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特許7260067膜分離活性汚泥処理装置の運転方法および膜分離活性汚泥処理装置
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  • 特許-膜分離活性汚泥処理装置の運転方法および膜分離活性汚泥処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】膜分離活性汚泥処理装置の運転方法および膜分離活性汚泥処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20230411BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20230411BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20230411BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20230411BHJP
【FI】
C02F1/44 F
B01D65/06
B01D69/00
C02F3/12 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022545803
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2022025314
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2021106387
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 世人
(72)【発明者】
【氏名】間谷 聖子
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 源紀
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181618(WO,A1)
【文献】特開2005-246283(JP,A)
【文献】特開2018-192411(JP,A)
【文献】特開平10-128084(JP,A)
【文献】特開平08-290045(JP,A)
【文献】特開2005-095798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を活性汚泥で処理する活性汚泥槽と、前記活性汚泥槽内に浸漬された膜モジュールと、前記膜モジュールの下方に配置された散気手段と、前記膜モジュールを透過した透過水を装置外に排出する透過水排出手段とを備えた膜分離活性汚泥処理装置において、
ろ過運転を実施した後、ろ過運転を停止し、前記膜モジュールを前記活性汚泥槽内に浸漬させた状態で前記膜モジュールの透過水排出側から洗浄用の薬液を注入して、前記膜モジュール内の分離膜を薬液洗浄し、その後ろ過運転を再開する、膜分離活性汚泥処理装置の運転方法であって、
前記分離膜の薬液洗浄後に、以下のA条件またはB条件を満たす予備運転を行い、活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が、予め設定した第1の基準を満たした後に、ろ過運転を再開する、膜分離活性汚泥処理装置の運転方法。
A条件:膜の薬液洗浄の際に停止していた前記散気手段からの散気を再開する。
B条件:膜の薬液洗浄の際に停止していた前記散気手段からの散気を再開するとともにろ過運転時の40%以下のフラックスで予備ろ過運転を行う。
第1の基準:活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度、フロック領域を示す顕微鏡の画像情報または膜片を用いた膜ろ過試験結果から算出される膜ろ過抵抗のいずれかであり、前記予め設定した第1の基準が式1~式3のいずれかである。
[活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度]
ろ紙ろ過液の濁度[NTU]≦薬液洗浄前のろ紙ろ過液の濁度+4[NTU] ・・・式1
[フロック領域を示す顕微鏡の画像情報]
面積200μm 以下のフロックの面積の合計[μm ]/顕微鏡視野の面積[μm ]≦(薬液洗浄前の面積200μm 以下のフロックの面積の合計[μm ]/顕微鏡視野の面積[μm ])×1.3 ・・・式2
[膜片を用いた膜ろ過試験結果から算出される膜ろ過抵抗]
膜ろ過抵抗上昇度の値≦薬液洗浄前の膜ろ過抵抗上昇度の値×2.5 ・・・式3
【請求項2】
前記分離膜の薬液洗浄後に、前記A条件またはB条件を満たす予備運転を行い、前記活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が、予め設定した第2の基準を満たした後に、以下のC条件を満たす準備運転を行い、前記活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が予め設定した第1の基準を満たした後に、ろ過運転を再開する、請求項1に記載の膜分離活性汚泥処理装置の運転方法。
C条件:前記散気手段からの散気を継続し、ろ過運転時の50%以上80%以下のフラックスで第2の予備ろ過運転を行う。
第2の基準:前記活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度であり、前記予め設定した第2の基準が式4である。
[活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度]
ろ紙ろ過液の濁度[NTU]≦薬液洗浄前のろ紙ろ過液の濁度の値+8[NTU] ・・・式4
【請求項3】
前記膜モジュールで用いられている分離膜の孔径が0.01μm以上、1μm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の膜分離活性汚泥処理装置の運転方法。
【請求項4】
薬液洗浄前後の活性汚泥液の特性を測定し、当該特性測定結果に基づいて、通常のろ過運転を再開することを特徴とする請求項1または2に記載の膜分離活性汚泥処理装置の運転方法。
【請求項5】
薬液洗浄前後の活性汚泥液の特性を測定した情報を、通信機器によって接続された遠隔地に設けられた判定手段にて判定し、判定結果が予め設定した基準を満たした場合に、通常のろ過運転の再開に関する制御条件を出力し、出力された制御条件に応じて通常のろ過運転の再開を行うことを特徴とする請求項に記載の膜分離活性汚泥処理装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物処理槽内に浸漬して活性汚泥をろ過する膜モジュールを備えた膜分離活性汚泥処理装置の運転方法に関する。特に、膜モジュールを生物膜処理槽内に浸漬した状態で薬液洗浄を実施した後の運転再開方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜分離活性汚泥法は、下水や産業廃水などを処理する廃水処理方法である。膜分離活性汚泥法は、活性汚泥を用いて下廃水を浄化した後、水槽に浸漬させた膜モジュールを用いて活性汚泥を固液分離し、清澄な膜ろ過水を処理水として得られるようにしたものである。
【0003】
この膜分離活性汚泥法では、膜を用いた固液分離によって処理水を得るため、膜モジュールの連続運転に伴う膜の目詰まり(ファウリング)が避けられない。膜モジュールを用いて活性汚泥液をろ過する際は、膜モジュールの下方に配置した散気管から散気を行い、生成する上昇流によって、絶えず膜面を物理的に洗浄するようにろ過を行うものの、連続運転下で、膜の目詰まりの進行を長期間、十分に抑えることは難しい。そのため、膜間差圧(または膜ろ過抵抗)が上昇したタイミング、あるいは一定期間膜モジュールを運転した後のタイミングなどに、薬液を用いて化学的に膜を洗浄し、膜の透水性能を回復させる操作、即ち薬液洗浄が行われる。
【0004】
しかし、薬液洗浄の直後に、通常運転時の高いフラックスでろ過運転を再開すると、膜モジュールがファウリング物質で急激に詰まってしまう。これは、膜の薬液洗浄時に、汚泥中に流出した薬液により活性汚泥が損傷し、発生した溶解性有機物や懸濁物質粒子などが膜に吸着あるいは膜の細孔で阻止されるからである。そして、ろ過運転開始直後から膜間差圧が急激に上昇してしまい、以後のろ過運転時の差圧上昇速度も増し、その結果、膜の性能回復のための膜の薬液洗浄の頻度が多くなってしまうという問題が生じるケースがあった。
【0005】
特に、通常運転時のフラックス、つまり、膜透過流束が高く設計された(目安としては0.5m/d以上)低BOD濃度廃水や下水案件などの排水処理プラントにおいて、一定以上の薬液処理強度(目安としては、有効塩素濃度1000mg/L以上の次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いる場合)で膜を薬液洗浄する際は、このような問題が生じるケースがしばしばあった。
【0006】
