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特許7260094荷重変換器及びこれを用いた荷役助力装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】荷重変換器及びこれを用いた荷役助力装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/22 20060101AFI20230411BHJP
   G01G 19/18 20060101ALI20230411BHJP
   B66D 1/46 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G01L1/22 L
G01G19/18 A
B66D1/46 E
G01L1/22 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019095901
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020190475
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 璋好
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-145426(JP,A)
【文献】特開2018-128365(JP,A)
【文献】特開平08-201192(JP,A)
【文献】特開2018-002361(JP,A)
【文献】特開平11-083605(JP,A)
【文献】特開2009-036686(JP,A)
【文献】特開2008-256421(JP,A)
【文献】特公昭59-027853(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0265120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/22,5/1627
G01G 19/18,3/14
B66D 1/46,3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重の導入によって弾性変形する起歪部に感歪抵抗体を添着して前記荷重の大きさに応じた電気信号を出力する荷重変換器であって、
前記感歪抵抗体は、前記起歪部に生じる剪断応力と曲げ応力との引張方向の成分を検出する第1感歪抵抗体と、前記起歪部に生じる前記剪断応力と前記曲げ応力との圧縮方向の成分を検出する第2感歪抵抗体と、を有し、
前記第1感歪抵抗体と前記第2感歪抵抗体とは、ホイートストンブリッジ回路で隣り合う辺に配置され
前記荷重変換器が略円柱の形状であって、前記ホイートストンブリッジ回路の各辺の前記第1感歪抵抗体と前記第2感歪抵抗体とがそれぞれ複数で直列に配置され、前記円柱の軸方向に生ずるねじりトルクを相殺するように前記第1感歪抵抗体と前記第2感歪抵抗体とが前記ホイートストンブリッジ回路で配置される、
ことを特徴とする荷重変換器。
【請求項2】
前記感歪抵抗体のうち、前記起歪部の同一面に添着される前記第1感歪抵抗体と前記第2感歪抵抗体とが単一基材上に形成されて、それぞれの最大感度検出方向が直交し、かつそれぞれの前記最大感度検出方向が前記剪断応力の方向と45度となるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の荷重変換器。
【請求項3】
前記起歪部は、支持部と荷重導入部の間に配置されて小なる断面積をなす同一形状の複数の座繰り穴部を有し、前記感歪抵抗体が、前記座繰り穴部の底面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷重変換器。
【請求項4】
吊り部材に吊るされて荷役物の昇降動作を助力する荷役助力装置であって、
前記吊り部材と規制された角度範囲で回転可能に接続される請求項1からのいずれか一項に記載の荷重変換器と、
半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交互に連接され、一端が前記荷役物に繋がるリンクチェーンと、
前記リンクチェーンを巻きつけるロードシーブと、
前記ロードシーブを回転させるモータ部と、
前記ロードシーブを担持するとともに前記荷重変換器と規制された角度範囲で回転可能に接続する担持接続部と、
前記ロードシーブ及び前記モータ部の少なくとも1つの回転角を検出して回転角信号を出力する回転角検出部と、
前記モータ部の回転を制御する制御回路部と、
を備え、
前記荷重変換器は前記ロードシーブに加わる荷重を検出して荷重信号に変換して出力し、
