(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】導電性ペースト、硬化物、シンタリング促進剤およびシンタリング促進方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20230411BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20230411BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H01L21/52 E
H01L21/52 B
H01B1/00 J
H01B1/22 A
(21)【出願番号】P 2023508073
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2022034825
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2021155956
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022141719
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】濱島 安澄
(72)【発明者】
【氏名】樫野 智将
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将人
(72)【発明者】
【氏名】高本 真
(72)【発明者】
【氏名】渡部 直輝
(72)【発明者】
【氏名】西 孝行
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 諒太
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/042780(WO,A1)
【文献】特開2014-146482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01B 1/00
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀含有粒子と、
前記銀含有粒子同士がシンタリングすることを促進するシンタリング促進剤と、
を含有する導電性ペーストであって、
前記シンタリング促進剤が式(1)または式(2)で示される化合物を含
み、
(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、導電性ペースト。
【化1】
(式(1)中、mは1以上20以下の整数である。)
【化2】
(式(2)中、nは1以上20以下の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の導電性ペーストであって、
前記シンタリング促進剤が式(1)で示される化合物を含み、式(1)中、mは1以上11以下の整数である、導電性ペースト。
【請求項3】
請求項1または2に記載の導電性ペーストであって、
前記シンタリング促進剤が式(2)で示される化合物を含み、式(2)中、nは2以上13以下の整数である、導電性ペースト。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の導電性ペーストであって、
前記銀含有粒子が球状粒子、鱗片状粒子、凝集状粒子、および多面体形状の粒子からなる群から選択される1種または2種以上を含む、導電性ペースト。
【請求項5】
請求項4に記載の導電性ペーストであって、
前記銀含有粒子が球状粒子、鱗片状粒子、凝集状粒子、および多面体形状の粒子からなる群から選択される2種以上を含む、導電性ペースト。
【請求項6】
請求項1
または2に記載の導電性ペーストであって、
エポキシモノマーをさらに含む、導電性ペースト。
【請求項7】
請求項6に記載の導電性ペーストであって、
フェノール系硬化剤をさらに含む、導電性ペースト。
【請求項8】
請求項
6に記載の導電性ペーストであって、
イミダゾール系硬化促進剤をさらに含む、導電性ペースト。
【請求項9】
請求項
1または2に記載の導電性ペーストであって、
ラジカル重合開始剤をさらに含む、導電性ペースト。
【請求項10】
請求項1
または2に記載の導電性ペーストであって、
溶剤をさらに含む、導電性ペースト。
【請求項11】
請求項1
または2に記載の導電性ペーストであって、
当該導電性ペーストを、焼結処理後の厚みが0.05mmになるようにガラス板上に塗布し、窒素雰囲気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間焼結処理し、硬化物を得た場合の、当該硬化物の体積抵抗率が4.0μΩ・cm以上9.5μΩ・cm以下である、導電性ペースト。
【請求項12】
請求項1
または2に記載の導電性ペーストを焼結して得られる硬化物。
【請求項13】
銀含有粒子同士がシンタリングすることを促進するシンタリング促進剤であって、
式(1)または式(2)で示される化合物を含
み、
銀含有粒子と、(メタ)アクリルモノマーと、を含有する導電性ペーストに用いられる、シンタリング促進剤。
【化3】
(式(1)中、mは1以上20以下の整数である。)
【化4】
(式(2)中、nは1以上20以下の整数である。)
【請求項14】
請求項
13に記載のシンタリング促進剤を用いて銀含有粒子のシンタリングを促進する、シンタリング促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ペースト、硬化物、シンタリング促進剤およびシンタリング促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品は、たとえば接着層を介して基板上に搭載される。このような接着層には導電性が求められることがあり、このような場合、たとえば銀含有粒子を含有する樹脂組成物により導電性接着層を形成することがある。
【0003】
導電性ペーストを作製するための樹脂組成物として、たとえば銀含有粒子を含む樹脂組成物が用いられる場合がある。このような樹脂組成物に関する技術としては、たとえば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1には、(A)プレート型銀微粒子と、(B)平均粒子径0.5~30μmである銀粉と、(C)熱硬化性樹脂と、を含む熱硬化性樹脂組成物が記載されており、当該熱硬化性樹脂組成物においては、銀粒子どうしの接点の形成により導電性が発現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年においては、導電性ペーストの導電性に求められる水準が従来以上に高まってきており、かかる要請に対して従来技術では充分に対応できていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示す導電性ペースト、硬化物、シンタリング促進剤およびシンタリング促進方法が提供される。
[1]
銀含有粒子と、
前記銀含有粒子同士がシンタリングすることを促進するシンタリング促進剤と、
を含有する導電性ペーストであって、
