(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】エレベーター装置及び位置特定方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
B66B5/00 G
(21)【出願番号】P 2022574325
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2021007686
(87)【国際公開番号】W WO2022185372
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2022-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮野 一輝
(72)【発明者】
【氏名】宮城 惇矢
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-140289(JP,A)
【文献】特開2020-007078(JP,A)
【文献】特開2012-250829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を移動するかごと、
前記昇降路に前記かごを吊り下げるロープと、
前記ロープに付された識別体と、
前記ロープが巻き掛けられた滑車と、
前記かごの位置を検出する第1検出手段と、
前記識別体が前記かごに対して特定の位置に配置されたことを検出する第2検出手段と、
第1位置及び第2位置に基づいて、前記滑車の位置を算出する算出手段と、
を備え、
前記第1位置は、前記識別体が前記特定の位置に配置されたことが前記第2検出手段によって検出された時に前記第1検出手段によって検出された位置であり、
前記第2位置は、前記かごが前記第1位置から上方又は下方に移動することによって前記識別体が前記滑車を通過した後に、前記識別体が前記特定の位置に配置されたことが前記第2検出手段によって検出された時に前記第1検出手段によって検出された位置であるエレベーター装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記第1検出手段が検出する位置と前記特定の位置との距離にも基づいて、前記滑車の位置を算出する請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記識別体が前記特定の位置に配置されたことが前記第2検出手段によって検出された時の前記識別体の水平方向の位置に基づいて、前記かごが前記第1位置から移動した後に前記識別体が前記滑車を通過したか否かを判定する判定手段を更に備えた請求項1又は請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記識別体が前記特定の位置に配置されたことが前記第2検出手段によって検出された時の前記かごの移動方向と前記識別体の移動方向とに基づいて、前記かごが前記第1位置から移動した後に前記識別体が前記滑車を通過したか否かを判定する判定手段を更に備えた請求項1又は請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項5】
前記かごに設けられたカメラを備え、
前記第2検出手段は、前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記識別体が前記特定の位置に配置されたことを検出する請求項1から請求項4の何れか一項に記載のエレベーター装置。
【請求項6】
昇降路を移動するかごと、
前記昇降路に前記かごを吊り下げるロープと、
前記ロープが巻き掛けられた滑車と、
前記かごの位置を検出する検出手段と、
を備えたエレベーター装置において、前記滑車の位置を特定するための方法であって、
前記ロープに識別体を付すステップと、
前記ロープに付された前記識別体が前記かごに対して特定の位置に配置された時に前記検出手段によって検出された位置を第1位置として取得するステップと、
前記かごを前記第1位置から上方又は下方に移動させ、前記識別体に前記滑車を通過させるステップと、
前記識別体が前記滑車を通過した後、前記識別体が前記特定の位置に配置された時に前記検出手段によって検出された位置を第2位置として取得するステップと、
取得した前記第1位置及び前記第2位置に基づいて、前記滑車の位置を算出するステップと、
を備えた位置特定方法。
【請求項7】
前記滑車の位置は、前記検出手段が検出する位置と前記特定の位置との距離にも基づいて算出される請求項6に記載の位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーター装置と、滑車が取り付けられている位置を特定するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーター装置には様々な滑車が備えられる。エレベーター装置を保守する場合に、滑車が取り付けられている位置の情報が必要になることがある。
