(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】照準スコープの視度調整機構
(51)【国際特許分類】
F41G 1/387 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
F41G1/387
(21)【出願番号】P 2020084845
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2022-02-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年1月21日、Sands Expo & Convention Centerにおいて開催された展示会(SHOT Show)で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】305013149
【氏名又は名称】有限会社 ディオン光学技研
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】清水 文雄
(72)【発明者】
【氏名】吉江 守正
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-535900(JP,A)
【文献】特開昭54-109458(JP,A)
【文献】米国特許第04395096(US,A)
【文献】実公平02-038248(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41G 1/38- 1/393
G02B 23/14,25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接眼筒とストッパーとがスコープ本体の基端部にそれぞれ進退動可能かつ当接可能にねじ結合されてなる照準スコープの視度調整機構であって、
前記スコープ本体の基端部にはねじ山のピッチ又は条数が互いに異なる第1の雄ねじと第2の雄ねじとが重なるように形成され、
前記接眼筒には第1の雌ねじが形成され、
前記ストッパーには第2の雌ねじが形成されており、
前記接眼筒の前記第1の雌ねじは前記スコープ本体の前記第1の雄ねじと螺合し、前記第2の雄ねじと螺合しないように構成され、
前記ストッパーの前記第2の雌ねじは前記スコープ本体の前記第2の雄ねじと螺合し、前記第1の雄ねじと螺合しないように構成されており、
前記接眼筒の前記第1の雌ねじ及び前記スコープ本体の前記第1の雄ねじは前記ストッパーの前記第2の雌ねじ及び前記スコープ本体の前記第2の雄ねじよりねじ山のリードが大きくなるように構成されて
おり、
前記スコープ本体の基端部には、前記第1の雄ねじと前記第2の雄ねじとの両方が重なるように形成された第1の範囲と、前記第2の雄ねじのみが形成された第2の範囲とが基端側と先端側とに隣接配置されていることを特徴とする照準スコープの視度調整機構。
【請求項2】
接眼筒とストッパーとがスコープ本体の基端部にそれぞれ進退動可能かつ当接可能にねじ結合されてなる照準スコープの視度調整機構であって、
前記スコープ本体の基端部にはねじ山のピッチ又は条数が互いに異なる第1の雄ねじと第2の雄ねじとが重なるように形成され、
前記接眼筒には第1の雌ねじが形成され、
前記ストッパーには第2の雌ねじが形成されており、
前記接眼筒の前記第1の雌ねじは前記スコープ本体の前記第1の雄ねじと螺合し、前記第2の雄ねじと螺合しないように構成され、
前記ストッパーの前記第2の雌ねじは前記スコープ本体の前記第2の雄ねじと螺合し、前記第1の雄ねじと螺合しないように構成されており、
前記接眼筒の前記第1の雌ねじ及び前記スコープ本体の前記第1の雄ねじは前記ストッパーの前記第2の雌ねじ及び前記スコープ本体の前記第2の雄ねじよりねじ山のリードが大きくなるように構成されて
おり、
