(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】コンクリート舗装の補修方法およびコンクリート舗装構造
(51)【国際特許分類】
E01C 23/00 20060101AFI20230411BHJP
E01C 7/14 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
E01C23/00 Z
E01C7/14
(21)【出願番号】P 2019057776
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】592179067
【氏名又は名称】株式会社ガイアート
(73)【特許権者】
【識別番号】515246373
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(73)【特許権者】
【識別番号】000232542
【氏名又は名称】日本特殊塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】230116296
【氏名又は名称】薄葉 健司
(72)【発明者】
【氏名】小川 登
(72)【発明者】
【氏名】安東 達雄
(72)【発明者】
【氏名】太田 亮
(72)【発明者】
【氏名】植山 隆文
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053114(JP,A)
【文献】特開昭62-253801(JP,A)
【文献】特開2011-032644(JP,A)
【文献】特表2010-534778(JP,A)
【文献】特開2001-098511(JP,A)
【文献】特開2015-086555(JP,A)
【文献】特開2002-356805(JP,A)
【文献】特開2000-328503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/00
E01C 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート舗装の目地
前後250-1000mmの範囲を設定し、
前記設定した範囲に、ポリウレア樹脂を主成分とする充填材を
面的に広げながら充填し、敷き均す
ことを特徴とするコンクリート舗装の補修方法。
【請求項2】
前記設定した範囲にある目地材を撤去し、
前記目地材があった空間に前記充填材を充填する
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート舗装の補修方法。
【請求項3】
コンクリート舗装の目地の周辺の下部に空洞が存在する場合において、
前記空洞に前記充填材を充填する
ことを特徴とする請求項2記載のコンクリート舗装の補修方法。
【請求項4】
コンクリート舗装のパンチアウトひび割れ箇所の
周辺250-1000mmの範囲を設定し、
前記設定した範囲に、ポリウレア樹脂を主成分とする充填材を
面的に広げながら充填し、敷き均す
ことを特徴とするコンクリート舗装の補修方法。
【請求項5】
前記設定した範囲の周囲に溝を形成する
ことを特徴とする請求項1~4いずれか記載のコンクリート舗装の補修方法。
【請求項6】
前記溝の内側法肩を面取する
ことを特徴とする請求項5記載のコンクリート舗装の補修方法。
【請求項7】
前記充填材を外側法肩天端より2~3mm下まで充填する
ことを特徴とする請求項5または6記載のコンクリート舗装の補修方法。
【請求項8】
前記充填材はゴムチップを含む
ことを特徴とする請求項1~7何れか記載のコンクリート舗装の補修方法。
【請求項9】
前記敷き均された充填材にトップコートを被覆する
ことを特徴とする請求項1~8何れか記載のコンクリート舗装の補修方法。
【請求項10】
前記ポリウレア樹脂の可使時間は5分以上であり、硬化時間は30分以上である
ことを特徴とする請求項1~9何れか記載のコンクリート舗装の補修方法。
【請求項11】
コンクリート舗装の目地
前後250-1000mmの範囲に、ポリウレア樹脂を主成分とする充填材が
面的に広がりながら充填されている
ことを特徴とするコンクリート舗装構造。
【請求項12】
コンクリート舗装のパンチアウトひび割れ箇所
周辺250-1000mmの範囲に、ポリウレア樹脂を主成分とする充填材が
面的に広がりながら充填されている
