(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】電力運用管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20230411BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230411BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20230411BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J7/35 K
H02J7/00 B
(21)【出願番号】P 2022199922
(22)【出願日】2022-12-15
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2022039804
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518208266
【氏名又は名称】株式会社KATOホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢二
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137863(JP,A)
【文献】特開2008-104332(JP,A)
【文献】特開2011-101534(JP,A)
【文献】特開2010-288393(JP,A)
【文献】特開2019-47612(JP,A)
【文献】特開2017-63554(JP,A)
【文献】特開2012-60761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを電力に変換するために複数の施設のそれぞれに対応して設置された複数の個別変換装置と、
前記複数の施設のそれぞれに対応して設置され、対応する個別変換装置で生成された電力を蓄積可能、前記蓄積されている電力を対応する施設に供給可能、かつ、外部の電力施設との間で電力の授受が可能な複数の個別蓄電池と、
電力を蓄積可能、かつ、各個別蓄電池との間で電力の授受が可能な共通蓄電池と、
各個別蓄電池に蓄積されている個別蓄積電力量を計測する計測部と、
各個別蓄電池と前記共通蓄電池との間の電力の授受を制御する制御部と、
を備え、
各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別買電基準電力量(E1)以下となった場合に、前記外部の電力施設から買電するように設定されており、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別買電基準電力量(E1)より大きい値に設定された個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行い、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を上回っている他の個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池からではなく、前記他の個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うことを特徴とする電力運用管理システム。
【請求項2】
各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別売電基準電力量(E2)以上となった場合に、前記外部の電力施設に売電するように設定されており、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別売電基準電力量(E2)より小さい値に設定された個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池に電力を供給させる制御を行い、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を上回っている他の個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池からではなく、前記多量個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の電力運用管理システム。
【請求項3】
前記共通蓄電池は、前記共通蓄積電力量が共通売電基準電力量(E4)以上となった場合に、前記外部の電力施設に売電するように設定されており、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池3が存在しており、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を上回っている他の個別蓄電池が存在せず、かつ、前記共通蓄積電力量が前記共通売電基準電力量(E4)以下に設定された共通売電予防電力量(E8)を上回っている場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の電力運用管理システム。
【請求項4】
再生可能エネルギーを電力に変換するために複数の施設のそれぞれに対応して設置された複数の個別変換装置と、
前記複数の施設のそれぞれに対応して設置され、対応する個別変換装置で生成された電力を蓄積可能、前記蓄積されている電力を対応する施設に供給可能、かつ、外部の電力施設との間で電力の授受が可能な複数の個別蓄電池と、
電力を蓄積可能、かつ、各個別蓄電池との間で電力の授受が可能な共通蓄電池と、
各個別蓄電池に蓄積されている個別蓄積電力量を計測する計測部と、
各個別蓄電池と前記共通蓄電池との間の電力の授受を制御する制御部と、
を備え、
各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別売電基準電力量(E2)以上となった場合に、前記外部の電力施設に売電するように設定されており、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別売電基準電力量(E2)より小さい値に設定された個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池に電力を供給させる制御を行い、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を下回っている他の個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から、前記共通蓄電池にではなく、前記他の個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うことを特徴とする電力運用管理システム。