前記ストッパーの基端部と前記接眼筒の先端部とは当接可能に構成されており、前記ストッパーの基端部と前記接眼筒の先端部とのいずれか一方に突出部が形成され、他方に前記突出部と嵌合する凹部が形成されていることを特徴とする照準スコープの視度調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銃器類や競技用射撃その他の射的競技などに用いられる照準スコープの視度調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、銃器類や射的競技などには照準スコープが用いられている。この照準スコープは銃器類や射的競技などの狙い、すなわち、照準を定めるためのものであり、対物レンズと集光レンズと正位レンズと接眼レンズが内蔵されており、これら対物レンズと集光レンズと正位レンズによってスコープ本体内に正立像を結像させてから、この正立像を接眼レンズによって拡大するように構成されている。使用者が正位像を明確に視認するためには、つまり、使用者が正立像にピントを合わせるためには、正位像と接眼レンズとの間の距離を定める必要があるが、この距離は使用者の視力によって個人差がある。
【0003】
この正立像と接眼レンズとの間の距離を定める機構は視度調整機構とも呼ばれ、大きく分けて2種類ある。1つ目の機構は、接眼レンズを内蔵する接眼筒をスコープ本体に対して進退動させて、接眼筒を位置決めした位置でストッパーによって固定するものである。2つ目の機構は、接眼筒を内筒と外筒とからなる二重構造に設け、内筒には接眼レンズが内蔵されており、この内筒を外筒に対して進退動可能に構成されたものである。この2つ目の機構は、例えば、特許文献1と特許文献2に開示されている。
【0004】
例えば、
図4には上述した1つ目の機構が記載されている。
図4は従来の照準スコープの視度調整機構の一部を示す拡大断面図である。
図4に示すように、従来の視度調整機構20aは、接眼筒23とストッパー24とがスコープ本体21の基端部に矢印Pと矢印Qで示す前後方向に移動可能に隣接配置されている。この状態において、接眼筒23の雌ねじ23aとストッパー24の雌ねじ24aとがスコープ本体21の雄ねじ21aにねじ結合しており、接眼筒23の雌ねじ23aとストッパー24の雌ねじ24aとスコープ本体21の雄ねじ21aとはねじ山のピッチと条数が同じに構成されている。これにより、接眼筒23を進退動させて位置決めしてから、ストッパー24を接眼筒23に当接させることによって、接眼筒23の位置を固定することができるようになっている。
【0005】
特許文献1と特許文献2には、内筒(接眼内筒、接眼筒)と外筒(接眼外筒、回転筒)との二重構造に構成された接眼筒を有しており、内筒には接眼レンズが内蔵され、内筒と外筒はねじ結合しており、内筒を外筒に対して進退動させて内筒を位置決めするように構成されてなる照準スコープと、ライフルスコープにおける視度調整装置とがそれぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公平02-038248号公報
【文献】実開昭47-014150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1と特許文献2の如き上述した2つ目の機構は、内筒又は外筒を1回転させた時に内筒が外筒に対して進退動する移動量、いわゆるリード(Lead)を大きくすることができるので、使用者がピントを合わせ易く、内筒を位置決めし易い。しかしながら、内筒を外筒に固定することができないので、射撃の衝撃等によって内筒が位置ずれしてしまい、射撃の都度、内筒の位置決めをやり直さなければならないという問題がある。また、接眼筒が内筒と外筒の二重構造であるため、接眼筒の寸法が大きくなるので、この機構を備えた照準スコープを銃器に取り付けると取り扱い難くなってしまうという問題もある。
【0008】
