(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】切削システムおよび転削工具の状態判定方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20230411BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20230411BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B23Q17/09 A
B23Q17/22 C
B23C9/00 Z
(21)【出願番号】P 2023500445
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2022033386
【審査請求日】2023-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 雄介
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7124993(JP,B1)
【文献】特開2021-137962(JP,A)
【文献】国際公開第2021/049338(WO,A1)
【文献】特開2019-209420(JP,A)
【文献】特表2019-534795(JP,A)
【文献】米国特許第6363821(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09
B23Q 17/22
B23C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切削物を切削するための刃部が設けられた第1端部、および、工作機械に取り付けられる第2端部を有するシャフト部を含む転削工具と、
前記シャフト部に取り付けられた複数のセンサと、
前記複数のセンサからのセンサ情報に基づいて、前記転削工具の状態を判定する管理装置とを備え、
前記複数のセンサは、
少なくとも1つの加速度センサと、
少なくとも1つの歪センサとを含み、
前記管理装置は、
前記少なくとも1つの加速度センサからのセンサ情報に基づいて、前記転削工具の回転の有無を判定し、
前記少なくとも1つの歪センサからのセンサ情報に基づいて、前記転削工具と被切削物との接触の有無を判定する、切削システム。
【請求項2】
前記転削工具は、前記シャフト部の軸方向を回転軸として回転し、
前記少なくとも1つの加速度センサは、前記転削工具の遠心加速度を検出するように配置されている、請求項1に記載の切削システム。
【請求項3】
前記複数のセンサは、複数の加速度センサを含み、
前記複数の加速度センサは、前記シャフト部の回転軸を法線とする同一平面内において、当該回転軸を中心とする同心円上に配置されている、請求項2に記載の切削システム。
【請求項4】
前記複数の加速度センサは、前記加速度センサの中央部の間隔が前記シャフト部の周方向に90°である位置に配置された4つの加速度センサを含む、請求項3に記載の切削システム。
【請求項5】
前記管理装置は、
前記少なくとも1つの加速度センサによって検出された加速度が第1しきい値より大きい場合に、前記転削工具が回転していると判定し、
前記少なくとも1つの加速度センサによって検出された加速度が前記第1しきい値未満の場合に、前記転削工具が停止していると判定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の切削システム。
【請求項6】
前記転削工具は、前記シャフト部の軸方向を回転軸として回転し、
前記少なくとも1つの歪センサは、前記シャフト部の円周方向の歪みを検出するように配置されている、請求項1に記載の切削システム。
【請求項7】
前記複数のセンサは、複数の歪センサを含み、
前記複数の歪センサは、前記シャフト部の回転軸を法線とする同一平面内において、当該回転軸を中心とする同心円上に配置されている、請求項6に記載の切削システム。
【請求項8】
前記複数の歪センサは、前記歪センサの中央部の間隔が前記シャフト部の周方向に90°である位置に配置された4つの歪センサを含む、請求項7に記載の切削システム。
【請求項9】
前記管理装置は、
前記少なくとも1つの歪センサによって検出された前記シャフト部の円周方向の歪みが第2しきい値より大きい場合に、前記転削工具が前記被切削物と接触していると判定し、
前記少なくとも1つの歪センサによって検出された前記シャフト部の円周方向の歪みが前記第2しきい値未満の場合に、前記転削工具が前記被切削物と接触していないと判定する、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の切削システム。
【請求項10】
前記転削工具は、前記シャフト部の軸方向を回転軸として回転し、
前記少なくとも1つの加速度センサ、および、前記少なくとも1つの歪センサは、前記シャフト部の周方向に交互に配置されている、請求項1に記載の切削システム。
【請求項11】
前記管理装置は、前記少なくとも1つの加速度センサからのセンサ情報、および、前記少なくとも1つの歪センサからのセンサ情報に基づいて、前記転削工具が切削中であるか否かを判定する、請求項1に記載の切削システム。
【請求項12】
前記管理装置は、前記少なくとも1つの加速度センサによって検出され加速度が第1しきい値より大きく、かつ、前記少なくとも1つの歪センサによって検出された前記シャフト部の円周方向の歪みが第2しきい値より大きい場合に、前記転削工具が切削中であると判定する、請求項11に記載の切削システム。
【請求項13】
前記管理装置は、前記少なくとも1つの加速度センサによって検出された加速度が第1しきい値未満であり、かつ、前記少なくとも1つの歪センサによって検出された前記シャフト部の円周方向の歪みが第2しきい値より大きい場合に、前記転削工具が異常状態であると判定する、請求項11に記載の切削システム。
