(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】細菌検出方法及び細菌検出装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20230411BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12M1/34 B
C12M1/34 D
(21)【出願番号】P 2018092706
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2018021886
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500479164
【氏名又は名称】株式会社シバサキ
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 岳史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優嘉
(72)【発明者】
【氏名】坂井 徳浩
(72)【発明者】
【氏名】今井 正
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佳織
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115768(WO,A1)
【文献】特開2013-108855(JP,A)
【文献】特開2006-081427(JP,A)
【文献】特開2008-187935(JP,A)
【文献】国際公開第2008/013260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光標識が結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルターがその上面を上にして定置され
る検出チップと
、
前記検出チップの前記メンブレンフィルターの上面に所定の波長の励起光を照射する光照射部と、
前記励起光が照射されている前記メンブレンフィルターの上面
を撮像する撮像部と、
前記光照射部および前記撮像部を制御するとともに、前記撮像部が撮像した画像中の発光点
の数をカウントする制御部と、
を備え
ている細菌検出装置を用いた細菌検出方法であって、
第1のメンブレンフィルターと第2のメンブレンフィルターによりそれぞれ同一の被検体液を濾過して細菌を捕捉させる第1工程と、
前記第1のメンブレンフィルター上の細菌に生菌および死菌に結合可能であって前記所定の波長の励起光により励起可能な第1の蛍光標識を結合させる第2工程と、
前記第2のメンブレンフィルター上の細菌に生菌または死菌に結合可能であって前記所定の波長の励起光により励起可能な第2の蛍光標識を結合させる第3工程と、
前記光照射部により、前記第1のメンブレンフィルターに対して前記所定の波長の励起光を照射して、前記撮像部により撮像する第4工程と、
前記光照射部により、前記第2のメンブレンフィルターに対して前記所定の波長の励起光を照射して、前記撮像部により撮像する第5工程と、
前記制御部により、前記第4工程で撮像した前記第1のメンブレンフィルターの画像中の発光点の数をカウントする第6工程と、
前記制御部により、前記第5工程で撮像した前記第2のメンブレンフィルターの画像中の発光点の数をカウントする第7工程と、
前記制御部により、前記第6工程のカウント数から前記第7工程のカウント数を差し引くことで、死菌数または生菌数を算出する第8工程と、
を有し、
前記所定の波長の励起光は前記第1の蛍光標識と前記第2の蛍光標識を、前記撮像部が発光点として撮像可能な蛍光強度以上に励起可能な同一波長の励起光であることを特徴とする細菌検出
方法。
【請求項2】
前記光照射部は、前記同一波長の励起光を照射可能な半導体レーザーであることを特徴とする請求項1に記載の細菌検出方法。
【請求項3】
前記撮像部は、前記メンブレンフィルターの上面を撮像可能なモノクロカメラであることを特徴とする請求項1又は2に記載の細菌検出方法。
【請求項4】
蛍光標識が結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルターがその上面を上にして定置され
る検出チップと
、
前記検出チップの前記メンブレンフィルターの上面に所定の波長の励起光を照射する光照射部と、
前記励起光が照射されている前記メンブレンフィルターの上面
を撮像する撮像部と、
前記光照射部および前記撮像部を制御するとともに、前記撮像部が撮像した画像中の発光点
の数をカウントする制御部と、
を備え、
前記光照射部は、生菌および死菌に結合可能な第1の蛍光標識
が結合された細菌が捕捉されている
第1のメンブレンフィルター
と、生菌または死菌に結合可能な第2の蛍光標識が結合された細菌が捕捉されている第2のメンブレンフィルターとに対して、前記2つの蛍光標識を
、前記撮像部が発光点として撮像可能な蛍光強度以上に励起可能な同一波長の励起光を照射するように構成されており、
前記制御部は、
前記撮像部が撮像した前記第1のメンブレンフィルター上
面の画像中の第1発光点の数と、
前記撮像部が撮像した前記第2のメンブレンフィルター上
面の画像中の第2発光点の数を別々にカウントする処理を実行
し、前記第1発光点のカウント値から前記第2発光点のカウント値を差し引くことで、死菌または生菌の数を算出することを特徴とする細菌検出装置。
【請求項5】
前記光照射部は、
前記同一波長の励起光を照射可能な半導体レーザーを備えていることを特徴とする請求項
4記載の細菌検出装置。
【請求項6】
前記撮像部は、
前記メンブレンフィルターの上面を撮像可能なモノクロカメラを備えていることを特徴とする請求項
4又は5に記載の細菌検出装置。
