(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ボルト、ナット、座金、及びボルトナット締着構造
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20230411BHJP
F16B 37/00 20060101ALI20230411BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20230411BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
F16B35/00 K
F16B37/00 D
F16B43/00 Z
F16B5/02 U
(21)【出願番号】P 2019013604
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391019326
【氏名又は名称】株式会社協和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090549
【氏名又は名称】加川 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 鋼太郎
(72)【発明者】
【氏名】間弓 康夫
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227545(JP,A)
【文献】特開2006-250213(JP,A)
【文献】特開2016-020726(JP,A)
【文献】特開2019-002457(JP,A)
【文献】実公昭45-027157(JP,Y1)
【文献】実開昭57-155226(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00-7/18
8/00
8/06-8/08
E02C 1/00-5/02
E04D 1/00-3/40
13/00-15/07
E21D 11/00-19/06
23/00-23/26
F16B 5/00- 7/22
23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通して使用されるボルトであって、
ボルト座面が
、ボルト中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分を有し、かつ前記X方向に対して直交するY方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分を有
し、前記凹湾曲面部分が前記波形材における凸面部に沿って面接触可能に形成され、前記凸湾曲面部分が前記波形材における凹面部に沿って面接触可能に形成されることで、前記波形材における凸面部と凹面部に開けたボルト挿入孔の両方に挿通して使用できる構造であることを特徴とするボルト。
【請求項2】
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルトとともに使用されるナットであって、
ナット座面が
、ナット中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分を有し、かつ前記X方向に対して直交するY方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分を有
し、前記凹湾曲面部分が前記波形材における凹面部に沿って面接触可能に形成され、前記凸湾曲面部分が前記波形材における凸面部に沿って面接触可能に形成されることで、前記波形材における凸面部と凹面部に開けたボルト挿入孔に挿通されるボルトと螺合できる構造であることを特徴とするナット。
【請求項3】
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットとともに使用される座金であって、
波形材側の座面が
、座金中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分を有し、かつ前記X方向に対して直交するY方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分を有
し、前記凸湾曲面部分が前記波形材における凸面部に沿って面接触可能に形成され、前記凹湾曲面部分が前記波形材における凹面部に沿って面接触可能に形成されることを特徴とする座金。
【請求項4】
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
波形材のボルト挿通孔に請求項1のボルトを挿通させ、請求項3の座金を介在させて前記ボルトに座面が平坦である通常ナットを螺合させ締着したことを特徴とするボルトナット締着構造。
【請求項5】
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
波形材のボルト挿通孔
に座面が平坦である通常ボルトを挿通させ、請求項3の座金を介在させて請求項2のナットを前記通常ボルトに螺合させ締着したことを特徴とするボルトナット締着構造。
【請求項6】
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材同士の重ね合わせ部における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
前記波形材同士の重ね合わせ部のボルト挿通孔に請求項1のボルトを挿通させ、請求項3の座金を介在させて
座面が平坦である通常ナットを螺合させ締着したことを特徴とするボルトナット締着構造。
【請求項7】
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材同士の重ね合わせ部における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
前記波形材同士の重ね合わせ部のボルト挿通孔に
