電極の材料よりも電気抵抗が低い金属材料を用いて形成される。補助電極を用いた構成とすることで、上記変色の遅延の課題については解決可能である。
【0010】
一方、補助電極と外部の電源との接続箇所の構成については、安定した機能の発現や、組み立て時の作業のしやすさなど、種々の観点から工夫の余地がある。
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0012】
[1]エレクトロクロミックシートと、前記エレクトロクロミックシートが積層されたレンズ材と、を備え、前記エレクトロクロミックシートは、第1基板と第2基板と、前記第1基板と、前記第2基板とに挟持されたエレクトロクロミック素子と、前記第1基板と前記第2基板とに挟持され、前記第1基板と前記第2基板との間に設定される着色領域を区画する封止部と、前記エレクトロクロミック素子と電気的に接続し、前記第1基板又は前記第2基板の表面に設けられた端子部と、を備え、前記エレクトロクロミック素子は、前記第1基板側に設けられた第1透明電極と、前記着色領域の周囲に配置され前記第1透明電極と電気的に接続された第1補助電極と、前記第2基板側に設けられた第2透明電極と、前記着色領域の周囲に配置され前記第2透明電極と電気的に接続された第2補助電極と、前記第1透明電極と前記第2透明電極とに挟持され、前記着色領域に配置され、電圧の印加により着色するエレクトロクロミック層と、を有し、前記端子部は、前記第1補助電極と電気的に接続する第1端子部と、前記第2補助電極と電気的に接続する第2端子部と、を有し、前記第1端子部は、前記第1基板又は前記第2基板を貫通し、前記第1補助電極と電気的に接続する第1導通部と、前記第1基板又は前記第2基板の表面に設けられ、前記第1導通部と接続する第1端子と、を有し、前記第2端子部は、前記第1基板又は前記第2基板を貫通し、前記第2補助電極と電気的に接続する第2導通部と、前記第1基板又は前記第2基板の表面に設けられ、前記第2導通部と接続する第2端子と、を有する積層体。
【0013】
[2]前記端子部は、外部機器と接続する外部接続端子をさらに有する[1]に記載の積層体。
【0014】
[3]前記エレクトロクロミック層は、前記第1透明電極に積層する第1エレクトロクロミック層と、前記第2透明電極に積層する第2エレクトロクロミック層と、前記第1エレクトロクロミック層と前記第2エレクトロクロミック層との間に充填された電解質層と、を有し、前記第1エレクトロクロミック層は、酸化反応によって着色を呈する材料を含み、前記第2エレクトロクロミック層は、還元反応によって着色を呈する材料を含む[1]又は2に記載の積層体。
【0015】
[4][1]から[3]のいずれか1項に記載の積層体が備えるエレクトロクロミックシートを、前記第1補助電極及び前記第2補助電極の外周に沿って切削して得られたエレクトロクロミック部と、前記エレクトロクロミック部が積層されたレンズ本体と、を備える眼鏡用レンズ。
【0016】
[5][4]に記載の眼鏡用レンズと、前記眼鏡用レンズを保持するフレームと、を備えた眼鏡。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発色及び消色を遅滞なく行うことが可能なエレクトロクロミックシートを有する積層体、眼鏡用レンズ及び眼鏡用レンズを有する眼鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態の積層体を材料に用いたサングラスを示す斜視図である。
図2図2は、積層体160の分解斜視図である。
図3図3は、図2の線分III-IIIにおける部分断面図である。
図4図4は、図2の線分IV-IVにおける部分断面図である。
図5図5は、第1補助電極33の部分拡大図である。
図6図6は、第2補助電極34の部分拡大図である。
図7図7は、積層体160を用いたレンズの製造方法を説明する説明図である。
図8図8は、補助電極の効果を示す説明図である。
図9図9は、補助電極の効果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図9を参照しながら、本実施形態に係る積層体、眼鏡用レンズ及び眼鏡について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。また、以下の説明においては、用語「エレクトロクロミック」を「EC」と略記することがある。
【0020】
≪眼鏡≫
図1は、本実施形態の積層体を材料に用いたサングラス(眼鏡)を示す斜視図である。サングラスは眼鏡の一例である。
【0021】
図1に示すように、サングラス100は、一対のレンズ110(眼鏡用レンズ)と、フレーム120と、を備えている。
【0022】
[レンズ]