このため、2つ目の機構よりも構造が単純であり、ストッパーによって接眼筒を位置決めできる1つ目の機構が望ましいが、1つ目の機構は接眼筒のねじ山のリードが比較的小さいので、使用者がピントを合わせ難く、接眼筒を位置決めし難いという問題がある。この問題を解決するために、接眼筒の進退動の移動量を大きくするためにねじ山のピッチを大きくしたり、ねじの条数を多くしたりすると、ねじ山の螺旋の角度が急になるので、ストッパーを接眼筒に当接させた状態で、接眼筒が回転するとストッパーも一緒に回転してしまい、ストッパーによって接眼筒の位置を固定できないという問題が生じてしまう。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、1つ目の機構において、接眼筒の移動量の増大化と、ストッパーによる接眼筒の固定とを両立できる照準スコープの視度調整機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の照準スコープの視度調整機構は、接眼筒とストッパーとがスコープ本体の基端部にそれぞれ進退動可能かつ当接可能にねじ結合されてなる照準スコープの視度調整機構であって、前記スコープ本体の基端部にはねじ山のピッチ又は条数が互いに異なる第1の雄ねじと第2の雄ねじとが重なるように形成され、前記接眼筒には第1の雌ねじが形成され、前記ストッパーには第2の雌ねじが形成されており、前記接眼筒の前記第1の雌ねじは前記スコープ本体の前記第1の雄ねじと螺合し、前記第2の雄ねじと螺合しないように構成され、前記ストッパーの前記第2の雌ねじは前記スコープ本体の前記第2の雄ねじと螺合し、前記第1の雄ねじと螺合しないように構成されており、前記接眼筒の前記第1の雌ねじ及び前記スコープ本体の前記第1の雄ねじは前記ストッパーの前記第2の雌ねじ及び前記スコープ本体の前記第2の雄ねじよりねじ山のリードが大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、照準スコープの視度調整機構は、接眼筒とストッパーとがスコープ本体の基端部にそれぞれ進退動可能かつ当接可能にねじ結合されてなる照準スコープの視度調整機構であって、前記スコープ本体の基端部にはねじ山のピッチ又は条数が互いに異なる第1の雄ねじと第2の雄ねじとが重なるように形成され、前記接眼筒には第1の雌ねじが形成され、前記ストッパーには第2の雌ねじが形成されており、前記接眼筒の前記第1の雌ねじは前記スコープ本体の前記第1の雄ねじと螺合し、前記第2の雄ねじと螺合しないように構成され、前記ストッパーの前記第2の雌ねじは前記スコープ本体の前記第2の雄ねじと螺合し、前記第1の雄ねじと螺合しないように構成されており、前記接眼筒の前記第1の雌ねじ及び前記スコープ本体の前記第1の雄ねじは前記ストッパーの前記第2の雌ねじ及び前記スコープ本体の前記第2の雄ねじによりねじ山のリードが大きくなるように構成されていることにより、前記接眼筒は前記ストッパーより移動量が大きくなるので、前記接眼筒の位置決めを容易に行うことができるとともに、前記接眼筒と前記ストッパーはねじ山のピッチ又は条数が互いに異なるので、前記接眼筒と前記ストッパーとのねじ山の螺旋の角度が互いに異なり、前記ストッパーを前記接眼筒に当接させた状態で前記接眼筒が回転してもストッパーが一緒に回転することなく、前記ストッパーによって前記接眼筒の位置を固定できる。
【0012】
本発明において、前記スコープ本体の基端部には前記第1の雄ねじと前記第2の雄ねじとの両方が重なるように形成された第1の範囲と、前記第2の雄ねじのみが形成された第2の範囲とが基端側と先端側とに隣接配置されていることが好ましい。
【0013】
この発明によれが、前記スコープ本体の基端部には前記第1の雄ねじと前記第2の雄ねじとの両方が重なるように形成された第1の範囲と、前記第2の雄ねじのみが形成された第2の範囲とが基端側と先端側とに隣接配置されていることにより、前記接眼筒の前記第1の雌ねじは前記第1の雄ねじと螺合し、前記第2の雄ねじと螺合しないので、前記接眼筒の移動範囲を前記第1の範囲のみに限定することができ、前記ストッパーの前記第2の雌ねじは前記第2の雄ねじと螺合するので、前記ストッパーを前記スコープ本体の基端部の端部から前記第1の範囲を通して前記第2の範囲までねじ込むことができるとともに、前記ストッパーを前記第2の範囲から前記第1の範囲へ移動させて前記接眼筒に当接させることができる。
【0014】