座面が平坦である通常ボルトを挿通させ、請求項3の座金を介在させて請求項2のナットを前記通常ボルトに螺合させ締着したことを特徴とするボルトナット締着構造。
【請求項8】
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
前記波形材の前記凸面部又は凹面部のそれぞれにおける表面側及び裏面側にそれぞれ請求項3の座金をそれぞれ前記凸面部又は凹面部に対応する姿勢で配置するとともに、前記ボルト挿通孔
に座面が平坦である通常ボルトを前記
座金のうち一方の座金を介在させて挿通させ、座面が平坦である通常ナットを
他方の座金を介在させて螺合させ締着したことを特徴とするボルトナット締着構造。
【請求項9】
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材とこの波形材の片側に接する平坦面を有する平坦部材とを、前記波形材及び平坦部材に開けたボルト挿通孔を挿通するボルト及び前記ボルトに螺合するナットを用いて締着するボルトナット締着構造であって、
前記波形材の前記凸面部又は凹面部に請求項1のボルトを前記凸面部又は凹面部側から前記各ボルト挿通孔に挿入し前記平坦部材の裏面側の
座面が平坦である通常ナットに螺合させて、
又は、前記波形材の前記凸面部又は凹面部に請求項2のナットを配置するととも
に、前記平坦部材の裏面側から
座面が平坦である通常ボルトを前記各ボルト挿通孔に挿入し前記請求項2のナットに螺合させ
て締着したことを特徴とす
るボルトナット締着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波形材を固定する場合に用いるボルト、ナット、座金、及びボルトナット締着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
山谷のある波形材、例えばコルゲート鋼板を円弧状に湾曲させたコルゲートセクションを複数枚、円周方向に連結してコルゲートパイプを組み立てる場合、連結部では2枚のコルゲートセクションの端部同士の重ね合わせ部を、ボルトナット締着構造により連結する。
【0003】
図15は2枚のコルゲートセクション50(50a、50b)の端部同士の重ね合わせ部をボルトナット締着により連結する従来のボルトナット締着構造を示すもので、2枚のコルゲートセクション50a、50bの端部同士の重ね合わせ部は、同図の上側から見て凸面部であるP部では、凸面部用のボルト110A、凸面部用の座金(角座金)120A、凸面部と凹面部に共通の円形板状の湾曲板ワッシャ30、及び標準のナット(座面が平坦である通常のナットを指す)140を用いて締着される。なお、コルゲートセクションを場合により単にセクションと呼ぶ。
一方、同図の上側から見て凹面部であるQ部では、凹面部用のボルト110B、凹面部用の座金120B、凸面部と凹面部に共通の円形の前記湾曲板ワッシャ30、及び通常の前記ナット(六角ナット)140を用いて締着される。
なお、湾曲板ワッシャ30は、凸面部の場合と凹面部の場合とでは単に反転する(裏返す)ことで共用できる。
【0004】
前記凸面部用のボルト110Aは、
図16(イ)~(ニ)に示すように、ボルト座面(ボルト頭部111Aの座面(ボルト頭部裏面))111Aaが単にセクション50の凸面(直接には湾曲板ワッシャ30の凸面)の奥行方向に沿うだけの単なる下向き凹面をなしているだけである。
前記凹面部用のボルト110Bは、
図17(イ)~(ニ)に示すように、ボルト頭部の裏面111Baが単にセクション50の凹面(直接には湾曲板ワッシャ30の凹面)の奥行方向に沿うだけの単なる下向き凸面をなしているだけである。
【0005】
前記凸面部用の座金120Aは、
図18(イ)~(ニ)に示すように、その上面121Aが単にセクション50の裏面(下向き凹面)の奥行方向に沿うだけの単なる上向き凸面をなしているだけである。
前記凹面部用の座金120Bは、
図19(イ)~(ニ)に示すように、その上面121Bが単にセクション50の裏面(下向き凸面)の奥行方向に沿うだけの単なる上向き凹面をなしているだけである。
【0006】
上記のようにボルト及び座金については、凸面部用と凹面部用とでそれぞれ専用のボルト110A、110B、それぞれ専用の座金120A、120Bを用いている。
【0007】
特許文献1にコルゲートシート用のボルト(フランジボルト)が記載されている。
特許文献1中の符号を用いて説明すると、このボルト1は、ボルト頭部2の軸部側にボルト頭部2と一体にフランジ4を設けるとともに、このフランジ4の座面5を波形面に沿う船底形状(単なる下に凸の湾曲面)にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、山谷のある波形材であるコルゲートセクションの端部同士をボルトナット締着により連結するための従来のボルトナット締着構造では、ボルト及び座金については、コルゲートセクションの凸面部用と凹面部用とでそれぞれ専用のボルト、専用の座金を用いている。
したがって、コルゲートパイプの組み立てには、凸面部用ボルト、凸面部用座金という組み合わせと、凹面部用ボルト、凹面部用座金という組み合わせの2種類の組み合わせが存在することになる。
このように、ボルト及び座金の組み合わせが2種類あることで、その製造面、製造後の管理面、及び施工現場への運搬面等では、混同が生じないように気を使う煩雑な作業となり、楽に作業できることが望まれる。
そして、施工現場では、凸面部用の部品と凹面部用の部品とをそれぞれ別の容器(バケツなど)に入れて用意し、それぞれの設置個所(凸面部か凹面部)を確認しながら、かつ、その箇所に対応する部品か否かを確認しながら組み立て作業を行っているが、この現場作業は凸面部と凹面部との混同が生じないように特に気を使う煩雑な作業であり、楽に能率的に作業できることが望まれる。
【0010】
特許文献1のボルトは、フランジ4の座面5を単に波形面に沿う船底形状(単なる下に凸の湾曲面)にしたものであり、本発明において凸面部・凹面部に兼用可能にするという課題とは関係しない。
