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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】レールクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 9/18 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
B66C9/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020047423
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021147144
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 慎一
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-049288(JP,U)
【文献】実開昭60-061283(JP,U)
【文献】実開平04-058586(JP,U)
【文献】特開2013-212882(JP,A)
【文献】米国特許第01568975(US,A)
【文献】特開2018-188266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 9/00-11/26
B66C 17/00-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁クレーンが走行するレールの幅方向に開閉して前記レールの側面を両側から把持可能に構成されるクランプ機構と、前記クランプ機構が搭載された本体と、前記レールの両側面に当接する一対のフランジを有して前記本体に対して回転可能な状態で固定されているガイド車輪と、前記岸壁クレーンに対して前記本体を連結する連結機構とを備えたレールクランプ装置において、
前記連結機構は、前記レールの長手方向に延在して一端部が前記幅方向を回転軸方向として回動可能な状態で前記岸壁クレーンに連結されて他端部が前記幅方向を回転軸方向として回動可能な状態で前記本体に連結されるリンク部を有し、前記長手方向の長さが同一の一対の前記リンク部が上下方向に離間して互いに平行に設けられた構造であることを特徴とするレールクランプ装置。
【請求項2】
上下一対の前記リンク部が前記幅方向に並べて配置されている請求項1に記載のレールクランプ装置。
【請求項3】
前記リンク部が、前記一端部および前記他端部にそれぞれ配置されて前記長手方向および上下方向に延在する板状部材で構成される一対の回動板部と、前記回動板部と異なる面方向を有する板状部材で構成されていて一対の前記回動板部どうしを連結する連結板部と、を備える請求項2に記載のレールクランプ装置。
【請求項4】
前記リンク部は、前記一端部および前記他端部にそれぞれ配置されて前記長手方向および上下方向に延在する板状部材で構成される一対の回動板部が前記幅方向に2組並べて配置されていて、前記長手方向および前記幅方向に延在する板状部材で構成された連結板部により、前記幅方向に並べて配置された2組の前記一対の回動板部どうしが連結された構造である請求項1に記載のレールクランプ装置。
【請求項5】
前記ガイド車輪を1つだけ有している請求項1~4のいずれか1項に記載のレールクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール上を走行する岸壁クレーンの逸走を防止するためのレールクランプ装置に関し、より詳細には、ガイド車輪をレールの上下方向の歪みや段差に追従させることができるレールクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
岸壁に敷設されたレール上を走行するコンテナクレーンやアンローダなどの岸壁クレーンには、突風や暴風等による逸走を防止するためのレールクランプ装置が装備されている(例えば、特許文献1参照)。レールクランプ装置の本体は岸壁クレーンのシルビームから下方に突設された支柱や岸壁クレーンの走行装置に連結される。レールクランプ装置の本体には、レール幅方向に開閉してレールの側面を両側から把持可能に構成されるクランプ機構が搭載されている。レールクランプ装置には、さらに、レールに対する本体のレール幅方向の位置ずれを抑制するガイド車輪が設けられている。