【請求項14】
前記管理装置は、前記転削工具が異常状態であると判定した場合に、ユーザに異常状態を通知する、請求項13に記載の切削システム。
【請求項15】
前記管理装置は、前記少なくとも1つの加速度センサによって検出された加速度が第1しきい値より大きく、かつ、前記少なくとも1つの歪センサによって検出された前記シャフト部の円周方向の歪みが第2しきい値未満の場合に、前記転削工具が切削していない状態で回転中であると判定する、請求項11に記載の切削システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの歪センサは、前記シャフト部の円周方向の歪みを検出する第1センサ、および、前記シャフト部の軸方向の歪みを検出する第2センサを含み、
前記管理装置は、前記第1センサによって検出された前記シャフト部の円周方向の歪みが第2しきい値未満のタイミングにおいて、前記第2センサの測定値をゼロに補正する、請求項1に記載の切削システム。
【請求項17】
前記管理装置は、前記複数のセンサからのセンサ情報を記憶するための記憶装置をさらに含み、
前記管理装置は、前記転削工具の状態に対応したラベル情報を付して、前記複数のセンサからのセンサ情報を前記記憶装置に記憶する、請求項
1に記載の切削システム。
【請求項18】
前記管理装置は、被切削物の加工開始から加工完了までの前記転削工具の状態推移を予め記憶しており、当該状態推移と前記ラベル情報とに基づいて、前記記憶装置に記憶されたセンサ情報を被切削物ごとの加工データ群として分類する、請求項17に記載の切削システム。
【請求項19】
転削工具の状態を判定する方法であって、
前記転削工具には、少なくとも1つの加速度センサ、および、少なくとも1つの歪センサが配置されており、
前記方法は、
前記少なくとも1つの加速度センサおよび前記少なくとも1つの歪センサからセンサ情報を取得するステップと、
前記少なくとも1つの加速度センサからのセンサ情報に基づいて、前記転削工具の回転の有無を判定するステップと、
前記少なくとも1つの歪センサからのセンサ情報に基づいて、前記転削工具と被切削物との接触の有無を判定するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切削システムおよび転削工具の状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2021/029099号(特許文献1)には、工具ホルダ内に、加速度センサおよび歪センサを含む複数のセンサを備えた転削工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る切削システムは、転削工具と、転削工具に取り付けられた複数のセンサと、管理装置とを備える。管理装置は、複数のセンサからのセンサ情報に基づいて、転削工具の状態を判定する。複数のセンサは、少なくとも1つの加速度センサと、少なくとも1つの歪センサとを含む。管理装置は、少なくとも1つの加速度センサからのセンサ情報に基づいて転削工具の回転の有無を判定し、少なくとも1つの歪センサからのセンサ情報に基づいて転削工具と被切削物との接触の有無を判定する。
【0005】
本開示に係る方法は、転削工具の状態を判定する方法である。転削工具には、少なくとも1つの加速度センサ、および、少なくとも1つの歪センサが配置されている。上記方法は、少なくとも1つの加速度センサおよび少なくとも1つの歪センサからセンサ情報を取得するステップと、少なくとも1つの加速度センサからのセンサ情報に基づいて転削工具の回転の有無を判定するステップと、少なくとも1つの歪センサからのセンサ情報に基づいて転削工具と被切削物との接触の有無を判定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施の形態に従う切削システムの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、工具ホルダにシャフト部が取り付けられた転削工具を示す図である。
【
図3】
図3は、転削工具をZ軸の正方向から見た場合の、センサの配置を示す図である。
【
図4】
図4は、無負荷の状態において、転削工具の回転速度を変化させたときの各センサの検出信号の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、各センサの検出信号に基づいた転削工具の状態を説明するための図である。
【
図6】
図6は、管理装置で実行される、転削工具の状態判定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示の目的は、転削工具に取り付けられた複数のセンサからの情報に基づいて、当該転削工具の状態を判定可能な切削システムおよび方法を提供することである。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、転削工具に取り付けられた複数のセンサからの情報に基づいて、当該転削工具の状態を判定可能な切削システムおよび方法を提供することができる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示に係る切削システム50は、転削工具100と、複数のセンサ120,130と、管理装置200とを備える。転削工具100は、被切削物18を切削するための刃部が設けられた第1端部107と、工具ホルダ105に取り付けられる第2端部108とを有するシャフト部106を含む。複数のセンサ120,130は、転削工具100のシャフト部106に取り付けられている。管理装置200は、複数のセンサ120,130からのセンサ情報に基づいて、転削工具100の状態を判定する。複数のセンサは、少なくとも1つの加速度センサ120と、少なくとも1つの歪センサ130とを含む。管理装置200は、少なくとも1つの加速度センサ120からのセンサ情報に基づいて転削工具100の回転の有無を判定し、少なくとも1つの歪センサ130からのセンサ情報に基づいて転削工具100と被切削物との接触の有無を判定する。
