(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】薄膜ヒータ、薄膜ヒータの製造方法および恒温槽型圧電発振器
(51)【国際特許分類】
H05B 3/12 20060101AFI20230411BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20230411BHJP
H05B 3/26 20060101ALI20230411BHJP
H03B 5/32 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H05B3/12 A
H05B3/20 311
H05B3/20 326A
H05B3/26
H03B5/32 A
(21)【出願番号】P 2022505122
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006419
(87)【国際公開番号】W WO2021177061
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2020036072
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 実
(72)【発明者】
【氏名】古城 琢也
(72)【発明者】
【氏名】森本 賢周
【審査官】八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-213102(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0070770(KR,A)
【文献】特開2010-044936(JP,A)
【文献】特開2019-033078(JP,A)
【文献】特開2010-103610(JP,A)
【文献】特開2001-274626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00- 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に、両端子間でパターニングされた金属配線を有する薄膜ヒータの製造方法であって、
前記金属配線が発熱層を有しており、当該発熱層は、
200℃以下の温度で再結晶が生じる材料を用い、かつ、前記絶縁基板を200℃以上に予熱した状態で、真空蒸着法によって前記絶縁基板上に金属膜を成膜する成膜工程と、
前記成膜工程で成膜された前記金属膜を、エッチングによってパターニングするパターニング工程とによって形成されることを特徴とする薄膜ヒータの製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の薄膜ヒータの製造方法であって、
前記発熱層の材料が、Au(金)、Al(アルミ)、Ag(銀)およびCu(銅)からなる群より選ばれることを特徴とする薄膜ヒータの製造方法。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載の薄膜ヒータの製造方法であって、
前記絶縁基板が水晶またはガラスであり、
前記金属配線が、前記絶縁基板と前記発熱層との間に形成される下地層を有していることを特徴とする薄膜ヒータの製造方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の薄膜ヒータの製造方法であって、
前記発熱層は、30nm以上の膜厚であり、
前記下地層は、10nm以下の膜厚であることを特徴とする薄膜ヒータの製造方法。
【請求項5】
絶縁基板上に両端子間でパターニングされた金属配線を有する薄膜ヒータと、振動子と、前記振動子と組み合わされて発振器を構成する発振器ICと、前記
薄膜ヒータを制御するヒータICとを含んだ恒温槽型圧電発振器であって、
前記薄膜ヒータは、前記両端子間における前記金属配線の抵抗値が10Ω以下であり、前記金属配線が200℃以下の温度で再結晶が生じる材料で形成された発熱層を有しており、
コア基板上に前記ヒータIC、前記振動子、前記発振器IC、前記薄膜ヒータが積層されたコア部を有していることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項6】
絶縁基板上に両端子間でパターニングされた金属配線を有する薄膜ヒータと、振動子と、前記振動子と組み合わされて発振器を構成する発振器ICと、前記