【0003】
岸壁クレーンの走行時には、レールクランプ装置は、クランプ機構を構成する一対のクランプ部をレール幅方向に開いて、それぞれのクランプ部をレールの頭部の側方の近くに離間させた状態で、岸壁クレーンとともにレール上を走行する。この際、レール上を転動するガイド車輪によってレールクランプ装置の本体をレールに沿ってガイドして、レールに対する本体のレール幅方向の位置ずれを抑制することで、岸壁クレーンの走行時においてクランプ機構のクランプ部がレールに接触することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-203429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地盤沈下や地盤の変形などによって地面に歪みが生じると、その影響を受けてレールに上下方向やレール幅方向に歪みが生じることがある。特許文献1に記載されているレールクランプ装置のように、従来では、岸壁クレーンの支柱に対してレールクランプ装置の本体が一定の位置に固定されていた。そのため、レールに上下方向の歪みやレールどうしの継ぎ目の段差がある場合に、レールクランプ装置の本体とレールとの上下方向の離間距離が変化すると、ガイド車輪がレールの上下方向の歪みや段差に追従せずに、ガイド車輪がレールから浮き上がることや、ガイド車輪がレールに過剰に押し付けられることがあった。
【0006】
レールクランプ装置の本体とレールとの上下方向の離間距離が遠くなり、ガイド車輪がレールから浮き上がってしまうと、ガイド車輪によるレールに対する本体のレール幅方向の拘束が解除されてしまう。そのため、レールに幅方向の歪みがある場合に、レールクランプ装置の本体とレールとがレール幅方向に位置ずれするおそれがあった。ガイド車輪がレールから浮き上がり、レールクランプ装置の本体とレールとがレール幅方向に位置ずれした状態から、レールクランプ装置の本体とレールとの上下方向の離間距離が近づくと、クランプ機構のクランプ部がレールに接触し、クランプ機構やレールが損傷するおそれがあった。また、レールクランプ装置の本体とレールとの上下方向の離間距離が近くなり、ガイド車輪がレールに過剰に押し付けられた状態になると、レールクランプ装置や岸壁クレーンに大きな負荷が掛かるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガイド車輪をレールの上下方向の歪みや段差に追従させることができるレールクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するための本発明のレールクランプ装置は、岸壁クレーンが走行するレールの幅方向に開閉して前記レールの側面を両側から把持可能に構成されるクランプ機構と、前記クランプ機構が搭載された本体と、前記レールの両側面に当接する一対のフランジを有して前記本体に対して回転可能な状態で固定されているガイド車輪と、前記岸壁クレーンに対して前記本体を連結する連結機構とを備えたレールクランプ装置において、前記連結機構は、前記レールの長手方向に延在して一端部が前記幅方向を回転軸方向として回動可能な状態で前記岸壁クレーンに連結されて他端部が前記幅方向を回転軸方向として回動可能な状態で前記本体に連結されるリンク部を有し、前記長手方向の長さが同一の一対の前記リンク部が上下方向に離間して互いに平行に設けられた構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連結機構により、岸壁クレーンに対してレールクランプ装置の本体が上下方向に相対移動可能な構造で連結されているので、ガイド車輪をレールの上下方向の歪みや段差に追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態のレールクランプ装置を側面視で模式的に例示する説明図である。
図2】本発明に係る別の実施形態のレールクランプ装置を側面視で示す説明図である。