レンズ110は、可視光透過性を有し、電圧の印加の切り替えにより、発色及び消色を可逆的に行うことができる。なお、本明細書中において、「レンズ(眼鏡用レンズ)」は、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含む。
【0023】
レンズ110は、後述する積層体が有するECシートから形成されるエレクトロクロミック部111(EC部111)と、EC部111が積層されたレンズ本体115とを有する。使用者がサングラス100を装着した際、レンズ本体115は使用者側に位置し、EC部111はレンズ本体115の使用者とは反対側の面に位置する。
【0024】
[フレーム]
フレーム120は、一対のリム部121と、ブリッジ部122と、一対のテンプル部123と、一対のノーズパッド部124とを備える。フレーム120は、使用者の頭部に装着される。フレーム120は、レンズ110を使用者の目の前方に配置する。
【0025】
リム部121は、閉環状に形成されている。一対のリム部121は、使用者の右目及び左目にそれぞれ対応する。リム部121は、開環状であってもよい。また、フレーム120は、リム部121を有さない構成であってもよい。
【0026】
ブリッジ部122は、一対のリム部121を互いに連結する。ブリッジ部122は、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置する。
【0027】
一対のテンプル部123は、リム部121において、ブリッジ部122が連結されている位置とは反対側の位置にそれぞれ連結されている。テンプル部123は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
【0028】
テンプル部123は、スイッチ125と、電池126とを有している。スイッチ125は、テンプル部123の外表面に露出している。スイッチ125は、配線を介してレンズ110に電気的に接続されている。スイッチ125は、レンズ110に対して、例えば、プラス電圧の印加、マイナス電圧の印加、及び電圧の非印加の切り替えを行うことができる。
【0029】
電池126は、テンプル部123に内蔵されている。電池126は、配線を介してレンズ110に電気的に接続されている。
【0030】
ノーズパッド部124は、各リム部121における使用者の鼻に対応する位置に形成される。ノーズパッド部124は、使用者の鼻に当接する。ノーズパッド部124は、サングラス100の装着状態を安定させる。
【0031】
フレーム120の構成材料としては、例えば、金属材料、樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム120の形状は、使用者の頭部に装着し得る形状であれば、図示の例に限定されない。
【0032】
≪積層体、エレクトロクロミックシート≫
図2は、積層体160の分解斜視図、図3は、図2の線分III-IIIにおける部分断面図、図4は、図2の線分IV-IVにおける部分断面図である。ECシート150は、後述する眼鏡用レンズの材料として用いられる。
【0033】
図2~4に示すように、積層体160は、エレクトロクロミックシート150(ECシート150)と、ECシート150が積層されたレンズ材119と、を備える。
【0034】
ECシート150は、第1基板11と、第2基板12と、エレクトロクロミック素子30(EC素子30)と、封止部40と、端子部50と、を有する。図2においては、封止部40、端子部50を省略している。
【0035】
第1基板11及び第2基板12は、EC素子30及び封止部40を挟持している。また、封止部40は、第1基板11及び第2基板12の間においてEC素子30の周囲に配置され、第1基板11及び第2基板12の間を区画する。封止部40により区画された領域は、電圧印加により色が変化する着色領域ARである。
【0036】
[第1基板,第2基板]
第1基板11及び第2基板12は、ECシート150の最外層である。第1基板11と第2基板12とは、互いに対向して配置され、EC素子30等を保護する保護層としての機能を有している。
【0037】
第1基板11及び第2基板12は、可視光透過性を有する。本明細書においては、可視光透過性を有することを「透明」と称することがある。また、可視光透過性を「透明性」と称することがある。透明性を有するならば、第1基板及び第2基板12は、無色であってもよく、着色されていてもよい。
【0038】
第1基板11及び第2基板12は、透明性を有する熱可塑性樹脂を主材料として含有する。このような樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。
【0039】
