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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】結晶形態のベータ-シトステロール
(51)【国際特許分類】
   C07J 9/00 20060101AFI20230411BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C07J9/00 CSP
A61K31/575
A61P3/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019571339
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2018066745
(87)【国際公開番号】W WO2018234540
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】17382390.7
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519451832
【氏名又は名称】センター フォー インテリジェント リサーチ イン クリスタル エンジニアリング,エセ.エレ.
【氏名又は名称原語表記】CENTER FOR INTELLIGENT RESEARCH IN CRYSTAL ENGINEERING,S.L.
【住所又は居所原語表記】C.Isaac Newton s/n,Edificio Disset,local A5,ParcBIT,07121 PALMA DE MALLORCA(ES)
(73)【特許権者】
【識別番号】519451843
【氏名又は名称】アリメントミカ,エセ.エレ.
【氏名又は名称原語表記】ALIMENTOMICA,S.L.
【住所又は居所原語表記】Carretera de Son Garreta km 0,8,Poligono 11,07310 CAMPANET(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プロヘンス ロペス,ラフェル
(72)【発明者】
【氏名】バルバス カニェロ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ポルテル ブエソ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】パロウ マーチ,マリオーナ
(72)【発明者】
【氏名】セラ ビック,フランシスカ
(72)【発明者】
【氏名】パロウ マーチ,アンドレウ
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-518713(JP,A)
【文献】BULLETIN OF THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN,日本,CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN,1993年,Vol.66, No.1,pp.320 - 323,https://www.journal.csj.jp/doi/abs/10.1246/bcsj.66.320
【文献】Pharm Tech Japan,2009年,Vol. 25, No.12,p.155-66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J 9/00
A61K 31/575
A61P 3/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群から選択される、ベータ-シトステロール又はその薬学的に許容可能なエステル若しくはその食用に許容可能なエステルと、有機カルボン酸コフォーマとの共結晶:
7.9及び16.3±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする、ベータ-シトステロール及び没食子酸の共結晶;及び
Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åにおいて以下の3.2及び4.7±0.3度2シータで表される以下のピークのパターンを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする、ベータ-シトステロール及びプロピオン酸の水和物結晶形態。
【表1】
【請求項2】
有効量の、請求項1に定義されるベータ-シトステロールの結晶と共に、1つ以上の適切で許容可能な賦形剤又は担体を含む組成物。
【請求項3】
脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル、及び/又は組織及び臓器の脂質組成の変化を伴う疾患若しくは状態の予防及び/又は治療で使用するための、請求項1に定義されるベータ-シトステロールの結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年6月22日付で出願された欧州特許出願第17382390.7号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ベータ-シトステロール又はその薬学的に許容可能なエステル又はその食用に許容可能なエステルの結晶、それらを調製する方法、及びそれらを含む組成物に関する。また、医薬、栄養補助食品、又は機能性食品としての使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
動脈硬化は、動脈壁の肥厚、硬化、弾性の喪失である。このプロセスは、臓器及び組織への血流を徐々に制限し、アテローム性動脈硬化症によってもたらされる深刻な健康上のリスクにつながる可能性がある。アテローム性動脈硬化症(動脈硬化性血管疾患(arteriosclerotic vascular disease)又はASVDとも称される)は、動脈壁の中及び上にアテロームが蓄積することによって引き起こされる動脈硬化の特定の形態である。アテロームは、動脈壁の内層に変性物質が蓄積することである。アテロームを形成する変性物質は、主にマクロファージ細胞、脂質(脂肪化合物)、及び線維性結合組織で構成されている。
【0004】
1つ又は複数の特定の血中脂質画分の上昇の正確な意義は不明であるが、血清コレステロール値の上昇(高コレステロール血症としても知られている)がアテローム性動脈硬化症のプロセスの病因における最も重要な要因であると考えられる十分な証拠が開示されている。したがって、血清コレステロールレベルを低下させる効果的な薬理学的薬剤を見出すため集中的な努力がなされてきた。血中の高レベルのコレステロール、特に高レベルのコレステロール-LDL、またかなりの程度、コレステロール-HDLに対するコレステロール-LDLの高い比率は、動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、並びにその他の血管及び心血管系の変化及び疾患のリスク因子と考えられている。
【0005】
フィトステロール(植物ステロール)は、植物ステロール及び植物スタノール(フィトスタノール)の両方を包含する植物ステロイド(又はフィトステロイド)であり、コレステロールに類似した構造を持つ化合物である。特に、それらの構造は、炭素側鎖及び/又は二重結合の有無(例えば、シトステロール及びシトスタノール)でのみ異なる。フィトステロールは植物界に広く分布しており、特に植物油及びアボカドに見られる。しかしながら、フィトステロールは人体によって合成されないため、体内での存在は食事の一部としての消費の結果である。
【0006】
特に、β-シトステロール(又はベータ-シトステロール)は、(17-(5-エチル-6-メチルヘプタン-2-イル)-10,13-ジメチル-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-オールの国際一般名(INN:International Nonproprietary Name)である。β-シトステロールは、現在の食事と、多くのフィトステロール系機能性食品又は栄養補助食品に豊富に含まれるフィトステロールである。ベータ-シトステロールの構造は、式(I)に対応する:
【化1】
【0007】
技術水準で開示された幾つかの臨床研究は、フィトステロールが腸管腔でのコレステロール吸収を阻害することにより、おそらく他のあまり知られていないメカニズムによって血清コレステロールレベルを低下させることを実証した。特に、ベータ-シトステロールは、細胞によるコレステロールの取り込み又はコレステロールのエステル化の妨害によりコレステロールと競合するため、血清総量及びLDLコレステロールレベルの低下に有用である。実際、ベータ-シトステロールは、その適応症についてFDA(食品医薬品局)によって承認されている。
【0008】
さらに、動脈硬化に関しては、トリグリセリド等の他の脂質実体にも重点が置かれている。したがって、様々な程度の有効性及び種々の脂質画分に対する特異性を有する低脂血症特性を持つ薬理学的物質を見出すための集中的な努力が行われてきた。
【0009】
異なる固体形態の有効成分は異なる特性を有する場合があり、例えば溶解度又はバイオアベイラビリティに関して特定の利点を提供することが知られている。したがって、ある種の製剤にはより適した形態もあり、他の異なる製剤には他の形態が適していることから、新たな固体形態の発見は、有効成分の薬物動態学的及び/又は薬理学的又は他の物理化学的特性、そして結果として有効成分を含む医薬製剤の特性を改善することを可能とする。
【0010】
特に、近年、有効成分の薬物動態データを改善するための実行可能な戦略として共結晶の形成が浮上している。有効成分又は有効成分の塩を少なくとも1つのコフォーマ(共結晶の第2成分)と共結晶化することにより、有効成分の既存の固体形態又はその塩と比較して、独自の特性を有する有効成分の新たな固体状態の形態が作製される。しかしながら、共結晶の形成は予測不可能であり、実際には常に可能とは限らない。さらに、化合物が形成されるまで、化合物の特定の共結晶の特性を予測する方法はない。特定の共結晶を得るための適切なコフォーマと適した条件を見つけるには、多大な時間、労力、資源が必要となる場合がある。
【0011】
ベータ-シトステロールの一水和物及び半水和物の形態は、技術水準において開示されている。特に、ベータ-シトステロールの一水和物は、アセトンと水の混合物中でのベータ-シトステロールの結晶化により得られ、次に、乾燥大気条件に一水和物を供することにより、対応する半水和物が得られた(非特許文献1;Leena I.Christiansen et al.“A novel method of producing a microcrystalline beta-sitosterol suspension in oil”を参照されたい)。さらに、ベータ-シトステロールの他の一水和物及び反水和物の形態は、ポリソルベート80とのベータ-シトステロールの結晶化によって得られた(非特許文献2;L.Christiansen et al.“Effect of beta-sitosterol on precipitation of cholesterol from non-aqueous and aqueous solutions”を参照されたい)。最後に、さらなる一水和物及び半水和物の形態も、油懸濁液中のベータ-シトステロールの結晶化により得られた(非特許文献3;Anna von Bonsdorff-Nikander et al.“Physical changes of beta-sitosterol crystals in oily suspensions during heating”を参照されたい)。上記のベータ-シトステロールの水和物及び半水和物はいずれも、X線粉末回折(XRPD)によって特性評価されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】European Journal of Pharmaceutical Sciences,2002,vol.15,pp.261-269
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2003,vol.254,pp.155-166
【文献】AAPS Pharm.Sci.Tech.2005,vol6(3)article51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当該技術分野で知られているところでは、種々の脂質画分に対する様々な程度の有効性及び特異性を有する低脂血症特性を持つ新たな薬理学的物質を見出すニーズが依然として存在している。
【0014】
本発明者らは、ベータ-シトステロール又はその薬学的に許容可能なエステル又はその食用に許容可能なエステルが、水素結合供与体コフォーマとして有機カルボン酸コフォーマと共結晶を形成できることを見出した。これらの共結晶は、高い薬理活性を有し、例えば、血中コレステロール及び血中トリグリセリド又はトリアシルグリセロールの特定の画分を含む、高血中脂質レベルの低下及び/又は正常血漿若しくは血中脂質レベルの維持に寄与する。ベータ-シトステロール又はその薬学的に許容可能なエステル又はその食用に許容可能なエステルの共結晶の提供は、本発明者らが本発明のかかる共結晶が循環脂質レベルの確定脂質画分を下げるのにはるかに効果的で選択的であるということを見出したことから、血中の脂質レベルの正常化又は維持に関連する課題を克服するための新たな手段を与える。
【0015】
一方で、本発明者らは、水素結合供与体コフォーマとして有機カルボン酸を有するベータ-シトステロール又はその薬学的に許容可能なエステル又はその食用に許容可能なエステルの共結晶が、既知の無水物形態、技術水準に記載される一水和物形態及び半水和物形態よりも循環コレステロールレベルを低下させるのにはるかに効果的で選択的であることを発見した。
【0016】
他方で、本発明者らは、水素結合ドナーコフォーマとして有機アルコールを有するベータ-シトステロール又はその薬学的に許容可能なエステル又はその食用に許容可能なエステルの共結晶が、既知の無水物形態形、一水和物形態及び半水和物形態よりも循環トリグリセリドレベルの低下においてはるかに効果的で選択的であることも見出した。
【0017】
発明者らはまた、ベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有し、循環トリグリセリドレベルを下げるのに効果的で選択的な、ベータ-シトステロールの水和物結晶形態、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルを見出した。
【0018】
有利には、ベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステル及び有機カルボン酸の共結晶と、ベータ-シトステロール及び有機アルコールの共結晶との、或いはベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルの水和物結晶形態との組み合わせは、循環脂質レベルを下げるのにはるかに効果的である。特に、血中のコレステロール及びトリグリセリドの両方のレベルを下げることができるため、この組み合わせは特に有利である。さらに、この組み合わせはまた、かかる投与が2つの有効成分の別個の組成物を含む限り、両方の有効成分を別々に、連続的に又は同時に投与できるため、有利である。
【0019】
従って、本発明の結晶により、脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル、及び/又は組織及び臓器の脂質組成、またそのゲノム特性を含、治療される患者の特定の特性の変化を伴う疾患又は状態の特定の状態に基づいて、異常な血清脂質レベルの個別の治療(精密医療又は精密栄養)を設計することができる。
【発明を解決するための手段】
【0020】
従って、本発明の第1の態様は、ベータ-シトステロール又はその薬学的に許容可能なエステル又は食用に許容可能なエステルと有機カルボン酸コフォーマの共結晶に関する。
【0021】
本発明の第2の態様は、ベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロールの水和物結晶形態、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルに関する。
【0022】
本発明の第3の態様は、ベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルと有機カルボン酸との共結晶;及びベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルと有機アルコールとの共結晶、或いはベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルの水和物結晶形態からなる群から選択されるベータ-シトステロールを含む組み合わせに関する。
【0023】
本発明の第4の態様は、有効量のa)ベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルと有機カルボン酸コフォーマとの共結晶;又はベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロール、若しくはその薬学的に許容可能なエステル、若しくはその食用に許容可能なエステルの水和物結晶形態;又はベータ-シトステロール、若しくはその薬学的に許容可能なエステル、若しくはその食用に許容可能なエステルと有機カルボン酸との共結晶と;ベータ-シトステロールと有機アルコールの共結晶、及びベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルの水和物結晶形態からなる群から選択されるベータ-シトステロールの結晶、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用の許容可能なエステルとを含む組み合わせのいずれかを、1つ又は複数の適切で許容可能な賦形剤又は担体と共に含む、組成物に関する。
【0024】
本発明の第5の態様は、医薬として使用するための上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義されるベータ-シトステロールの水和物結晶形態、或いは上に定義される組み合わせに関する。
【0025】
医薬として使用するための上に定義される組成物も本発明の一部である。
【0026】
そして、本発明の第6の態様は、脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル、及び/又は組織及び臓器の脂質組成の変化を伴う疾患若しくは状態の予防及び/又は治療で使用するための、上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶;上に定義されるベータ-シトステロールの水和物結晶形態、或いは上に定義される組み合わせに関する。
【0027】
脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル、及び/又は組織及び臓器の脂質組成の変化を伴う疾患又は状態の予防及び/又は治療に使用するための上に定義される組成物も本発明の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD:X-ray powder diffractogram)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図2】本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図3】本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図4】本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図5】本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図6】本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図7】本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図8】本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図9】本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図10】本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図11】本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図12】本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図13】本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図14】1A欄は、初期時間(T0;治療前)でのmg/dLとして表されるコレステロール濃度を示し;1B欄は、各実験群(成体雄性、ゴールデンシリアンハムスター)のT0に対する経口脂肪負荷5時間後(T5)でのmg/dLで表されるコレステロール濃度の減少を示す。実験群は次の通りである:Aはビヒクル群(脂肪負荷)に対応し、Bはベータ-シトステロールの市販認可サンプルに対応し、Cは本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶に対応し、Dは本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態に対応し、Eは本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの結晶に対応する。文字のa及びbは群間の違いを示し、aはD群対A群のp=0.064を示し、bはE群対A群のp=0.059を示す。