前述の問題を解決するための方法として、特許文献1には、膜モジュールの薬液洗浄後に、ろ過を再開するのに先立ち、膜モジュールの下方より膜面曝気用の空気を適当時間供給して膜面付着物を剥離させる方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、薬液洗浄の後に、いきなり通常のろ過運転に復帰させるのではなく、目標透過流束の50%以下の値に設定された透過流束でろ過運転を開始し、ろ過開始から所定時間内に透過流束を前記目標透過流束まで段階的に又は連続的に増加させ、しかる後、次の洗浄まで前記目標透過流束を保持してろ過を行うことを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置の膜の薬液洗浄後の運転方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、薬液洗浄後の運転再開時の運転性向上に着目した運転方法としては、薬液洗浄中に、活性汚泥槽内の活性汚泥の活性を維持するべく、膜モジュールの外部に設けた散気手段からなる散気ユニットによって前記膜モジュールの外側を周回する旋回流を生起させるとともに前記膜ユニットの膜面には水流を実質的に作用させない状態で行う膜洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第3290558号明細書
【文献】特開2005-246283号公報
【文献】特許第4244001号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの特許文献で開示されている従来技術では、膜の薬液洗浄後の運転条件決定の為の判断指標、判断方法が具体的に開示されておらず、膜の薬液洗浄後、どのような条件を満した場合に、通常のろ過運転が再開可能かを合理的に決定できなかった。
【0011】
従って、特許文献1に記載の方法に則して、ろ過をしない状態で膜モジュールへの散気を行った場合や、あるいは特許文献2に記載の方法に即して、目標透過流束の50%以下の値に設定された透過流束でろ過を再開した場合には、次のような課題があった。短時間で通常のろ過運転を再開したり、目標のフラックスまで短時間に復帰させると、膜モジュールの2次側から1次側に流出した次亜塩素酸ナトリウム溶液などの薬液と活性汚泥液が接触することで、活性汚泥が損傷し、生成した活性汚泥由来の有機物、たとえば、多糖類やタンパク質などの分離膜を詰まらせるファウリング物質が未分解で高濃度に残存しているため、せっかく洗浄した膜を直ぐに詰まらせてしまい、次の薬液洗浄実施までの運転時間を短縮してしまうという問題があった。
【0012】
また、反対に、目標のフラックスまでの復帰を長時間とすると、大型の流量調整槽が必要となる、あるいは、膜モジュールが複数系列ある場合は他系列への処理の負担が増す、など他の設備に負担がかかるという問題があった。
【0013】
また、特許文献3の膜モジュールの外部に設けた散気手段からなる散気ユニットによって前記膜モジュールの外側を周回する旋回流を生起させる方法では、薬液洗浄中に膜モジュールの外部に設けた散気手段からなる散気ユニットによって生成する旋回流によって膜面に流れが生じ、膜の薬液洗浄後の回復効率が低下してしまうという問題があった。
【0014】
本発明の目的は、膜の薬液洗浄後の活性汚泥液の特性を元に、活性汚泥液のファウリングポテンシャルを把握する具体的な方法を提供し、活性汚泥液の膜ろ過特性の回復度を的確に把握しながら合理的に膜の薬液洗浄後の運転再開方法を提供することにある。
【0015】
そして、本発明を適用することで、従来に比べて薬液洗後の膜間差圧の上昇をより効果的に抑制でき、膜の薬液洗浄頻度の低減や洗浄用の薬品使用量の低減につなげ、更には、分離膜ならびに分離膜モジュールの長寿命化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0017】
(1)被処理水を活性汚泥で処理する活性汚泥槽と、前記活性汚泥槽内に浸漬された膜モジュールと、前記膜モジュールの下方に配置された散気手段と、前記膜モジュールを透過した透過水を装置外に排出する透過水排出手段とを備えた膜分離活性汚泥処理装置において、
ろ過運転を実施した後、ろ過運転を停止し、前記膜モジュールを前記活性汚泥槽内に浸漬させた状態で前記膜モジュールの透過水排出側から洗浄用の薬液を注入して、前記膜モジュール内の分離膜を薬液洗浄し、その後ろ過運転を再開する、膜分離活性汚泥処理装置の運転方法であって、
前記分離膜の薬液洗浄後に、以下のA条件またはB条件を満たす予備運転を行い、活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が、予め設定した第1の基準を満たした後に、ろ過運転を再開する、膜分離活性汚泥処理装置の運転方法である。
A条件:膜の薬液洗浄の際に停止していた前記散気手段からの散気を再開する。
B条件:膜の薬液洗浄の際に停止していた前記散気手段からの散気を再開するとともにろ過運転時の40%以下のフラックスで予備ろ過運転を行う。
第1の基準:活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度、フロック領域を示す顕微鏡の画像情報または膜片を用いた膜ろ過試験結果から算出される膜ろ過抵抗のいずれかであり、前記予め設定した第1の基準が式1~式3のいずれかである。
[活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度]
ろ紙ろ過液の濁度[NTU]≦薬液洗浄前のろ紙ろ過液の濁度+4[NTU] ・・・式1
[フロック領域を示す顕微鏡の画像情報]
面積200μm 以下のフロックの面積の合計[μm ]/顕微鏡視野の面積[μm ]≦(薬液洗浄前の面積200μm 以下のフロックの面積の合計[μm ]/顕微鏡視野の面積[μm ])×1.3 ・・・式2
[膜片を用いた膜ろ過試験結果から算出される膜ろ過抵抗]
膜ろ過抵抗上昇度の値≦薬液洗浄前の膜ろ過抵抗上昇度の値×2.5 ・・・式3
【0018】
(2)前記分離膜の薬液洗浄後に、前記A条件またはB条件を満たす予備運転を行い、前記活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が、予め設定した第2の基準を満たした後に、以下のC条件を満たす準備運転を行い、前記活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が予め設定した第1の基準を満たした後に、ろ過運転を再開する、(1)に記載の膜分離活性汚泥処理装置の運転方法である。
C条件:前記散気手段からの散気を継続し、ろ過運転時の50%以上80%以下のフラックスで第2の予備ろ過運転を行う。
第2の基準:前記活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度であり、前記予め設定した第2の基準が式4である。
[活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度]
ろ紙ろ過液の濁度[NTU]≦薬液洗浄前のろ紙ろ過液の濁度の値+8[NTU] ・・・式4
【0022】
)前記膜モジュールで用いられている分離膜の孔径が0.01μm以上、1μm未満であることを特徴とする(1)または(2)に記載の膜分離活性汚泥処理装置の運転方法である。
【0023】
)薬液洗浄前後の活性汚泥液の特性を測定し、当該特性測定結果に基づいて、通常のろ過運転を再開することを特徴とする(1)または(2)に記載の膜分離活性汚泥処理装置の運転方法である。
【0024】
)薬液洗浄前後の活性汚泥液の特性を測定した情報を、通信機器によって接続された遠隔地に設けられた判定手段にて判定し、判定結果が予め設定した基準を満たした場合に、通常のろ過運転の再開に関する制御条件を出力し、出力された制御条件に応じて通常のろ過運転の再開を行うことを特徴とする()に記載の膜分離活性汚泥処理装置の運転方法である。
【発明の効果】
【0027】
膜の薬液洗浄後に、活性汚泥液の膜ろ過特性の回復を把握しながら通常運転を再開することで、薬液洗浄後の膜汚染リスクを最小化できる。そのため、従来に比べて薬液洗浄後の膜間差圧の上昇をより効果的に抑制できるようになり、膜の洗浄頻度の低減や洗浄用の薬品使用量の低減につながる。廃水処理の条件は一定ではなく、その変化に応じて微生物で構成される活性汚泥液の活性やろ過特性などの状態は変化するため、従来技術の「適当時間」、「所定時間」、「一定時間」などに基づくタイミングを逸脱したろ過運転の再開が防止される。
【0028】
本発明により、薬液洗後に活性汚泥液中のファウリング物質に由来する評価指標に基づいて、ろ過運転を再開することで、信頼性高く、手堅く運転を再開することができ、次の薬液洗浄までのろ過運転時間を延ばすことができる。さらに、分離膜ならびに分離膜モジュールの長寿命化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】膜分離活性汚泥処理装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】薬液洗浄前後の活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の特性を示すグラフである。
図3】薬液洗浄前後の活性汚泥液のろ紙ろ過液量の特性を示すグラフである。
図4】薬液洗浄前後の活性汚泥液のろ過抵抗の特性を示すグラフである。
