(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物、これを利用した喫煙物品および低発火性のタバコ用巻紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
A24D 1/02 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
A24D1/02
(21)【出願番号】P 2021531750
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 KR2021002803
(87)【国際公開番号】W WO2021221290
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052564
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン シン
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0246055(US,A1)
【文献】特表2015-501153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラビアガム(arabic gum)と、
エタノール(ethanol)と、
水と、
フラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide)
またはガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide)と、を含む、
低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物。
【請求項2】
前記アラビアガムは、10重量%~30重量%で含まれ、
前記エタノールは、15重量%~30重量%で含まれ、
前記水は、10重量%~40重量%で含まれる、請求項1に記載の低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物。
【請求項3】
前記フラクトオリゴ糖は、5重量%~35重量%で含まれる、請求項1または2に記載の低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物。
【請求項4】
前記コーティング組成物の粘度は、20cPs以上であり、1000cPs未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物。
【請求項5】
前記ガラクトオリゴ糖は、5重量%~35重量%で含まれる、請求項
1に記載の低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物。
【請求項6】
アラビアガム(arabic gum)、エタノール(ethanol)、水およびフラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide)またはガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide)を含むコーティング組成物を製造する段階と、
タバコ用巻紙の特定領域に前記コーティング組成物を塗布する段階と、
前記コーティング組成物が塗布されたタバコ用巻紙を加熱乾燥してコーティング部を形成することによって、低発火性のタバコ用巻紙を製造する段階と、を含む、低発火性のタバコ用巻紙の製造方法。
【請求項7】
前記フラクトオリゴ糖が、前記コーティング組成物の全体重量に対して5重量%~35重量%で含まれる、請求項
6に記載の低発火性のタバコ用巻紙の製造方法。
【請求項8】
前記アラビアガムは、10重量%~30重量%で含まれ、
前記エタノールは、15重量%~30重量%で含まれ、
前記水は、10重量%~40重量%で含まれる、請求項
7に記載の低発火性のタバコ用巻紙の製造方法。
【請求項9】
前記ガラクトオリゴ糖が、前記コーティング組成物の全体重量に対して5重量%~35重量%で含まれる、請求項
6に記載の低発火性のタバコ用巻紙の製造方法。
【請求項10】
アラビアガム(arabic gum)、エタノール(ethanol)、水およびフラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide)またはガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide)を含むコーティング組成物により形成された一つ以上のコーティング部を含むタバコ用巻紙と、前記タバコ用巻紙で囲まれた喫煙物質とを含む喫煙物質部と、
フィルター部と、を含む、喫煙物品。
【請求項11】
前記コーティング部は、第1コーティング部および第2コーティング部を含み、
前記喫煙物質部は、前記喫煙物質部の両端部のうち前記フィルター部側の端部から一定の距離以内に位置する第1セグメントと、前記第1セグメントよりさらに遠い距離に位置する第2セグメントと、を含み、
前記第1コーティング部は、前記第1セグメントに対応するタバコ用巻紙領域に形成され、前記第2コーティング部は、前記第2セグメントに対応するタバコ用巻紙領域に形成され、
前記第1コーティング部に含まれたコーティング組成物の量は、前記第2コーティング部に含まれたコーティング組成物の量より多い、請求項
10に記載の喫煙物品。
【請求項12】
前記第1コーティング部に塗布されたコーティング組成物の粘度は、前記第2コーティング部に塗布されたコーティング組成物の粘度より高い、請求項
11に記載の喫煙物品。
【請求項13】
前記第2セグメントに対応するタバコ用巻紙領域には、燃焼促進剤が塗布される、請求項
11または
12に記載の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物、これを利用して製造された喫煙物品および低発火性のタバコ用巻紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災の主な原因の一つは、喫煙者の不注意によって捨てられたタバコ吸殻である。特に、火が消えなかったタバコ吸殻が花壇、山の中などのように人影が少ない場所に捨てられる場合、火災の可能性が急増することができる。これにより、タバコ産業分野では、タバコの燃焼性を減少させて自己消火(self-extinguish)機能を付与するタバコ用巻紙(いわゆる「低発火性のタバコ用巻紙」)に対する研究が活発に進行されており、多様な試みが提案されている。
【0003】
例えば、韓国公開特許第2013-0045157号は、アルファデンプンを利用したコーティング組成物をタバコ用巻紙に塗布して酸素の流入を遮断する方式を提案している。しかし、このようなコーティング組成物は、デンプン固有の劣化特性によって本来の特性を維持する期間が2ヶ月未満であり得、コーティング組成物が低温に露出する場合には、急激に劣化して使用可能期間がさらに短くなり得る。また、このようなコーティング組成物は、高温乾燥時に低発火性能が減少することができ、常温乾燥時には、タバコ用巻紙上に塗布されたコーティング組成物の乾燥が難しいことがある。それだけでなく、このようなコーティング組成物は、回転などの動的な状態での粘度変化が大きく、そのため、コーティング作業時に生産性および作業性が低下することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示のいくつかの実施例を通じて解決しようとする技術的課題は、使用可能期間および寿命が延びた低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物、これを含む喫煙物品および低発火性のタバコ用巻紙の製造方法を提供することにある。
【0005】