図15】各実験群における初期時間(T0;治療前;左列)及び経口脂肪負荷後5時間(T5-右列)でのmg/dLとして表される血漿トリグリセリド濃度を示す。実験群は次の通りである:Aはビヒクル群(脂肪負荷)に対応し、Bはベータ-シトステロールの市販認可サンプルに対応し、Cは本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶に対応し、Dは本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態に対応し、Eは本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの結晶に対応する。化合物Cは、化合物Aと化合物Bの両方と比較して、T5でより低いレベルを示し、ここで、文字のa及びbは群間の違いを示し、aはp=0.013、bはp=0.032を示す。
図16】異なる実験群における初期時間(T0)での基礎レベルと比較した、治療後5時間(T5)に関連するβ-シトステロール血漿レベルの変動パーセンテージを示す。実験群は次の通りである:Aはビヒクル群(脂肪負荷)に対応し、Bはベータ-シトステロールの市販認可サンプルに対応し、Cは本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶に対応し、Dは本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態に対応し、Eは本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの結晶に対応する。化合物Bは対照(a群)と比較して減少を示し、化合物Dは対照(a群)と比較して減少を示した。文字のa及びbは群間の違いを示し、aはp=0.061を示し、bはp=0.020を示す。
図17】本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図18】本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図19】本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図20】本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図21】本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図22】本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図23】本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図24】本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図25】本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図26】本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図27】本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図28】本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸形態7との共結晶の形態AのDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図29】本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図30】本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図31】本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図32】本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図33】本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図34】本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図35】本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸の共結晶との形態AのX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図36】本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図37】本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図38】本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ(°)を表す。
図39】本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶のTGAを示す。サーモグラムは、損失重量(%重量/重量)対温度(℃)を表す。
図40】本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶のDSCを示す。DSC熱曲線は、熱流(m/W)対温度(℃)を表す。
図41】Ph.Eur.のベータ-シトステロールの標準サンプルのHPLC分析のクロマトグラムを示す。クロマトグラムは、面積(AU)対分(分)を表す。クロマトグラムにおいて:1はスチグマステロールである6.433分のピーク1に対応し;2はカンペステロールである7.933分のピーク2に対応し、3はベータ-シトステロールである9.267分のピーク3に対応する。
図42】ベータ-シトステロールの循環レベルを示す。データは、対照群(対照群A、1.0に設定)に対する参照群と試験群の血漿中ベータ-シトステロールのフォールド変化率として示される。平均値±SEM(n=7~8動物/群)。a≠b≠c(p≦0.050、一元配置分散分析及びLSDポスト-ホック検定);*参照B1に対する相違(p<0.05、スチューデントのt検定)。実験群は次の通りである:比較群Aは、比較サンプルA(対照)が与えられた高脂肪食に対応し、比較群B1は、比較サンプルB1-市販のベータ-シトステロール(参照)が与えられた高脂肪食に対応し、比較群B2は、比較サンプルB2-市販のベータ-シトステロール(参照)が与えられた高脂肪食に対応し、試験群Cは、サンプルC(ベータ-シトステロールとプロピオン酸形態2との共結晶)が与えられた高脂肪食に対応し、試験群G1は、サンプルG1(ベータ-シトステロールと没食子酸形態5との共結晶)が与えられた高脂肪食に対応し、試験群G2は、サンプルG2(ベータ-シトステロールと没食子酸形態5との共結晶)を与えられた高脂肪食に対応する。文字のa及びbは群間の違いを示し、aはp=0.013を示し、bはp=0.032を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当該技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は以下に示す通りであり、特に明示的に定義された定義がより広い定義を提供しない限り、明細書及び特許請求の範囲全体に均一に適用されることを意図している。
【0030】
本発明の目的のため、与えられた範囲は、範囲の下限及び上限の両方の終点を含む。温度、時間、共結晶成分の比率等の与えられた範囲は、特に明記されていない限り、およそと見なされるべきである。
【0031】
本発明の目的のため、「共結晶」という用語は、本明細書では、室温(20℃~25℃)で単位格子を構成し、弱い相互作用で相互作用する少なくとも2つの異なる成分を有する結晶実体を指す。したがって、共結晶では、1つの成分が1つ又は複数の中性成分と結晶化する。共結晶は、結晶格子内に1つ又は複数の溶媒分子を含んでもよい。したがって、「共結晶水和物」又は「水和物共結晶」という用語は同じ意味を持ち、交換可能に使用される。それらの用語は、結晶格子の溶媒として水を含む共結晶を指す。
【0032】
「によって得られる共結晶」という表現は、それを得るためのプロセスによって本発明の各特定の共結晶を定義するため本明細書で使用され、本明細書に開示される対応するプロセスのいずれかによって得ることができる生成物を指す。本発明の目的のために、「得ることができる」、「得られる」という表現、及び同等の表現は交換可能に使用され、いずれにしても、「得ることができる」という表現は「得られる」という表現を包含する。
【0033】
「体積パーセント(%)」又は「体積/体積%」又は「v/v%」という用語は同じ意味を持ち、交換可能に使用される。それらの用語は総溶液量に対する溶質の量を指す。
【0034】
X線ディフラクトグラムの特徴的なピークの値が与えられる場合、これらは「近似」値であるとされる。値は、対応する一覧又は表に示される値であり、Cu-Kα放射線λ=1.5406ÅのX線回折計で測定された±0.3度2シータであることを理解される。
【0035】
本発明の共結晶の成分の比が明示される場合、それは共結晶を形成する成分間のモル比を指す。「モル比」という用語は、共結晶の各成分の化学量論量をモル数で表すために使用されている。モル比は、H NMR(プロトン核磁気共鳴)、熱重量分析(TGA)又は単結晶X線回折(SCXRD)によって決定され得る。NMR又はTGAに従ってモル比の値が与えられる場合、これらは測定誤差のために「近似」値であるとされる。モル比が言及される場合、それはモル比±0.2%に対応することを理解されたい。結果のばらつきは、H NMR及びTGAの機器の固有の感度によるものである。
【0036】
本明細書に開示される「スラリー化」という用語は、化合物の懸濁液を撹拌することにより洗浄又は分散するために溶媒を使用する任意のプロセスを指す。
【0037】
「室温」という用語は、加熱又は冷却を行わない環境の温度を指し、一般に20℃~25℃で構成される。
【0038】
「一晩」という用語は、10時間~20時間の時間間隔を指す。
【0039】
「1日」という用語は、20時間~28時間の時間間隔を指す。
【0040】
「混和性有機溶媒」という用語は、組み合わされた場合、単一相を形成する有機溶媒を指し、これは、こうして得られた混合物がとりわけ成分濃度及び温度の特定の条件下で「単相」であることを意味する。さらに、「水混和性有機溶媒」という用語は、反応が行われる温度で水と単相溶液を形成することができる有機溶媒を指す。本明細書で使用される「単相」という用語は、液相を1つだけ含む反応媒質、及びかかる反応媒質を使用する方法も指す。単相媒質の幾つかの例は、水、水溶液、及び互いに混和する水溶液及び有機溶媒を含む溶液である。
【0041】
「非混和性有機溶媒」という用語は、組み合わされた場合、2つの相を形成する有機溶媒を指し、これは、こうして得られた混合物がとりわけ成分濃度及び温度の特定の条件下で「二相性」であることを意味する。さらに、「水非混和性有機溶媒」という用語は、反応が行われる温度で水と二相を形成することができる有機溶媒を指す。本明細書で使用される場合、「二相性」という用語は、2つの非混和性液相、例えば水相と水非混和性有機溶媒相とを含む反応媒体を指す。「二相性」という用語は、かかる反応媒質を使用する方法を説明するためにも使用され得る。
【0042】
「アルキル」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で指定される数の炭素原子を含む飽和した直鎖の又は分岐した炭化水素鎖を指す。例としては、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルの基が挙げられる。
【0043】
「(C~C12)アリール」という用語は、1つ又は複数の環及び6個~12個の環員を含む芳香族の既知の環系を指し、全ての環員は炭素原子を含む。(C~C12)アリールの例としては、フェニル及びナフタレンが挙げられる。本明細書で使用される「既知の環系」という用語は、化学的に実現可能であり、当該技術分野で知られている環系を指し、したがって化学的に不可能な環系を除外することを意図する。
【0044】
本発明で定義される基(C~C)アルキル及び(C~C12)アリールは、非置換であってもよく、又は本明細書に記載される通り置換基され得る、任意の利用可能な位置に配置される置換基である。
【0045】
「アルケニル」という用語は、明細書又は特許請求の範囲に明示される数の炭素原子を含み、少なくとも1つの二重結合も含む直鎖の又は分岐した炭化水素鎖を指す。例として、エテニル、2-プロペニル、及び1-プロペニルが挙げられる。
【0046】
「アルキニル」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で指定される数の炭素原子を含み、少なくとも1つの三重結合も含む直鎖の又は分岐した炭化水素鎖を指す。
【0047】
本明細書で使用される「食用」という用語は、非毒性で消費に適していることを意味する。
【0048】
上述のように、本発明の第1の態様は、ベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルと、水素結合供与体コフォーマとの共結晶の提供である。
【0049】
一実施形態では、ベータ-シトステロールと水素結合供与体コフォーマとのベータ-シトステロールの共結晶は、薬学的に許容可能なエステルの形態である。本明細書で使用される「薬学的に許容可能なエステル」という用語は、無機酸又は有機酸を含む薬学的に許容可能な非毒性酸から形成されるエステルを包含する。エステルに関する制限はないが、医学において治療目的で使用される場合は、薬学的に許容可能でなくてはならない。
【0050】
一実施形態では、ベータ-シトステロールと水素結合供与体コフォーマとのベータ-シトステロールの共結晶は、食用に許容可能なエステルの形態である。本明細書で使用される「食用に許容可能なエステル」という用語は、無機酸又は有機酸を含む食用に許容可能な非毒性酸から形成されるエステルを包含する。
【0051】
ベータ-シトステロールのエステルは、無機酸及び有機酸を含む薬学的に許容可能な非毒性酸及び食用酸から調製され得る。かかる酸としては、とりわけ、酢酸、酪酸、プロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタン硫酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸及びp-トルエン硫酸が挙げられる。かかる酸としては、とりわけ(C~C22)アルキル脂肪酸、(C~C22)アルケニル脂肪酸も挙げられる。(C~C22)アルキル脂肪酸には、(C~C12)アルキル鎖の脂肪族尾部を含む中鎖脂肪酸、及び(C13~C22)アルキル鎖の脂肪族尾部を含む長鎖脂肪酸が含まれる。(C~C22)アルケニル脂肪酸には、(C~C12)アルケニル鎖の脂肪族尾部を含む中鎖脂肪酸、及び(C13~C22)アルケニル鎖の脂肪族尾部を含む長鎖脂肪酸が含まれる。適切な脂肪酸の例としては、とりわけ、オレイン酸、ポリ酸、ステアリン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ラウリン酸及びミリスチン酸が挙げられる。
【0052】
一実施形態では、共結晶は、ベータ-シトステロールと水素結合供与体コフォーマとの共結晶である。
【0053】
「水素結合供与体」という用語は、水素結合を介して電気陰性原子と相互作用することができる少なくとも1つの電気陽性水素原子を有する化合物を指す。
【0054】
一実施形態では、ベータ-シトステロールの共結晶は、水素結合供与体コフォーマが有機カルボン酸及び有機アルコールからなる群から選択される。
【0055】
一実施形態では、ベータ-シトステロールの共結晶は、ベータ-シトステロールと、有機カルボン酸及び有機アルコールからなる群から選択される水素結合供与体コフォーマとのの水和物共結晶であり、一水和物共結晶であることが好ましい。
【0056】
「有機カルボン酸」という用語は、少なくとも1つの-COOH基を含む薬学的に許容可能な有機酸を指す。一実施形態では、ベータ-シトステロールの共結晶は、水素結合供与体コフォーマが、R-(COOH)及び
【化2】

の化合物から選択される有機カルボン酸であり、式中、Rは、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、及び(C~C)アルキニルからなる群より選択され、任意に1つ又は複数のヒドロキシル基で置換され;Rは、H及びOHからなる群から選択され;Rは、H及び-COOHからなる群から選択され;Rは(c1~C6)アルキルであり;nは1~3から選択された整数である。
【0057】
一実施形態では、ベータ-シトステロールの共結晶は、水素結合供与体コフォーマが、L-乳酸、プロピオン酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される有機カルボン酸であるものである。一実施形態では、ベータ-シトステロールの共結晶は、水素結合供与体コフォーマが、L-乳酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される有機カルボン酸であるものである。
【0058】
一実施形態では、本発明の共結晶は、共結晶形態1と名付けられた、ベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶である。本発明の目的のため、L-乳酸は、2-(S)ヒドロキシプロパン酸の国際一般名(INN)であり、CAS番号79-33-4を有する。L-乳酸の構造は以下の通りである。
【化3】
【0059】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶は、およそ2.3及び4.6±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶は、14.5、15.7、及び17.5±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0060】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表1に示される、度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0061】
表1:選択されたピークのリスト(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数1】
【0062】
本発明のベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶は、図1のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0063】
一実施形態では、本発明の共結晶は、共結晶形態2と名付けられた、ベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶である。本発明の目的のため、プロピオン酸は、プロパン酸の国際一般名(INN)であり、CAS番号79-09-4を有する。プロピオン酸の構造は以下の通りである:
【化4】
【0064】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶は、およそ2.2及び4.4±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶は、11.8、12.4、及び14.8±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0065】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表2に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0066】