【0011】
本発明は上記背景のもとになされたもので、凸面部と凹面部とが繰り返される山谷のある波形材を対象として、その凸面部と凹面部においてボルトナットの締着操作が必要となる種々の場合に、ボルト又はナット、及び座金として凸面部及び凹面部に共通して用いることが可能な形状のボルト、ナット、座金、及びボルトナット締着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する請求項1の発明は、互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通して使用されるボルトであって、
ボルト座面が、ボルト中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分を有し、かつ前記X方向に対して直交するY方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分を有し、前記凹湾曲面部分が前記波形材における凸面部に沿って面接触可能に形成され、前記凸湾曲面部分が前記波形材における凹面部に沿って面接触可能に形成されることで、前記波形材における凸面部と凹面部に開けたボルト挿入孔の両方に挿通して使用できる構造であることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルトとともに使用されるナットであって、
ナット座面が、ナット中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分を有し、かつ前記X方向に対して直交するY方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分を有し、前記凹湾曲面部分が前記波形材における凹面部に沿って面接触可能に形成され、前記凸湾曲面部分が前記波形材における凸面部に沿って面接触可能に形成されることで、前記波形材における凸面部と凹面部に開けたボルト挿入孔に挿通されるボルトと螺合できる構造であることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットとともに使用される座金であって、
波形材側の座面が、座金中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分を有し、かつ前記X方向に対して直交するY方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分を有し、前記凸湾曲面部分が前記波形材における凸面部に沿って面接触可能に形成され、前記凹湾曲面部分が前記波形材における凹面部に沿って面接触可能に形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明のボルトナット締結構造は、
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
波形材のボルト挿通孔に請求項1のボルトを挿通させ、請求項3の座金を介在させて前記ボルトに座面が平坦である通常ナットを螺合させ締着したことを特徴とする。
なお、ここで「通常ナット」とは、座面が平坦である一般的なナットのことを示している(本発明に係るナット(兼用ナット)と混同しないために用いた語である)。
【0016】
請求項5の発明のボルトナット締結構造は、
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
波形材のボルト挿通孔に座面が平坦である通常ボルトを挿通させ、請求項3の座金を介在させて請求項2のナットを前記通常ボルトに螺合させ締着したことを特徴とする。
なお、ここで「通常ボルト」とは、ボルト座面(ボルト頭部の裏面)が平坦である一般的なボルトのことを示している(本発明に係るボルト(兼用ボルト)と混同しないために用いた語である)。
【0017】
(セクション2枚重ね部に適用する場合:兼用ボルトと兼用座金)
請求項6の発明のボルトナット締着構造は、
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材同士の重ね合わせ部における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
前記波形材同士の重ね合わせ部のボルト挿通孔に請求項1のボルトを挿通させ、請求項3の座金を介在させて座面が平坦である通常ナットを螺合させ締着したことを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明のボルトナット締着構造は、
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材同士の重ね合わせ部における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
前記波形材同士の重ね合わせ部のボルト挿通孔に座面が平坦である通常ボルトを挿通させ、請求項3の座金を介在させて請求項2のナットを前記通常ボルトに螺合させ締着したことを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明のボルトナット締着構造は、互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材における凸面部又は凹面部に開けたボルト挿通孔に挿通させたボルト及び前記ボルトに螺合させたナットを用いたボルトナット締着構造であって、
前記波形材の前記凸面部又は凹面部のそれぞれにおける表面側及び裏面側にそれぞれ請求項3の座金をそれぞれ前記凸面部又は凹面部に対応する姿勢で配置するとともに、前記ボルト挿通孔に座面が平坦である通常ボルトを前記座金のうち一方の座金を介在させて挿通させ、座面が平坦である通常ナットを他方の座金を介在させて螺合させ締着したことを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明のボルトナット締着構造は、