前記制御回路部は前記荷重信号と前記回転角信号を受信し演算して前記荷役物の上下動の助力を前記モータ部によって制御することを特徴とする荷役助力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重を電気信号に変換する荷重変換器と、これを用いてモータによって吊った荷役物を上下動させる作業を助力する荷役助力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器、製品、半完成品などの荷役物を吊下げて上下動させる荷役機械を使用している。その中でも、使用者が大きな重量の荷役物に対してバランス状態を作り出し、軽い操作力で任意の高さに上下動できるように助力を発生させる荷役助力装置が一部で使用されている。このように助力を発生させる荷役助力装置において、モータによる助力を行ってバランス状態を作り出し、荷役物に小さな操作力を加えることでスムーズに移動させるものは、単に上下動作を電動モータで行うものとは異なり、荷役物の荷重やこれに加わる操作力を例えば荷重センサ(荷重変換器)で検出して、回転角検出器と繋がったACサーボモータ等で細かい力制御を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-128365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような荷役助力装置に用いる吊下げ式の従来の荷重変換器(特許文献1)は例えば図10(a)~(c)で示すような構成であった。従来の荷重変換器は、荷重Wが加わる第2の接続部3L、3Rと、第1の接続部3aに設けられた荷重を支持する接続軸19と、第1の接続部3aと第2の接続部3L、3Rとの間にあって断面積が小さく荷重Wによって弾性変形する起歪部3bと、起歪部3bに添着された感歪抵抗体Gbとで構成されている。起歪部3bは荷重方向に弾性変形するように設けられ、荷重方向と平行に生ずる剪断歪みを検出するため、図10(a)、図10(c)に示す配置で感歪抵抗体Gbは起歪部3bに添着される。
【0005】
さてここで荷役助力装置にて扱う荷重Wの範囲を拡大する場合には、変換器の全体を大きくし、理想的なロバーバル機構を維持するのが通例である。しかしながら、扱う荷重Wの範囲を拡大するが荷重変換器の大きさはそのままという制約が課せられた場合には、例えば面3cと面3dとで挟まれた起歪部3bの厚みを増加させて適応させること等が考えられる。この時、荷重変換器は、拡大された測定レンジ内において荷重と測定出力の直線性が低下し、精確な荷重の検出が困難になるという課題が生じていた。
【0006】
このような問題に鑑みて、本発明は、精確な荷重を検出する荷重変換器とこれを用いた荷役助力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の荷重変換器は、上記の目的を達成するために、
荷重の導入によって弾性変形する起歪部に感歪抵抗体を添着して荷重の大きさに応じた電気信号を出力する荷重変換器であって、
感歪抵抗体は、起歪部に生じる剪断応力と曲げ応力との引張方向の成分を検出する第1感歪抵抗体と、起歪部に生じる剪断応力と曲げ応力との圧縮方向の成分を検出する第2感歪抵抗体と、を有し、
第1感歪抵抗体と第2感歪抵抗体とは、ホイートストンブリッジ回路で隣り合う辺に配置され
荷重変換器が略円柱の形状であって、ホイートストンブリッジ回路の各辺の第1感歪抵抗体と第2感歪抵抗体とがそれぞれ複数で直列に配置され、円柱の軸方向に生ずるねじりトルクを相殺するように第1感歪抵抗体と第2感歪抵抗体とがホイートストンブリッジ回路で配置されている。
【0008】
本発明の荷重変換器は、上記の目的を達成するために、
感歪抵抗体のうち、起歪部の同一面に添着される第1感歪抵抗体と第2感歪抵抗体とが単一基材上に形成されて、それぞれの最大感度検出方向が直交し、かつそれぞれの最大感度検出方向が剪断応力の方向と45度となるように構成されている。
【0009】
本発明の荷重変換器は、上記の目的を達成するために、
起歪部は、支持部と荷重導入部の間に配置されて小なる断面積をなす同一形状の複数の座繰り穴部を有し、感歪抵抗体が、座繰り穴部の底面に設けられている。
【0011】
本発明の荷役助力装置は、上記の目的を達成するために、
吊り部材に吊るされて荷役物の昇降動作を助力する荷役助力装置であって、
吊り部材と規制された角度範囲で回転可能に接続される本発明の荷重変換器と、
半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交互に連接され、一端が荷役物に繋がるリンクチェーンと、
リンクチェーンを巻きつけるロードシーブと、
ロードシーブを回転させるモータ部と、
ロードシーブを担持するとともに荷重変換器と規制された角度範囲で回転可能に接続する担持接続部と、
ロードシーブ及びモータ部の少なくとも1つの回転角を検出して回転角信号を出力する回転角検出部と、
モータ部の回転を制御する制御回路部と、
を備え、
荷重変換器はロードシーブに加わる荷重を検出して荷重信号に変換して出力し、
制御回路部は荷重信号と回転角信号を受信し演算して荷役物の上下動の助力をモータ部によって制御するように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の荷重変換器によれば、感歪抵抗体の位置、最大感度方向及び感歪抵抗体のホイートストンブリッジ回路内での配置によって、精確に荷重を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の斜視構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る荷役助力装置内の荷重変換器及び駆動装置周辺の斜視構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る荷役助力装置内の荷重変換器周辺の斜視構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る荷重変換器の斜視図である。