表2:選択されるピークの一覧(0.5%以上の相対強度を持つピークのみを示す):
【数2】
【0067】
本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶は、図2のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0068】
本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶の熱重量分析(TG)分析は、30℃~300℃で35.0%の第1の重量減少を更に特徴とし得る(図3を参照されたい)。
【0069】
本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、79.2J/gの関連する熱を伴う44°Cでの幅広い吸熱現象(4つの現象の重複)を更に特徴とし得る(図4を参照されたい)。
【0070】
一実施形態では、下記式のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶は、モル比2:1である。
【0071】
一実施形態では、共結晶ベータ-シトステロール及びプロピオン酸は水和物共結晶であり;好ましくは、ベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶は、2:1のベータ-シトステロール:プロピオン酸のモル比を有する一水和物共結晶である。
【0072】
単結晶X線回折によって得られた上に定義される共結晶ベータ-シトステロール:プロピオン酸の構造データは一水和物共結晶に対応し、以下に示される:
【数3】
【0073】
一実施形態では、本発明の共結晶は、共結晶形態3と名付けられた、ベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶である。本発明の目的では、チモン酸は、4-ヒドロキシ-2-メチル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-カルボン酸の国際一般名(INN)であり、CAS番号24891-71-2を有する。チモン酸の構造は以下の通りである:
【化5】
【0074】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶は、およそ2.2及び4.5±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶は、6.7、15.4、及び18.0±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0075】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表3に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0076】
表3:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数4】
【0077】
本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶は、図5のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0078】
本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶の熱重量分析(TG)分析は、30℃~118℃で2.4%の第1の重量減少、及び118℃~300℃での36.6%の第2の重量減少を更に特徴とし得る(図6を参照されたい)。
【0079】
本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、15.9J/gの関連する熱を伴う59℃での第1の広い吸熱現象、及び42.1J/gの関連する熱を伴う125℃での第2の吸熱現象を更に特徴とし得る(図7を参照されたい)。
【0080】
一実施形態では、下記式のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶は、モル比2:1である。
【0081】
一実施形態では、共結晶ベータ-シトステロール及びチモン酸は水和物共結晶であり;好ましくは、ベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶は、ベータ-シトステロール:チモン酸のモル比2:1を有する一水和物共結晶である。
【0082】
一実施形態では、本発明の共結晶は、共結晶形態5と名付けられた、ベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶である。本発明の目的では、没食子酸は、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸の国際一般名(INN)であり、CAS番号149-91-7を有する。没食子酸の構造は以下の通りである:
【化6】
【0083】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶は、およそ7.9及び16.3±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶は、2.3、13.0、及び15.9±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0084】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表6に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0085】
表6:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数5】
【0086】
本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶は、図17のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0087】
本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶の熱重量分析(TG)分析は、194℃で始まる熱融解/分解現象を更に特徴とし得る(図18を参照されたい)。
【0088】
本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、63.8J/gの関連する熱を伴う194°Cでの吸熱現象を特徴とすることもある(図19を参照されたい)。
【0089】
一実施形態では、下記式のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、モル比2:1である。
【0090】
一実施形態では、本発明の共結晶は、共結晶形態6と名付けられた、ベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶である。本発明の目的では、2,4-ジヒドロキシ安息香酸はCAS番号89-86-1を有する。2,4-ジヒドロキシ安息香酸の構造は以下の通りである:
【化7】
【0091】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、およそ11.4及び16.2±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、4.6、15.8、及び17.9±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0092】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表7に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0093】
表7:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数6】
【0094】
本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、図20のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0095】
本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶の熱重量分析(TG)分析は、151℃で始まる熱融解/分解現象を更に特徴とし得る(図21を参照されたい)。
【0096】
また、本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、51.7J/gの全関連する熱を伴う2つの重複した現象:DSC(示差走査熱量測定)分析による、151℃での第1の広い吸熱現象及び167℃のピークを伴う第2の吸熱減少を更に特徴とし得る(図22を参照されたい)。
【0097】
一実施形態では、下記式のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、モル比1:1である。
【0098】
一実施形態では、本発明の共結晶は、共結晶形態7と名付けられた、ベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶である。本発明の目的では、3,4-ジヒドロキシ安息香酸はCAS番号99-50-3を有する。3,4-ジヒドロキシ安息香酸の構造は以下の通りである:
【化8】
【0099】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、2.3及び15.9±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、4.6、15.1、及び16.6±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0100】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表8に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0101】
表8:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数7】
【0102】
本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、図23のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0103】
本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶の熱重量分析(TG)分析は、29℃~116℃で2.1%の重量減少を更に特徴とし得る(図24を参照されたい)。
【0104】
本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、45.4J/gの関連する熱を伴う38℃での第1の広い吸熱現象、及び46.4J/gの関連する熱を伴う157℃での第2の吸熱現象を更に特徴とし得る(図25を参照されたい)。
【0105】
一実施形態では、下記式のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、モル比1:2である。
【0106】
一実施形態では、共結晶ベータ-シトステロール及び3,4-ジヒドロキシ安息香酸は水和物共結晶であり;好ましくは、ベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、1:2のベータ-シトステロール:3,4-ジヒドロキシ安息香酸のモル比を有する一水和物共結晶である。
【0107】
一実施形態では、本発明の共結晶は、ベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶である。本発明の目的では、3,5-ジヒドロキシ安息香酸はCAS番号99-10-5を有する。3,5-ジヒドロキシ安息香酸の構造以下の通りである:
【化9】
【0108】
一実施形態では、本発明の共結晶は、ベータ-シトステロールと、形態8と名付けられた3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶である。
【0109】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、10.7及び15.9±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、13.4、16.3、及び17.9±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0110】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表9に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0111】
表9:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数8】
【0112】
本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、図26のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0113】
本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶の熱重量分析(TG)分析は、29℃~89℃で1.9%の重量減少を更に特徴とし得る(図27を参照されたい)。
【0114】
本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、24.8J/gの関連する熱を伴う45℃での第1の広い吸熱現象、9.6J/gの関連する熱を伴う87℃での第2の吸熱現象、及び43.0J/gの関連する熱を伴う162℃での第3の吸熱現象を更に特徴とし得る(図28を参照されたい)。
【0115】
一実施形態では、以下の式のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、2:1のモル比である。
【0116】
一実施形態では、形態Aの共結晶ベータ-シトステロール及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸は水和物共結晶であり;好ましくは、ベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、1:1のベータ-シトステロール:3,5-ジヒドロキシ安息香酸のモル比を有する一水和物共結晶である。
【0117】
一実施形態では、本発明の共結晶は、ベータ-シトステロールと、形態9と名付けられた3,5-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶である。
【0118】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、2.3及び4.6±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、10.7、12.9、及び15.3±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0119】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表10に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0120】
表10:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数9】
【0121】
本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、図29のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0122】
本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶の熱重量分析(TG)分析は、29℃~71℃で3.1%の重量減少を更に特徴とし得る(図30を参照されたい)。
【0123】
本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、40.7J/gの関連する熱を伴う48℃での第1の広い吸熱現象、39.7J/gの関連する熱を伴う162℃での第2の吸熱現象、及び17.2J/gの関連する熱を伴う231℃での第3の吸熱現象を更に特徴とし得る(図31を参照されたい)。
【0124】
一実施形態では、以下の式のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、1:1のモル比である。
【0125】
一実施形態では、形態Bの共結晶ベータ-シトステロール及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸は水和物共結晶であり;好ましくは、ベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、1:1のベータ-シトステロール:3,5-ジヒドロキシ安息香酸のモル比を有する一水和物共結晶である。
【0126】
一実施形態では、本発明の共結晶は、共結晶形態10と名付けられた、ベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶である。本発明の目的では、3-ヒドロキシ安息香酸はCAS番号99-06-9を有する。3-ヒドロキシ安息香酸の構造は以下の通りである。
【化10】
【0127】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶は、4.6及び12.9±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶は、11.6、13.3、及び15.2±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0128】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表11に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0129】
表11:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数10】
【0130】
本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶は、図32のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0131】
本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶の熱重量分析(TG)分析は、29℃~109℃で1.0%の重量減少を更に特徴とし得る(図33を参照されたい)。
【0132】
本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、29.3J/gの関連する熱を伴う72℃での第1の広い吸熱現象、及び40.1J/gの関連する熱を伴う125℃での第2の吸熱現象を更に特徴とし得る(図34を参照されたい)。
【0133】
一実施形態では、ベータ-シトステロールと下式の3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶は、2:1のモル比である。
【0134】
一実施形態では、共結晶ベータ-シトステロール及び3-ヒドロキシ安息香酸は水和物共結晶であり;好ましくは、ベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶は、2:1のベータ-シトステロール:3-ヒドロキシ安息香酸のモル比を有する一水和物共結晶である。
【0135】
一実施形態では、本発明の共結晶は、ベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との共結晶である。本発明の目的では、4-ヒドロキシ安息香酸はCAS番号99-96-7を有する。4-ヒドロキシ安息香酸の構造は以下の通りである:
【化11】
【0136】
一実施形態では、本発明の共結晶は、ベータシトステロールと形態11と名付けられた4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶である。