薄膜ヒータを制御するヒータICとを含んだ恒温槽型圧電発振器であって、
前記薄膜ヒータは、前記両端子間における前記金属配線の抵抗値が10Ω以下であり、前記金属配線が再結晶が生じた膜として形成された発熱層を有しており、
コア基板上に前記ヒータIC、前記振動子、前記発振器IC、前記薄膜ヒータが積層されたコア部を有していることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項7】
請求項
5または6に記載の恒温槽型圧電発振器であって、
前記コア部では、平板状の
前記コア基板上に、前記ヒータIC、前記振動子、前記発振器ICおよび前記薄膜ヒータが前記コア基板側から順に積層さ
れており、
前記コア部が断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜ヒータ、薄膜ヒータの製造方法、および薄膜ヒータを用いた恒温槽型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
恒温槽型圧電発振器(例えば、温度制御型水晶発振器(Oven-Controlled Xtal(crystal) Oscillator:以下OCXO))など、温度調整が必要な小型のデバイスにおいては、従来、小型の抵抗器や高抵抗の金属板がヒータの役割を担っていた(特許文献1)。しかしながら、小型の抵抗器や高抵抗の金属板は、発熱状態が安定せず、高精度の温度調整が行えないという問題がある。また、これらのヒータは形状の自由度が低いため、デバイス内で温度調整を要するポイントの直近に配置することが困難となることもしばしばあり、このことも高精度の温度調整が行えない要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、OCXOの温度調整用のヒータとして、薄膜ヒータの使用を検討している。薄膜ヒータは、絶縁基板上にパターニング形成された金属膜(金属配線)を有する構成であるが、小型デバイスであるOCXOに適用する場合には、超小型(かつ超低出力)の薄膜ヒータとする必要がある。
【0005】
超小型の薄膜ヒータを製造するには、絶縁基板上にスパッタリングや抵抗加熱蒸着などで金属膜を成膜し、成膜された金属膜をフォトリソグラフ法などで精密にパターニングする製造方法が取られる。しかしながら、超小型かつ超低出力の薄膜ヒータにおいては、金属膜における微視的な構造欠陥によって局所的な抵抗値が不安定となり、発熱が不均一となるといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より均一な発熱が得られる薄膜ヒータおよび薄膜ヒータの製造方法を提供することを第1の目的とする。また、このような薄膜ヒータを用い、高精度の温度調整を行う恒温槽型圧電発振器を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様である薄膜ヒータは、絶縁基板上に、両端子間でパターニングされた金属配線を有する薄膜ヒータであって、前記両端子間における前記金属配線の抵抗値が10Ω以下であり、前記金属配線が、200℃以下の温度で再結晶が生じる材料で形成された発熱層(あるいは、再結晶が生じた膜として形成された発熱層)を有していることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、発熱層に再結晶を生じさせることで、発熱層の組成・組織が微視的にも均一となり、薄膜ヒータにおいて全体的に均一な発熱を得ることができる。
【0009】
また、上記薄膜ヒータでは、前記発熱層の材料が、Au(金)、Al(アルミ)、Ag(銀)およびCu(銅)からなる群より選ばれる構成とすることができる。
【0010】
また、上記薄膜ヒータでは、前記絶縁基板が水晶またはガラスであり、前記金属配線が、前記絶縁基板と前記発熱層との間に形成される下地層を有している構成とすることができる。
【0011】
上記の構成によれば、絶縁基板と発熱層との間に下地層を介在させることで、絶縁基板に対する発熱層の密着性を高めることができる。
【0012】
また、上記薄膜ヒータでは、前記発熱層は、30nm以上の膜厚であり、前記下地層は、10nm以下の膜厚である構成とすることができる。
【0013】