互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のある波形材とこの波形材の片側に接する平坦面を有する平坦部材とを、前記波形材及び平坦部材に開けたボルト挿通孔を挿通するボルト及び前記ボルトに螺合するナットを用いて締着するボルトナット締着構造であって、
前記波形材の前記凸面部又は凹面部に請求項1のボルトを前記凸面部又は凹面部側から前記各ボルト挿通孔に挿入し前記平坦部材の裏面側の座面が平坦である通常ナットに螺合させて、
又は、前記波形材の前記凸面部又は凹面部に請求項2のナットを配置するとともに、前記平坦部材の裏面側から座面が平坦である通常ボルトを前記各ボルト挿通孔に挿入し前記請求項2のナットに螺合させて締着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明のボルトによれば、
ボルト座面(ボルト頭部の裏面)に、ボルト中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分を有するので、
波形材の凸面部に対応する場合(
図1のP部の場合(
図9参照))は、ボルトの向き(中心軸回りの向き)をX方向にすることで、ボルト座面における凹湾曲面部分が波形材の凸面部に沿う面接触状態となる。
一方、ボルト座面には、前記X方向に対して直交するY方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分を有するので、
波形材の凹面部に対応する場合(
図1のQ部の場合(
図10参照)))は、ボルトの向き(中心軸回りの向き)を90°変えてY方向にすることで、ボルト座面における凸湾曲面部分が波形材の凹面部に沿う面接触状態となる。
このように、本発明のボルトによれば、ボルト中心軸回りの向きを90°変えることで、波形材の凸面部及び凹面部のいずれの部分に対しても使用可能である。
【0022】
請求項2の発明のナットによれば、
ナット座面には、ナット中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分を有するので(
図11、
図12、
図13参照)、波形材の凸面部に対応する場合は、ナットの向き(中心軸回りの向き)をX方向にすることで、ナット座面における凹湾曲面部分が波形材の凸面部に沿う面接触状態となる。
一方、ナット座面には、前記X方向に対して直交するY方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分も有するので(
図11、
図12、
図14参照)、
波形材の凹面部に対応する場合は、ナットの向き(中心軸回りの向き)を90°変えてY方向にすることで、ナット座面における凸湾曲面部分が波形材の凹面部に沿う面接触状態となる。
このように、本発明のナットによれば、ナット中心軸回りの向きを90°変えることで、波形材の凸面部及び凹面部のいずれの部分に対しても使用可能である。
【0023】
請求項3の発明の座金によれば、
座金中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分を有するので、
波形材の凸面部(座金から見ると裏面の凹面部)に対応する場合(
図1のP部の場合(
図9参照))は、座金の向き(中心軸回りの向き)をX方向にすることで、座金の波形材側の面(座面)における凸湾曲面部分が波形材の凸面部の裏面の凹湾曲面に沿う面接触状態となる。
一方、前記X方向に対して直交するY方向に延びる凹湾曲面部分も有するので、
波形材の凹面部(座金から見ると裏面の凸面部)に対応する場合は、座金の向き(中心軸回りの向き)をY方向にすることで、座金における凹湾曲面部分が波形材の裏面の凸面部に沿う面接触状態となる。
このように、本発明の座金によれば、座金中心軸回りの向きを90°変えることで、波形材の凸面部及び凹面部のいずれの部分に対しても使用可能である。
【0024】
請求項4の発明によれば、請求項1のボルトと請求項3の座金とを用いることで、そしてそれらの向きを90°変えることで、波形材の山部にも谷部にも対応可能なボルトナット締着構造が得られる。
【0025】
請求項5の発明によれば、請求項2のナットと請求項3の座金とを用いることで、そしてそれらの向きを90°変えることで、波形材の山部にも谷部にも対応可能なボルトナット締着構造が得られる。
【0026】
請求項6の発明によれば、波形材同士の重ね合わせ部に適用する場合であり、請求項1のボルトと請求項3の座金とを用いることで、そしてそれらの向きを90°変えることで、波形材の重ね合わせ部に対して山部にも谷部にも対応可能なボルトナット締着構造が得られる。
【0027】
請求項7の発明によれば、波形材同士の重ね合わせ部に適用する場合であり、請求項2のナットと請求項3の座金とを用いることで、そしてそれらの向きを90°変えることで、波形材の重ね合わせ部に対して山部にも谷部にも対応可能なボルトナット締着構造が得られる。
【0028】
請求項8の発明によれば、請求項3の座金を波形材の前記凸面部又は凹面部のそれぞれにおける表面側及び裏面側に姿勢を変えて配置することで、すなわち、同じ形状の請求項3の座金を2つ用いるだけで、通常ボルト及び通常ナットを用いながら、波形材の山部にも谷部にも対応可能なボルトナット締着構造が得られる。
【0029】
請求項9の発明によれば、波形材を平鋼や山形鋼等の平坦面を有する平坦部材に接合する場合に、請求項1のボルト又は請求項2のナット又は請求項3の座金のいずれか一つについて兼用可能な形状とすることで、波形材を平坦部材に接合することが可能となる。
【0030】
上記の通りであり、ボルトナット締着構造によれば、波形材の凸面部と凹面部とにすべて共通の部品で波形材同士又は波形材と平坦部材とを接合することができる。そして、本発明のボルト、ナット、座金はそのようなボルトナット締着構造を実現可能にする。