【請求項7】
前記検出チップには、前記メンブレンフィルターがその上面を上にして定置される凹部が設けられており、
前記検出チップが
所定位置に載置された
状態で、前記凹部を挟んで前記光照射部の反対側となる前記検出チップの上面の所定部位には、前記光照射部が照射した光が前記凹部側に反射するのを低減する遮光板部が設けられていることを特徴とする請求項
4~6のいずれか一項に記載の細菌検出装置。
【請求項8】
前記検出チップの少なくとも前記遮光板部は暗色系の色に着色されていることを特徴とする請求項7に記載の細菌検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌に結合させた蛍光標識を発光させ、その蛍光を観察することによって細菌を検出する細菌検出方法及び細菌検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メンブレンフィルターで濾過して捕捉した細菌をATP発光させ、その発光点を計数するようにして細菌数を測定する細菌検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、蛍光試薬で染色した細菌に所定の波長域の励起光を照射して、細菌に結合させた蛍光標識を発光させて細菌を検出するようにした細菌検出装置も使われている。
この蛍光観察によって細菌を検出する細菌検出装置の改良を本発明者らが鋭意検討した結果、従来の装置よりも好適に細菌を検出可能な細菌検出装置及び細菌検出方法を開発するに至った。
【0005】
本発明の目的は、細菌を好適に検出できる細菌検出方法及び細菌検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本出願に係る一の発明である細菌検出方法は、
蛍光標識が結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルターがその上面を上にして定置される検出チップと、
前記検出チップの前記メンブレンフィルターの上面に所定の波長の励起光を照射する光照射部と、
前記励起光が照射されている前記メンブレンフィルターの上面を撮像する撮像部と、
前記光照射部および前記撮像部を制御するとともに、前記撮像部が撮像した画像中の発光点の数をカウントする制御部と、
を備えている細菌検出装置を用いた細菌検出方法であって、
第1のメンブレンフィルターと第2のメンブレンフィルターによりそれぞれ同一の被検体液を濾過して細菌を捕捉させる第1工程と、
前記第1のメンブレンフィルター上の細菌に生菌および死菌に結合可能であって前記所定の波長の励起光により励起可能な第1の蛍光標識を結合させる第2工程と、
前記第2のメンブレンフィルター上の細菌に生菌または死菌に結合可能であって前記所定の波長の励起光により励起可能な第2の蛍光標識を結合させる第3工程と、
前記光照射部により、前記第1のメンブレンフィルターに対して前記所定の波長の励起光を照射して、前記撮像部により撮像する第4工程と、
前記光照射部により、前記第2のメンブレンフィルターに対して前記所定の波長の励起光を照射して、前記撮像部により撮像する第5工程と、
前記制御部により、前記第4工程で撮像した前記第1のメンブレンフィルターの画像中の発光点の数をカウントする第6工程と、
前記制御部により、前記第5工程で撮像した前記第2のメンブレンフィルターの画像中の発光点の数をカウントする第7工程と、
前記制御部により、前記第6工程のカウント数から前記第7工程のカウント数を差し引くことで、死菌数または生菌数を算出する第8工程と、
を有し、
前記所定の波長の励起光は、前記第1の蛍光標識と前記第2の蛍光標識を、前記撮像部が発光点として撮像可能な蛍光強度以上に励起可能な同一波長の励起光であるようにした。
【0007】
かかる構成の細菌検出方法によれば、検出チップに定置されているメンブレンフィルターに蛍光標識が結合された細菌が捕捉されていれば、撮像部が撮像した画像中の発光点に基づき、メンブレンフィルターの上面に捕捉されている細菌を好適に検出でき、死菌または生菌の数を算出することができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記光照射部は、前記同一波長の励起光を照射可能な半導体レーザーであるようにする。
【0009】
また、望ましくは、
前記撮像部は、前記メンブレンフィルターの上面を撮像可能なモノクロカメラであるようにする。
【0010】
上記目的を達成するため、本出願に係る他の発明である細菌検出装置は、
蛍光標識が結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルターがその上面を上にして定置される検出チップと、
前記検出チップの前記メンブレンフィルターの上面に所定の波長の励起光を照射する光照射部と、
前記励起光が照射されている前記メンブレンフィルターの上面を撮像する撮像部と、
前記光照射部および前記撮像部を制御するとともに、前記撮像部が撮像した画像中の発光点の数をカウントする制御部と、
を備え、
前記光照射部は、生菌および死菌に結合可能な第1の蛍光標識が結合された細菌が捕捉されている第1のメンブレンフィルターと、生菌または死菌に結合可能な第2の蛍光標識が結合された細菌が捕捉されている第2のメンブレンフィルターとに対して、前記2つの蛍光標識を、前記撮像部が発光点として撮像可能な蛍光強度以上に励起可能な同一波長の励起光を照射するように構成されており、
前記制御部は、前記撮像部が撮像した前記第1のメンブレンフィルター上面の画像中の第1発光点の数と、前記撮像部が撮像した前記第2のメンブレンフィルター上面の画像中の第2発光点の数を別々にカウントする処理を実行し、前記第1発光点のカウント値から前記第2発光点のカウント値を差し引くことで、死菌または生菌の数を算出するようにした。