図3図2のA矢視図である。
図4図2のB-B断面矢視図である。
図5】本発明に係るさらに別の実施形態のレールクランプ装置を平面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のレールクランプ装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図中のX方向は岸壁に敷設されているレールRの長手方向Xを示し、Y方向は長手方向Xに直交するレールRの幅方向Yを示し、Z方向は上下方向Zを示している。なお、以下の説明では、図1および図2における紙面左側を長手方向Xの一方側、紙面右側を長手方向Xの他方側とする。また、図1および図2における紙面手前側(図3~5における右側)を幅方向Yの一方側、紙面奥側(図3~5における左側)を幅方向Yの他方側とする。
【0013】
本発明に係る実施形態のレールクランプ装置10について、図1を参照しながら説明する。レールクランプ装置10は、岸壁に敷設されたレールR上を走行する岸壁クレーン1に装備される。レールクランプ装置10は、突風や暴風等による岸壁クレーン1の逸走を防止する装置である。岸壁クレーン1は、接岸した船舶に対する荷役作業を行うクレーンであり、コンテナクレーンやアンローダなどが例示できる。
【0014】
岸壁クレーン1は、上下方向Zに延在する複数の脚体2を有しており、長手方向Xに離間している脚体2の下部どうしは長手方向Xに延在する桁であるシルビーム4によって連結されている。シルビーム4の下部には、レールR上を走行する複数の走行装置3が設けられている。それぞれの脚体2の下方に走行装置3が配置されている。
【0015】
長手方向Xに離間して配置されている走行装置3どうしの間には、岸壁クレーン1に対してレールクランプ装置10を連結するための支柱5(シルビームコラムともいう)が設けられている。支柱5はシルビーム4からレールRに向かって下方に突設されている。支柱5の上端部はシルビーム4の下端部に接合されており、支柱5の下端部はレールRの直上に位置している。
【0016】
図1では、幅方向Yの一方側の脚体2、走行装置3、シルビーム4、支柱5、およびレールクランプ装置10を図示しているが、幅方向Yの他方側にも同様に、脚体2、走行装置3、シルビーム4、支柱5、およびレールクランプ装置10が設けられている。岸壁クレーン1は、幅方向Yの一方側と他方側にそれぞれ設けられている走行装置3により、幅方向Yに離間して略平行に敷設された2本のレールR上を走行する。なお、レールクランプ装置10は、幅方向Yの一方側と他方側にそれぞれ設けることが好ましいが、幅方向Yの一方側または他方側の片側だけに設けることもできる。
【0017】
図1に例示するように、レールクランプ装置10は、クランプ機構11と、クランプ機構11が搭載された本体12と、本体12に対して回転可能な状態で固定されているガイド車輪13と、岸壁クレーン1に対して本体12を連結する連結機構15とを備えている。この実施形態では、レールクランプ装置10を支柱5の長手方向Xの他方側に連結しているが、レールクランプ装置10は支柱5の長手方向Xの一方側に連結することもできる。また、レールクランプ装置10は走行装置3に連結することもできる。
【0018】
クランプ機構11は、幅方向Yに開閉してレールRの側面を両側から把持可能な構成になっている。クランプ機構11は、幅方向Yに開閉可能な一対のクランプ部を有している。岸壁クレーン1を走行させるときには、クランプ機構11の一対のクランプ部を幅方向Yに互いに離れる向きに開いて、それぞれのクランプ部をレールRの頭部の側方(幅方向Yの一方側と他方側)の近くに離間させた状態にする。
【0019】
突風や暴風等による岸壁クレーン1の逸走を防止するときには、クランプ機構11の一対のクランプ部を幅方向Yに互いに近づく向きに閉じて、レールRの頭部の側面を一対のクランプ部によって両側から挟み込んだ状態にすることで、クランプ機構11によりレールクランプ装置10を介して岸壁クレーン1をレールRに対して係止した状態にする。
【0020】