したがって、ボルト及び座金については凸面部用と凹面部用とでそれぞれ専用のボルト、座金を用いている従来と比較して、各部品の製造面、製造後の管理面、及び施工現場への運搬面等での混同をしないための煩雑さが解消される。また、施工現場作業の面では、設置個所(凸面部か凹面部)の確認作業や、その箇所に対応する部品かの確認作業が不要となり、混同を防ぐための種々の煩雑さが解消され、作業が楽になり作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施例を示すもので、コルゲートセクション(例えば円弧状に湾曲したコルゲートセクション)の重ね合わせ部のボルト接合に適用したボルトナット締着構造の実施例の正面図であり、P部の接合を凸面部接合、Q部の接合を凹面部接合と呼ぶ。なお、図の左上部分にボルト中心軸と直交する方向X、Yを示している。
【
図2】
図1における本発明の凹凸面部兼用のボルト10であって、(イ)は
図1のP部使用状態におけるボルト10の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は左側面図(
図1のQ部使用状態における正面図に相当)である。
【
図3】(イ)は
図2(イ)におけるA-A断面図、(ロ)は(イ)におけるB-B断面図、(ハ)は(ロ)におけるC-C断面図である。
【
図4】
図1における本発明の凹凸面部兼用の座金20であって、(イ)は
図1のP部使用状態における座金20の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は左側面図(
図1のQ部使用状態における正面図に相当)である。
【
図5】(イ)は
図4(ロ)におけるD-D断面図(但し、
図4(ニ)と同じ向き(横向き)にしている)、(ロ)は
図4(ロ)におけるE-E断面図である。
【
図6】(イ)は
図4の座金20の上面側から見た斜視図、(ロ)は(イ)の裏面側から見た斜視図である。
【
図7】
図1における、従来と同じ部品である湾曲した板状の湾曲板ワッシャ30を示す図であり、(イ)は
図1のP部使用状態における湾曲板ワッシャ3の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は右側面図、(ニ)は(ロ)のF-F断面図である。
【
図8】
図1における実施例のボルトナット締着構造に用いている座面が平坦な通常ナット140であって、(イ)はナット140の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は左側面図である(但し、(イ)は
図1のP部におけるナット140とは上下逆に図示している)
【
図9】
図1に示した本発明の一実施例のボルトナット締着構造の各締着部品を、P部についてボルト10に他の部品を組み付けた状態(部品組み付け状態)で示したもので、(イ)はその部品組み付け状態の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は左側面図である。
【
図10】
図1に示した本発明の一実施例のボルトナット締着構造における各締着部品を、Q部のついてボルト10に他の部品を組み付けた状態(部品組み付け状態)で示したもので、(イ)はその部品組み付け状態の正面図()、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は左側面図である。
【
図11】
図1に示した本発明のボルトナット締着構造に代えて、ボルトとして通常ボルトを使用する場合に用いる本発明の凹凸面部兼用のナット40を示すもので、(イ)はナット40の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は左側面図である(なお、
図8の通常ナット140の各図の配置と対応させた配置で示している)。
【
図12】(イ)は
図11(ロ)の凹凸面部兼用のナット40のG-G断面図、(ロ)は(イ)のH-H断面図である。
【
図13】ボルトとして通常ボルトを使用するとともに、
図11、
図12に示した本発明実施例のナット40を用いる場合のボルトナット締着構造を説明する図であり、各締着部品をP部について、前記通常ボルトに他の部品を組み付けた状態(部品組み付け状態)で示したもので、(イ)はその部品組み付け状態の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図である(
図9に対応する図(左側面図は省略)。
【
図14】ボルトとして通常ボルトを使用するとともに、
図11、
図12に示した本発明実施例のナット44を用いる場合のボルトナット締着構造を説明する図であり、各締着部品をQ部について、前記通常のボルトに他の部品を組み付けた状態(部品組み付け状態)で示したもので、(イ)はその部品組み付け状態の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図である(
図10に対応する図(左側面図は省略)。
【
図15】
図1に対応する従来例を説明する図であり、コルゲートパイプの重ね合わせ部のボルトナット締着構造の正面図であり、同じくP部の接合を凸面部接合、Q部の接合を凹面部接合と呼ぶ。
【
図16】
図15における従来の凸面部専用(P部専用)のボルト101を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は(ロ)のI-I断面図である。
【
図17】
図15における従来の凹面部専用(Q部専用)のボルト111を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は(ロ)のJ-J断面図である。
【
図18】
図15における従来の凸面部専用(P部専用)の座金102を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は左側面図、(ニ)は(ロ)のK-K断面図である。
【
図19】