図5】薬液洗浄前後の活性汚泥液のフラックス領域を示す画像情報の概略図である。
図6】薬液洗浄前後の活性汚泥液のろ紙ろ過液の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。なお、本発明は以下に例示する実施の形態に限定されるものではない。
【0031】
本発明で用いられる膜分離活性汚泥処理装置は、下水や有機性廃水などの被処理水を活性汚泥で生物処理後、固液分離するための膜モジュール1と、該膜モジュールを浸漬するための活性汚泥槽4を有し、分離膜を空気洗浄するための散気手段(膜モジュール用散気管2)と散気手段に空気を送るための空気供給装置14と、活性汚泥槽から処理水を取水する重力ろ過設備または吸引ポンプ(図示していない)、洗浄用の薬液を貯留する薬液タンク7を基本構成要素とする。また、必要に応じて、分離膜を空気洗浄するものとは別の、酸素供給用の補助散気手段(補助散気管3)と補助散気手段に空気を送るための空気供給装置13とで構成される。更には、無酸素条件下にて脱窒を行うための無酸素槽などの、膜モジュールを浸漬するための活性汚泥槽以外の処理槽5などが適宜、加わって構成される。
【0032】
本発明で用いられる膜分離活性汚泥処理装置の膜モジュールの膜の形状は、特に限定されるものではなく、平膜、中空糸膜、あるいは管状膜などいずれであっても良い。
【0033】
また、膜構造も特に限定されるものではないが、膜の孔径は、活性汚泥液中の懸濁物質の阻止性および活性汚泥液ろ過時のろ過性能(水の出やすさ)のバランスを考慮し、0.01μm以上、1μm未満であることが好ましく、本要件を満たした精密ろ過膜や限外ろ過膜などの多孔質膜であればいずれであっても良いが、特に0.05μm以上、0.5μm未満であることを、より好ましい要件としてあげることができる。
【0034】
膜素材も特に限定されるものではなく、膜の具体例としては、ポリアクリロニトリル多孔質膜、ポリイミド多孔質膜、ポリエーテルスルホン多孔質膜、ポリフェニレンスルフィドスルホン多孔質膜、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜、ポリフッ化ビニリデン多孔質膜、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜等の多孔質膜が挙げられるが、ポリフッ化ビニリデン多孔質膜やポリテトラフルオロエチレン多孔質膜は耐薬品性が高いため、特に好ましい。
【0035】
活性汚泥槽4は、被処理水と活性汚泥液を貯え、膜モジュールを活性汚泥液中に、膜モジュール供給メーカーの要求に収まるレイアウト(壁との距離や膜モジュールから水面までの距離など)で浸漬・収容することができるものであれば、特に制限されるものではなく、コンクリート槽、ステンレス槽、繊維強化プラスチック槽などが挙げられる。活性汚泥槽4の内部は、単一の空間でも、仕切り板(一部に開口部がある)などによって空間が分割されていても構わない。活性汚泥槽が、物理的に複数の区画に分割されている場合や、単一空間でも、一区画を膜モジュール1を浸漬設置するための区画として用い、他の区画を補助散気や脱窒を行うための処理区画として、役割が異なる複数の区画に分割して利用してもよい。
【0036】
膜モジュール用散気管2は、発生させた気泡が膜の活性汚泥液側(1次側)の表面全体をムラなく散気できる構造のものであれば特に限定するものではなく、管に孔をあけた構造のものや、ゴム製やセラミック製の散気板などを用いることができる。膜モジュール用散気管の空気供給装置14によって送風された空気は、膜モジュール用散気管2によって膜モジュール1に供給され、散気による物理的な膜面の洗浄が行われる。膜モジュール用散気管の空気供給装置14は、圧縮空気を送風する装置のことで、一般にはブロア、コンプレッサ等が用いられる。
【0037】
ろ過運転時の膜モジュールの下方に配置された散気手段からの膜面散気は、連続的に実施しても、あるいは10秒運転、10秒停止を繰り返すなどと断続的に行ってもよい。
【0038】
膜モジュールへの散気以外に、空気供給装置13と補助散気管3とで構成される、酸素供給を行う補助散気システムを設けても良い。補助散気管としては、酸素供給効率に優れた微細気泡散気管を用いるのが好ましい。
【0039】
活性汚泥液から膜モジュールの透過水を分離するための透過水排出手段(図示せず)としては、吸引ポンプを使用しても良いし、吸引ポンプを使用せずに水頭圧力差で濾過する方法をとっても構わない。吸引ポンプを使用する場合は、膜モジュール1から脈動が少なく処理水を得ることができるポンプであれば特に問題はなく、渦巻ポンプ、ディフューザーポンプ、渦巻斜流ポンプ、斜流ポンプ、ピストンポンプ、プランジャポンプ、ダイアフラムポンプ、歯車ポンプ、スクリューポンプ、ベーンポンプ、カスケードポンプ、ジェットポンプなどが用いられる。吸引ポンプを使用せずに水頭圧力差で濾過する場合は、流量調整弁を設けて流量を制御する。
【0040】
上記構成の装置を用いて、通常のろ過運転を実施した後、膜の薬液洗浄を実施する。ここで、通常のろ過運転とは、廃水処理プラント全体で、薬液洗浄やメンテナンスなどのため停止している膜モジュールが無いまたは少なく、当該プラントに設置された膜モジュールが全てまたは大部分が廃水処理に使用され、必要な水量をろ過している状態の運転を指す。通常のろ過運転は、単に、ろ過運転とも呼ぶ。膜の薬液洗浄を実施する際は、ろ過運転は停止し、膜面散気も停止する。ここで、停止とは、薬液洗浄中に運転を停止することであるが、薬液洗浄中に一時的に短時間運転される場合も、運転を停止する状態に含まれる。
【0041】
薬液洗浄を実施するタイミングは、一般的には、膜間差圧(または膜ろ過抵抗)が一定値以上まで上昇したタイミング、あるいは一定期間膜モジュールを運転した後のタイミングで薬液洗浄を行うが、必ずしもこれらのタイミングでなく、任意のタイミングで実施しても良い。
【0042】
本発明での薬液の注入は、ろ過運転を停止した後、膜モジュールを活性汚泥液に浸漬させた状態で、膜エレメントの透過側(2次側)から活性汚泥側(1次側)に注入することにより行われる。膜への薬液接触の方法としては、膜分離活性汚泥槽から膜モジュール全体を取り出して薬液洗浄槽に浸漬する方法や、膜分離活性汚泥槽を空にした後、槽内に薬液を溜めて膜を接触させる方法もあるが、必要な付帯装置が大がかりとなり、経済的ではないためである。
【0043】
図1中、薬液は、薬液タンク7に貯蔵され、膜モジュールの透過側に水頭差またはポンプを用いて供給される。地上に薬液貯留タンクを設けて、薬液タンクに薬液を供給する方法でも良い。ここで洗浄に使用する薬液に関しては、膜の汚れに応じたものを使用すれば良いが、有機物による汚れに対しては、通常、有効塩素濃度が500mg/L~6000mg/L程度の次亜塩素酸ナトリウムが、無機性による汚れに対しては、濃度が1~3質量%程度のシュウ酸、クエン酸などのキレート効果のある有機酸が膜性能の回復に効果的であり、好ましく用いられる。
【0044】
膜エレメントの2次側への薬液の注入が完了し、化学反応によって膜を詰まらせている汚染物質を分解・溶解によって除去(洗浄)するための薬液浸漬時間は、薬液洗浄時の膜の詰まり(差圧上昇)の程度や水温などに応じて適宜設定すれば良いが、通常30分~4時間の範囲、より好ましくは1~2時間を好適な薬液浸漬時間として例示することができる。注入した薬液は、反応による消費や拡散などによって膜面での濃度が低下するため、むやみに長時間実施しても効果は低い。他方で、薬液浸漬時間が短すぎると、膜に残存する未反応・未分解のファウラントが増すため好ましくなく、30分以上とするのが好ましい。
【0045】
薬液の注入量は、膜モジュールの2次側容積、集水管、透過水配管などの、薬液注入部から膜面までの2次側の合計の容積を見積り、その容積以上の薬液量を注入することが、薬液を確実に膜の1次側(活性汚泥液が存在する側)の膜表面まで供給することができるため、望ましい。ただし、薬液注入量が多すぎると、膜から活性汚泥液中に流れ出る薬液量も付随して増加し、膜性能回復とは関係なく、単に活性汚泥を損傷させる悪影響だけが増してしまうため、薬液は、注入しすぎないように注意する必要がある。
【0046】
注入した薬液と膜のファウリング物質とを反応させ、ファウリング物質を膜から除去する薬液洗浄を実施する間は、膜の1次側に流出した薬液を膜の表面にとどめて反応に有効に使用するために、膜モジュールの散気は停止する。同じ理由で、膜の1次側に流出した薬液を膜面から遠ざけてしまうような、膜面近傍に汚泥の流れを生じさせるような運転は、薬液洗浄の間は停止する方が好ましい。具体的には、プラントの構成にもよるが、汚泥返送(循環)ポンプや、膜モジュールが設置された膜分離活性汚泥槽内の別区画に補助散気手段などが設置されている場合は、膜面に流れを生じさせる恐れのあるこれらの機器も、薬液洗浄の間は停止しておくことが好ましい。
【0047】
本発明では、膜の薬液洗浄が完了後、以下のいずれかの運転を行い、活性汚泥液の特性が、予め設定した基準を満たした後に通常のろ過運転を再開する。
(A条件)膜の薬液洗浄の際に停止していた膜モジュール下方に設置された散気手段からの散気を再開する。
(B条件)膜の薬液洗浄の際に停止していた膜モジュール下方に設置された散気手段からの散気を再開するとともに通常ろ過運転時の40%以下の値に設定されたフラックスでろ過運転を再開する。
