(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】建具の付け枠構造
(51)【国際特許分類】
E06B 1/52 20060101AFI20230411BHJP
E06B 1/62 20060101ALI20230411BHJP
E06B 1/18 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
E06B1/52
E06B1/62 B
E06B1/18 B
(21)【出願番号】P 2019063742
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000125990
【氏名又は名称】株式会社くろがね工作所
(72)【発明者】
【氏名】安井 伸
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-047984(JP,U)
【文献】特開2002-147121(JP,A)
【文献】特開2000-310085(JP,A)
【文献】実開平04-095484(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
E06B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面等の出入り口開口部を形成する開口枠の縦枠材に取り付けるドアセット用の付け枠部材であって、付け枠部材は、ドアセットの扉の戸先側の戸当りとされるもので、前記縦枠材にネジ止め固定される付け枠基材と、付け枠基材にネジ止め固定されるカバー部材で構成されるとともに、付け枠基材は、平面視で出入り口方向に延出する第一壁部を形成し、カバー部材は、第一壁部と対向側で同じく出入り口方向に延出する第二壁部を形成し、さらに付け枠部材は、第一壁部と第二壁部が対向側に互いに寄ることを防止する規制部材を有し、規制部材は、第一壁部と第二壁部間を出入り口方向と直
交する方向に延伸し形成されるとともに第一壁部と第二壁部に当接あるいは連結されることを特徴とする建具の付け枠構造。
【請求項2】
壁面等の出入り口開口部を形成する開口枠の縦枠材に取り付けるドアセット用の付け枠部材であって、付け枠部材は、ドアセットの扉の戸先側の戸当りとされるもので、前記縦枠材にネジ止め固定される付け枠基材と、付け枠基材にネジ止め固定されるカバー部材で構成されるとともに、付け枠基材は、平面視で出入り口方向に延出する第一壁部を形成し、カバー部材は、第一壁部と対向側で同じく出入り口方向に延出する第二壁部を形成し、さらに付け枠部材は、第一壁部と第二壁部が対向側に互いに寄ることを防止する規制部材を有するとともに、カバー部材の縦枠材側端部が、壁面より突出する縦枠材の開口側側面の対向側側面に当接または近接することを特徴とする建具の付け枠構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物内で出入り口として使用される開口部の枠体に取り付ける建具用の枠体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁面等に設けられる出入り口用の開口部には、壁面と開口部の縁部分に三方や四方の開口枠が設置され開口部を形成されることが多い。 そして、該開口部にドアセットを設置することにより、出入り口を開閉自在に閉塞することも多く見受けられる。 このようなドアセットは、戸体用の枠体と開口部を閉塞する扉体で構成されることが一般的である。 そして、枠体に中には前記開口部の開口枠と連結される付け枠構造の付け枠体とされたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
付け枠体の場合、開口枠から出入り方向に突き出して枠体が設置されることになるため、ワゴンや台車、病院などではベッドなどが接触する可能性が高くなるため、構造的に強いものが要求される。 特許文献1で開示されている付け枠体(符号2)は、まず開口枠に基材を固定し、該基材に被せるようにカバー材を被せた上で、基材とカバー材が固定されている。
【0004】