【0011】
(2)上記(1)に係る切削システム50において、工具ホルダ105転削工具100は、シャフト部106の軸方向を回転軸として回転する。少なくとも1つの加速度センサ120は、転削工具100の遠心加速度を検出するように配置されている。
【0012】
(3)上記(2)に係る切削システム50において、複数のセンサは、複数の加速度センサ120を含む。複数の加速度センサ120は、シャフト部106の回転軸を法線とする同一平面内において、当該回転軸を中心とする同心円上に配置されている。
【0013】
(4)上記(3)に係る切削システム50において、複数の加速度センサ120は、加速度センサ120の中央部の間隔がシャフト部106の周方向に90°である位置に配置された4つの加速度センサ120を含む。
【0014】
(5)上記(1)から(3)のいずれか1項に係る切削システム50において、管理装置200は、少なくとも1つの加速度センサ120によって検出された加速度が第1しきい値より大きい場合に、転削工具100が回転していると判定する。また、管理装置200は、少なくとも1つの加速度センサ120によって検出された加速度が第1しきい値未満の場合に、転削工具100が停止していると判定する。
【0015】
(6)上記(1)に係る切削システム50において、転削工具100は、シャフト部106の軸方向を回転軸として回転する。また、少なくとも1つの歪センサ130Dは、シャフト部106の円周方向の歪みを検出するように配置されている。
【0016】
(7)上記(1)に係る切削システム50において、複数のセンサは、複数の歪センサ130を含む。複数の歪センサ130は、シャフト部106の回転軸を法線とする同一平面内において、当該回転軸を中心とする同心円上に配置されている。
【0017】
(8)上記(7)に係る切削システム50において、複数の歪センサ130は、歪センサの中央部の間隔がシャフト部106の周方向に90°である位置に配置された4つの歪センサ130A~130Dを含む。
【0018】
(9)上記(6)から(8)のいずれか1項に係る切削システム50において、管理装置200は、少なくとも1つの歪センサ130Dによって検出されたシャフト部106の円周方向の歪みが第2しきい値より大きい場合に、転削工具100が被切削物18と接触していると判定する。また、管理装置200は、少なくとも1つの歪センサ130Dによって検出されたシャフト部106の円周方向の歪みが第2しきい値未満の場合に、転削工具100が被切削物18と接触していないと判定する。
【0019】
(10)上記(1)に係る切削システム50において、転削工具100は、シャフト部106の軸方向を回転軸として回転する。少なくとも1つの加速度センサ120、および、少なくとも1つの歪センサ130は、シャフト部106の周方向に交互に配置されている。
【0020】
(11)上記(1)に係る切削システム50において、管理装置200は、少なくとも1つの加速度センサ120からのセンサ情報、および、少なくとも1つの歪センサ130からのセンサ情報に基づいて、転削工具100が切削中であるか否かを判定する。
【0021】
(12)上記(11)に係る切削システム50において、管理装置200は、少なくとも1つの加速度センサ120によって検出され加速度が第1しきい値より大きく、かつ、少なくとも1つの歪センサ130によって検出されたシャフト部106の円周方向の歪みが第2しきい値より大きい場合に、転削工具100が切削中であると判定する。
【0022】
(13)上記(11)に係る切削システム50において、管理装置200は、少なくとも1つの加速度センサ120によって検出された加速度が第1しきい値未満であり、かつ、少なくとも1つの歪センサ130によって検出されたシャフト部106の円周方向の歪みが第2しきい値より大きい場合に、転削工具100が異常状態であると判定する。
【0023】
(14)上記(13)に係る切削システム50において、管理装置200は、転削工具100が異常状態であると判定した場合に、ユーザに異常状態を通知する。
【0024】
(15)上記(11)に係る切削システム50において、管理装置200は、少なくとも1つの加速度センサ120によって検出された加速度が第1しきい値より大きく、かつ、少なくとも1つの歪センサ130によって検出されたシャフト部106の円周方向の歪みが第2しきい値未満の場合に、転削工具100が切削していない状態で回転中であると判定する。
【0025】
(16)上記(1)に係る切削システム50において、転削工具100は、被切削物18を切削するための刃部が設けられた第1端部107と、工具ホルダ105に取り付けられる第2端部108とを有するシャフト部106を含む。管理装置200は、少なくとも1つの歪センサ130によって検出されたシャフト部106の軸方向の歪みが第2しきい値未満のタイミングにおいて、少なくとも1つの歪センサ130の測定値をゼロに補正する。
【0026】
(17)上記(1)から(16)のいずれか1項に係る切削システム50は、工具ホルダ105に取り付けられ、複数のセンサ120,130からのセンサ情報を管理装置200に送信するための無線通信装置140をさらに備える。
【0027】
(18)上記(1)から(17)のいずれか1項に係る切削システム50は、工具ホルダ105に取り付けられ、複数のセンサ120,130を駆動するための電力を供給するように構成された蓄電装置150をさらに備える。
【0028】
(19)上記(1)から(18)のいずれか1項に係る切削システム50において、管理装置200は、複数のセンサ120,130からのセンサ情報を記憶するための記憶装置230をさらに含む。
【0029】