図5】本発明の第1の実施形態の荷重変換器の模式的な正面図(a)、S1-S1で切断した断面図(b)、背面図(c)及び正面図(a)のR部における剪断応力による起歪体の変形を示す模式図(d)である。
図6】本発明の第1の実施形態の荷重変換器の感歪抵抗体を含むホイートストンブリッジ回路図である。
図7】本発明の第1の実施形態の荷重変換器に発生する荷重と測定出力の非直線性率を表したグラフである。
図8】本発明の第2の実施形態の荷重変換器の模式的な正面図(a)、S2-S2で切断した断面図(b)、背面図(c)及び正面図(a)のR部における剪断応力による起歪体の変形を示す模式図(d)である。
図9】本発明の第2の実施形態の荷重変換器の感歪抵抗体を含むホイートストンブリッジ回路図である。
図10】従来の荷重変換器の模式的な正面図(a)、S3-S3で切断した断面図(b)、背面図(c)及び正面図(a)のR部における剪断応力による起歪体の変形を示す模式図(d)である。
図11】従来の荷重変換器の感歪抵抗体を含むホイートストンブリッジ回路図である。
図12】従来の荷重変換器に加わる荷重と測定出力の非直線性率を表したグラフである。
図13】従来の荷重変換器において発生する曲げ応力による荷重と測定出力の非直線性率を模式的に表したグラフ(a)と、剪断応力による荷重と測定出力の非直線性率を模式的に表したグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る荷重変換器とこれを用いた荷役助力装置について、図面を基に詳細な説明を行う。図1は本発明の実施形態に係る荷重変換器を有している荷役助力装置である。
【0015】
荷役助力装置1は、主なるものとして、本体部22と、制御回路部20と、操作部25と、リンクチェーン8と、荷役用フック15と、リンクチェーン収納部26と、を含んでいる。本体部22はカバー21にて外部環境から保護するように覆われ、内部には制御回路部20等が収納されている。操作部25は、無線若しくは有線で荷役助力装置1の操作を行うものである。荷役用フック15は、荷役物28を係止するものである。荷役助力装置1は吊り部材16にて構造物27などに吊下げられて、荷役用フック15に吊るした荷役物28の昇降の助力を行う。
【0016】
カバー21は後述の荷重変換器3、モータ部2、ロードシーブ13及びこれらの周辺の部材を覆って外部環境から保護するものである。また本体部22には、モータ部2や操作部25と電気的に繋がってこれらを制御する制御回路部20や、リンクチェーン8を巻回して昇降させる機構部材が配置されている。
【0017】
リンクチェーン8は、半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交互に連接されたものであって、その一端は荷役用フック15に繋がっていて、他端(無負荷側)はリンクチェーン収納部26内に収納されている。
【0018】
操作部25は荷役助力装置1の操作を行うものであって、自動バランスと手動昇降操作の切り換え、手動昇降操作の指令、非常停止などのスイッチが設けられている。なお本実施形態では操作部25は制御回路部20と無線で繋がっているが、有線方式であっても良い。また操作部25は、荷役用フック15の近傍にリンクチェーン8に沿って設けられる不図示のホルダ等に着脱可能な構成であっても良い。
【0019】
図2は本発明の実施形態に係る荷役助力装置1の本体部22内の荷重変換器3及び駆動装置周辺の内部構造を示した斜視図であって、幾つかの部材を省略して表したものである。
【0020】
モータ部2は、モータ2aと減速機7で構成される。減速機7は、モータ2aの負荷側に取り付けられて、モータ2aの回転速度を所定の速度に減速している。減速機7は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は外周が楕円状のウエーブジェネレータと、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なフレクスプラインと、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えたサーキュラスプラインからなる。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げた回転出力軸に取り出されて伝達するようになっている。
【0021】
減速機7に波動歯車減速機のようなバックラッシが極めて小さいものを使用することで、モータ2aの正逆回転切り換えを頻繁に行って助力動作を行う時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。減速機7にて減速された図2には現れない回転出力軸は、ロードシーブ13に連結され、モータ2aの駆動によってロードシーブ13を連続的に正逆に回転させることができる。
【0022】
ロードシーブ13は、モータ部2の回転出力軸により回転してリンクチェーン8の繰り出し、巻上げを行う。本実施形態ではロードシーブ13は円筒フランジ状の外形をしていて、回転出力軸と繋がっている。リンクチェーン8が巻きつけられる位置はおおよそ吊り部材16の鉛直下であって、荷役助力装置1の重心位置に近いところに設けられる。リンクチェーン8はロードシーブ13に設けられたチェーンポケット14に嵌入されておおよそ180度巻きつけられる。
【0023】
回転角検出部4は、モータ部2の反負荷側にあって、モータ部2の回転角の位置を検出して回転角信号を出力するもので、いわゆるロータリーエンコーダである。本実施形態ではモータ部2の反負荷側に設けたが、ロードシーブ13や減速機7近傍に設けて減速後の回転角位置を検出しても良い。