【0003】
一例として、昇降路の内部の3次元グラフィックスを作成する場合に、当該情報が必要になる。
【0004】
他の例として、特許文献1に、ロープの破断部を検出するための装置が記載されている。特許文献1に記載された装置では、ロープの長さは既知として扱われている。ロープの長さを求めるためには、滑車が取り付けられている位置の情報が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来では、保守員が、メジャーを用いて、滑車が取り付けられている位置を測定していた。しかし、滑車は、昇降路の頂部等、手の届かない場所に設置されていることが多い。このため、当該測定に困難を伴うことがあった。
【0007】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、滑車が取り付けられている位置を容易に特定できるエレベーター装置を提供することである。本開示の他の目的は、滑車が取り付けられている位置を容易に特定できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るエレベーター装置は、昇降路を移動するかごと、昇降路にかごを吊り下げるロープと、ロープに付された識別体と、ロープが巻き掛けられた滑車と、かごの位置を検出する第1検出手段と、識別体がかごに対して特定の位置に配置されたことを検出する第2検出手段と、第1位置及び第2位置に基づいて、滑車の位置を算出する算出手段と、を備える。第1位置は、識別体が特定の位置に配置されたことが第2検出手段によって検出された時に第1検出手段によって検出された位置である。第2位置は、かごが第1位置から上方又は下方に移動することによって識別体が滑車を通過した後に、識別体が特定の位置に配置されたことが第2検出手段によって検出された時に第1検出手段によって検出された位置である。
【0009】
本開示に係る位置特定方法は、昇降路を移動するかごと、昇降路にかごを吊り下げるロープと、ロープが巻き掛けられた滑車と、かごの位置を検出する検出手段と、を備えたエレベーター装置において、滑車の位置を特定するための方法である。当該方法は、ロープに識別体を付すステップと、ロープに付された識別体がかごに対して特定の位置に配置された時に検出手段によって検出された位置を第1位置として取得するステップと、かごを第1位置から上方又は下方に移動させ、識別体に滑車を通過させるステップと、識別体が滑車を通過した後、識別体が特定の位置に配置された時に検出手段によって検出された位置を第2位置として取得するステップと、取得した第1位置及び第2位置に基づいて、滑車の位置を算出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、滑車が取り付けられている位置を容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1におけるエレベーター装置の例を示す図である。
【
図4】滑車の位置を特定するために保守員が行う手順を示すフローチャートである。
【
図5】滑車の位置を特定する方法を説明するための図である。
【
図6】保守端末の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】エレベーター装置の他の例を説明するための図である。
【
図8】保守端末のハードウェア資源の例を示す図である。
【
図9】保守端末のハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるエレベーター装置の例を示す図である。エレベーター装置は、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。一例として、ロープ4は、ワイヤロープである。
【0014】
図1は、2:1ローピング方式のエレベーター装置を一例として示す。
図1に示す例では、巻上機5が昇降路3の頂部に設けられる。巻上機5は、駆動綱車6を備える。また、かご1は、吊り車7及び8を備える。つり合いおもり2は、吊り車9を備える。
【0015】
ロープ4の一方の端部4aは、昇降路3の頂部に支持される。ロープ4は、端部4aから下方に延び、吊り車8、吊り車7、駆動綱車6、及び吊り車9に順次巻き掛けられる。ロープ4のもう一方の端部4bは、昇降路3の頂部に支持される。
図1に示す例において、駆動綱車6は、ロープ4が巻き掛けられた滑車Aの一例である。
【0016】
図2は、エレベーター装置の他の例を示す図である。
図2に示す例は、エレベーター装置が返し車10及び11を備える点で
図1に示す例と相違する。また、巻上機5は、昇降路3のピットに設けられる。
【0017】
返し車10は、昇降路3の頂部に回転可能に設けられる。返し車11は、昇降路3の頂部に回転可能に設けられる。
