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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20230411BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019056672
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159739
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】396008347
【氏名又は名称】アライドテレシスホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀康
(72)【発明者】
【氏名】山本 高至
(72)【発明者】
【氏名】神矢 翔太郎
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146484(JP,A)
【文献】国際公開第2016/033800(WO,A1)
【文献】特開2010-093742(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106412828(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 19/00-19/55
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部と,
アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部と,を有しており,
前記内外判定処理部は,
前記対象領域を構成する各アクセスポイントについて,アクセスポイントから前記無線クライアントへのベクトルと,そのアクセスポイント以外のほかのアクセスポイントからそのアクセスポイントへのベクトルとを用いて演算する外積ベクトルの方向を判定することで,前記無線クライアントが前記対象領域の内側にいるか外側にいるかを判定する,
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部と,
アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部と,を有しており,
前記内外判定処理部は,
前記対象領域を複数の内外判定領域に分割し,
前記分割した内外判定領域を構成する各アクセスポイントについて,アクセスポイントから前記無線クライアントへのベクトルと,そのアクセスポイント以外のほかのアクセスポイントからそのアクセスポイントへのベクトルとを用いて演算する外積ベクトルの方向を判定することで,前記無線クライアントが前記内外判定領域の内側にいるか外側にいるかを判定し,
前記内外判定領域のいずれか1以上において,前記無線クライアントが前記内外判定領域の内側にいることを判定すると,前記無線クライアントが前記対象領域の内側にいることを判定する,
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項3】
前記対象領域は,
前記アクセスポイント間の距離または前記アクセスポイントと前記無線クライアント間の距離を,所定割合または所定値長くした領域で構成する,
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記対象領域は,
前記対象領域と相似を維持しながら,前記対象領域の面積を所定割合または所定値だけ拡大した領域で構成する,
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部と,
アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部と,
前記対象領域の境界付近の領域である境界領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する境界判定処理部と,を有しており,
前記境界判定処理部は,
前記対象領域を構成する各辺における,アクセスポイントと前記無線クライアントの相対位置から演算される外積ベクトルの大きさに基づいて算出した,その辺を含む直線と前記無線クライアントとの間の距離を用いることで,前記無線クライアントが前記境界領域の内側に位置するか外側に位置するかを判定し,
前記境界領域の内側に位置すると判定した場合には,前記対象領域の内側にいると判定し,
前記境界領域の外側に位置すると判定した場合には,前記内外判定処理を実行する,
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項6】
前記境界判定処理部は,
前記対象領域を構成する各辺について,その辺を含む直線と前記無線クライアントとの間の距離を,アクセスポイントと前記無線クライアントの相対位置から演算される外積ベクトルの大きさに基づいてそれぞれ演算し,
それらの距離のうち,2つの距離があらかじめ定めた基準距離よりも小さい場合,または,1の距離が前記基準距離よりも小さくかつ対応する辺を構成する2つのアクセスポイントとの距離のうち大きい方がその辺の長さよりも小さい場合には,前記境界領域の内側であると判定し,それら以外の場合には前記境界領域の外側であると判定する,
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部と,
アクセスポイントにより構成される多角形の複数の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部と,