【0024】
この荷役助力装置1を吊下げるための吊り部材16には、軸17を介してブラケット18が規制された角度範囲で回転自在に取り付けられている。そしてブラケット18は略柱状の荷重変換器3と接続軸19を介して接続され(図3参照)、さらに荷重変換器3は接続板5Rと第2の接続部3R、接続板5Lと第2の接続部3Lによってそれぞれ接続されている。
【0025】
一方、ロードシーブ13は略Uの字型をした担持板6に担持板固定爪6aにて固定及び担持されている。担持板6の端部付近の向かい合う面はおおよそ平行であり、接続板5R、5Lからその両端の一部を延伸して90度に曲げた突起部分にボルトで固定されている。この担持板6と接続板5R、5Lを合わせて担持接続部と定義する。
【0026】
図3は本発明の実施形態に係る荷役助力装置内の荷重変換器3周辺の詳細を示した斜視図である。
【0027】
ブラケット18はこれを平面に展開した時に延伸部が互いに垂直な4方向に伸びる十字形状で、対向する1組みの平行な延伸部があって、対向するもう1組みの平行な延伸部は逆側へ折れ曲がっている。よってブラケット18は軸17によって、図3でx軸方向すなわち方向Aaを中心として回転方向がRaにて吊り部材16と相対的に規制された角度範囲で回転するように接続されている。一方、ブラケット18は荷重変換器3に挿通された接続軸19によって、z軸方向に平行な軸Abを中心として回転方向がRbにて荷重変換器3と相対的に規制された角度範囲で回転するように接続されている。
【0028】
さらに荷重変換器3の両側から突き出た円柱突起を有する第2の接続部3Rと第2の接続部3Lは、x軸方向に平行な軸Acを中心として接続板5R、5Lに設けられた孔に係合する。したがって荷重変換器3は、軸Acを中心する回転方向Rcにてブラケット18と相対的に規制された角度範囲で回転可能に接続されている。
【0029】
図4は本発明の第1から第3の実施形態に係る荷重変換器3の共通な部分の詳細を示した斜視図である。
【0030】
荷重変換器3は例えばx軸方向に伸びた略円柱の形状であって、いわゆるピン型ロードセルに類似したものであって、荷重の大きさに応じた電気信号を出力する。荷重変換器3はyz平面に平行で軸Abを通る第1の鉛直面10と、第1の鉛直面10に垂直なxy平面に平行で軸Acを通る第2の鉛直面11と、に対して面対称な形状で構成されている(但し、引出ケーブル3h等の配線は除く)。そして吊り部材及び測定対象物にそれぞれ接続する接続部は、第1の接続部3aと第2の接続部3R、3Lを有する。
【0031】
接続軸19は、例えば中空の円筒状であり、中空内部にはネジが切られていて、ブラケット18によって挟み込まれて両側からボルトで固定できるように構成されている。そして荷重変換器3はこの接続軸19を水平方向に挿通できる隙間のはめあい穴を有している。第1の接続部3aは、荷重変換器3のうち接続軸19の円筒外面と当接する部位であって、荷重変換器3に加わる荷重を支持してブラケット18を介して吊り部材16に接続する部分である。したがって第1の接続部3aは、荷重変換器3の一部であって、接続軸19の円筒外面に当接して支持されているため、荷重変換器3は接続軸19の軸Abを中心に規制された角度範囲で回転できる。接続軸19は、これに限らず第1の接続部3aへ圧入されて荷重変換器3に固定して結合したものであってもよい。また接続軸19は、面3cから延伸して突起として設けられて、第1の接続部3aと一体構造であっても良い。その際はこの接続軸19はブラケット18に対して規制された角度範囲で回転可能な構造となる。すなわち第1の接続部3aは、z軸に平行な直線を軸線とする円柱面を有する凹み(貫通穴、座繰り穴)若しくは突起を含んで吊り部材16と規制された角度範囲で回転自在で接続する部分周辺を指す。
【0032】
一方、第2の接続部3Rと第2の接続部3Lは、第1の接続部3aからx軸正負の方向に位置し、接続軸19の軸Abに直交する軸Acを軸線とした第2の円柱面を有する円柱の突起である。第2の接続部3Rと第2の接続部3Lは、左右対称の形状にてそれぞれ設けられ、これらの円柱突起の軸Acは同一であり、その円柱面の直径も同一である。そしてこの第2の接続部3R及び第2の接続部3Lに、ロードシーブ13に加わる荷重が担持板6、さらに接続板5R、5Lを経て伝わることになる。接続板5R、接続板5Lにはこの第2の接続部3R及び第2の接続部3Lの円柱突起よりわずかに大きい隙間のはめあい穴が設けられて、この穴に第2の接続部3R及び第2の接続部3Lの円柱の突起が挿入されて、荷重変換器3は規制された角度範囲で回転自在となる。
【0033】
なお、第2の接続部3R及び第2の接続部3Lは本実施形態では円柱の突起であるがこれに限らず、円柱型の凹みによるものであっても良い。その際は例えば、接続板5R、5Lにカシメ等を行った段付き円柱状の軸がこの凹みに隙間を有して挿入される等の構成でも良い。すなわち第2の接続部3R及び第2の接続部3Lは、円柱面を有する凹み(座繰り穴)若しくは突起を含み、荷重変換器3は、接続板5R、5Lを介して担持板6と規制された角度範囲で回転自在で接続する。
【0034】
よって第1の接続部3aが荷重を支持する支持部として、第2の接続部3R及び第2の接続部3Lが荷重を導入する荷重導入部として作用することになる。
【0035】