【0048】
A条件は、B条件において、通常ろ過運転時のフラックスの0%に相当する。本発明の特徴である所定時間の決定は、後に述べる活性汚泥液の特性に基づいて行われる。ここで、薬液洗浄に該当する工程は、膜エレメントの透過側(2次側)からの薬液注入が完了してから、膜モジュールの散気手段からの膜面散気を再開するまでと定義する。
【0049】
また、通常ろ過運転のフラックスとは、廃水処理プラント全体で、薬液洗浄やメンテナンスなどのため運転停止している膜モジュールが無いまたは少なく、当該プラントに設置された膜モジュールが全てまたは大部分が廃水処理に使用され、要求される水量をろ過している状態のときのフラックスのことであり、通常は、薬液洗浄を実施する前の平均ろ過フラックスと同等である。定義を明確化する必要がある場合は、便宜的に、薬液洗浄を実施する前の直近1ヶ月での平均ろ過水量(処理水量)を、プラントで使用されている膜モジュールの全膜面積で除して得られる値を、通常ろ過運転時のフラックスと定義する。
【0050】
本発明では、膜の薬液洗浄が完了後、通常のろ過運転を再開する前に、所定時間、散気を再開する、あるいは、散気を再開するとともに通常ろ過運転時のフラックスの40%以下の値に設定されたフラックスでろ過運転を実施するのは、以下の効果を有するからである。
【0051】
第1には、ろ過を停止した状態、または通常ろ過運転時のフラックスの40%以下のろ過運転条件下で、膜モジュール下方に設置された散気手段からの散気を再開し、膜間の活性汚泥液など、膜面近傍の薬液による損傷を強く受けたろ過抵抗の高い活性汚泥液を、薬液による損傷影響のない(少ない)領域の汚泥と混合することで、膜汚染物質を膜面から迅速に遠ざけることができる。これにより、膜面の汚泥のろ過特性を短時間に良化でき、フラックスを高めて通常ろ過運転を再開したときに膜がファウリングするリスクを大幅に低減できる。
【0052】
第2には、ろ過を停止した状態、または通常ろ過運転時のフラックスの40%以下という膜へのファウリングリスクが少ないろ過運転条件下で、散気により酸素供給や混合を行うことで、薬液洗浄によって損傷を受けた活性汚泥由来のファウリング物質(溶解性有機物、粘性物質、微小化したフロックなど)を活性汚泥に吸着、分解、凝集させることができる。このため、通常のろ過運転を再開したときの、薬液洗浄によって損傷を受けた活性汚泥由来のファウリング物質による、細孔吸着や膜面付着等の膜の汚染を抑制できる。薬液洗浄によって解体した活性汚泥フロックの再凝集やフロックへの有機物の凝集に必要な時間も確保でき、通常ろ過運転時の汚泥のろ過抵抗を低減可能となる。
【0053】
ここで、薬液洗浄によって損傷を受けた活性汚泥由来のファウリング物質による膜の汚染を最大限に抑制するためには、ろ過を行わないことが最も好ましく、ろ過運転を再開する前に、所定時間、散気のみを再開する制御が態様として挙げられる。また、性状の悪化した汚泥に対しても、膜モジュール下方に設置された散気手段からの散気を再開するとともに膜面から汚れを可逆的に除去可能なレベルの低いフラックスの範囲、つまり、通常ろ過運転時のフラックスの40%以下のフラックスで予備ろ過運転を行う制御が態様として挙げられる。通常ろ過運転時のフラックスの40%以下であれば、深刻な膜の再汚染につながるリスクは低いためである。すなわち、分離膜の薬液洗浄後に、前述のA条件またはB条件を満たす予備運転を行うことで、活性汚泥液中のファウリング物質由来の特性が、予め設定した第1の基準以下に低減することができる。
【0054】
ここで、膜モジュールを浸漬するための活性汚泥槽以外の処理槽が存在する場合や、活性汚泥槽内が膜モジュール設置部とその他の区画に機能的に区画化されている場合は、膜モジュール近傍の汚泥のろ過特性を、より短時間に改善するために、前記膜モジュールの周囲の活性汚泥液と前記膜モジュールから離れた位置にある活性汚泥液との混合を同時に行うと更に効果的である。
【0055】
具体的には、活性汚泥槽内に膜モジュールが設置された区画と別の区画があり、後者に散気手段や攪拌手段が設けられている場合は、膜モジュールの散気手段からの膜面散気と共に、これらも、同時に稼働した方が、混合促進、反応促進の観点から好ましい。また、活性汚泥槽と独立の槽が設けられている場合は、これらの槽の間の活性汚泥液を効率的に混合できるように、汚泥返送ポンプを稼働させ、汚泥を全体で循環させることが好ましい。膜モジュールを浸漬するための活性汚泥槽以外の処理槽に散気手段や攪拌手段が設けられている場合は、これらも、同時に稼働した方が、混合促進、反応促進の観点から好ましい。
【0056】
ここで、通常のろ過運転を再開する前に、通常ろ過運転時のフラックスの40%以下の運転状態で膜モジュールの下方に配置された散気手段からの膜面散気を行う時間や、膜モジュールの周囲の活性汚泥液と膜モジュールから離れた位置にある活性汚泥液とを混合する時間が短すぎると、薬液洗浄によって損傷を受けた活性汚泥由来の溶解性有機物が薬液損傷を受けていない汚泥との混合による設備全体での汚泥特性の均質化や、活性汚泥によるファウリング物質の生物処理(薬液洗浄で発生した有機物の分解)や物理処理(吸着、凝集)による汚泥のろ過特性改善のために必要な時間を確保できない。通常のろ過運転を再開するには、予備運転を所定時間以上とすることが好ましく、活性汚泥液の特性が基準以下に低減する必要がある。
【0057】
他方で、通常ろ過運転時のフラックスの40%以下の運転状態の時間が長すぎると、活性汚泥液中の有機物や活性汚泥が自身の内部に蓄積した養分が枯渇し、汚泥が飢餓状態となってフロックの解体や微生物の死滅・自己消化など、膜のファウリングを増加させる物質の発生につながるため、好ましくなく、所定時間以内とすることが望ましい。これらの所定時間は、後に述べる活性汚泥液の特性に基づいて決定する。
【0058】
ここで、本発明では、膜の薬液洗浄が完了後、前記膜モジュールを前記活性汚泥槽内に浸漬させた状態で前記膜モジュールの透過側から洗浄用の薬液を注入して膜の洗浄を行う際に停止していた前記散気手段からの散気を再開する、あるいは、散気を再開するとともに通常のろ過運転時のフラックスの40%以下の値に設定されたフラックスでろ過運転を再開し、活性汚泥液の特性が予め設定した第2の基準を満たした後に、通常のろ過運転時のフラックスの50%~80%の値に設定されたフラックスでのろ過運転に変更し、活性汚泥液の特性が予め設定した、第1の基準を満たした後に、通常のろ過運転を再開する運転方法も適用できる。なお、第2の基準を満たす前の予備運転は、予備ろ過運転を伴わないA条件であっても、通常のろ過運転時のフラックスの40%以下の値に設定されたフラックスでの予備ろ過運転を行うB条件であってもよい。つまり、予備ろ過運転の有無にかかわらず、第2の基準を満たした後に、膜面散気を継続しながら、ろ過運転の50%以上80%以下のフラックスでの第2の予備ろ過運転を行うことも好ましい。
【0059】
ここで、通常のろ過運転を再開する前に、通常のろ過運転時のフラックスの50%~80%の値に設定されたフラックスでの準備運転を所定時間実施するのは、以下の効果を有するためである。
【0060】
第1には、散気を再開する、あるいは、散気を再開するとともに通常のろ過運転時のフラックスの40%以下の値に設定されたフラックスでろ過運転を行い、汚泥特性の改善後でも、薬液洗浄による膜の透水性能(あるいは膜間差圧)の回復性評価を、いきなり通常フラックス(高フラックス)で行うと膜を詰まらせる可能性がある。通常のろ過運転時のフラックスの50%~80%の値での準備運転を行うことで、薬液洗浄による膜透水性の回復度を評価し、高フラックスでのろ過運転再開時の膜つまりリスクを一層低減または回避することができる。具体的には、通常運転フラックスが0.6m/dのプラントの場合は、0.4m/dが好ましい態様の一つである。なお、通常のろ過運転時のフラックスの40%以下では、差圧差が少なく、薬液洗浄後の膜回復性を評価解析しにくいため、薬液洗浄による膜性能回復度の確認は、通常のろ過運転時のフラックスの50%~80%のフラックスで実施すると良い。
【0061】
第2には、薬液洗浄後の汚泥のダメージが大きく、汚泥状態の回復に時間を要する場合には、散気、あるいは、散気を再開するとともに通常のろ過運転時のフラックスの40%以下の値に設定されたフラックスでろ過運転のみで汚泥の治癒(ろ過特性の回復)をしようとすると、途中から汚泥量に対するエサ不足による汚泥性状の悪化が発生する場合がある。そこで、散気のみの運転、あるいは、散気を再開するとともに通常のろ過運転時のフラックスの40%以下の値に設定されたフラックスでのろ過運転と、通常運転との間に、準備運転として、ろ過運転時のフラックスの50%~80%のフラックスで運転する期間を一定時間設けることで、汚泥への負荷変動/ストレス変化を最小化することができ、損傷汚泥の治療と健全な汚泥の機能維持を両立することができ、通常運転へのスムーズな復帰が可能となる場合がある。
【0062】
膜モジュールが浸漬された膜分離活性汚泥槽を複数系列用いて廃水を処理するプラントの場合は、薬液洗浄の間の、薬液洗浄を行っていない他系列への廃水処理の負担も減らすことができる。本目的の為の所定時間は、薬液による汚泥損傷の程度や水温などが関連する汚泥回復速度に左右され、状況に応じて変化するため、後述の汚泥の特性を踏まえて運転条件の制御を行うことで、より適切な運転管理が可能となる。本所定時間の決定方法は、後に述べる活性汚泥液の特性に基づいて決定する。