前記シンタリング促進剤が式(1)または式(2)で示される化合物を含む、導電性ペースト。
【化1】
(式(1)中、mは1以上20以下の整数である。)
【化2】
(式(2)中、nは1以上20以下の整数である。)
[2]
上記[1]に記載の導電性ペーストであって、
前記シンタリング促進剤が式(1)で示される化合物を含み、式(1)中、mは1以上11以下の整数である、導電性ペースト。
[3]
上記[1]または[2]に記載の導電性ペーストであって、
前記シンタリング促進剤が式(2)で示される化合物を含み、式(2)中、nは2以上13以下の整数である、導電性ペースト。
[4]
上記[1]~[3]のいずれかに記載の導電性ペーストであって、
前記銀含有粒子が球状粒子、鱗片状粒子、凝集状粒子、および多面体形状の粒子からなる群から選択される1種または2種以上を含む、導電性ペースト。
[5]
上記[4]に記載の導電性ペーストであって、
前記銀含有粒子が球状粒子、鱗片状粒子、凝集状粒子、および多面体形状の粒子からなる群から選択される2種以上を含む、導電性ペースト。
[6]
上記[1]~[5]のいずれかに記載の導電性ペーストであって、
エポキシモノマーをさらに含む、導電性ペースト。
[7]
上記[6]に記載の導電性ペーストであって、
フェノール系硬化剤をさらに含む、導電性ペースト。
[8]
上記[6]または[7]に記載の導電性ペーストであって、
イミダゾール系硬化促進剤をさらに含む、導電性ペースト。
[9]
上記[1]~[8]のいずれかに記載の導電性ペーストであって、
(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、導電性ペースト。
[10]
上記[9]に記載の導電性ペーストであって、
ラジカル重合開始剤をさらに含む、導電性ペースト。
[11]
上記[1]~[10]のいずれかに記載の導電性ペーストであって、
溶剤をさらに含む、導電性ペースト。
[12]
上記[1]~[11]のいずれかに記載の導電性ペーストであって、
当該導電性ペーストを、焼結処理後の厚みが0.05mmになるようにガラス板上に塗布し、窒素雰囲気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間焼結処理し、硬化物を得た場合の、当該硬化物の体積抵抗率が4.0μΩ・cm以上9.5μΩ・cm以下である、導電性ペースト。
[13]
上記[1]~[12]のいずれかに記載の導電性ペーストを焼結して得られる硬化物。
[14]
銀含有粒子同士がシンタリングすることを促進するシンタリング促進剤であって、
式(1)または式(2)で示される化合物を含む、シンタリング促進剤。
【化3】
(式(1)中、mは1以上20以下の整数である。)
【化4】
(式(2)中、nは1以上20以下の整数である。)
[15]
上記[14]に記載のシンタリング促進剤を用いて銀含有粒子のシンタリングを促進する、シンタリング促進方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導電性に優れた導電性ペーストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の導電性ペーストにより接着層が形成された半導体装置を示す断面図である。
【
図2】実施例2の導電性ペーストにより形成された硬化物の断面のSEM観察画像である。
【
図3】比較例1の導電性ペーストにより形成された硬化物の断面のSEM観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「a~b」は特に断りがなければ「a以上b以下」を表す。
【0010】
[導電性ペースト]
<シンタリング技術の概要>
本実施形態にかかる導電性ペーストは、シンタリングタイプの導電性ペーストである。まず、シンタリング技術の概要について説明する。
【0011】
シンタリングタイプの導電性ペーストでは、焼結プロセスにおいて金属粒子がシンタリング(焼結)することにより導電性が確保される。すなわち、熱の作用により金属粒子間の界面が消失し、金属粒子どうしがシンタリングし、シンタリング構造(金属粒子連結構造)が形成される。このようにして形成されたシンタリング構造が、導電経路として機能する。
【0012】
シンタリングタイプの導電性ペーストには、通常、バインダとして樹脂成分が配合される。焼結プロセスにおいて樹脂成分が完全に揮発し、硬化物に樹脂成分が残存しないものはフルシンタリングタイプと呼ばれる。一方、焼結プロセスにおいて樹脂成分の一部のみが揮発し、硬化物に樹脂成分が残存するものはハーフシンタリングタイプと呼ばれる。
【0013】
ハーフシンタリンググタイプの導電性ペーストでは、硬化物に残存した樹脂成分が、シンタリング構造(金属粒子連結構造)を被着体に密着させるように作用する。
【0014】
シンタリングタイプの導電性ペーストによる接着層の形成の概要について、
図1を用いて説明する。
【0015】
図1は本実施形態の導電性ペーストにより接着層が形成された半導体装置100を示す断面図である。
半導体装置100においては、基板30の表面に本実施形態にかかる導電性ペーストが塗布されることにより接着層10が形成される。次いで、上記基板30の表面に上記接着層10を介して半導体素子20が搭載される。
【0016】
上記接着層10を介して半導体素子20が搭載された後、焼結により、接着層10が含有する銀含有粒子がシンタリングする。
【0017】
その後、半導体素子20と基板30とがボンディングワイヤ40により電気的に接続され、さらにモールド樹脂50により封止され、次いで基板30の半導体素子20を搭載する表面と反対側の裏面上に複数の半田ボール60が形成されることにより、半導体装置100が形成される。
【0018】
<本実施形態にかかる導電性ペーストの特徴>
本実施形態にかかる導電性ペーストは、
銀含有粒子と、
上記銀含有粒子同士がシンタリングすることを促進するシンタリング促進剤と、
を含有する導電性ペーストであって、
上記シンタリング促進剤が式(1)または式(2)で示される化合物を含む。
【化5】
式(1)中、mは1以上20以下の整数である。
【化6】
式(2)中、nは1以上20以下の整数である。
【0019】
本実施形態の導電性ペーストから形成された接着層は、導電性が良好である。
【0020】
本実施形態の導電性ペーストから形成される硬化物の断面をSEM観察すると、銀含有粒子どうしの融合がより多く発生しており、シンタリングが促進されていることが確認できる。このようにシンタリングが促進されることにより、導電性および熱伝導性が向上するものと考えられる。
【0021】
<各成分>
以下、本実施形態の導電性ペーストが含有する各成分について説明する。
【0022】
(シンタリング促進剤)
シンタリング促進剤とは、金属粒子のシンタリングを促進する剤である。
【0023】
本実施形態の導電性ペーストはシンタリング促進剤を含有しているため、シンタリング促進剤を含有していない導電性ペーストと比較して、銀含有粒子のシンタリングが促進される。このようにシンタリングが促進されることにより、導電性や熱伝導性が向上するものと考えられる。