本開示のいくつかの実施例を通じて解決しようとする他の技術的課題は、低発火性性能がさらに改善されたコーティング組成物を提供することにある。
【0006】
本開示のいくつかの実施例を通じて解決しようとするさらに他の技術的課題は、低発火性のタバコ用巻紙の製造時に生産性および作業性を向上させることができるコーティング組成物を提供することにある。
【0007】
本開示の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていないさらに他の技術的課題は、下記の記載から本開示の技術分野における通常の技術者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するための、本開示のいくつかの実施例によるコーティング組成物は、アラビアガム(arabic gum)、エタノール(ethanol)、水およびフラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide)を含むことができる。
【0009】
いくつかの実施例において、前記アラビアガムは、10重量%~30重量%で含まれ、前記エタノールは、15重量%~30重量%で含まれ、前記水は、10重量%~40重量%で含まれ得る。
【0010】
いくつかの実施例において、前記フラクトオリゴ糖は、5重量%~35重量%で含まれ得る。
【0011】
いくつかの実施例において、前記コーティング組成物の粘度は、20cPs以上であり、1000cPs未満でありうる。
【0012】
前記技術的課題を解決するための、本開示の他のいくつかの実施例によるコーティング組成物は、アラビアガム(arabic gum)、エタノール(ethanol)、水およびガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide)を含むことができる。
【0013】
いくつかの実施例において、前記アラビアガムは、10重量%~30重量%で含まれ、前記エタノールは、15重量%~30重量%で含まれ、前記水は、10重量%~40重量%で含まれ、前記ガラクトオリゴ糖は、5重量%~35重量%で含まれ得る。
【0014】
前記技術的課題を解決するための、本開示のいくつかの実施例による低発火性のタバコ用巻紙は、前記コーティング組成物により形成された一つ以上のコーティング部を含むことができる。
【0015】
前記技術的課題を解決するための、本開示のいくつかの実施例による低発火性のタバコ用巻紙の製造方法は、フラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide)またはガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide)を含むコーティング組成物を製造する段階と、タバコ用巻紙の特定領域に前記コーティング組成物を塗布する段階と、前記コーティング組成物が塗布されたタバコ用巻紙を加熱乾燥してコーティング部を形成することによって、低発火性のタバコ用巻紙を製造する段階と、を含むことができる。
【0016】
前記技術的課題を解決するための、本開示のいくつかの実施例による喫煙物品は、フラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide)またはガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide)を含むコーティング組成物により形成された一つ以上のコーティング部を含むタバコ用巻紙と前記タバコ用巻紙で囲まれた喫煙物質とを含む喫煙物質部と、フィルター部と、を含むことができる。
【0017】
いくつかの実施例において、前記コーティング部は、第1コーティング部および第2コーティング部を含み、前記喫煙物質部は、前記喫煙物質部の両端部のうち前記フィルター部側の端部から一定の距離以内に位置する第1セグメントと、前記第1セグメントよりさらに遠い距離に位置する第2セグメントとを含み、前記第1コーティング部は、前記第1セグメントに対応するタバコ用巻紙領域に形成され、前記第2コーティング部は、前記第2セグメントに対応するタバコ用巻紙領域に形成され得る。この際、前記第1コーティング部に含まれたコーティング組成物の量は、前記第2コーティング部に含まれたコーティング組成物の量より多くてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述した本開示の多様な実施例によれば、低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物の使用可能期間および寿命が延びることができ、常温および低温条件で低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物の粘度維持期間も延びることができる。それだけでなく、低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物の動的粘度維持率が向上することができ、タバコ用巻紙に対するコーティング作業時にコーティング量が一定に維持され得るので、生産性および作業性が向上することができる。
【0019】
また、常温乾燥が可能になることによって、製造費用が節減され、製造時間が短縮され得る。
【0020】
また、フラクトオリゴ糖またはガラクトオリゴ糖がタバコ用巻紙の微細気孔まで遮断することによって、コーティング組成物の低発火性性能が大きく向上することができる。
【0021】
本開示の技術的思想による効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は、下記の記載から通常の技術者に明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示のいくつかの実施例による喫煙物品の斜視図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施例による喫煙物品の断面図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施例による喫煙物品の断面図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施例による低発火性のタバコ用巻紙の製造方法を示す例示的なフローチャートである。
【
図5】本開示のいくつかの実施例による低発火性のタバコ用巻紙の製造方法を示す例示的なフローチャートである。
【
図6】実験例3による粘着強度の測定結果を示す図である。
【
図7】実験例3による粘着強度の測定結果を示す図である。
【
図8】実験例7による官能評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して本開示の好ましい実施例を詳細に説明する。本開示の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述している実施例を参照すると明確になるだろう。しかしながら、本開示の技術的思想は、以下の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現され得、単に本実施例は、本開示の技術的しそうを完全にし、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本開示は、請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0024】
各図面の構成要素に参照符号を付加するに際して、同じ構成要素に対しては、たとえ他の図面上に表示されても、できるだけ同じ符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本開示を説明するに際して、関連した公知構成または機能に対する具体的な説明が本開示の要旨を不明にすることができると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0025】