【0011】
かかる構成の細菌検出装置によれば、光照射部からの励起光が照射されたメンブレンフィルターの上面を撮像部によって撮像することができる。
検出チップに定置されているメンブレンフィルターに蛍光標識が結合された細菌が捕捉されていれば、その細菌を発光点として撮像部によって撮像できる。
そして、撮像部が撮像した画像中の発光点をカウントするように細菌の数を計数するなどして、死菌または生菌の数を算出することができる。
【0014】
また、望ましくは、
前記光照射部は、前記同一波長の励起光を照射可能な半導体レーザーを備えているようにする。
【0015】
こうすることで、所定の波長の励起光を照射することができる。
【0016】
また、望ましくは、
前記撮像部は、前記メンブレンフィルターの上面を撮像可能なモノクロカメラを備えているようにする。
【0017】
モノクロカメラ(撮像部)で細菌の発光点を撮像した場合、生菌と死菌の両方に結合可能な蛍光標識の蛍光と、生菌と死菌のいずれか一方に結合可能な蛍光標識の蛍光をそれぞれ好適に捉えることができる。
【0018】
また、望ましくは、
前記検出チップには、前記メンブレンフィルターがその上面を上にして定置される凹部が設けられており、
前記検出チップが所定位置に載置された状態で、前記凹部を挟んで前記光照射部の反対側となる前記検出チップの上面の所定部位には、前記光照射部が照射した光が前記凹部側に反射するのを低減する遮光板部が設けられているようにする。
【0019】
検出チップの上面に設けられている遮光板部は、光照射部が照射した光が凹部側に反射するのを低減する機能を有しているので、その遮光板部によって撮像部による撮像範囲に反射光が入らないようにする迷光対策を行うことによって、凹部に定置されたメンブレンフィルターの上面の撮像を良好に行うことができ、細菌を検出する測定をより正確に行うことが可能になる。
【0020】
また、望ましくは、
前記検出チップの少なくとも前記遮光板部は暗色系の色に着色されているようにする。
【0021】
暗色系の色に着色され、蛍光を出さないようにされた遮光板部であれば、遮光板部に当たった光を吸収するようにして、光の反射を低減する迷光対策を好適に行うことができる。
なお、検出チップ全体が暗色系の色に着色されていれば、遮光板部以外の箇所での光の反射も低減でき、より一層の迷光対策を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、細菌を好適に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態の細菌検出装置に取り付けて使用する検出チップを示す分解斜視図(a)と、斜視図(b)と、平面図(c)である。
【
図2】本実施形態の細菌検出装置を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態の細菌検出装置を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態の細菌検出装置のステージ部分を拡大して示す斜視図である。
【
図5】本実施形態の細菌検出装置の撮像部を示す側面図である。
【
図6】検出チップの変形例を示す分解斜視図(a)と、斜視図(b)である。
【
図7】検出チップの変形例を示す分解斜視図(a)と、斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る細菌検出装置及び細菌検出方法の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0025】
本実施形態の細菌検出装置100は、蛍光染色法とメンブレンフィルター法を組み合わせた測定原理を利用して、被検体液中に含まれる細菌を検出する装置である。
まず、細菌検出装置100に取り付けて使用する検出チップ10について説明する。
【0026】
検出チップ10の上面には、
図1(a)(b)に示すように、メンブレンフィルター1がその上面を上にして定置される凹部11が設けられている。
この検出チップ10の凹部11に定置されて取り付けられるメンブレンフィルター1は、蛍光標識が結合された細菌を上面側で捕捉しているものである。
なお、蛍光染料(蛍光試薬)で染色された細菌が含まれている被検体液をメンブレンフィルター1で濾過してその細菌を捕捉しても、細菌が含まれている被検体液をメンブレンフィルター1で濾過し、捕捉した細菌を蛍光染料(蛍光試薬)で染色するようにしてもよい。
【0027】
検出チップ10の凹部11に取り付けられるメンブレンフィルター1は、凹部11に嵌め入れられたガラス板2の上に定置されており、ガラス板2とメンブレンフィルター1の間に自家蛍光を有さない液体である水を介在した状態で取り付けられている。
例えば、検出チップ10の凹部11には、予めガラス板2が嵌め入れられており、そのガラス板2の上に所定量の水滴が付着された状態でメンブレンフィルター1が凹部11に取り付けられている。
【0028】
このようにガラス板2とメンブレンフィルター1の間に水を介在させることで、その水の表面張力によってメンブレンフィルター1の姿勢が凹部11内で安定する。
具体的には、検出チップ10の凹部11に定置されたメンブレンフィルター1が水の表面張力によってガラス板2に対して平行な姿勢を保つことで、そのメンブレンフィルター1の上面の平坦性が確保されるようになり、後述する撮像部60による撮像(検出チップ10のメンブレンフィルター1の上面の撮像)を良好に行うことができ、細菌を検出する測定を正確に行い易くなる。
なお、鏡面加工などによって、凹部11の底面が高い平滑性を有する面に仕上げられていれば、ガラス板2を用いなくてもよい。例えば、その凹部11の底面に水滴を付着させた状態で、凹部11にメンブレンフィルター1を定置させれば、水の表面張力によってメンブレンフィルター1の姿勢を凹部11の底面に対して平行に保つことができる。