また、上記の課題を解決するために、本発明の第2の態様である薄膜ヒータの製造方法は、絶縁基板上に、両端子間でパターニングされた金属配線を有する薄膜ヒータの製造方法であって、前記金属配線が発熱層を有しており、当該発熱層は、200℃以下の温度で再結晶が生じる材料を用い、かつ、前記絶縁基板を200℃以上に予熱した状態で、真空蒸着法によって前記絶縁基板上に金属膜を成膜する成膜工程と、前記成膜工程で成膜された前記金属膜を、エッチングによってパターニングするパターニング工程とによって形成されることを特徴としている。
【0014】
また、上記の課題を解決するために、本発明の第3の態様である恒温槽型圧電発振器は、ヒータと、振動子と、前記振動子と組み合わされて発振器を構成する発振器ICと、前記ヒータを制御するヒータICとを含んだ恒温槽型圧電発振器であって、前記ヒータとして、少なくとも上記記載の薄膜ヒータが含まれることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、全体的に均一な発熱が得られる薄膜ヒータを用い、高精度の温度調整を行う恒温槽型圧電発振器を提供することができる。
【0016】
また、上記恒温槽型圧電発振器では、前記ヒータは、2枚の前記薄膜ヒータであり、前記2枚の薄膜ヒータに挟まれる温調空間内に、前記振動子、前記発振器ICおよび、前記ヒータICを配置したコア部を有しており、前記コア部が断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入されている構成とすることができる。
【0017】
また、上記恒温槽型圧電発振器では、平板状のコア基板上に、前記ヒータIC、前記振動子、前記発振器ICおよび前記薄膜ヒータが前記コア基板側から順に積層されたコア部を有しており、前記コア部が断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の薄膜ヒータおよび薄膜ヒータの製造方法は、薄膜ヒータの金属配線に再結晶を生じた金属膜からなる発熱層を備えることで、全体的に均一な発熱を得ることができるといった効果を奏する。また、本発明の恒温槽型圧電発振器は、全体的に均一な発熱が得られる薄膜ヒータを用いることで、高精度の温度調整を行うことができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態を示す図であり、薄膜ヒータの構成例を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態を示す図であり、薄膜ヒータの構成例を示す部分断面図である。
【
図3】(a)~(c)は、薄膜ヒータにおける金属配線のパターニング形状の変形例を示す平面図である。
【
図4】薄膜ヒータを使用するOCXOのコア部の構造例を示す断面図である。
【
図5】薄膜ヒータを使用するOCXOのコア部の構造例を示す平面図である。
【
図6】
図4,5に示すコア部を搭載したOCXOの断面図である。
【
図7】薄膜ヒータを使用するOCXOのコア部の変形例を示す断面図である。
【
図8】
図7に示すコア部を搭載したOCXOの断面図である。
【
図9】
図7に示すコア部を搭載したOCXOの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まずは、本実施の形態に係る薄膜ヒータの構成および製造方法について、以下に説明する。
図1および
図2は、薄膜ヒータ10の構成例を示す図であり、
図1は平面図、
図2は部分断面図である。
【0021】
図1および
図2に示すように、薄膜ヒータ10は、絶縁基板11の上に、パターニングされた金属配線12を有する構成である。金属配線12は、その両端に電極端子121を有しており、両端子間に電流を流すことによりジュール熱を発生させる。尚、金属配線12は、少なくとも発熱層12Aを有するが、絶縁基板11と発熱層12Aとの間に下地層12Bが形成されていてもよい。
【0022】
薄膜ヒータ10は、小型デバイスであるOCXOへの適用が前提とされたヒータであり、OCXOの内部を一定温度(例えば90℃)に保つために使用される。この場合、薄膜ヒータ10は、サイズが超小型であるだけでなく、その出力も超低出力とされる必要がある。例えば、薄膜ヒータ10は、絶縁基板11のサイズが5mm×5mm以下であり、低出力のヒータとするために金属配線12の両端子間の抵抗値が10Ω以下(好適には9±1Ω)とされる。
【0023】