本体12は、内部に空洞を有する箱型のケーシングであり、クランプ機構11を搭載できる構造になっている。本体12は支柱5の下部から長手方向Xに離間した位置に配置され、本体12の下端面はレールRの直上に位置している。本体12に対してクランプ機構11は作動可能な状態で固定されている。本体12の下端面には上下方向Zに貫通する開口部が設けられていて、その開口部からクランプ機構11の一対のクランプ部の下部が下方に突出した構造になっている。この実施形態では、外形が直方体形状の本体12を例示しているが、クランプ機構11を搭載、保持でき、かつ、クランプ機構11の作動の妨げとならない限りは、本体12の形状、構造はこの実施形態に限定されない。
【0021】
ガイド車輪13は、本体12のレールRに対する幅方向Yの位置ずれを抑制するガイド機能を有する非駆動輪である。ガイド車輪13はレールR上に配置される。ガイド車輪13は、レールRの上面に当接する踏面と、レールRの両側面に当接する一対のフランジとを有している。ガイド車輪13は、本体12に対する幅方向Yへの相対移動が規制された構造で本体12に対して回転可能に固定されている。この実施形態のレールクランプ装置10は、ガイド車輪13を1つだけ有している。
【0022】
連結機構15は、岸壁クレーン1に対してレールクランプ装置10の本体12を上下方向Zに相対移動可能に連結するリンク部16を有している。リンク部16は長手方向Xに延在しており、リンク部16の長手方向Xの一端部は幅方向Yを回転軸方向として回動可能な状態で岸壁クレーン1に連結される。リンク部16の長手方向Xの他端部は、幅方向Yを回転軸方向として回動可能な状態で本体12に連結される。この実施形態では、リンク部16の長手方向Xの一端部が回転軸17を介して岸壁クレーン1の支柱5に連結され、リンク部16の長手方向Xの他端部が回転軸17を介して本体12に連結されている。連結機構15は、長手方向Xの長さが同一の一対のリンク部16が上下方向Zに離間して互いに平行に設けられた構造になっている。
【0023】
連結機構15は、上下一対のリンク部16の長手方向Xの一端部側の回転軸17の軸中心どうしを結ぶ仮想線V1と、上下一対のリンク部16の長手方向Xの他端部側の回転軸17の軸中心どうしを結ぶ仮想線V2とが、互いに平行に延在するように配置する。図1では、前述した仮想線V1、V2をそれぞれ一点鎖線で示している。図1に例示するように、仮想線V1および仮想線V2が、X-Z平面上において岸壁クレーン1の走行方向に対して、好ましくは略垂直方向、より好ましくは垂直方向に延在するように配置するとよい。連結機構15を構成する各部材は例えば、鉄鋼やアルミ合金などの金属で形成される。
【0024】
レールクランプ装置10は、岸壁クレーン1の走行時には、ガイド車輪13がレールRに乗った状態で岸壁クレーン1とともにレールR上を走行する。レールクランプ装置10の荷重はガイド車輪13に支持された状態になる。レールRは長手方向Xの10mにつき幅方向Yに数mm程度歪んでいる場合があるが、レールRに沿って転動するガイド車輪13により、本体12がレールRに沿ってガイドされる。そのため、レールRに幅方向Yの歪みがある場合にも、ガイド車輪13のガイド機能により、本体12がレールRの幅方向Yの歪みに追従して移動し、レールRと本体12との幅方向Yの位置ずれが抑制される。これにより、岸壁クレーン1の走行時に、本体12に搭載されているクランプ機構11のクランプ部とレールRとが接触することが防がれる。
【0025】
このレールクランプ装置10では、岸壁クレーン1(支柱5)に連結されているリンク部16の長手方向Xの一端部側の回転軸17と、本体12に連結されているリンク部16の長手方向Xの他端部側の回転軸17とを回転中心にして、上下一対のリンク部16が上下方向Zに傾動することで、岸壁クレーン1(支柱5)に対して本体12が上下方向Zに相対移動可能な構造になっている。そのため、レールRに上下方向Zの歪みや段差がある場合にも、ガイド車輪13および本体12が自重によりレールRの上下方向Zの歪みや段差に追従して自然に上下移動する。
【0026】