この第1の接続部3aと第2の接続部3R及び第1の接続部3aと第2の接続部3Lのそれぞれ中間位置に相対的に小なる断面積にて設けられているのが、起歪部3bである
図5参照)。起歪部3bは、第2の接続部3Rと第2の接続部3Lからの荷重を受けて弾性変形する。また起歪部3bは、第2の接続部3Rと第2の接続部3Lと同様に左右対称の形状である。詳細は後述するが、この起歪部3bには感歪抵抗体Gが添着されている。そしてこの起歪部3bの一部の開口を塞いで感歪抵抗体Gを外部から遮断するのが封止部材9であり、外部から水や油等の侵入を防止する。封止部材9はOリングと蓋状の部材からなり、Oリングが起歪部3bの側壁面を全周に渡って密着して感歪抵抗体Gを外部から遮断している。
【0036】
さてこの構成で、従来の荷重変換器では図10(a)~(c)に示すように感歪抵抗体Gbが起歪部3bに添着されていた。感歪抵抗体Gbは、感歪抵抗体G1tb~G4tb、感歪抵抗体G1cb~G4cbで構成されている。例えば図10(a)において、感歪抵抗体G1tbは、座繰り穴部底面3eの第2の接続部3L寄りで、xy座標系でプラス45度の方向Nに最大感度を有するように添着されている。そして感歪抵抗体G1cbは、座繰り穴部底面3eの第1の接続部3a寄りで、xy座標系でマイナス45度の方向Mに最大感度を有するように添着されている。さらに感歪抵抗体G2cbは、座繰り穴部底面3eの第1の接続部3a寄りで、xy座標系でプラス45度の方向Nに最大感度を有するように添着されている。そして感歪抵抗体G2tbは、座繰り穴部底面3eの第2の接続部3R寄りで、xy座標系でマイナス45度の方向Mに最大感度を有するように添着されている。一方図10(c)は図10(a)の背面図であって、基本的に同じレイアウトで感歪抵抗体G3tb~G4tb、感歪抵抗体G3cb~G4cbが、それぞれ座繰り穴部底面3fに添着されている。これらの感歪抵抗体Gbの配置方法は剪断応力τの方向に45度に最大感度を有するようにしたもので一般的なものである。
【0037】
図11は従来の荷重変換器における感歪抵抗体G1tb~G4tb、感歪抵抗体G1cb~G4cbを含んだホイートストンブリッジ回路図である。感歪抵抗体G1tb~G4tbは剪断応力において引張方向の検出である。感歪抵抗体G1tb及び感歪抵抗体G4tbがホイートストンブリッジ回路の一辺で直列に配置され、感歪抵抗体G2tb及び感歪抵抗体G3tbもホイートストンブリッジ回路の一辺で直列に配置される。そして感歪抵抗体G1tb及び感歪抵抗体G4tbと、感歪抵抗体G2tb及び感歪抵抗体G3tbとの組合せでは、ホイートストンブリッジ回路では向かい合う辺として配置される。
【0038】
一方で感歪抵抗体G1cb~G4cbは剪断応力において圧縮方向の検出である。感歪抵抗体G1cb及び感歪抵抗体G2cbがホイートストンブリッジ回路の一辺で直列に配置され、感歪抵抗体G3cb及び感歪抵抗体G4cbもホイートストンブリッジ回路の一辺で直列に配置される。そして感歪抵抗体G1cb及び感歪抵抗体G2cbと、感歪抵抗体G3cb及び感歪抵抗体G4cbの組合せでは、ホイートストンブリッジ回路では向かい合う辺として配置される。
【0039】
したがって、感歪抵抗体G1tb、G4tbと感歪抵抗体G3cb、G4cbとはホイートストンブリッジ回路ではそれぞれ隣り合う辺に配置される。また感歪抵抗体G2tb、G3tbと感歪抵抗体G1cb、G2cbとはホイートストンブリッジ回路ではそれぞれ隣り合う辺に配置される。
【0040】
発明者はこのような感歪抵抗体Gbの配置で荷重変換器3を構成した時、荷重と検出出力の関係において直線性の低下という課題に直面した。これを表したものが図12のグラフである。図12のグラフは、横軸を荷重Pとし、縦軸を非直線性率(%)として、荷重変換器の直線性を示す。非直線性率(%)は、対象荷重範囲の両端(0付近とPmax)における実際の出力を直線で結んでこれを理想直線とし、対象荷重範囲内のある荷重における理想直線上の出力と実際の出力の差を、対象荷重範囲の両端の実際の出力差で除算してこれを百分率で表したものである。図11に示す従来の感歪抵抗体Gbの配置で荷重変換器3を構成した時、非直線性率はマイナス側に現れ、おおよそ-0.08%という結果であった。
【0041】
これに対して発明者は鋭意検討した結果、荷重変換器3が図10(a)の破線BBのように撓んでいて、感歪抵抗体Gbには剪断応力に加えて曲げ応力の成分も加わってしまい直線性が低下することを見出し、本発明に至っている。すなわち、荷重変換器3は理想的なロバーバル機構を維持できず、弓なりの曲げの撓みによって、感歪抵抗体Gbが添着されている起歪部3bに剪断歪みとともに曲げ歪みが発生している。そしてこの曲げ歪みは、剪断応力を検出する感歪抵抗体からの歪み量に干渉して直線性、ヒステリシス特性に影響を与え、精確な荷重の検出を妨げている。
【0042】
発明者は単軸の感歪抵抗体を、荷重変換器3の面3gにx軸方向に平行な軸Acに最大感度を有するように添着して測定したところ、図13(a)で模式的に示すように、P=0~最大荷重Pmaxの範囲での曲げの非直線性率は曲線m1のようにプラス側で山型傾向になるという結果を得た。一方、剪断の感歪抵抗体Gbでは、図13(b)で模式的に示すように、P=0~最大荷重Pmaxの範囲での剪断の非直線性率は曲線v1のようにマイナス側で谷型傾向になるという結果を得た。
【0043】