【請求項5】
各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別買電基準電力量(E1)以下となった場合に、前記外部の電力施設から買電するように設定されており、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別買電基準電力量(E1)より大きい値に設定された個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行い、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から、前記共通蓄電池にではなく、前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の電力運用管理システム。
【請求項6】
前記共通蓄電池は、前記共通蓄電力量が共通買電基準電力量(E3)以下となった場合に、前記外部の電力施設から買電するように設定されており、
前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在せず、かつ、前記共通蓄積電力量が前記共通買電基準電力量(E3)以上に設定された共通買電予防電力量(E7)を下回っている場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から前記共通蓄電池に電力を供給させる制御を行うことを特徴とする請求項5に記載の電力運用管理システム。
【請求項7】
再生可能エネルギーを電力に変換するために複数の施設のそれぞれに対応して設置された複数の個別変換装置と、前記複数の施設のそれぞれに対応して設置され、対応する個別変換装置で生成された電力を蓄積可能、前記蓄積されている電力を対応する施設に供給可能、かつ、外部の電力施設との間で電力の授受が可能な複数の個別蓄電池と、電力を蓄積可能、かつ、各個別蓄電池との間で電力の授受が可能な共通蓄電池と、各個別蓄電池に蓄積されている個別蓄積電力量を計測する計測部と、を有し、各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別買電基準電力量(E1)以下となった場合に、前記外部の電力施設から買電するように設定されている電力運用システムにおいて各個別蓄電池と前記共通蓄電池との間の電力の授受をコンピュータで実行されるプログラムであって、
前記個別蓄積電力量が前記個別買電基準電力量(E1)より大きい値に設定された個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うステップを備え、
前記制御を行うステップでは、
前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を上回っている他の個別蓄電池が存在するか否かを判断するステップと、
前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を上回っている他の個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池からではなく、前記他の個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うステップと、
を備えたことを特徴とする電力運用管理プログラム。
【請求項8】
再生可能エネルギーを電力に変換するために複数の施設のそれぞれに対応して設置された複数の個別変換装置と、前記複数の施設のそれぞれに対応して設置され、対応する個別変換装置で生成された電力を蓄積可能、前記蓄積されている電力を対応する施設に供給可能、かつ、外部の電力施設との間で電力の授受が可能な複数の個別蓄電池と、電力を蓄積可能、かつ、各個別蓄電池との間で電力の授受が可能な共通蓄電池と、各個別蓄電池に蓄積されている個別蓄積電力量を計測する計測部と、を有し、各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別売電基準電力量(E2)以上となった場合に、前記外部の電力施設に売電するように設定されている電力運用システムにおいて各個別蓄電池と前記共通蓄電池との間の電力の授受をコンピュータで実行されるプログラムであって、
前記個別蓄積電力量が前記個別売電基準電力量(E2)より小さい値に設定された個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うステップを備え、
前記制御を行うステップでは、
前記個別蓄積電力量が個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を下回っている他の個別蓄電池が存在するか否かを判断するステップと、
前記個別蓄積電力量が個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を下回っている他の個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から、前記共通蓄電池にではなく、前記他の個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うステップと、
を備えたことを特徴とする電力運用管理プログラム
【請求項9】
再生可能エネルギーを電力に変換するために複数の施設のそれぞれに対応して設置された複数の個別変換装置と、前記複数の施設のそれぞれに対応して設置され、対応する個別変換装置で生成された電力を蓄積可能、前記蓄積されている電力を対応する施設に供給可能、かつ、外部の電力施設との間で電力の授受が可能な複数の個別蓄電池と、電力を蓄積可能、かつ、各個別蓄電池との間で電力の授受が可能な共通蓄電池と、各個別蓄電池に蓄積されている個別蓄積電力量を計測する計測部と、を有し、各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別買電基準電力量(E1)以下となった場合に、前記外部の電力施設から買電するように設定されている電力運用システムにおいて各個別蓄電池と前記共通蓄電池との間の電力の授受をコンピュータで実行される方法であって、
前記個別蓄積電力量が前記個別買電基準電力量(E1)より大きい値に設定された個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うステップを備え、
前記制御を行うステップでは、
前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を上回っている他の個別蓄電池が存在するか否かを判断するステップと、