前記無線クライアントが内側にいると判定した対象領域の共通する領域に,前記無線クライアントがいると判定する所在領域判定処理部と,
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
コンピュータを,
アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部,
アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,
前記内外判定処理部は,
前記対象領域を構成する各アクセスポイントについて,アクセスポイントから前記無線クライアントへのベクトルと,そのアクセスポイント以外のほかのアクセスポイントからそのアクセスポイントへのベクトルとを用いて演算する外積ベクトルの方向を判定することで,前記無線クライアントが前記対象領域の内側にいるか外側にいるかを判定する,
ことを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項9】
コンピュータを,
アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部,
アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,
前記内外判定処理部は,
前記対象領域を複数の内外判定領域に分割し,
前記分割した内外判定領域を構成する各アクセスポイントについて,アクセスポイントから前記無線クライアントへのベクトルと,そのアクセスポイント以外のほかのアクセスポイントからそのアクセスポイントへのベクトルとを用いて演算する外積ベクトルの方向を判定することで,前記無線クライアントが前記内外判定領域の内側にいるか外側にいるかを判定し,
前記内外判定領域のいずれか1以上において,前記無線クライアントが前記内外判定領域の内側にいることを判定すると,前記無線クライアントが前記対象領域の内側にいることを判定する,
ことを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項10】
コンピュータを,
アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部,
アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部,
前記対象領域の境界付近の領域である境界領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する境界判定処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,
前記境界判定処理部は,
前記対象領域を構成する各辺における,アクセスポイントと前記無線クライアントの相対位置から演算される外積ベクトルの大きさに基づいて算出した,その辺を含む直線と前記無線クライアントとの間の距離を用いることで,前記無線クライアントが前記境界領域の内側に位置するか外側に位置するかを判定し,
前記境界領域の内側に位置すると判定した場合には,前記対象領域の内側にいると判定し,
前記境界領域の外側に位置すると判定した場合には,前記内外判定処理を実行する,
ことを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項11】
コンピュータを,
アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部,
アクセスポイントにより構成される多角形の複数の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部,
前記無線クライアントが内側にいると判定した対象領域の共通する領域に,前記無線クライアントがいると判定する所在領域判定処理部,
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,無線通信で用いる無線クライアントの位置を推定する情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
店舗やイベントスペースなどのさまざまな空間において,人の導線や人の集中具合を特定するために,無線通信で用いる無線クライアントの位置を推定することが従来より行われている。推定方法の代表的な一例が,下記特許文献1に示す三点測位による方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-255673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に示すような三点測位の方法を用いることで,座標平面における無線クライアントの位置を推定することができる。三点測位では,まず座標平面における無線通信のアクセスポイントの位置座標をあらかじめ正確に設定しておく。そして各アクセスポイントと無線クライアントとの無線通信における電波の信号強度に基づいて,無線クライアントと各アクセスポイントとの直線距離を算出し,その直線距離を用いて,無線クライアントの平面空間における位置座標を算出する方法である。これによって無線クライアントの位置を座標平面上で推定することができる。
【0005】
三点測位の方法の場合,無線クライアントの位置座標を算出するため,アクセスポイントの位置座標をあらかじめ正確に設定する必要がある。そのため,設置作業の大きな負担となっている。また,無線クライアントの位置も座標平面における位置座標で特定することから,アクセスポイントを移動することもできない。さらに,アクセスポイントと無線クライアントとの直線上に障害物があった場合(シャドウイング),無線クライアントで受信する電波の信号強度に対する影響により,信号強度を用いて算出する直線距離に誤差が生じる可能性があるが,誤差を含んだまま演算をすることとなるので,無線クライアントの位置座標にも誤差が生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み,アクセスポイントを設置する際の作業負担を軽減して,無線クライアントの位置を推定する情報処理システムを発明した。また,シャドウイングによる影響を軽減して,無線クライアントの位置を推定する情報処理システムを発明した。