ことを特徴とするコンクリート舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート舗装の補修方法および本補修方法により補修されたコンクリート舗装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル内の舗装に、コンクリート舗装が用いられることが多い。これは、アスファルト舗装よりコンクリート舗装の方が視認性がよいこと、トンネル内の工事規制は比較的困難なため、アスファルト舗装よりコンクリート舗装の方が長寿命であり補修サイクル期間が長いこと、などが考えられる。
【0003】
また、高速道路の料金所周辺や交差点も、車両の加減速の影響を考慮して、耐久性に優れたコンクリート舗装が用いられることが多い。
【0004】
ところで、上記のとおりコンクリート舗装は耐久性があるため、予定される補修サイクル期間が長い。また、トンネル内や高速道路の料金所周辺、交差点では工事規制が比較的難しい。したがって、次の大規模補修工事まで、軽微な不具合に対しては、応急的な補修にて対応する。
【0005】
たとえば、コンクリート舗装では経年劣化によりひび割れが発生する。これを放置しておくと、ひび割れ幅が広がり、ひび割れ同士がつながり、コンクリート片が飛散し、さらに劣化が進むとポッドホールと呼ばれる窪みが発生する。ポッドホールは車両の安全走行に支障を来たすおそれもある。さらに、ポッドホールが鉄筋まで達すると、鉄筋が腐食する。したがって、ひび割れが軽微な時点において、応急的な補修をおこなう。
【0006】
具体的には、劣化箇所および劣化箇所周辺の健全箇所をブレーカ等により斫り、コンクリートガラを撤去する。コンクリート撤去により生じる空間に、速硬セメント系補修材を充填する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおりコンクリート舗装自体は耐久性があるが、コンクリート床版同士の接続箇所、すなわち目地周辺に係る課題が発生することが多い。
【0009】
例えば、目地周辺においてひび割れが密集したり、コンクリート角が欠けたり、欠損箇所から水が路盤へ浸透しやすくなる。路盤が大量の水を含んだ状態で、大きな荷重が繰り返し作用すると、ポンピング現象により、路盤の細粒分が流出し、コンクリート舗装下に空洞が生じる。コンクリート舗装は支持力を失い、さらにコンクリート舗装破損の原因となる。
【0010】
したがって、目地周辺においても、劣化を発見次第、できるだけ早く、応急的な補修をおこなう必要がある。
【0011】
しかしながら、目地周辺では、上記従来技術に係る補修方法を直ちに目地周辺に適用できない。例えば、目地には目地材などが設けられており、目地周辺にセメント系充填剤を注入すると、温度収縮緩和や防音等の目地材の機能が損なわれるおそれがある。また、目地周辺は変動が大きく、充填箇所が変動に追従できず、再び割れるおそれもある。
【0012】
特に、斫り作業を伴う従来工法では、破片飛散の危険があり、破片飛散を防止するための作業が負担となっている。特に、工事規制が充分できない場合は、安全を最優先として、破片飛散防止作業を充分に行う必要がある。その結果、サブである破片飛散防止作業がメインである簡易補修作業と同程度の負担となる場合もある。これが応急補修のを妨げる一因となっている。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するものであり、コンクリート舗装の目地周辺において応急的な補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本願発明のコンクリート舗装の補修方法では、コンクリート舗装の目地の周辺範囲を設定し、前記設定した範囲に、ポリウレア樹脂を主成分とする充填材を充填し、敷き均す。
【0015】
これにより、コンクリート舗装の目地周辺において応急的な補修が可能となる。とくに、斫り作業を最小限(可能なら不要)にできる。
【0016】
上記発明において好ましくは、前記設定した範囲にある目地材を撤去し、前記目地材があった空間に前記充填材を充填する。
【0017】
これにより、本願効果が向上する。
【0018】
上記発明において好ましくは、コンクリート舗装の目地の周辺の下部に空洞が存在する場合において、前記空洞に前記充填材を充填する。
【0019】
これにより、本願効果が向上する。また、下部空洞にも対応できる。
【0020】
上記課題を解決する本願発明のコンクリート舗装の補修方法では、コンクリート舗装のパンチアウトひび割れ箇所の範囲を設定し、前記設定した範囲に、ポリウレア樹脂を主成分とする充填材を充填し、敷き均す。
【0021】
本願発明をコンクリート舗装の目地周辺以外、例えば、パンチアウトひび割れ箇所に適用できる。
【0022】
上記発明において好ましくは、前記設定した範囲の周囲に溝を形成する。