前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を上回っている他の個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池からではなく、前記他の個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うステップと、
を備えたことを特徴とする電力運用管理方法。
【請求項10】
再生可能エネルギーを電力に変換するために複数の施設のそれぞれに対応して設置された複数の個別変換装置と、前記複数の施設のそれぞれに対応して設置され、対応する個別変換装置で生成された電力を蓄積可能、前記蓄積されている電力を対応する施設に供給可能、かつ、外部の電力施設との間で電力の授受が可能な複数の個別蓄電池と、電力を蓄積可能、かつ、各個別蓄電池との間で電力の授受が可能な共通蓄電池と、各個別蓄電池に蓄積されている個別蓄積電力量を計測する計測部と、を有し、各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別売電基準電力量(E2)以上となった場合に、前記外部の電力施設に売電するように設定されている電力運用システムにおいて各個別蓄電池と前記共通蓄電池との間の電力の授受をコンピュータで実行される方法であって、
前記個別蓄積電力量が前記個別売電基準電力量(E2)より小さい値に設定された個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うステップを備え、
前記制御を行うステップでは、
前記個別蓄積電力量が個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を下回っている他の個別蓄電池が存在するか否かを判断するステップと、
前記個別蓄積電力量が個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を下回っている他の個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から、前記共通蓄電池にではなく、前記他の個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うステップと、
を備えたことを特徴とする電力運用管理方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設において生成された再生可能エネルギーを効果的に運用可能な電力運用管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、負荷で消費される電力が増加する前(例えば、深夜)に蓄電池を規定の充電量になるまで充電させておき、また、(外部)の電力系統から供給される電力が(電力の基本料金の閾値である)受電電力設定値を超えたときに蓄電池を放電させて負荷での消費に回す技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、電力系統から供給される電力が受電電力設定値を超えた状態が継続しないため、電気事業者に支払う電気料金を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、外部の電力系統から電力が供給されることが前提となっているため、災害等の発生により外部の電力系統からの電力供給が滞った場合には、電力を使用することができなくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、複数の施設において生成された再生可能エネルギーを効果的に運用可能な電力運用管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、再生可能エネルギーを電力に変換するために複数の施設のそれぞれに対応して設置された複数の個別変換装置と、前記複数の施設のそれぞれに対応して設置され、対応する個別変換装置で生成された電力を蓄積可能、前記蓄積されている電力を対応する施設に供給可能、かつ、外部の電力施設との間で電力の授受が可能な複数の個別蓄電池と、電力を蓄積可能、かつ、各個別蓄電池との間で電力の授受が可能な共通蓄電池と、各個別蓄電池に蓄積されている個別蓄積電力量を計測する計測部と、各個別蓄電池と前記共通蓄電池との間の電力の授受を制御する制御部と、を備え、各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別買電基準電力量(E1)以下となった場合に、前記外部の電力施設から買電するように設定されており、前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別買電基準電力量(E1)より大きい値に設定された個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行い、前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を下回っている少量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)を上回っている他の個別蓄電池が存在する場合に、前記少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別買電予防電力量(E5)以上まで増加するように、前記共通蓄電池からではなく、前記他の個別蓄電池から前記少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うことを特徴とする電力運用管理システムを提供している。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、再生可能エネルギーを電力に変換するために複数の施設のそれぞれに対応して設置された複数の個別変換装置と、前記複数の施設のそれぞれに対応して設置され、対応する個別変換装置で生成された電力を蓄積可能、前記蓄積されている電力を対応する施設に供給可能、かつ、外部の電力施設との間で電力の授受が可能な複数の個別蓄電池と、電力を蓄積可能、かつ、各個別蓄電池との間で電力の授受が可能な共通蓄電池と、各個別蓄電池に蓄積されている個別蓄積電力量を計測する計測部と、各個別蓄電池と前記共通蓄電池との間の電力の授受を制御する制御部と、を備え、各個別蓄電池は、前記個別蓄積電力量が個別に又は共通に設定された個別売電基準電力量(E2)以上となった場合に、前記外部の電力施設に売電するように設定されており、前記制御部は、前記個別蓄積電力量が前記個別売電基準電力量(E2)より小さい値に設定された個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から前記共通蓄電池又は他の個別蓄電池に電力を供給させる制御を行い、前記制御部は、前記個別蓄積電力量が個別売電予防電力量(E6)を上回っている多量個別蓄電池が存在しており、かつ、前記個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)を下回っている他の個別蓄電池が存在する場合に、前記多量個別蓄電池の個別蓄積電力量が前記個別売電予防電力量(E6)以下まで低下するように、前記多量個別蓄電池から、前記共通蓄電池にではなく、前記他の個別蓄電池に電力を供給させる制御を行うことを特徴とする電力運用管理システムを提供している。