【0007】
第1の発明は,アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部と,アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部と,を有しており,前記内外判定処理部は,前記対象領域を構成する各アクセスポイントについて,アクセスポイントから前記無線クライアントへのベクトルと,そのアクセスポイント以外のほかのアクセスポイントからそのアクセスポイントへのベクトルとを用いて演算する外積ベクトルの方向を判定することで,前記無線クライアントが前記対象領域の内側にいるか外側にいるかを判定する,情報処理システムである。
【0008】
本発明では従来の三点測位などとは異なり,無線クライアントの位置座標を算出していないので,アクセスポイントの位置を厳密に設定する必要はない。そのため,アクセスポイントの設置負担を軽減することができる。また,無線クライアントがどのアクセスポイントの領域にいるかを特定しているので,シャドウイングなどによる影響を軽減して,無線クライアントの位置を推定することができる。
【0009】
第2の発明は,アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部と,アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部と,を有しており,前記内外判定処理部は,前記対象領域を複数の内外判定領域に分割し,前記分割した内外判定領域を構成する各アクセスポイントについて,アクセスポイントから前記無線クライアントへのベクトルと,そのアクセスポイント以外のほかのアクセスポイントからそのアクセスポイントへのベクトルとを用いて演算する外積ベクトルの方向を判定することで,前記無線クライアントが前記内外判定領域の内側にいるか外側にいるかを判定し,前記内外判定領域のいずれか1以上において,前記無線クライアントが前記内外判定領域の内側にいることを判定すると,前記無線クライアントが前記対象領域の内側にいることを判定する,情報処理システムである。
【0010】
信号強度は一定ではなく,変化する。またシャドウイングの影響も受ける場合がある。そのため無線クライアントが対象領域の内側にいるか外側にいるかは全体で判定するよりも,対象領域を分割し,その分割した領域のいずれかの内側にいることを判定することで,判定精度を向上させることができる。
【0011】
上述の発明において,前記対象領域は,前記アクセスポイント間の距離または前記アクセスポイントと前記無線クライアント間の距離を,所定割合または所定値長くした領域で構成する,情報処理システムのように構成することができる。
【0012】
また,上述の発明において,前記対象領域は,前記対象領域と相似を維持しながら,前記対象領域の面積を所定割合または所定値だけ拡大した領域で構成する,情報処理システムのように構成することができる。
【0013】
対象領域はアクセスポイント自体で構成するほか,それよりも拡大した領域で構成してもよい。これによって,信号強度の変化やシャドウイングの影響を軽減することができる。
【0014】
第5の発明は,アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部と,アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部と,前記対象領域の境界付近の領域である境界領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する境界判定処理部と,を有しており,前記境界判定処理部は,前記対象領域を構成する各辺における,アクセスポイントと前記無線クライアントの相対位置から演算される外積ベクトルの大きさに基づいて算出した,その辺を含む直線と前記無線クライアントとの間の距離を用いることで,前記無線クライアントが前記境界領域の内側に位置するか外側に位置するかを判定し,前記境界領域の内側に位置すると判定した場合には,前記対象領域の内側にいると判定し,前記境界領域の外側に位置すると判定した場合には,前記内外判定処理を実行する,情報処理システムである。
【0015】
本発明の構成によっても第1の発明と同様の技術的効果を得ることができる。すなわち,アクセスポイントの設置負担を軽減することができる。また,シャドウイングなどによる影響を軽減して,無線クライアントの位置を推定することができる。すなわち,無線クライアントが対象領域の辺の付近にいる場合,対象領域の内側にいるか外側にいるかは,信号強度の変化やシャドウイングの影響によって,誤認が生じやすい。そこで,本発明のように境界領域を設定し,境界領域にいる場合には対象領域の内側にいると判定することで,その影響を軽減することができる。
【0016】
上述の発明において,前記境界判定処理部は,前記対象領域を構成する各辺について,その辺を含む直線と前記無線クライアントとの間の距離を,アクセスポイントと前記無線クライアントの相対位置から演算される外積ベクトルの大きさに基づいてそれぞれ演算し,それらの距離のうち,2つの距離があらかじめ定めた基準距離よりも小さい場合,または,1の距離が前記基準距離よりも小さくかつ対応する辺を構成する2つのアクセスポイントとの距離のうち大きい方がその辺の長さよりも小さい場合には,前記境界領域の内側であると判定し,それら以外の場合には前記境界領域の外側であると判定する,情報処理システムのように構成することができる。