【0024】
従来、導電性ペーストの分野において、このように金属粒子のシンタリングを促進する剤は見出されていなかったが、本発明者は、種々の検討を行った結果、金属粒子のシンタリングを促進する剤を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0025】
本実施形態にかかるシンタリング促進剤によりシンタリングが促進されるメカニズムは明らかではないが、本実施形態にかかるシンタリング促進剤が銀含有粒子の表面に作用することにより銀含有粒子の分散性が向上した結果、銀含有粒子どうしの接触界面における融着や物質移動が促進され、シンタリングが促進されるものと推定される。
【0026】
本実施形態にかかるシンタリング促進剤は、式(1)または式(2)で示される化合物を一種または二種以上含むことができる。
【化7】
式(1)中、mは1以上20以下の整数である。
【化8】
式(2)中、nは1以上20以下の整数である。
【0027】
本実施形態にかかるシンタリング促進剤はエチレングリコール構造またはプロピレングリコール構造を有することを特徴とする。本発明者は、これらの構造が銀含有微粒子の表面と何らかの相互作用を起こすことにより、銀含有微粒子の分散性を向上させるものと推測している。
【0028】
上記式(1)中、mは、1以上、好適には2以上、より好適には3以上、さらに好適には4以上の整数であり、そして、20以下、好適には11以下、より好適には10以下、さらに好適には9以下の整数である。
mが上記範囲であることにより、銀含有粒子の分散性がより向上し、導電性ペーストから形成された接着層の導電性および熱伝導性がより向上する。
上記式(2)中、nは、1以上、好適には2以上、より好適には3以上、さらに好適には4以上の整数であり、そして、20以下、好適には13以下、より好適には12以下、さらに好適には11以下である。
nが上記範囲であることにより、銀含有粒子の分散性がより向上し、導電性ペーストから形成された接着層の導電性および熱伝導性がより向上する。
【0029】
本実施形態にかかるシンタリング促進剤の具体例としては、
共栄社化学株式会社製のエポライト40E(エチレングリコールジグリシジルエーテル)、エポライト100E(ジエチレングリコールジグリシジルエーテル)、エポライト400E(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)、エポライト70P(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、エポライト200P(トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、エポライト400P(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル);
ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX-810(エチレングリコールジグリシジルエーテル)、デナコールEX-821(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)、デナコールEX-830(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)、デナコールEX-920(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、デナコールEX-931(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)等を挙げることができる。
【0030】
本実施形態の導電性ペーストは、シンタリング促進剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0031】
本実施形態の導電性ペースト中のシンタリング促進剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には0.5質量部以上、より好適には0.7質量部以上、さらに好適には1.0質量部以上である。これにより、銀含有粒子のシンタリングがより促進される。
【0032】
また、本実施形態の導電性ペースト中のシンタリング促進剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には50質量部以下、より好適には20質量部以下、さらに好適には10質量部以下である。これにより、ヒートサイクル耐性や被着体への密着性などの性能のバランスがより良好になる。
【0033】
(銀含有粒子)
本実施形態にかかる導電性ペーストは、銀含有粒子を含有する。
【0034】
銀含有粒子は、焼結プロセスにおける適切な熱処理によってシンタリング(焼結)を起こし、粒子連結構造(シンタリング構造)を形成する。
【0035】
本実施形態にかかる銀含有粒子には、形状に特に制限がない。
【0036】
本実施形態にかかる銀含有粒子は、球状粒子、鱗片状粒子、凝集状粒子、および多面体形状の粒子からなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0037】
本実施形態においては、球状粒子、鱗片状粒子、凝集状粒子、および多面体形状の粒子の銀含有粒子から選択される2種以上を含むことがより好ましく、球状の銀含有粒子b1と、鱗片状、凝集状、および多面体形状から選択される1種以上の銀含有粒子b2とを含むことがさらに好ましく、球状の銀含有粒子b1と、鱗片状の銀含有粒子b2-1とを含むことが特に好ましい。これにより、銀含有粒子同士の接触率がさらに向上することから、当該導電性ペーストの焼結後においてネットワークが容易に形成され熱伝導性および電気伝導性がさらに向上する。
【0038】
銀含有粒子が銀含有粒子b2を含むことにより、導電性ペーストから得られる成形物の樹脂クラックを抑制したり、線膨張係数の増大を抑制することができる。
なお、本実施形態において、「球状」とは、完全な真球に限られず、表面に若干の凹凸がある形状等も包含する。その円形度は、例えば0.90以上、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上である。
【0039】
銀含有粒子のメジアン径D50は、例えば0.01μm以上50μm以下、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上10μm以下である。メジアン径D50を適切な値とすることで、熱伝導性、焼結性、ヒートサイクルに対する耐性などのバランスを取りやすい。また、D50を適切な値とすることで、塗布/接着の作業性の向上などを図れることもある。
銀含有粒子の粒度分布(横軸:粒子径、縦軸:頻度)は、単峰性であっても多峰性であってもよい。
【0040】
本発明の効果の観点から、銀含有粒子が、球状の銀含有粒子b1と鱗片状の銀含有粒子b2-1とを含むことが好ましい。これらの銀含有粒子は、実質的に銀のみからなる銀粒子であることがより好ましい。
【0041】