超小型かつ超低出力の薄膜ヒータ10における金属配線12を製造するには、スパッタリングや抵抗加熱蒸着などの真空蒸着法によって金属膜を成膜し、成膜した金属膜をエッチング(フォトリソグラフィ法など)によって精密にパターニングすることが必要となる。しかしながら、この場合、真空蒸着法による金属膜の成膜時に、微視的な組成の揺らぎや微小な構造欠陥が生じ、薄膜ヒータ10の発熱が不均一となることがある。薄膜ヒータ10の発熱が不均一であれば、当然ながら、OCXOにおいて高精度の温度調整を行うことは困難となる。
【0024】
本実施の形態に係る薄膜ヒータ10は、より均一な発熱を得るために、金属配線12における発熱層12Aの材料として、再結晶温度の低い材料を用いることを特徴とする。具体的には、発熱層12Aには、200℃以下の温度で再結晶が生じる材料が用いられ、そのような材料としては、Au(金)、Al(アルミ)、Ag(銀)またはCu(銅)などが挙げられる。特に、耐腐食性などの観点から、発熱層12AにはAu(金)の使用が最も好ましい。
【0025】
尚、再結晶温度の低い材料は、通常、融点も低くなる。発熱することが前提である薄膜ヒータでは、一般的には、金属配線の材料に高融点材料を用いることが好ましいと言えるが、高融点材料で形成される金属配線は、成膜時に微視的な組成の揺らぎや微小な構造欠陥が生じやすい。これに対し、本実施の形態に係る薄膜ヒータ10は、OCXOへの使用が前提であり、大きな発熱量は必要なく、むしろ発熱量を抑えることが必要なため、低融点材料を用いることに問題はない。
【0026】
また、OCXOへの適用が前提となる薄膜ヒータ10では、絶縁基板11は水晶またはガラスを用いることが好ましい。絶縁基板11に水晶またはガラスを用いる場合、金属配線12は、絶縁基板11に対する発熱層12Aの密着性を高めるために下地層12Bを用いることが好ましい。下地層12Bの材料としては、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、またはW(タングステン)などが挙げられる。尚、下地層12Bは、発熱層12Aに用いる金属に対して拡散性が低く、かつ絶縁基板11との密着性を維持する材料が望ましい。発熱層12AにAuを用いる場合、下地層12BにはTiまたはWを用いることが好ましい。
【0027】
また、金属配線12が発熱層12Aおよび下地層12Bを有する場合、薄膜ヒータ10における発熱は、厳密には発熱層12Aだけでなく下地層12Bにおいても生じることになる。このため、薄膜ヒータ10における発熱をより均一とするためには、下地層12Bにおける発熱を減らし、発熱層12Aにできるだけ多くの発熱を担わせることが望ましい。すなわち、下地層12Bの膜厚は、発熱層12Aの膜厚に比べて十分に小さくすることが望ましい。具体的には、下地層12Bは10nm以下の膜厚とすることが好ましい。一方、発熱層12Aの膜厚は、薄膜ヒータ10において求められる抵抗値とパターンサイズの制限によって決定され、概ね300nm程度であるが、発熱層12Aを完全な連続膜とするには30nm程度の膜厚が必要である。このため、発熱層12Aは30nm以上の膜厚とすることが好ましい。
【0028】
本実施の形態に係る薄膜ヒータ10の製造方法では、絶縁基板11上に金属配線12をパターニング形成するに当たって、真空蒸着法によって金属膜を成膜し(成膜工程)、成膜した金属膜をエッチングによって精密にパターニングする(パターニング工程)。尚、金属配線12が発熱層12Aおよび下地層12Bを有する場合は、発熱層12Aおよび下地層12Bのそれぞれを、成膜工程およびパターニング工程によって形成する。
【0029】
薄膜ヒータ10としての発熱の大半を担う発熱層12Aは、上述したように、200℃以下の温度で再結晶が生じる材料(好適にはAu)が用いられる。これは、薄膜ヒータ10において、発熱層12Aを再結晶が生じた膜として形成するためである。再結晶が生じた発熱層12Aは、金属膜の組成・組織が微視的にも均一となり、全体的に均一な発熱を得ることができる。発熱層12Aにおいて均一な発熱が得られれば、薄膜ヒータ10における発熱も均一となるため、薄膜ヒータ10を用いるOCXOにおいて高精度の温度調整を行うことが可能となる。尚、発熱層12Aにおいて再結晶が生じているか否かは、例えばX‐RD(X線回折)などで確認することが可能である。
【0030】
また、発熱層12Aにおける再結晶は、金属膜の成膜工程において発生させることが好ましい。すなわち、成膜工程において金属膜を200℃以上(すなわち、発熱層12Aの材料となる金属の再結晶温度以上)に温度上昇させれば、金属膜の再結晶を生じさせることができる。具体的には、成膜工程における真空蒸着法による金属膜の成膜を、絶縁基板11を200℃以上に予熱した状態で行うことで、金属膜の再結晶を生じさせることができる。