【0029】
なお、ガラス板2とメンブレンフィルター1の間に介在させる液体は水であることに限らず、自家蛍光を有さない液体としてグリセリンを用いることもできる。
グリセリンは水に比べて揮発し難い液体であるので、細菌を検出する測定に時間が掛かる場合にはグリセリンを用いることが好ましい。
また、グリセリンは水に比べて粘性が高い液体であるので、ガラス板2とメンブレンフィルター1を密着させることができ、そのメンブレンフィルター1の上面の平坦性を確保することができる。
【0030】
また、この検出チップ10の上面の所定部位には、
図1(a)(b)に示すように、フランジ状の遮光板部12が設けられている。
遮光板部12は、検出チップ10が細菌検出装置100のステージ20(後述)の所定位置に載置された向きで、凹部11を挟んで光照射部50(後述)の反対側となる検出チップ10の上面に設けられている(
図2参照)。
この遮光板部12は、光照射部50(後述)が検出チップ10(メンブレンフィルター1)に向けて照射した光が凹部11側に反射するのを低減するために設けられている。
具体的には、遮光板部12は暗色系の色に着色され、蛍光を出さないようにされており、遮光板部12に当たった光を吸収するようにして反射光を低減し、後述する撮像部60による撮像範囲に反射光が入らないようにする迷光対策を可能にしている。
このように検出チップ10の上面に設けた遮光板部12によって光の反射を低減するようにした迷光対策によって、後述する撮像部60による撮像(検出チップ10のメンブレンフィルター1の上面の撮像)を良好に行うことができ、細菌を検出する測定をより正確に行うことが可能になる。
なお、検出チップ10においては、少なくとも遮光板部12が暗色系の色に着色されていればよいが、本実施形態では、例えば暗色系の色を有する樹脂材料によって検出チップ10を形成するようにして、検出チップ10ごと遮光板部12を暗色系の色に着色している。
検出チップ10全体が暗色系の色に着色されていれば、遮光板部12以外の箇所での反射光も低減でき、より一層の迷光対策を行うことができる。
【0031】
次に、上述した検出チップ10を備えている細菌検出装置100について説明する。
本実施形態の細菌検出装置100は、
図2、
図3に示すように、検出チップ10が取り付けられているステージ20と、ステージ20を一の方向(前後方向)に移動させる第1駆動機構30と、ステージ20を一の方向と直交する方向(左右方向)に移動させる第2駆動機構40と、ステージ20に載置された検出チップ10に向けて光を照射する光照射部50と、ステージ20に載置された検出チップ10のメンブレンフィルター1の上面を撮像する撮像部60と、装置各部を統括制御するとともに、撮像部60が撮像した画像に基づいてメンブレンフィルター1上の細菌の数をカウントする制御部70等を備えている。
【0032】
ステージ20は、検出チップ10が載置されるステージ本体21と、ステージ本体21を移動可能に支持しているサブステージ22と、を備えている。
サブステージ22は、装置の筐体に設けられている前後方向に延在するガイド(図示省略)に沿って前後に移動可能に配設されている。
ステージ本体21は、サブステージ22に設けられている左右方向に延在する軸22aに沿って左右に移動可能に配設されている。このステージ本体21に検出チップ10が取り付けられる載置部が設けられている。
【0033】
第1駆動機構30は、
図4に示すように、第1モータ31と、第1モータ31の回転力をステージ20のサブステージ22に伝達するコグドベルト32等を有している。
第1モータ31とコグドベルト32は装置の筐体に配設されており、コグドベルト32がサブステージ22の一部に連結されている。第1モータ31はステッピングモータである。
この第1駆動機構30によって、サブステージ22が前後方向に移動される。
なお、サブステージ22上のステージ本体21と第2駆動機構40(第2モータ41、円筒カム42)は、サブステージ22とともに前後方向に移動される。
【0034】
第2駆動機構40は、
図4に示すように、第2モータ41と、第2モータ41の回転力をステージ20のステージ本体21に伝達する円筒カム42等を有している。
第2モータ41と円筒カム42はサブステージ22上に配設されており、円筒カム42の螺旋状の案内溝42aには、ステージ本体21に設けられているピン21aが挿し入れられている。第2モータ41はステッピングモータである。
この第2駆動機構40によって、ステージ本体21がサブステージ22上で左右方向に移動される。
【0035】
光照射部50は、
図4に示すように、光源支持部51を介して装置の筐体に固定されており、その光源支持部51に支持されてステージ20の上方に配設されている。
光照射部50は、例えば、半導体レーザー(LD:Laser Diode)を備えており、ステージ本体21(ステージ20)に載置された検出チップ10のメンブレンフィルター1の上面に励起光としてのレーザー光を照射する。
具体的には、光照射部50は、左右方向に沿う斜め上からメンブレンフィルター1に向けてレーザー光(励起光)を照射する。
なお、この光照射部50は、撮像部60の撮像範囲にレーザー光を照射することで、その撮像範囲内にあるメンブレンフィルター1に向けてレーザー光(励起光)を照射するようになっている。
【0036】
撮像部60は、
図5に示すように、例えば、CCDカメラ61と、レンズユニット62と、CCDカメラ61とレンズユニット62の間の光路を折り返すためのミラー63,64等を備えている。
このCCDカメラ61はレンズユニット62を通して、ステージ本体21(ステージ20)に載置された検出チップ10を撮像する。