図2に示す例では、ロープ4は、端部4aから下方に延び、吊り車8、吊り車7、返し車11、駆動綱車6、返し車10、及び吊り車9に順次巻き掛けられる。返し車10及び11、並びに駆動綱車6は、ロープ4が巻き掛けられた滑車Aの一例である。
【0018】
かご1は、駆動綱車6の回転に応じて移動する。即ち、巻上機5は、かご1を駆動する。制御装置12は、巻上機5を制御する。かご1の移動は、制御装置12によって制御される。本実施の形態に示す例では、巻上機5及び制御装置12は昇降路3に設置される。巻上機5及び制御装置12は、昇降路3の上方の機械室に設置されても良い。
【0019】
通信装置13は、制御装置12に接続される。通信装置13は、エレベーター装置が外部と通信するための装置である。通信装置13は、ネットワーク14を介して外部と通信する。当該外部には、本エレベーター装置を監視する遠隔の監視センター等が含まれる。
【0020】
かご1に、カメラ15が設けられる。
図1は、カメラ15がかご1の下部に設けられる例を示す。かご1に電球用のソケットが備えられている場合、カメラ15への電力の供給は、このソケットから行われても良い。カメラ15は、昇降路3の内部を撮影する。ロープ4のうちかご1に隣接する部分もカメラ15によって撮影される。
【0021】
巻上機5は、エンコーダ16(
図1及び
図2では図示せず)を備える。エンコーダ16は、駆動綱車6の回転角を検出する。エンコーダ16は、検出した回転角の情報を出力する。エンコーダ16の機能は、調速機(図示せず)が備えても良い。
【0022】
図1は、かご1が停止する乗場17に、エレベーターの保守員が保守端末18を持ち込んだ例を示す。保守端末18は、例えばスマートフォンである。保守端末18は、タブレット型の端末でも良い。保守端末18は、保守のために設計された専用の端末でも良い。
【0023】
図3は、保守端末18の機能を説明するための図である。保守端末18は、表示器20、記憶部21、画像解析部22、検出部23、検出部24、算出部25、及び表示制御部26を備える。
【0024】
以下に、
図4から
図6も参照し、滑車Aが取り付けられている位置を特定する手順について、詳しく説明する。以下においては、滑車Aが取り付けられている位置のことを単に「滑車Aの位置」ともいう。本実施の形態に示す例では、かご1は上下にしか移動しない。したがって、かご1の「位置」は、かご1がいる「高さ」と同義である。滑車Aの「位置」は、滑車Aがある「高さ」と同義である。
【0025】
図4は、滑車Aの位置を特定するために保守員が行う手順を示すフローチャートである。
図5は、滑車Aの位置を特定する方法を説明するための図である。保守員は、先ず、ロープ4に識別体19を付す(S101)。S101において、保守員は、ロープ4に塗料を塗っても良い。保守員は、薄い部材をロープ4に取り付けても良い。保守員は、シール状の部材をロープ4に貼り付けても良い。
【0026】
次に、第1位置の情報を取得するための処理が行われる。第1位置は、識別体19がかご1に対して特定の位置(高さ)に配置された時のかご1の位置である。以下においては、識別体19に関して単に「位置」と記載された場合は、識別体19が存在する高さを意味するものとする。
図5に示す例では、上記特定の位置は、かご1の位置と同じ位置である。
【0027】
図6は、保守端末18の動作例を示すフローチャートである。保守端末18では、画像解析部22が、カメラ15によって撮影された画像を解析する(S201)。検出部23は、画像解析部22による解析結果に基づいて、識別体19がかご1に対して特定の位置に配置されたことを検出する(S202のYes)。
図5に示す例では、検出部23は、識別体19がかご1の位置と同じ位置に配置されたことを検出する。
図5(a)は、識別体19とかご1との双方が位置X0に配置された状態を示す。
【0028】
検出部24は、エンコーダ16からの出力信号に基づいて、かご1の位置を検出する。S202でYesと判定されると、その時に検出部24によって検出されたかご1の位置が第1位置として記憶部21に記憶される(S203)。
図5に示す例では、位置X0が第1位置として記憶部21に記憶される。
【0029】
次に、保守員は、ロープ4に付された識別体19が滑車Aを通過するように、かご1を第1位置から上方又は下方に移動させる(S102)。S102におけるかご1の移動は、記憶部21に第1位置の情報が記憶された後に保守端末18から出力される制御信号に基づいて、自動的に開始されても良い。
図5に示す例では、かご1は、位置X0から上方に移動する。S102でかご1の移動が開始されることにより、識別体19は滑車Aを通過する。
【0030】
次に、第2位置の情報を取得するための処理が行われる。第2位置は、識別体19が滑車Aを通過した後に、識別体19がかご1に対して特定の位置に再び配置された時のかご1の位置である。
【0031】
かご1が第1位置から移動してからも、画像解析部22は、カメラ15によって撮影された画像を解析する(S204)。検出部23は、画像解析部22による解析結果に基づいて、識別体19がかご1に対して特定の位置に配置されたこと、即ちかご1の位置と同じ位置に配置されたことを検出する(S205のYes)。