【0017】
境界判定処理は,本発明の処理によって実行することができる。
【0018】
第7の発明は,アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部と,アクセスポイントにより構成される多角形の複数の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部と,前記無線クライアントが内側にいると判定した対象領域の共通する領域に,前記無線クライアントがいると判定する所在領域判定処理部と,を有する情報処理システムである。
【0019】
無線クライアントがどの領域にいるかは,本発明のように,無線クライアントが内側にいると判定した対象領域の共通する領域を判定することで行える。そのため対象領域の数を増やせば,無線クライアントがいる領域を狭めて判定することができる技術的効果を得ることもできる。
【0020】
第1の発明の情報処理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち,コンピュータを,アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部,アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,前記内外判定処理部は,前記対象領域を構成する各アクセスポイントについて,アクセスポイントから前記無線クライアントへのベクトルと,そのアクセスポイント以外のほかのアクセスポイントからそのアクセスポイントへのベクトルとを用いて演算する外積ベクトルの方向を判定することで,前記無線クライアントが前記対象領域の内側にいるか外側にいるかを判定する,情報処理プログラムである。
第2の発明の情報処理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち,コンピュータを,アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部,アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,前記内外判定処理部は,前記対象領域を複数の内外判定領域に分割し,前記分割した内外判定領域を構成する各アクセスポイントについて,アクセスポイントから前記無線クライアントへのベクトルと,そのアクセスポイント以外のほかのアクセスポイントからそのアクセスポイントへのベクトルとを用いて演算する外積ベクトルの方向を判定することで,前記無線クライアントが前記内外判定領域の内側にいるか外側にいるかを判定し,前記内外判定領域のいずれか1以上において,前記無線クライアントが前記内外判定領域の内側にいることを判定すると,前記無線クライアントが前記対象領域の内側にいることを判定する,情報処理プログラムである。
【0021】
第5の発明の情報処理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち,コンピュータを,アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部,アクセスポイントにより構成される多角形の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部,前記対象領域の境界付近の領域である境界領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する境界判定処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,前記境界判定処理部は,前記対象領域を構成する各辺における,アクセスポイントと前記無線クライアントの相対位置から演算される外積ベクトルの大きさに基づいて算出した,その辺を含む直線と前記無線クライアントとの間の距離を用いることで,前記無線クライアントが前記境界領域の内側に位置するか外側に位置するかを判定し,前記境界領域の内側に位置すると判定した場合には,前記対象領域の内側にいると判定し,前記境界領域の外側に位置すると判定した場合には,前記内外判定処理を実行する,情報処理プログラムである。
第7の発明の情報処理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち,コンピュータを,アクセスポイントと無線クライアントとの信号強度に基づく距離情報を用いた協調位置推定方法により,アクセスポイントと無線クライアントとの相対位置を推定する相対位置推定処理部,アクセスポイントにより構成される多角形の複数の対象領域と,前記無線クライアントとの内外の位置関係を判定する内外判定処理部,前記無線クライアントが内側にいると判定した対象領域の共通する領域に,前記無線クライアントがいると判定する所在領域判定処理部,として機能させる情報処理プログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の情報処理システムを用いることによって,アクセスポイントを設置する際の作業負担を軽減して無線クライアントの位置を推定することができる。また,シャドウイングによる影響を軽減して,無線クライアントの位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の情報処理システムの処理機能の一例を模式的に示すブロック図である。
図2】本発明の情報処理システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本発明の情報処理システムの処理プロセスの一例を示すフローチャートの一例である。