第1基板11及び第2基板12の材料としては、上記樹脂のうち1つを用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。第1基板11及び第2基板12の材料としては、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂が好ましい。
【0040】
また、透明性を有するならば、第1基板11及び第2基板12の材料には、公知のフィラーや添加剤を含んでもよい。また、第1基板11及び第2基板12は単層であってもよく、積層体であってもよい。
【0041】
第1基板11及び第2基板12の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下が好ましく、1.4以上1.65以下がより好ましい。第1基板11及び第2基板12の屈折率をこの範囲とすることにより、エレクトロクロミック素子30の機能を高めることができる。
【0042】
第1基板11及び第2基板12の平均厚さは、例えば、0.05mm以上10.0mm以下、好ましくは0.3mm以上5.0mm以下である。
【0043】
[エレクトロクロミック素子]
EC素子30は、電圧印加により生じるエレクトロクロミズムにより変色(着色、消色)を生じる。EC素子30は、第1透明電極31と、第2透明電極32と、第1補助電極33と、第2補助電極34と、エレクトロクロミック層35(EC層35)とを有する。
【0044】
(第1透明電極、第2透明電極)
第1透明電極31は、EC素子30の第1基板11側に設けられ、第1基板11において第2基板12側の面に形成されている。また、第2透明電極32は、EC素子30の第2基板12側に設けられ、第2基板12において第1基板11側の面に形成されている。
【0045】
図2では、第1透明電極31において、後述する第1取出部332と重なる位置には、第1取出部332と同様に突出する部分31aを有することとしているが、この部分31aは無くてもよい。第2透明電極32においても同様に、後述する第2取出部342と重なる位置には、第2取出部342と同様に突出する部分32aを有することとしているが、この部分32aは無くてもよい。
【0046】
第1透明電極31及び第2透明電極32は、透明性を有する。第1透明電極31及び第2透明電極32の材料としては、例えば、ITO、FTO(F-doped Tin Oxide)、ATO(Antimony Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられる。第1透明電極31及び第2透明電極32の材料としては、これらのうち1つを用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
第1透明電極31及び第2透明電極32の厚さは、必要な透明性を確保すると共に、EC層35に適切に電圧を印加可能な電気抵抗値が得られるように調整される。第1透明電極31及び第2透明電極32の材料としてITOを用いた場合、第1透明電極31及び第2透明電極32の平均厚さは、例えば、それぞれ独立して、50nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上150nm以下、より好ましくは60nm以上130nm以下とされる。
【0048】
(第1補助電極、第2補助電極)
第1補助電極33は、第1透明電極31の周縁部において着色領域ARの周囲に配置され、第1透明電極31と電気的に接続している。第1補助電極33は、帯状の第1枠体331と、第1枠体331から着色領域ARの外側に突出する第1取出部332と、を有する。
【0049】
第1枠体331は、EC層35の一部、すなわち着色領域ARの一部を囲む。第1枠体331は、平面視で湾曲しているが、これに限らない。第1枠体331は、レンズ110としたときに、レンズ110の周囲を囲む位置に設けられている。第1枠体331の幅は、例えば0.1mm以上1.0mm以下とすることが好ましく、0.3mm以上1.0mm以下とすることがより好ましい。
【0050】
第1取出部332は、平面視で第1枠体331の中央よりは第1枠体331の一端側に偏った位置に設けられている。第1取出部332は、レンズ110としたときに、フレーム120においてブリッジ部122又はテンプル部123の近傍となる位置に設けられている。
【0051】
第2補助電極34は、第2透明電極32の周縁部の表面において着色領域ARの周囲に配置され、第2透明電極32と電気的に接続している。第2補助電極34は、帯状の第2枠体341と、第2枠体341から着色領域ARの外側に突出する第2取出部342と、を有する。
【0052】