本発明において、前記ストッパーの基端部と前記接眼筒の先端部とは当接可能に構成されており、前記ストッパーの基端部と前記接眼筒の先端部とのいずれか一方に突出部が形成され、他方に前記突出部と嵌合する凹部が形成されていることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、前記ストッパーの基端部と前記接眼筒の先端部とは当接可能に構成されており、前記ストッパーの基端部と前記接眼筒の先端部とのいずれか一方に突出部が形成され、他方に前記突出部と嵌合する凹部が形成されていることにより、前記ストッパーの基端部を前記接眼筒の先端部へ当接させると、前記突出部と前記凹部とが嵌合するので、前記接眼筒が軸線方向に対して交差する方向へ位置ずれすることを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように本発明によれば、接眼筒の移動量の増大化と、ストッパーによる接眼筒の固定とを両立できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る実施形態の照準スコープの概略側面図である。
【
図2】
図1の二点鎖線iで囲まれる部分を示す拡大片側断面図である。
【
図3】
図2の二点鎖線iiで囲まれる部分を示す拡大図である。
【
図4】従来の照準スコープの視度調整機構の一部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態の照準スコープの視度調整機構について詳細に説明する。
図1は本発明に係る実施形態の照準スコープの概略側面図である。
図2は
図1の二点鎖線iで囲まれる部分を示す拡大片側断面図である。
図1と
図2に示すように、照準スコープ10は例えばライフルスコープであり、スコープ本体11と対物筒12と接眼筒13とを有する。
【0019】
なお、図中において、矢印Pで示す方向を先端側とし(
図1~
図4では紙面の左側である。)、矢印Qで示す方向を基端側とし(
図1~
図4では紙面の右側である。)、矢印Pと矢印Qで示す方向を前後方向とする。これら方向は相対的な位置関係を示すものであり、重力方向に対する絶対的な位置関係を示すものではない。矢印Pと矢印Qで示す前後方向は照準スコープ10の軸線Oに沿う方向と一致している。
【0020】
これらスコープ本体11と対物筒12と接眼筒13とは円筒状である。スコープ本体11には集光レンズAと正立レンズB1,B2が内蔵され、対物筒12には対物レンズCが内蔵され、接眼筒13には接眼レンズD1,D2が内蔵されている。また、スコープ本体11の基端側には周知のズーム環15が設けられている。
【0021】
スコープ本体11の矢印Pで示す先端側には対物筒12が取り付けられており、スコープ本体11の矢印Qで示す基端側には接眼筒13が取り付けられている。このため、対物筒12とスコープ本体11と接眼筒13とが先端側から基端側へ向かって順次連結されている。
【0022】
このとき、スコープ本体11と接眼筒13の間にストッパー14が配置されている。このストッパー14は円環状であり、接眼筒13の位置を固定するためのものである。照準スコープ10の視度調整機構10aはスコープ本体10の基端部と接眼筒13とストッパー14とから構成される。
【0023】
図3は
図2の二点鎖線iiで囲まれる部分を示す拡大図である。
図3に示すように、より具体的には、スコープ本体11の基端部の外周には第1の雄ねじ11aと第2の雄ねじ11bとが重なるように形成されている。これら第1の雄ねじ11aと第2の雄ねじ11bとはスコープ本体11の基端部の端縁から矢印Pで示す先端側へそれぞれ伸びている。
【0024】
接眼筒13の内周には第1の雌ねじ13aが形成されており、ストッパー14の内周には第2の雌ねじ14aが形成されている。接眼筒13の第1の雌ねじ13aはスコープ本体11の第1の雄ねじ11aと螺合する(噛み合う)ように構成されており、スコープ本体11の第2の雄ねじ11bと螺合しないように構成されている。ストッパー14の第2の雌ねじ14aはスコープ本体11の第2の雄ねじ11bと螺合するように構成されており、スコープ本体11の第1の雄ねじ11aと螺合しないように構成されている。
【0025】
スコープ本体11の基端部にはストッパー14と接眼筒13とが順次ねじ込まれて、ストッパー14と接眼筒13とは先端側と基端側とに隣接配置されている。この状態において、接眼筒13の第1の雌ねじ13aとスコープ本体11の第1の雄ねじ11aとがねじ結合しており、ストッパー14の第2の雌ねじ14aとスコープ本体11の第2の雄ねじ11bとがねじ結合している。これにより、接眼筒13とストッパー14とはそれぞれ回転させることによって、スコープ本体11に対して軸線Oに沿って前後方向に移動(進退動)できるようになっている。