【0023】
これにより、補修後の状態が次の大規模補修工事まで維持される。
【0024】
上記発明において好ましくは、前記溝の内側法肩を面取する。
【0025】
これにより、補修後の状態が次の大規模補修工事まで維持される。
【0026】
上記発明において好ましくは、前記充填材を外側法肩天端より2~3mm下まで充填する。
【0027】
これにより、補修後の状態が次の大規模補修工事まで維持される。
【0028】
上記発明において好ましくは、前記充填材はゴムチップを含む。
【0029】
これにより、充填材の嵩高を稼ぐ。適度な剛性と弾性を有する。
【0030】
上記発明において好ましくは、前記敷き均された充填材にトップコートを被覆する。
【0031】
これにより、補修後の状態が次の大規模補修工事まで維持される。
【0032】
上記発明において好ましくは、前記ポリウレア樹脂の可使時間は5分以上であり、硬化時間は30分以上である。より好ましくは、可使時間は10分以上であり、硬化時間は60分以上である。
【0033】
これにより、適切な作業時間を確保できる。また、流動性が高く、充填材が面内で広がる。さらに、充填材がひび割れに浸透する。
【0034】
上記課題を解決する本願発明のコンクリート舗装構造は、コンクリート舗装の目地の周辺範囲に、ポリウレア樹脂を主成分とする充填材が充填されている。
【0035】
本願発明のコンクリート舗装構造では、応急的な補修が可能である。さらに、補修後の状態が次の大規模補修工事まで維持される。
【0036】
上記課題を解決する本願発明のコンクリート舗装構造は、コンクリート舗装のパンチアウトひび割れ箇所の範囲に、ポリウレア樹脂を主成分とする充填材が充填されている。
【0037】
本願発明のコンクリート舗装構造では、応急的な補修が可能である。さらに、補修後の状態が次の大規模補修工事まで維持される。
【発明の効果】
【0038】
本発明の補修方法は、コンクリート舗装の目地周辺において応急的な補修を可能とする。とくに、斫り作業を最小限にできる。
【0039】
また、本発明の補修方法は、コンクリート舗装のパンチアウトひび割れに対する補修にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【発明を実施するための形態】
【0041】
~ポリウレア樹脂概要~
本願出願人は、被覆材としてポリウレアに着目した。ポリウレアは、イソシアネート化合物を含有するA液と、ポリアミン化合物およびポリオール化合物を含有するB液と混合反応させた樹脂化合物であり、優れた防水効果を有することから構造物の被覆材として用いられている。常温(たとえば20℃前後)にて反応し、作業性が高い。ゲルタイム20秒程度であり、一般には構造物にスプレー吹付することにより、被覆層が形成される。
【0042】
本願ポリウレアでは、ポリアミン化合物の種類、ポリオール化合物の種類、硬化触媒や他の添加物の種類や量、溶媒の量を調整し、常温(たとえば20℃前後)にて、可使時間5分以上、硬化時間30分以上、好ましくは、可使時間は10分以上であり、硬化時間は60分以上となるよう調整した。具体的はスプレー吹付用ポリウレアに比べ、ポリオール化合物をポリアミン化合物の15~50%(モル比)の範囲で調整することで、ゲルタイムを調整した。これにより、流動性を高め、下記本願用途に適用可能とした。すなわち、充填材として用いることができる。
【0043】
なお、本願では、可使時間とは、主剤と硬化剤を混合後、反応の進行とともに塗料が硬化してしまったりせず、塗料としての性能を確保している時間をいう。ポットライフと呼ぶこともある。硬化時間とは、次工程に移行できるまでの時間をいい、被覆上を歩行可能であることを目安とする。
【0044】
~補修方法~
図1および
図2は、補修範囲2設定に係る説明図である。
図1は平面図であり、
図2は断面図である。
【0045】
目地周辺においては、ひび割れが密集したり、コンクリート角が欠けたりしやすい。コンクリート舗装の目地1周辺において補修範囲2を設定する。補修範囲は欠損範囲を含むように設定する。たとえば、車両進行方向に対し、目地1の前後500mm程度を補修範囲2と設定する。施工実務の観点から、目地前後250~1000mm程度が好ましい。目地前後350~650mm程度がより好ましい。
【0046】
補修範囲に2おいて、破損目地材や剥離ガラや簡単に撤去できる脆弱層は予め撤去しておく。
【0047】
図3は、溝3形成に係る説明図である。補修範囲2の端部断面の拡大図である。
【0048】