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、上記電力運用管理システムに対応する電力運用管理プログラム及び電力運用管理方法を提供している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電力運用管理システムによれば、複数の施設において生成された再生可能エネルギーを効果的に運用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態による電力運用管理システムの概念図
【
図2】本発明の実施の形態による買電基準電力量及び売電基準電力量の説明図
【
図3】本発明の実施の形態による買電予防のフローチャート
【
図4】本発明の実施の形態による売電予防のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による電力運用管理システム1について、
図1-
図4を参照して説明する。
【0012】
電力運用管理システム1は、
図1に示すように、スマートシティCを形成する複数の施設Rにおいて生成された再生可能エネルギーを運用するためのものであり、複数の個別変換装置2と、複数の個別蓄電池3と、共通蓄電池4と、共通変換装置5と、計測部6と、制御部7と、算出部8と、を備えている。
【0013】
複数の施設Rは、それぞれが電力を使用するものであり、施設Rとしては、住宅、教育施設、福祉施設、商店等の様々な種類が考えられる。本実施の形態では、複数の種類の施設Rが設けられているものとする。
【0014】
個別変換装置2は、再生可能エネルギーを電力に変換するために複数の施設Rのそれぞれに対応して設置されている。
【0015】
本実施の形態では、個別変換装置2として、ソーラーパネルを採用する。また、各施設Rに設置されるソーラーパネルの大きさや枚数は、施設Rの大きさ等に応じて異なり、各施設Rの賃貸料金や購入料金は、ソーラーパネルの大きさや枚数も考慮して決定されているものとする。
【0016】
個別蓄電池3は、複数の施設Rのそれぞれに対応して設置され、対応する個別変換装置2で生成された電力を蓄積可能、蓄積されている電力を対応する施設Rに供給可能、かつ、外部の電力施設Fとの間で電力の授受が可能である。
【0017】
なお、本実施の形態では、個別変換装置2で変換された電力は、対応する施設Rが電力を使用しているときには、当該施設Rでの使用に直接回され、対応する施設Rが電力を使用していないときや、使用に回しても余るときには、対応する個別蓄電池3に蓄積されるものとする。
【0018】
また、各個別蓄電池3は、蓄積されている電力量が個別に又は共通に設定された個別買電基準電力量E1(
図2参照)以下となった場合に、外部の電力施設Fから買電するように設定されている。本実施の形態では、個別買電基準電力量E1は、外部の電力施設Fとの契約により設定されているものとする。
【0019】
更に、各個別蓄電池3は、蓄積されている電力量が個別に又は共通に設定された個別売電基準電力量E2(
図2参照)以上となった場合に、個別売電基準電力量E2を超えた分を外部の電力施設Fに売電するように設定されている。本実施の形態では、個別売電基準電力量E2は、外部の電力施設Fとの契約により設定されているものとする。
【0020】
また、各個別蓄電池3は、他の各個別蓄電池3との間での電力の授受も可能である。
【0021】
共通蓄電池4は、電力を蓄積可能、かつ、各個別蓄電池3との間で電力の授受が可能である。
【0022】
詳細には、共通蓄電池4は、各個別蓄電池3に蓄積されている電力を受け取って蓄積可能であり、また、共通蓄電池4に蓄積されている電力を各個別蓄電池3に供給することも可能である。
【0023】
また、本実施の形態では、共通蓄電池4は、外部の電力施設Fとの間での電力の授受も可能である。
【0024】
本実施の形態では、共通蓄電池4に蓄積されている電力が共通買電基準電力量E3(
図2参照)以下となった場合に、外部の電力施設Fから買電するように設定されており、共通売電基準電力量E4(
図2参照)以上となった場合に、共通売電基準電力量E4を超えた分を外部の電力施設Fに売電するように設定されている。本実施の形態では、共通買電基準電力量E3及び共通売電基準電力量E4は、外部の電力施設Fとの契約により設定されているものとする。
【0025】
なお、本実施の形態では、各個別蓄電池3、共通蓄電池4、及び、電力施設Fは、互いに電線やケーブルで接続されているものとする。
【0026】
共通変換装置5は、再生可能エネルギーを電力に変換するためのものであり、共通蓄電池4に対応して設置されている。変換された電力は共通蓄電池4に蓄積される。
【0027】
本実施の形態では、共通変換装置5は、各個別変換装置2よりも遥かに多くの再生可能エネルギーを電力に変換可能なものとする。例えば、変換装置としてソーラーパネルを用いる場合には、共通変換装置5は、各個別変換装置2よりも大きなソーラーパネルや多くの枚数のソーラーパネルを有することが考えられる。なお、共通変換装置5としては、単一のものに限らず、複数の変換装置の集合体を共通変換装置5とみなしても良い。従って、本実施の形態では、共通変換装置5で変換された電力を蓄積する共通蓄電池4も、各個別蓄電池3よりも遥かに多くの電力(例えば、全ての個別蓄電池3の合計以上の電力)を蓄積可能なものを用いることとなる。このような構成により、共通蓄電池4は、電力が足りない個別蓄電池3に電力を供給することも可能となる。また、共通蓄電池4は、電力が蓄積され過ぎた個別蓄電池3から電力を受け取ることも可能であり、この点においても、各個別蓄電池3よりも遥かに多くの電力を蓄積可能なものを用いることとなる。
【0028】
なお、本実施の形態では、共通蓄電池4は、個別蓄電池3と異なり、施設Rに対応して設置されていないものとする。すなわち、共通蓄電池4は、スマートシティC内での電力運用を補助するために設置されているものであり、自らの使用を前提としていないものとする。
【0029】
計測部6は、各個別蓄電池3に蓄積されている個別蓄積電力量、及び、共通蓄電池4に蓄積されている共通蓄積電力量を計測する。
【0030】
更に、計測部6は、共通蓄電池4から各個別蓄電池3(各施設R)へ供給された電力量、各個別蓄電池3から共通蓄電池4に供給された電力量、及び、各個別蓄電池3間で供給された電力量も個別に計測する。
【0031】
