(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】コンデンサマイクロホンユニット
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
H04R19/04
(21)【出願番号】P 2019111822
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【氏名又は名称】大原 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100166752
【氏名又は名称】久保 典子
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-157332(JP,A)
【文献】特開2010-050869(JP,A)
【文献】特開2014-236261(JP,A)
【文献】特開2008-072583(JP,A)
【文献】特開2016-213817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0021425(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面側に前部音波取入れ孔が穿設されている前蓋を有し、他端面側に開口部がある筒状の金属材からなるユニットケースと、支持リングに張設された振動板と絶縁座に支持された固定極とをスペーサを介して対向的に配置してなる音響電気変換器と、インピーダンス変換器が実装されている回路基板と、上記固定極を上記インピーダンス変換器の所定の電極に接続する固定極接続部とを備え、上記音響電気変換器が上記前蓋側、上記回路基板が上記開口部側として上記ユニットケース内に収納されているコンデンサマイクロホンユニットにおいて、
上記固定極接続部は、上記固定極側に向かって延びるように上記回路基板の内面側に立設される端子ピンと、上記固定極の背面側で上記端子ピンと対応する位置に設けられる導電体とを含み、上記絶縁座には、上記端子ピンを上記導電体に接触させるピン挿通孔が穿設されており、上記導電体は、上記絶縁座側の面にシール材を備えていることを特徴とするコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項2】
上記端子ピンが、上記シール材を貫通して上記導電体に電気的に接触することを特徴とする請求項1に記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項3】
上記シール材が、上記端子ピンの貫通時に上記端子ピンの周りに密着することを特徴とする請求項2に記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項4】
上記シール材が導電性を有し、上記端子ピンが上記シール材を介して上記導電体に電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項5】
上記導電体が、弾性を有する導電フォーム材からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項6】
上記導電体が、両面に導電性の粘着材を有する両面導電テープからなり、その片面側の粘着材が上記シール材として用いられることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサマイクロホンユニットに関し、さらに詳しく言えば、固定極と回路基板に実装されているインピーダンス変換器とを電気的に接続する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、
図4を参照して、第1従来例として特許文献1によるコンデンサマイクロホンユニット100Aについて説明する。このコンデンサマイクロホンユニット100Aは、基本的な構成として、ユニットケース110と、音響電気変換器120と、回路基板130とを備えている。
【0003】
ユニットケース110は、金属製(多くの場合、アルミニウム製)の有底円筒体からなり、底部に相当する一端面側に前蓋111を有し、他端面側が開口されている。前蓋111には、前部音波取入れ孔112が穿設されている。
【0004】
音響電気変換器120は、振動板121と固定極123とを有する。振動板121は金属製の支持リング122に張設され、固定極123は絶縁座124に支持されている。振動板121と固定極123とが、電気絶縁性のスペーサ125を介して対向的に配置されることにより、一種の可変容量型コンデンサを形成している。
【0005】
通常、振動板121には金属蒸着膜を有する合成樹脂の薄膜フィルムが用いられる。また、固定極123には、音孔(音波を通す孔)123aが形成されている。その数は任意に決められてよい。固定極123と絶縁座124との間には、所定容積の背部気室140が形成されている。
【0006】
回路基板130は、絶縁座124の背面側においてユニットケース110の開口部を塞ぐように配置され、ユニットケース110の後端縁113のかしめにより、音響電気変換器120とともにユニットケース110内に固定される。
【0007】
回路基板130には、固定極123と絶縁座124との間に存在する背部気室140に通ずる後部音波取入れ孔131が穿設されている。この第1従来例において、絶縁座124には、後部音波取入れ孔131からの音波を背部気室140に導く音波通路141が形成されている。