補修範囲2の周囲(例えば10~40mm離れた外周)に沿って、カッター等によりV字またはU字の溝3を形成する。溝の深さは10~40mm程度が好ましい。20~30mm程度がより好ましい。
【0049】
溝3は、内側法肩4と外側法肩5とを有する。さらに、内側法肩4を面取し、滑らかに補修範囲2と連続するようにすることが好ましい。
【0050】
図4は、充填材3充填に係る説明図である。補修範囲2の端部断面の拡大図である。
【0051】
溝3外周に養生テープを貼り、補修範囲2および溝3にプライムコートを塗布する。試験施工では0.15Kg/m2以上塗付した。0.05~0.3Kg/m2程度が好ましい。
【0052】
次いでポリウレア樹脂を主成分とする充填材6を作成する。イソシアネート化合物を含有するA液と、ポリアミン化合物およびポリオール化合物を含有するB液と混合し、さらに1~4mm程度のゴムチップ7を投入し、数十秒~数分混合する。試験施工ではA液:B液:ゴムチップを重量比100:100:60とした。充填材6の可使時間は10分以上であり、硬化時間は60分以上となるよう調整した。
【0053】
補修範囲2および溝3に充填材6を敷設する。補修範囲2には欠損等により皿状の空間が形成されている。当該空間に充填材6を充填し、小手等を用いて、敷き均す。シール状の被覆6が形成される。試験施工では3.0Kg/m2以上充填した。1~5Kg/m2程度が好ましい。
【0054】
さらに、1~4mm程度のゴムチップ7をシール被覆6上に散布する。試験施工では0.5Kg/m2以上充填した。0.25~1Kg/m2程度が好ましい。
【0055】
シール被覆6において、充填材を外側法肩5天端より1~5mm下まで充填することが好ましい。2~3mm下まで充填することがより好ましい。すなわち、シール被覆6が既存舗装と縁が切れているようにする。
【0056】
一方、シール被覆6において内側法肩4より内側では、充填材を既存舗装天端より1~5mm上まで充填することが好ましい。2~3mm上まで充填することがより好ましい。
【0057】
図5は、トップコート8塗布に係る説明図である。
図2(施工前)に対応する断面図(施工後)である。
【0058】
さらに、トップコート8をシール被覆6上に数層塗付する。試験施工では0.3Kg/m2以上充填した。0.1~0.5Kg/m2程度が好ましい。
【0059】
シール被覆6を外側法肩5天端より一段下げた箇所において、トップコート8は外側法肩5天端まで延設されていることが好ましい。すなわち、トップコート8が既存舗装と滑らかに連続している。
【0060】
トップコート8上にさらに滑り止めとして硅砂を散布してもよい。
【0061】
~舗装構造及び効果~
舗装構造における欠損箇所は、ポリウレア樹脂を主成分とする充填材6により充填され、シール被覆6が形成される。
【0062】
ポリウレア樹脂は、抜群の防水性の他に、靱性や延性などにも優れる。その結果、目地周辺は変動に追従できる。また、目地を過度に拘束することなく、目地の機能を損ねることがない。
【0063】
本願ポリウレア樹脂は、流動性が高く、ひび割れに浸透して硬化する。また、本願ポリウレア樹脂は、流動性が高く、面的に広がり、シール被覆6がひび割れや欠損箇所を面的に押える。その結果、劣化箇所周辺を斫る作業が不要である(もしくは最小限である)。斫り作業に伴う破片飛散の危険がなく、破片飛散を防止するための作業も不要となり、施工時間を大幅に短縮できる。
【0064】
セメント系補修材は経年により再劣化し、破片が飛散するおそれがあるのに対し、ポリウレア樹脂は劣化しにくく、破片飛散のおそれもほぼない。万が一、ポリウレア樹脂が劣化し、コンクリート片とともに飛散したとしても、ポリウレア樹脂の柔軟性により、飛散災害を大幅に軽減できる。
【0065】
舗装構造では補修範囲2の周囲に沿って溝3が設けられている。充填材6は溝3にも充填されている。これにより、シール被覆6は補修範囲2を確実に付着する。シール被覆6端部が捲られることを防止する。その結果、側方からの浸水を防止できる。なお、側方からの浸水があると、早期劣化の原因となり得る。
【0066】
シール被覆6の端部は外側法肩5天端より一段下がった位置にある。すなわち、シール被覆6は既存舗装と縁が切れている。これにより、シール被覆6端部が捲られることを確実に防止する。
【0067】
一方、トップコート8端部は既存舗装と滑らかに連続している。これにより、段差がなく車両通行の円滑性を維持できる。
【0068】
溝3の内側法肩4は面取されて滑らかに補修範囲2と連続にしている。その結果、溝切削による鋭角部がシール被覆6に当接することがない。すなわち、当接箇所における応力集中発生によって、シール被覆6の破断が起きにくい。
【0069】