他の定義がないと、本明細書において使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解され得る意味で使用され得る。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。本明細書で使用された用語は、実施例を説明するためのものであって、本開示を制限しようとするものではない。本明細書で、単数型は、文言において特に言及しない限り、複数型も含む。
【0026】
また、本開示の構成要素を説明するに際して、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や手順または順序などが限定されない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載された場合、その構成要素は、当該他の構成要素に直接的に連結されるか、または接続され得るが、各構成要素の間にさらに他の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」され得ると理解されなければならない。
【0027】
本開示で使用される「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子は、1つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0028】
まず、本明細書で使用されるいくつかの用語について明確にすることとする。
【0029】
本明細書で、「喫煙物品」(smoking article)とは、タバコ、タバコ派生物、膨化タバコ(expanded tobacco)、再生タバコ(reconstituted tobacco)またはタバコ代用物に基づくかに関係なく、喫煙可能な任意の製品または喫煙体験を提供できる任意の製品を意味し得る。例えば、喫煙物品は、巻きタバコ、葉巻きたばこ(cigar)および細い葉巻きたばこ(cigarillo)などのような喫煙可能製品を含むことができる。
【0030】
本明細書で、「喫煙物質」(smoking material)とは、喫煙に使用され得るすべての種類の物質を意味し得る。例えば、喫煙物質は、タバコ物質を含むことができる。
【0031】
本明細書で、「上流」(upstream)または「上流方向」は、喫煙者の口部から遠ざかる方向を意味し、「下流」(downstream)または「下流方向」は、喫煙者の口部から近づく方向を意味し得る。上流および下流という用語は、喫煙物品構成要素の相対的位置を説明するために利用され得る。例えば、
図1に示された喫煙物品1において、喫煙物質部10は、フィルター部20の上流に位置し、フィルター部20は、喫煙物質部10の下流に位置する。
【0032】
本明細書で、「長さ方向」(longitudinal direction)は、喫煙物品の長さ方向の軸に相当する方向を意味し得る。
【0033】
以下では、本開示の多様な実施例について添付の図面により詳細に説明する。
【0034】
図1は、本開示のいくつかの実施例による喫煙物品1の斜視図であり、
図2および
図3は、喫煙物品1の断面図である。以下、
図1~
図3を参照して説明する。
【0035】
喫煙物品1は、火により燃焼する喫煙物質部10と、煙および/またはエアロゾル(aerosol)をフィルタリングするフィルター部20とを含むことができる。ただし、
図1~
図3には、本開示の実施例と関連した構成要素のみが示されている。したがって、本開示の属する技術分野における通常の技術者なら、
図1~
図3に示された構成要素の他に他の汎用的な構成要素がさらに含まれ得ることが分かる。
【0036】
喫煙物質部10とフィルター部20は、チップペーパー(tip paper)29により連結され得る。喫煙物品1の周りは、約5mm~約30mmでありうるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施例において、フィルター部20は、省略されることもできる。
【0037】
喫煙物質部10は、喫煙物質11と、これを囲んでいるタバコ用巻紙19とを含むことができる。喫煙物質11は、煙および/またはエアロゾルを発生させたり、喫煙に利用される多様な種類の物質を含むことができる。喫煙者は、喫煙物品1を用いて煙および/またはエアロゾルを発生させ、発生した煙および/またはエアロゾルは、フィルター部20を通過して喫煙者の口部を通じて吸入され得る。
【0038】
喫煙物質11は、例えばタバコ物質を含むことができる。タバコ物質は、例えばタバコ葉切れ、タバコ幹またはこれらから加工された物質などを含むことができる。より具体的な例で、タバコ物質は、粉砕されたタバコの葉、粉砕された再構成タバコ、膨化刻み、膨化主脈および板状葉などを含むことができる。
【0039】
いくつかの実施例において、喫煙物質11は、湿潤剤、香味剤および/または有機酸(organic acid)のような添加物質をさらに含むことができる。例えば、湿潤剤は、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびオレイルアルコールのうち少なくとも一つを含むことができる。湿潤剤は、タバコ物質内の水分を適正水準に維持して固有の味をやわらかくし、霧化量を豊富にすることができる。また、香味剤は、例えば、甘草、ショ糖、果糖シロップ、イソ甘味剤(isosweet)、ココア、ラベンダー、シナモン、カルダモム、セロリ、コロハ、カスカリラ、ビャクダン、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、バラオイル、バニラ、レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、ケイヒ、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、カモミール、メントール、ケイヒ、イランイラン、サルビア、スペアミント、ショウガ、コエンドロ、クローブ抽出物(またはクローブ物質)またはコーヒーなどを含むことができる。
【0040】
次に、フィルター部20は、フィルター部材(filter member)21と、これを囲んでいるフィルター巻紙28とを含むことができる。フィルター部20は、一つ以上のフィルター部材を含むことができる。例えば、
図2に示されたように、フィルター部20は、一つのフィルター部材21を含むことができる。フィルター部材21は、アセテートトウ、紙などで形成され得る。他の例として、
図3に示されたように、フィルター部20は、2つ以上のフィルター部材22、23を含む多重フィルターで具現され得る。その他にも、フィルター部20は、3個以上のフィルター部材を含むこともできる。
【0041】
フィルター部20は、吸着剤、香味剤などを含むことができる。例えば、吸着剤は、活性炭などであり得、香味剤は、ハーブ香物質などでありうる。しかし、これに限定されるものではない。多重フィルターにおいて1個以上のフィルター部材は、吸着剤と香味剤のうち少なくとも一つを含むことができる。例えば、
図3を参照すると、第1フィルター部材22および第2フィルター部材23のうち少なくとも一つは、吸着剤と香味剤のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0042】
いくつかの実施例において、フィルター部20は、第1フィルター部材22および第2フィルター部材23の間に形成されるキャビティ(cavity)を含むこともできる。このような場合、香味剤を含むカプセルがキャビティに配置されることもできる。また、いくつかの実施例において、前記香味剤は、固形化された顆粒の形態で製造された多孔性の香味顆粒でありうる。多孔性の香味顆粒は、香味物質の揮発性を抑制することによって、香り保存性を向上させることができる。