【0026】
この場合において、接眼筒13の第1の雌ねじ13a及びスコープ本体11の第1の雄ねじ11aと、ストッパー14の第2の雌ねじ14a及びスコープ本体11の第2の雄ねじ11bとは、ねじ山のピッチ(pitch)が互いに異なる。具体的には、接眼筒13の第1の雌ねじ13a及びスコープ本体11の第1の雄ねじ11aは、ストッパー14の第2の雌ねじ14a及びスコープ本体の第2の雄ねじ11bよりねじ山のピッチが大きく形成されている。これにより、接眼筒13はストッパー14よりねじ山のリードが大きくなり、前後方向への移動量が大きくなる。
【0027】
また、接眼筒13の第1の雌ねじ13a及びスコープ本体11の第1の雄ねじ11aは、ストッパー14の第2の雌ねじ14a及びスコープ本体11の第2の雄ねじ11bよりねじ山のピッチが大きく形成されており、ねじ山の螺旋の角度が急になっている。言い換えると、ストッパー14の第2の雌ねじ14a及びスコープ本体11の第2の雄ねじ11bは、接眼筒13の第1の雌ねじ13a及びスコープ本体11の第1の雄ねじ11aよりねじ山のピッチが小さく形成されており、ねじ山の螺旋の角度が緩くなっている。このため、ストッパー14と接眼筒13とではねじ山の螺旋の角度が異なる。これにより、ストッパー14を接眼筒13に当接させると、接眼筒13が回転してもストッパー14が一緒に回転してしまうことなく、ストッパー14によって接眼筒13を固定できる。
【0028】
ここで、接眼筒13とストッパー14とはねじ山のピッチではなく、ねじの条数が異なっていてもよい。具体的には、接眼筒13の第1の雌ねじ13a及びスコープ本体11の第1の雄ねじ11aと、ストッパー14の第2の雌ねじ14a及びスコープ本体11の第2の雄ねじ11bとは、ねじの条数が互いに異なる。すなわち、接眼筒13の第1の雌ねじ13a及びスコープ本体11の第1の雄ねじ11aは、ストッパー14の第2の雌ねじ14a及びスコープ本体の第2の雄ねじ11bよりねじの条数が多く構成されている。これにより、接眼筒13はストッパー14よりねじ山のリードが大きくなり、前後方向への移動量が大きくなる。
【0029】
また、接眼筒13の第1の雌ねじ13a及びスコープ本体11の第1の雄ねじ11aは、ストッパー14の第2の雌ねじ14a及びスコープ本体11の第2の雄ねじ11bよりねじの条数が多く構成されており、ねじ山の螺旋の角度が急になっている。言い換えると、ストッパー14の第2の雌ねじ14a及びスコープ本体11の第2の雄ねじ11bは、接眼筒13の第1の雌ねじ13a及びスコープ本体11の第1の雄ねじ11aよりねじの条数が少なく構成されており、ねじ山の螺旋の角度が緩くなっている。このため、ストッパー14と接眼筒13とではねじ山の螺旋の角度が異なる。これにより、ストッパー14を接眼筒13に当接させると、接眼筒13が回転してもストッパー14が一緒に回転してしまうことなく、ストッパー14によって接眼筒13を固定できる。
【0030】
図3に示すように、スコープ本体11の基端部において、第2の雄ねじ11bは第1の雄ねじ11aに比べて先端側へ延在している。すなわち、スコープ本体11の基端部には、第1の雄ねじ11aと第2の雄ねじ11bの両方が形成された第1の範囲S1と、第2の雄ねじ11bのみが形成された第2の範囲S2とが設けられている。これら第1の範囲S1と第2の範囲S2とは基端側と先端側とに隣接配置されている。これにより、接眼筒13の移動範囲を第1の範囲Sの範囲内に限定することができる。また、ストッパー14をスコープ本体11の基端部の端縁から第1の範囲S1を通して第2の範囲S2へ配置できるとともに、ストッパー14を第2の範囲S2から第1の範囲S1の範囲内に移動できる。
【0031】