【0031】
尚、薄膜ヒータ10における金属配線12のパターニング形状は特に限定されるものではなく、任意のパターニング形状(例として、
図3(a)~(c)参照)とすることができる。例えば、金属配線12における電極端子121の位置がOCXOの設計条件などによって決まる場合、金属配線12は、薄膜ヒータ10の発熱領域内での発熱ができる限り均一となるようにパターニングされればよい。また、薄膜ヒータ10における絶縁基板11はヒータ専用の基板でなくてもよく、他の回路基板などと兼用であってもよい。すなわち、絶縁基板11には、金属配線12以外の金属配線や電極端子が形成されていてもよい(
図3(c)参照)。
【0032】
〔実施の形態2〕
実施の形態1で説明した薄膜ヒータ10は、上述したように、OCXOへの適用が前提とされるものである。本実施の形態2では、薄膜ヒータ10の使用に適したOCXOの構造について
図4~
図6を参照して説明する。
図4は、薄膜ヒータ10を使用するOCXO30のコア部20の構造例を示す断面図である。
図5は、コア部20の構造例を示す平面図である。
図6は、コア部20を搭載したOCXO30の断面図である。
【0033】
コア部20は、水晶振動子(振動子)21、発振器IC22、ヒータIC23およびチップコンデンサ241~243など、OCXO30で使用される各種電子部品をパッケージングしたものであり、水晶基板251上でこれらの部品が封止樹脂26によって封止されている。コア部20は、特に、温度特性の大きい水晶振動子21、発振器IC22、ヒータIC23などを温度調整することで、発振周波数を安定させることができる。
【0034】
水晶振動子21の種類は特に限定されるものではないが、デバイスを薄型化しやすい、サンドイッチ構造のデバイスを好適に使用できる。サンドイッチ構造のデバイスは、ガラスや水晶からなる第1封止部材および第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが圧電振動板を介して積層して接合された構造のデバイスである。
【0035】
発振器IC22は、水晶振動子21と組み合わされて水晶発振器(発振器)を構成する。ヒータIC23は、コア部20の温度調整を行うICであり、コア部20に使用される薄膜ヒータ10への電流を制御する。尚、本発明では、ヒータIC23自身が発熱体としての機能を有している場合も含まれる。すなわち、ヒータIC23は、発熱体(薄膜ヒータ10以外の熱源)と、発熱体(薄膜ヒータ10を含む)の温度制御用の制御回路(電流制御用の回路)と、コア部20内の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成とされていてもよい。ヒータIC23によってコア部20の温度制御を行うことにより、コア部20の温度が略一定の温度に維持され、OCXO30の発振周波数の安定化が図られている。
【0036】
また、コア部20は、2つの水晶基板251および252を有し、水晶基板251および252のそれぞれに金属配線12を形成して、これらを薄膜ヒータ10として用いている。但し、
図5では、水晶基板252および金属配線12の図示を省略し、薄膜ヒータ10の発熱領域を破線枠にて示している。また、
図4では、水晶基板251を2枚の水晶板を用いた積層基板としているが、本発明はこれに限定されるものでなく、水晶基板251は1枚の水晶板を用いた単層基板であってもよい。
【0037】
コア部20は、水晶基板251および252の間、言い換えれば、水晶基板251に形成される薄膜ヒータ10と水晶基板252に形成される薄膜ヒータ10との間に、水晶振動子21、発振器IC22およびヒータIC23を配置している。これにより、コア部20では、2枚の薄膜ヒータ10に挟まれる空間(温調空間)において、水晶振動子21、発振器IC22およびヒータIC23を高精度に(均一な温度で)温度調整することができる。
【0038】
但し、温度調整を受ける部品の配置に関しては、平面視において、その全体が温調空間の領域内に入っている構成には限定されない。
図5の例では、ヒータIC23の一部が、温調空間の領域からはみ出しているが、ヒータIC23の大半は温調空間の領域内に存在しており、ヒータIC23は十分に温度調整を受けることができる。
【0039】