球状の銀含有粒子b1のメジアン径D50は、例えば0.1~20μm、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~5.0μmである。
球状の銀含有粒子b1の比表面積は、例えば0.1~2.5m2/g、好ましくは0.5~2.3m2/g、より好ましくは0.8~2.0m2/gである。
球状の銀含有粒子b1のタップ密度は、例えば1.5~6.0g/cm3、好ましくは2.5~5.8g/cm3、より好ましくは4.5~5.5g/cm3である。
球状の銀含有粒子b1の円形度は、例えば0.90以上、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上である。
これらの各特性を満たすことにより、熱伝導性、焼結性、ヒートサイクルに対する耐性などのバランスに優れる。
【0042】
鱗片状の銀含有粒子b2-1のメジアン径D50は、例えば0.1~20μm、好ましくは1.0~15μm、より好ましくは2.0~10μmである。
鱗片状の銀含有粒子b2-1の比表面積は、例えば0.1~2.5m2/g、好ましくは0.2~2.0m2/g、より好ましくは0.25~1.2m2/gである。
鱗片状の銀含有粒子b2-1のタップ密度は、例えば1.5~6.0g/cm3、好ましくは2.5~5.9g/cm3、より好ましくは4.0~5.8g/cm3である。
これらの各特性を満たすことにより、熱伝導性、焼結性、ヒートサイクルに対する耐性などのバランスに優れる。
【0043】
本実施形態においては、上記特性の少なくとも1つを満たす球状の銀含有粒子b1と、上記特性の少なくとも1つを満たす鱗片状の銀含有粒子b2-1を組み合わせることにより、熱伝導性および電気伝導性が特に向上する。
【0044】
鱗片状の銀含有粒子b2-1の含有量に対する球状の銀含有粒子b1の含有量の比(b1/b2-1)が好ましくは0.1以上10以下、より好ましくは0.3以上5以下である、特に好ましくは0.5以上3以下とすることができる。これにより、銀含有粒子同士の接触率が特に向上することから、当該導電性ペーストの焼結後においてネットワークが容易に形成され熱伝導性および電気伝導性が特に向上する。
【0045】
鱗片状の銀含有粒子b2-1のメジアン径D50に対する球状の銀含有粒子b1のメジアン径D50の比(b1/b2-1)が好ましくは0.01以上0.8以下、より好ましくは0.05以上0.6以下である。
これにより、鱗片状の銀含有粒子間の空隙に、球状の銀含有粒子が効率的に充填され、銀含有粒子同士の接触率が特に向上することから、当該導電性ペーストの焼結後においてネットワークが容易に形成され熱伝導性および電気伝導性が特に向上する。
【0046】
鱗片状の銀含有粒子b2-1のタップ密度に対する球状の銀含有粒子b1のタップ密度の比(b1/b2-1)が好ましくは0.5以上2.0以下、より好ましくは0.7以上1.2以下である。
これにより、銀含有粒子の充填率が向上し、銀含有粒子同士の接触率が特に向上することから、当該導電性ペーストの焼結後においてネットワークが容易に形成され熱伝導性および電気伝導性が特に向上する。
【0047】
銀含有粒子のメジアン径D50は、例えば、シスメックス株式会社製フロー式粒子像分析装置FPIA(登録商標)-3000を用い、粒子画像計測を行うことで求めることができる。より具体的には、この装置を用い、湿式で体積基準のメジアン径を計測することで、銀含有粒子の粒子径を決定することができる。
【0048】
本実施形態にかかる導電性ペースト中の銀含有粒子の含有量は、当該導電性ペーストの全不揮発成分を100質量部としたとき、好適には40質量部以上、より好適には60量部以上、さらに好適には80質量部以上である。これにより、導電性および熱導電性をより向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態にかかる導電性ペースト中の銀含有粒子の含有量は、当該導電性ペーストの全不揮発成分を100質量部としたとき、好適には98質量部以下、より好適には97質量部以下、さらに好適には96質量部以下である。これにより、熱伝導性、焼結性、被着体への密着性、ヒートサイクルに対する耐性などのバランスに優れる。
【0050】
銀含有粒子は、(i)実質的に銀のみからなる粒子であってもよいし、(ii)銀と銀以外の成分からなる粒子であってもよい。また、金属含有粒子として(i)および(ii)が併用されてもよい。
【0051】
(i)実質的に銀のみからなる粒子としては、例えば銀粒子を挙げることができる。
【0052】
(ii)銀と銀以外の成分からなる粒子としては、例えば銀コート樹脂粒子を挙げることができる。銀コート樹脂粒子は、樹脂粒子の表面が銀でコートされた粒子である。樹脂粒子の表面が銀でコートされた銀コート樹脂粒子は熱伝導性が良く、かつ、銀のみからなる粒子と比較してやわらかいため、銀コート樹脂粒子を用いることで、熱伝導率や貯蔵弾性率を適切な値に設計しやすくなる。
【0053】
銀コート樹脂粒子においては、樹脂粒子の表面の少なくとも一部の領域を銀層が覆っていればよい。もちろん、樹脂粒子の表面の全面を銀が覆っていてもよい。
【0054】
具体的には、銀コート樹脂粒子において、銀層は、樹脂粒子の表面の好ましくは50%以上、より好ましく75%以上、さらに好ましくは90%以上を覆っている。特に好ましくは、銀コート樹脂粒子において、銀層は、樹脂粒子の表面の実質的に全てを覆っている。
別観点として、銀コート樹脂粒子をある断面で切断したときには、その断面の周囲全部に銀層が確認されることが好ましい。
【0055】
さらに別観点として、銀コート樹脂粒子中の、樹脂/銀の質量比率は、例えば90/10~10/90、好ましくは80/20~20/80、より好ましくは70/30~30/70である。
【0056】
銀コート樹脂粒子における「樹脂」としては、例えば、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などを挙げることができる。もちろん、これら以外の樹脂であってもよい。また、樹脂は1種のみであってもよいし、2種以上の樹脂が併用されてもよい。
弾性特性や耐熱性の観点から、樹脂は、シリコーン樹脂または(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0057】
(i)実質的に銀のみからなる粒子は、例えば、DOWAハイテック社、福田金属箔粉工業社などより入手することができる。
【0058】
また、(ii)銀と銀以外の成分からなる粒子のうち、銀コート樹脂粒子は、例えば、三菱マテリアル社、積水化学工業社、株式会社山王などより入手することができる。
【0059】
(その他の成分)
本実施形態にかかる導電性ペーストは、シンタリング促進剤と銀含有粒子以外の成分を含有していてもよい。
【0060】
・エポキシモノマー
本実施形態にかかる導電性ペーストは、好適にはエポキシモノマーを含有する。
【0061】
本実施形態にかかるエポキシモノマーは、その構造中にエポキシ基を備えるものである。
【0062】
本実施形態に係るエポキシモノマーは、その構造中にエポキシ基を1つのみ備える単官能エポキシモノマーであってもよいし、その構造中にエポキシ基を2つ以上備える多官能エポキシモノマーであってもよい。