図10(d)は、荷重Wが第2の接続部3Rに導入された時に図10(a)の起歪部3bに生じる剪断応力の引張方向と圧縮方向とを示している。荷重変換器3が図10(a)の破線BBのように撓んでいて、感歪抵抗体Gbには曲げ応力の成分も加わっていると、従来の配置の剪断型の感歪抵抗体G1tb~G4tbは、剪断応力は引張方向で、曲げ応力も引張方向を検出する。一方で剪断型の感歪抵抗体G1cb~G4cbでは、剪断応力は圧縮方向で、曲げ応力は引張方向を検出する(図10(d)参照)。したがって曲げ応力の検出はいずれも引張方向の成分となっていてこのような偏りが生じていると思われる。
【0044】
そこで発明者は、一方の剪断型の感歪抵抗体を剪断応力と曲げ応力の引張方向の成分で検出するように、そして他方の剪断型の感歪抵抗体Gを剪断応力と曲げ応力を圧縮方向の成分で検出するように配置することで、曲げ応力による影響を大きく改善できることを見出した。次に本発明を適用した荷重変換器について説明する。
【0045】
図5は本発明の第1の実施形態に係る荷重変換器3の正面図(a)、S1-S1断面図(b)、背面図(c)であり、封止部材9等を省略して表したものである。また図5(d)は本発明の第1の実施形態に係る荷重変換器3の正面図(a)の起歪部3bにおける剪断応力による起歪体の変形を示す模式図である。
【0046】
感歪抵抗体Gは、第1感歪抵抗体G1t~G4t、第2感歪抵抗体G1c~G4cで構成されている。起歪部3bを構成する座繰り穴部底面3e及び座繰り穴部底面3fそれぞれには、第1感歪抵抗体G1t~G4t、第2感歪抵抗体G1c~G4cが設けられており、本実施形態ではこれらは剪断型の歪みゲージである。そして第1感歪抵抗体G1tと第2感歪抵抗体G1cは単一基材上に形成されて一体となっていて、それぞれの最大感度検出方向が直交し、かつそれぞれの最大感度検出方向が剪断応力の方向と45度となっている。そして第1感歪抵抗体G1tと第2感歪抵抗体G1cは起歪部3bの同一面に配置されている。
【0047】
より詳細には図5(a)において、第1の接続部3aと第2の接続部3Lの間に設けられた第1感歪抵抗体G1tは鉛直上方向をy軸正の方向とするxy直交座標系上でプラス45度のN方向に最大感度を有し、第2感歪抵抗体G1cはマイナス45度のM方向に最大感度を有している。そして第1感歪抵抗体G2tと第2感歪抵抗体G2cも同様に単一基材上に形成されて一体となっていて、それぞれの最大感度検出方向が直交し、かつそれぞれの最大感度検出方向が剪断応力の方向と45度となっている。より詳細には、第1の接続部3aと第2の接続部3Rの間に設けられた第1感歪抵抗体G2tはxy座標系上でマイナス45度のM方向に最大感度を有し、第2感歪抵抗体G2cはプラス45度のN方向に最大感度を有している。
【0048】
図5(b)は、図5(a)を断面S1-S1で切断した断面図である。第1の実施形態における起歪部3bは円柱面を有する同一形状の複数の座繰り穴部であって、座繰り穴部の直径寸法及び深さ(面3cから座繰り穴部底面3eまでの距離、面3dから座繰り穴部底面3fまでの距離)の寸法は全て同一である。そしてこの座繰り穴部の凹み方向は面3c及び面3dから互いに反対向きで配置されている。各座繰り穴部底面3e、3fは平面である。そしてこの座繰り穴部底面3eと座繰り穴部底面3fとで挟まれた箇所が起歪部3bである。
【0049】
図5(c)は、荷重変換器3の背面図である。正面図の図5(a)と同様に、第1感歪抵抗体G3t、第2感歪抵抗体G3c、第1感歪抵抗体G4t、第2感歪抵抗体G4cが、座繰り穴部底面3fにそれぞれ配置されている。そして第1感歪抵抗体G3tと第2感歪抵抗体G3c、第1感歪抵抗体G4tと第2感歪抵抗体G4cもそれぞれ同様単一基材で一体形成され起歪部3bの同一面に配置されている。
【0050】
なお第1感歪抵抗体G1tの裏側には第1感歪抵抗体G4t、第2感歪抵抗体G1cの裏側には第2感歪抵抗体G4c、第1感歪抵抗体G2tの裏側には第1感歪抵抗体G3t、第2感歪抵抗体G2cの裏側には第2感歪抵抗体G3cという配置となっている。これらの感歪抵抗体Gから引き出される配線は、図に現れない穴等を通してまとめられ最終的に引出ケーブル3hにて制御回路部20へ繋がっている。
【0051】
この構成で第2の接続部3Rと第2の接続部3Lの両側に測定対象物であるロードシーブ13に加わる荷重Wが導入されると、第1の接続部3aにて支持され、起歪部3bは鉛直上下方向に剪断応力と曲げ応力により弾性変形することになる。したがって第1感歪抵抗体G1t~G4t、第2感歪抵抗体G1c~G4cによって剪断応力と曲げ応力が検出され、第2の接続部3Rと第2の接続部3Lに加わる荷重を検出することができる。この時、荷重変換器3は、第2の接続部3R及び第2の接続部3Lによって接続板5R及び接続板5Lと相対的に規制された角度範囲で回転することができ、一方で接続軸19によってブラケット18と相対的に規制された角度範囲で回転することができる。ゆえに荷重変換器3はリンクチェーン8を斜めに引いた際にも、鉛直下向き荷重を正確に検出することができる。
【0052】
図6は第1の実施形態における第1感歪抵抗体G1t~G4t、第2感歪抵抗体G1c~G4cを含んだホイートストンブリッジ回路図である。第1感歪抵抗体G1tと第1感歪抵抗体G4t、第1感歪抵抗体G2tと第1感歪抵抗体G3tは剪断応力において引張方向の成分の検出であって、曲げ応力では引張方向の成分の検出である。第1感歪抵抗体G1t及び第1感歪抵抗体G4tがホイートストンブリッジ回路の一辺で直列に配置され、第1感歪抵抗体G2t及び第1感歪抵抗体G3tもホイートストンブリッジ回路の一辺で直列に配置される。そして第1感歪抵抗体G1t及び第1感歪抵抗体G4tと、第1感歪抵抗体G2t及び第1感歪抵抗体G3tとの組合せでは、ホイートストンブリッジ回路では向かい合う辺として配置される。