また、
図4,5の例では、温度特性の小さな部品、すなわち、チップコンデンサ241~243については温調空間の領域外に配置されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、温調空間の領域内に温度特性の小さな部品が配置されることに特に問題はない。
【0040】
OCXO30は、
図6に示すように、セラミック製などの筐体31の内部にコア部20を配置し、リッド32で封止した構造とされている。
図6の例では、筐体31の内部に、接続端子(図示省略)の並びに沿った段差311を形成し、コア部20は、インターポーザ33を介して、段差311の上に形成された接続端子と接続されている。この構造は、OCXO30の薄型化に好適であるが、本発明において、筐体31内でのコア部20の配置や接続方式に関しては特に限定されない。
【0041】
尚、薄膜ヒータ10を使用するOCXOにおいて、コア部の構造は
図4~
図6に示すものには限定されず、他に様々な変形例が考えられる。例えば、
図4に示すコア部20は、ヒータIC23を水晶振動子21や発振器IC22とは積層させず、水晶基板251上で別の領域に配置している。しかしながら、水晶基板251上で、ヒータIC23、水晶振動子21および発振器IC22の全てを積層配置することも可能である。また、
図4に示すコア部20は、2枚の薄膜ヒータ10を用いているが、薄膜ヒータ10の使用枚数は特に限定されるものではなく、少なくとも1枚の薄膜ヒータ10が用いられていればよい。
【0042】
例えば、
図7は、薄膜ヒータ10を使用するOCXOのコア部の変形例であるコア部20’の断面図である。
図8は、コア部20’を搭載したOCXO30’の断面図である。また、
図7では、水晶基板252および金属配線12が、薄膜ヒータ10に相当する。
【0043】
図7に示すコア部20’は、平板状のコア基板27上で、ヒータIC23、水晶振動子21、発振器IC22および薄膜ヒータ10が下側から(コア基板27側から)順に積層された4層構造(積層構造)となっている。コア基板27としては、例えば水晶基板やポリイミド樹脂などの樹脂基板を使用可能である。ヒータIC23、水晶振動子21および発振器IC22は、平面視におけるそれぞれの面積が、上方に向かって漸次小さくなっている。
【0044】
平面視における薄膜ヒータ10の大きさは、縦・横の両方向において、少なくとも発振器IC22の全体を覆う程度とされることが熱伝導の点から好ましい。尚、コア部20’の各種電子部品は封止樹脂によって封止されていないが、封止雰囲気によっては封止樹脂による封止を行うようにしてもよい。
【0045】
コア部20’では、ヒータIC23および水晶振動子21は、コア基板27の上面に形成される接続端子にワイヤボンディングにより接続されている。また、発振器IC22は、水晶振動子21に対してフリップチップボンディングなどにより接続されている。薄膜ヒータ10は、発振器IC22の上面に接着され、ヒータIC23に対してワイヤボンディングによって接続されていることが好ましい。
【0046】
図8に示すOCXO30’は、
図6に示すOCXO30と同様に、セラミック製などの筐体31の内部にコア部20’を配置し、リッド32で封止した構造とされている。また、OCXO30’では、コア部20’の下面(すなわちコア基板27の下面)に形成される接続端子が、筐体31の内部に形成された接続端子に導電性接着剤を介して接続される。
【0047】
また、OCXO30’の他の接続構成として、
図9に示すように、コア基板27の下面が、筐体31の凹部の内底面に接着剤を介して接合され、ヒータIC23および水晶振動子21が、筐体31内の段部の上面に形成された接続端子にワイヤーボンディングによって接続される構成であってもよい。このとき、薄膜ヒータ10はワイヤを介してコア基板27の上面の端子に接続されていてもよく、筐体31内の段部の上面に形成された接続端子に接続されていてもよい。
【0048】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0049】
10 薄膜ヒータ
11 絶縁基板
12 金属配線
12A 発熱層
12B 下地層
121 電極端子
20、20’ コア部
21 水晶振動子(振動子)
22 発振器IC
23 ヒータIC
241~243 チップコンデンサ
251,252 水晶基板
27 コア基板
30、30’ OCXO
31 筐体
32 リッド