【0063】
単官能エポキシモノマーとしては、たとえば、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、m,p-クレジルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0064】
多官能エポキシモノマーとしては、たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体;水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体;ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの;トリメチロールプロパン骨格、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられる。
【0065】
本実施形態の導電性ペースト中のエポキシモノマーの含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には0.5質量部以上、より好適には0.7質量部以上、さらに好適には1.0質量部以上である。これにより、ヒートサイクル耐性や被着体への密着性などの性能のバランスがより良好になる。
【0066】
また、本実施形態の導電性ペースト中のエポキシモノマーの含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には50質量部以下、より好適には20質量部以下、さらに好適には10質量部以下である。
【0067】
・(メタ)アクリルモノマー
本実施形態にかかる導電性ペーストは、好適には(メタ)アクリルモノマーを含有する。
【0068】
本実施形態にかかるアクリルモノマーは、その構造中に(メタ)アクリル基を備えるモノマーである。
【0069】
本実施形態にかかるアクリルモノマーは、その構造中に(メタ)アクリル基を1つのみ備える単官能アクリルモノマーであってもよいし、その構造中に(メタ)アクリル基を2つ以上備える多官能アクリルモノマーであってもよい。
【0070】
本実施形態において、(メタ)アクリル基とは、(メタ)アクリレート基を含む概念である。また、本実施形態において、(メタ)アクリル基とは、アクリル基及びメタクリル基を示す概念であり、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を示す概念である。
【0071】
単官能アクリルモノマーとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート;
2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N-カルバゾールのような複素環式(メタ)アクリレート
などを挙げることができる。
【0072】
2官能アクリルモノマーとしては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートのような脂肪族ジ(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレートのような脂環式ジ(メタ)アクリレート;
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、フルオレン型ジ(メタ)アクリレートのような芳香族ジ(メタ)アクリレート;
イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレートのような複素環式ジ(メタ)アクリレート
などを挙げることができる。
【0073】
3官能以上のアクリルモノマーとしては、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート;
イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのような複素環式(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0074】
本実施形態の導電性ペースト中の(メタ)アクリルモノマーの含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には0.3質量部以上、より好適には0.5質量部以上、さらに好適には0.6質量部以上である。これにより、ヒートサイクル耐性や被着体への密着性などの性能のバランスがより良好になる。
【0075】
また、本実施形態の導電性ペースト中の(メタ)アクリルモノマーの含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には50質量部以下、より好適には20質量部以下、さらに好適には10質量部以下である。
【0076】
・硬化剤
本実施形態にかかる導電性ペーストがエポキシモノマーやエポキシ樹脂を含む場合、本実施形態にかかる導電性ペーストは硬化剤を含むことが好ましい。これにより、エポキシモノマーやエポキシ樹脂を硬化収縮させ、銀含有粒子を凝集させることができる。
【0077】
本実施形態の導電性ペースト中の硬化剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には0.5質量部以上、より好適には1.0質量部以上、さらに好適には1.2質量部以上である。これにより、ヒートサイクル耐性や被着体への密着性などの性能のバランスがより良好になる。
【0078】
また、本実施形態の導電性ペースト中の硬化剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には50質量部以下、より好適には20質量部以下、さらに好適には10質量部以下である。
【0079】
本実施形態にかかる導電性ペーストは、好適にはフェノール系硬化剤を含有する。
【0080】
フェノール系硬化剤としては、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF(ジヒドロキシジフェニルメタン)等のビスフェノール化合物;4,4'-ビフェノールなどのビフェニレン骨格を有する化合物などを挙げることができる。
【0081】
・硬化促進剤
本実施形態にかかる導電性ペーストは、エポキシモノマーまたはエポキシ樹脂と、硬化剤との反応を促進させる硬化促進剤を含んでもよい。
【0082】
硬化促進剤としては、たとえば、イミダゾール系硬化促進剤;有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等のアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物などを挙げることができる。
【0083】
本実施形態の導電性ペースト中の硬化促進剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には0.01質量部以上、より好適には0.05質量部以上、さらに好適には0.07質量部以上である。これにより、ヒートサイクル耐性や被着体への密着性などの性能のバランスがより良好になる。