【0063】
このように、活性汚泥処理装置の運転条件は 活性の汚泥の状態だけでなく、処理槽の構成や処理排水の状態、膜モジュールの設計フラックス等に左右される。よって、膜モジュールの膜特性の回復の評価では安定した運転再開条件を決定することはできない。本発明の活性汚泥液のファウリング物質由来の特性に着目し、その運転再開の基準となる指標を見出した。さらに、その指標となる活性汚泥液の特性を再現性良く評価でき、薬液処理後の活性汚泥処理装置の運転方法を提供する。特に、本発明では、散気のみを行う時間、あるいは、散気を行うとともに通常のろ過運転時のフラックスの40%以下の値に設定されたフラックスで予備ろ過運転を実施する時間を、活性汚泥液の特性に基づいて決定することを特徴とする。活性汚泥液の特性が予め設定した基準(絶対値または変化速度または変化挙動からの予測)を満たした後に、通常のろ過運転時のフラックスの50%~80%の値に設定されたフラックスでの第2の予備ろ過運転による準備運転や、通常のろ過運転を再開することで、より的確に、膜への負担を最小限に維持した状態で運転条件の変更が行えるためである。
【0064】
特性を評価する活性汚泥は、膜モジュール近傍から採取した汚泥が好ましいが、膜分離活性汚泥槽内の他の区画や、膜分離活性汚泥槽と独立の槽との間で汚泥の混合を行う場合は、膜モジュール近傍の汚泥との行き来に必要な時間を考慮に入れ、サンプリング地点を揃えるのであれば、任意の地点から採取した汚泥でモニタリングしても構わない。ここで、膜モジュール近傍の位置を明確化するために、本発明では便宜的に、膜モジュール近傍とは、任意の膜モジュールを構成する部材から1m以内の距離に位置する範囲と定義することとし、膜モジュールの膜間に存在する汚泥や、膜モジュールの鉛直方向1m以内に位置する汚泥などが該当する。
【0065】
ここで、薬液洗浄後に、運転条件を変更する際によりどころとする活性汚泥液の特性としては、活性汚泥液の粘度、ろ紙ろ過液量、ろ紙ろ過液の濁度、毛管吸引時間CST(Capillary Suction Time)、顕微鏡の画像情報、酸素消費速度、発泡力、膜ろ過抵抗、活性汚泥液の遠心上清の有機物濃度(有機物濃度の測定法としては、TOC(Total Organic Carbon)濃度、COD(Chemical Oxygen Demand)濃度、BOD(Biological Oxygen Demand)濃度)などを挙げられる)、活性汚泥液のろ紙ろ過液の有機物濃度、活性汚泥液の膜ろ過液の有機物濃度、汚泥容量指標(Sludge Volume Index, SVI)、活性汚泥液またはその処理水希釈液のSV(活性汚泥沈殿率)、ATP(Adenosine triphosphate)濃度などを挙げることができる。
【0066】
本発明者らが鋭意検討した結果、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度、顕微鏡の画像情報、膜ろ過抵抗(膜片を用いた膜ろ過試験結果から算出される)、ろ紙ろ過液のTOC濃度、膜ろ過液のTOC濃度が、測定精度、測定時間、信頼性、簡便性の観点から、薬液洗浄後の活性汚泥液の膜ろ過特性を判定する際の指標として特に有効であることを見出した。
【0067】
ここで、濁度とは、水の濁りの程度を表すもので、水1リットル中にホルマジン1mg/L含む濁りに相当するものを1度(NTU:Nephelometric Turbidity Unit)として表す。活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度とは、所定量の活性汚泥を、ろ紙でろ過したときに得られるろ液の濁度のことで、評価方法は特に限定されるものではないが、JIS P 3801化学分析用ろ紙5種C(粒子保持能1ミクロン)相当のろ紙を用いて、活性汚泥液を50mlろ過したときに得られるろ液の濁度を好適な指標として例示することができる。
【0068】
本評価手法を薬液洗浄前の膜モジュール近傍の汚泥に適用した場合、例えば、ろ液の濁度が3NTU程度の値が得られるが、薬液洗浄後には、薬液で損傷した汚泥由来成分が活性汚泥液中に放出されるため、濁りによって膜モジュール近傍の汚泥のろ紙ろ過液の濁度が、一旦、例えば、15NTU程度まで増加する。
【0069】
ここで、本発明の方法を用いると、薬液洗浄後の運転の際に、活性汚泥液の混合による濁度成分の希釈効果や活性汚泥による濁度成分の吸着、分解、凝集効果などによる汚泥ろ過特性の改善の挙動をろ紙ろ過液の濁度の低減の挙動から確認できる。薬液洗浄後の運転再開は、プラントに応じて設けられた基準を基に、活性汚泥液の回復がなされた後、通常のろ過運転を再開する。また、ろ過運転の再開前に、通常のろ過運転時のフラックスの50%~80%の値に設定されたフラックスでの準備運転を実施しても良い。
【0070】
ろ紙ろ過液の濁度の基準を設定することで、散気のみ、あるいは散気と共に通常ろ過運転時のフラックスの40%以下の値に設定されたフラックスでのろ過運転する時間や、通常のろ過運転時のフラックスの50%~80%の値に設定されたフラックスで第2の予備ろ過運転での予備運転を継続する時間を、それぞれ汚泥のろ紙ろ過液の濁度の値を元に合理的に決定でき、効率的に通常運転に復帰させることが可能となり、通常運転再開以降の運転安定性が向上する。
【0071】
ろ紙ろ過液の濁度には、ろ紙の孔径(1μm)以下のサイズを有する、薬液損傷で発生したタンパク質や多糖類などのバイオポリマーの存在量を反映した情報が含まれる。これら成分は、膜分離活性汚泥法で用いられる孔径が0.01μm以上、1μm未満の膜をファウリングさせやすい物質である。すなわち、汚泥のろ紙ろ過液の濁度は、測定が簡便であるうえに、精度、信頼性が高い汚泥のろ過特性の判定指標として用いることができ、薬液洗浄後に、運転条件を変更する際に用いる特性として、特に好ましいものとして挙げることができる。
【0072】
顕微鏡の画像情報とは、活性汚泥液を光学顕微鏡で100~400倍(接眼レンズを通して観察した場合)で観察したときに視野に観察される活性汚泥のフロックや解体(微小化した)フロック、浮遊粒子などの水以外の物体の視野に占めると合計面積や、視野に占める前記水以外の物体の、水との境界線の総長さなどの情報である。これらの解析情報は、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度や膜ろ過抵抗と相関があるとともに、微小動物などの微生物の活性度などに関する情報も得られるという長所を有する。また、自動的に一定の頻度で、汚泥を顕微鏡の視野に供給するシステムと、画像解析システムを組み合わせて活用することで、無人で連続的にデータを取得しやすいため、薬液洗浄後に、活性汚泥液の顕微鏡の画像情報を連続測定し、測定結果が予め設定した基準(絶対値または変化速度)を満たした後に、膜分離活性汚泥処理装置を通常のろ過運転に自動復帰する制御システムを備えても良い。
【0073】
なお、活性汚泥の画像情報の取得には、あまり濃度が濃すぎると、視野一面をほとんど汚泥フロックが占め、水中に浮遊する解体(微小化した)フロックや粒子などの観察が困難となるため、観察する際のMLSS濃度は10000mg/L以下とすることが好ましく、8000mg/L以下とするのがより好ましい。汚泥を希釈する際は、膜分離活性汚泥法処理装置の膜モジュールのろ過水を用いるのが、観察に影響を与える浮遊粒子が実質的に存在せず、活性汚泥液と浸透圧が同じであり汚泥中の微生物が浸透圧の変化でショック破裂させないという観点で、最も良い。
【0074】
活性汚泥液の膜ろ過抵抗とは、活性汚泥液を所定の条件で、精密ろ過膜または限外ろ過膜を用いてろ過したときのデータから算出されるろ過抵抗のことで、評価方法は特に限定されるものではないが、小型のセルろ過試験装置に、膜片を装填し、活性汚泥サンプルを注ぎ、定圧または定流量条件下でろ過したときのろ液量を経時的に測定したデータから算出することが可能である。ここで膜としては、孔径が0.01μm以上、1μm未満の膜を用いることが好ましく、膜分離モジュールに用いられているものと同じ仕様の膜を用いることが、モニタリングの信頼性を高くすることができ、特に好ましい。
【0075】
活性汚泥液のろ紙ろ過液のTOC濃度、膜ろ過液のTOC濃度は、前述したろ紙ろ過方法や膜ろ過方法によって活性汚泥液をろ過したろ過水をTOC分析装置に注入し測定することができ、使用する分析装置の仕様などは特に限定されるものではない。膜ろ過液は既に膜ろ過後の液であるためそこには膜のろ過抵抗となる物質はほとんど含まれないが、薬液による汚泥の損傷は、膜の孔径以下の溶解性有機物の濃度上昇から汚泥解体フロックの増加までと様々なスケールで同時に発生するため、膜ろ過液のTOC測定結果からも、連動して発生する汚泥の膜ろ過抵抗物質の増減に関する情報を推察することが可能である。
【0076】
ろ紙ろ過液や膜ろ過水に含まれる有機物濃度を測定するその他手法としては、CODやBODなどもあるが、測定には時間を要する。CODやBODなどを簡易キットで測定する方法もあるが、呈色試薬を用いての比色評価であるため、定量化の精度が低い。本発明の活性汚泥液の特性評価には、ろ紙ろ過液のTOC濃度と膜ろ過液のTOC濃度が好ましく用いられる。