具体的には、CCDカメラ61(撮像部60)は、検出チップ10のメンブレンフィルター1の上面を分割して撮像する。本実施形態では、例えば、
図1(c)に示すように、検出チップ10のメンブレンフィルター部分を49升(7×7)の枡目に分割するようにして撮像する。
なお、メンブレンフィルター1の上面には、蛍光標識が結合された細菌が捕捉されている。
【0037】
制御部70は、例えば、装置の制御基板71にケーブル72を介して接続されたノート型パソコン等のパーソナルコンピュータであり、キーボードやマウスなどの操作部と、液晶ディスプレイなどの表示部等を備えている。
制御部70には、細菌検出装置100の制御用プログラムが格納されており、この制御部70から装置の制御基板71へ動作指令を与える。そして、制御基板71から装置各部に動作指令を与えて、第1駆動機構30(第1モータ31)や第2駆動機構40(第2モータ41)を作動させてステージ20(ステージ本体21、サブステージ22)を移動させたり、光照射部50を作動させてステージ本体21(ステージ20)に載置されている検出チップ10に向けてレーザー光を照射したりすることができるように構成されている。
また、制御部70は、撮像部60(CCDカメラ61)に動作指令を与えて、蛍光標識が結合された細菌が捕捉されているメンブレンフィルター1の上面を撮像することができるように構成されている。
【0038】
特に、制御部70は、撮像部60(CCDカメラ61)が撮像した画像(蛍光標識が結合された細菌が捕捉されているメンブレンフィルター1の上面の画像)に基づき、メンブレンフィルター1上の細菌の数をカウントする処理を実行する。
具体的には、制御部70は、撮像部60が撮像した画像中の発光点をカウントすることで、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌の数をカウントする。
【0039】
次に、本実施形態の細菌検出装置100によって、被検体液中の細菌の数をカウントする処理ついて説明する。
まず、所定量の被検体液をメンブレンフィルター1で濾過する。
また、検出チップ10の凹部11にガラス板2を載置し、そのガラス板2上に自家蛍光を有さない液体である水を滴下する。
そして、DAPIなどの蛍光標識が結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルター1を、検出チップ10の凹部11のガラス板2上に水を介在させて取り付け、その検出チップ10をステージ本体21(ステージ20)にセットする。
【0040】
次いで、制御部70としてのパーソナルコンピュータを操作して細菌検出装置100による細菌数の測定を開始すると、光照射部50が検出チップ10のメンブレンフィルター1に向けてレーザー光(励起光)を照射するとともに、ステージ20に載置されている検出チップ10のメンブレンフィルター1を撮像部60の撮像エリアRに合わせるように、第1駆動機構30と第2駆動機構40によってステージ20(ステージ本体21、サブステージ22)を移動させ、所定位置で撮像部60(CCDカメラ61)がメンブレンフィルター1の上面を撮像する。
このとき、検出チップ10の上面に設けられている遮光板部12によって迷光対策がなされているので、撮像部60(CCDカメラ61)によってメンブレンフィルター1の上面を好適に撮像できる。
メンブレンフィルター1の上面に蛍光標識が結合された細菌が捕捉されていれば、撮像部60(CCDカメラ61)によってその細菌を発光点として撮像できる。なお、励起光によって蛍光標識を発光させ、蛍光標識が結合された細菌を発光点として撮像する技術は公知なので、ここでは詳述しない。
【0041】
この細菌検出装置100の撮像部60の撮像エリアRは、例えば、
図1(c)に示した49升の一升に相当するので、その位置合わせと撮像を複数回(ここでは49回)繰り返すようにして、メンブレンフィルター1の全領域を撮像するようになっている。
具体的には、第2駆動機構40によってステージ20(ステージ本体21)を左右方向に移動させて、49升の枡目を構成する7列のいずれかに撮像部60の撮像エリアRを合わせ、第1駆動機構30によってステージ20(サブステージ22)を前後方向に移動させつつ、その列を7つに分割した画像を撮像する。
【0042】
細菌検出装置100の第2駆動機構40は、円筒カム42を介してステージ20(ステージ本体21)を移動させるので、49升の枡目において左右に並んでいる7列のいずれかに撮像部60の撮像エリアRを合わせるような、比較的短い移動に適している。
また、細菌検出装置100の第1駆動機構30は、コグドベルト32を介してステージ20(サブステージ22)を移動させるので、その列に沿う各所に撮像部60の撮像エリアRを合わせるような、比較的長い移動に適している。
【0043】
次いで、制御部70は、撮像部60が撮像した複数の画像の重複部分を取り除く画像処理を行い、各升(49升)の画像中の発光点をカウントする処理を行って、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌の数をカウントする。
このように、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌の数を計測することで、例えば、フィルターで濾過した被検体液1cc当りの細菌数を検出することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態の細菌検出装置100(細菌検出方法)であれば、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌を好適に検出できる。