【0032】
図5(b)は、かご1が位置X0から上方への移動を開始した後に、識別体19とかご1との双方が位置X1に配置された状態を示す。S205でYesと判定されると、その時に検出部24によって検出されたかご1の位置が第2位置として記憶部21に記憶される(S206)。
図5に示す例では、位置X1が第2位置として記憶部21に記憶される。
【0033】
第1位置及び第2位置を取得するための処理が終了すると、算出部25は、取得された第1位置及び第2位置に基づいて、滑車Aの位置を算出する(S207)。滑車Aの位置を位置Xとすると、算出部25は、位置Xから識別体19が移動した距離L1に関する1次方程式を用いて、位置Xを算出する。
X-X1=2(X1-X0)-(X-X0) ‥(1)
【0034】
識別体19はロープ4に付されている。このため、2:1ローピング方式のエレベーター装置では、識別体19が移動する距離L2は、かご1が移動する距離の2倍である。識別体19は、かご1が第1位置から第2位置まで移動する間に、2(X1-X0)だけ移動する。即ち、
図5(c)に示す距離L2は、2(X1-X0)に等しい。
【0035】
表示制御部26は、算出部25によって算出された滑車Aの位置Xを表示器20に表示する(S208)。保守員は、表示器20を見て、滑車Aの位置Xを確認できる(S103)。
【0036】
本実施の形態に示す例であれば、ロープ4に付された識別体19が滑車Aを通過するようにかご1を移動させることにより、滑車Aの位置Xを容易に特定できる。保守員は、滑車Aの位置をメジャー等を用いて実際に測定する必要はない。このため、保守員の負担を軽減できる。
【0037】
本実施の形態に示す例では、検出部23は、カメラ15によって撮影された画像に基づいて、識別体19の位置を検出する。エレベーター装置に保守用のカメラが予め備えられていれば、保守員は、滑車Aの位置を特定するためにだけにカメラを用意する必要はない。
【0038】
以下に、本エレベーター装置が採用可能な他の機能について説明する。エレベーター装置は、以下に示す複数の機能を組み合わせて採用しても良い。
【0039】
図7は、エレベーター装置の他の例を説明するための図である。
図7に示す例では、かご1にカメラ15が設けられていない。かご1には、識別体19を検出するためのセンサ28がカメラ15の代わりに設けられている。センサ28は、例えばレーザセンサである。
【0040】
検出部23は、センサ28からの出力信号に基づいて、識別体19がかご1に対して特定の位置に配置されたことを検出する。
図7に示す例では、センサ28は、検出部24が検出する位置より距離Hだけ高い位置で識別体19を検出する。即ち、距離Hは、検出部24が検出する位置と上記特定の位置との鉛直方向の距離である。
【0041】
図7に示す例では、検出部24が検出する位置より距離Hだけ高い位置に識別体19が配置されたことを検出部23が検出すると、S202でYesと判定される。
図7(a)は、かご1が位置X0に配置され、識別体19が位置(X0+H)に配置された状態を示す。
【0042】
S202でYesと判定されると、その時に検出部24によって検出されたかご1の位置が第1位置として記憶部21に記憶される(S203)。
図7に示す例では、位置X0が第1位置として記憶部21に記憶される。
【0043】
その後、かご1が位置X0から上方に移動することにより、識別体19が滑車Aを通過する。識別体19が滑車Aを通過した後に、検出部24が検出する位置より距離Hだけ高い位置に識別体19が配置されたことを検出部23が再び検出すると、S205でYesと判定される。
【0044】
図7(b)は、識別体19が滑車Aを通過した後に、かご1が位置X1に配置され、識別体19が位置(X1+H)に配置された状態を示す。即ち、
図7(b)は、S205でYesと判定される状態を示す。S205でYesと判定されると、その時に検出部24によって検出されたかご1の位置が第2位置として記憶部21に記憶される(S206)。
図7に示す例では、位置X1が第2位置として記憶部21に記憶される。
【0045】
上述したように、識別体19が移動する距離L2は、かご1が移動する距離の2倍である。
図7に示す例でも、かご1は位置X0から位置X1まで移動している。このため、識別体19は、かご1が第1位置から第2位置まで移動する間に、2(X1-X0)だけ移動する。位置Xから識別体19が移動した距離L1に関する1次方程式は、次のように表される。
(X-(X1+H))=2(X1-X0)-(X-(X0+H)) ‥(2)
式1は、式2においてH=0としたものである。
【0046】
算出部25は、S207において、記憶部21に記憶された第1位置及び第2位置に加え、距離Hにも基づいて滑車Aの位置Xを算出する。距離Hは、予め設定されていても良いし、位置Xを特定する際に保守員によって入力されても良い。