充填材6にゴムチップ7が含まれているため、シール被覆6にもゴムチップ7が含まれている。これによりシール被覆6の嵩高を稼ぐことできるとともに、複合材料の骨材と類似した機能が得られる。また、適度な弾力性が得られる。
【0070】
さらに、シール被覆6上にはゴムチップ7が散布されている。これにより滑り止め効果が得られる。
【0071】
以上の効果をまとめる。上記補修方法によれば、容易に短時間でコンクリート舗装の目地周辺において応急的な補修が可能となる。とくに、斫り作業を最小限にできる。上記舗装構造によれば、補修後の劣化のおそれがほぼなく、次の大規模補修工事まで、良好な車両通行状態を維持できる。
【0072】
~コンクリート構造連結効果~
補修前の目地構造(
図2参照)においては、目地材1を介して図示左右のコンクリート構造体同士の縁が切れている。基本的に、一のコンクリート構造体に作用する力は、他のコンクリート構造体には伝達されない。
【0073】
これに対し、補修後の目地構造(
図5参照)においては、シール被覆6を介して、図示左右のコンクリート構造体同士が一部連結している。一のコンクリート構造体に作用する力の一部は、他のコンクリート構造体に伝達される。一体となることにより外力が分散される。
【0074】
なお、目地材1により、温度収縮吸収等の目地の機能は維持される。
【0075】
この点でも、補修後の劣化要因を軽減でき、次の大規模補修工事まで、良好な車両通行状態を維持できる。
【0076】
~変形例~
本願発明は上記実施形態に限定されず、発明の技術思想の範囲で、種々の変形が可能である。
【0077】
図6は、変形例1に係る補修方法の説明図である。
図5に示す上記実施形態では、既存の目地材1を活用するのに対し、
図6に示す変形例1では、既存の目地材1を撤去し、目地材1があった空間に充填材6を充填する。
【0078】
本願充填材6は流動性が高く、狭い空間にも容易に進入可能である。
【0079】
これにより、左右のコンクリート構造体同士の一体性が増し、外力分散効果が向上する。また、シール被覆6とコンクリート構造体の一体性が増し、更にシール被覆6が飛散しにくくなる。目地材1に比べても防水性がさらに向上する。
【0080】
なお、硬化後の充填材6は適度な剛性と弾性を有する。これにより、目地材1に代わって、目地の機能を維持できる。
【0081】
図7は、変形例2に係る補修方法の説明図である。変形例2は変形例1を更に変形したものである。
【0082】
ところで、目地周辺では不具合が発生しやすい。例えば、目地周辺の欠損箇所から水が路盤へ浸透し、路盤が大量の水を含んだ状態で、大きな荷重が繰り返し作用すると、ポンピング現象により、路盤の細粒分が目地より流出し、コンクリート舗装下部に空洞が生じる。この空洞により、コンクリート舗装は支持力を失い、さらにコンクリート舗装破損の遠因となる。
【0083】
変形例2では、目地材1があった空間を介して、下部空洞に充填材6を充填する。
【0084】
これにより、支持力が回復する。さらに、左右のコンクリート構造体同士の一体性が増し、外力分散効果が向上する。防水性がさらに向上する。
【0085】
なお、一般的な従来技術では、下部空洞にグラウトを注入し、グラウト硬化により支持力を回復するよう補修する。したがって、本願充填材6のような比較的低剛性の充填材では、顕著な補修効果が期待できないと思われていた。
【0086】
変形例2に係る試験施工では充分な支持力回復を確認できた。上記一体性による外力分散効果が低剛性のデメリットを補填している可能性がある。
【0087】
~パンチアウトひび割れ箇所への適用~
上記実施形態では、コンクリート舗装の目地周辺に着目したが、本願補修方法および本願舗装構造は、コンクリート舗装の目地周辺に限定されない。例えば、パンチアウトひび割れ箇所への適用できる。
【0088】
図8は、パンチアウトひび割れ箇所11の例示である。スポット的に亀甲状のひび割れが発生している。これを放置しておくと、ひび割れ幅が広がり、ひび割れ同士がつながり、コンクリート片が飛散し、さらに劣化が進むとポッドホールと呼ばれる窪みが発生する。
【0089】
図9は、本願補修方法および本願舗装構造のパンチアウトひび割れ箇所への適用範囲12の例示である。パンチアウトひび割れ箇所11周縁において補修範囲12を設定する。以下は、上記手順に従って補修する。上記補修方法および上記願舗装構造と同様な効果が得られる。
【符号の説明】
【0090】
1 目地材
2 補修範囲
3 溝
4 内側法肩
5 外側法肩
6 充填材(シール被覆)
7 ゴムチップ
8 トップコート
11 パンチアウトひび割れ箇所
12 補修範囲