【0043】
次に、タバコ用巻紙19は、1個以上のコーティング部(coating portion)18-1、18-2を含むことができる。コーティング部18-1、18-2には、所定のコーティング組成物が塗布されて、タバコ用巻紙19の気孔度を低減することができる。これにより、喫煙物品1の燃焼がコーティング部18-1、18-2に到達すると、喫煙物質部10に流入する酸素量が減少して喫煙物品1が自己消火され得る。以下では、説明の便宜上、任意のコーティング部18-1または18-2を称したり、コーティング部18-1、18-2全体を総称する場合には、参照番号「18」を使用することとする。
【0044】
図1に示されたように、コーティング部18は、バンド形態を有することができるが、本開示の範囲がこれに限定されるものではなく、コーティング部18の形態は、実施例によって変わることができる。それだけでなく、コーティング部18の個数、厚さ、そして形態も多様に変形され得、複数個のコーティング部18の間隔も多様に変形され得る。
【0045】
例えば、コーティング組成物を気孔度が約10cu~約100cuのタバコ用巻紙19に塗布して、喫煙物品1当たり2個のコーティング部18-1、18-2を喫煙物質部10の終端から15mm、フィルター部20から5mmの間に配置することができ、コーティング部18-1、18-2間の間隔は、約5mm~約10mmの幅に設定され得る。
【0046】
また、例えば、タバコ用巻紙19の気孔度は、約10cu~約100cuであり得、コーティング部18の気孔度は、約3cu~約20cuでありうる。タバコ用巻紙19の基材紙(base paper)の厚さは、約30μm~約100μmであり得、基材紙の坪量は、約15g/m2~約80g/m2でありうる。コーティング部18の厚さは、約5μm以下であり得、コーティング部18の坪量は、約15g/m2以下でありうる。タバコ用巻紙19およびコーティング組成物の全体重量に対するコーティング組成物の重量比は、約40重量%以下でありうる。
【0047】
また、例えば、コーティング部18がバンド形態を有する場合、バンド1個当たりコーティング組成物の質量は、約2.5mg以下でありうる。
【0048】
また、例えば、
図1~
図3に示されたように、タバコ用巻紙19には、2つ以上のコーティング部18-1、18-2が形成され得る。より具体的な例として、第1コーティング部18-1は、喫煙物質部10の第1セグメント(segment)に対応するタバコ用巻紙領域に形成され、第2コーティング部18-2は、喫煙物質部10の第2セグメントに対応するタバコ用巻紙領域に形成され得る。この際、第1セグメントは、喫煙物質部10の両端部のうちフィルター部20の側端部(すなわち、下流方向の端部)から一定の距離以内に位置するセグメントであり、喫煙の終了時に到達するセグメントでありうる。そして、第2セグメントは、前記第1セグメントよりさらに遠い距離に位置するセグメントであって、喫煙物質が燃焼する喫煙セグメントでありうる。このような場合、第2コーティング部18-2は、喫煙物質部10の一部だけが燃焼した状態で喫煙物品1が捨てられた場合に、火災の可能性を低減する役割を担当し、第1コーティング部18-1は、喫煙が終了した後、自己消火機能を保障する役割を担当することができる。ただし、場合によって、第2コーティング部18-2は、喫煙途中にタバコ用巻紙19の気孔を遮断することによって、燃焼性とタバコの味を落とすことができる。
【0049】
上記のような問題を解決するために、本開示のいくつかの実施例によれば、第1コーティング部18-1と第2コーティング部18-2の坪量、厚さ、サイズ、個数、コーティング組成物の量およびコーティング組成物の粘度のうち少なくとも一つが互いに異なるように設計され得る。例えば、第2コーティング部18-2の坪量がさらに低かったり、厚さがさらに薄かったり、サイズがさらに小さくてもよい。より具体的な例として、第1コーティング部18-1の坪量は、約2.6g/m2~約5.5g/m2であり得、第2コーティング部18-2の坪量は、約0.5g/m2~約2.5g/m2でありうる。ここで、コーティング部18の坪量は、コーティング組成物の塗布により形成されたコーティング層だけの坪量であって、コーティング層および基材紙の坪量とコーティング層が除外された基材紙の坪量の差異に該当する値を意味し得る。他の例として、第2コーティング部18-2の個数(e.g.バンドの個数)が少なかったり、または第2コーティング部18-2に含まれたコーティング組成物の量がさらに少なくてもよい。さらに他の例として、第2コーティング部18-2に含まれたコーティング組成物の粘度がさらに低くてもよい。コーティング組成物の粘度が低いほど気孔を遮断する効果が弱くなり得るためである。
【0050】
または、第2コーティング部18-2が形成されたタバコ用巻紙領域または前記第2セグメントに対応するタバコ用巻紙領域に燃焼促進剤が塗布され得る。かくして、第2コーティング部18-2の付近でも燃焼性が劣化しないようにすることができる。燃焼促進剤の例は、アルカリ金属塩、アルカリライン土類金属塩、およびこれらの混合物を含むことができるが、さらに具体的な例として、カルボン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、スクシン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、およびその混合物とクエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸ナトリウム、またはその混合物を含むことができる。しかし、これに限定されるものではない。
【0051】
上述した実施例によれば、第2コーティング部18-2の低発火性能を落とすことによって、喫煙時に燃焼性とタバコ味が保障され得る。それだけでなく、第1コーティング部18-1の低発火性能を強化させることによって、喫煙の終了時点に自己消火が起こることが保障され得る。
【0052】
また、いくつかの実施例では、音発生物質がフィルター部20に近い位置に添加され得る。例えば、音発生物質は、フィルター部20に隣接する喫煙物質部10の内部、タバコ用巻紙19、 第1コーティング部18-1に添加され得る。音発生物質は、燃焼時に音が発生する物質を意味し得、例えばクローブ(clove)物質と多糖類物質を含むことができる。また、多糖類物質は、例えばデンプン(starch)を含むことができる。多糖類物質が音発生物質に該当するという点は、長期間の研究を通じて本発明者が明らかにしたものである。より具体的に、本発明者は、密度または結晶のサイズが一定のサイズ以上の多糖類物質が燃焼するとき、結晶構造がこわれて音が発生するという点を明らかにしたが、デンプンのような多糖類物質は、安全性が立証された物質であるから、喫煙物品に制限なしに適用され得るという長所がある。多糖類物質は、粒子(particle)、シート(sheet)、3次元物体などの形態で加工されて喫煙物質部10に添加され得るが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。本実施例によれば、喫煙の終了時点に音が発生することによって、喫煙者に喫煙の終了時点を知らせる効果が達成され得る。また、喫煙物品1がなにげなく捨てられた場合にも、周辺の使用者の注目を引き出すことによって、火災の可能性を低下させる効果が達成され得る。
【0053】
以上では、
図1~
図3を参照して本開示のいくつかの実施例による喫煙物品1について説明した。以下では、喫煙物品1に利用されるコーティング組成物とこれを通じて低発火性のタバコ用巻紙19を製造する方法について説明することとする。
【0054】