図15における従来の凹面部専用(Q部専用)の座金112を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は左側面図、(ニ)は(ロ)のL-L断面図である。
【
図20】請求項8の発明の一実施例を示すもので、コルゲートセクション(例えば円弧状に湾曲したコルゲートセクション)の重ね合わせ部のボルト接合に適用したボルトナット締着構造の実施例の正面図である。
【
図21】請求項9の発明の一実施例を示すもので、請求項1の発明のボルトを用いて波形材を平坦部材に接合するボルトナット締着構造の正面図である。
【
図22】請求項9の発明の他の実施例を示すもので、請求項2の発明のナットを用いて波形材を平坦部材に接合するボルトナット締着構造の正面図である。
【
図23】請求項9の発明のさらに他の実施例を示すもので、請求項3の発明の座金を用いて波形材を平坦部材に接合するボルトナット締着構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明のボルト、ナット、座金、及びボルトナット締着構造を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0033】
図1に本発明のボルトナット締着構造の一実施例を示す。
図1におけるP部の接合を凸面部接合(図の上側から見て凸面部)、Q部の接合を凹面部接合(図の上側から見て凹面部)と呼ぶ。なお、図の左上部分にボルト中心軸と直交する方向X、Yを示している。なお、
図1に示された各部品10、20、30、140の形状は、
図2以下に図示した各部品の図と厳格には対応していない。
【0034】
図1に示したボルトナット締着構造は、互いに平行にX方向に直進する凸面部と凹面部とが前記X方向と平面上で直交又は湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のあるコルゲートセクション(波形材)50における凸面部又は凹面部に適用した実施例であり、かつ、2枚のコルゲートセクション50(50a、50b)の端部同士の重ね合わせ部の接合に適用した実施例である。
前記凸面部と凹面部とがX方向と平面上で直交するY方向に繰り返される山谷のあるコルゲートセクションとは、コルゲート柵渠等に用いられる平面状のコルゲートセクション(コルゲートシート)を指し、凸面部と凹面部とが前記X方向と湾曲面上で直交するY方向に繰り返される山谷のあるコルゲートセクションとはコルゲートパイプやコルゲート骨材ピン等に用いられる円弧状のコルゲートセクションを指す。
【0035】
図1の実施例は、本発明の一実施例である凹凸面部兼用のボルト10と、本発明の一実施例であるの凹凸面部兼用の座金(実施例では角座金)20と、従来と同じ円形板状の湾曲板ワッシャ30と、従来と同じ通常ナット140とを用いた実施例である。
凹凸面部兼用のボルト10を場合により兼用ボルト10と呼ぶ。また、凹凸面部兼用の座金20を場合により兼用座金20と呼ぶ。
【0036】
図2、
図3に
図1における兼用ボルト10の詳細を示す。
図2の(イ)は
図1のP部使用状態におけるボルト10の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は左側面図(
図1のQ部使用状態における正面図に相当)である。
図3(イ)は
図2(イ)におけるA-A断面図、(ロ)は
図3(イ)におけるB-B断面図、(ハ)は
図3(ロ)におけるC-C断面図である。
このボルト10は図示の通り、
ボルト座面(ボルト頭部11の裏面(軸部13側の面))12が、
ボルト中心軸と直交する直交平面上のX方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分12aを有し、かつ前記X方向に対して直交するY方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分12bを有している。
【0037】
図4、
図5、
図6に
図1における兼用座金20の詳細を示す。
図4の(イ)は
図1のP部使用状態における座金20の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は左側面図(
図1のQ部使用状態における正面図に相当)である。
図5の(イ)は
図4(ロ)におけるD-D断面図(但し、
図4(ニ)と同じ向き(横向き)にしている)、(ロ)は
図4(ロ)におけるE-E断面図である。
図6の(イ)は
図4の座金20の上面側から見た斜視図、(ロ)は
図6(イ)の裏面側から見た斜視図である。
この座金20は図示の通り、
波形材側の座面(
図1で波形材50b側の面)22が、
座金中心軸と直交する直交平面上のX方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分22bを有し、かつ前記X方向に対して直交するY方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分22aを有している。座金孔を23で示す。
これらの図に示す通り、この実施例の座金20は、X、Yの方向性を認知し易いように平面図で正方形の角座金としているが、円形の座金とすることを除外しない。
【0038】
前記湾曲板ワッシャ30は、
図15で説明した湾曲板ワッシャ30と同じであり、
図7(イ)~(ニ)に示すように、円形の平ワッシャを湾曲させたもので、反転させることで、波形材50の凸面部にも凹面部にも使用することができる。30aは中心孔である。
【0039】
図1の上から見て波形材50(50a、50b)の凸面部であるP部、及び凹面部であるQ部のボルトナット締着構造を説明する。
実施例のボルトナット締着構造は、上述した通り兼用ボルト10と、兼用座金(実施例では角座金)20と、従来と同じ円形板状の湾曲板ワッシャ30と、従来と同じ通常ナット140とを用いて、2枚の波形材50a、50bの端部同士を接合するボルトナット締着構造である。後述する本発明のナット40を通常ナット140と対比させる意味で、