制御部7は、各個別蓄電池3間の電力の授受、及び、各個別蓄電池3と共通蓄電池4との間の電力の授受を制御する。
【0032】
ここで、本実施の形態による制御部7は、スマートシティC内で生成された電力を効果的に運用するための制御を行う。
【0033】
詳細には、制御部7は、各個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電基準電力量E1以下とならないように、共通蓄電池4又は他の個別蓄電池3から各個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0034】
本実施の形態では、個別蓄積電力量が個別買電基準電力量E1より大きい値に設定された個別買電予防電力量E5(
図2参照)を下回っている少量個別蓄電池3が存在する場合に、少量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5以上まで増加するように、共通蓄電池4又は他の個別蓄電池3から当該少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0035】
このようにして、各個別蓄電池3は、外部の電力施設Fから買電を行うことなく、共通蓄電池4又は他の個別蓄電池3から供給される電力を使用することが可能となるので、スマートシティC内で生成された電力を効果的に運用することが可能となる。更に、外部の電力施設Fから供給される電力の単価よりも共通蓄電池4から供給される電力の単価を低く設定しておけば、各施設Rは、スマートシティC内の電力(共通蓄電池4に蓄積されている電力)を安価に使用することが可能となる。
【0036】
一方で、天候不順等によりスマートシティC内の電力が不足する可能性が生じることも考えられるので、本実施の形態では、スマートシティC内で生成された電力を効果的に運用するために、各個別蓄電池3が外部の電力施設Fに売電を行うことを抑制する。
【0037】
詳細には、制御部7は、各個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電基準電力量E2以上とならないように、個別蓄電池3から共通蓄電池4又は他の個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0038】
本実施の形態では、個別蓄積電力量が個別売電基準電力量E2より小さい値に設定された個別売電予防電力量E6(
図2参照)を上回っている多量個別蓄電池3が存在する場合に、多量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6以下まで低下するように、多量個別蓄電池3から共通蓄電池4又は他の個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0039】
これにより、個別蓄電池3が外部の電力施設Fに売電を行うことが防止され、スマートシティC内での運用(消費)に回すことが可能となる。
【0040】
なお、共通蓄電池4に蓄積された電力のうち、共通売電基準電力量E4を超えた分の電力は、共通蓄電池4が外部の電力施設Fに売電することとなる。
【0041】
算出部8は、共通蓄電池4-各個別蓄電池3で授受された電力量、及び、各個別蓄電池3間で授受された電力量に基づき、各施設Rの電気料金を算出する。
【0042】
詳細には、共通蓄電池4から各個別蓄電池3へ供給される電力の第1の単価と、各個別蓄電池3から共通蓄電池4に供給される電力の第2の単価と、各個別蓄電池3間で授受される電力の第3の単価と、が設定されており、これらの単価と、授受した電力量と、に基づいて各施設Rの電気料金を算出する。
【0043】
本実施の形態では、上記いずれの単価も、外部の電力施設Fから買電する電力の単価より低く設定されている。そして、上記したように、制御部7は、各個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電基準電力量E1以下とならないように、共通蓄電池4から各個別蓄電池3に電力を供給する制御を行う。
【0044】
このような構成により、各施設Rは、電力施設Fから高価な電力を購入することが抑制され、スマートシティC内の安価な電力(共通蓄電池4に蓄積されている電力)を極力使用することが可能となる。
【0045】
このように、本実施の形態では、各個別蓄電池3による外部の電力施設Fとの電力の売買が防止されるが、蓄積電力量の多い個別蓄電池3から共通蓄電池4が電力を集め、共通蓄電池4から蓄積電力量の少ない個別蓄電池3に電力を供給させる構成の場合、「共通蓄電池4に電力を蓄積させる」という動作を介すことによって電力のロスが生じてしまう。従って、本実施の形態では、各個別蓄電池3から共通蓄電池4への供給は最低限に留め、各個別蓄電池3間で電力の授受を直接行わせる。
【0046】
詳細には、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を上回っている他の個別蓄電池3が存在する場合に、制御部7は、少量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5以上まで増加するように、共通蓄電池4からではなく、当該他の個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0047】
このような構成によれば、所定以上の電力を蓄積している他の個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力が直接供給されるので、スマートシティC全体として各個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給される割合が低減され、結果として、スマートシティC全体としての電力ロスを抑制することが可能となる。
【0048】
特に、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在する場合に、制御部7は、少量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5以上まで増加するように、共通蓄電池4からではなく、多量個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行うことが好ましい。
【0049】
このような構成によれば、多量個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力が直接供給されるので、少量個別蓄電池3が買電を行うこと、及び、多量個別蓄電池3が売電を行うことを防止しつつ、スマートシティC全体として各個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給される割合が低減され、結果として、スマートシティC全体としての電力ロスを抑制することが可能となる。