【0137】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、6.6及び13.5±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、2.2、13.1及び14.2±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0138】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表12に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0139】
表12:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数11】
【0140】
本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、図35のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0141】
本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶の熱重量分析(TG)分析は、29℃~86℃で1.3%の重量減少を更に特徴とし得る(図36を参照されたい)。
【0142】
本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、35.1J/gの関連する熱を伴う35℃での第1の広い吸熱現象、及び46.8J/gの関連する熱を伴う163℃での第2の吸熱現象を更に特徴とし得る(図37を参照されたい)。
【0143】
一実施形態では、以下の式のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、1:1のモル比である。
【0144】
一実施形態では、形態Aの共結晶ベータ-シトステロール及び4-ヒドロキシ安息香酸は水和物共結晶であり;好ましくは、ベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、1:1のベータ-シトステロール:4-ヒドロキシ安息香酸のモル比を有する半和物共結晶である。
【0145】
一実施形態では、本発明の共結晶は、ベータ-シトステロールと形態12と名付けられた4-ヒドロキシ安息香酸とのB形態の共結晶である。
【0146】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、15.8及び17.9±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は2.3、12.4、及び16.8±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0147】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表13に示される度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0148】
表13:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数12】
【0149】
本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、図38のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0150】
本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶の熱重量分析(TG)分析は、145℃で始まる熱融解/分解現象を更に特徴とし得る(図39を参照されたい)。
【0151】
本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、60.7J/gの関連する熱を伴う145°Cでの幅広い吸熱現象を特徴とすることもある(図40を参照されたい)。
【0152】
一実施形態では、下記式のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶はモル比1:1である。
【0153】
上述のように、本発明の第1の態様は、ベータ-シトステロールと水素結合供与体コフォーマとの共結晶の提供である。一実施形態では、ベータ-シトステロールと水素結合供与体コフォーマとの共結晶は、水素結合供与体コフォーマが有機アルコールであるものである。「有機アルコール」という用語は、1つ又は複数のヒドロキシル基を持つ有機化合物を指す。一実施形態では、ベータ-シトステロールの共結晶は、水素結合供与体コフォーマが式RCHOHの有機アルコールであり、Rが(C~C)アルキル、(C~C12)アリール、及び(C~C12)アリ-ル-(C~C)アルキルから選択される。
【0154】
一実施形態では、ベータ-シトステロールの共結晶は、水素結合供与体コフォーマがベンジルアルコール、エタノール及びイソプロパノールからなる群から選択される有機アルコールであるものである。
【0155】
一実施形態では、本発明の共結晶は、共結晶形態4と名付けられた、ベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶である。本発明の目的では、ベンジルアルコールは、フェニルメタノールの国際一般名(INN)であり、CAS番号100-51-6を有する。ベンジルアルコールの構造は以下の通りである:
【化12】
【0156】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールの共結晶は、およそ2.3及び4.7±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールの共結晶は、9.0、11.7及び15.0±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0157】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶は、表4に示す度2θ(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンをX線粉末ディフラクトグラムに示すことを特徴とする。
【0158】
表4:選択されたピークのリスト(相対強度が0.5%以上のピークのみを示す):
【数13】
【0159】
本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶は、図8のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0160】
本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶の熱重量分析(TG)分析は、ベータ-シトステロールとベンジルアルコールにより、30℃~260℃で31.9%の第1の重量減少、260℃~300℃での1.2%の第2の重量減少も特徴とする(図9を参照されたい)。
【0161】
本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶は、DSC(示差走査熱量測定)分析による、42.9J/gの関連する熱を伴う45℃での第1の広い吸熱現象、及び125℃での第2の広い吸熱現象及び206.2J/の関連する熱を更に特徴とし得る(図10を参照されたい)。
【0162】
一実施形態では、下記式のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶は、モル比4:1である。
【0163】
一実施形態では、共結晶ベータ-シトステロール及びベンジルアルコールは水和物共結晶であり;好ましくは、ベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶は、ベータ-シトステロール:ベンジルアルコールのモル比が4:1の一水和物共結晶である。
【0164】
単結晶X線回折によって得られた上に定義される共結晶ベータ-シトステロール:ベンジルアルコールの構造データは一水和物共結晶に対応し、以下に示される:
【数14】
【0165】
本発明の第2の態様は、ベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルの水和物結晶形態に関する。一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶のベータ-シトステロールは、その薬学的に許容可能なエステル又はその食用に許容可能なエステルの形態である。水分子の値が与えられる場合、測定誤差のためにこれらは「近似」値であるとされる。1.25の水分含量が言及される場合、それは1~1.50で構成される水分含量に対応すると理解されたい。
【0166】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態は、およそ3.2及び4.7±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態において、本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態は、9.0、12.1及び14.8±0.3度2シータ(Cu-Kα放射線、λ=1.5406Å)に更に特徴的なピークを含むX線粉末ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0167】
より具体的には、本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態は、X線粉末ディフラクトグラムにおいて、表5に示される度2θ単位(°)の2シータ単位で表されるピークのパターンを示すことを特徴とする。
【0168】
表5:選択されたピークの一覧(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数15】
【0169】
本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態は、図11のようなX線ディフラクトグラムを更に特徴とし得る。
【0170】
本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態の熱重量分析(TG)分析は、ベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子のH2Oに起因する、33℃~154℃での5.1%の第1の重量減少(理論上は5.8%の重量減少)、及び154℃~300℃での2.6%の第2の重量減少を更に特徴とし得る(図12を参照されたい)。
【0171】
本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態は、DSC(示差走査熱量測定)分析による94.8J/gの関連する熱を伴う77℃での第1の広い吸熱現象及び58.6J/gの関連する熱を伴う135℃での第2の吸熱現象を更に特徴とし得る(図13を参照されたい)。
【0172】
本発明の第1及び第2の態様のベータ-シトステロール又はその薬学的に許与可能なエステル又はその食用に許容可能なエステルの結晶形態の調製方法の提供も本発明の一部である。本発明のベータ-シトステロールの結晶形態は、純粋な形態として、又は種々のフィトステロール及びフィトスタノールを含む混合物として調製されてもよい。
【0173】
本発明の結晶形態の調製方法は、ベータ-シトステロール、又は代替としてフィトステロール/フィトスタノールの混合物)を対応するコフォーマと接触させることを含む。本発明において出発物質として使用されるベータ-シトステロールは商業的に入手可能である。通常、ベータ-シトステロールは結晶形態の混合物として入手可能である。この混合物は、無水ベータ-シトステロールと水和ベータ-シトステロールによって形成され得て、これらは、例えば40:60~60:40等の種々の比率であってもよい。特に、ベータ-シトステロールの無水物と水和物の混合物は50:50である。
【0174】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶(共結晶形態1)の調製方法は、(a)L-乳酸の混合物中のベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中にスラリー化すること;(b)そのようにして得られた共結晶を単離することを含む。
【0175】
一実施形態では、工程(a)は、混和性有機溶媒;好ましくは、(C~C)アルコール、(C~C)アルキル-CO-(C~C)アルキル、(C~C)アルキル-CO-O-(C~C)アルキル及びその混合物の存在下で実施される。「アルコール」という用語は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換され、明細書又は特許請求の範囲で指定される数の炭素原子を含む「アルカン」を指す。「アルカン」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で指定される数の炭素原子を含む飽和された分岐した又は直鎖の炭化水素を指す。例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、及びsec-ブタノールが挙げられる。「アルキル」という用語は上に定義される通りである。一実施形態では、工程(a)は酢酸エチルの存在下で実施される。
【0176】
一実施形態では、単離工程(b)は、例えば、次の操作:濾過、真空下での濾過、デカンテーション及び遠心分離、又は他の適切な技術の1つ又は複数によって、水等の溶媒を除去することを含んでもよい。好ましくは、工程(b)は、固体の濾過、及びそれに続く洗浄工程;好ましくは水を用いて実行される。一実施形態では、工程(b)は、単離された共結晶を乾燥させる、好ましくは、共結晶は室温で、好ましくは真空条件下で乾燥させることを更に含む。一般に、真空には0.5mbar~3mbarの圧力がかかる。
【0177】
また、本発明のベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶は、その調製プロセスによって定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶(共結晶形態1)として製剤化され得る。
【0178】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(共結晶形態2)の調製プロセスは、(a’)ベータ-シトステロール及びプロピオン酸を1:10~1:50のモル比で混合すること、(b’)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0179】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(共結晶形態2)の調製方法は、工程(a’)で得られた混合物に貧溶媒を添加することを含む、追加の工程(c)を更に含む。本明細書で使用される場合、「貧溶媒」という用語は、結晶の溶解性が制限されているか又は溶解性がない、結晶化を促進できる溶媒を指す。一実施形態では、貧溶媒は、水、ペンタン、ヘプタン、エチレングリコール、メタノール、アセトニトリル、及びエタノールからなる群から選択される。
【0180】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸と共結晶(共結晶形態2)の調製方法の工程(a’)は、ベータ-シトステロール及びプロピオン酸を1:2~1:100;好ましくは1:10~1:50のモル比で混合することを含む。
【0181】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(共結晶形態2)を調製するための工程(b’)は、(d)最初に、そのようにして得られた結晶を80mmHg~500mmHg、好ましくは100mmHg~300mmHgの真空下で乾燥させること、及び(e)次いで、工程(d)で得られた結晶に気流を通過させることを含む。
【0182】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(a’)にも適用される。一実施形態では、工程(a’)は室温で実行される。別の実施形態では、工程(a’)は、有機溶媒の不在下を意味するニート条件(neat condition)で実施される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(b’)にも適用される。
【0183】
本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶、特に共結晶ベータ-シトステロール:プロピオン酸は、その調製プロセスによっても定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(共結晶形態2)として製剤化され得る。
【0184】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶(共結晶形態3)の調製プロセスは、(a’’)ベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中でプロピオン酸と混合すること、(b’’)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0185】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(a’’)にも適用される。一実施形態では、工程(a’’)は室温で実行される。一実施形態では、工程(a’’)はアセトンの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(b’’)にも適用される。
【0186】
本発明のベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶、特に共結晶ベータ-シトステロール:チモン酸を、その調製プロセスによって定義することもできる。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶(共結晶形態3)として製剤化され得る。
【0187】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールの共結晶(共結晶形態4)の調製方法は、(a’’’)50℃~75℃で構成される温度でベータ-シトステロールをベンジルアルコールと混合した後、4℃~8℃まで温度を冷却すること;(b’’’)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0188】
工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(b’’’)にも適用される。好ましくは、工程(b’’’)は次の方法:(i)工程(a’’’)で得られたゲルをデカントすること;(ii)工程(i)で得られたゲルを水非混和性有機溶媒に溶解し、乾燥するまで溶媒を蒸発させること;(iii)工程(ii)で得られた乾燥固体を水非混和性有機溶媒に混合し、乾燥するまで溶媒を蒸発させること;及び(iv)工程(iii)で得られた固体を濾過し、分離された共結晶を乾燥させること;で実行され、好ましくは、共結晶は室温で、好ましくは真空条件下で乾燥される。一般に、真空には0.5mbar~3mbarの圧力がかかる。
【0189】
一実施形態では、工程(b’’’)の工程(ii)は、(C~C)アルカン、(C~C)アルキル-O-(C~C)アルキル(ジアルキルエーテル)及びそれらの混合物からなる群から選択される水非混和性有機溶媒の存在下で実施される。「アルカン」及び「アルキル」という用語は上に定義される通りである。一実施形態では、(b’’’)の工程(ii)はペンタンの存在下で実行され、(b’’’)の工程(iii)は、ジエチルエーテルの存在下で実行される。
【0190】
本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶は、その調製プロセスによっても定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールと上に定義されるベンジルアルコールとの共結晶(共結晶形態4)として製剤化され得る。
【0191】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶(共結晶形態5)の調製プロセスは、(a)ベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中で没食子酸酸と混合すること、(b)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0192】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(a)にも適用される。一実施形態では、工程(a)は室温で実行される。一実施形態では、工程(a)は酢酸エチルの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(b)にも適用される。
【0193】