【0008】
また、回路基板130には、インピーダンス変換器132が実装されている。通常、インピーダンス変換器132には、FET(電界効果トランジスタ)132aが用いられ、固定極123はFET132aのゲート電極に接続される。
【0009】
そのため、この第1従来例では、FET132aのゲート電極から端子ピン133を引き出すとともに、絶縁座124にピン挿通孔126を設けて、端子ピン133をピン挿通孔126に通して固定極123に接触させるようにしている。
【0010】
次に、
図5により、第2従来例として特許文献2によるコンデンサマイクロホンユニット100Bについて説明する。この第2従来例において、上記第1従来例と実質的に同一と見做してよい構成要素には同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
【0011】
この第2従来例では、固定極123をFET132aのゲート電極に接続するにあたって、固定極123の背面側の上記背部気室140内に導電弾性材162を配置するとともに、FET132aの上にゲート電極に接触する導電端子材161を配置する。
【0012】
また、絶縁座124に導電端子材161よりも若干小径の挿通孔127を形成し、導電端子材161を挿通孔127に圧入して導電弾性材162に接触させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2008-072583号公報
【文献】特開2006-157332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図4の上記第1従来例によれば、端子ピン133を固定極123に直に接触させるだけの簡単な構成によって固定極123をFET132aのゲート電極に接続させることができる。
【0015】
しかしながら、ピン挿通孔126と端子ピン133との間に隙間が生じ、音響設計をしても、制御できないリーク経路ができてしまい、マイクロホンの特性が悪化する。また、端子ピン133と固定極123の接触がともすれば不安定であるため、ノイズが発生しやすい、という問題が指摘されている。
【0016】
図5の上記第2従来例によれば、導電端子材161の挿通孔127への圧入によって密閉性は保たれるが、圧入が完全でないと、リーク経路が生じたり、導電端子材161と導電弾性材162の接触が不安定となり、これがノイズ源となるおそれがある。
【0017】
したがって、本発明の課題は、固定極とインピーダンス変換器(特にはFET)とを簡単な作業によってリーク経路等を生ずることなく、確実に接続できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は、一端面側に前部音波取入れ孔が穿設されている前蓋を有し、他端面側に開口部がある筒状の金属材からなるユニットケースと、支持リングに張設された振動板と絶縁座に支持された固定極とをスペーサを介して対向的に配置してなる音響電気変換器と、インピーダンス変換器が実装されている回路基板と、上記固定極を上記インピーダンス変換器の所定の電極に接続する固定極接続部とを備え、上記音響電気変換器が上記前蓋側、上記回路基板が上記開口部側として上記ユニットケース内に収納されているコンデンサマイクロホンユニットにおいて、
上記固定極接続部は、上記固定極側に向かって延びるように上記回路基板の内面側に立設される端子ピンと、上記固定極の背面側で上記端子ピンと対応する位置に設けられる導電体とを含み、上記絶縁座には、上記端子ピンを上記導電体に接触させるピン挿通孔が穿設されており、上記導電体は、上記絶縁座側の面にシール材を備えていることを特徴としている。
【0019】
本発明には、上記端子ピンが、上記シール材を貫通して上記導電体に電気的に接触する態様が含まれる。
【0020】
上記の態様において、上記シール材が、上記端子ピンの貫通時に上記端子ピンの周りに密着する。
【0021】
別の態様として、上記シール材が導電性を有し、上記端子ピンが上記シール材を介して上記導電体に電気的に接続させることもできる。
【0022】
上記導電体には、弾性を有する導電フォーム材が好ましく採用される。
【0023】
上記導電体が、両面に導電性の粘着材を有し厚み方向に電気を流す両面導電テープからなり、その片面側の粘着材が上記シール材として用いられる態様も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、固定極とインピーダンス変換器(特にはFET)とを簡単な作業によってリーク経路等を生ずることなく、確実に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によるコンデンサマイクロホンユニットの一例を示す平面図。
【
図4】第1従来例に係るコンデンサマイクロホンユニットの
図2と同様の断面図。
【
図5】第2従来例に係るコンデンサマイクロホンユニットの
図2と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、
図1,
図2および
図3により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
図1,
図2および