また、スコープ本体11の基端部において、ストッパー14と接眼筒13とは先端側と基端側とに隣接配置されており、それぞれ照準スコープ10の軸線Oに沿って前後方向に移動可能に構成されている。このため、ストッパー14の基端部14qと接眼筒13の先端部13pとは当接可能に構成されている。これにより、ストッパー14を接眼筒13に当接させて、接眼筒13の位置を固定すると、ストッパー14は接眼筒13の先端側に配置され、ストッパー14によって接眼筒13は先端側への移動が防止されるので、正位像と接眼レンズとの間の距離が縮小することを防止できる。
【0032】
具体的には、ストッパー14の基端部14qには突出部14tが形成されており、接眼筒13の先端部13pには凹部13rが形成されている。これら突出部14tと凹部13rは嵌合可能に構成されている。ストッパー14の基端部14qを接眼筒13の先端部13pへ当接させると、突出部14tと凹部13rが嵌合する。つまり、突出部14tの先端面が凹部13rの内底面と当接するとともに、突出部14tの外周が凹部13rの内周と当接する。これにより、接眼筒13が照準スコープ10の軸線Oに対して交差する方向へ位置ずれすることを防止できる。
【0033】
上述のように構成された照準スコープ10は、接眼筒13を本体スコープ11に対して進退動させて位置決めしてから、ストッパー14を接眼筒13に当接させて、接眼筒13の位置を固定して使用する。
【0034】
本実施形態においては、スコープ本体11の基端部には第1の雄ねじ11aと第2の雄ねじ11bとが重なるように形成され、接眼筒13には第1の雌ねじ13aが形成され、ストッパー14には第2の雌ねじ14aが形成され、スコープ本体11の基端部にストッパー14と接眼筒13とが順次ねじ込まれて、スコープ本体11の第1の雄ねじ11aと接眼筒13の第1の雌ねじ13aとがねじ結合しており、スコープ本体11の第2の雄ねじ11bとストッパー14の第2の雌ねじ14aとがねじ結合しており、第1の雄ねじ11a及び第1の雌ねじ13aは、第2の雄ねじ11b及び第2の雌ねじ14aよりねじ山のピッチが大きくなるように構成されていることにより、接眼筒13はストッパー14よりリードが大きくなるので、接眼筒13の位置決めを容易に行うことができるとともに、接眼筒13とストッパー14はねじ山の螺旋の角度が互いに異なるので、ストッパー14を接眼筒13に当接させて接眼筒13の位置を固定できる。
【0035】
また、スコープ本体11の基端部には、第1の雄ねじ11aと第2の雄ねじ11bの両方が重ねて形成された第1の範囲S1と、第2の雄ねじ11bのみが形成された第2の範囲S2とが、基端側と先端側とに隣接配置されていることにより、接眼筒13の移動範囲を第1の範囲S1に限定することができるとともに、ストッパー14を第2の範囲S2から第1の範囲S1へ移動させてストッパー14によって接眼筒13の位置を固定できる。
【0036】
尚、本実施形態の照準スコープ10は上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本実施形態ではスコープ本体11の基端部には、第1の雄ねじ11aと第2の雄ねじ11bの両方が重ねて形成された第1の範囲S1と、第2の雄ねじ11bのみが形成された第2の範囲S2とが設けられているが、スコープ本体11の基端部に第1の範囲S1のみが設けられていてもよい。
【0037】
また、ストッパー14の基端部14qに突出部14tが形成され、接眼筒13の先端部13pに突出部14tと嵌合する凹部13rが形成されているが、ストッパー14の基端部14qに凹部が形成され、接眼筒13の先端部13pに凹部と嵌合する突出部が形成されていてもよいし、ストッパー14の基端部14qと接眼筒13の先端部13pは突出部や凹部が形成されておらず、互いに面接触するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…照準スコープ、10a,20a…視度調整機構、11,21…スコープ本体、11a…第1の雄ねじ、11b…第2の雄ねじ、12…対物筒、13,23…接眼筒、13a…第1の雌ねじ、13p…先端部、13r…凹部、14,24…ストッパー、14a…第2の雌ねじ、14q…基端部、14t…突出部、15…ズーム環、21a…雄ねじ、23a,24a…雌ねじ、A…集光レンズ、B1,B2…正立レンズ、C…対物レンズ、D1,D2…接眼レンズ、O…軸線、P,Q…矢印、S1…第1の範囲、S2…第2の範囲、i,ii…二点鎖線