この際、仮想線V1と仮想線V2は平行に維持された状態となる。そして、上下一対のリンク部16が互いに平行な状態を維持して、支柱5および本体12に対して上下方向Zに同じ角度で傾動することで、岸壁クレーン1(支柱5)に対して本体12が平行に保たれた状態で、岸壁クレーン1(支柱5)に対して本体12が上下方向Zに相対移動する。岸壁クレーン1(支柱5)に対して本体12が平行に保たれた状態とは、言い換えると、レールクランプ装置10が岸壁クレーン1(支柱5)に対して幅方向Yを回転軸方向とした回転をしない状態である。つまり、図1に例示するように、幅方向Yから見たときに、岸壁クレーン1が水平な状態の場合には本体12も水平な状態で上下方向Zに相対移動し、岸壁クレーン1が水平に対してある角度傾いている状態の場合には本体12も水平に対して岸壁クレーン1と同じ角度傾いた状態で上下方向Zに相対移動する。
【0027】
このように、本発明の実施形態のレールクランプ装置10によれば、連結機構15により、岸壁クレーン1に対してレールクランプ装置10の本体12が上下方向Zに相対移動可能な状態で連結されているので、ガイド車輪13をレールRの上下方向Zの歪みや段差に追従させることができる。
【0028】
これにより、ガイド車輪13がレールRから浮いた状態になることで起こり得る本体12とレールRとの幅方向Yの位置ずれを抑制するには有利になり、岸壁クレーン1の走行時に、クランプ機構11のクランプ部がレールRに接触するリスクを低くできる。また、ガイド車輪13がレールRに過剰に押し付けられることも防げるので、レールクランプ装置10や岸壁クレーン1に大きな負荷が掛かることも回避できる。
【0029】
さらに、連結機構15が、長手方向Xの長さが同一の一対のリンク部16が上下方向Zに離間して互いに平行に設けられた構造であることで、岸壁クレーン1に対してレールクランプ装置10の本体12が平行に保たれた状態で、岸壁クレーン1に対して本体12が上下方向Zに相対移動する。そのため、レールクランプ装置10がレールRの上下方向Zの歪みや段差がある部分を走行するときにも、岸壁クレーン1に対してレールクランプ装置10の本体12が相対的に前傾や後傾に傾かずに、本体12を岸壁クレーン1に対して平行な一定の安定した姿勢で走行させることができる。それ故、岸壁クレーン1の走行時に、レールクランプ装置10の本体12がレールRの上面等に接触するリスクを低くできる。
【0030】
さらに、岸壁クレーン1がレールクランプ装置10を牽引または押して走行する際には、連結機構15に長手方向Xの引張応力や圧縮応力が掛かるが、連結機構15が長手方向Xに延在するリンク部16で構成されていることで、走行に伴う引張応力や圧縮応力に対して強い構造となっている。また、連結機構15が複数のリンク部16を有していることで、走行に伴う引張応力や圧縮応力が複数のリンク部16に分散され、それぞれのリンク部16に掛かった応力は回転軸17を介して岸壁クレーン1や本体12にも分散される。そのため、応力集中が起こり難く、連結機構15が破損するリスクも低い。
【0031】
例えば、レールクランプ装置10が複数のガイド車輪13を有する構成にすることもできるが、その場合には、レールRの上下方向Zの歪みや段差が大きい場合に、1つのガイド車輪13は確実にレールRに乗った状態になるが、他のガイド車輪13がレールRから浮いた状態になる場合がある。レールRから浮いた状態のガイド車輪13が生じると、その浮いた状態のガイド車輪13が引き金となって、岸壁クレーン1の走行時に、レールRに対してレールクランプ装置10の本体12が幅方向Yにずれる可能性がある。
【0032】
一方、この実施形態のように、レールクランプ装置10がガイド車輪13を1つだけ有する構成にすると、レールRから浮いた状態になるガイド車輪13が生じない。そのため、複数のガイド車輪13を有する場合よりも、岸壁クレーン1の走行時に、クランプ機構11がレールRに接触するリスクを低くするには有利になる。このレールクランプ装置10では、連結機構15により、本体12が岸壁クレーン1に対して平行な状態が維持されるので、本体12に設けられるガイド車輪13が1つであっても、本体12は安定した姿勢でレールR上を走行できる。
【0033】
次に、本発明に係る別の実施形態のレールクランプ装置10について、図2図4を参照しながら説明する。
【0034】