また、本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶は、その調製プロセスによって定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶(共結晶形態5)として製剤化され得る。
【0194】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶(共結晶形態6)の調製プロセスは、(avi)ベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中で2,4-ジヒドロキシ安息香酸と混合すること、(bvi)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0195】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(avi)にも適用される。一実施形態では、工程(avi)は室温で実行される。一実施形態では、工程(avi)は酢酸エチルの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(bvi)にも適用される。
【0196】
また、本発明のベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、その調製プロセスによって定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶(共結晶形態6)として製剤化され得る。
【0197】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶(共結晶形態7)の調製プロセスは、(avii)ベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中で3,4-ジヒドロキシ安息香酸と混合すること、(bvii)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0198】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(avii)にも適用される。一実施形態では、工程(avii)は室温で実行される。一実施形態では、工程(avii)は酢酸エチルの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(bvii)にも適用される。
【0199】
また、本発明のベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶は、その調製プロセスによって定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶(共結晶形態7)として製剤化され得る。
【0200】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶(共結晶形態8)の調製プロセスは、(aviii)ベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中で3,5-ジヒドロキシ安息香酸と混合すること、(bviii)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0201】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(aviii)にも適用される。一実施形態では、工程(aviii)は室温で実行される。一実施形態では、工程(aviii)は酢酸エチルの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(bviii)にも適用される。
【0202】
また、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、その調製プロセスによって定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶(共結晶形態8)として製剤化され得る。
【0203】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶(共結晶形態9)の調製プロセスは、(aviiii)ベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中で3,5-ジヒドロキシ安息香酸と混合すること、(bviiii)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0204】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(aviiii)にも適用される。一実施形態では、工程(aviiii)は室温で実行される。一実施形態では、工程(aviiii)は酢酸エチルの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(bviiii)にも適用される。
【0205】
また、本発明のベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、その調製プロセスによって定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶(共結晶形態9)として製剤化され得る。
【0206】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶(共結晶形態10)の調製プロセスは、(avv)ベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中で3-ヒドロキシ安息香酸と混合すること、(bvv)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0207】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(avv)にも適用される。一実施形態では、工程(avv)は室温で実行される。一実施形態では、工程(avv)は酢酸エチルの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(bvv)にも適用される。
【0208】
また、本発明のベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶は、その調製プロセスによって定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶(共結晶形態10)として製剤化され得る。
【0209】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶(共結晶形態11)の調製プロセスは、(avvi)ベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中で4-ヒドロキシ安息香酸と混合すること、(bvvi)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0210】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(avvi)にも適用される。一実施形態では、工程(avvi)は室温で実行される。一実施形態では、工程(avvi)は酢酸エチルの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(bvvi)にも適用される。
【0211】
また、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶は、その調製プロセスによって定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶(共結晶形態11)として製剤化され得る。
【0212】
一実施形態では、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶(共結晶形態12)の調製プロセスは、(avvii)ベータ-シトステロールを混和性有機溶媒中で4-ヒドロキシ安息香酸と混合すること、(bvvii)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0213】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(avvii)にも適用される。一実施形態では、工程(avvii)は室温で実行される。一実施形態では、工程(avvii)は酢酸エチルの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(bvviii)にも適用される。
【0214】
また、本発明のベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶は、その調製プロセスによって定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶(共結晶形態12)として製剤化され得る。
【0215】
一実施形態では、本発明の1.25分子の水を有するベータ-シトステロールの水和物結晶の調製プロセスは、(a’’’’)ベータ-シトステロールを水混和性有機溶媒と混合すること、(b’’’’)そのようにして得られた共結晶を分離することを含む。
【0216】
一実施形態では、工程(a’’’’)の水混和性有機溶媒は、(C~C)アルキル-CO-(C~C)アルキル、(C~C)アルキル-CO-O-(C~C)アルキル、水、シクロ(C~C)アルカン、フェニル-(C~C)アルキル、ハロゲン-(C~C)アルカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態では、工程(a’’’’)の水混和性有機溶媒は、アセトン、酢酸エチル、水、シクロヘキサン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、及びそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、アセトン及び酢酸エチルである。用語シクロアルカンは、説明又は特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含む「環状」アルカンを指す。シクロアルカンという用語には、炭素環式アルカン又は複素環式アルカンが含まれる。「炭素環式」アルカンという用語は、炭素原子の環の各メンバーである環状アルカンを指す。炭素環式アルカンの例としては、シクロペンタン及びシクロヘキサンが挙げられる。「複素環式」アルカンという用語は、少なくとも1個の炭素原子がN、NH、O、又はSの原子で置換されている「炭素環式」化合物を指す。複素環式アルカンの例としては、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピランが挙げられる。「ハロゲン-アルカン」という用語は、少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換され、明細書又は特許請求の範囲で指定される数の炭素原子を含むアルカンを指す。ハロゲンアルカンの例としては、クロロホルム、トリクロロエタン及びジクロロエタンが挙げられる。
【0217】
一実施形態では、工程(a’’’’)は、有機酸の存在下で実施される。一実施形態では、工程(a’’’’)は、プロピオン酸、酢酸、ギ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される有機酸;好ましくはプロピオン酸の存在下で実施される。
【0218】
工程(a)について上に開示される全ての実施形態は、工程(a’’’’)にも適用される。一実施形態では、工程(a’’’’)は室温で実行される。一実施形態では、工程(a’’’’)はアセトンの存在下で実行される。工程(b)について上に開示される全ての実施形態は、工程(b’’’’)にも適用される。
【0219】
本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態は、その調製プロセスによっても定義され得る。したがって、本発明のこの態様は、任意に、プロセスの任意の好ましい又は特定の実施形態、及び上に開示されるプロセスの特徴の幾つかの可能な組み合わせを含む、前述のプロセスのいずれかによって得られる、上で定義されるベータ-シトステロールの水和物結晶形態として製剤化され得る。
【0220】
本発明のベータ-シトステロールの結晶の調製方法は、高い化学収率及び高い多形純度で結晶を得ることができるため有利である。典型的には、上述のプロセスで得られる結晶の化学純度は90面積%以上、好ましくは95面積%以上である。典型的には、上述のプロセスで得られる結晶は、Cu-Kα放射線λ=1.5406ÅのX線回折計を使用した場合、X線粉末回折測定ではベータ-シトステロールの他の結晶形態が検出できないような多形純度を有する。
【0221】
本発明の第3の態様は、ベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルと、上に定義される有機カルボン酸との共結晶;及び上に定義されるベータ-シトステロールと有機アルコールとの共結晶からなる群から選択される、ベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルの結晶、及び上に定義される1.25分子の水を有する、ベータ-シトステロール、又はその薬学的に許容可能なエステル、又はその食用に許容可能なエステルの水和物結晶形態を含む組み合わせに関する。
【0222】
上に定義されるベータ-シトステロールの結晶について上に開示される実施形態はいずれも本発明の組み合わせにも適用される。
【0223】
一実施形態では、組み合わせは:上に定義されるベータ-シトステロールと有機カルボン酸との共結晶;及び上に定義されるベータ-シトステロールと有機アルコールとの共結晶を含むものである。
【0224】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、プロピオン酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶を含むものである。一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、プロピオン酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、及び没食子酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶;好ましくはベータ-シトステロールとプロピオン酸の共結晶を含むものである。一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、及び没食子酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶を含むものである。一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、ベンジルアルコール、エタノール及びイソプロパノールからなる群から選択される有機アルコール;好ましくはベンジルアルコールとの結晶を含むものである。
【0225】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、プロピオン酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶を含むものである。一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、プロピオン酸、チモン酸、コハク酸、没食子酸、及びアスコルビン酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶;好ましくはベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶;並びにベータ-シトステロールと、ベンジルアルコール、エタノール及びイソプロパノールからなる群から選択される有機アルコール;好ましくはベンジルアルコールとの結晶を含むものである。特定の実施形態では、本発明の組み合わせは、プロピオン酸及びベンジルアルコールを含むものである。
【0226】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶を含むものである。一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、チモン酸、コハク酸、没食子酸、及びアスコルビン酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶;並びにベータ-シトステロールと、ベンジルアルコール、エタノール及びイソプロパノールからなる群から選択される有機アルコール;好ましくはベンジルアルコールとの結晶を含むものである。
【0227】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、上に定義される共結晶形態1、共結晶形態2、共結晶形態3、共結晶形態5、共結晶形態6、共結晶形態7、共結晶形態8、共結晶形態9、共結晶形態10、共結晶形態11、及び共結晶形態12からなる群から選択される、ベータ-シトステロールと有機カルボン酸との共結晶;好ましくは上に定義される共結晶形態2;並びにベータ-シトステロールと、ベンジルアルコール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選択される有機アルコールとの結晶;好ましくは共結晶形態4を含むものである。特定の実施形態では、本発明の組み合わせは、上に定義される共結晶形態2及び共結晶形態4を含むものである。
【0228】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、上に定義される共結晶形態1、共結晶形態3、共結晶形態5、共結晶形態6、共結晶形態7、共結晶形態8、共結晶形態9、共結晶形態10、共結晶形態11、及び共結晶形態12からなる群から選択される、ベータ-シトステロールと有機カルボン酸との共結晶;並びにベータ-シトステロールと、ベンジルアルコール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選択される有機アルコールとの結晶;好ましくは共結晶形態4を含むものである。
【0229】
一実施形態では、組み合わせは:上に定義されるベータ-シトステロールと有機カルボン酸との共結晶;及び上に定義される1.25分子の水を有するベータ-シトステロールの水和物結晶形態を含む。
【0230】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、プロピオン酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶を含むものである。一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、プロピオン酸、チモン酸、コハク酸、没食子酸、及びアスコルビン酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶;好ましくはベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶;並びにベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有する、上に定義されるベータ-シトステロールの水和物結晶形態を含むものである。特定の実施形態では、本発明の組み合わせは、プロピオン酸とベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロールの水和物結晶形とを含むものである。
【0231】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶を含むものである。一実施形態では、本発明の組み合わせは、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、チモン酸、コハク酸、没食子酸、及びアスコルビン酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶;並びにベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有する、上に定義されるベータ-シトステロールの水和物結晶形態を含むものである。
【0232】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、共結晶形態1、共結晶形態2、共結晶形態3、共結晶形態5、共結晶形態6、共結晶形態7、共結晶形態8、共結晶形態9、共結晶形態10、共結晶形態11、及び共結晶形態12からなる群から選択される、ベータ-シトステロールと有機カルボン酸との共結晶;好ましくは共結晶形態2;並びに上に定義される、ベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロールの水和物結晶形態を含むものである。特定の実施形態では、本発明の組み合わせは、共結晶形態2と、ベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロールの水和物結晶形とを含むものである。