【0053】
一方で第2感歪抵抗体G1cと第2感歪抵抗体G4c、第2感歪抵抗体G2cと第2感歪抵抗体G3cは圧縮方向の成分の検出であって、曲げ応力では圧縮方向の成分の検出である。第2感歪抵抗体G1c及び第2感歪抵抗体G4cがホイートストンブリッジ回路の一辺で直列に配置され、第2感歪抵抗体G2c及び第2感歪抵抗体G3cもホイートストンブリッジ回路の一辺で直列に配置される。そして第2感歪抵抗体G1c及び第2感歪抵抗体G4cと、第2感歪抵抗体G2c及び第2感歪抵抗体G3cの組合せでは、ホイートストンブリッジ回路では向かい合う辺として配置される。
【0054】
したがって、第1感歪抵抗体G1t、G4tと第2感歪抵抗体G2c、G3cとはホイートストンブリッジ回路ではそれぞれ隣り合う辺に配置される。また第1感歪抵抗体G2t、G3tと第2感歪抵抗体G1c、G4cとはホイートストンブリッジ回路ではそれぞれ隣り合う辺に配置される。
【0055】
ここで第1の実施形態の荷重変換器3における第2感歪抵抗体G2cと第2感歪抵抗体G4cのホイートストンブリッジ回路での位置は、図11に示した従来の荷重変換器のホイートストンブリッジ回路と比較して、これらが入れ替わっていることが判る。この配置は、まず荷重変換器3がx軸方向に柱状であって、起歪部3bがx軸方向に並んで配置され、ここに感歪抵抗体Gが配置されているためである。そしてこの荷重変換器3をx軸に平行な軸Acを中心軸とした回転体と見立てると、第1感歪抵抗体G1t~G4tと第2感歪抵抗体G1c~G4cの起歪部3bへの配置はこの回転体のねじりトルクを検出するものとなっている。したがって荷重Wの導入により回転体のねじりトルクの成分が加わり、これをキャンセルさせるために第2感歪抵抗体G2cと第2感歪抵抗体G4cとのホイートストンブリッジ回路での位置を従来のものに対して入れ替えている。
【0056】
この配置で電源Eを端子T1-T3間に印加すると、端子T2-T4間に出力+SIG、-SIGが電圧として出力される。この出力電圧は増幅器30にて増幅され、A/D変換器31でデジタル変換されて数値化され、これを元にCPU32が演算して荷重が求められる。なお増幅器30、A/D変換器31、CPU32は制御回路部20に含まれていても良いし、独立して設けられていても良い。したがって、剪断応力も曲げ応力も引張方向の第1感歪抵抗体G1t~G4tは向かい合う辺に配置され、剪断応力も曲げ応力も圧縮方向の第2感歪抵抗体G1c~G4cは向かい合う辺に配置され、引張方向と圧縮方向の感歪抵抗体Gは隣り合う辺に配置されることから、図12(a)、(b)に示す山型と谷型の特性が相殺しあって出力の直線性率を向上させていると言える。
【0057】
図7は本発明の第1の実施形態に係る荷重変換器3の荷重出力の非直線性率の特性を実測した例である。従来の荷重変換器の非直線性率の-0.08%と比較して、本発明の第1の実施形態の荷重変換器ではこれが±0.01%以下となって低減されていることが判る。なお本発明の第1の実施形態では、例えば第1感歪抵抗体G1tと第2感歪抵抗体G1cとの剪断方向(荷重方向W)の離間距離を大きくすると直線性が向上する傾向が見られたが、本実施形態では添着する座繰り穴部底面3e、3fの大きさ及びヒステリシス特性を勘案して設定されている。
【0058】
また第1の実施形態における第1感歪抵抗体G1t~G4t、第2感歪抵抗体G1c~G4cは8個の歪みゲージで構成されて1辺の抵抗値が高くなるので、電源Eの電圧を高くすることができて出力+SIG、-SIGを大きくすることができる。また荷重変換器3の捻れに関しても第1感歪抵抗体G1t~G4t、第2感歪抵抗体G1c~G4cによってキャンセルすることができるという利点がある。
【0059】
以上の構成にて、荷役用フック15に荷役物28が吊るされると、荷役物28の重量によってリンクチェーン8が引っ張られるため、荷役用フック15、リンクチェーン8、ロードシーブ13、担持板6、接続板5Rと接続板5Lを介して荷重変換器3の第2の接続部3Rと第2の接続部3Lが下方に引張られ、第1の接続部3aが荷重を支持し、荷重変換器3の起歪部3bが変形する。そしてロードシーブ13に加わる荷重を起歪部3bの変形量として起歪部3bに設けられた感歪抵抗体Gにて検出した荷重信号と、回転角検出部4にて検出した回転角信号とを制御回路部20は受信する。制御回路部20はこれを基に演算して、荷役物28がバランスするようにモータ部2に対して助力する制御を行う。もちろん人手によって荷役物にわずかな外力を印加して上下動させつつバランスするような動作を行うことも可能である。
【0060】
図8は本発明の第2の実施形態に係る荷重変換器3の正面図(a)、S2-S2断面図(b)、背面図(c)であり、封止部材9を省略して表した模式図である。また図8(d)は本発明の第2の実施形態に係る荷重変換器3の正面図(a)の起歪部3bにおける剪断応力による起歪体の変形を示す模式図である。第1の実施形態と同様に起歪部3bは円柱面を有する複数の座繰り穴部であって、座繰り穴部の直径寸法及び深さ(面3cから座繰り穴部底面3eまでの距離、面3dから座繰り穴部底面3fまでの距離)の寸法は全て同一である。
【0061】