図2図4に例示するように、この実施形態のレールクランプ装置10では、上下一対のリンク部16が幅方向Yに並べて2組配置されている。即ち、この連結機構15は、長手方向Xの長さが同一のリンク部16が4つ設けられた構造になっている。さらに、この実施形態では、支柱5の下部にリンク部16の長手方向Xの一端部が連結される張出部20が設けられていて、本体12にリンク部16の長手方向Xの他端部が連結される張出部21が設けられている。
【0035】
支柱5側の張出部20は、本体12に対向する支柱5の端面に接合される接合部20aと、その接合部20aから本体12に向かって長手方向Xおよび上下方向Zに延在する板状部20bと、を有して構成されている。ガイド車輪13の幅方向Yの一方側と他方側にそれぞれ板状部20bが設けられている。
【0036】
本体12側の張出部21は、支柱5に対向する本体12の端面に接合される接合部21aと、その接合部21aから支柱5に向かって長手方向Xおよび上下方向Zに延在する板状部21bと、を有して構成されている。ガイド車輪13の幅方向Yの一方側と他方側にそれぞれ板状部21bが設けられている。支柱5側の一対の板状部20bと本体12側の一対の板状部21bは、幅方向Yに関して同じ位置に配置されている。支柱5および張出部20(接合部20a)と、本体12および張出部21(接合部21a)は、例えば、溶接や接着剤、固定金具などで接合される。
【0037】
この実施形態では、本体12側の張出部21の一対の板状部21bどうしの間に1つのガイド車輪13が設けられている。ガイド車輪13の回転軸中心には、幅方向Yに延在する車軸14が挿通可能なベアリングが設けられていて、車軸14に対してガイド車輪13が回転可能な構造になっている。車軸14の幅方向Yの一端部は幅方向Yの一方側の板状部21bに固定され、車軸14の幅方向Yの他端部は幅方向Yの他方側の板状部21bに固定されている。ガイド車輪13は、車軸14に対して幅方向Yに相対移動しない構造になっている。
【0038】
この実施形態では、それぞれのリンク部16の長手方向Xの一端部が支柱5側の板状部20bに幅方向Yを回転軸方向として回動可能に連結されて、それぞれのリンク部16の長手方向Xの他端部が本体12側の板状部21bに幅方向Yを回転軸方向として回動可能に連結されている。幅方向Yの一方側に位置する上下一対のリンク部16と、幅方向Yの他方側に位置する上下一対のリンク部16は、長手方向Xおよび上下方向Zにおいて同じ位置に配置されている。
【0039】
より詳しくは、この実施形態のリンク部16は、長手方向Xの一端部および他端部にそれぞれ配置された一対の回動板部18と、一対の回動板部18どうしを連結する連結板部19とを有して構成されている。それぞれの回動板部18は、長手方向Xおよび上下方向Zに延在する2枚の板状部材で構成されている。連結板部19は、回動板部18と異なる面方向を有する板状部材で構成されている。
【0040】
板状部20b(21b)を挟み込むように、板状部20b(21b)の幅方向Yの一方側と他方側に回動板部18を構成する2枚の板状部材が配置され、その2枚の板状部材と板状部20b(21b)とが幅方向Yを軸方向とする回転軸17で連結されている。それぞれの回動板部18の長手方向Xの端部には溝部が形成されていて、その溝部に連結板部19の長手方向Xの端部が嵌め込まれた状態で、回動板部18と連結板部19とが接合されている。この実施形態では、幅方向Yの一方側の一対の回動板部18どうしを連結する連結板部19と、幅方向Yの他方側の一対の回動板部18どうしを連結する連結板部19は、それぞれ別々の連結板部19で構成されている。
【0041】
この実施形態のように、上下一対のリンク部16が幅方向Yに並べて配置されている構成にすると、上下一対のリンク部16を1組だけ設ける場合よりも、岸壁クレーン1(支柱5)に対する本体12の、走行方向Xを回転軸方向とする回転や、上下方向Zを回転軸方向とする回転を抑制するには有利になる。即ち、岸壁クレーン1に対して本体12が幅方向Yにより傾き難くなる。それ故、岸壁クレーン1の走行時に、クランプ機構11のクランプ部がレールRに接触するリスクを低くするには有利になる。また、上下一対のリンク部16を1組だけ設ける場合よりも、走行に伴う引張応力や圧縮応力をより多くのリンク部16に分散させることができ、応力集中がより起こり難くなる。それ故、連結機構15が破損するリスクを低くするにはより有利になる。