特に、この細菌検出装置100が備えている検出チップ10に設けた遮光板部12による迷光対策を行うことと、その検出チップ10の凹部11に定置されるメンブレンフィルター1の上面の平坦性を水などの液体(自家蛍光を有さない液体)の表面張力で確保することによって、検出チップ10に取り付けたメンブレンフィルター1の上面の画像を好適に撮像できるので、その画像に基づいてメンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌を好適に検出することができる。
【0045】
なお、この細菌検出装置100は、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌(被検体液中に含まれていた細菌)の数を正確にカウントすることに用いることに限らず、その細菌の数が閾値以上か、閾値未満か判定することにも用いることができる。細菌の数が閾値以上か否かを判定する処理であれば、細菌の数を全てカウントする処理よりも、細菌の検出処理を短時間で行うことができる。
【0046】
なお、以上の実施の形態において、細菌検出装置100の撮像部60は、検出チップ10のメンブレンフィルター部分を49升(7×7)の枡目に分割するようにして撮像したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、撮像部60の撮像倍率などに応じて、その他の任意の分割数(升数)で撮像するようにしてもよい。
【0047】
次に、本実施形態の細菌検出装置100を用いた菌数測定に関する他の実施形態として、1つの励起光源と2つの蛍光標識(蛍光試薬)を使用した菌数測定について説明する。
なお、上記実施形態と異なる部分についてのみ説明し、上記実施形態と同様の構成については説明を割愛する。
【0048】
従来、生菌と死菌の両方に結合可能な蛍光標識を用いて総菌数(生菌数と死菌数をあわせた菌数)を検出する処理と、死菌に結合可能な蛍光標識を用いて死菌数を検出する処理を行い、総菌数と死菌数の差分に基づき生菌数を検出するという手法が採られることがある。
但し、従来行われていた技術では、生菌と死菌の両方に結合可能な蛍光標識に対応させた励起光を照射可能な第1の励起光源と、死菌に結合可能な蛍光標識に対応させた励起光を照射可能な第2の励起光源の、2つの励起光源が用いられていたが、本発明者らが鋭意検討した結果、1つの励起光源で2つの蛍光標識に対応する菌数測定を可能にする技術を開発するに至った。
【0049】
その菌数測定に用いる細菌検出装置100は、光照射部50として所定の励起光を照射可能な1つの励起光源を備え、撮像部60としてモノクロカメラを備えている。
所定の波長の励起光を照射可能な光照射部50は、例えば、波長が405nmのレーザー光(励起光)を照射可能な励起光源である半導体レーザー(LD:Laser Diode)を備えている。
また、撮像部60が備えているCCDカメラ61はモノクロCCDカメラであり、その撮像部60のレンズユニット62には、波長405nmの光を透過させないように、例えば、波長450nm以上の光を透過する励起カットフィルターが配設されている。
【0050】
また、この菌数測定に使用する2つの蛍光標識(蛍光試薬)として、生菌と死菌の両方に結合可能な蛍光標識にはDAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)、死菌に結合可能な蛍光標識にはAO(アクリジンオレンジ)を挙げることができる。
本実施形態では、2つの蛍光標識(蛍光試薬)として、DAPIとAOを使用した。
【0051】
そして、蛍光標識が結合された細菌が捕捉されているメンブレンフィルター1に向けて光照射部50が所定の波長の励起光を照射し、モノクロCCDカメラ(CCDカメラ61)を備えた撮像部60で細菌の発光点を撮像した場合、DAPIの蛍光(発光点)とAOの蛍光(発光点)をそれぞれ好適に捉えることが可能であることを本発明者らが見出した。具体的には、波長が405nmのレーザー光を照射した場合、DAPIからの蛍光強度とAOからの蛍光強度が異なるが、それぞれの発光点を好適に捉えることが可能であった。
つまり、モノクロCCDカメラを用いれば、1つの励起光源で2つの蛍光標識に対応する菌数測定を行うことが可能であることを本発明者らが見出した。
ここでは、DAPIが結合された細菌の数(発光点の数)を計測することで総菌数(生菌数と死菌数をあわせた菌数)を検出することができ、AOが結合された細菌の数(発光点の数)を計測することで死菌数を検出することができる。
そして、後述するように、DAPIが結合された細菌の数(生菌数と死菌数をあわせた菌数(総菌数))とAOが結合された細菌の数(死菌数)の差分をとるようにすれば、生菌数を算出することができる。
なお、このような菌数測定を行って総菌数と死菌数の差分をとるようにして求めた生菌数と、従来公知の培養法(寒天培地に検体を塗布した後に形成されたコロニー数を計測する方法)によって求めた生菌数とに相関があることを本発明者らは確認し、1つの励起光源と2つの蛍光標識を使用するとともに、モノクロCCDカメラを用いた菌数測定が有効であると判断した。
【0052】
次に、1つの励起光源と2つの蛍光標識を使用した菌数測定について、具体的に説明する。
【0053】
まず、DAPIが結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルター1を、検出チップ10の凹部11のガラス板2上に水などの液体(自家蛍光を有さない液体)を介在させて取り付け、その検出チップ10をステージ本体21(ステージ20)にセットする。
【0054】
次いで、制御部70としてのパーソナルコンピュータを操作して細菌検出装置100による細菌数の測定を開始すると、光照射部50が検出チップ10のメンブレンフィルター1に向けて所定の波長の励起光を照射するとともに、ステージ20に載置されている検出チップ10のメンブレンフィルター1を撮像部60の撮像エリアRに合わせるように、第1駆動機構30と第2駆動機構40によってステージ20(ステージ本体21、サブステージ22)を移動させ、所定位置で撮像部60(CCDカメラ61)がメンブレンフィルター1の上面を撮像する。