第2枠体341は、EC層35の一部、すなわち着色領域ARの一部を囲む。第2枠体341は、平面視で湾曲しているが、これに限らない。第2枠体341は、レンズ110としたときに、レンズ110の周囲を囲む位置に設けられている。第2枠体341の幅は、例えば0.1mm以上1.0mm以下とすることが好ましく、0.3mm以上1.0mm以下とすることがより好ましい。
【0053】
第2取出部342は、平面視で第2枠体341の中央よりは第2枠体341の一端側に偏った位置に設けられている。第2取出部342は、レンズ110としたときに、フレーム120においてブリッジ部122又はテンプル部123の近傍となる位置に設けられている。
【0054】
第1補助電極33と第2補助電極34とは、平面視で互いに重ならず、且つ平面視において着色領域ARを挟んで反対側に位置している。また、第1取出部332は第2透明電極32と重ならず、且つ第2取出部342は第1透明電極31と重なっていない。
【0055】
平面視で第1透明電極31に外接する矩形のうち最小の矩形を想定したとき、本実施形態のECシートの第1補助電極33は、当該矩形の一辺の方向の一端側の領域に設けられ、第2補助電極34は一辺の方向の一端側の領域に設けられている。
上記矩形の一辺の方向と直交する辺方向において、第1補助電極33(第1枠体331)の長さは、当該直交する方向における第1透明電極31の長さの50%以上100%以下である。
また、上記直交する方向における第2補助電極34(第2枠体341)の長さは、当該直交する方向における第2透明電極32の長さの50%以上100%以下である。
【0056】
第1補助電極33の電気抵抗値は、第1透明電極31の電気抵抗値よりも低い。同様に、第2補助電極34の電気抵抗値は、第2透明電極32の電気抵抗値よりも低い。第1補助電極33及び第2補助電極34の構成材料としては、例えば、銀、アルミニウム、銅、クロム及びモリブデン等が挙げられる。第1補助電極33及び第2補助電極34の構成材料としては、導電性インクを用いることもできる。第1補助電極33及び第2補助電極34の構成材料としては、これらのうち1つを用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。第1補助電極33及び第2補助電極34は、例えば、スパッタ、蒸着などにより形成することができる。第1補助電極33及び第2補助電極34は、導電性インクを用いた印刷により形成することもできる。
【0057】
第1補助電極33及び第2補助電極34の平均厚さは、それぞれ独立して、1nm以上100nm以下が好ましい。第1補助電極33及び第2補助電極34の平均厚さは、5nm以上50nm以下がより好ましい。
【0058】
図5は、第1補助電極33の部分拡大図である。図5に示すように、第1補助電極33において、第1枠体331と第1取出部332との接続箇所(図5において符号A1,A2で表す)の輪郭線は、着色領域AR側が凸となる曲線である。この曲線の曲率半径は、40mm以上に設定されている。曲率半径は、公知の方法により測定し、算出することができる。
【0059】
また、第1枠体331から外側に向けた第1取出部332の幅は、10mm以下に設定されていると好ましい。
【0060】
なお、上記第1取出部332の幅は、第1取出部332が設けられた位置における第1補助電極33全体の幅W1を測定し、得られた第1補助電極33の幅W1から、第1枠体331の幅W2を除いた値とする。第1枠体331の幅W2は、設計値が既知であれば設計値を用いることができる。第1枠体331の幅が未知である場合、等間隔に複数箇所(例えば等間隔に5箇所)の幅を測定し、測定値の算術平均値を第1枠体331の幅W2とすることができる。
【0061】
第1枠体331の少なくとも先端(一端)を含む部分(先端部分)の幅は、0.1mm以上、1.0mm以下であってよい。先端部分の幅が0.1mm以上であるため、電気抵抗を低くできる。そのため、着色領域ARにおける発色および消色を遅滞なく行うことができる。先端部分の幅は、1.0mm以下であるため、外部から視認しにくい。そのため、第1枠体331は目立ちにくい。よって、サングラス100の美観を高めることができる。先端部分の幅は、0.3mm以上、1.0mm以下であってもよい。
【0062】
図6は、第2補助電極34の部分拡大図である。第1補助電極33と同様に、第2補助電極34において、第2枠体341と第2取出部342との接続箇所(図6において符号A3,A4で表す)の輪郭線は、着色領域AR側が凸となる曲線である。この曲線の曲率半径は、40mm以上に設定されていると好ましい。
【0063】
また、第2枠体341から外側に向けた第2取出部342の幅は、10mm以下に設定されていると好ましい。
【0064】