【0084】
また、本実施形態の導電性ペースト中の硬化促進剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には10質量部以下、より好適には5質量部以下である。
【0085】
本実施形態にかかる導電性ペーストは、好適にはイミダゾール系硬化促進剤を含有する。
【0086】
イミダゾール系硬化促進剤としては、たとえば、2-フェニル-1H-イミダゾール-4,5-ジメタノール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジン、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイトなどを挙げることができる。
【0087】
・ラジカル重合開始剤
本実施形態にかかる導電性ペーストが(メタ)アクリルモノマーを含む場合、本実施形態にかかる導電性ペーストはラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。これにより、(メタ)アクリルモノマーを硬化収縮させ、銀含有粒子を凝集させることができる。
【0088】
ラジカル重合開始剤としては、たとえば、アゾ化合物、過酸化物などを用いることができる。上記具体例のうち、例えば、過酸化物を用いることが好ましい。
【0089】
上記過酸化物としては、たとえば、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタールなどの有機過酸化物を挙げることができ、より具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;
p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;
ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-へキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;
ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;
ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;
2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-へキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート等のパーオキシエステルなどを挙げることができる。
【0090】
本実施形態の導電性ペースト中のラジカル重合開始剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には0.01質量部以上、より好適には0.03質量部以上、さらに好適には0.04質量部以上である。これにより、ヒートサイクル耐性や被着体への密着性などの性能のバランスがより良好になる。
【0091】
また、本実施形態の導電性ペースト中のラジカル重合開始剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には10質量部以下、より好適には5質量部以下である。
【0092】
・溶剤
本実施形態にかかる導電性ペーストは溶剤を含むことが好ましい。これにより、導電性ペーストの流動性を向上させ、作業性の向上に寄与することができる。
【0093】
本実施形態に係る溶剤としては、たとえば、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アノン、ジアセトンアルコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、γ-ターピネオール、ターピネオール(α、β、γの混合物)、ジヒドロターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリセリン等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)もしくはジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルもしくはリン酸トリペンチル等のエステル類;
テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタンもしくは1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;
酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;
2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類、トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシンもしくは軽油等の炭化水素類;
アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;
アセトアミドもしくはN,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;
低分子量の揮発性シリコンオイル、または揮発性有機変成シリコンオイル等を挙げることができる。
【0094】
本実施形態の導電性ペースト中の溶剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には1質量部以上、より好適には2質量部以上、さらに好適には3質量部以上である。
【0095】
また、本実施形態の導電性ペースト中の溶剤の含有量は、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好適には50質量部以下、より好適には20質量部以下、さらに好適には10質量部以下である。
【0096】
本実施形態にかかる導電性ペーストには、必要に応じて、エポキシ樹脂や(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム等のポリマー成分;シリカ、アルミナ等の無機充填材;微細シリカ等のチキソ調整剤;カップリング剤:酸化防止剤;分散剤;消泡剤;レベリング剤等の成分を添加することもできる。
これらの成分の含有割合は、導電性ペーストを適用する用途に合わせて適宜設定することができる。
【0097】
本実施形態の導電性ペーストが、上記の各成分のうち例えばブタジエンゴムを含有する場合、他成分の反応性等の観点から、エポキシ基を有することが好ましい。
本実施形態の導電性ペーストにおける、エポキシ基を有するブタジエンゴム(以下、エポキシ基含有ブタジエンゴムという)の含有量は、ペーストから得られる効果物の貯蔵弾性率を低減させ基板等との密着性を向上させる観点から、当該導電性ペーストを100質量部としたとき、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