しかしながら、このような付け枠体では、特にドアセットの戸先側にあたる付け枠が開口部より大きく突き出すことになり、特許文献1のような付け枠体(符号2)は、平面視で略ロ字状で内部が中空状になる上、基材とカバー部材は、溶接などによって強固に連結できないことから付け枠に大きな衝撃が加わると付け枠が変形する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みて、衝撃を受けたとしても容易に変形することがない付け枠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、壁面等の出入り口開口部を形成する開口枠の縦枠材に取り付けるドアセット用の付け枠部材であって、付け枠部材は、ドアセットの扉の戸先側の戸当りとされるもので、前記縦枠材にネジ止め固定される付け枠基材と、付け枠基材にネジ止め固定されるカバー部材で構成されるとともに、付け枠基材は、平面視で出入り口方向に延出する第一壁部を形成し、カバー部材は、第一壁部と対向側で同じく出入り口方向に延出する第二壁部を形成し、さらに付け枠部材は第一壁部と第二壁部が対向側に互いに寄ることを防止する規制部材を有し、規制部材は、第一壁部と第二壁部間を出入り口方向と直交する方向に延伸し形成されるとともに第一壁部と第二壁部に当接あるいは連結されるものである。
【0008】
上記課題を解決する為、本発明が第2の手段として構成したところは、壁面等の出入り口開口部を形成する開口枠の縦枠材に取り付けるドアセット用の付け枠部材であって、付け枠部材は、ドアセットの扉の戸先側の戸当りとされるもので、前記縦枠材にネジ止め固定される付け枠基材と、付け枠基材にネジ止め固定されるカバー部材で構成されるとともに、付け枠基材は、平面視で出入り口方向に延出する第一壁部を形成し、カバー部材は、第一壁部と対向側で同じく出入り口方向に延出する第二壁部を形成し、さらに付け枠部材は、第一壁部と第二壁部が対向側に互いに寄ることを防止する規制部材を有するとともに、カバー部材の縦枠材側端部が、壁面より突出する縦枠材の開口側側面の対向側側面に当接または近接するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によると、付け枠基材の第一壁部とカバー部材の第二壁部が互いに寄り合う方向に規制部材を有するから、規制部材が突っ張り支持材となり第一壁部と第二壁部が互いに寄り合わないようにできるから、付け枠に衝撃が加わった時に付け枠の変形を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、前記効果に加え、カバー部材の縦枠材側端部が、壁面より突出する縦枠材の開口側側面の対向側側面に当接または近接するから、付け枠に開口部側からの衝撃が加わったときに、付け枠の縦枠材側端部が縦枠材に接触するため、付け枠に加わった衝撃を縦枠材によって支えることができ、付け枠の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の付け枠が取り付けられている開口部の正面図
【
図2】本発明の付け枠が取り付けられている開口部の背面図
【
図9】第2実施例の開口部の戸先側の要部水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
壁面等の出入り口開口部を形成する開口枠の縦枠材に取り付けるドアセット用の付け枠部材をドアセットの扉の戸先側の戸当りとし、縦枠材にネジ止め固定される付け枠基材と、付け枠基材にネジ止め固定されるカバー部材で構成するとともに、付け枠基材に、平面視で出入り口方向に延出する第一壁部を形成し、カバー部材に、第一壁部と対向側で同じく出入り口方向に延出する第二壁部を形成し、カバー部材の縦枠材側端部を、壁面より突出する縦枠材の開口側側面の対向側側面に近接させ、第一壁部と第二壁部が対向側に互いに寄ることを防止する規制部材を設ける。
【実施例】
【0013】
以下実施例1を図面に基づいて説明する。
図1は、壁面と、壁面に設けられた出入り口の開口部を示す図で、
図2は、同開口部を
図1と対向する側の図であって、符号1は建築物などの壁を示し、符号200は開口部を示し、符号300は開口部を形成する出入り口三方枠を示し、符号400は開口部200を開閉自在に閉塞するドアセットを示している。
図2は、
図2の水平断面図であって、符号30は、出入り口三方枠300のドアセット400の戸先側の縦枠を示し、符号31は、出入り口三方枠300のドアセット400の戸尻側の縦枠を示し、符号10は、戸先側の縦枠30に取り付けられるドアセット400の戸先縦枠を示し、符号40は、開口部200を開閉自在に閉塞する引き戸扉を示している。
【0014】