いくつかの実施例によるコーティング組成物は、アラビアガム(arabic gum)、エタノール(ethanol)、水およびフラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide)を含むことができる。
【0055】
他のいくつかの実施例によるコーティング組成物は、アラビアガム、エタノール、水およびガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide)を含むことができる。
【0056】
さらに他のいくつかの実施例によるコーティング組成物は、アラビアガム、エタノール、水、フラクトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖を含むことができる。以下、コーティング組成物を構成する各成分について説明することとする。
【0057】
アラビアガムは、アラビアゴム木の樹液を乾燥、脱塩して製造され得る。アラビアガムは、タバコ用巻紙19に含まれている気孔を塞いで酸素供給を遮断することによって、コーティング組成物の低発火性能を具現することができる。
【0058】
アラビアガムは、高濃度でも相対的に低い粘度(粘性)を有することができ、これによって、低粘性状態での濃度調節が容易になり得る。したがって、低粘度および高濃度特性を有するコーティング組成物が製造され得、コーティング組成物のコーティング濃度の調節を通じて燃焼強度を容易に制御することができる。
【0059】
アラビアガムは、水に対して大きい溶解度を有することができて、コーティング組成物の分散安定性を向上させることができ、これによって、均一な組成および濃度を有するコーティング部18が形成され得る。また、アラビアガムを含むコーティング組成物は、従来のコーティング組成物に比べて高温での乾燥速度が高くて、コーティング(塗布)工程の作業性を向上させることができる。
【0060】
アラビアガムは、劣化現象を減少させることができ、これによって、従来のアルファデンプンを含むコーティング組成物に比べてコーティング組成物の使用可能期間、保管期間、粘度維持期間、または寿命が延びることができる。また、コーティングローラーが動作する動的な状況での動的粘度維持率が向上することができ、約2℃程度の低温環境で発生しうる粘度変化が大きく減少することができる。
【0061】
また、アラビアガムは、耐熱性に優れていて、高温条件でも性能が維持され得、乾燥工程での燃焼時に異臭の発生が低減され得る。
【0062】
いくつかの実施例において、アラビアガムは、コーティング組成物の全体に対して、約10重量%~約30重量%で含まれ得る。このような範囲内でコーティング組成物の分散安定性が向上し、乾燥速度が上昇して、コーティング工程の作業性がさらに向上することができ、底粘度維持期間が大きく延びることができ、粘度維持率が顕著に向上することができ、劣化現象が減少して寿命が延びることができる。
【0063】
次に、フラクトオリゴ糖は、タバコ用巻紙19に含まれている気孔を塞いで酸素供給を遮断することによって、アラビアガムと同様に、コーティング組成物の低発火性能を向上させることができる。フラクトオリゴ糖の平均サイズは、アラビアガムに比べて小さいので、フラクトオリゴ糖は、相対的に直径またはサイズが小さい微細気孔を遮断することによって、コーティング組成物の低発火性能を向上させることができる。それだけでなく、フラクトオリゴ糖は、分子量が小さくて、コーティング組成物の分散性を向上させる効果があり、これによって、コーティング組成物が均一にタバコ用巻紙19に塗布され得るので、コーティング工程の作業性が向上し、製造時間が短縮され得る。
【0064】
また、フラクトオリゴ糖は、アラビアガムの劣化速度を効果的に下げることができ、コーティング組成物の劣化速度を顕著に遅延させることができる。したがって、従来のアルファデンプンを含むコーティング組成物に比べて粘度維持期間を延長させることができ、粘度維持率を向上させることができ、約2℃程度の低温に露出した場合にも、粘度変化を最小化させることができる。
【0065】
また、フラクトオリゴ糖は、エタノールに溶解することができ、エタノールと共に使用される場合、コーティング組成物の粘度を低減することができ、コーティング組成物の構成成分間の結合力を高めることができる。
【0066】
また、フラクトオリゴ糖を含むコーティング組成物は、従来のコーティング組成物に比べて高温での乾燥速度が高い。したがって、実施例によるコーティング組成物は、コーティング工程の作業性を向上させることができる。
【0067】
いくつかの実施例において、フラクトオリゴ糖は、コーティング組成物の全体に対して約5重量%~約35重量%で含まれ得る。このような範囲内で、底粘度維持期間が大きく延びることができ、粘度維持率が顕著に向上することができ、劣化現象が大きく減少して、寿命が延びることができ、コーティング工程の作業性が向上することができる。
【0068】
ガラクトオリゴ糖も、フラクトオリゴ糖と類似した重量%で含まれ得、フラクトオリゴ糖と類似した効果を創り出すことができる。重複説明を排除するために、ガラクトオリゴ糖に関する説明は省略することとする。
【0069】
次に、エタノールは、コーティング組成物の固形分の含量を高めることができ、エタノールの含量を調節してコーティング組成物の粘度を調節することができる。
【0070】
また、エタノールは、コーティング組成物の表面張力を低減することによって、コーティング作業でコーティングローラーとコーティング組成物の親和力を高めることができ、これを通じて、コーティング量が増加することができ、コーティング量が一定に維持され得るので、コーティング作業性が向上することができ、低発火性能が向上することができる。
【0071】
また、エタノールは、コーティング組成物の乾燥性を向上させることができ、高温での乾燥速度を高めることができ、これによって、コーティング工程の作業性を向上させることができ、タバコ用巻紙に水が吸収されて強度が低下する現象が防止され得る。
【0072】
いくつかの実施例において、エタノールは、コーティング組成物の全体に対して約15重量%~約30重量%で含まれ得、このような範囲内でコーティング組成物の粘度が適切に維持され得、コーティング工程の作業性がさらに向上して、喫煙物品の生産性が増大することができ、喫煙物品の低発火性能がさらに向上することができる。
【0073】
次に、水は、コーティング組成物において他の構成成分の濃度またはコーティング組成物の濃度を調節するために使用され得る。また、水は、タバコ用巻紙19のコーティング組成物に対する吸収性を向上させることができる。
【0074】
いくつかの実施例において、水は、コーティング組成物の全体に対して約10重量%~約40重量%使用され得る。このような範囲内でコーティング組成物の濃度および粘度調節がより容易になり得る。
【0075】
コーティング組成物により発生する多様な効果は、コーティング組成物の各成分が単独で存在するときに比べて、すべての構成成分が混合されているとき、さらに顕著に現れることができる。前述した多様な効果は、各構成成分の結合により発生することができ、各構成成分の結合によりシナジー効果が発生することができる。
【0076】
いくつかの実施例による低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物は、約10重量%~約30重量%のアラビアガム、約5重量%~約35重量%のフラクトオリゴ糖(またはガラクトオリゴ糖)、約15重量%~約30重量%のエタノール、そして約10重量%~約40重量%の水を含むことができる。このような範囲内で、コーティング組成物の使用可能期間および寿命がさらに延びることができ、常温(約25℃)および低温(約2℃)条件でコーティング組成物の粘度維持期間が大きく延びることができる。また、回転軸により所定の回転速度で回転する場合のコーティング組成物の粘度維持率を示す動的粘度維持率がさらに向上することができる。また、前述した範囲内で、タバコ用巻紙に対するコーティング作業時に低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物の塗布量が増大することができ、コーティング組成物が均一に塗布され得、乾燥性が向上してコーティング作業性が向上することができる。