【0077】
測定に用いるTOC分析装置は、科学的に正確な値を短時間(一般的には、分析装置に注入して数分以内)で測定できるため、特に好ましい。なお、活性汚泥液の膜ろ過液のTOC濃度を指標とする場合は、薬液洗浄前の通常運転時や薬液洗浄後のろ過実施時に関しては、膜モジュールの処理水で活性汚泥液の膜ろ過液を代用可能である。また、この場合、連続または間欠的に自動でTOC濃度を測定できるTOC分析装置(例えば、東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社製 TNC-200Sなど)を用いれば、薬液洗浄前後の活性汚泥の特性を、安定に測定でき、特に好ましい。
【0078】
通常のろ過運転を再開する際や、通常のろ過運転時のフラックスの50%~80%の値に設定されたフラックスでのろ過運転に変更する際の、活性汚泥液の特性に関する判定基準は、廃水の種類やプラント毎に設計されたろ過運転時のフラックスの値などに応じて変わるため、プラント現場毎に、条件を確立し、判定基準を設定することが望ましい。具体的には、これらの基準値は、運転立ち上げ後の初期の薬液洗浄の実績を元に現場で確立しても良いし、薬液洗浄を実施した際に、薬液洗浄前後の汚泥のろ過特性を経時的に評価すると共に、通常のろ過運転時のフラックスや、その50%~80%のフラックスでのろ過運転を、複数の膜モジュール系統でタイミングを変えて開始し、ろ過運転後の各系列の差圧の推移を元に効率的に基準を特定し、設定することができる。また、複数の独立評価が可能な膜モジュールを装填した小型の膜分離装置を用いて、実機と同じ廃水を処理し、同様の試験を実施しても良い。小型の膜分離装置とは例えば容量が30L程度である。
【0079】
前述の通り、運転変更する際の、活性汚泥液の特性やその判定基準は、現場で検証・整備することが好ましいが、試験を実施する余裕が無い場合などは、通常のろ過運転時のフラックスが0.5~0.7m/m・dの下水処理プラントにおいて、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の場合は、「ろ紙ろ過液の濁度の値≦薬液洗浄前のろ紙ろ過液の濁度の値+4」(単位:NTU)を満たすこと、顕微鏡の画像情報の場合は、「面積200μm以下のフロックの面積の合計/顕微鏡視野の面積の値≦(薬液洗浄前の面積200μm以下のフロックの面積の合計/顕微鏡視野の面積の値)×1.3」を満たすこと、膜片を用いた膜ろ過試験結果から算出される膜ろ過抵抗の場合は、「膜ろ過抵抗上昇度の値≦薬液洗浄前の膜ろ過抵抗上昇度の値×2.5」を満たすことを、通常のろ過運転再開の好適な基準として挙げることができ、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度、顕微鏡の画像情報、膜ろ過抵抗のいずれの指標を用いても、同様の効果が得られる。
【0080】
また、活性汚泥液の特性の中で、特に活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度は、測定が簡便で、精度も高いため、本指標を用いた場合は、よりきめ細やかな汚泥の監視と運転条件の変更が可能となり、膜の薬液洗浄が完了し、散気を再開する、あるいは、散気を再開するとともに通常のろ過運転時のフラックスの40%以下の値に設定されたフラックスでろ過運転を再開した後、活性汚泥液の特性が予め設定した第2の基準を満たした後に、通常のろ過運転時のフラックスの50%~80%の値に設定されたフラックスでの第2の予備ろ過運転に変更し、活性汚泥液の特性が予め設定した第1の基準を満たした後に、通常のろ過運転を再開することができる。
【0081】
前述の通り、運転変更する際の、活性汚泥液の特性やその判定基準は、現場で検証・整備することが好ましいが、目安としては、通常のろ過運転時のフラックスが0.5~0.7m/m・dの下水処理プラントの場合は、第2の基準として、「ろ紙ろ過液の濁度の値≦薬液洗浄前のろ紙ろ過液の濁度の値+8」(単位:NTU)を、第1の基準として「ろ紙ろ過液の濁度の値≦薬液洗浄前のろ紙ろ過液の濁度の値+4」(単位:NTU)を好適な基準として挙げることができる。
【0082】
薬液洗浄前後の活性汚泥液の特性を測定し、当該特性測定結果に基づいて、通常のろ過運転を再開することは、現場で実施しても良いし、薬液洗浄前後の活性汚泥液の特性を測定した情報を、通信機器によって接続された遠隔地に設けられた判定手段にて判定し、判定結果が予め設定した基準を満たした場合に、通常のろ過運転の再開に関する制御条件を出力し、出力された制御条件に応じて通常のろ過運転の再開を行っても良い。
【0083】
また、コンピューターを、活性汚泥を採取する手段と、採取された活性汚泥液の特性を測定する手段と、活性汚泥液の特性を測定した結果を元に判定する手段と、判定結果に基づいて運転制御条件を出力する手段と、出力された制御条件に応じて通常のろ過運転を再開させる手段として動作させ、管理プログラムを用いて自動的に実施しても良い。
【0084】
本発明の膜分離活性汚泥処理装置は、通常のろ過運転を実施した後から、前記膜モジュール内の分離膜を薬液洗浄し、通常のろ過運転を再開するまでの間、薬液洗浄前後の活性汚泥液の特性を測定した情報を記録するデータ格納部と、遠隔地に前記情報を送信する通信機器と、薬液洗浄前後の活性汚泥液の特性に基づき通常のろ過運転の再開を制御する制御部とを備える。 制御部は、活性汚泥液を採取する手段と、採取された活性汚泥液の特性を測定する手段と、活性汚泥液の特性を測定した結果を元に判定する手段と、判定結果に基づいて運転制御条件を出力する手段と、出力された制御条件に応じて通常のろ過運転を再開させる手段として動作させる一連の管理プログラムである。管理プログラムの一部は遠隔地に設けられた判定手段を介して行うことができ、運転再開が適正に制御可能な膜分離活性汚泥処理装置である。
【実施例
【0085】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。以下に、活性汚泥液中のファウリング物質に由来する特性の測定方法について説明する。
【0086】
<活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の測定>
活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の測定は、次の通り行う。分離膜近傍から活性汚泥液を50ml採取する。5C(孔径1ミクロン)のろ紙(アドバンテック社製)を用いて、活性汚泥液をろ過したときに、5分間で回収されたろ紙ろ過液の濁度をポータブル濁度計(HACH社製2100Q)を用いて測定する。5分間で回収されるろ過液で用いて測定するが、濁度が測定できるろ過液量であれば、特に限定されない。
【0087】
なお、濁度の検量線は、メーカーから市販されているホルマジン標準液(例えば、HACH社製2100Q用StablCAL標準液キット、HACH社製)を用いて作成する。5分間で得られるろ紙ろ過液量がポータブル濁度計の測定に必要な15mLに満たなかった場合は、そのままろ過を継続し、濁度の測定に必要な量を確保した。測定は、液温度25℃で実施する。
【0088】
<フロック領域を示す顕微鏡の画像情報の測定>
活性汚泥液のフロック領域を示す顕微鏡の画像情報の測定は、次の通り行う。分離膜近傍から活性汚泥液を採取し、活性汚泥液5マイクロリットルをスライドガラスにのせ、カバーガラスで試料を覆い、プレパラートをオリンパス社製生物顕微鏡CX41LFのステージに固定し、10倍の対物レンズを使用し、カメラにて画像を取得した。面積200μm以下のフロックを自動判別し、その合計面積を算出可能な、専用に製作した画像解析ソフトを用いて撮影画像を解析し、顕微鏡視野の面積[μm]に対する面積200μm以下のフロックの面積の合計[μm]を算出する。
【0089】
<膜ろ過抵抗の測定>
活性汚泥液の膜ろ過抵抗の評価は、次の通り実施する。分離膜近傍から活性汚泥液を1L程度採取する。ミリポア社製アミコン攪拌式セルUFSC05001を使用し、容器に新品の孔径0.08μmのポリフッ化ビニリデン製の平膜片(東レ株式会社製)を固定した後、容器に活性汚泥液を50ml入れ、450rpmにて攪拌した条件下で定量ポンプにてフラックス(:J)3m/m/dで吸引ろ過を行い、膜ろ過液をセルに循環した。データロガーで記録したろ過時間と吸引圧(0~-25kPaまで測定可能なVALCOM社製低圧圧力センサーを使用)を元に、各時間における膜間差圧:Pを取得する。また、膜ろ過水の粘度:μは水の粘度とほぼ等しいため水の粘度で近似し、水の粘度は、水の粘度の温度依存式に活性汚泥液の温度を入力して算出した。P/(μ×J)の関係から各時間における膜ろ過抵抗:Rを算出し、単位膜面積当たりの累積ろ過水量と当該時点でのろ過抵抗との関係から膜ろ過抵抗上昇度を算出する。
【0090】
<ろ紙ろ過液のTOC濃度と膜ろ過液のTOC濃度の測定方法>