エポキシ基含有ブタジエンゴムの具体例としては、日本曹達株式会社製のNISSO-PB JP-200(エポキシ変性ポリブタジエン)を挙げることができる。
【0098】
本実施形態にかかる導電性ペーストは、上述の各成分と、必要に応じてその他の成分とを、従来公知の方法で混合することにより得ることができる。
【0099】
<物性>
本実施形態にかかる導電性ペーストは、好適には、20℃でペースト状である。すなわち、本実施形態にかかる導電性ペーストは、好適には、20℃で、糊のようにして基板等に塗布することができる。このことにより、本実施形態の導電性ペーストを、半導体素子の接着剤などとして好ましく用いることができる。
もちろん、適用されるプロセスなどによっては、本実施形態の導電性ペーストは、比較的低粘度のワニス状などであってもよい。
【0100】
本実施形態にかかる導電性ペーストを、焼結処理後の厚みが0.05mmになるようにガラス板上に塗布し、窒素雰囲気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間焼結処理し、硬化物を得た場合の、当該硬化物の体積抵抗率は、好適には9.5μΩ・cm以下、さらに好適には9.2μΩ・cm以下である。これにより、本実施形態の導電ペーストから得られる硬化物の導電性を向上させることができる。また、当該硬化物の体積抵抗率は、通常4.0μΩ・cm以上、好適には4.5μΩ・cm以上である。
【0101】
<用途>
本実施形態の導電性ペーストを用いて、半導体装置を製造することができる。例えば、本実施形態の導電性ペーストを、基材と半導体素子との「接着剤」として用いることで、半導体装置を製造することができる。
【0102】
換言すると、本実施形態の半導体装置は、例えば、基材と、上述の導電性ペーストを焼結して得られる接着層を介して基材上に搭載された半導体素子と、を備える。
【0103】
半導体素子としては、IC、LSI、電力用半導体素子(パワー半導体)、その他各種の素子を挙げることができる。また、基板としては、各種半導体ウエハ、リードフレーム、BGA基板、実装基板、ヒートスプレッダー、ヒートシンクなどを挙げることができる。
【0104】
以下、図面を参照して、半導体装置の一例を説明する。
図1は、半導体装置の一例を示す断面図である。
【0105】
半導体装置100においては、基板30の表面に本実施形態にかかる導電性ペーストが塗布されることにより接着層10が形成される。次いで、上記基板30の表面に上記接着層10を介して半導体素子20が搭載される。
【0106】
接着層10の厚さは、好適には5μm以上であり、より好適には10μm以上であり、さらに好適には20μm以上である。これにより、接着層の導電信頼性が向上する。また、接着層10の厚さは、好適には100μm以下、より好適には50μm以下である。
【0107】
導電性ペーストを塗工する方法は特に限定されない。具体的には、ディスペンシング、印刷法、インクジェット法などを挙げることができる。
【0108】
上記接着層10を介して半導体素子20が搭載された後、焼結により接着層10が含有する銀含有粒子がシンタリングする。
【0109】
その後、半導体素子20と基板30とがボンディングワイヤ40により電気的に接続され、さらにモールド樹脂50により封止され、次いで基板30の半導体素子20を搭載する表面と反対側の裏面上に複数の半田ボール60が形成されることにより、半導体装置100が形成される。
【0110】
[硬化物]
本実施形態にかかる硬化物は、上記の導電性ペーストを焼結して得られるものである。
【0111】
焼結の温度は、好適には150℃以上、より好適には180℃以上、さらに好適には200℃以上である。これにより、銀含有粒子どうしのシンタリングをより促進させることができる。
【0112】
焼結の温度は、好適には300℃以下、より好適には280℃以下、さらに好適には250℃以下である。これにより、焼結時のモノマー成分等の揮発を調整しやすくなり、硬化物の物性を調整しやすくなる。
【0113】
本実施形態にかかる硬化物の体積抵抗率は、好適には10.0μΩ・cm以下、より好適には9.5μΩ・cm以下、さらに好適には9.2μΩ・cm以下である。これにより、硬化物の導電性を向上させることができる。
また、本実施形態にかかる硬化物の体積抵抗率は、通常4.0μΩ・cm以上、好適には4.5μΩ・cm以上である。
【0114】
本実施形態にかかる硬化物の貯蔵弾性率(E´)は、好適には20GPa以下、より好適には17GPa以下、さらに好適には15GPa以下である。これにより、硬化物と被着体との密着性を向上させることができる。
また、本実施形態にかかる硬化物の貯蔵弾性率(E´)は、好適には1.0GPa以上、より好適には3.0GPa以上、さらに好適には5.0GPa以上である。これにより、硬化物の強度を向上させることができる。
【0115】
本実施形態にかかる硬化物は、上述の通り、シンタリング促進剤を含有する導電性ペーストを焼結して得られるものであるため、従来の硬化物と比較して、銀含有粒子のシンタリングが促進されている。
【0116】
本実施形態にかかる硬化物の断面をSEM観察すると、銀含有粒子どうしの融合がより多く発生しており、シンタリングが促進されていることが確認できる。このようにシンタリングが促進されることにより、導電性および熱伝導性が向上するものと考えられる。
【0117】
[シンタリング促進剤]
本実施形態にかかるシンタリング促進剤は、銀含有粒子同士がシンタリングすることを促進するものであり、式(1)または式(2)で示される化合物を含む。
【化9】
式(1)中、mは1以上20以下の整数である。
【化10】
式(2)中、nは1以上20以下の整数である。
【0118】
本実施形態にかかるシンタリング促進剤によりシンタリングが促進されるメカニズムは明らかではないが、本実施形態にかかるシンタリング促進剤が銀含有粒子の表面に作用することにより銀含有粒子の分散性が向上した結果、銀含有粒子どうしの接触界面における融着や物質移動が促進され、シンタリングが促進されるものと推定される。
【0119】
本実施形態にかかるシンタリング促進剤は、導電性ペーストをはじめとした種々の樹脂組成物に配合することができる。
【0120】
本実施形態にかかるシンタリング促進剤が配合ざれる樹脂組成物の組成は特に限定されない。
【0121】
当該樹脂組成物中のシンタリング促進剤の含有量は特に限定されないが、当該樹脂組成物を100質量部としたとき、好適には0.5質量部以上、より好適には0.7質量部以上、さらに好適には1.0質量部以上である。これにより、銀含有粒子のシンタリングがより促進される。
【0122】
また、当該樹脂組成物中のシンタリング促進剤の含有量は、当該樹脂組成物を100質量部としたとき、好適には50質量部以下、より好適には20質量部以下、さらに好適には10質量部以下である。これにより、ヒートサイクル耐性や被着体への密着性などの性能のバランスがより良好になる。
【0123】
[シンタリング促進方法]
本実施形態にかかるシンタリング促進方法は、上述のシンタリング促進剤を用いて銀含有粒子のシンタリングを促進する方法である。
【0124】