図3を参照して、本発明によるコンデンサマイクロホンユニット1は、基本的な構成として、ユニットケース10と、音響電気変換器20と、回路基板30とを備えている。指向性は単一指向性であるが、無指向性であってもよい。
【0028】
ユニットケース10は、上記従来例と同じく、金属製(多くの場合、アルミニウム製)の有底円筒体からなり、底部に相当する一端面側に前蓋11を有し、他端面側が開口されている。前蓋11には、前部音波取入れ孔12が穿設されている。前部音波取入れ孔12はその複数個が設けられてもよい。
【0029】
音響電気変換器20は、振動板(振動膜)21と固定極23とを有する。振動板21は金属製の支持リング22に所定の張力がかけられた状態で張設され、固定極23は絶縁座24に支持されている。
【0030】
振動板21と固定極23とが、電気絶縁性のスペーサ25を介して対向的に配置されることにより、一種の可変容量型コンデンサを形成している。絶縁座24は合成樹脂製で、シリンダ等とも呼ばれる。
【0031】
通常、振動板21には、片面に金属蒸着膜を有する合成樹脂の薄膜フィルムが用いられる。また、固定極23には、音孔(音波を通す孔)231が形成されている。その数は任意に決められてよい。固定極23の背面側で絶縁座24との間には、所定容積の背部気室26が形成されている。
【0032】
バックエレクトレットとして、固定極23の振動板21との対向面側にエレクトレット誘電体膜が設けられてよいし、膜エレクトレットとして、振動板21側にエレクトレット誘電体膜が設けられてもよい。
【0033】
回路基板30は、絶縁座24の背面側(後端側)においてユニットケース10の開口部を塞ぐように配置され、ユニットケース10の後端縁13のかしめにより、音響電気変換器20とともにユニットケース10内に固定される。
【0034】
なお、図示しないが、音響電気変換器20と回路基板30は、かしめに代えてユニットケース10の開口部にロックリングが螺合され、ユニットケース10内に固定されてもよい。
【0035】
回路基板30には、固定極23と絶縁座24との間に存在する背部気室26に通ずる後部音波取入れ孔32が穿設されている。この実施形態において、絶縁座24には、後部音波取入れ孔32からの音波を背部気室26に導く音波通路241が形成されている。音波通路241には音響抵抗材242が設けられている。
【0036】
また、回路基板30には、インピーダンス変換器としてのFET(電界効果トランジスタ)31が実装されている。固定極23は、FET31に接続される。そのため、固定極接続部は、端子ピン33と導電体40とを備えている。
【0037】
この実施形態において、端子ピン33は、回路基板30の内面側に固定極23側に向かって延びるように立設されている。端子ピン33の先端は針先状に尖っていることが好ましい。
【0038】
この実施形態において、端子ピン33は、回路基板30の中心に配置され、これに対応して、絶縁座24の中心には、端子ピン33が挿通されるピン挿通孔243が穿設されている。
【0039】
導電体40は、固定極23の背面側(振動板21と対向する面とは反対側の面)で端子ピン33と対応する位置に配置される。この実施形態によると、ピン挿通孔243の周りには凹部244が形成されており、導電体40は凹部244内に配置されている。
【0040】
導電体40は、弾性を有する導電フォーム材41とシール材42により構成される。導電フォーム材41は、固定極23と良好に接触するように適度に圧縮された状態で凹部244内に配置される。この種の導電フォーム材41には、例えばセーレン社製の導電フォームがある。
【0041】
シール材42は、ピン挿通孔243からの空気漏れ(リーク経路)を防止するため、導電フォーム材41の底面側に配置される。シール材42は粘着性を有する。シール材42は両面粘着テープであってもよい。
【0042】
ユニットケース10の後端縁13をかしめて音響電気変換器20と回路基板30を固定する際、
図3に示すように、端子ピン33がシール材42を貫通して導電フォーム材41に接触する。
【0043】
これにより、固定極23がFET31に接続されるとともに、シール材42が端子ピン33の周りに付着(密着)して、ピン挿通孔243を塞いだ状態として密閉性が保たれるため、空気のリーク経路ができない。
【0044】
また、シール材42として、寺岡製作所製の圧延銅箔の両面に導電性アクリル系粘着剤を備えた導電性銅箔両面テープや、セーレン社製の厚み方向に導電性をもつ導電テープ(両面)が用いられてもよい。
【0045】
上記実施形態の説明から分かるように、本発明によれば、ピン挿通孔243の密閉性を損なうことなく端子ピン33を導電体40に接触させることができるため、性能が安定したコンデンサマイクロホンユニット1を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 コンデンサマイクロホンユニット
10 ユニットケース
11 前蓋
12 前部音波取入れ孔
13 ユニットケースの後端縁
20 音響電気変換器
21 振動板(振動膜)
22 支持リング
23 固定極
231 音孔
24 絶縁座
241 音波通路
242 音響抵抗材
244 凹部
25 スペーサ
26 背部気室
30 回路基板
31 インピーダンス変換器(FET)
32 後部音波取入れ孔
33 端子ピン
40 導電体
41 導電フォーム
42 シール材