図8に座面142が平坦である通常ナット140を示す。143はネジ孔である。
【0040】
2枚の波形材50a、50bの端部同士の重ね合わせ部を接合する作業は、重ね合わせ部の凸面部又は凹面部に開けられたボルト挿通孔(図示略)に湾曲板ワッシャ30を介在させて兼用ボルト10を
図1の上から(凸面部側から)挿入し、挿入した兼用ボルト10の軸部13に兼用座金20を嵌め、通常ナット140を螺合させ、通常ナット140を回し締着して、端部同士を接合する。
なお、円弧状のコルゲートセクション50を連結してコルゲートパイプを組み立てる場合は通常、
図1の下側が内側、
図1の上側が外側となる態様での共同作業となる。
【0041】
波形材50の端部同士の上記接合作業において、
兼用ボルト10は、前述の通り、ボルト座面12にボルト中心軸と直交する直交平面上のX方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分12aを有するので、
波形材50の凸面部に対応する場合(
図1のP部の場合(
図9参照))は、ボルト10の向き(中心軸回りの向き)を前記X方向にすることで、ボルト座面12における凹湾曲面部分12aが、湾曲板ワッシャ30を介在させて波形材50の凸面部に沿う面接触状態となる。なお、この場合の湾曲板ワッシャ30は、図示の通り波形材50の凸面部に沿う下向き凹の姿勢で兼用ボルト10に嵌めておく。
一方、ボルト座面12には、前記X方向に対して直交するY方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分12bを有するので、
波形材50の凹面部に対応する場合(
図1のQ部の場合(
図10参照)))は、兼用ボルト10の向き(中心軸回りの向き)を90°変えてY方向にすることで、ボルト座面12における凸湾曲面部分12bが、湾曲板ワッシャ30を介在させて波形材の凹面部に沿う面接触状態となる。なお、この場合の湾曲板ワッシャ30は、波形材50の凹面部に沿う下向き凸の姿勢(P部の使用時の姿勢を反転させた姿勢)で兼用ボルト10に嵌めておく。
このように、本発明の兼用ボルト10によれば、ボルト中心軸回りの向きを90°変えることで、波形材の凸面部及び凹面部のいずれの部分に対しても使用可能である。
【0042】
また、座金20の座面(波形材側の面)22は、前述の通り、座金中心軸と直交する直交平面上の前記X方向から見て凸湾曲面をなす凸湾曲面部分22bを有するので、
波形材の凸面部(座金側から見ると裏面の凹面部)に対応する場合(
図1のP部の場合(
図9参照))は、座金20の向き(中心軸回りの向き)をX方向にすることで、座金20の座面22における凸湾曲面部分22bが波形材50の凸面部の裏面の凹湾曲面に沿う面接触状態となる。
一方、前記X方向に対して直交するY方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分22aを有するので、波形材50の凹面部(座金20から見ると裏面の凸面部)に対応する場合は、座金20の向き(中心軸回りの向き)をY方向にすることで、座金20における凹湾曲面部分22aが波形材50bの裏面の凸面部に沿う面接触状態となる。
このように、本発明の座金20によれば、座金中心軸回りの向きを90°変えることで、波形材50の凸面部及び凹面部のいずれの部分に対しても使用可能である。
【0043】
上記の通りであり、湾曲板ワッシャ30及び通常ナット140はもともと波形材50の凸面部と凹面部に共通の部品であるから、本発明の兼用ボルト10と兼用座金20とを用いることで、波形材50の凸面部と凹面部とにすべて共通の部品で波形材同士を接合することができる。
したがって、
図15に示したように、ボルト及び座金については凸面部用と凹面部用とでそれぞれ専用のボルト110A、110B、専用の座金120A、120Bを用いている従来と比較して、各部品の製造面、製造後の管理面、及び施工現場への運搬面等での混同をしないための煩雑さが解消される。
また、施工時の現場作業の面では、設置個所(凸面部か凹面部)の確認作業や、その箇所に対応する部品か否かの確認作業が不要となり、混同を防ぐための種々の煩雑さが解消され、作業が楽になり作業能率が向上する。
【0044】
前記ボルト10の座面や座金20の座面における互いに直交する方向の凹湾曲面部と凸湾曲面部とは、実施例の態様に限らず、種々の態様で形成することができる。
すなわち、座面の中心軸と互いに直交(平面上で直交又は湾曲面上で直交)するX、Y方向の一方からみて凸湾曲面部が存在し、かつ他方からみて凹湾曲面部が存在していればよいので、座面となる部分に一方から見て円筒面を形成し、その円筒面部に直交する他方から見て凹湾曲面を形成することで、直交する一方向から見て凸湾曲面、他方向から見て凹湾曲面を持つ座面が得られる。この場合、座面の全体が凸湾曲面と凹湾曲面とで占められている必要はなく、凸湾曲面部と凹湾曲面部とが存在していればよい。また、その凸湾曲面部又は凹湾曲面部は、必ずしも波形材の凹面部や凸面部に広く面接触する場合に限らず、線接触に近い態様で接触するものでもよい。
【実施例2】
【0045】
図11、
図12に、波形材の凸面部及び凹面部のボルトナット締着構造の両者に兼用可能な本発明の一実施例のナット40を示す。このナット40を兼用ナットと呼ぶと、
図11の(イ)は兼用ナット40の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は底面図、(ニ)は左側面図である。
図12の(イ)は
図11(ロ)のG-G断面図、
図12(ロ)は(イ)のH-H断面図である。
この兼用ナット40は、ナット座面42が、ナット中心軸と直交する直交平面上の
図11(ハ)においてX方向から見て凹湾曲面をなす凹湾曲面部分42aを有し、かつ前記X方向に対して直交するY方向から見て
図11(ニ)に示すように凸湾曲面をなす凸湾曲面部分42bを有している。ネジ孔を43で示す。
【0046】