【0050】
更に、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在しており、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在せず、かつ、共通蓄積電力量が共通売電基準電力量E4以下に設定された共通売電予防電力量E8(
図2参照)を上回っている場合に、制御部7は、少量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5以上まで増加するように、共通蓄電池4から少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行うことが好ましい。
【0051】
このような構成によれば、多量個別蓄電池3は存在しないが共通蓄電池4の蓄積電力量が多い場合には、共通蓄電池4から少量個別蓄電池3に電力が供給されるので、スマートシティC内で生成された電力を効果的に運用することが可能となる。
【0052】
以上では、少量個別蓄電池3の買電防止の際の制御について説明したが、多量個別蓄電池3の売電防止の際の制御も同様にして行う。
【0053】
詳細には、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を下回っている他の個別蓄電池3が存在する場合に、制御部7は、多量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6以下まで低下するように、多量個別蓄電池3から、共通蓄電池4にではなく、当該の他の個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0054】
このような構成によれば、多量個別蓄電池3から所定以下の電力を蓄積している他の個別蓄電池3に電力が直接供給されるので、スマートシティC全体として各個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給される割合が低減され、結果として、スマートシティC全体としての電力ロスを抑制することが可能となる。
【0055】
特に、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在する場合に、制御部7は、多量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6以下まで低下するように、多量個別蓄電池3から、共通蓄電池4にではなく、少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行うことが好ましい。
【0056】
このような構成によれば、多量個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力が直接供給されるので、多量個別蓄電池3が売電を行うこと、及び、少量個別蓄電池3が買電を行うことを防止しつつ、スマートシティC全体として各個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給される割合が低減され、結果として、スマートシティC全体としての電力ロスを抑制することが可能となる。
【0057】
更に、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在せず、かつ、共通蓄積電力量が共通買電基準電力量E3以上に設定された共通買電予防電力量E7(
図2参照)を下回っている場合に、制御部7は、多量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6以下まで低下するように、多量個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力を供給させる制御を行うことが好ましい。
【0058】
このような構成によれば、少量個別蓄電池3は存在しないが共通蓄電池4の蓄積電力量が少ない場合には、多量個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給されるので、スマートシティC内で生成された電力を効果的に運用することが可能となる。
【0059】
続いて、
図3のフローチャートを用いて、本実施の形態の制御部7による買電予防の動作について説明する。ここでは、各個別蓄電池3の個別蓄積電力量は、計測部6により定期的に計測されているものとする。
【0060】
まず、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在するか否かを判断する(S11)。
【0061】
少量個別蓄電池3が存在する場合には(S11:YES)、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を上回っている他の個別蓄電池3が存在するか否かを判断する(S12)。本実施の形態では、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在するか否かを判断する。なお、S11とS12の順番は逆であっても良い。
【0062】
個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を上回っている他の個別蓄電池3が存在する場合(S12:YES)、共通蓄電池4からではなく、当該他の個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力を供給させる(S13)。
【0063】
そして、少量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5以上まで増加した後(S14:YES)、終了する(S11へ戻る)。
【0064】
なお、個別買電予防電力量E5まで増加した途端に少量個別蓄電池3への電力の供給を停止すると、少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御がすぐに必要となってしまう可能性が高いので、S14では、個別買電予防電力量E5よりもある程度(所定量)増加してから終了することが好ましい。
【0065】
一方、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を上回っている他の個別蓄電池3が存在しない場合(S12:NO)、続いて、共通蓄積電力量が共通売電予防電力量E8を上回っているか否かを判断する(S15)。
【0066】
共通蓄積電力量が共通売電予防電力量E8を上回っている場合(S15:YES)、共通蓄電池4から少量個別蓄電池3に電力を供給させる(S16)。
【0067】