幅W2は、上記幅W1と同様の方法により、第2取出部342が設けられた位置における第2補助電極34全体の幅W3を測定し、得られた第2補助電極34の幅W3から、第2枠体341の幅W4を除いた値として求めることができる。
【0065】
第2枠体341の少なくとも先端(一端)を含む部分(先端部分)の幅は、0.1mm以上、1.0mm以下であってよい。先端部分の幅が0.1mm以上であるため、電気抵抗を低くできる。そのため、着色領域ARにおける発色および消色を遅滞なく行うことができる。先端部分の幅は、1.0mm以下であるため、外部から視認しにくい。そのため、第2枠体341は目立ちにくい。よって、サングラス100の美観を高めることができる。先端部分の幅は、0.3mm以上、1.0mm以下であってもよい。
【0066】
(エレクトロクロミック層)
図2,3に示すように、EC層35は、第1透明電極31に積層する第1エレクトロクロミック層351(第1EC層351)と、第2透明電極32に積層する第2エレクトロクロミック層352(第2EC層352)と、第1EC層351と第2EC層352との間に充填された電解質層353と、を有する。
【0067】
(第1エレクトロクロミック層)
第1EC層351は、色が変化する層であり、酸化反応によって着色する材料を主材料として含有する。酸化反応によって着色する材料としては、例えば、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物の重合物、ビスアクリダン化合物、トリフェニルアミン、ベンジジン、プルシアンブルー型錯体、及び酸化ニッケル等、エレクトロクロミズムを示し、EC素子に用いられる公知の材料が挙げられる。
【0068】
トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物の重合物としては、例えば、特開2016-45464号公報、特開2020-138925号公報等に記載のものが挙げられる。
【0069】
酸化反応によって着色する材料としては、これらのうちの1つを用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
第1EC層351の平均厚さは、0.1μm以上30μm以下が好ましい。第1EC層351の平均厚さは、0.4μm以上10μm以下がより好ましい。
【0071】
(第2エレクトロクロミック層)
第2EC層352は、色が変化する層であり、還元反応によって着色する材料を主材料として含有する。還元反応によって着色する材料としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化チタン等の無機エレクトロクロミック化合物、ビオロゲン系化合物及びジピリジン系化合物等の有機エレクトロクロミック化合物等、エレクトロクロミズムを示し、EC素子に用いられる公知の材料が挙げられる。
【0072】
還元反応によって着色する材料としては、これらのうちの1つを用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
第1EC層351が酸化反応によって着色する色(色1)と、第2EC層352が還元反応によって着色する色(色2)とは、同じ色調であってもよく、異なる色調であってもよい。色1と色2とが同じ色調である場合、最大発色濃度を高め、コントラストを向上させることできる。色1と色2とが異なる色調である場合、EC素子30の発色としては、色1と色2との混色後の色となる。
【0074】
第1EC層351と第2EC層352との両方を着色させることによって、第1EC層351と第2EC層352の酸化還元色素を同時に発色させることができる。そのため、発色スピードを向上させることができる。
【0075】
第2EC層352の平均厚さは、0.2μm以上5.0μm以下が好ましい。第2EC層352の平均厚さは、1.0μm以上4.0μm以下がより好ましい。第2EC層352の平均厚さは、0.2μm以上であると、発色濃度を高めることができる。第2EC層352の平均厚さは、5.0μm以下であると、製造コストを抑えることができる。第2EC層352の平均厚さは、5.0μm以下であると、着色による視認性の低下が起こりにくい。
【0076】
(電解質層)
電解質層353は、第1EC層351と第2EC層352との間に充填されている。電解質層353は、イオン伝導性を有する電解質を含有する。
【0077】
電解質としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩、酸類、アルカリ類等の支持塩などが挙げられる。電解質の対イオン(陰イオン)は、ハロゲン、チオシアン酸イオン(SCN)、塩素酸イオン(ClO )、過塩素酸イオン(ClO )、テトラフルオロホウ酸イオン(BF )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO )、トリフルオロ酢酸イオン(CFCOO)、ビスフルオロスルフォニウムイミド(N(SOF) )を挙げることができる。