【0077】
いくつかの実施例において、コーティング組成物は、クエン酸(citric acid)、酒石酸(tartaric acid)、乳酸(lactic acid)、リンゴ酸(malic acid)およびアスコルビン酸(ascorbic acid)のうち一つ以上をさらに含むことができる。このような物質は、コーティング組成物の腐敗および変質を減少させて、コーティング組成物の使用可能寿命または保存期間を延長させることができる。
【0078】
いくつかの実施例において、コーティング組成物は、安息香酸ナトリウム(sodium benzoate)、ソルビン酸ナトリウム(sodium sorbate)、グレープフルーツ種子抽出物(grapefruit seed extract)およびケイヒ抽出物(cinnamon extract)のうち一つ以上をさらに含むことができる。このような物質は、コーティング組成物の腐敗および変質を減少させて、コーティング組成物の使用可能寿命または保存期間を延長させることができる。また、前述したクエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸またはアスコルビン酸などの物質と共に使用される場合、コーティング組成物の寿命をさらに向上させることができる。
【0079】
いくつかの実施例において、コーティング組成物は、キサンタンガム(xanthan gum)、グアガム(guar gum)、アミロペクチン(amylopectin)およびエステルデンプン(starch ester)のうち一つ以上をさらに含むことができる。キサンタンガム、グアガム、アミロペクチン、エステルデンプンなどは、補助的にコーティング組成物の粘度を低下させ、構成成分の分散性を向上させて、コーティング組成物の使用可能期間を延長させることができる。
【0080】
コーティング組成物は、タバコ用巻紙19の内部の空隙を満たすので、コーティング組成物の粘度があまり低いと、タバコ用巻紙19の光学的特性および低発火特性が低下することができる。したがって、コーティング組成物の粘度が適切に調節される必要があり、実施例による低発火性のタバコ用巻紙のコーティング組成物の粘度は、約20cPs以上であり、約1000cPs未満であることが好ましい。コーティング組成物の粘度が約20cPs未満の場合、タバコ用巻紙19の白色度および不透明度が減少することができ、コーティング組成物のタバコ用巻紙内の浸透速度が増加(拡散係数が増加)することによって、タバコ用巻紙の表面に残っているアラビアガムおよびフラクトオリゴ糖の量が減少することができ、これにより、空隙遮断能力または低発火性能が減少することができるためである。そして、コーティング組成物の粘度が約20cPs未満の場合には、コーティング組成物の動的粘度維持率が大きく減少することができるためである。
【0081】
ここで、動的粘度維持率と関連して、コーティング組成物は、コーティングローラー(roller)などの回転装置によりタバコ用巻紙19にコーティングされ得る。回転速度が上昇する場合などの動的条件で粘度が変化する場合には、コーティング部18が不均一な濃度で形成されて低発火性能が低下し、工程作業性が低下する問題点が発生することができる。したがって、動的な状態でのコーティング組成物の粘度変化が最小化される場合にのみ、コーティングが安定的に進行され得る。
【0082】
コーティング組成物の粘度があまり高い場合にも、動的粘度維持率が低下することができる。例えば、コーティング組成物の粘度が約1000cPs以上の場合には、コーティング組成物の動的粘度維持率が大きく減少することができ、これによって、不均一な形態および濃度のコーティング部18が形成され得、コーティング工程の作業性が低下することができる。
【0083】
コーティング組成物の粘度が約20cPs以上、約1000cPs未満に調節された場合において、コーティング組成物の回転速度が約20rpmから100rpmに増加する場合の動的粘度維持率は約84%以上であり得、コーティング組成物の回転速度が約20rpmから100rpmに増加する場合の拡散係数は、約0.15以下でありうる。このような範囲内で、コーティング組成物のコーティング工程が安定的に進行され得、タバコ用巻紙19に転移するコーティング量が多くなり得、コーティング量が一定に維持され得る。
【0084】
一方、タバコ用巻紙は、水と接触時に強度が低下する特性を有する。したがって、従来のコーティング組成物をタバコ用巻紙にコーティングした後には、水分を除去するために乾燥設備が使用されている。この際、乾燥工程は、主に約200℃以上の高温条件で行われ得るが、これによって、喫煙物品製造費用および時間が増加することができ、低発火性能が減少するなどコーティング組成物が変質する恐れがある。また、従来のコーティング組成物は、常温条件(約25℃)では、乾燥が行われないことがある。
【0085】
その一方で、実施例によるコーティング組成物の場合、乾燥性に優れていて、高温条件での乾燥速度が従来のコーティング組成物の乾燥速度に比べて相対的に非常に速いことがある。また、従来のコーティング組成物とは異なって、実施例によるコーティング組成物の場合には、常温条件でも乾燥され得る。したがって、別途の乾燥設備が必要でないこともあり、これによって、喫煙物品の製造費用および時間が節約され得、コーティング組成物の性質が一定に維持され得る。
【0086】
以下では、
図4および
図5を参照して本開示のいくつかの実施例による低発火性のタバコ用巻紙の製造方法について説明することとする。
【0087】
図4は、前記製造方法を示す例示的なフローチャートである。
【0088】
図4に示されたように、実施例による製造方法は、コーティング組成物を製造する段階S100から始まることができる。コーティング組成物製造段階S100の細部過程は、
図5に示されている。
【0089】
図5に示されたように、コーティング組成物の製造段階S100は、称量段階S110と、配合段階S120~S150を含むことができる。
【0090】
称量段階S110で、コーティング組成物を構成する各構成成分の重量が測定され得る。ここで、アラビアガム、フラクトオリゴ糖およびエタノールの重量が水の重量に比べて大きいほど、コーティング組成物の粘度が増加することができる。また、低発火性コーティング組成物が使用されるとき、低発火性能を発揮すると同時に、乾燥性などの生産性を向上させるためには、コーティング組成物の構成成分であるアラビアガム、フラクトオリゴ糖、エタノール、水などの重量比が非常に重要である。
【0091】
配合段階S120~S150で、既定の組成比によって各構成成分が配合され得る。以下、配合段階S120~S150は、1次分散段階S120、S130と2次分散段階S140、S150を含むことができるが、以下、各分散段階の細部過程について詳しく説明することとする。
【0092】
1次分散段階S120、S130は、フラクトオリゴ糖分散段階S120と、アリビッコム分散段階S130を含むことができる。
【0093】
段階S120で、フラクトオリゴ糖が水に分散することができる。すなわち、水が分散媒として利用され得る。この際、水の温度は、約25℃~約35℃に維持され得、このような範囲内でフラクトオリゴ糖がよく分散することができる。しかし、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。
【0094】