(20)上記(19)に係る切削システム50において、管理装置200は、転削工具100の状態に対応したラベル情報を付して、複数のセンサ120,130からのセンサ情報を記憶装置230に記憶する。
【0030】
(21)上記(20)に係る切削システム50において、管理装置200は、被切削物18の加工開始から加工完了までの転削工具100の状態遷移を予め記憶している。管理装置200は、当該状態遷移とラベル情報とに基づいて、記憶装置230に記憶されたセンサ情報を被切削物18ごとの加工データ群として分類する。
【0031】
(22)上記(20)に係る切削システム50において、管理装置200は、被切削物18の加工開始から加工完了までの転削工具100の状態遷移を第1データとして予め記憶している。管理装置200は、被切削物18の加工開始から加工完了までに取得したセンサ情報から得られる転削工具100の状態遷移を示す第2データが第1データと合致しない場合に、ユーザに当該被切削物18の加工異常を通知する。
【0032】
(23)本開示に係る方法は、被切削物を切削するための刃部が設けられた第1端部、および、工作機械に取り付けられる第2端部を有するシャフト部106を含む転削工具100の状態を判定する方法である。シャフト部106には、少なくとも1つの加速度センサ120、および、少なくとも1つの歪センサ130が配置されている。上記方法は、少なくとも1つの加速度センサ120および少なくとも1つの歪センサ130からセンサ情報を取得するステップと、少なくとも1つの加速度センサ120からのセンサ情報に基づいて転削工具100の回転の有無を判定するステップと、少なくとも1つの歪センサ130からのセンサ情報に基づいて転削工具100と被切削物18との接触の有無を判定するステップとを含む。
【0033】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0034】
(切削システムの概要)
図1は、本実施の形態に従う切削システム50の概要を示す図である。
図1を参照して、切削システム50は、転削工具100と、管理装置200とを備える。転削工具100は、マシニングセンタあるいはフライス盤などの工作機械10に取り付けられて、切削対象の被切削物(ワーク)18の切削加工のために用いられる。
【0035】
図1の例における工作機械10は立型マシニングセンタであり、鉛直方向(Z軸方向)に移動するヘッド12に設けられた主軸(スピンドル)14に転削工具100が取り付けられる。
図1においては、転削工具100は、刃部が形成されたシャフト部106、および、当該シャフト部106を保持する工具ホルダ105を含み、工具ホルダ105の部分が工作機械10に取り付けられる。なお、工具ホルダ105を用いずに、
図7で後述する変形例のように、切削インサート160(
図7参照)を備えたシャフト部106を工作機械10に直接取付ける構成であってもよい。主軸14に配置されたモータ(図示せず)によって、Z軸方向を回転軸として転削工具100が回転する。
【0036】
ワーク18は、ベッド20上に設けられたテーブル16上に配置される。テーブル16は、XY平面上に移動可能に構成されている。テーブル16およびヘッド12を移動させて、転削工具100とワーク18との相対位置を変化させながら、回転中の転削工具100とワーク18とを接触させることによって、ワーク18が切削される。
【0037】
なお、
図1においては、工作機械10として3軸の立型マシニングセンタを例として説明したが、工作機械10は、主軸が水平方向に配置された横型マシニングセンタであってもよいし、4軸以上の動作軸を有するものであってもよい。
【0038】
図2で後述するように、転削工具100には、複数のセンサが取り付けられている。当該センサによって、転削工具100に加わる力を検出することができる。
【0039】
管理装置200は、転削工具100に取り付けられたセンサの検出値を用いて、転削工具100の状態を判定および管理する。管理装置200は、通信装置210と、制御装置であるCPU(Central Processing Unit)220と、記憶装置230と、入出力インターフェース(I/F)240と、表示装置260と、入力装置270とを含む。
【0040】
通信装置210、CPU220、記憶装置230、および入出力I/F240は、共通のバス250に接続されており、互いに信号の授受が可能に構成されている。表示装置260および入力装置270は、入出力I/F240に有線あるいは無線で接続されている。
【0041】
通信装置210は無線通信装置であり、工具ホルダ105に取り付けられたセンサの検出値を無線で取得する。CPU220は、記憶装置230に記憶されたプログラムを実行し、通信装置210で取得したセンサの検出値を処理することによって、転削工具100の状態を判定する。
【0042】
記憶装置230は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)のようなメモリ、ならびに、HDD(Hard Disc Drive)あるいはSSD(Solid State Disk)のような大容量記憶機器を含む。記憶装置230は、CPU220の処理の際のバッファとして用いられるとともに、CPU220で実行されるプログラム、センサの検出値、および/または、CPU220による演算結果等を記憶するために用いられる。
【0043】
入力装置270は、たとえば、キーボード、マウス、トラックボールまたはタッチパネルのようなポインティングデバイスであり、ユーザからの操作信号を受け付ける。表示装置260は、代表的には、液晶パネルあるいは有機EL(Electro Luminescence)パネルであり、CPU220の演算結果および記憶装置230に記憶された情報をユーザに対して表示する。
【0044】
入出力I/F240は、表示装置260および入力装置270を接続するためのインターフェースである。入出力I/F240を介して、入力装置270からのユーザ操作信号を受けるともに、ユーザへ通知するための情報を表示装置260へ出力する。