活性汚泥液のろ紙ろ過液のTOC濃度と膜ろ過液のTOC濃度の測定は、次の通り行う。分離膜近傍から活性汚泥液を1L程度採取する。汚泥液のろ紙ろ過液は、活性汚泥液を5C(孔径1ミクロン)のろ紙(アドバンテック社製)でろ過して取得した。膜ろ過液は、ミリポア社製アミコン攪拌式セルUFSC05001に、新品の孔径0.08μmのポリフッ化ビニリデン製の平膜片(東レ株式会社製)を固定した後、容器に活性汚泥液を50ml入れ、450rpmにて攪拌した条件下で定量ポンプにてフラックス(:J)3m/m/dで吸引ろ過を行い取得する。TOC濃度は、株式会社島津製作所製TOC分析装置TOC-Lを用いて測定する。なお、ろ過に用いるろ紙は膜モジュールに搭載された膜を用いることが、実機での状況を反映しやすい観点から好ましい。
【0091】
(実施例1)
図1に示す構成の廃水処理設備にて試験を行った。活性汚泥混合液(MLSS)濃度が、膜モジュール(平膜モジュールを使用)を設置した活性汚泥槽内で約8000mg/Lとなるように汚泥濃度を管理し、膜モジュールに、微細気泡散気管から必要風量にて膜面散気を行いながら、平均フラックス0.7m/dで間欠ろ過運転(9分間ろ過、1分間ろ過停止)を行った。
【0092】
運転開始以降、ろ過差圧(ろ過時-ろ過休止時)が薬液洗浄を行うタイミング(同一フラックスでの運転初期から5kPa増加)となった。ろ過や前記散気手段からの散気を含めて装置を停止し、膜モジュールを活性汚泥槽内に浸漬した状態で、薬液洗浄を行った。
【0093】
薬液としては、有効塩素濃度5000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用い、平膜モジュールのろ過水配管の注入口から液が、平膜の内部から外部へ注入液の半量強が透過するように膜モジュール注入し、約100分間保持し、薬液洗浄を実施した。
【0094】
本テストプラントでは、活性汚泥液の特性として活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度に着目し、膜の薬液洗浄が完了直後に、通常運転の再開は行わなかった。まず、膜の薬液洗浄の際に停止していた散気を再開する予備運転を実施し、第1の基準を満たした後にろ過運転を再開した。実施例1では、膜分離活性汚泥槽の膜モジュール近傍の活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度が、薬液洗浄当日の薬液注入前に測定した膜分離活性汚泥槽の膜モジュール近傍の活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の測定値に4.0を加算した値以下となるまで、ろ過をせずに膜モジュールの下方に設置された散気管からの散気を行い、同時に補助散気管3や無酸素槽5の攪拌機6、活性汚泥槽4からら無酸素槽5に活性汚泥液を返送するためのポンプ12の稼働を再開させて汚泥を混合することとした。薬液洗浄後、膜面散気を開始してからの経過時間ごとに、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の測定方法で、活性汚泥の状態を評価した。
【0095】
図2には、実施例1の態様での汚泥ろ紙ろ過液の濁度[NTU]の変化を示す。薬液洗浄当日の薬液洗浄前(薬液注入開始前)に測定した、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の値は1.8NTUであった。本結果を受け、第1の基準は、膜分離活性汚泥槽の膜モジュール近傍の活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度が1.8+4.0=5.8[NTU]とできた。よって、通常運転(平均フラックス0.7m/dでのろ過運転)の再開は5.8[NTU]以下とし、膜分離活性汚泥処理装置の膜の薬液洗浄後の運転方法を管理した。
【0096】
図2に示すように、活性汚泥槽の膜モジュール近傍の活性汚泥液を定期的に採取し、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の経時変化を評価した結果、上記汚泥混合を開始して約3時間経過時点で、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度が5.2NTUとなり、通常運転の再開基準(5.8NTU以下)を満たしたため、通常運転を再開した。その結果、通常運転再開以降、30日経過した時点でも、ろ過差圧が薬液洗浄を行うタイミングに到達せず、安定な運転を長期間継続できた。
【0097】
なお、膜分離活性汚泥法の活性汚泥液の特性として、最も一般的な活性汚泥液のろ紙ろ過液量で評価した結果を図3に示す。活性汚泥液のろ紙ろ過液量での評価結果からも活性汚泥液の膜ろ過特性に関する情報は得られたが、値の変動が大きいため、膜ろ過特性の経時変化については、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度に着目した方が、精度の高い情報が得られることが分かった。
【0098】
(比較例1)
実施例1と同じ設備で、同様の条件でろ過運転を行った後、薬液洗浄を行うタイミングで、実施例1と同条件で薬液洗浄を実施した直後に、汚泥の混合を再開した。予備運転は行わなかった。第1の基準は5.8[NTU]であったが、10分後に、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の値が12.8[NTU]であったときに膜モジュールの膜面散気を再開するとともに平均フラックス0.7m/dでのろ過運転を再開した。同時に、ポンプ12を稼働し汚泥返送を行うと共に、無酸素槽5の攪拌6および膜分離活性汚泥槽と同一槽内に設置の補助散気管3からの散気を再開し、廃水処理を再開した。運転を再開後、急激に膜が詰まりはじめ、運転再開後、約16時間経過した時点で、ろ過差圧が薬液洗浄を行うタイミングに達した。
【0099】
(比較例2)
実施例1と同じ設備で、同様の条件でろ過運転を行った後、薬液洗浄を行うタイミングで、実施例1と同条件で薬液洗浄を実施した直後に、汚泥の混合を再開した。予備運転は行わなかった。第1の基準は5.8[NTU]であったが、約1時間経過し活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の値が9.5[NTU]となった時点で平均フラックス0.7m/dでろ過運転を再開した。運転を再開し、約1日経過した時点で、ろ過差圧が薬液洗浄を行うタイミングに達した。
【0100】
(比較例3)
実施例1と同じ設備で、同様の条件でろ過運転を行った後、薬液洗浄を行うタイミングで、実施例1と同条件で薬液洗浄を実施した後、汚泥の混合を再開するとともに平均フラックス0.2m/d(29%)でろ過運転を再開した。膜面散気を伴う予備運転は実施しなかった。第1の基準は5.8[NTU]であったが、約2.5時間経過し、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の値が6.4[NTU]となった時点で、ろ過フラックスを平均フラックス0.2m/dから平均フラックス0.7m/dに変更し、通常運転を再開させた。平均フラックス0.7m/dでのろ過開始直後から僅かにろ過差圧が上昇し、その影響が尾を引き、通常運転再開後5日経過時点で、ろ過差圧が薬液洗浄を行うタイミングに達した。
【0101】
(実施例2)
単一水槽に補助散気管(微細気泡)、膜モジュール用散気管(粗泡)を設置し、膜モジュール用散気管の上部に膜モジュールを設置して、廃水を処理した。膜モジュールは、東レ(株)製の膜分離活性汚泥処理装置を用いた。活性汚泥混合液(MLSS)濃度は、槽内で約10000mg/Lとなるように汚泥濃度を管理し、膜モジュール用散気管から必要風量にて膜面散気を行いながら、平均フラックス0.6m/dでろ過運転を行った。補助散気管からは、槽内の溶存酸素濃度の値が1mg/L以上になるように、必要に応じて散気を実施した。ろ過差圧(ろ過時-ろ過休止時)が薬液洗浄を行うタイミング(同一フラックスでの運転初期から5kPa増加)となったら、膜ろ過、補助散気管、膜モジュール用散気管からの散気を含めて装置を停止した。
【0102】
膜モジュールを活性汚泥槽内に浸漬した状態で、薬液洗浄を行った。薬液として濃度3000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用い、平膜モジュールのろ過水配管の注入口から液が、平膜の内部から外部へ注入液の半量が透過するように膜モジュール注入し、約90分間保持し、薬液洗浄を実施した。
【0103】
実施例2では、活性汚泥液の特性として膜ろ過抵抗に着目し、薬液洗浄完了後、膜分離槽の活性汚泥液を用いて膜ろ過試験を実施した。膜ろ過抵抗上昇度(ろ過抵抗/単位膜面積当たりのろ過水量)の値が、薬液洗浄前に測定した膜ろ過抵抗上昇度の値の2.5倍を下回るまで、予備運転を行った。ろ過及び廃水の供給を行わないで、膜モジュール用散気管および補助散気管からの散気を実施して汚泥を混合することを主目的とした予備運転を行い、膜ろ過抵抗上昇度の値が、薬液洗浄前に測定した膜ろ過抵抗上昇度の値の2.5倍を下回ったのを見届けてから通常運転(平均フラックス0.6m/dでのろ過運転)を再開した。
【0104】