【0233】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、共結晶形態1、共結晶形態3、共結晶形態5、共結晶形態6、共結晶形態7、共結晶形態8、共結晶形態9、共結晶形態10、共結晶形態11、及び共結晶形態12からなる群から選択される、ベータ-シトステロールと有機カルボン酸との共結晶;並びに上に定義される、ベータ-シトステロール1分子当たり1.25分子の水を有するベータ-シトステロールの水和物結晶形態を含むものである。
【0234】
上述のように、本発明の第4の態様は、有効量の、上に定義されるベータ-シトステロールと有機カルボン酸との共結晶;上に定義されるベータ-シトステロールの水和物結晶形態;或いは、上に定義される組み合わせを、1つ又は複数の適切な許容可能な賦形剤又は担体と共に含む組成物に関する。
【0235】
「有効量」という用語は、その適用後に治療効果を提供する本発明のベータ-シトステロールの結晶、或いはベータ-シトステロールの結晶の組み合わせの量を指す。
【0236】
一実施形態では、本発明の第4の態様の組成物は、薬学的有効量の、上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義されるベータ-シトステロールの水和物結晶形態、又は上に定義されるベータ-シトステロールの結晶の組み合わせを、1つ又は複数の適切な薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と共に含む、医薬組成物である。「医薬組成物」という用語は、上に定義される共結晶、上に定義される水和物結晶形態、又は上に定義される組み合わせと、希釈剤又は担体等の他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、生物への共結晶の投与を容易にする。
【0237】
一実施形態では、本発明の第4の態様の組成物は、有効量の上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義される水和物結晶形態、又は上に定義される組み合わせを、1つ又は複数の適切な食用に許容可能な賦形剤又は担体と共に含む食用組成物である。
【0238】
食用組成物には、栄養補助食品又は機能性食品が含まれる。一実施形態では、食用組成物は栄養補助食品である。本明細書で使用される「栄養補助食品」、「食品サプリメント」又は「栄養サプリメント」という用語は、食事を補足し、不足している又は人の食事で十分な量が摂取されていない可能性があるほか、健康に有益な効果を持つ生物活性化合物でもある、ビタミン、ミネラル、繊維、脂肪酸、又はアミノ酸等の栄養素を提供することを意図した調製物を指す。栄養補助食品を、錠剤、カプセル剤、ソフトゲル、ゲルキャップ、液体、粉末、バー(bar)、飲料、シェイク、その他の食品の形にすることができる。「許容可能な賦形剤又は担体」という用語は、許容可能な材料、組成物又はビヒクルを指し、限定されずに、充填剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤及び崩壊剤が含まれる。各成分は、組成物の他の成分と適合性があるという意味で許容可能でなければならない。また、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、若しくはその他の問題、又は合理的なベネフィット/リスク比に見合った合併症を伴うことなく、人間及び動物の組織又は臓器と接触して使用するのに適していなければならない。
【0239】
一実施形態では、食用組成物は機能性食品である。本明細書で使用される「機能性食品」という用語は、栄養素を供給するという基本的な役割を超えて身体機能を維持するのに役立つ健康食品又は機能性食品を指す。それらは、機能性食品を製造するための食品添加物として使用され得る。したがって、半固体製品、固体製品、液体製品、又は濃縮物や粉末等のそれらの派生物に添加されてもよい。食品添加物が液体製品に添加される場合、得られる製品は機能性飲料として知られている。「機能性飲料」という用語は、基本的な栄養を超えて身体機能を維持するのに役立つ追加の成分で強化された飲料を指す。食品の例は、ミルク、及びヨーグルト又はチーズ等の派生物、ジュース、清涼飲料、スポーツ飲料等、又は蒸留された及び発酵させた飲料等のその他の飲料を含む飲料;サラダドレッシング;イエローファットスプレッド(yellow fat spread);マヨネーズ;チョコレート、キャンディー、ゼリー等の菓子;パスタ;シリアル;ベーカリー(bakery)で構成される一覧から選択される。
【0240】
本発明の組成物は、技術水準においてよく知られている方法に従って調製され得る。適切な賦形剤及び/又は担体、ならびにそれらの量は、調製される製剤の種類に従って、当業者によって容易に決定され得る。
【0241】
上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義されるベータ-シトステロールの水和物結晶形態と並んで、上に定義される組み合わせについての上に開示される実施形態はいずれも、本発明の組成物にも適用される。
【0242】
本発明の第5の態様は、医薬として使用するための、上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義される水和物結晶形態、又は上に定義される組み合わせに関する。さらに、医薬として使用するための上に定義される組成物も本発明の一部である。
【0243】
上述のように、本発明の第6の態様は、脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル、及び/又は組織及び臓器の脂質組成の変化を伴う疾患又は状態の予防及び/又は治療に使用するための上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義される水和物結晶形態、又は上に定義される組み合わせに関する。この態様は、脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル及び/又は組織及び臓器の脂質組成の変化を伴う疾患又は状態の予防及び/又は治療のための医薬又は食物原料又はサプリメントの調製のための上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義される水和物結晶形態、又は上に定義される組み合わせの使用としても製剤化され得る。本発明はまた、脂質代謝、血中脂質の循環レベル、及び/又は組織の脂質組成の変化を伴う疾患又は状態に罹患している、又は罹患しやすい哺乳動物の予防及び/又は治療のための方法に関し、該方法は、有効量の上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義される水和物結晶形態、又は上に定義される組み合わせを、1つ又は複数の許容可能な賦形剤又は担体と共に、上記哺乳動物に投与することを含む。
【0244】
一実施形態では、脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル、及び/又は組織及び臓器の脂質組成の変化を伴う疾患又は状態は、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、シトステロール血症及び混合脂質異常症、心血管疾患、並びに糖尿病からなる群から選択される病理学的、生理学的又は機能的変化である。一実施形態では、脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル、及び/又は組織及び器官の脂質組成の変化を伴う疾患又は状態は、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、シトステロール血症及び混合脂質異常症からなる群から選択される。
【0245】
さらに、脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル、及び/又は組織及び臓器の脂質組成の変化を伴う疾患又は状態の予防及び/又は治療に使用するための上に定義される組成物も本発明の一部である。
【0246】
「高コレステロール血症」という用語は、血液中の過剰なコレステロールを伴う疾患又は状態、すなわち総コレステロールレベルが標準レベルよりも高い場合、特により高いLDLコレステロールに関連する場合に生じる現象を指す。「高トリグリセリド血症」という用語は、血液中の過剰なトリグリセリドを伴う疾患又は状態を指す。「混合脂質異常症」という用語は、血液中の過剰なレベルのコレステロール及びトリグリセリドを伴う疾患又は状態を指す。「シトステロール血症」という用語は、食事性ステロール(植物ステロール及びコレステロールを含む)の腸管吸収の増加及び胆汁排泄の低下を伴う疾患又は状態を指し;この遺伝性代謝障害は高コレステロール血症に関連する。
【0247】
疾患又は状態が高コレステロール血症である実施形態では、予防及び/又は治療は、ベータ-シトステロールと上に定義される有機アルコール;好ましくはベンジルアルコール、エタノール、及びイソプロパノールから選択される;より好ましくはベンジルアルコールとの共結晶;更に好ましくは形態4の共結晶;或いは、上に定義されるベータ-シトステロールの水和物結晶形態を投与することを含む。
【0248】
疾患又は状態が高トリグリセリド血症である実施形態では、予防及び/又は治療は、ベータ-シトステロールと、上に定義される;好ましくは、L-乳酸、プロピオン酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸から選択され;好ましくは、L-乳酸、プロピオン酸、ザイモン酸、コハク酸、没食子酸及びアスコルビン酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶;より好ましくは、共結晶形態1、共結晶形態2、共結晶形態、共結晶形態5、共結晶形態6、共結晶形態7、共結晶形態8、共結晶形態9、共結晶形態10、共結晶形態11及び共結晶形態12;より好ましくは、共結晶形態1、共結晶形態2、共結晶形態3、更により好ましくは共結晶形態2を投与することを含む。
【0249】
疾患又は状態が高トリグリセリド血症である実施形態では、予防及び/又は治療は、ベータ-シトステロールと、上に定義される;好ましくは、L-乳酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸から選択され;好ましくは、L-乳酸、チモン酸、コハク酸、没食子酸及びアスコルビン酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶;より好ましくは、共結晶形態1、共結晶形態、共結晶形態5、共結晶形態6、共結晶形態7、共結晶形態8、共結晶形態9、共結晶形態10、共結晶形態11及び共結晶形態12;より好ましくは、共結晶形態1、共結晶形態3を投与することを含む。
【0250】
疾患又は状態が混合脂質異常症である実施形態では、予防及び/又は治療は、上に定義される組み合わせを投与することを含む。
【0251】
一実施形態では、上に定義される使用のための組み合わせ、治療は、上に定義されるベータ-シトステロールと有機カルボン酸との共結晶;及びベータ-シトステロールと上に定義される有機アルコールとの共結晶、及び上に定義される水和物結晶形態からなる群から選択されるベータ-シトステロールの結晶の同時、別個又は逐次の投与を含む。治療が、各組成物に本発明の結晶の1つを含む2つの別個の組成物の投与を含むことを意味する。
【0252】
共結晶、水和物、及び組み合わせと並んで、上に定義される組成物について上記に開示される全ての実施形態は、使用する共結晶、水和物、組み合わせ、又は組成物にも適用される。
【0253】
上に定義される共結晶、上に定義される水和物、上に定義される組み合わせを含む食品材料も本発明の一部である。一実施形態では、食品材料は、食品サプリメント及び機能性食品から選択される。「栄養補助食品」という用語は、通常の食事を補うことを目的とする栄養学的又は生理学的な効果を有する栄養素又はその他の物質の濃縮原料を指す。言い換えれば、食物サプリメントとは、通常の食事を補うことを目的とし、単独で又は組み合わせて、ビタミン若しくはミネラル、又は栄養学的若しくは生理学的な効果を有するその他の物質の濃縮原料である、任意の食物を意味する。「機能性食品」という用語は、基本的な栄養のニーズを超えて追加の生理学的利益を提供する食品又は食品の原料を指す。
【0254】
また、上に定義される共結晶、上に定義される水和物、上に定義される組み合わせ、及び脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル及び/又は組織及び臓器の脂質組成変化を伴う疾患又は状態の予防及び/又は治療で使用するための指示書を含むパッケージも本発明の一部である。
【0255】
さらに、上に定義される組成物と、脂質代謝、血液中の脂質の循環レベル、及び/又は組織及び器官の脂質組成の変化を伴う疾患又は状態の予防及び/又は治療で使用するための指示書を含むパッケージも本発明の一部でもある。
【0256】
また、本発明の一部であり、胆石、風邪、インフルエンザ、後天性免疫不全症候群(AIDS)、関節リウマチ、結核、乾癬、アレルギー、子宮頸癌、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス(SLE)、喘息、脱毛、気管支炎、片頭痛、良性前立腺過形成(BPH)、閉経、疼痛、慢性疲労症候群、腫脹、及び性機能障害からなる群から選択される疾患若しくは状態の治療における使用のための、上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義される水和物結晶形態、又は上に定義される組み合わせも本発明の一部である。
【0257】
創傷治癒剤として使用するための、上に定義されるベータ-シトステロールの共結晶、上に定義される水和物結晶形態、又は上に定義される組み合わせも本発明の一部である。さらに、創傷治癒剤として使用するための上記定義の組成物も本発明の一部である。「創傷治癒」という表現は、任意の種類の任意の部位の創傷治癒後の皮膚(又は他の臓器)が自己修復する複雑なプロセスに関連している。創傷治癒は、正常及び障害のある創傷治癒であってもよい。後者は、特に糖尿病、血管炎、動脈閉塞性疾患、慢性静脈性潰瘍及び/又は感染性潰瘍と並んで、治癒の不十分な胃潰瘍等の疾患の場合に見られる。また、創傷治癒の障害は、ケアを必要とする人の対麻痺等の神経支配障害、ハンセン病、神経障害、及び褥瘡の場合にも見られる。特に腸の手術、並びに皮膚及び他の臓器の移植の後、それぞれ、弱い縫合及び治癒の障害が発生した場合に、創傷治癒の障害も生じる。創傷治癒の障害は、骨折、火傷、ステロイドを使用した治療の場合にも見られる。
【0258】
本明細書で使用される「創傷」という用語は、例えば、創傷の治癒の遅延又は困難、及び慢性創傷を含む、任意の組織の傷害を含む。創傷の例としては、開放創及び閉鎖創の両方が含まれる。「創傷」という用語は、例えば、種々の方法で(例えば、外傷により誘発される長時間の床上安静及び創傷による褥瘡)及び様々な特徴を伴う皮膚及び皮下組織の損傷も含み得る。創傷は、創傷の深さに応じて4つのグレード:i)上皮に限定されるグレードIの創傷;ii)真皮に広がるグレードIIの傷;iii)皮下組織に広がるグレードIIIの傷;及びiv)グレードIV(又は全層創傷)創傷のいずれかに分類され得る。
【0259】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、「含む」及びその単語の変形は、その他の技術的特徴、付加物、構成要素、又は工程を排除することを意図するものでない。さらに、「含む」という単語は、「からなる」の場合を包含する。本発明の更なる目的、利点、特徴は、本明細書の検討により当業者に明らかとなる、又は本発明の実施によって習得され得る。以下の実施例は、実例として提供され、それらは、本発明の限定を意図するものではない。図面に関連し、特許請求の範囲において括弧内に配置された参照符号は、特許請求の範囲の明瞭度を高めるためだけのものであり、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載される特定及び好ましい実施形態の全ての可能性のある組み合わせを包含する。
【実施例
【0260】
一般的な考慮事項
本発明の結晶の調製に使用されるベータ-シトステロール、ベンジル酸、乳酸、プロピオン酸及びピルビン酸(実験欄1を参照されたい)は、Sigma-Aldrichにより市販されており、化学純度はそれぞれ70%以上、99%、85%以上、99%、及び98%である。本発明において出発物質として使用されるベータ-シトステロールは、Sigma-Aldrich(バッチ番号BCB50067V及びBCBM5699V)により商業的に入手可能であり、化学純度は70%以上である。市販のベータ-シトステロールのPXRDは、ベータ-シトステロールが無水乾燥ベータ-シトステロール(そのPXRDは、Evelyn Moreno-Calvo, et al.“A New Microcrystalline Phytosterol Polymorph Generated Using CO2-Expanded Solvents”.Cryst.Growth.&Design.,2014,vol.14,pp.58-68に開示されている「LOFFET」形態に対応する)及び一水和物ベータ-シトステロール(そのPXRDは、Argay et al.“Crystal structure of stigmast-5-en-3β-ol monohydrate,C2952”.Zeitschrift fuer Kristallographie,1996,vol.211(10),pp.725-727に開示されている「TEXQOC」に対応する)の重量比1:1の混合物であることを示した。さらに、市販のベータ-シトステロールのGC-MS分析は、ベータ-シトステロールがベータ-シトステロール(83%~88%)、スチグマステロール(3%~7%)及びカンペステロール(8%~10%)の混合物であることを示した(実験部分の欄4を参照されたい)。
【0261】
粉末X線回折(PXRD)分析は、厚さ10マイクロメートルのポリエステルフィルムまたは厚さ15マイクロメートルのポリアミド(カプトン)フィルムの間に粉末サンプルを挟み込んで行い、以下:CuKα放射線(λ=1.5418Å);作動力:45kV及び40mA;0.4ミリメートルのビーム高さを規定する入射ビームスリット;入射及び回折ビ-ム0.02ラジアンSollerスリット;PIXcel検出器:有効長=3.347°;2θ/θは、0.026°2θの工程サイズ、及び1工程当たり76秒の測定時間で2°2θ~40°2θをスキャンする実験条件で、集束ミラ-及びフラットなサンプル透過幾何学を備えた収束ビームの構成で、半径240ミリメートルのPANalytical X’Pert PRO MPD q/q粉末回折計で分析した。X線ディフラクトグラムは、本発明のベータ-シトステロールの結晶形のX線粉末回折パターン(強度(カウント)対2θ角(°))を示す。
【0262】
単結晶X線回折(SCXRD)構造は、多層モノクロメ-タ-を備えたD8 Ventureシステムで解明され、Moマイクロフォーカス(λ=0.71073Å)も使用される。フレ-ムを、SAINTアルゴリズムを使用してBruker SAINTソフトウェアパッケージと統合した。マルチスキャン法(SADABS)を使用して、吸収効果のデータを補正した。構造は、結晶構造の自動的な解明のためのコンピュータプログラムであるBruker SHELXTL Software Packageを使用して解明及び改良され、SHELXLコンピュータプログラム用のQtグラフィカルユーザインターフェースであるShelXleバージョン4.8.0を用いるフル-マトリクス最小二乗法によって改良された。
【0263】
示差走査熱量測定(DSC)分析は、Mettler-Toledo DSC-822e熱量計を使用して実施した。実験条件:容量40μLのアルミニウム坩堝、流速50mL/分の乾燥窒素雰囲気、加熱速度10℃/分。熱量計を、純度99.99%のインジウムで較正した。
【0264】
Mettler-Toledo TGA-851e熱天秤で熱重量分析(TGA)を実施した。実験条件:体積70μLのアルミナ坩堝、流速50mL/分の乾燥窒素雰囲気、加熱速度10℃/分。
【0265】