【0045】
(本実施の形態の目的)
上記のような工作機械に用いられる転削工具は、使用に伴って刃部の摩耗あるいは欠損等の異常が生じることがある。転削工具に異常が生じると、切削対象であるワークを適切に切削できなくなり、加工精度の低下、あるいは、ワークまたは工具自体の破損を招くおそれがある。このような課題に対して、国際公開第2021/029099号(特許文献1)のように、転削工具を保持する工具ホルダ内に加速度センサおよび歪センサを含む複数のセンサを設け、当該センサから検出される物理量のデータに基づいて、切削の不具合の原因が転削工具によるものであるか、工作機械によるものであるかを判断する構成が知られている。
【0046】
特許文献1のシステムにおいては、対象の工作機械における切削加工時の測定データを所定期間蓄積し、蓄積されたデータを解析することによって不具合の要因を判断している。このデータ解析において、正しく解析を行なうためには、蓄積されたセンサの連続データについて、転削工具の状態(すなわち、工具が回転中であるか、ワークの加工中であるか)の情報を用いることが有用である。
【0047】
そこで、本実施の形態においては、工具ホルダに配置された加速度センサおよび歪センサのデータから、転削工具の状態を判定する手法について説明する。
【0048】
(転削工具の詳細)
次に
図2および
図3を用いて、転削工具100の詳細について説明する。
図2は、工具ホルダ105にシャフト部106が取り付けられた転削工具100を示す図である。また、
図3は、転削工具100をZ軸の正方向から見た場合の各センサの配置を示す図である。
【0049】
工具ホルダ105は、工作機械10の主軸14に取り付けられる本体110を含む。本体110の一方端は、主軸14に取り付けられる。本体の110の他方端には、シャフト部106が取り付けられている。
【0050】
転削工具100は、たとえば、エンドミル、フライスカッター、ドリル、リーマ、およびタップなどであり、工具自体が回転することによって、ワーク18を切削する。
図2においては、転削工具100はエンドミルであり、略円柱形状のシャフト部106の第1端部107に刃部が設けられており、シャフト部106の第2端部108が工具ホルダ105に取り付けられている。刃部は、シャフト部106に形成されたものであってもよいし、取り外し可能な刃先部がシャフト部106に取り付けられたものであってもよい。主軸14に設けられたモータ(図示せず)が駆動されることによって、転削工具100は、Z軸の正方向から見て回転軸CL廻りに時計回り(CW:Clock Wise)方向に回転し、刃部とワーク18とが接触することによって、ワーク18が切削される。
【0051】
図3に示されるように、工具ホルダ105において、シャフト部106の周囲には複数のセンサ120,130が取り付けられている。本実施の形態においては、複数のセンサは、4つの加速度センサ120と、4つの歪センサ130とを含む。また、工具ホルダ105には、図示しない基板上に、通信装置140およびバッテリ150が配置されている。通信装置140は、バッテリ150によって駆動される無線通信装置である。通信装置140は、管理装置200の通信装置210と無線で通信することが可能であり、センサ120,130で検出された検出値を管理装置200に無線で送信する。
【0052】
なお、センサ120,130は、シャフト部106に直接取り付けられていてもよいし、転削工具100の変形状態が測定可能な工具ホルダ105上に配置されてもよい。
図3においては、説明を容易にするために、センサ120,130がシャフト部106に直接取り付けられている状態について説明する。
【0053】
4つの加速度センサ120は、シャフト部106の表面において、加速度センサ120の中央部の間隔が周方向に90°である位置にそれぞれ配置されている。すなわち、4つの加速度センサ120は、シャフト部106の回転軸CLを法線とする同一平面内において、当該回転軸CLを中心とする同心円上に配置されている。Z軸方向から平面視した場合に、4つの加速度センサ120のうちの2つは、転削工具100の回転軸CLに対して点対称に配置されている。また、4つの加速度センサ120のうちの残りの2つも、転削工具100の回転軸CLに対して点対称に配置されている。各加速度センサ120は、少なくとも径方向に測定感度を有しており、転削工具100が回転する際の遠心加速度を検出することができる。
【0054】
4つの歪センサ130は、歪センサ130A~130Dを含む。歪センサ130A~130Dは、加速度センサ120と同様に、シャフト部106の回転軸CLを法線とする同一平面内において、当該回転軸CLを中心とする同心円上に配置されている。また、歪センサ130A~130Dは、シャフト部106の表面において、歪センサの中央部の間隔が周方向に90°である位置にそれぞれ配置されている。
図3の例においては、歪センサ130A~130Dの各々は、隣り合う2つの加速度センサの間にそれぞれ配置されている。なお、加速度センサ120と歪センサ130とが、同一平面上に配置されていない場合には、Z軸方向から平面視した場合に、加速度センサ120と歪センサ130とが同じ位置になるように配置されていてもよい。歪センサ130Aおよび歪センサ130Cは、転削工具100の回転軸CLに対して点対称に配置されている。また、歪センサ130Bおよび歪センサ130Dも、転削工具100の回転軸CLに対して点対称に配置されている。
【0055】
歪センサ130A~130Cは、鉛直方向(Z軸方向)に測定感度を有するように配置されている。そのため、歪センサ130A~130Cによって、転削工具100に対してZ軸方向に垂直な力が作用したときの、シャフト部106のたわみを検出することができる。一方、歪センサ130Dについては、円周方向(せん断方向)に測定感度を有するように配置されている。そのため、歪センサ130Dによって、転削工具100に対して円周方向に作用する力、すなわち回転トルクを検出することができる。