戸先側の縦枠30と戸尻側の縦枠31は、それぞれ出入り口方向に細長い扁平状の長方形を成し、鋼板を折り曲げて形成され、壁面1を構成する骨材101に連結金具33を介してネジ止めや溶接止め等にて連結されて開口部200に設置され、開口縁部を形成している。
尚、出入り口三方枠300は、実施例においては、鋼製あるが、木製、樹脂製など適宜材料が選定されるものである。
【0015】
ドアセット400は、開口部200を開閉自在に閉塞する引き戸であって、主に開口部の出入り口三方枠300の上枠32の上方の壁面1に固定されるレール部材50と、レール部材50に吊り下げ金具60、60を介して吊り下げられる引き戸扉40と、引き戸扉40を下部で支持する振れ止め70と、引き戸扉40を戸先側で受け止める戸当りとされる付け枠10と、レール部材50を隠蔽するように設置されるメンテナンスパネル80で構成される。
【0016】
そして、吊り下げ金具60に備える転動可能なローラー601が、レール部材50のレール材501の内部を転動することによって引き戸扉40が壁面1と平行に摺動可能に吊り下げられる。引き戸扉40は、引き戸扉40の下面に設置されたガイド溝401内に、床面、あるいは、戸尻側の縦枠31に固定された振れ止め70のガイドローラー701が、係合し、引き戸扉40の開閉時の左右(出入り方法)の振れを規制している。
【0017】
付け枠10は、床面から戸先側の縦枠30の高さより上方にやや高くまで延伸した縦長形態を成し、主に付け枠基材11とカバー部材12で構成され、それぞれ鋼板を折り曲げることによって形成されている。
付け枠基材11は、
図3、
図5に示すように、平面視で戸先側の縦枠30の正面側の見付け面301に沿う取り付け基部111と、取り付け基部111の引き戸扉40側端から出入り方向に折り曲げられ延伸する第一壁部112と、第一壁部112の延伸端で引き戸扉40側と反対方向に曲げられ延伸し、該延伸端から壁面1側に折り曲げられ延伸する鉤状に形成される第一規制部113と、第一壁部112の引き戸開閉方向の対向側で、同じく取り付け基部111から出入り方向に折り曲げられ延伸する補強片114で構成される。
そして、取り付け基部111には取り付け用の丸孔11101が上下方向に複数個設けられ、第一規制部113には、丸孔11101に対応して、後述するドリリングタッピン小ネジが挿通可能な覗き穴113aが複数個設けられ、第一壁部112には、カバー部材12の連結用の連結孔112aが上下方向に複数個設けられ、さらに第一壁部112の上下方向の中間付近に引き戸扉40に設置された鎌錠に対応して鎌錠受け42の設置用の開口部が設けられている。
【0018】
カバー部材12は、出入り方向に延伸する第二壁部121と、第二壁部121の壁面1側端で引き戸扉41側に折り曲げられ形成される当接部122と、第二壁部121の壁面1側端の対向側端で引き戸扉41側に折り曲げられ、更に先端で開口部200側に折り曲げられ、更に先端で第二壁部121側に折り曲げられ鉤状に形成される付け枠見付け面123で構成される。
そして、第二壁部121の内側(引き戸扉40側)に、規制部材13が溶接固定にて不動に取り付けられている。
【0019】
取り付け部材13は、第二壁部121の内面に沿う基材131と、基材131の壁面1側端から引き戸扉40に向かって延伸する第二規制部132と、第二規制部132の延伸端から開口200側に延伸する連結部133で構成され、連結部133には、付け枠基材11の連結孔112aに対応した、連結ネジ孔133aが複数個設けられている。
【0020】
このように構成される付け枠10の各部材は次のように取り付けられる。
まず、付け枠基材11の取り付け基部111を、戸先側の縦枠30の見付け面301に当て、補強片114の外側面(
図3における左側面)と戸先側の縦枠30の外側面(同じく
図3における左側面)が正面側(
図3における下側)から見て一致するように調節し、丸孔11101を使ってドリリングタッピン小ネジで戸先側の縦枠30の見付け面301にネジ止めする。
次に、カバー部材12の連結部133が第一壁部112の内面に当接するように、カバー部材12を付け枠基材111の外側面(
図3における左側面)から差し込む。
そして、第一壁部112と連結部133を、皿小ネジを使って、第一壁部112の連結孔112aと連結部133の連結ネジ孔133Aで螺着し、付け枠10は戸先側の縦枠30に取り付けられる。
また、図示しないが、床面の材質に応じて、第一壁部112の下部に付け枠10の内面側に突出し、かつ床面に設置する片を持つL字状のアングル材を設置して、床面とアングル材をアンカー固定して付け枠10の剛性を上げることもある。