【0078】
このような電解質として、具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等が挙げられる。電解質としては、これらのうちの1つを用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
電解質の材料としては、イオン性液体を用いることもできる。イオン性液体の中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有しているため、取り扱いが容易である。
【0080】
電解質層353の平均厚さは、20μm以上100μm以下が好ましい。電解質層353の平均厚さは、30μm以上80μm以下がより好ましく、30μm以上70μm以下がさらに好ましい。
【0081】
[封止部]
封止部40は、第1基板11と第2基板12との間に配置され、着色領域ARを区画する。封止部40の材料は、透明性を有する絶縁性材料であれば特に限定されない。封止部40の材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂材料;シリコン酸化物(SiO)、シリコン酸窒化物(SiON)、アルミ酸化物(Al)等の無機酸化物等が挙げられる。
【0082】
封止部40の平均厚さは、EC素子30の平均厚さに応じて調整される。封止部40の平均厚さは、20μm以上100μm以下が好ましく、30μm以上80μm以下がより好ましく、40μm以上60μm以下がさらに好ましい。
【0083】
[端子部]
端子部50は、EC素子30と電気的に接続し、第2基板12の表面に設けられている。端子部50は、第1補助電極33と接続する第1端子部51Aと、第2補助電極34と接続する第2端子部52Aとを有する。
【0084】
(第1端子部)
第1端子部51Aは、第1導通部51と第1端子511とを有する。
【0085】
第1導通部51は、第2基板12及び封止部40を貫通し、第1補助電極33と電気的に接続する。第1導通部51は、第1取出部332と平面的に重なる位置において第2基板12及び封止部40を貫通する貫通孔40a内に形成されている。
【0086】
第1導通部51は、貫通孔40aの内部に充填された導電ペースト、貫通孔40aの内部に挿入された導電性の筒状部材により形成することができる。その他、貫通孔40a内に形成され、第1補助電極33(第1取出部332)と電気的に接続可能であれば、公知の材料を適宜適用することができる。
【0087】
第1端子511は、第2基板12の表面に露出して設けられ、第1導通部51と電気的に接続する部材である。第1端子511は、第2基板12の表面において第1導通部51と接続していれば、例えば第2基板12の表面に設けられた板状の部材であってもよい。第1導通部51との導通を確実に行い、且つ耐久性にも優れることから、第1端子511は、第2基板12の表面に設けられた端子511aと、第1導通部51に一部埋設される部分511bとを有する構成が好ましい。
【0088】
第1端子部51Aは、外部機器と接続する外部接続端子55をさらに有していてもよい。外部接続端子55は、第1端子511と電気的に接続している。
【0089】
(第2端子部)
第2端子部52Aは、第2導通部52と第2端子521とを有する。
【0090】
第2導通部52は、第2基板12及び封止部40を貫通し、第2補助電極34と電気的に接続する。第2導通部52は、第2取出部342と平面的に重なる位置において第2基板12及び封止部40を貫通する貫通孔40b内に形成されている。
【0091】
図4では、第2導通部52及び貫通孔40bは、第2補助電極34(第2取出部342)を貫通することとして示しているが、第2補助電極34を貫通しなくてもよい。
【0092】
第2導通部52は、上述の第1導通部51と同様の構成とすることができる。
【0093】
第2端子521は、第2基板12の表面に露出して設けられ、第2導通部52と電気的に接続する部材である。第2端子521は、第2基板12の表面に設けられた端子521aと、第2導通部52に一部埋設される部分521bとを有する。第2端子521は、上述の第1端子511と同様の構成とすることができる。
【0094】
第2端子部52Aは、外部機器と接続する外部接続端子56をさらに有していてもよい。外部接続端子56は、第2端子521と電気的に接続している。
【0095】