【0056】
(転削工具の状態判定)
図4は、無負荷の状態において、転削工具100の回転速度を変化させたときの各センサ120,130の検出信号の一例を示す図である。
図4の上段には、歪センサ130により検出される歪みが示されており(線LN10,LN20)、
図4の下段には、加速度センサ120によって検出される加速度が示されている(線LN30)。横軸には時間が示されており、時刻t1~t5においては時間とともに転削工具100の回転速度が段階的に増加され、時刻t6~t11においては時間とともに転削工具100の回転速度が段階的に減少されている。なお、
図4の上段において、線LN10は、歪センサ130A~130Cによる鉛直方向(Z軸方向)の垂直歪みを示している。また、線LN20は、歪センサ130Dによる周方向の歪みを示している。
【0057】
図4から、歪センサ130A~130Cにおいて検出される垂直歪みは、回転速度に応じて変化しており、回転速度が増加すると垂直歪みも増加し、回転速度が減少すると垂直歪みも減少している。これは、転削工具100の回転に伴って、転削工具100(および/または工具ホルダ105)が鉛直方向に膨張することによって生じる歪みである。一方で、歪センサ130Dにおいて検出される周方向のせん断歪みについては、回転速度に対してほとんど変化しない。
【0058】
また、加速度センサ120において検出される遠心加速度については、転削工具100の回転による遠心力のために、回転速度が増加すると遠心加速度も増加し、回転速度が減少すると遠心加速度も減少する。
【0059】
以上のような特性から、歪センサ130A~130Cによる垂直歪み、および、加速度センサ120による遠心加速度のデータから、転削工具100が回転中であるか否かを判定できることがわかる。ただし、垂直歪みについては、切削中などで転削工具100に外力が作用して変形が生じた場合にも検出されることから、転削工具100の回転の有無の判定には、加速度センサ120で検出される遠心加速度のデータを用いることが適当であるといえる。
【0060】
一方、転削工具100が加工中の場合、刃部とワーク18との接触によって、転削工具100の回転軸方向、および、回転軸に直交する方向の少なくとも一方に外力が加わる。そのため、加工中の場合には、歪センサ130A~130Dのいずれかによって歪みが検出され得る。ここで、
図4で示したように、Z軸方向の垂直歪みを検出するための歪センサ130A~130Cについては、ワーク18からの反力が作用していない状態でも、転削工具100が回転していると歪みが検出されてしまうため、当該センサを用いて加工中であるか否かを判定することはできない。したがって、歪センサ130Dで検出されたせん断歪み(すなわち、回転トルク)を用いることによって、転削工具100の回転の影響を受けることなく、転削工具100とワーク18の接触の有無、すなわち転削工具100が加工中であるか否かを判定することができる。
【0061】
以上のように、転削工具100の状態(回転中/加工中)の判定のためには、せん断歪みを検出する歪センサ、および、遠心加速度を検出する加速度センサを、少なくとも1つずつ配置することが必要である。
【0062】
図5は、各センサの検出信号に基づいた転削工具100の状態を説明するための図である。
図4で説明したように、転削工具100の回転の有無については、加速度センサ120によって検出される遠心加速度を用いることで判定することができる。また、切削の有無については、歪センサ130Dによって検出されるせん断歪みを用いることで判定することができる。
【0063】
そして、これらの検出データを組み合わせることによって、以下のように転削工具100の状態を検出することができる。まず、加速度センサ120による遠心加速度および歪センサ130Dによるせん断歪みの双方が検出される場合には、転削工具100によって実際にワーク18を切削中であると判定することができる。
【0064】
次に、加速度センサ120による遠心加速度が検出されるが、歪センサ130Dによるせん断歪みが検出されない場合には、転削工具100が無負荷の状態で回転動作のみを行なっている状態(アイドル状態)であると判定することができる。また、加速度センサ120による遠心加速度および歪センサ130Dによるせん断歪みの双方が検出されない場合には、転削工具100が停止中であると判定することができる。
【0065】
なお、加速度センサ120による遠心加速度が検出されないが、歪センサ130Dによるせん断歪みが検出される場合は、転削工具100が停止状態で外力が加わった状態であるため、通常の運転においては実際には生じることはない状態である。このような状態は、たとえば、転削工具100の過大な切り込み量によって噛み止まりが生じた場合、または、工具停止状態で転削工具100とワーク18とが衝突した場合などの異常状態、あるいは、センサに異常が生じた状態である。したがって、遠心加速度が検出されず、かつ、せん断歪みが検出される場合には、異常状態が生じていると判定することができる。
【0066】
なお、工具ホルダ105にセンサが取り付けられている場合には、工具本体であるシャフト部106の交換時にも、遠心加速度が検出されず、かつ、せん断歪みが検出される状態となり得る。また、シャフト部106にセンサが取り付けられており、シャフト部106先端の刃先チップ交換式の転削工具の場合にも、当該刃先チップ交換時に、遠心加速度が検出されず、かつ、せん断歪みが検出される状態となり得る。すなわち、工具の異常状態に加えて、工具交換のタイミングを記録することができる。
【0067】
さらに、加速度センサ120による遠心加速度および歪センサ130Dによるせん断歪みを用いて判定された転削工具100の状態は、以下のような処理にも適用することができる。
【0068】
(1)歪センサのゼロ点補正処理.