ベータ-シトステロールと本発明の水和物結晶との共結晶のHPLC-MS分析は、それらがベータ-シトステロール(83%~88%)、スチグマステロール(3%~7%)及びカンペステロール(8%~10%)の混合物を含むことを示した(実験部の欄4を参照されたい)。特に、ベータ-シトステロールと、L-乳酸、プロピオン酸、チモン酸、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される有機カルボン酸との共結晶;ベータ-シトステロールと、ベンジルアルコール、エタノール及びイソプロパノールからなる群から選択される有機アルコールとの共結晶;並びに本発明のベータ-シトステロール1分子当たり水がベータ-シトステロール(83%~88%)、スチグマステロール(3%~7%)及びカンペステロール(8%~10%)含む場合、1.25分子を有するベータ-シトステロールの水和物結晶形態。
【0266】
1.ベータ-シトステロールと水素結合供与体コフォーマとの共結晶
1.1.ベータ-シトステロールと有機カルボン酸との共結晶
1.1.1.ベータ-シトステロールとL-乳酸との共結晶
【0267】
調製プロセス
ベータ-シトステロール(20mg、0.048mmol)、L-乳酸(0.1mL)及び酢酸エチル(0.2mL)の懸濁液を室温で5日間撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0268】
1.1.2.ベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶
調製プロセス1
ベータ-シトステロール(500mg、1.21mmol)及びプロピオン酸(2.5mL)の溶液を室温で1日間、空気に開放して撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0269】
調製プロセス2
プロピオン酸(500mL)を含むベータ-シトステロール(50g)を完全に溶解するまで(1時間)懸濁した。室温で水(1000mL)を添加し、穏やかに撹拌すると白色固体が沈殿した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下(約200mm Hg)で2時間乾燥させた。最終的に、濾過された結晶に空気流を8時間通すことにより結晶を乾燥させた。
【0270】
1.1.3.ベータ-シトステロールとチモン酸との共結晶
調製プロセス
ベータ-シトステロール(500mg、1.21mol)、ピルビン酸(2.5mL)及びアセトン(5.0mL)の溶液を室温で1日間撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0271】
1.1.4.ベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶
調製プロセス
ベータ-シトステロール(625mg、1.51mmol)及び没食子酸(97.7mg、0.57mmol)を室温で酢酸エチル(5.0mL)に懸濁し、一晩撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0272】
1.1.5.ベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶
調製プロセス
ベータ-シトステロール(100mg、0.241mmol)及び2,4-ジヒドロキシ安息香酸(41mg、0.266mmol)を室温で酢酸エチル(0.3mL)に懸濁し、一晩撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0273】
1.1.6.ベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸との共結晶
調製プロセス
3,4-ジヒドロキシ安息香酸(4.0g、25.95mmol)を酢酸エチル(15mL)中で2時間撹拌した。懸濁液を濾過し、ベータ-シトステロール(2.0g、4.82mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0274】
1.1.7.ベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶
調製プロセス
ベータ-シトステロール(100mg、0.241mmol)及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸(41mg、0.266mmol)を室温で酢酸エチル(0.3mL)に懸濁し、一晩撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0275】
1.1.8.ベータ-シトステロールと3,5-ジヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶
調製プロセス
ベータ-シトステロール(100mg、0.241mmol)及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸(41mg、0.266mmol)を室温で酢酸エチル(2.0mL)に溶解した。溶液を一晩撹拌し、大気に開放した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0276】
1.1.9.ベータ-シトステロールと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶
調製プロセス
ベータ-シトステロール(100mg、0.241mmol)及び3-ヒドロキシ安息香酸(37mg、0.268mmol)を室温で酢酸エチル(0.4mL)に懸濁し、一晩撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0277】
1.1.10.ベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Aの共結晶
調製プロセス
4-ヒドロキシ安息香酸(4.0g、28.96mmol)を酢酸エチル(15mL)中で2時間撹拌した。懸濁液を濾過し、ベータ-シトステロール(2.5g、6.03mmol)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0278】
1.1.11.ベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸との形態Bの共結晶
調製プロセス
ベータ-シトステロール(100mg、0.241mmol)及び4-ヒドロキシ安息香酸(37mg、0.268mmol)を室温で酢酸エチル(2.0mL)に溶解し、一晩撹拌して大気に開放した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0279】
1.2.ベータ-シトステロールと有機アルコールとの共結晶
1.2.1.ベータ-シトステロールとベンジルアルコ-ルとの共結晶
調製プロセス
ベータ-シトステロール(1g、2.411mmol)のベンジルアルコール(4.0mL)溶液を70℃に加熱し、1時間で室温までゆっくりと冷却した。その後、温度を4℃~8℃に冷却し、ゲルが沈殿するまで1日間保持した。溶液をデカントし、透明な溶液になるまでペンタンを加えた後、溶液を蒸発乾固させた。その後、透明な溶液になるまでジエチルエーテルを加え、蒸発乾固させてゲルを得ると、これは一晩で固体に変化した。そのようにして得られた固体を濾過し、真空下で乾燥させて、ベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶を得た。
【0280】
2.ベータ-シトステロールの水和物結晶形態
調製プロセス
ベータ-シトステロール(500mg、1.21mmol)、プロピオン酸(2.5mL)及びアセトン(5mL)の溶液を室温で1日間撹拌した。そのようにして得られた結晶を濾過し、真空下で乾燥させて、本発明の水和物結晶形態を得た。
【0281】
3.活性試験
活性試験は、脂質の経口摂取後、又は本発明のベータ-シトステロールの結晶若しくは本発明の範囲外である比較の認可されたベータ-シトステロールを補足した脂質の経口摂取後のグルコース、コレステロール、トリグリセリド及びベータ-シトステロールの循環レベルの低下の割合を決定することに焦点を当てる。
【0282】
活動性試験で使用される比較ベータ-シトステロールは、欧州議会および理事会の規則(EC)258/97(文書番号C(2004)1243)-2004/333/ECによる通知(Official Journal L 105,14/04/2004 P.0040-0042を参照されたい)のもと、新規食品又は新規食品成分としてフィトステロール/フィトスタノールを添加した、イエローファットスプレッド、サラダドレッシング、乳タイプ製品、発酵乳タイプ製品、大豆飲料及びチーズタイプ製品の市場での販売を認可する2004年3月31日の委員会決定で認可された化合物に対応する。認可されたベータ-シトステロールは次の組成(ガスクロマトグラフィー-炎イオン化検出器-GC-FIDで測定)を有する:80%未満のベータ-シトステロール、15%未満のベータ-シトスタノール、40%未満のカンペステロール、5%未満のカンペスタノール、30%未満のスチグマステロール、3%未満のブラシカステロール、3%未満のその他のエステロール/スタノール。
【0283】
サンプル
-比較サンプルA(対照ビヒクル):ラードの経口負荷(2.5g/kg BW)
-比較サンプルB(参照):市販のベータ-シトステロール(0.513g/kg BW、ハムスターに換算した推奨ヒト等価用量の2.5倍に相当)を補足したラードの経口負荷(2.5g/kg BW)。
-サンプルC:本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(0.513g/kg BW)を補足したラードの経口負荷(2.5g/kg BW)。
-サンプルD:本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態(0.513g/kg BW)を補足したラードの経口負荷(2.5g/kg BW)。
-サンプルE:本発明のベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶を補充したラードの経口負荷(2.5g/kg BW)(0.513g/kg BW)。
BWは体重を表す。
【0284】
動物及び治療
活動試験で使用した動物は、16週齢の雄性ゴールデンシリアンハムスターであった。1群当たり7匹の動物の5つの実験群を設けた。実験群は次の通りである:
-比較群A:比較サンプルAで治療(対照ビヒクル);
-比較群B:比較サンプルBで治療(参照);
-テスト群C:サンプルCで治療;
-テスト群D:サンプルDで治療;及び
-テスト群E:サンプルEで治療。
【0285】
この試験を、過去24時間に40%のカロリー制限を受けた動物に対して行った。全ての実験群において、ラードに0.513g/kg BWの本発明の比較ベータ-シトステロール又は結晶を補足し、これは、ヒトでの使用に推奨される用量の2.5倍に相当し、ハムスターでの使用に適合されている(Reagan-Shaw,et al,“Dose translation from animal to human studies revisited”.FASEB J.2007,vol.22,pp.659-661を参照されたい)。
【0286】
サンプリング
試験前及び初期(T0)に、ヘパリン毛細血管で伏在静脈から血液を採取した。次に、ラードの経口負荷を受けてから5時間後(T5)、動物は、活性ペントバルビタールナトリウム(ペントバルビタール200mg/mLの致死量、ベトキノール)に基づく致死麻酔の腹腔内注射を受けた。ペントバルビタールナトリウムの致死量(生理食塩水で25mg/mLに事前希釈)の投与の量を、各動物の個々の体重に基づいて計算した。
【0287】
動物が鎮静したことを確認した後、胸郭のレベルで小さな切開を行って失血させた後、心臓穿刺(21G針付き5mLシリンジ)で血液を採取した。血液凝固を防ぐため、針及び注射器の内部を濾過されたEDTA(0.5M、pH=8)に予め浸漬した。血液を4℃にて10分間3500rpmで遠心分離して血漿を得て、使用するまで-20℃で凍結させた。
【0288】
測定
血漿コレステロール値は、Biosystemsが提供する総コレステロールキット(参照:M11505c-0518)を用いて測定された。血漿トリグリセリドレベルは、Sigmaトリグリセリド測定キット(参照:TR0100)で測定された。血中グルコース濃度は、Accu-check Aviva 血糖値測定器(Roche、参照:06453970)の試験条片を使用して測定した。
【0289】
血漿中のフィトステロールの測定は、イオン性炎検出器(HP-5MSカラム(長さ30m、直径0.25mmを使用するGS-FID))及びヘリウム移動相フロー0.8mL・分-1を使用したガスクロマトグラフィー(GC-7890A、Agilent Technologies)と組み合わせた鹸化及び誘導体化後に行われた)。(Garcia-Llatas,G.et al.“Simultaneous quantification of serum phytosterols and cholesterol precursors using a simple gas chromatographic method”.European Journal of Lipid Science and Technology,2012,vol 114(5),pp.520-526;及びAndrade,I.et al.“Advances in analytical methods to study cholesterol metabolism:the determination of serum noncholesterol sterols”.Biomedical Chromatography,2013,vol.27(10),pp.1234-1242を参照されたい)。
【0290】
統計分析
データの結果を、平均±平均誤差(SEM)として提示する。SPSS 1.9ソフトウェア(米国イリノイ州シカゴ)を使用して、統計分析を実施した。群間の比較を、分散分析(一元配置分散分析)に続いてフィッシャーのポスト-ホック分析(LSD、最小有意差)によって行った。異なる群のT0とT5の比較は、反復測定のANOVA検定(ANOVA)を使用して実行され、続いてLSD分析とペア平均のt検定を行った。
【0291】
結果
A.グルコース
分析された時点で、全ての実験群間で循環グルコースレベルに有意差は観察されなかった。
【0292】
B.コレステロール
図14に示すように、初期(T0)の血漿コレステロール値は、全ての実験群間で差はなかった。次に、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(試験サンプルC)の投与は、比較サンプルA及びB(それぞれ、17%及び25%)と同様に、5時間で測定された血漿コレステロールレベルを減少させた(21%)。
【0293】
それにもかかわらず、本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態(試験サンプルD)及びベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶(試験サンプルE)の投与は、血漿コレステロール濃度を(絶対値で)それぞれ29%と31%の割合で有意に低下させた(それぞれp=0.064及びp=0.059対比較サンプル対照A)。
【0294】
C.トリグリセリド
図15に示すように、初期(T0)の血漿トリグリセリドレベルは、全ての実験群間で差はなかった。
【0295】
それにもかかわらず、比較サンプルA及びBの投与は、それぞれ44%及び39%の5時間(T5)でのトリグリセリド血症のわずかな増加をもたらした。比較すると、本発明のベータ-シトステロールの水和物結晶形態(試験サンプルD)及びベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶(試験サンプルE)の投与は、トリグリセリド血症の増加を減弱させ、それぞれトリグリセリド濃度の2%及び7%の減少を引き起こした。
【0296】
さらに、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(試験サンプルC)の投与は、血漿トリグリセリド濃度を20%有意に低下させた(p=0.012 T0対T5及びp=0.06対比較サンプルB)。
【0297】
D.シトステロール血症
図16に示すように、比較サンプルAの投与直後、循環β-シトステロールレベルは変更されなかった。
【0298】
一方、比較サンプルBの投与は、初期値(T0)に対して循環レベルの23%の減少を促進した(p=0.061対比較サンプルA-対照)。同様に、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(試験サンプルC)及びベータ-シトステロールとベンジルアルコールとの共結晶(試験サンプルE)の投与も、ベータ-シトステロールの循環レベルを同様に減少させた(それぞれ14%及び12%対それらのT0値)。
【0299】
それにもかかわらず、β-シトステロールの水和物結晶形態(試験サンプルD)について、β-シトステロールの循環レベルを低下させる有意に顕著な効果が観察された。特に、T0値に関連して34%の減少が観察された(p=0.02対比較サンプルA-対照)。
【0300】
4.出発物質として、及び本発明の共結晶において使用されるベータ-シトステロール中のスチグマステロール及びカンペステロールの量の測定
この試験は、本発明の共結晶及び水和物の調製において出発物質として使用される商業的に入手可能なベータ-シトステロールに存在するスチグマステロール及びカンペステロールの割合を決定することに焦点を当てる。さらに、この試験はまた、本発明の共結晶及び水和物に依然として存在するスチグマステロール及びカンペステロールの割合の決定にも焦点を当てる。
【0301】
4.1.分析方法
4.1.1.ガスクロマトグラフィー-質量分析(GS-MS)
-試験サンプル:1.01mgの試験化合物を1mLのジクロロメタン:メタノール(1:1)に溶解した。試験したサンプルは、本発明のベータ-シトステロールと没食子酸形態5との共結晶であり、sigma-aldrich(バッチBCB50067V)によって商業的に得られるベータ-シトステロールであった。
-試験したサンプル及び標準サンプルの誘導体化:両方の溶液100μLを完全に乾燥させた。次に、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)150μLを加え、得られた溶液を150℃まで1時間加熱した。溶液を室温で冷却し、窒素(N)気流の下で完全に乾燥させた。両方の固体を1mLのヘキサンに懸濁した。最後に、各溶液1μLを注入した。
-機器:Thermo Scientific ITQ 900に接続されたThermo Scientific Trace GC Ultra
-カラム:Teknokroma Sapiens X5-MS 30m×0.25mm d.i.×0.25μm d.f.
-クロマトグラフィー条件:
インジェクター:インジェクタースプリット/スプリットレス
インジェクターモード:スプリットレス
スプリットレス時間:1分
インジェクター温度:300℃
気体:He(1mL/分)
オ-ブン法:初期温度:40℃、等温:1分
工程1:15℃/分の速度で40℃~180℃に加熱する。
工程2:180℃~320℃に6℃/分の速度で加熱、等温:25分
検出器:イオン源温度:200℃。
インターフェース温度:320℃。
溶媒遅延:5分
質量範囲:50uma~900uma。
【0302】
4.1.2.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
-試験サンプル:10mgの試験化合物を10mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。各サンプルを3回準備した。試験したサンプルは次の通りであった:ベータ-シトステロールとプロピオン酸形態2との共結晶、ベータ-シトステロールとチモン酸形態3との共結晶、水1.25分子を有するベータ-シトステロールの水和物結晶、ベータ-シトステロールと没食子酸形態5との共結晶、ベータ-シトステロールと2,4-ジヒドロキシ安息香酸形態6との共結晶、ベータ-シトステロールと3,4-ジヒドロキシ安息香酸形態7との共結晶、ベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸共結晶形態11との形態Aの共結晶、及びベータ-シトステロールと4-ヒドロキシ安息香酸形態12との形態B共結晶。
-標準サンプル:Ph.Euによるベータ-シトステロール。参照標準、参照(Y0001615)、(72.5%C2950O)。
-検量線:およそ1500mg/Lのベータ-シトステロール(10mg/5mL)のTHF原液を調製した。THFで希釈して、0.4mg/L~1100mg/Lの標準液を更に3つ調製した。全ての標準を2回注入した。
-機器:
クロマトグラフ:Waters Alliance2695。
検出器:Waters PDA2996。
バランス:Metller Toledo AT261。
ソフトウェア:Empower,Waters.