図4】内外判定処理の一例を模式的に示す図である。
図5】無線クライアントがアクセスポイントで構成される領域の内側に位置するか外側に位置するかを判定する処理の一例を模式的に示す図である。
図6】ある空間に6台のアクセスポイントを設置した状態の一例を模式的に示す図である。
図7】対象領域を設定した状態の一例を模式的に示す図である。
図8】実施例2における情報処理システムの処理機能の一例を模式的に示すブロック図である。
図9】実施例2における情報処理システムの処理プロセスの一例を示すフローチャートの一例である。
図10】境界判定処理の一例を模式的に示す図である。
図11】三角形で構成した対象領域に対する境界領域を模式的に示す図である。
図12】実施例3における対象領域に対して設定した拡大した対象領域を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の情報処理システム1は,無線通信で用いる複数のアクセスポイントにより構成される領域の内側または外側に,無線クライアントが位置するか否かを推定することによって,無線クライアントの位置推定を行う。図1に,本発明の情報処理システム1における処理機能の一例をブロック図で模式的に示す。本明細書においては,無線通信としては,無線LANの場合を例として説明するが,それ以外の無線通信,たとえばBluetooth(登録商標)やビーコンなど,各種の無線通信でも同様に実現することができる。またアクセスポイントとは無線クライアントをネットワークに接続するための通信機器である。また無線クライアントとは,ユーザなどが利用する可搬型通信端末であって,無線通信によって,アクセスポイントを介してインターネットなどのネットワークに接続することができる。
【0025】
本発明の情報処理システム1は,サーバやパーソナルコンピュータなどの各種のコンピュータにより実現される。図2にコンピュータのハードウェア構成の一例を示す。コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,キーボードやポインティングデバイス(マウスやテンキーなど)などの入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報をインターネットやLANなどのネットワークを介して送受信する通信装置74とを有している。
【0026】
なお,図1では情報処理システム1が一台のコンピュータで実現される場合を示したが,複数台のコンピュータにその機能が分散配置され,実現されても良い。また,本発明における各処理部は、その機能が論理的に区別されているのみであって、物理上あるいは事実上は同一の領域をなしていても良い。また情報処理システム1は,ユーザが利用する無線クライアントで機能してもよいし,無線クライアントで測定した信号強度の情報を取得し,その情報に基づいて処理を実行してもよい。
【0027】
本発明の情報処理システム1は,信号強度特定処理部10と距離推定処理部11と相対位置推定処理部12と内外判定処理部13と所在領域判定処理部14とを有する。
【0028】
信号強度特定処理部10は,各アクセスポイントと無線クライアントとの無線通信,たとえば電波の信号強度を特定する。信号強度の特定は,アクセスポイントと無線クライアントとの通信の場合,その通信に,RSSI値やdBm値などの電波の信号強度を示す情報が含まれているので,その情報に基づいて信号強度を特定する。
【0029】
距離推定処理部11は,信号強度特定処理部10で特定した信号強度に基づいて,公知の伝搬モデルにより,アクセスポイントと無線クライアントとの距離(直線距離)を推定する。距離推定処理部11は,好ましくは信号強度特定処理部10で特定した無線の信号強度に基づいて,それぞれのアクセスポイントとの間の距離を推定する。
【0030】
相対位置推定処理部12は,距離推定処理部11で算出したアクセスポイントと無線クライアントとの距離情報に基づいて,任意のn台(3≦n≦N(Nは設置されたアクセスポイントの数))のアクセスポイントと,無線クライアントとの相対位置を,ばねモデルを用いて推定する。ここで無線クライアントが特定するn台のアクセスポイントとしては,好ましくは無線クライアントに近接する3台のアクセスポイントであることがよいが,それに限定するものではなく,また4台以上であってもよい。無線クライアントにアクセスポイントが近接するか否かは,信号強度に基づいて特定できる。信号強度が強ければ近いアクセスポイントであり,弱ければ遠いアクセスポイントとする。
【0031】
ばねモデルとは,アクセスポイント間,アクセスポイントと無線クライアント間にそれぞれ自然長が推定距離のばねを仮想的に張り,ばね全体の弾性エネルギーの総和が最小となったときの位置を推定位置とする協調位置推定の方法である。協調位置推定の方法としては,ばねモデルに限定するものではない。そしてバネモデルを用いた場合の無線クライアントの推定位置Eは,数1によって算出される。
(数1)
ここで,ハットが付されたlはアクセスポイントと無線クライアントとの間または2つのアクセスポイントの間の推定距離,dijは仮想的に張ったばねの自然長(推定距離),kはばね定数である。このときアクセスポイント間の推定距離はアクセスポイント同士の信号強度に基づいて,上述の距離推定処理部11と同様の処理により特定することができる。またアクセスポイントと無線クライアント間の距離も,アクセスポイントと無線クライアント間の信号強度に基づいて,上述の距離推定処理部11の処理により特定することができる。
【0032】