そして、少量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5以上まで増加した後(S14:YES)、終了する(S11へ戻る)。
【0068】
一方、共通蓄積電力量が共通売電予防電力量E8を上回っていない場合(S15:NO)、少量個別蓄電池3に他の個別蓄電池3や共通蓄電池4から電力を供給させる制御は行われず、S11に戻る。そのまま他の個別蓄電池3や共通蓄電池4から少量個別蓄電池3に電力を供給されない状況が続き、個別蓄積量が個別買電基準電力量E1以下となった際に、少量個別蓄電池3は、外部の電力施設Fから買電することとなる。
【0069】
続いて、
図4のフローチャートを用いて、本実施の形態の制御部7による売電予防の動作について説明する。
【0070】
まず、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在するか否かを判断する(S21)。
【0071】
多量個別蓄電池3が存在する場合には(S21:YES)、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を下回っている他の個別蓄電池3が存在するか否かを判断する(S22)。本実施の形態では、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在するか否かを判断する。なお、S21とS22の順番は逆であっても良い。
【0072】
個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を下回っている他の個別蓄電池3が存在する場合には(S22:YES)、多量個別蓄電池3から、共通蓄電池4にではなく、当該他の個別蓄電池3に電力を供給させる(S23)。
【0073】
そして、多量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6以下まで低下した後(S24:YES)、終了する(S21へ戻る)。
【0074】
なお、個別売電予防電力量E6以下まで低下した途端に多量個別蓄電池3からの電力の供給を停止すると、多量個別蓄電池3から電力を供給させる制御がすぐに必要となってしまう可能性が高いので、S24では、個別売電予防電力量E6よりもある程度(所定量)低下してから終了することが好ましい。
【0075】
一方、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を下回っている他の個別蓄電池3が存在しない場合には(S22:NO)、続いて、共通蓄積電力量が共通買電予防電力量E7を下回っているが否かを判断する(S25)。
【0076】
共通蓄積電力量が共通買電予防電力量E7を下回っている場合(S25:YES)、多量個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力を供給させる(S26)。
【0077】
そして、多量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6以下まで低下した後(S24:YES)、終了する(S21へ戻る)。
【0078】
一方、共通蓄積電力量が共通買電予防電力量E7を下回っていない場合(S25:NO)、多量個別蓄電池3から他の個別蓄電池3や共通蓄電池4に電力を供給させる制御は行われず、S21に戻る。そのまま多量個別蓄電池3から他の個別蓄電池3や共通蓄電池4に電力を供給しない状況が続き、個別蓄積量が個別売電基準電力量E2以上となった場合に、多量個別蓄電池3は、外部の電力施設Fに売電することとなる。
【0079】
以上、説明したように、本実施の形態による電力運用管理システム1では、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を上回っている他の個別蓄電池3が存在する場合に、制御部7は、少量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5以上まで増加するように、共通蓄電池4からではなく、当該他の個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0080】
このような構成によれば、所定以上の電力を蓄積している他の個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力が直接供給されるので、スマートシティC全体として各個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給される割合が低減され、結果として、スマートシティC全体としての電力ロスを抑制することが可能となる。
【0081】
また、本実施の形態による電力運用管理システム1では、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在する場合に、制御部7は、少量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5以上まで増加するように、共通蓄電池4からではなく、多量個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0082】
このような構成によれば、多量個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力が直接供給されるので、少量個別蓄電池3が買電を行うこと、及び、多量個別蓄電池3が売電を行うことを防止しつつ、スマートシティC全体として各個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給される割合が低減され、結果として、スマートシティC全体としての電力ロスを抑制することが可能となる。
【0083】
また、本実施の形態による電力運用管理システム1では、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在しており、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在せず、かつ、共通蓄積電力量が共通売電基準電力量E4以下に設定された共通売電予防電力量E8を上回っている場合に、制御部7は、少量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5以上まで増加するように、共通蓄電池4から少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0084】
このような構成によれば、多量個別蓄電池3は存在しないが共通蓄電池4の蓄積電力量が多い場合には、共通蓄電池4から少量個別蓄電池3に電力が供給されるので、スマートシティC内で生成された電力を効果的に運用することが可能となる。
【0085】