上述のシンタリング促進剤を、導電性ペーストをはじめとした種々の樹脂組成物に配合することにより、銀含有粒子のシンタリングを促進させることができる。
【0125】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0126】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0127】
[導電性ペーストの調製]
表1および3に示す配合に従い各成分を均一に混合することによりジェットディスペンス用導電性ペーストに配合するワニス1~11およびA1~A7を調製した。表1および3における各成分の含有量の単位は、質量部である。
【0128】
表1および3に示す成分の詳細は以下のとおりである。
【0129】
(シンタリング促進剤)
・シンタリング促進剤1:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(製品名:エポライト400E、共栄社化学株式会社製、前述の式(1)に該当、m=9)
・シンタリング促進剤2:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(製品名:デナコールEX-821、ナガセケムテックス株式会社製、前述の式(1)に該当、m=4)
・シンタリング促進剤3:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(製品名:デナコールEX-920、ナガセケムテックス株式会社製、前述の式(2)に該当、n=3)
・シンタリング促進剤4:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(製品名:デナコールEX-931、ナガセケムテックス株式会社製、前述の式(2)に該当、n=11)
・シンタリング促進剤5:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(製品名:デナコールEX-830、ナガセケムテックス株式会社製、前述の式(1)に該当、n=9)
【0130】
(エポキシモノマー)
・エポキシモノマー1:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(製品名:デナコールEX-321L、ナガセケムテックス株式会社製)
・エポキシモノマー2:ビスフェノールF型エポキシモノマー(製品名:RE-303S、日本化薬株式会社製)
【0131】
(エポキシ基含有ブタジエンゴム)
・エポキシ基含有ブタジエンゴム1:エポキシ変性ポリブタジエン(製品名:NISSO-PB JP-200、日本曹達株式会社製)
【0132】
((メタ)アクリルモノマー)
・(メタ)アクリルモノマー1:1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(製品名:CHDMMA、日本化成株式会社製)
・(メタ)アクリルモノマー2:エチレングリコールジメタクリレート(製品名:ライトエステルEG、共栄社化学株式会社製)
【0133】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビスフェノールF型フェノール樹脂(製品名:DIC-BPF、DIC株式会社製)
【0134】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:2-フェニル-1H-イミダゾール-4,5-ジメタノール(製品名:2PHZ-PW、四国化成工業株式会社製)
【0135】
(ラジカル重合開始剤)
・ラジカル重合開始剤1:ジクミルパーオキサイド(製品名:パーカドックスBC、化薬ヌーリオン株式会社製)
【0136】
次いで、表2および4に示す配合に従い各成分を均一に混合することにより導電性ペーストを得た。表2および4における各成分の含有量の単位は、質量部である。
【0137】
表2および4に示す成分の詳細は以下のとおりである。
(銀含有粒子)
・銀フィラー1:銀粒子(製品名:AG-DSB-114、DOWAエレクトロニクス株式会社製、球状、D50:0.7μm、比表面積:1.05m2/g、タップ密度5.25g/cm3、円形度:0.953)
・銀フィラー2:銀粒子(製品名:HKD-12、福田金属箔粉工業株式会社製、鱗片状、D50:7.6μm、比表面積:0.315m2/g、タップ密度:5.5g/cm3)
(溶剤)
・溶剤1:トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル(製品名:BFTG、日本乳化剤株式会社製)
【0138】
[硬化物の作製]
得られた導電性ペーストをガラス板上に塗布し、窒素雰囲気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間焼結処理を行った。これにより、厚さ0.05mmの硬化物を得た。
【0139】
[体積抵抗率]
ミリオームメータ(HIOKI社製)による直流四電極法により、電極間隔が40mmの電極を用い、得られた硬化物表面の体積抵抗率を測定した。
【0140】
[貯蔵弾性率]
得られた硬化物から約0.1mm×約10mm×約4mmの短冊状サンプルを切り出し、当該短冊状サンプルを用いて25℃における貯蔵弾性率(E’)を、DMA(動的粘弾性測定、引張モード)により昇温速度5℃/min、周波数10Hzの条件で測定した。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
上記表2および4に示す通り、各実施例の導電性ペーストは、比較例の導電性ペーストと比べて、体積抵抗率が小さく、導電性に優れることが確認された。
【0146】
[硬化物断面のSEM観察]
得られた硬化物から約4mm×約10mm×約50μmのSEM観察用切片を切り出し、当該SEM観察用切片を走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、装置名:MiniscopeTM3030)により倍率:5000倍で観察した。
【0147】
実施例2のSEM観察像を
図2に、比較例1のSEM観察像を
図3にそれぞれ示す。それぞれのSEM観察像において、白く映っている部分が銀含有粒子である。実施例2のSEM観察像では、比較例1のSEM観察像と比較して、銀含有粒子どうしの融合がより多く発生しており、シンタリングが促進されていることがわかる。
【0148】
この出願は、2021年9月24日 に出願された日本出願特願2021-155956号および2022年9月6日に出願された日本出願特願2022-141719号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0149】
10 接着層
20 半導体素子
30 基板
40 ボンディングワイヤ
50 モールド樹脂
60 半田ボール
100 半導体装置
【要約】
銀含有粒子と、上記銀含有粒子同士がシンタリングすることを促進するシンタリング促進剤と、を含有する導電性ペーストであって、上記シンタリング促進剤が式(1)または式(2)で示される化合物を含む、導電性ペースト。
(式(1)中、mは1以上20以下の整数である。)
(式(2)中、nは1以上20以下の整数である。)