メンブレンフィルター1の上面にDAPIが結合された細菌が捕捉されていれば、撮像部60(CCDカメラ61)によってその細菌を発光点として撮像できる。
【0055】
次いで、制御部70は、撮像部60が撮像した画像中の発光点をカウントする処理を行って、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌の数をカウントする。
このように、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌であって、DAPIが結合された細菌の数を計測することで、例えば、フィルターで濾過した被検体液1cc当りの総菌数(生菌数と死菌数をあわせた菌数)を検出することができる。
このDAPIが結合された細菌の数の計測が第一工程である。
なお、総菌数を検出した後、検出チップ10をステージ本体21(ステージ20)から取り外す。
【0056】
次いで、AOが結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルター1を、検出チップ10の凹部11のガラス板2上に水などの液体(自家蛍光を有さない液体)を介在させて取り付け、その検出チップ10をステージ本体21(ステージ20)にセットする。
【0057】
次いで、制御部70としてのパーソナルコンピュータを操作して細菌検出装置100による細菌数の測定を開始すると、光照射部50が検出チップ10のメンブレンフィルター1に向けて所定の波長の励起光を照射するとともに、ステージ20に載置されている検出チップ10のメンブレンフィルター1を撮像部60の撮像エリアRに合わせるように、第1駆動機構30と第2駆動機構40によってステージ20(ステージ本体21、サブステージ22)を移動させ、所定位置で撮像部60(CCDカメラ61)がメンブレンフィルター1の上面を撮像する。
メンブレンフィルター1の上面にAOが結合された細菌が捕捉されていれば、撮像部60(CCDカメラ61)によってその細菌を発光点として撮像できる。
【0058】
次いで、制御部70は、撮像部60が撮像した画像中の発光点をカウントする処理を行って、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌の数をカウントする。
このように、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌であって、AOが結合された細菌の数を計測することで、例えば、フィルターで濾過した被検体液1cc当りの死菌数を検出することができる。
このAOが結合された細菌の数の計測が第二工程である。
【0059】
そして、第一工程で検出した総菌数と、第二工程で検出した死菌数の差分をとる処理を制御部70にて行って、生菌数を算出することができる。
また、検出した総菌数と死菌数、算出した生菌数は、表示部に表示する。
なお、制御部70は、総菌数と死菌数の差分に基づき生菌数を算出する処理を実行することに限らず、総菌数に対する死菌数の割合を算出する処理を実行してもよい。
【0060】
以上のように、本実施形態の細菌検出装置100(細菌検出方法)であれば、1つの励起光源と2つの蛍光標識を使用した菌数測定を好適に行うことができる。
そして、総菌数と死菌数の差分に基づき生菌数を算出したり、総菌数に対する死菌数の割合を算出したりすることができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
本実施形態の細菌検出装置100に取り付けて使用する検出チップ10として、例えば、
図6(a)(b)に示すように、凹部11が2つ設けられている検出チップ10を用いることができる。
図6(a)(b)に示した検出チップ10の2つの凹部11は、検出チップ10がステージ本体21(ステージ20)にセットされた状態で、前後に並ぶ配置に設けられている。
検出チップ10に2つの凹部11が設けられていれば、一方の凹部11にDAPIが結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルター1を定置し、他方の凹部11にAOが結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルター1を定置して使用することができる。
【0062】
このような2つの凹部11が設けられている検出チップ10を使用するとともに、1つの励起光源と2つの蛍光標識を使用した菌数測定について説明する。
【0063】
まず、DAPIが結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルター1を、検出チップ10の一方の凹部11のガラス板2上に水などの液体(自家蛍光を有さない液体)を介在させて定置する。
また、AOが結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルター1を、検出チップ10の他方の凹部11のガラス板2上に水などの液体(自家蛍光を有さない液体)を介在させて定置する。
そして、2つの凹部11にそれぞれメンブレンフィルター1を取り付けた検出チップ10をステージ本体21(ステージ20)にセットする。
【0064】