内外判定処理部13は,相対位置推定処理部12で算出した無線クライアントの推定位置に基づいて,各アクセスポイントを頂点として構成される領域(対象領域)の内側に位置するか,外側に位置するかを判定する。対象領域の内側に位置するか外側に位置するかの内外判定処理としては,対象領域を構成するアクセスポイントのうちの一部のアクセスポイントによって構成される領域(内外判定領域)に分割し,各内外判定領域の内側に位置するか,外側に位置するかを外積ベクトルを用いて判定する。そして対象領域におけるいずれかの内外判定領域で内側に位置すると判定した場合には,対象領域の内側に位置すると判定することができる。
【0033】
対象領域に対する内外判定処理の一例を図4に模式的に示す。図4は,4台のアクセスポイントにより構成される四角形を対象領域とし,その対象領域を,4台のうちの3台のアクセスポイントで構成される三角形の内外判定領域に分割する。図4(a)は三角形ABCを,図4(b)は三角形BCDを,図4(c)は三角形ACDを,図4(d)は三角形ABDを,それぞれ内外判定領域として設定した状態を示す。そして対象領域である四角形ABCDのうち,いずれかの内外判定領域の三角形で無線クライアントが内側にいることを判定した場合には,対象領域の内側に無線クライアントがいると判定をする。
【0034】
なお,対象領域と内外判定領域はいずれも多角形であればよい。ただし対象領域がm角形,内外判定領域がn角形のときm≧nの関係となる。また内外判定領域は三角形であることが好ましいが,四角形以上の多角形であってもよい。
【0035】
無線クライアントがある領域の内側に位置するか外側に位置するかは,その領域を構成する各アクセスポイントに対して定まる2つのベクトルから演算される各外積ベクトルの方向(z軸)が同じであるか,異なっているかで判定をする。2つのベクトルとしては,当該アクセスポイントから見た無線クライアントのベクトルと,別のアクセスポイントから見た当該アクセスポイントのベクトルとが該当する。外積ベクトルの方向が同じである場合には,無線クライアントは領域の内側に位置すると判定し,外積ベクトルの方向が異なっている場合には,無線クライアントは領域の外側に位置すると判定をする。領域の内側に位置するか外側に位置するかの判定処理の一例を模式的に示すのが図5である。この処理によって,無線クライアントが内外判定領域の内側に位置するか外側に位置するかを判定することができる。

【0036】
以上のような処理を内外判定処理部13で実行することで,無線クライアントが対象領域の内側に位置するか外側に位置するかを判定することができる。
【0037】
なお,対象領域を複数の内外判定領域に分割せずに,対象領域と内外判定領域とを同一とし,対象領域に対して外積ベクトルの方向を用いた判定を行うことで,無線クライアントが対象領域の内側に位置するか外側に位置するかを判定してもよい。
【0038】
所在領域判定処理部14は,複数の対象領域を設定した空間において,無線クライアントがどの領域にいるかを判定する。
【0039】
たとえば図6に示すように,ある空間にアクセスポイントA乃至Fの6台のアクセスポイントを設置していたとする。そして,そのうち4台で対象領域を構成することとした場合,図7(a)乃至図7(o)の15の対象領域を設定することができる。内外判定処理部13は,それぞれの対象領域について内外判定処理を実行するので,所在領域判定処理部14は,内側にいると判定されたそれぞれの対象領域で共通する領域(範囲)に,当該無線クライアントが位置すると判定する。この判定結果は,適宜,表示装置72などで表示をしてもよい。
【0040】
以上のような処理を所在領域判定処理部14で実行することで,無線クライアントが複数の対象領域に分割した空間のどの領域(範囲)にいるかを判定することができる。そして従来の三点測位のように無線クライアントを位置座標で特定するのではなく,領域を用いて判定しているので,アクセスポイントの位置座標を厳密に設定する必要がなく,アクセスポイントの位置を簡単に変更することができる。
【実施例1】
【0041】
つぎに本発明の情報処理システム1の処理プロセスの一例を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0042】
まず空間に任意の数(N台)のアクセスポイントを設置する。そして設置したアクセスポイントによって構成する対象領域を設定しておく。対象領域の設定は,空間を表現した平面図において,設置したアクセスポイントの概略の位置を,マウスなどの入力装置73を用いて指定する。そして対象領域を構成するアクセスポイントの数(対象領域を構成する多角形の頂点の数)を設定することで,自動的に対象領域を設定できる。たとえば設置したアクセスポイントのうち,対象領域を構成するアクセスポイントの数に相当するアクセスポイントを特定し,それらによって構成される多角形の組み合わせをそれぞれ対象領域として設定すればよい。
【0043】
ここで設定した対象領域については,すべてを処理対象としてもよいし,一部を処理対象としてもよい。処理対象とする対象領域の数を多く設定すると無線クライアントが所在する領域(所在領域)の精度を向上させることができる。また各アクセスポイント間の距離はアクセスポイント同士の信号強度に基づいて,伝搬モデルによって特定することができる。
【0044】
そして信号強度特定処理部10は,無線クライアントが当該空間にいた場合,その空間に設置されたアクセスポイントと無線クライアントとの信号強度を,その通信から特定する(S100)。そして距離推定処理部11は,伝搬モデルによって,各アクセスポイントと無線クライアントとの推定距離を算出する(S110)。
【0045】
距離推定処理部11において,各アクセスポイントと無線クライアントとの推定距離を算出後,相対位置推定処理部12は,無線クライアントの近傍に位置する任意のn台(3≦n≦N),たとえば3台のアクセスポイントを信号強度の強さに基づいて特定する。そして,特定したアクセスポイントと無線クライアントとの距離情報(推定距離)に基づいて,無線クライアントの相対位置を,ばねモデルを用いて推定をする(S120)。