図4に、薬液洗浄後から予備運転中の活性汚泥液の膜ろ過抵抗の上昇度を示す一例を示す。薬液洗浄直後は、ろ過抵抗上昇度は3700[×1010-2]であった。予備運転を実施し、膜面散気を再開してからの経過時間ごとに、膜近傍から採取した活性汚泥液の特性を評価し、薬液洗浄後の運転を管理した。薬液洗浄前に採取した汚泥に対して測定した膜ろ過抵抗上昇度の値は850[×1010-2]であった。薬液洗浄後は、膜ろ過抵抗上昇度の値が850×2.5=2125を第1の基準とし、安全サイドに2000[×1010-2]を下回ったのち、ろ過を再開した。
【0105】
薬液洗浄後に上昇した値は、ろ過及び廃水の供給を行わないで膜モジュール用散気管および補助散気管からの散気を実施して汚泥を混合することを主目的とした予備運転により、薬液洗浄完了後約5時間を経過した時点に採取した汚泥の膜ろ過抵抗上昇度が1700[×1010-2])となった。第1の基準を満たしたことを確認後、通常運転を再開した。運転再開以降、2ヶ月経過した時点でもろ過差圧が薬液洗浄を行うタイミングに到達せず、安定運転を継続可能であった。
【0106】
(実施例3)
単一水槽に補助散気管(微細気泡)、膜モジュール用散気管(粗泡)を設置し、膜モジュール用散気管の上部に膜モジュールを設置して、廃水を処理した。活性汚泥混合液(MLSS)濃度は、槽内で約8000mg/Lとなるように汚泥濃度を管理し、膜モジュール用散気管から必要風量にて膜面散気を行いながら、平均フラックス0.6m/dで間欠ろ過運転を行った。補助散気管からは、槽内の溶存酸素濃度の値が1mg/L以上になるように、必要に応じて散気を実施した。ろ過差圧(ろ過時-ろ過休止時)が薬液洗浄を行うタイミング(同一フラックスでの運転初期から5kPa増加)となったら、膜ろ過、補助散気管、膜モジュール用散気管からの散気を含めて装置を停止した。
【0107】
膜モジュールを活性汚泥槽内に浸漬した状態で、薬液洗浄を行った。薬液として濃度3000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用い、平膜モジュールのろ過水配管の注入口から液が、平膜の内部から外部へ注入液の半量強が透過するように膜モジュール注入し、約60分間保持し、薬液洗浄を実施した。
【0108】
実施例3では、薬液洗浄完了後から、膜分離槽の活性汚泥液を用いて顕微鏡の画像情報を解析し、活性汚泥液の状態をモニターした。第1の基準としては、顕微鏡視野の面積に占める面積200μm以下のフロックの面積の合計の割合(顕微鏡視野中の面積200μm以下のフロックの面積の合計÷顕微鏡視野の全面積)が、薬液洗浄前の1.3倍の値を適用した。フロックの面積割合が第1の基準と同じかそれ以下となるまで、ろ過及び廃水の供給を行わないで、膜モジュール用散気管および補助散気管からの散気を開始して汚泥を混合した。顕微鏡視野に占める面積200μm以下のフロックの割合が第1の基準を下回ったことを見届けてから通常運転(平均フラックス0.6m/dでのろ過運転)を再開した。具体的には、薬液洗浄前の値は1.6%であったため、第1の基準は2.1%とし、2.1%以下を満たした後に、通常運転を再開した。
【0109】
図5に薬液洗浄後、膜面散気を開始してからの時間とフロックの割合(%)の関係を示す。図5中(a)、(b)、(c)の各時間での顕微鏡の画像情報が示されている。薬液洗浄後の(b)において、黒色のフラックスXが増加し、フロックの割合が4%と高くなっていることが分かる。活性汚泥液の評価特性として、顕微鏡の画像情報を基に、薬液洗浄後の運転を好適に管理した。薬液洗浄後に予備運転を実施し、第1の基準を満たした後、ろ過運転を再開する運用を継続することで、薬液洗浄後に通常運転を再開した際に短期間で再び薬液洗浄が必要となる事態を継続して回避することができた。
【0110】
(実施例4)
図1に示す構成の廃水処理設備にて試験を行った。活性汚泥混合液(MLSS)濃度が、膜モジュール(平膜モジュールを使用)を設置した活性汚泥槽内で約8000mg/Lとなるように汚泥濃度を管理し、膜モジュールに、粗泡散気管から必要風量にて膜面散気を行いながら、平均フラックス0.7m/dで間欠ろ過運転を行った。運転開始以降、ろ過差圧(ろ過時-ろ過休止時)が薬液洗浄を行うタイミング(同一フラックスでの運転初期から5kPa増加)となったら、前記散気手段からの散気を含めて装置を停止した。
【0111】
膜モジュールを活性汚泥槽内に浸漬した状態で、薬液洗浄を行った。薬液として濃度5000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用い、平膜モジュールのろ過水配管の注入口から液が、平膜の内部から外部へ注入液の一部が透過するように膜モジュール注入し、約2時間保持し、薬液洗浄を実施した。実施例4では、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度に着目した。まず薬液洗浄後にろ過を停止した状態で膜モジュールの下方に配置された散気手段からの膜面散気のみの予備運転を行った。薬液洗浄当日の薬液注入前に測定した濁度は、2[NTU]であったので、第2の基準として、8を加算した値以下となったのを見届けてから、通常のろ過運転時の50%~80%のフラックスに相当する平均フラックス0.4m/d(通常運転時のフラックスの66%に相当)での第2の予備ろ過運転を行う準備運転を開始することとした。薬液洗浄当日の薬液注入前に測定した濁度の値は2[NTU]であり、これに4を加算した第1の基準以下となったのを見届けてから、通常運転を再開することとした。なお、第1の基準と第2の基準は、活性汚泥液の回復に適切となる所定値を設定している。
【0112】
図6に、膜分離活性汚泥槽の膜モジュール近傍の活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度と薬液洗浄後、膜面散気を開始してからの時間との関係を示す。実施例4において、薬液洗浄を行うタイミングとなったため、前述の条件で薬液洗浄を実施した後、ろ過を停止した状態で、膜モジュールの下方に配置された散気手段からの膜面散気を行うと共に、ポンプ12を稼働し汚泥返送を行い、更に、無酸素槽5の攪拌6および膜分離活性汚泥槽と同一槽内に設置の補助散気管3からの散気を再開した。薬液洗浄当日に、薬液洗浄前に測定したところ、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の値は2NTUであった。そこで、膜分離活性汚泥槽の膜モジュール近傍の活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度が10NTU以下となることを第2基準に設定し、第2基準を満たした後に、通常のろ過運転時の50%~80%のフラックスに相当する平均フラックス0.4m/dでのろ過を開始し、膜分離活性汚泥槽の膜モジュール近傍の活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度が6NTU以下となることを第1基準に設定し、第1基準を満たした後に、通常運転(平均フラックス0.7m/dでのろ過運転)を再開するように、膜分離活性汚泥処理装置の膜の薬液洗浄後の運転方法を管理した。
【0113】
活性汚泥槽の膜モジュール近傍の活性汚泥液を定期的に採取し、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度の経時変化を評価した結果を示す、上記汚泥混合を開始して約90分経過時点で、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度が9.4NTUとなり、第2基準(10NTU以下)を満たしたため、通常のろ過運転時の50%~80%のフラックスに相当する平均フラックス0.4m/dでの間欠ろ過を開始した。更に、約4時間が経過した時点で、活性汚泥液のろ紙ろ過液の濁度が4.7NTUとなり、第1基準を満たしたため、通常運転を再開した。その結果、通常運転再開以降、30日経過した時点でも、ろ過差圧が薬液洗浄を行うタイミングに到達せず、安定運転を継続可能なことを確認した。
【符号の説明】
【0114】
1:膜モジュール
2:膜モジュール用散気管
3:補助散気管
4:活性汚泥槽
5:膜モジュールを浸漬するための活性汚泥槽以外の処理槽(無酸素槽など)
6:攪拌機
7:薬液タンク
8:被処理水供給ライン
9:透過水排出ライン
10:汚泥返送ライン
11:汚泥排出ライン
12:ポンプ
13:補助散気管の空気供給装置
14:膜モジュール用散気管の空気供給装置
15:汚泥供給ライン
S :気泡
X :面積200μm以下のフロック領域
【要約】
本発明の目的は、膜の薬液洗浄後の活性汚泥液の特性を元に、活性汚泥液のファウリングポテンシャルを把握する具体的な方法を提供し、活性汚泥液の膜ろ過特性の回復度を的確に把握しながら合理的に膜の薬液洗浄後の好適な運転再開方法を提供することにある。そして、本発明を適用することで、従来に比べて薬液洗浄後の膜間差圧の上昇をより効果的に抑制できるようにし、膜の洗浄頻度の低減や洗浄用の薬品使用量の低減につなげ、更には、膜寿命の延命化を図ることができるようにすることを目的とする。
膜の薬液洗浄が完了後、活性汚泥液の特性に基づいて、通常のろ過運転を再開するまでの運転条件を制御することを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置の膜の薬液洗浄後の運転方法に関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6