次いで、制御部70としてのパーソナルコンピュータを操作して細菌検出装置100による細菌数の測定を開始すると、光照射部50が検出チップ10のメンブレンフィルター1に向けて所定の波長の励起光を照射するとともに、ステージ20に載置されている検出チップ10のメンブレンフィルター1を撮像部60の撮像エリアRに合わせるように、第1駆動機構30と第2駆動機構40によってステージ20(ステージ本体21、サブステージ22)を移動させ、所定位置で撮像部60(CCDカメラ61)がメンブレンフィルター1の上面を撮像する。なお、2つの凹部11に定置されたそれぞれのメンブレンフィルター1を撮像部60の撮像エリアRに合わせることができるように、第1駆動機構30によるサブステージ22の前後方向の可動域と、第2駆動機構40によるステージ本体21の左右方向の可動域が調整されている。
一方の凹部11に定置されたメンブレンフィルター1の上面にDAPIが結合された細菌が捕捉されていれば、撮像部60(CCDカメラ61)によってその細菌を発光点として撮像できる。同様に、他方の凹部11に定置されたメンブレンフィルター1の上面にAOが結合された細菌が捕捉されていれば、撮像部60(CCDカメラ61)によってその細菌を発光点として撮像できる。
【0065】
次いで、制御部70は、撮像部60が撮像した画像中の発光点をカウントする処理を行って、メンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌の数をカウントする。
一方の凹部11に定置されたメンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌であって、DAPIが結合された細菌の数を計測することで、例えば、フィルターで濾過した被検体液1cc当りの総菌数(生菌数と死菌数をあわせた菌数)を検出することができる。
また、他方の凹部11に定置されたメンブレンフィルター1の上面に捕捉されている細菌であって、AOが結合された細菌の数を計測することで、例えば、フィルターで濾過した被検体液1cc当りの死菌数を検出することができる。
【0066】
こうして検出した総菌数と死菌数の差分をとる処理を制御部70にて行って、生菌数を算出することができる。
また、検出した総菌数と死菌数、算出した生菌数は、表示部に表示する。
なお、制御部70は、総菌数と死菌数の差分に基づき生菌数を算出する処理を実行することに限らず、総菌数に対する死菌数の割合を算出する処理を実行してもよい。
【0067】
以上のように、本実施形態の細菌検出装置100(細菌検出方法)であれば、1つの励起光源と2つの蛍光標識を使用した菌数測定を好適に行うことができる。
そして、総菌数と死菌数の差分に基づき生菌数を算出したり、総菌数に対する死菌数の割合を算出したりすることができる。
特に、2つの凹部11が設けられている検出チップ10を使用すれば、メンブレンフィルター1や検出チップ10の付け替えを行うことなく、DAPIが結合された細菌数の計測とAOが結合された細菌数の測定をスムーズに行うことができる。
【0068】
なお、
図6(a)(b)に示した検出チップ10の2つの凹部11は、検出チップ10がステージ本体21(ステージ20)にセットされた状態で、前後に並ぶ配置に設けられていたが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、
図7(a)(b)に示すように、検出チップ10がステージ本体21(ステージ20)にセットされた状態で、左右に並ぶ配置に2つの凹部11が設けられている検出チップ10であってもよい。
この場合、ステージ本体21に設けられている検出チップ10の載置部は、
図7(a)(b)に示した検出チップ10に応じた形状に形成されている。
また、2つの凹部11に定置されたそれぞれのメンブレンフィルター1を撮像部60の撮像エリアRに合わせることができるように、第1駆動機構30によるサブステージ22の前後方向の可動域と、第2駆動機構40によるステージ本体21の左右方向の可動域が調整されている。
このような配置であっても、2つの凹部11が設けられている検出チップ10を使用すれば、メンブレンフィルター1や検出チップ10の付け替えを行うことなく、DAPIが結合された細菌数の計測とAOが結合された細菌数の測定をスムーズに行うことができる。
【0069】
なお、上記した実施形態においては、総菌数と死菌数の差分に基づき生菌数を算出する処理(総菌数に対する死菌数の割合を算出する処理)について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、生菌と死菌の両方に結合可能な蛍光標識と、生菌に結合可能な蛍光標識を使用して、総菌数と生菌数の差分に基づき死菌数を算出する処理(総菌数に対する生菌数の割合を算出する処理)を実行するようにしてもよい。
【0070】
また、上記した実施形態においては、検出チップ10の2つの凹部11に、それぞれ異なる蛍光標識が結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルター1を定置したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検出チップ10の2つの凹部11に同じ蛍光標識が結合された細菌を上面側で捕捉しているメンブレンフィルター1を定置するようにして、2つの試料(被検体液)の測定を行うようにしてもよい。
【0071】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
1 メンブレンフィルター
2 ガラス板
10 検出チップ
11 凹部
12 遮光板部
20 ステージ
21 ステージ本体
21a ピン
22 サブステージ
22a 軸
30 第1駆動機構
31 第1モータ
32 コグドベルト
40 第2駆動機構
41 第2モータ
42 円筒カム
42a 案内溝
50 光照射部
51 光源支持部
60 撮像部
61 CCDカメラ
62 レンズユニット
63、64 ミラー
70 制御部
71 制御基板
72 ケーブル
100 細菌検出装置
R 撮像エリア