【0046】
距離推定処理部11において無線クライアントの相対位置を推定すると,内外判定処理部13が,無線クライアントがあらかじめ設定した対象領域の内側にいるか外側にいるかの内外判定処理を実行する(S130)。すなわち,図7に示すように対象領域が設定されていた場合,各対象領域について内外判定処理を実行する。内外判定処理部13は,この際に,対象領域を複数の内外判定領域に分割し,分割した各内外判定領域について,無線クライアントが,分割したそれぞれの内外判定領域の内側にいるか外側にいるかを,外積ベクトルを用いて判定する。そして分割した内外判定領域のいずれかにおいて内側にいることを判定した場合,無線クライアントがその対象領域の内側にいると判定する。
【0047】
このように対象領域をさらに内外判定領域に分割することで,シャドウイングや,信号強度が変化する場合であっても,対象領域の内側,外側の判定精度を向上させることができる。
【0048】
設定した対象領域のすべてについて内外判定処理部13が内外判定処理を実行すると(S140),所在領域判定処理部14は,内側と判定した各対象領域で,共通している領域(範囲)を特定する。そして,判定した領域(範囲)に無線クライアントが所在すると判定する(S150)。
【0049】
以上の処理を実行することで,空間における無線クライアントが所在する領域(範囲)を判定することができる。
【実施例2】
【0050】
つぎに,本発明の情報処理システム1において境界判定処理を設ける場合を説明する。本実施例における情報処理システム1の処理機能の一例をブロック図で模式的に示す。
【0051】
本実施例における情報処理システム1では,実施例1の構成に加え,境界判定処理部15を備えている。
【0052】
境界判定処理部15は,無線クライアントが対象領域の境界付近に位置するかを判定する。すなわち,境界判定処理部15は,対象領域の辺を構成するアクセスポイント間の距離と,アクセスポイントと無線クライアントの相対位置から演算される外積ベクトルの大きさで,無線クライアントが対象領域の境界領域の内側にあるか外側にいるかを判定する境界判定処理を実行する。なお境界付近を示す領域を境界領域とする。
【0053】
具体的には,境界判定処理部15は,対象領域を構成する各辺について,その辺を含む直線と無線クライアントとの間の距離を,アクセスポイントと無線クライアントの相対位置から演算される外積ベクトルの大きさに基づいてそれぞれ演算する。そして,それらの距離のうち,2つの距離があらかじめ定めた基準距離hthよりも小さい場合,または,1の距離が距離hthよりも小さくかつ対応する辺を構成する2つのアクセスポイントとの距離のうち大きい方がその辺の長さよりも小さい場合には,境界領域の内側であると判定する。一方,それら以外の場合には境界領域の外側であると判定する。境界判定処理を図10に模式的に示す。図11に三角形で構成した対象領域に対する境界領域を示す。図11の網掛け部分が境界領域となる。
【0054】
このような処理を実行することで,判定対象とする対象領域の一辺から無線クライアントまでの距離が,境界領域としてあらかじめ定めた基準距離hthよりも短い場合には境界領域の内側,長い場合には境界領域の外側と判定できる。そして,対象領域の一辺から無線クライアントまでの距離は外積ベクトルの大きさから算出することができる。そして図10に示すように,外積ベクトルの大きさは,外積ベクトルの二つのベクトルが作る平行四辺形の大きさと等しいため,数2を演算して高さを求めることで,一辺から無線クライアントまでの距離を算出できる。
(数2)
【0055】
そのため,数3の関係が成立する場合に,境界領域の内側と判定することができる。
(数3)
【0056】
境界判定処理部15において,無線クライアントが境界領域内にいると判定した場合には,対象領域の内側にいると判定し,内外判定処理は実行しない。境界判定処理部15において,無線クライアントが境界領域外にいると判定した場合には,内外判定処理を実施例1と同様に実行する。
【0057】
つぎに本実施例2における情報処理システム1の処理プロセスの一例を図9のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
実施例1と同様に,まず空間に任意の数(N台)のアクセスポイントを設置する。そして設置したアクセスポイントによって構成する対象領域を設定しておく。アクセスポイント間の距離はアクセスポイント同士の信号強度に基づいて,伝搬モデルによって特定することができる。
【0059】
信号強度特定処理部10は,無線クライアントが当該空間にいた場合,その空間に設置されたすべてのアクセスポイントと無線クライアントとの信号強度を,その通信から特定する(S200)。そして距離推定処理部11は,伝搬モデルによって,各アクセスポイントと無線クライアントとの推定距離を算出する(S210)。
【0060】
距離推定処理部11において,すべてのアクセスポイントと無線クライアントとの推定距離を算出後,相対位置推定処理部12は,すべてのアクセスポイントと無線クライアントとの距離情報(推定距離)に基づいて,無線クライアントの相対位置を,ばねモデルを用いて推定をする(S220)。なお,ここではすべてのアクセスポイントと無線クライアントとの距離情報に基づいて,無線クライアントの相対位置を推定する場合を説明したが,実施例1のように,無線クライアントの近傍に位置する任意のn台(3≦n≦N),たとえば3台のアクセスポイントを信号強度の強さに基づいて特定し,特定したアクセスポイントと無線クライアントとの距離情報(推定距離)に基づいて,無線クライアントの相対位置を,ばねモデルを用いて推定をするようにしてもよい。