より具体的に、分散媒である水を回転させながらフラクトオリゴ糖を投入することができる。ここで、単位分散量は、約10g/L/min~約20g/L/minであり得、分散媒の回転速度は、約17000rpm~約20000rpmでありうる。このような範囲内でフラクトオリゴ糖が分散媒に均一に分散することができる。
【0095】
段階S130で、段階S120を経た組成物(分散媒)を回転させてアラビアガムを投入することができる。この際、単位分散量は、10g/L/min~約20g/L/minであり得、組成物の回転速度は、約17000rpm~約20000rpmでありうる。このような範囲内でアラビアガムが組成物に均一に分散することができる。
【0096】
次に、2次分散段階S140、S150は、エタノール分散段階S140と、均質化段階S150を含むことができる。
【0097】
段階S140で、エタノールが1次分散段階S120、S130を経た分散媒に分散することができる。この際、エタノールの温度は、約25℃~約35℃に維持され得、このような範囲内でエタノールが分散媒によく分散することができる。しかし、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。
【0098】
段階S150で、コーティング組成物が均質化され得る。本段階は、1次均質化段階と、2次均質化段階を含むことができる。
【0099】
1次均質化段階は、組成物の全部分で粘度が均一化され得るように、二重十字型インペラなどの装備を活用して約250rpm~約350rpmの速度で組成物を回転させる段階である。このような範囲内で、アラビアガムおよびフラクトオリゴ糖が分散媒に均一に分散することができ、粘度が均一に形成され得る。この際、回転によって組成物の温度が上昇することができる。
【0100】
2次均質化段階は、1次均質化段階を経た組成物の温度を約40℃以下に下降させ、ホモミキサー(homomixer)などの装備を活用して約150rpm~約250rpmの速度で組成物を回転させる段階である。このような範囲内で、アラビアガムおよびフラクトオリゴ糖が分散媒に均一に分散することができ、粘度が均一に形成され得る。
【0101】
【0102】
次に、タバコ用巻紙の特定領域にコーティング組成物を塗布する段階S200が行われ得る。例えば、ロール形態で巻かれているタバコ用巻紙がローラーを通じてコーティング装置に供給され、コーティング組成物も、やはりローラーを通じてタバコ用巻紙にコーティングされ得る。
【0103】
次に、コーティング組成物がコーティングされたタバコ用巻紙を加熱乾燥してコーティング部18を形成する段階S300が行われ得る。例えば、コーティング組成物が塗布されたタバコ用巻紙を加熱乾燥してバンド形態のコーティング部18が形成され得る。加熱は、別途の加熱装置を用いて進行され得る。
【0104】
前述したように、コーティング部18の個数、厚さ、そして形態は、多様に変形され得、複数個のコーティング部18の間隔も、多様に変形され得る。
【0105】
以下では、実施例および比較例を通じて本開示で言及されたコーティング組成物の構成および効果についてより詳細に説明することとする。ただし、下の実施例は、本開示の一部例示に過ぎないものであるから、本開示の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0106】
実施例1~4
アラビアガム、フラクトオリゴ糖(またはガラクトオリゴ糖)、エタノールおよび水を
図5を参照して説明した方法によって称量および配合して、コーティング組成物を製造した。また、下記表1に記載された組成比によって実施例1~4によるコーティング組成物を製造した。
【0107】
【0108】
比較例1~6
下記表2に記載された組成比によって比較例1~6によるコーティング組成物を製造した。実施例1と同じ方式で称量および配合してコーティング組成物を製造した。
【0109】
【0110】
実験例1:コーティング組成物の動的粘度維持率に対する評価
比較例1~3と比較例6、実施例3および4によるコーティング組成物に対して、動的粘度維持率を評価するための実験を進めた。換言すれば、コーティングローラーが高速で回転する場合にも、粘度が維持されるかに関する実験を進め、これに対する実験結果は、下記の表3に記載されている。コーティング組成物の粘度は、KS M ISO 2555に基づいて測定された。
【0111】
【0112】
表3を参照すると、比較例6と実施例3および4によるコーティング組成物は、高速回転時(e.g.100rpm)にも、粘度がほぼそのまま維持されることが示されている。これは、各コーティング組成物に含まれたマルトース、フラクトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖に起因した効果であると判断される。これを通じて、コーティングマルトース、フラクトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖が適正の割合で添加される場合、コーティング工程の作業成果コーティング組成物の低発火性能が向上することが分かる。
【0113】
実験例2:コーティング組成物の動的粘度維持率に対するディープ評価
動的粘度維持率に対するディープ実験を進めた。具体的に、アラビアガムの含量を固定したまま、マルトースまたはフラクトオリゴ糖の含量を増加させるとき(比較例4~6と実施例1~3の組成比参照)、動的粘度維持率がどれくらい速く最大値(e.g.略100%)に到達するかに関する実験を進めた。ガラクトオリゴ糖は、フラクトオリゴ糖と物性が非常に類似しているので、フラクトオリゴ糖のみに対して実験を進め、これに対する実験結果は、下記の表4に記載されている。
【0114】
【0115】
表4で、マルトースと関連した比較例4~6に対する実験結果を参照すると、マルトースは、約20重量%以上で添加される場合にのみ、動的粘度維持率が99%に到達することが示されている。これに対し、フラクトオリゴ糖に関連した実施例1~3に対する実験結果を参照すると、フラクトオリゴ糖は、約10重量%で添加されても、動的粘度の維持率が100%に到達することが示されている。これは、マルトースに比べてフラクトオリゴ糖がコーティング組成物の動的粘度維持率の向上に効果的であることを意味する。
【0116】
実験例3:コーティング組成物の粘着強度に対する評価
コーティング組成物のタバコ用巻紙に対する粘着強度は、喫煙物品の品質と作業成果密接に関連している。なぜなら、タバコ用巻紙に対する粘着強度が非常に高いと、コーティング組成物の塗布部位に刻みなどの喫煙物質がくっついてしまって、刻みが均一に投入されなかったり、特定部位に刻みがまとまって刻みが本来より少なく投入され得るためである。したがって、比較例5および実施例2によるコーティング組成物に対して粘着強度を測定する実験を進めた。粘着強度の測定は、KS M ISO 29864に基づいて行われ、これに対する実験結果は、
図6および
図7に示されている。
図6および
図7は、それぞれ、比較例5と実施例2によるコーティング組成物の粘着強度の測定結果を示している。
【0117】
図6および
図7を参照すると、比較例5によるコーティング組成物の粘着強度が実施例2より極めて高いことが示された。すなわち、マルトースとフラクトオリゴ糖を同じ含量で添加して、コーティング組成物を製造したとき、マルトースが添加されたコーティング組成物の粘着強度がフラクトオリゴ糖が添加されたコーティング組成物を上回ることが示されている。これは、フラクトオリゴ糖基盤のコーティング組成物(e.g.実施例2など)がマルトース基盤のコーティング組成物(e.g.比較例5など)より喫煙物品の品質と作業性の向上に効果的であることを意味する。
【0118】
実験例4:喫煙物品の製造工程の作業性に対する評価
比較例5および実施例2によるコーティング組成物に対して、喫煙物品の製造工程の作業性に対する追加的な評価を進めた。より具体的に、比較例5および実施例2によるコーティング組成物を利用して喫煙物品(e.g.