なお、本実施形態では、端子部50を第2基板12の表面に設けたが、第1基板11の表面に設けてもよい。
【0096】
≪積層体、眼鏡用レンズ≫
図7は、ECシート150(積層体160)を用いたレンズの製造方法を説明する説明図である。
【0097】
まず、図7(a)に示すように、ECシート150に加熱下で曲げ加工を施すことで、ECシート150を目的とするレンズの曲率に合わせて湾曲させる。曲げ加工は、例えば、プレス成形または真空成形により行う。
【0098】
次いで、図7(b)に示すように、湾曲させたECシート150をインサート品としてインサート成型し、ECシート150の凹面にレンズ材119を形成して積層体160を得る。レンズ材119は、後述する加工を施すことによりレンズ本体115となる。
【0099】
レンズ材119は、可視光透過性を有する。レンズ材119の材料は、光学部材の材料として公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0100】
レンズ材119の材料が、ECシート150においてレンズ材119と接する基板(第1基板11又は第2基板12)の主材料と同種又は同一であると、ECシート150とレンズ材119とを密着させやすく好ましい。また、基板の材料とレンズ材119の材料とが同種もしくは同一であると、基板とレンズ材119との屈折率差を小さくすることができ、ECシート150とレンズ材119との界面における光の散乱や反射を抑制できる。基板とレンズ材119との屈折率差は、0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。
【0101】
レンズ材119の厚さは、例えば、1.5mm以上、20mm以下が好ましい。レンズ材119の厚さを前記範囲とすることにより、得られるレンズの高い強度と軽量化との両立を図ることができる。
【0102】
次いで、レンズ材119の表面研磨、ECシート150及びレンズ材119の表面のハードコート処理、及び反射防止処理を行う。その後、第1取出部332及び第2取出部342と重なる位置の封止部40に貫通孔(貫通孔40a,40b)を形成し、貫通孔内の第1取出部332及び第2取出部342と電気的に接続する第1端子部51A、第2端子部52Aを形成する。
【0103】
次いで、図7(c)に示すように、積層体160をトリミング加工し、上述のサングラス100が有するリム部121に対応した形状とする。このとき、第1取出部332及び第2取出部342の周辺のトリミングは、例えば回転する円筒状の砥石Gを用いて行う。
【0104】
このような加工により、ECシート150を第1補助電極33及び第2補助電極34の外周に沿って切削して得られたEC部111と、EC部111が積層されたレンズ本体115とを備えるレンズ110が得られる(図1参照)。得られるレンズ110は、本発明における「眼鏡用レンズ」に該当する。
【0105】
積層体160が有するレンズ材119は、第1補助電極33及び第2補助電極34の外周に沿ったトリミング加工により、レンズ本体115に加工される。レンズ本体115は、第1取出部332及び第2取出部342と平面視同型状の突出部115aを有する。
【0106】
得られたレンズ110は、図1に示すフレーム120と組み合わされる。その際、EC部111の第1取出部332と第2取出部342は、それぞれに設けられる導通部を介して、フレーム120と電気的に接続する。本実施形態においては、第1取出部332及び第2取出部342は、第1端子部51A、第2端子部52Aを介してフレーム120のテンプル部123又はブリッジ部122に設けられた不図示の外部端子と電気的に接続し、電池126と接続する。
これにより、サングラス100が得られる。
【0107】
以上のような構成の積層体160によれば、以下のような効果が得られる。
【0108】
図8,9は、補助電極(第1補助電極、第2補助電極)の効果を示す説明図である。図8は、補助電極を有さないECシート(積層体)を用い上記方法で製造した眼鏡用レンズのEC部である。図9は、上記ECシート150(積層体160)を用い上記方法で製造した眼鏡用レンズのEC部(EC部111)を示す。
【0109】
まず、図8に示すEC部111Xでは、透明電極(第1透明電極、第2透明電極)に電気的に接続する第1導通部51及び第2導通部52に電池を接続し電圧を印加すると、第1導通部51及び第2導通部52から透明電極に直接電流が流れることとなる。
【0110】
このとき、第1導通部51及び第2導通部52を最短距離で結ぶ経路(符号D1で示す)では、経路が短く電気抵抗が小さいため電流が流れやすく、第1導通部51及び第2導通部52を迂回してつなぐ経路(符号D2で示す)は、経路D1より相対的に電流が流れにくい。その結果、着色領域ARのうち、経路D2と重なるような第1導通部51及び第2導通部52から遠い領域では、経路D1と重なる領域と比べ変色の遅延が生じ易い。