感歪抵抗体Gは、第1感歪抵抗体G2t、G4t、第2感歪抵抗体G2c、G4cで構成されている。起歪部3bを構成する座繰り穴部底面3eと座繰り穴部底面3fとの中央部それぞれには、第1感歪抵抗体G2tと第2感歪抵抗体G2c、第1感歪抵抗体G4tと第2感歪抵抗体G4cが設けられており、第2の実施形態ではこれらは剪断型の歪みゲージである。そして第1感歪抵抗体G2tと第2感歪抵抗体G2cは単一基材上に形成されて一体となっていて、それぞれの最大感度検出方向が直交し、かつそれぞれの最大感度検出方向が剪断応力の方向と45度となっている。すなわち図8(a)において、第1感歪抵抗体G2tは鉛直上方向をy軸正の方向とするxy直交座標系上でマイナス45度のM方向に最大感度を有し、第2感歪抵抗体G2cはプラス45度のN方向に最大感度を有している。そして図8(c)における第1感歪抵抗体G4tと第2感歪抵抗体G4cも同様に単一基材上に一体形成されたものである。
【0062】
第2の実施形態は、第1の実施形態における第1感歪抵抗体G1tと第1感歪抵抗体G3t、第2感歪抵抗体G1cと第2感歪抵抗体G3cを省いて部品点数を減じ、添着工程及び配線工程の簡素化を図ったものである。
【0063】
図9は第2の実施形態における第1感歪抵抗体G2t、第1感歪抵抗体G4t、第2感歪抵抗体G2c及び第2感歪抵抗体G4cを含んだホイートストンブリッジ回路図である。第1感歪抵抗体G2tと第1感歪抵抗体G4tは剪断応力において引張方向の検出であって、曲げ応力においても引張方向の検出であって、ホイートストンブリッジ回路では向かい合う辺として配置される。
【0064】
一方で第2感歪抵抗体G2cと第2感歪抵抗体G4cは剪断応力において圧縮方向の検出であって、曲げ応力においても圧縮方向の検出であって、ホイートストンブリッジ回路では向かい合う辺として配置される。
【0065】
したがって、第1感歪抵抗体G2tと第2感歪抵抗体G2cとはホイートストンブリッジ回路ではそれぞれ隣り合う辺に配置される。また第1感歪抵抗体G4tと第2感歪抵抗体G4cとはホイートストンブリッジ回路ではそれぞれ隣り合う辺に配置される。
【0066】
この配置で電源Eを端子T1-T3間に印加すると、端子T2-T4間に出力+SIG、―SIGが電圧にて出力される。この出力電圧は増幅器30にて増幅され、A/D変換器31でデジタル変換されて数値化され、これを元にCPU32が演算して荷重が求められる。なお増幅器30、A/D変換器31、CPU32は制御回路部20に含まれていても良いし、独立して設けられていても良い。
【0067】
第2の実施形態による荷重変換器3は第1の実施形態同様に、剪断応力も曲げ応力も引張方向の第1感歪抵抗体G2t、G4tは向かい合う辺に配置され、剪断応力も曲げ応力も圧縮方向の第2感歪抵抗体G2c、G4cは向かい合う辺に配置され、引張方向と圧縮方向の感歪抵抗体Gは隣り合う辺に配置されることから、図12(a),(b)に示す山型と谷型の特性が打ち消し合って出力の直線性率を向上させていると言える。
【0068】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態によれば、小型化の制約のもと、理想的なロバーバル特性を得るのが困難な場合であっても、精確な荷重変換器を提供することができる。すなわち本発明では、曲げ歪みによる非直線性特性と、剪断歪みに生ずる非直線性特性とが、理想の荷重直線を軸として正負で略対称に現れることを利用している。したがって、曲げ応力による歪みと剪断応力による歪みを和算して打ち消し合うように構成することで荷重出力の直線性を改善している。
【0069】
なお第1から第2の実施形態に係る荷重変換器3では、吊り部材16が第1の接続部3aに接続され、測定対象物であるロードシーブ13が第2の接続部3R、3Lに接続されているが、これを逆にして吊り部材16が第2の接続部3R、3Lに接続され、測定対象物であるロードシーブ13が第1の接続部3aに接続される構造であっても良い。
【0070】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の活用例として、荷役物を吊下げて昇降動作により搬送や組立て作業を行う荷役助力装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 :荷役助力装置
2 :モータ部
2a :モータ
3 :荷重変換器
3a :第1の接続部(支持部)
3b :起歪部
3c :面
3d :面
3e :座繰り穴部底面(起歪部)
3f :座繰り穴部底面(起歪部)
3g :面
3h :引出ケーブル
3L、3R :第2の接続部(荷重導入部)
4 :回転角検出部
5L、5R :接続板
6 :担持板
6a :担持板固定爪
7 :減速機
8 :リンクチェーン
9 :封止部材
10 :第1の鉛直面
11 :第2の鉛直面
13 :ロードシーブ
14 :チェーンポケット
15 :荷役用フック
16 :吊り部材
17 :軸
18 :ブラケット
19 :接続軸(突起)
20 :制御回路部
21 :カバー
22 :本体部
25 :操作部
26 :リンクチェーン収納部
27 :構造物
28 :荷役物
30 :増幅器
31 :A/D変換器
32 :CPU
G、Gb :感歪抵抗体
G1t~G4t :第1感歪抵抗体
G1c~G4c :第2感歪抵抗体



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13