上述のように、歪センサ130Dによるせん断歪みが検出されない場合、すなわち、転削工具100に外力が作用していない「回転動作のみ」あるいは「停止中」の場合には、本来であれば、歪センサ130A~130Cによる垂直歪みは検出されない。しかしながら、周囲環境温度あるいは切削液による温度分布に起因した熱歪み、または、
図4のような回転による遠心力に起因した膨張歪みが生じることで、歪センサ130A~130Cの値が検出される状態となる場合がある。
【0069】
そのため、「回転動作のみ」あるいは「停止中」と判定された場合に、歪センサ130A~130Cの測定値のゼロ点補正処理を行なうことによって、垂直歪みデータのオフセットを除去することができる。
【0070】
(2)蓄積データへのラベル付け処理.
転削工具100の不具合の判定は、特許文献1のように、連続する測定データを蓄積し、蓄積されたデータを解析することによって行なわれる。しかしながら、測定データのままでは、センサデータの変化と工具状態の変化との関係を把握することは難しい。
【0071】
そこで、
図5で示したような分類基準によって判定した工具状態の情報を、測定データに工具状態をラベル情報を付して記憶することによって、後続の解析においてセンサデータの変化と工具状態の変化との関係を把握しやすくするとともに、データ整理に役立てることができる。
【0072】
(3)製品ごとのデータ分類処理.
工作機械10においては、予めプログラミングされた順序に従って加工が行なわれ、一般的には同じ製品の加工が連続的に行なわれる。そのため、1つの製品(被切削物)を加工する場合に、予め定められた加工順に基づいて、加工開始から加工完了までにどのように工具状態が推移するかを予め知ることができる。言い換えれば、(2)で説明した測定データへのラベル付け処理ができると、転削工具の状態推移から、連続した測定データにおけるどの範囲のデータ群が1つの製品に対応するかを分類することができる。
【0073】
逆に、たとえばワーク18の段取り替えを示す信号等によって、製品ごとの加工開始から加工完了までのデータ群の範囲が予め認識できる場合には、当該データ群において測定データから判定した転削工具の状態推移(第2データ)が、当該製品について予め記憶された転削工具の状態推移パターン(第1データ)と相違する場合には、該当する製品が加工異常となっている可能性があると判断して、ユーザに対して異常を通知することができる。
【0074】
図6は、本実施の形態の切削システム50における管理装置200で実行される、転削工具100の状態判定処理を説明するためのフローチャートである。
図6に示される処理は、管理装置200において、CPU220が、記憶装置230から読み出されたプログラムを実行することによって実現される。
図6の処理は、予め蓄積された測定データに対してオフラインで実行されるものであってもよいし、実際のワーク18の加工中に測定されたデータに対してオンラインで実行されるものであってもよい。
【0075】
なお、
図6に記載された処理の一部あるいは全部を、半導体集積回路のようなハードウェアで構築してもよい。また、CPU220で実行されるプログラムは、外部のサーバ装置等からインストールすることができる。あるいは、当該プログラムは、CD-ROMあるいは半導体メモリ等の記憶媒体に格納された状態で流通してもよい。
【0076】
図6を参照して、管理装置200は、ステップ(以下、ステップを「S」と略す。)100にて、工具ホルダ105から送信されたセンサデータ、あるいは、記憶装置230に蓄積されたセンサデータを取得する。そして、管理装置200は、S110にて、加速度センサ120の測定データに基づいて、遠心加速度が検出されているか、すなわち転削工具100が「回転中」であるか否かを判定する。具体的には、管理装置200は、加速度センサ120によって検出された遠心加速度が第1しきい値以上の場合には転削工具100が「回転中」であると判定し、検出された遠心加速度が第1しきい値未満の場合には転削工具100が「停止中」であると判定する。
【0077】
遠心加速度が検出されており、転削工具100が「回転中」である場合(S110にてYES)は、処理がS120に進められる。S120においては、管理装置200は、歪センサ130Dの測定データに基づいて、せん断歪みが検出されているか、すなわち転削工具100に外力が作用してトルクが生じているか否かを判定する。具体的には、管理装置200は、歪センサ130Dによって検出されたせん断歪みが第2しきい値以上の場合には転削工具100がワーク18に接触してトルクが生じていると判定し、検出されたせん断歪みが第2しきい値未満の場合には転削工具100がワーク18と接触しておらずトルクが生じていないと判定する。
【0078】
せん断歪みが検出されており、転削工具100にトルクが生じている場合(S120にてYES)は、処理がS130に進められて、管理装置200は、工具状態が「切削中」であると判定する。そして、管理装置200は、S140にて、対象のデータに「切削中」を示すラベルを付与して記憶装置230に記憶する。
【0079】