【0021】
このように取り付けられた付け枠10は、第一壁部112と第二壁部121が取り付け部材13で連結され、第二規制部133が第一壁部112と第二壁部121間にあるので、第一壁部112と第二壁部121は、互いに寄り合うことができない。
また、第一規制部113も第一壁部112と第二壁部121間にあるので、第一壁部112と第二壁部121は、互いに寄り合うことができない。
そのため、付け枠10の第一壁部112あるいは第二壁部121から台車やベッドなどが衝突しても、第一規制部113、第二規制部133の剛性によって、第一壁部112と第二壁部121が寄り合うように変形することを防止できる。
【0022】
さらに、付け枠10は戸先側の縦枠30に取り付けられた状態で、カバー部材12の当接部122の先端が、戸先側の縦枠30の外側302(
図3における左側面)に近接しており、第一壁部112側から大きな荷重がかかった場合、付け枠10は、前述のドリリングタッピン小ネジ付近を支点として、第二壁部121側に回転変形しようとするが、この時、接部122の先端が、戸先側の縦枠30の外側302に接触し、該回転変形する力を受け止めるため、付け枠10の過度な変形を防止することができる。
このように、付け枠10に戸先側の縦枠30に当接する当接部122を設けることにより、付け枠10と戸先側の縦枠30の協働で剛性を確保している。
【0023】
図7における(イ)は、規制部材を第一規制部113のみとした実施例であり、同じく
図7における(ロ)は、規制部材を第二規制部132のみとした実施例であり、
図7における(ハ)は、カバー部材に第二規制部を設けたもので、コーナー部分の壁面に設置するときの実施例である。
この場合であっても、第一壁部112と第二壁部121は、互いに寄り合うことができないので、前述の実施例と同じく第一壁部112と第二壁部121が寄り合うように変形することを防止できる。
付け枠基材11とカバー部材12のネジ止め位置は、引き戸扉40が閉止した状態で、引き戸扉40の戸先端で隠される位置に設けたほうが見栄えがよい。
【0024】
次に第2実施例について説明する。
第2実施例においては、
図8に示すように移設可能な間仕切り壁1Aと、間仕切り壁1Aで構成される出入り口開口部200Aと同じく間仕切り壁用の縦枠に取り付ける付け枠の実施例である。
図9は、戸先側縦枠の水平断面図であって、符号30Aは、開口部の戸先側の縦枠を示し、10Aはドアセット400Aの戸先側の付け枠を示している。
【0025】
付け枠10Aは、戸先側の縦枠30Aの下端部から戸先側の縦枠30Aの高さより上方にやや高くまで延伸した縦長形態を成し、主に付け枠基材11Aとカバー部材12Aで構成され、それぞれ鋼板を折り曲げることによって形成されている。
【0026】
第2実施例の場合は、
図9に示されるように、付け枠の第一壁部112Aは、引き戸扉40A側の対向面側を形成し、第二壁部121Aは、引き戸扉40側を形成している。
そして、カバー部材12Aの前面側の内面に規制部材13Aが不動に取り付けられており、規制部材13Aには、付け枠基材11Aの前端部に引き戸扉40A側に延伸する規制受け部113Aに近接する規制部131Aが設けられる。
第一壁部112Aと第二壁部121Aが互いに寄り合う方向に荷重が掛ると、規制部131Aが規制受け部113Aに接触するので、規制部131Aと規制受け部113Aの剛性によって第一壁部112Aと第二壁部121Aが寄り合うように変形することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
このような付け枠の構成は、引き戸の戸先だけでなく、戸尻側にも利用でき、引き戸のみならず、開き戸のドアセットに利用することも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 壁面
200 開口部
30 戸先側の縦枠
301 見付け面
40 引き戸扉
10 付け枠
11 付け枠基材
111 取り付け基部
111a 丸孔
112 第一壁部
113 第一規制部
114 補強片
12 カバー部材
121 第二壁部
122 当接部
123 付け枠見付け面
13 取り付け部材
131 基材
132 第二規制部
133 連結部
30A 戸先側の縦枠
40A 引き戸扉
10A 付け枠
11A 付け枠基材
112A 第一壁部
113A 規制受け部
12A カバー部材
121A 第二壁部
13A 規制部材
131A 規制部