図1に示されたように2個のコーティング部を有する喫煙物品)を製造して、刻みの端外れ程度と刻み投入量未達発生率を測定した。ここで、端外れ程度とは、喫煙物品の末端部位から刻みが突き出る程度を意味し、端外れ程度は、ISO 3550-1に基づいて測定された。測定結果は、下記の表5に記載されている。
【0119】
【0120】
表5を参照すると、比較例5によるコーティング組成物が、実施例2より端外れ程度も高く、投入量未達発生率も高いことが示された。これは、コーティング組成物の粘着強度が実際喫煙物品の製造工程の作業性と品質不良(e.g.投入量未達発生率)に大きい影響を及ぼすことを示し、フラクトオリゴ糖基盤のコーティング組成物(e.g.実施例2など)がマルトース基盤のコーティング組成物(e.g.比較例5など)より喫煙物品の製造工程の作業性と喫煙物品の品質向上に効果的であることを意味する。
【0121】
実験例5:コーティング組成物の塗布均一性に対する評価
比較例5および実施例2によるコーティング組成物に対して、塗布均一性を評価するための実験を進めた。より具体的に、KS M 7025に基づくステキヒト試験法を通じてコーティング面のサイズ度を測定することによって、コーティング組成物の塗布均一性を評価し、実験結果は、下記の表6に記載されている。
【0122】
【0123】
表6を参照すると、実施例2によるコーティング組成物が、比較例5よりサイズ度が高いことが示されているが、これは、実施例2によるコーティング組成物が、比較例5より均一に塗布されることを意味する。コーティング組成物が均一に塗布される場合、低発火性能と作業性が向上することができるので、これからフラクトオリゴ糖基盤のコーティング組成物(e.g.実施例2など)がマルトース基盤のコーティング組成物(e.g.比較例5など)より低発火性能および作業性向上に効果的であることが分かる。
【0124】
実施例5~17
下記の表7に記載された組成比によってコーティング組成物を製造し(製造方法は、以前の実施例と同一)、製造されたコーティング組成物を利用して実施例5~17による喫煙物品を製造した。実施例5~17による喫煙物品は、
図1に示された喫煙物品1と同一に2個のコーティング部を有するように製造された。
【0125】
【0126】
比較例7
デンプン11重量%、マルトデキストリン22重量%、エタノール20重量%および水80重量%を
図5を参照して説明した方法によって称量および配合してコーティング組成物を製造し、これを利用して実施例5と同じ規格を有する喫煙物品を製造した。参考として、比較例7によるコーティング組成物の成分と組成比は、商業的に販売される製品に適用中のコーティング組成物とほぼ類似している。
【0127】
実験例6:コーティング組成物の中間消火率に対する評価
比較例7と実施例5~17による喫煙物品に対して、中間消火率を評価するための実験を進めた。中間消火率(%)は、ISO-12863燃焼特性測定方法に基づいて測定し、実験結果は、下記の表8に記載されている。
【0128】
【0129】
表8を参照すると、アラビアガムの含量が10重量%未満である場合(e.g.実施例5)には、中間消火率が50%未満であり、アラビアガムの含量が10重量%以上である場合(e.g.実施例6~14)には、中間消火率が50%以上であることが分かる。これから、アラビアガムの含量が10重量%以上であることが好ましいことが分かる。
【0130】
また、アラビアガムの含量が15重量%~30重量%であり、フラクトオリゴ糖またはガラクトオリゴ糖が5重量%~35重量%である場合(e.g.実施例7~14)には、中間消火率が最小70%以上であることが分かる。これから、アラビアガムとフラクトオリゴ糖またはガラクトオリゴ糖の含量が、上記のような数値範囲内にある場合、タバコ用巻紙に対するコーティング組成物の低発火性能が大きく向上することができることが分かる。
【0131】
また、実施例8~17によるコーティング組成物の中間消火率が比較例7より優れていることが示されているが、これは、アラビアガムとフラクトオリゴ糖(またはガラクトオリゴ糖)の組合せのコーティング組成物が、デンプンとマルトデキストリンの組合せのコーティング組成物より低発火性能に優れていることを示す。特に、作業性の観点から、アラビアガムとフラクトオリゴ糖の組合せのコーティング組成物が、デンプンとマルトデキストリンの組合せのコーティング組成物を格別に上回ることを考慮すると、実施例によるコーティング組成物が比較例より顕著に優れていることが分かる。
【0132】
実験例7:比較例7および実施例9に対する官能評価
比較例7および実施例9による喫煙物品に対して、30人のパネルを対象に官能評価を行った。吸込性、喫味強度、刺激性を含んで、7個の項目を評価項目に指定し、1点を最小点、5点を最大点にして評価を行った。評価誤差を低減するために、最小および最大点数を除いて、パネルの平均点数を当該物品の最終点数として算出した。評価結果は、
図8に示されている。
【0133】
図8を参照すると、実施例9による喫煙物品に対する官能評価結果が比較例7とほぼ同一であることが分かる。これは、従来喫煙物品のコーティング組成物を実施例9によるコーティング組成物に変更しても、喫煙者の喫煙感にほとんど影響を及ぼさないことを意味し、これにより、実施例によるコーティング組成物は、喫煙物品の中間消火率および作業性を向上させるのに対し、喫煙感に及ぼす否定的な影響は殆どないことが分かる。
【0134】
実験例8:比較例7および実施例9に対する煙成分分析
より客観的であり、定量的な評価のために、比較例7および実施例9による喫煙物品に対して煙成分の分析を行った。具体的に、製造後2週が経過した喫煙物品の喫煙中に捕集される主流煙の煙成分に対して分析を進めた。成分分析のための煙捕集は、試料別に4回ずつ、回当たり8パフを基準として反復実施され、3回ずつの捕集結果に対する平均値に基づいて成分分析結果を導き出した。また、温度が略20℃であり、湿度が略62.5%である喫煙室で非燃焼型自動喫煙装置を利用してHC(Health Canada)喫煙条件によって喫煙が行われた。本実験例による成分分析結果は、下記の表9に記載されている。
【0135】
【0136】
表9を参照すると、実施例9による喫煙物品の煙成分分析結果も、比較例7とほとんど差異がないことが分かる。これにより、実施例によるコーティング組成物は、喫煙物品の中間消火率を向上させて、喫煙感に及ぼす否定的な影響は殆どないことが客観的に確認された。
【0137】
以上、実施例と比較例を通じて本開示で言及されたコーティング組成物の構成および効果について詳細に説明した。
【0138】
以上、添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者は、その技術的思想や必須の特徴を変更することなく、本開示が他の具体的な形態で実施され得ることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施形態は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものでないことを理解しなければならない。本開示の保護範囲は、下記の請求範囲により解釈されるべきであり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本開示により定義される技術的思想の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。