【0047】
次に、保守端末18が判定部27を更に備える例について説明する。判定部27は、かご1が第1位置から移動した後に、識別体19が滑車Aを通過したか否かを判定する。例えば、
図6に示す一連の動作を自動的に行う場合は、識別体19が滑車Aを通過したことが判定部27によって判定された後に、第2位置を記憶するS206の処理が実行されることが好ましい。
【0048】
一例として、判定部27は、識別体19がかご1に対して特定の位置に配置されたことが検出部23によって検出された時の識別体19の水平方向の位置に基づいて、上記判定を行う。
【0049】
図5に示すように、水平なZ軸が設定される場合を考える。ロープ4のうち、吊り車7から滑車Aに至る部分のZ軸座標はz1である。ロープ4のうち、滑車Aから吊り車9に至る部分のZ軸座標はz2である。ロープ4のうち、吊り車9から端部4bに至る部分のZ軸座標はz3である。
【0050】
図5に示す例では、S202でYesと判定された時の識別体19のZ軸座標はz1である。かご1が位置X0から上方に移動して識別体19が滑車Aを通過すると、識別体19が吊り車9を通過するまでは、識別体19のZ軸座標はz2となる。このため、S205でYesと判定された時の識別体19のZ軸座標がz2であれば、判定部27は識別体19が滑車Aを通過したことを判定する。識別体19が滑車Aを通過したことが判定部27によって判定されると、S206の処理に進み、位置X1が第2位置として記憶部21に記憶される。
【0051】
他の例として、判定部27は、識別体19がかご1に対して特定の位置に配置されたことが検出部23によって検出された時のかご1の移動方向と識別体19の移動方向とに基づいて、上記判定を行っても良い。
【0052】
図5に示す例では、かご1が位置X0から上方への移動を開始した直後は、識別体19も上方に移動する。そして、識別体19が滑車Aを通過すると、識別体19が吊り車9を通過するまでは、識別体19は下方に移動する。このため、S205でYesと判定された時の識別体19の移動方向が下方であれば、判定部27は識別体19が滑車Aを通過したことを判定する。即ち、判定部27は、S205でYesと判定された時の識別体19の移動方向が、かご1が第1位置からの移動を開始した直後の識別体19の移動方向と逆であれば、識別体19が滑車Aを通過したことを判定する。
【0053】
本実施の形態では、保守員が携帯する保守端末18が、滑車Aが取り付けられている位置を特定するための装置である例について説明した。保守員は、保守端末18を様々な現場で使用することができる。
【0054】
他の例として、保守端末18が有する機能と同様の機能を有する装置がエレベーター装置に備えられても良い。一例として、当該装置は、かご1の上に常設される。保守端末18が有する機能と同様の機能が制御装置12に備えられても良い。他の例として、遠隔の監視センターに、保守端末18が有する機能と同様の機能が備えられても良い。かかる場合、通信装置13は、カメラ15によって撮影された画像のデータをネットワーク14を介して監視センターに送信する。
【0055】
本実施の形態において、符号21~27に示す各部は、保守端末18が有する機能を示す。
図8は、保守端末18のハードウェア資源の例を示す図である。保守端末18は、ハードウェア資源として、プロセッサ31とメモリ32とを含む処理回路30を備える。記憶部21の機能はメモリ32によって実現される。保守端末18は、メモリ32に記憶されたプログラムをプロセッサ31によって実行することにより、符号22~27に示す各部の機能を実現する。メモリ32として、半導体メモリ等が採用できる。
【0056】
図9は、保守端末18のハードウェア資源の他の例を示す図である。
図9に示す例では、保守端末18は、プロセッサ31、メモリ32、及び専用ハードウェア33を含む処理回路30を備える。
図9は、保守端末18が有する機能の一部を専用ハードウェア33によって実現する例を示す。保守端末18が有する機能の全部を専用ハードウェア33によって実現しても良い。専用ハードウェア33として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示に係る位置特定方法は、滑車を備えたエレベーター装置で利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 かご、 2 つり合いおもり、 3 昇降路、 4 ロープ、 4a~4b 端部、 5 巻上機、 6 駆動綱車、 7~9 吊り車、 10~11 返し車、 12 制御装置、 13 通信装置、 14 ネットワーク、 15 カメラ、 16 エンコーダ、 17 乗場、 18 保守端末、 19 識別体、 20 表示器、 21 記憶部、 22 画像解析部、 23 検出部、 24 検出部、 25 算出部、 26 表示制御部、 27 判定部、 28 センサ、 30 処理回路、 31 プロセッサ、 32 メモリ、 33 専用ハードウェア