【0061】
距離推定処理部11において無線クライアントの相対位置を推定すると,境界判定処理部15が,あらかじめ設定した対象領域に対する境界領域の内側にいるか外側にいるかを判定する境界判定処理を実行する(S230)。
【0062】
そして境界判定処理部15における境界判定処理の結果,無線クライアントがその対象領域に対する境界領域内にいると判定した場合には(S240),当該無線クライアントは当該対象領域の内側にいると判定し(S250),ほかの未処理の対象領域に対する境界判定処理部15における境界判定処理を実行させる(S270)。
【0063】
一方,境界判定処理部15における境界判定処理の結果,無線クライアントがその対象領域に対する境界領域外にいると判定した場合には(S240),当該対象領域に対して内外判定処理部13における内外判定処理を,実施例1と同様に実行する(S260)。
【0064】
すなわち,内外判定処理部13は,内外判定処理において実施例1と同様に,当該対象領域を内外判定領域に分割し,分割した各内外判定領域において,無線クライアントが分割したそれぞれの内外判定領域の内側にいるか外側にいるかを,外積ベクトルの方向を用いて判定する。そして分割した内外判定領域のいずれかにおいて内側にいることを判定した場合,無線クライアントがその対象領域の内側にいると判定する。
【0065】
そして,当該無線クライアントが当該対象領域の内側にいるか外側にいるかを判定すると,ほかの未処理の対象領域に対する境界判定処理部15における境界判定処理を実行させる(S270)。
【0066】
このように,処理対象として設定した対象領域のすべてについて当該無線クライアントが対象領域の内側にいるか外側にいるかを判定すると,実施例1と同様に,所在領域判定処理部14は,内側と判定した各対象領域のうち,共通している領域(範囲)を特定する。そして,判定した領域(範囲)に無線クライアントが所在すると判定する(S280)。
【0067】
以上の処理を実行することで,空間における無線クライアントが所在する領域(範囲)を判定することができる。
【実施例3】
【0068】
実施例2では境界判定処理部15における境界領域を設ける場合を説明したが,境界領域を用いるのではなく,対象領域自体を所定の方向に所定割合または所定値だけ拡大して,実施例1と同様の処理を実行してもよい。これを模式的に示すのが図12である。すなわちあらかじめ設定した対象領域を構成するアクセスポイント同士の距離を所定方向に所定割合(または所定値)だけ長くする,アクセスポイントと無線クライアントの距離を所定方向に所定割合(または所定値)だけ長くする。そして拡大した対象領域に対して,内外判定処理部13における内外判定処理を実行する。ここで拡大する所定割合または所定値としては,実施例2における境界領域として用いる所定の距離hthに相当する割合または値であることが好ましいが,任意に設定可能である。
【0069】
また,対象領域の面積を,相似を維持しながら所定割合または所定値だけ拡大して実施例1と同様の処理を実行してもよい。
【実施例4】
【0070】
本発明の情報処理システム1を用いることで,無線クライアントがアクセスポイントにより構成される領域の内側に位置するか外側に位置するかを判定できる。そのため,たとえばアクセスポイントを建物内に設置している場合,無線クライアントがアクセスポイントにより構成される領域のすべてで,その外側に位置すると判定した場合には,その無線クライアントが建物の外側に位置すると考えることができる。
【0071】
そこで,情報処理システム1の内外判定処理部13において,無線クライアントが,建物内に設置しているアクセスポイントにより構成される領域のすべてでその外側に位置すると判定した場合には,アクセスポイントに対して,当該無線クライアントとの通信を遮断する制御指示を送るように構成してもよい。
【0072】
あるいは,上記とは逆に,内外判定処理部13において,無線クライアントがアクセスポイントにより構成される領域のいずれかでその内側に位置すると判定した場合には,アクセスポイントに対して,当該無線クライアントとの通信を許可する制御指示を送るように構成してもよい。
【0073】
これらによって,当該無線クライアントが建物の外部から通信を行う行為を遮断することができ,セキュリティを向上させることができる。
【0074】
なお,上述では建物内にアクセスポイントを設置する場合で説明したが,建物内に限らず,無線クライアントによる通信を許可したい範囲に設置したアクセスポイントであればよい。たとえば展示会場の一部の空間にアクセスポイントを設置し,その空間の内側にいる無線クライアントのみとの通信を許可,または空間の外側にいる無線クライアントとの通信を遮断するようにすることができる。
【0075】
本明細書において,本発明の技術的思想を逸脱しない範囲でその処理を適宜,変更することは可能である。たとえば処理の順番を変更,一部の処理を実行しない,処理を追加するなどをしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の情報処理システム1を用いることによって,アクセスポイントを設置する際の作業負担を軽減して無線クライアントの位置を推定することができる。また,シャドウイングによる影響を軽減して,無線クライアントの位置を推定することができる。
【符号の説明】
【0077】
1:情報処理システム
10:信号強度特定処理部
11:距離推定処理部
12:相対位置推定処理部
13:内外判定処理部
14:所在領域判定処理部
15:境界判定処理部
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12