一方、転削工具100にトルクが生じていない場合(S120にてNO)は、処理がS135に進められて、管理装置200は、転削工具100が回転動作のみを行なっている「アイドル回転中」であると判定する。当該処理がオンラインで実行されている場合には、管理装置200は、次にS136にて、垂直歪みを測定する歪センサ130A~130Dについてのゼロ点補正処理を実行してもよい。なお、当該処理がオフラインで実行されている場合には、S136の処理はスキップされる。その後、管理装置200は、S140にて、対象のデータに「アイドル回転中」を示すラベルを付与して記憶装置230に記憶する。
【0080】
一方、遠心加速度が検出されておらず、転削工具100が「回転中」でない場合(S110にてNO)は、処理がS170に進められて、管理装置200は、歪センサ130Dの測定データに基づいて、転削工具100にトルクが生じているか否かを判定する。転削工具100にトルクが生じていない場合(S170にてNO)は、処理がS180に進められて、管理装置200は、転削工具100が「停止中」であると判定する。そして、管理装置200は、S140にて、対象のデータに「停止中」を示すラベルを付与して記憶装置230に記憶する。
【0081】
一方、遠心加速度が検出されていないにもかかわらず、転削工具100にトルクが生じている場合(S170にてYES)は、処理がS185に進められて、管理装置200は、転削工具100が「異常状態」であると判定し、ユーザに対してアラームを出力する。その後、管理装置200は、S140にて、対象のデータに「異常状態」を示すラベルを付与して記憶装置230に記憶する。
【0082】
S140においてデータが記憶されると、処理がS150に進められて、管理装置200は、転削工具100を用いた加工が終了したか否かを判定する。加工が終了していない場合(S150にてNO)は、処理がS100に戻されて、管理装置200は、上記のS100からS140までの処理を繰り返し実行する。一方、加工が終了した場合(S150にてYES)は、管理装置200は当該状態判定処理を終了する。
【0083】
なお、
図6には示されていないが、当該処理がオフラインで実行される場合には、S150において、管理装置200は、記憶装置230内の処理すべき全てのセンサデータについての処理が終了したか否かを判定する。そして、処理すべきデータが残っている場合(S150にてNO)には処理がS100に戻される。一方、全てのデータについての処理が終了している場合(S150にてYES)には、管理装置200は、当該状態判定処理を終了する。
【0084】
以上の処理に従って制御を行なうことによって、工具ホルダに取り付けられた加速度センサおよび歪センサのデータに基づいて、当該工具ホルダに取り付けられた転削工具の状態を判定することができる。
【0085】
(転削工具の変形例)
図7は、変形例の転削工具100Aを示す図である。転削工具100Aは、実施の形態1の転削工具100のような工具ホルダを含まず、工具ホルダを含む工作機械の主軸にシャフト部が取り付けられる構成となっている。
【0086】
図7を参照して、転削工具100Aは、シャフト部106Aと、当該シャフト部106Aの周囲に取り付けられた加速度センサ120および歪センサ130とを含む。加速度センサ120および歪センサ130は、シャフト部106Aに設けられたハウジング170の内部に格納される。加速度センサ120および歪センサ130は、実施の形態1の転削工具100と同様に、シャフト部106Aの周方向に等間隔に配置されている。なお、
図7には示されていないが、ハウジング170内には、
図2に示した通信装置140およびバッテリ150も配置されている。
【0087】
シャフト部106Aの第1端部107には、交換式の切削インサート(スローアウェイチップ)160が取り付けられている。また、シャフト部106Aの第2端部108は、工具ホルダを有する工作機械10の主軸14に取り付けられる。
【0088】
このように、工具ホルダを含む主軸に取り付けられる転削工具においても、転削工具のシャフト部に加速度センサおよび歪センサを配置することによって、当該センサのデータに基づいて、転削工具の状態を判定することができる。
【0089】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
10 工作機械、12 ヘッド、14 主軸、16 テーブル、18 ワーク、20 ベッド、50 切削システム、100,100A 転削工具、105 工具ホルダ、106,106A シャフト部、107 第1端部、108 第2端部、110 本体、120 加速度センサ、130,130A~130D 歪センサ、140,210 通信装置、150 バッテリ、160 切削インサート、170 ハウジング、200 管理装置、220 CPU、230 記憶装置、240 入出力インターフェース、250 バス、260 表示装置、270 入力装置、CL 回転軸。
【要約】
切削システムは、転削工具と、転削工具のシャフト部に取り付けられた複数のセンサと、管理装置とを備える。管理装置は、複数のセンサからのセンサ情報に基づいて、転削工具の状態を判定する。複数のセンサは、少なくとも1つの加速度センサと、少なくとも1つの歪センサとを含む。管理装置は、少なくとも1つの加速度センサからのセンサ情報に基づいて転削工具の回転の有無を判定し、少なくとも1つの歪センサからのセンサ情報に基づいて転削工具と被切削物との接触の有無を判定する。