【0042】
リンク部16は、例えば、長手方向Xおよび上下方向Zに延在する1枚の板状部材で構成することもできる。しかし、この実施形態のように、リンク部16を、一対の回動板部18と、一対の回動板部18と異なる面方向を有する連結板部19とを組み合わせた構造にすると、リンク部16を1枚の板状部材で構成する場合よりも、リンク部16のねじりに対する剛性を高くするには有利になる。特に、この実施形態のように、一対の回動板部18を構成する長手方向Xおよび上下方向Zに延在する板状部材の面方向に対して、連結板部19を構成する板状部材の面方向が直交している構造にすると、リンク部16に掛かるねじり応力が回転板部18と連結板部19との間でバランスよく分散されるので応力集中がより起こり難くなり、リンク部16のねじりに対する剛性を高めるにはより有利になる。
【0043】
次に、本発明に係るさらに別の実施形態のレールクランプ装置10について、図5を参照しながら説明する。この実施形態のレールクランプ装置10は、図2~4に例示した実施形態の幅方向Yの一方側の連結板部19と幅方向Yの他方側の連結板部19とを、1枚の連続した連結板部19に置き換えた構造になっている。
【0044】
この実施形態では、連結板部19が長手方向Xおよび幅方向Yに延在して、幅方向Yに並べて配置されたリンク部16どうしを連結する板状部材で構成されている。連結板部19は、レールRを跨ぐように幅方向Yに延在し、連結板部19の長手方向Xの一端部が、幅方向Yの一方側と他方側に配置されている両方の回動板部18に連結されていて、連結板19の長手方向Xの他端部が、幅方向Yの一方側と他方側の両方の回動板部18に連結されている。連結板部19は、ガイド車輪13よりも支柱5側に配置されている。
【0045】
この実施形態のように、連結板部19を幅方向Yに並べて配置されたリンク部16どうしを連結する板状部材で構成すると、幅方向Yの一方側と他方側に配置されている左右一対のリンク部16が連結板部19で連結されて一体化した構造になるので、岸壁クレーン1(支柱5)に対する本体12の、走行方向Xを回転軸方向とする回転や、上下方向Zを回転軸方向とする回転を抑制するにはより有利になる。それ故、岸壁クレーン1の走行時に、クランプ機構11のクランプ部がレールRに接触するリスクを低くするにはより有利になる。
【0046】
なお、連結機構15は、一端部が幅方向Yを回転軸方向として回動可能な状態で岸壁クレーン1に連結されて他端部が幅方向Yを回転軸方向として回動可能な状態で本体12に連結されるリンク部16を有し、長手方向Xの長さが同一の一対のリンク部16が上下方向Zに離間して互いに平行に設けられた構造であれば、上記で例示した実施形態の構成に限定されず、その他にも様々な構成にすることができる。例えば、X-Z平面上において、上下一対のリンク部16を、仮想線V1および仮想線V2が、岸壁クレーン1の走行方向に対する垂直方向に対して傾いた方向に延在するように配置してもよい。また、例えば、上下一対のリンク部16が幅方向Yに並べて3組以上配置されている構成にすることもできる。
【0047】
ガイド車輪13は、本体12に対して回転可能な状態で固定されていれば、本体12に対するガイド車輪13の配置や、本体12に対するガイド車輪13の連結構造などは、上記で例示した実施形態に限定されず、異なる構成にすることもできる。例えば、図2~4に例示した実施形態において、ガイド車輪13が本体12を構成する箱型のケーシングに固定された構成にすることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 岸壁クレーン
2 脚体
3 走行装置
4 シルビーム
5 支柱
10 レールクランプ装置
11 クランプ機構
12 本体
13 ガイド車輪
14 車軸
15 連結機構
16 リンク部
17 回転軸
18 回動板部
19 連結板部
20 (支柱側の)張出部
20a 接合部
20b 板状部
21 (本体側の)張出部
21a 接合部
21b 板状部
R レール
V1、V2 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5