【0111】
対して、図9に示すEC部111のように、材料であるECシートが補助電極(第1補助電極33,第2補助電極34)を有する場合、以下のように動作する。
【0112】
第1補助電極33では、第1導通部51を介して第1取出部332に電圧が印加されると、まず、第1取出部332から第1枠体331に向けて通電し、次いで、第1補助電極33から第1透明電極31に通電する。このような電流を符号C1で示す。
【0113】
同様に、第2補助電極34では、第2導通部52を介して外部電源から第2取出部342に電圧が印加されると、まず、第2取出部342から第2枠体341に向けて通電し、次いで、第2補助電極34から第2透明電極32に通電する。このような電流を符号C2で示す。
【0114】
このとき、第1補助電極33は、第1透明電極31の一端側において短手方向の大半を覆い、第2補助電極34は、第2透明電極32の他端側において短手方向の大半を覆っている。そのため、EC部111では、電圧が印加されると、補助電極を介して着色領域ARの全体において通電のタイミングが揃いやすく、変色の遅延を抑制できる。
【0115】
また、第1補助電極33,第2補助電極34は、着色領域ARの周縁部に設けられ、着色領域ARの中央には存在していない。そのため、着色領域ARの発色を妨げない。
【0116】
さらに、積層体160においては、第1端子部51A、第2端子部52Aを有するため外部機器との接続が容易であり、組み立て工程の簡略化が図れる。
【0117】
以上のような構成の積層体によれば、第1補助電極33及び第2補助電極34を有することにより、発色及び消色を遅滞なく行うことが可能となる。また、第1補助電極33,第2補助電極34に接続された端子部を有することにより、組み立て工程の簡略化が図れる。
【0118】
また、以上のような構成の眼鏡用レンズ、眼鏡によれば、上記積層体160を有することにより、発色及び消色を遅滞なく行うことが可能となる。
【0119】
なお、本実施形態においては、眼鏡の例としてサングラス100を示したが、これに限らない。レンズ110の適用先は、例えば、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等であってもよい。
【0120】
また、本実施形態においては、EC層35には第1EC層351と第2EC層352とを有することとしたが、これに限らない。EC層35が、第1EC層351と第2EC層352のいずれか一方のみを有する構成であっても、本発明の効果を奏することができる。
【0121】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計、仕様等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0122】
11…第1基板、12…第2基板、30…エレクトロクロミック素子(EC素子)、31…第1透明電極、32…第2透明電極、33…第1補助電極、34…第2補助電極、35…エレクトロクロミック層(EC層)、40…封止部、110…レンズ、111…エレクトロクロミック部(EC部)、115…レンズ本体、119…レンズ材、120…フレーム、122…ブリッジ部、123…テンプル部、150…エレクトロクロミックシート(ECシート)、160…積層体、331…第1枠体、332…第1取出部、341…第2枠体、342…第2取出部、351…第1エレクトロクロミック層(第1EC層)、352…第2エレクトロクロミック層(第2EC層)、353…電解質層、AR…着色領域
【要約】
【課題】発色及び消色を遅滞なく行うことが可能なエレクトロクロミックシートを備えた積層体の提供。
【解決手段】エレクトロクロミックシートとレンズ材と、を備え、エレクトロクロミックシートは、第1基板と第2基板とエレクトロクロミック素子と封止部と端子部と、を備え、エレクトロクロミック素子は、第1透明電極と、第1補助電極と、第2透明電極と、第2補助電極と、エレクトロクロミック層と、を有し、端子部は、第1補助電極と接続する第1端子部と、第2補助電極と接続する第2端子部と、を有し、第1端子部は、第1基板又は第2基板を貫通し、第1補助電極と接続する第1導通部と、第1基板又は第2基板の表面に設けられ、第1導通部と接続する第1端子と、を有し、第2端子部は、第1基板又は第2基板を貫通し、第2補助電極と接続する第2導通部と、第1基板又は第2基板の表面に設けられ、第2導通部と接続する第2端子と、を有する積層体。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9