-分析条件:
カラム:YMC-Pack Pro C18、5μm、12nm、50mm×4.6mm。
移動相:メタノール/アセトニトリル20:80(体積/体積)
流量:1.0mL/分。
注入:10μL
検出:210nm。
【0303】
4.1.3.高速液体クロマトグラフィー-高分解能質量(HPLC-HRMS)
-試験したサンプルは、本発明のベータ-シトステロールと没食子酸形態5との共結晶であった。
-機器:クロマトグラフ:Accela(Thermo Fisher Scientific)。
検出器:Accela(PDA)+LTQ-Orbitrap Velos(HRMS)。
ソフトウェア:Xcalibur(Thermo Fisher Scientific)。
-分析条件:カラム:YMC-Pack Pro C18、5μm、12nm、50mm×4.6mm。
移動相:メタノール/アセトニトリル20:80(体積/体積)
流量:1.0mL/分。
注入:10μL
検出(UV):210nm。
イオン源(MS):APCI
極性(MS):陽性
【0304】
4.1.4.結果
4.1.4.1.HPLC分析によって得られた結果
6.433分、7.933分、9.267分の標準的なβ-シトステロールPh.Eur.のHPLC分析中に3つの重要なピークが観察された(図41を参照されたい)。それらのピークを、以下の構造を有するHRMS分析に従って、それぞれスチグマステロール、カンペステロール及びベータ-シトステロールに割り当てた:
【化13】
【0305】
各化合物の分子量は次の通りであった:
スチグマステロール(ピーク1)::MS(ES)(+):395.37[C2947
カンペステロール(ピーク2):MS(ES)(+):383.37[C2847
β-シトステロール(ピーク3)MS(ES)(+):397.38[C2949
【0306】
上で定義したように、試験した全てのサンプルで同じピークが観察された。結果を以下の表14に要約する。
【0307】
表14は、テストしたサンプル中のスチグマステロール(ピーク1)、カンペステロール(ピーク2)、及びベータ-シトステロールのHPLC定量を示す。略語RTは、分(分)で表される保持時間(RT)に対応し、面積はパーセンテージ(重量/重量)で表される。
【0308】
表14
【数16】
【0309】
4.1.4.2.GS-MS分析によって得られた結果
ベータ-シトステロールと没食子酸形態5との共結晶のトリメチルシリル誘導体サンプルと、sigma-aldrichの所業的に入手可能なベータ-シトステロール(バッチ番号BCB50067V)の両方のGS-MS中に、3つの重要なピークが観察され、これは、本発明の全て固体形態に存在する3つのフィトステロールの同一性を高精度で確認するものである。
【0310】
観測されたピークは次の通りである:
-ベータ-シトステロール-TMS:分子量488.33;
-カンペステロール-TMS:分子量472.37;及び
-スチグマステロール-TMS:分子量486.36。
【0311】
4.1.4.3.結論
上記の結果は、出発物質として使用されたベータ-シトステロールと並んで、得られた本発明の共結晶及び水和形態のベータ-シトステロールの両方が、スチグマステロールのHPLCで測定された3~7面積/面積、カンペステロールのHPLCで測定された8~10面積/面積、及びHPLCベータ-シトステロールで測定された83~88面積/面積を含むことを示す。
【0312】
5.溶解度試験
この試験は、絶食時模擬腸液(FaSSIF-V2)の溶解性の評価に焦点を当てる。
【0313】
5.1.サンプル
-比較サンプルA(参照):Ph.Eu.参照標準、参照(Y0001615)によるベータ-シトステロールの標準サンプル
-サンプルA:本発明の1.25分子の水を有するベータ-シトステロールの水和物結晶
-サンプルB:本発明のベータ-シトステロールと没食子酸形態5との共結晶
【0314】
5.2.可溶化媒質
溶解度を、Biorelevant.comによって述べられるように、マレイン酸バッファー(pH=6.5)を使用して調製されたFaSSIF-V2培地で測定する。
【0315】
5.3.方法
5.3.1.振盪フラスコ(SF:Shake-flask)手順
全ての実験を25±1℃の温度制御下で行う。mgで表される試験済みサンプルの重量、及びmLで表されるFaSSIFの最終容量は、以下の表に定義される通りである。
【数17】
【0316】
振盪時間:回転撹拌機で24時間。4時間~5時間振盪した後、pHを測定し、必要に応じて初期値(6.5)に再調整する。
-平衡時間:24時間
-最終的なpH測定
-相分離:親水性フィルター(PTFEメンブレン、0.45μm多孔サイズ、直径4mm、Millex-LH、Millipore)による濾過。濾過の前に、フィルターをサンプル溶液で1時間調整した。その後、サンプルの最初の液滴を阻止して濾過を開始した。
-固体形態の特徴:濾過後に得られた固体をXRPDで分析し、振盪フラスコ手順後に得られた正確な固体形態を把握する。共結晶の場合、XRPD分析により、実験が共晶点条件下で行われていることを確認する。
-液相を、API及びコフォーマの定量に使用する。
【0317】
5.3.2.HPLCの定量
-機器:Shimadzu HPLC、ダイオードアレイ検出器(SPD-M10AVPl)、2つのポンプ(LC-10ADVP)、自動注入器(SIL-10ADVP)及びカラムオーブン(CTO-10ASVP)。
【0318】
-カラム:
比較サンプルA及びサンプルAの定量:Phenomenex Kinetex C18、100mm×4.6mm、2.6μm。
サンプルBの定量:Phenomenex Luna C18、150mm×4.6mm、5μm。
【0319】
-条件:
比較サンプルA及びサンプルAの定量:80%メタノール-20%アセトニトリルで構成される移動相。定組成条件。流量:0.8mL/分。注入量:20μL。
【0320】
サンプルBの定量:pH=3の20mMギ酸(A)及びメタノール(B)で構成される移動相。グラジエント条件:0分~3分、5%B;8分、10%B;15分、100%B;17分、5%B;25分、5%B.流量:1mL/分、注入量:10μL
【0321】
定量波長:比較サンプルAの場合210nm、サンプルAの場合280nm
【0322】
5.4.結果
第1部:較正曲線
以下の表は、較正に使用した試験したサンプル及びコフォーマの標準に関する情報、及び較正曲線から取得した平均品質パラメータを示す。
【数18】
【0323】
第2部:検出及び定量の限界
比較サンプルAに対するLOD及びLOQを次の通り決定した:
-LOQ:S/N比が10になる濃度である。LOQを決定するため、所望のS/N比が得られるまで、種々の濃度の比較サンプルAを注入した。LOQ=0.3mg L-1。
-LOD:S/N比が3になる濃度。LODを決定するため、所望のS/N比が得られるまで、種々の濃度の比較サンプルAを注入した。LOD=0.1mg L-1。
【0324】
第3部:溶解度の結果
振盪フラスコ(SF)実験で得られた濾過溶液中の比較サンプルA、サンプルA、及びサンプルBの量を、記載される方法に従って定量した。
【0325】
サンプルA及びBの溶解度は、各サンプルの化学量論を考慮して、「S.J.Bethune,N.Huang,A.Jayasankar,N.Rodriguez-Hornedo,Crystal Growth and Design 9,2009,3976-3988」に記載される共晶点の平衡濃度により計算される。
【0326】
以下の表は、種々の試験サンプルで得られた結果を示し、表中、logSはmol/L単位のSの対数、[API]はSF実験による溶液中のベータ-シトステロールの濃度、nは反復数、PXRD分析は、SF実験後に得られる固体/s 形状/sを示す。
【数19】
【0327】
得られた結果は、本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶が、残りの試験サンプルよりも可溶性であることを指摘している。本発明の1.25分子の水を有する1:1.25形態のベータ-シトステロールの水和物結晶は、商業的に入手可能なベータ-シトステロール(比較サンプルA)よりも溶解性が高い。
【0328】
理論に縛られることなく、溶液中のベータ-シトステロールの量は、溶液と平衡状態にある固体の形態に依存するようである。これは、ベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶において、溶液中のベータ-シトステロールの量が当技術分野で開示されているベータ-シトステロールの一水和物結晶と平衡状態にあることを示すPXRDの結果と一致する。
【0329】
6.バイオアベイラビリティの評価
本発明のベータ-シトステロールの結晶、又は本発明の範囲外であるPh.Eu.参照標準、参照(Y0001615)から入手可能なベータ-シトステロールの比較標準サンプルのいずれかを補足した、3週間の高脂肪食に供された動物(ハムスター)の血漿サンプル中のベータ-シトステロールレベルを測定することにより、本発明のベータ-シトステロールの結晶のバイオアベイラビリティの評価を行った。
【0330】
6.1.試験したサンプル
-比較サンプルA(対照):高脂肪食(脂肪のカロリーの60%、D12492、米国のResearch diets)。
-比較サンプルB1(参照):ベータ-シトステロールの比較標準サンプル(0.264g/kg BW、これはハムスターに換算された、推奨されるヒトの等価用量(35.71mg/Kg又は2.5g/70Kg)に相当する)を補足した高脂肪食(脂肪由来カロリー60%、D12492、米国のResearch diets)。
-比較サンプルB2(参考):商業的に認可されたベータ-シトステロール(0.528g/kg BW、これは、ハムスターに換算した推奨ヒト等価線量の2倍に相当する)を補足した高脂肪食(脂肪由来カロリー60%、D12492、米国のResearch diets)。
-サンプルC:本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(ベータ-シトステロールとプロピオン酸形態2との共結晶)(0.264g/kg BWのベータ-シトステロールに相当)で補足した高脂肪食(脂肪由来カロリー60%、D12492、米国のResearch diets)。
-サンプルG1:本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶(ベータ-シトステロール0.158g/kg BWに相当)で補足した高脂肪食(脂肪由来カロリー60%、D12492、米国のResearch diets)。
-サンプルG2:本発明のベータ-シトステロールと没食子酸の共結晶(ベータ-シトステロールと没食子酸形態5との共結晶)を補足した高脂肪食(脂肪由来カロリー60%、D12492、米国のResearch diets)(サンプルG1のおよそ2倍の0.330gのベータ-シトステロール/kgBWに等しい)。
BWは体重を表す。
【0331】
6.2.動物及び治療
このバイオアベイラビリティの評価試験で使用した動物は、生後8ヶ月の雄性ゴールデンシリアンハムスターであった。1群当たり8匹の動物の6つの実験群を設けた。実験群は次のとおりである:
-比較群A:比較サンプルA(対照)を与えた;
-比較群B1:比較サンプルB1を与えた(参照);
-比較群B2:比較サンプルB2を与えた(参照);
-テスト群C:サンプルCを与えた;
-テスト群G1:サンプルG1を与えた;及び
-テスト群G2:サンプルG2を与えた。
【0332】
この試験は、各サンプルを21日間自由に摂取させて維持した動物に対して実施された。全ての実験群において、ヒトでの使用に推奨される用量の最大2倍(2.5g/日)の範囲の用量で、ハムスターでの使用に適合させて、比較ベータ-シトステロール又は本発明の結晶を食事に補足した(Reagan-Shaw,et al,“Dose translation from animal to human studies revisited”.FASEB J.2007,vol.22,pp.659-661を参照されたい)。
【0333】
6.3.サンプリング
試験サンプルを21日間給餌した後、動物は、自由な給餌条件下で、活性ペントバルビタールナトリウム(200mg/mLのペントバルビタール、ドレタール、ベトキノールの致死量)に基づく致死麻酔の腹腔内注射を受けた。ペントバルビタールナトリウムの致死量(生理食塩水で25mg/mLに事前希釈)の投与の量を、各動物の個々の体重に基づいて計算した。
【0334】
動物が鎮静したことを確認した後、胸郭のレベルで小さな切開を行って失血させた後、心臓穿刺(21G針付き5mLシリンジ)で血液を採取した。血液凝固を防ぐため、針及び注射器の内部を濾過されたEDTA(0.5M、pH=8)に予め浸漬した。血液を4℃にて10分間1000gで遠心分離して血漿を得て、使用するまで-80℃で凍結させた。
【0335】
6.4.測定
血漿中のフィトステロールの測定は、イオン性炎検出器(HP-5MSカラム(長さ30m、直径0.25mmを使用するGS-FID))及びヘリウム移動相フロー0.8mL・分-1を使用したガスクロマトグラフィー(GC-7890A、Agilent Technologies)と組み合わせた鹸化及び誘導体化後に行われた)。(Garcia-Llatas,G.et al.“Simultaneous quantification of serum phytosterols and cholesterol precursors using a simple gas chromatographic method”。European Journal of Lipid Science and Technology,2012,vol 114(5),pp.520-526、及びAndrade,I.et al.“Advances in analytical methods to study cholesterol metabolism:the determination of serum noncholesterol sterols”。Biomedical Chromatography,2013,vol.27(10),pp.1234-1242を参照されたい)。
【0336】
6.5.統計分析
データの結果を、平均±標準誤差(SEM)として提示した。IBM SPSS Statistics 24.0(米国イリノイ州シカゴ)を使用して、統計分析を実施した。群間の比較を、分散分析(一元配置分散分析)に続いてフィッシャーのポスト-ホック分析(LSD、最小有意差)によって行った。スチューデントのt検定を2つの群間の単一比較にも使用した。有意水準をp≦0.05に設定した。
【0337】
6.6.結果
6.6.1.シトステロール血症
シトステロール血症に対する治療の影響に関して、データは1に設定された対照群(比較群A)に対する変動の比率として示される。21日間の市販のベータ-シトステロールの経口投与は、両方の用量において化合物の循環レベルの増加をもたらして用量依存的な応答を示し;参照サンプルB1の投与は、対照(比較群A)に対して2.4倍の倍変化(FC)をもたらし、参照サンプルB2の投与は、対照(比較群A)に対してFCの5.3の増加をもたらした。本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(試験サンプルC)及び本発明のベータ-シトステロールと没食子酸との共結晶(試験サンプルのG1及びG2)の投与はまた、ベータ-シトステロールの循環レベルの増加、比較群Aに対して、それぞれ6.4、4.7及び7.9のFCの増加を促進した。
【0338】
それにもかかわらず、本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸との共結晶(テストサンプルC)のベータ-シトステロールの循環レベルを増加させる有意な効果が、同じ用量の市販のベータ-シトステロール(比較群B1)で治療された参照群と比較して観察された。特に、参照サンプルB1の値に関連して2.7のFC増分が観察された(p=0.0126対比較サンプルB1、スチューデントt検定)。
【0339】
7.粒子サイズ試験
この試験は、Ph.Eu.参照標準、参照(Y0001615)によるベータ-シトステロールの比較標準サンプルと比較した、本発明の共結晶の粒子サイズを提供する。
【0340】
7.1.試験したサンプル
-比較サンプルA:Ph.Eu.参照標準、参照(Y0001615)によるベータ-シトステロールの比較標準サンプル。
-サンプルA:本発明の1.25分子の水を有するベータ-シトステロールの水和物結晶
-サンプルB:本発明のベータ-シトステロールと没食子酸形態5との共結晶
-サンプルC:本発明のベータ-シトステロールとプロピオン酸形態2との共結晶
【0341】
7.2.方法
粒径をレーザ回折によって行った。この目的のために、Beckman-Coulterモデル、LS13320レーザ回折計(米国カリフォルニア州フラートン)にMicro.Liquid Module(MLM)湿式分散モジュ-ル、光学モデル(Fraunhofer.Rdf、PIDS)を装備させた。測定範囲は0.4μm~2000μmである。
【0342】
7.3.結果
以下の表は、試験したサンプルの平均、表面加重平均直径(D(3,2))、標準偏差(S.D)、及びD10、D50及びD90を示す。
【数20】
【0343】
上記の結果は、本発明のベータ-シトステロールの共結晶の粒子サイズがベータ-シトステロールより小さいことを示している。
【0344】
引用文献一覧
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図1
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