また、本実施の形態による電力運用管理システム1では、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を下回っている他の個別蓄電池3が存在する場合に、制御部7は、多量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6以下まで低下するように、多量個別蓄電池3から、共通蓄電池4にではなく、当該の他の個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0086】
このような構成によれば、多量個別蓄電池3から所定以下の電力を蓄積している他の個別蓄電池3に電力が直接供給されるので、スマートシティC全体として各個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給される割合が低減され、結果として、スマートシティC全体としての電力ロスを抑制することが可能となる。
【0087】
また、本実施の形態による電力運用管理システム1では、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在する場合に、制御部7は、多量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6以下まで低下するように、多量個別蓄電池3から、共通蓄電池4にではなく、少量個別蓄電池3に電力を供給させる制御を行う。
【0088】
このような構成によれば、多い多量個別蓄電池3から少量個別蓄電池3に電力が直接供給されるので、多量個別蓄電池3が売電を行うこと、及び、他の個別蓄電池3が買電を行うことを防止しつつ、スマートシティC全体として各個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給される割合が低減され、結果として、スマートシティC全体としての電力ロスを抑制することが可能となる。
【0089】
また、本実施の形態による電力運用管理システム1では、個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6を上回っている多量個別蓄電池3が存在しており、かつ、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量E5を下回っている少量個別蓄電池3が存在せず、かつ、共通蓄積電力量が共通買電基準電力量E3以上に設定された共通買電予防電力量E7を下回っている場合に、制御部7は、多量個別蓄電池3の個別蓄積電力量が個別売電予防電力量E6以下まで低下するように、多量個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力を供給させる制御を行う。
【0090】
このような構成によれば、少量個別蓄電池3は存在しないが共通蓄電池4の蓄積電力量が少ない場合には、多量個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力が供給されるので、スマートシティC内で生成された電力を効果的に運用することが可能となる。
【0091】
尚、本発明の電力運用管理システムは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0092】
例えば、上記実施の形態では、制御部7が買電予防及び売電予防の両方の動作を行ったが、いずれか一方のみを行うことを除外するものではない。
【0093】
また、上記実施の形態では、
図3のS15で共通蓄積電力量が共通売電予防電力量E8を上回っていない場合、少量個別蓄電池3に他の個別蓄電池3や共通蓄電池4から電力を供給させる制御は行われなかったが、共通蓄積電力量が共通買電予防電力量E7又は共通買電基準電力量E3以下となるまでは、共通蓄電池4から少量個別蓄電池3に電力を供給させても良い。
【0094】
同様に、
図4のS25で共通蓄積電力量が共通買電予防電力量E7を下回っていない場合、多量個別蓄電池3から他の個別蓄電池3や共通蓄電池4に電力を供給させる制御は行われなかったが、共通蓄積電力量が共通売電予防電力量E8又は共通売電基準電力量E4以上となるまでは、多量個別蓄電池3から共通蓄電池4に電力を供給させても良い。
【0095】
また、上記実施の形態では、共通蓄電池4は、施設Rに対応して設置されていない(自らの使用を前提としていない)ものであったが、施設Rに対応して設置されている(自らの使用を前提としている)ことを除外するものではない。但し、共通蓄電池4は、スマートシティC内での電力運用を補助するためのものであるため、少なくとも、複数の個別蓄電池3の中で最大の容量を有するものよりも大きな容量を有していることが好ましい。
【0096】
また、上記実施の形態では、全ての施設Rに個別変換装置2が設置されていたが、個別変換装置2が設置されていない施設が存在することを除外するものではない。
【0097】
また、上記実施の形態では、個別変換装置2及び共通変換装置5として、太陽光を電力に変換するソーラーパネルを採用したが、他の再生可能エネルギー(風力、地熱、水力、バイオマス等)を電力に変換することができるものを採用してもよい。
【0098】
また、本発明は、制御部7が行う処理に相当するプログラムや、当該プログラムを記憶した記録媒体にも応用可能である。記録媒体の場合、コンピュータ等に当該プログラムがインストールされることとなる。ここで、当該プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体としては、CD-ROM等が考えられるが、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0099】
1 電力運用管理システム
2 個別変換装置
3 個別蓄電池
4 共通蓄電池
5 共通変換装置
6 計測部
7 制御部
8 算出部
C スマートシティ
F 外部の電力施設
R 施設
【要約】 (修正有)
【課題】複数の施設において生成された再生可能エネルギーを効果的に運用可能な電力運用管理システムを提供する。
【解決手段】複数の個別変換装置と、複数の個別蓄電池と、共通蓄電池と、共通変換装置と、計測部と、制御部、算出部、を備え電力運用管理システムにおいて、各個別蓄電池は、個別蓄積電力量が個別買電基準電力量以下となった場合に、外部の電力施設から買電するように設定されている。制御部は、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量を下回っている少量個別蓄電池が存在しS11YES、かつ、個別蓄積電力量が個別買電予防電力量を上回っている他の個別蓄電池が存在する場合S12YESに、少量個別蓄電池の個別蓄積電力量が個別買電予防電力量以上まで増加するように、共通蓄電池からではなく、他の個別蓄電池から少量個別蓄電池に電力を供給させる制御を行う。
【選択図】
図3