この兼用ナット40を用いるボルトナット締着構造では、
図13、
図14に示すように、
図4~
図5、
図9で説明した兼用座金20と、従来と同じ円形板状の湾曲板ワッシャ30とを用いるが、ボルトとして通常ボルト(ボルト座面が平坦な一般的なボルト)210とを用いる。
この兼用ナット40を
図1のP部に適用する場合は
図13の組み合わせにより、また、
図1のQ部に適用する場合は
図14の組み合わせにより、ボルトナット締着する。
すなわち、波形材50のボルト挿通孔(図示略)に兼用座金20を介在させて通常ボルト210を
図1の下側から挿入し、挿入した通常ボルト210のネジ部213に湾曲板ワッシャ30を介在させて兼用ナット40を螺合させ、通常ボルト210側を回すことで締着して、波形材の端部同士を接合する。
【実施例3】
【0047】
図20は請求項8の発明の一実施例を示すもので、コルゲートセクション50の重ね合わせ部のボルト接合に適用したボルトナット締着構造の実施例の正面図である。
このボルトナット締着構造では、波形材50の凸面部(P部)又は凹面部(Q部)のそれぞれにおける表面側及び裏面側にそれぞれ前述した本発明の座金20をそれぞれ前記凸面部又は凹面部に対応する姿勢(表裏と90°の向きとに関して)で配置する。
すなわち凸面部(P部)の裏面側の座金20は
図1と同じ配置であるが、凸面部(P部)の表面側の座金20は、下面側の座金20を表裏反転させかつ90°回転させた姿勢(すなわち、凹面部(Q部)における下面側の座金20を表裏反転させた姿勢)で配置する。
そして、通常ボルト110を前記表面側の座金20介在させてボルト挿通孔に挿入し、前記裏面側の座金20を通して通常ナット140に螺合させ締着する。
このように、同じ形状の2つの座金20を用いることで、通常ボルト110及び通常ナット140を用いながら、波形材50の山部にも谷部にも対応可能なボルトナット締着構造が得られる。
【実施例4】
【0048】
図21は、請求項9の発明の一実施例を示すもので、請求項1の発明のボルトを用いて波形材50を平坦面を有する平坦部材150に接合するボルトナット締着構造の正面図である。平坦部材150としては平鋼や山形鋼、その他の種々の部材が考えられる。
このボルトナット締着構造は、波形材50の凸面部(P部)又は凹面部(Q部)に前述した本発明のボルト10’(図示の長さが異なっているのでダッシュ(’)を付した)を前記凸面部又は凹面部側から波形材50のボルト挿通孔及び平坦部材150のボルト挿通孔に挿入し前記平坦部材150の裏面側の通常ナット140に螺合させて締着している。160は平ワッシャである。
このように、波形材50を平坦部材150に接合する場合に、波形材50の凸面部と凹面部とにそれぞれ専用のボルトを用いることなく、共通のボルト10’を向きを90°変えて用いることで締着することができる。
なお、凹面部(Q部)では短いボルトを用いとよい。
【実施例5】
【0049】
図22は、請求項9の発明の他の実施例を示すもので、請求項2の発明のナットを用いて波形材50を平坦部材150に接合するボルトナット締着構造の正面図である。
このボルトナット締着構造は、波形材50の凸面部(P部)又は凹面部(Q部)に前述した本発明のナット40を湾曲板ワッシャ30を介在させて配置するととも前記平坦部材150の裏面側から通常ボルト110を平坦部材150のボルト挿通孔及び波形材50のボルト挿通孔に挿入し前記ナット40に螺合させ締着している。
このように、波形材50を平坦部材150に接合する場合に、波形材50の凸面部と凹面部とにそれぞれ専用のナットを用いることなく、共通のナット40を向きを90°変えて用いることで締着することができる。
【実施例6】
【0050】
図23は、請求項9の発明のさらに他の実施例を示すもので、請求項3の発明の座金を用いて波形材50を平坦部材150に接合するボルトナット締着構造の正面図である。
このボルトナット締着構造は、波形材50の凸面部(P部)又は凹面部(Q部)に通常ボルト110を、前述した本発明の座金20を介在させて、波形材50のボルト挿通孔に挿入し平坦部材150のボルト挿通孔を通して前記通常ナット140に螺合させ締着している。
このように、波形材50を平坦部材150に接合する場合に、波形材50の凸面部と凹面部とにそれぞれ専用の座金を用いることなく、共通の座金20を向きを90°変えて用いることで締着することができる。
【実施例7】
【0051】
本発明のボルトナット締着構造は、実施例のように波形材同士の重ね合わせ部を接合する場合に限らず、例えば、屋根材や天井材等として設置した波形材に吊りボルトを取り付ける場合など、1枚の波形材にボルトを固定する場合等にも適用することもできる。
本発明の兼用ボルト、兼用座金、あるいは兼用ナットの製造は、鍛造、鋳造、切削加工のいずれを採用してもよい。
なお、実施例のボルトは六角ボルトであるが、六角孔付きボルトを使用することも可能である。
また、対象とする波形材や平坦部材は必ずしも金属板製に限らず、プラスチック製であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10、10’ ボルト(兼用ボルト)
11 ボルト頭部
12 ボルト座面
12a (ボルト座面の)凹湾曲面部
12b (ボルト座面の)凸湾曲面部
13 ボルトの軸部
20 座金(兼用座金)
22 (座金の)座面
22a (座金座面の)凹湾曲面部
22b (座金座面の)凸湾曲面部
23 座金孔
30 湾曲板ワッシャ
30a (湾曲板ワッシャの)中心孔
40 ナット(兼用ナット)
42 ナット座面
42a (ナット座面の)凹湾曲面部
42b (ナット座面の)凸湾曲面部
43 ネジ孔
50(50a、50b) 波形材(コルゲートセクション)
110(110A、110B) 通常ボルト(ボルト座面が平坦な一般的なボルト)
140 通常ナット(座面が平坦な一般的なナット)
143 ネジ孔
150 平坦部材
P部
図1で上側から見た波形材の凸面部
Q部
図1で上側から見た波形材の凹面部