IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒソン・マテリアル・リミテッドの特許一覧

特許7260187ヘテロ環化合物およびこれを含む有機発光素子
<図1>
  • 特許-ヘテロ環化合物およびこれを含む有機発光素子 図1
  • 特許-ヘテロ環化合物およびこれを含む有機発光素子 図2
  • 特許-ヘテロ環化合物およびこれを含む有機発光素子 図3
  • 特許-ヘテロ環化合物およびこれを含む有機発光素子 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ヘテロ環化合物およびこれを含む有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20230411BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20230411BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20230411BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20230411BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230411BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C07D471/04 106A
C07D471/04 CSP
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H05B33/12 C
H05B33/14 B
C09K11/06 690
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020517861
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2018011624
(87)【国際公開番号】W WO2019066607
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0127755
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513298491
【氏名又は名称】エルティー・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LT Materials Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】113-19, Dangha-Ro, Namsa-Myeon, Cheoin-Gu, Yongin-si, Gyeonggi-do 17118, korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ,ギ-ベク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソン-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ウォン-ジャン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,デ-ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュ-ドン
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/112728(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0053534(KR,A)
【文献】特表2012-503027(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0128941(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0064379(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0129781(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00-521/00
C09K 11/00- 11/89
H01L 51/50
H05B 33/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるヘテロ環化合物:
【化15】


前記化学式1において、
は、水素;C1~C60のアルキル基;C6~C60のアリール基;C2~C60のヘテロアリール基;P(=O)RR’;またはSiRR’R”であり、
Arは、-(L)m-(Z)nで表わされ、Lは直接結合;置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、Zは、重水素;ハロゲン基;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;-SiRR’R”;または-P(=O)RR’であり、mは、0~4の整数であり、nは、1~5の整数であり、但し、Lが直接結合であるか、またはmが0である場合、Zは、置換もしくは非置換のアリール基または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、
~R、RおよびRは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアルキニル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;-SiRR’R”;-P(=O)RR’;および置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のアミン基からなる群より選択されるか、互いに隣接する2以上の基は、互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族または芳香族炭化水素環を形成し、
前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、
pおよびqは、0~5の整数である。
【請求項2】
「置換もしくは非置換」とは、C1~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル;C2~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルケニル;C2~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルキニル;C3~C60の単環もしくは多環のシクロアルキル;C2~C60の単環もしくは多環のヘテロシクロアルキル;C6~C60の単環もしくは多環のアリール;C2~C60の単環もしくは多環のヘテロアリール;-SiRR’R”;-P(=O)RR’;C1~C20のアルキルアミン;C6~C60の単環もしくは多環のアリールアミン;およびC2~C60の単環もしくは多環のヘテロアリールアミンからなる群より選択された1以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記例示された置換基の中から選択された2以上の置換基が連結された置換基で置換もしくは非置換であることを意味し、
前記R、R’およびR”の定義は、前記化学式1における定義と同じである、請求項1に記載のヘテロ環化合物。
【請求項3】
前記Lは、直接結合;置換もしくは非置換のC6~C40のアリーレン基;または置換もしくは非置換のC2~C40のヘテロアリーレン基であり、
前記Zは、置換もしくは非置換のC6~C40のアリール基;置換もしくは非置換のC2~C40のヘテロアリール基;または-P(=O)RR’であり、但し、Lが直接結合であるか、またはmが0である場合、Zは、置換もしくは非置換のC6~C40のアリール基または置換もしくは非置換のC2~C40のヘテロアリール基であり、
R、R’、R”の定義は、前記請求項における定義と同じである、請求項に記載のヘテロ環化合物。
【請求項4】
前記R~R、RおよびRは、水素である、請求項1に記載のヘテロ環化合物。
【請求項5】
前記化学式1のRは、水素;またはC6~C40のアリール基である、請求項1に記載のヘテロ環化合物。
【請求項6】
前記化学式1は、下記の化合物のうちのいずれか1つで表されるものである、請求項1に記載のヘテロ環化合物:
【化16】















































【請求項7】
第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、請求項1~のいずれか1項に記載のヘテロ環化合物を含むものである有機発光素子。
【請求項8】
前記有機物層は、電子輸送層を含み、前記電子輸送層は、前記ヘテロ環化合物を含むものである、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記有機物層は、電子注入層または電子輸送層を含み、前記電子注入層または電子輸送層は、前記ヘテロ環化合物を含むものである、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記有機物層は、電子阻止層または正孔阻止層を含み、前記電子阻止層または正孔阻止層は、前記ヘテロ環化合物を含むものである、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記有機発光素子は、第1電極と、前記第1電極上に備えられ、第1発光層を含む第1スタックと、前記第1スタック上に備えられる電荷生成層と、前記電荷生成層上に備えられ、第2発光層を含む第2スタックと、前記第2スタック上に備えられる第2電極とを含むものである、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記電荷生成層は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含むものである、請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記電荷生成層は、N-タイプの電荷生成層であり、前記電荷生成層は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物のほか、ドーパントを追加的に含むものである、請求項12に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月29日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2017-0127755号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
本明細書は、ヘテロ環化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電界発光素子は、自発光型表示素子の一種であって、視野角が広く、コントラストに優れているだけでなく、応答速度が速いという利点がある。
【0003】
有機発光素子は、2つの電極の間に有機薄膜を配置させた構造を有している。このような構造の有機発光素子に電圧が印加されると、2つの電極から注入された電子と正孔が有機薄膜で結合して対をなした後、消滅しながら光を発する。前記有機薄膜は、必要に応じて、単層または多層から構成される。
【0004】
有機薄膜の材料は、必要に応じて、発光機能を有することができる。例えば、有機薄膜材料としては、それ自体が単独で発光層を構成できる化合物が使用されてもよく、またはホスト-ドーパント系発光層のホストまたはドーパントの役割を果たす化合物が使用されてもよい。その他にも、有機薄膜の材料として、正孔注入、正孔輸送、電子ブロック、正孔ブロック、電子輸送、電子注入などの役割を果たす化合物が使用されてもよい。
【0005】
有機発光素子の性能、寿命または効率を向上させるために、有機薄膜の材料の開発が求められ続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヘテロ環化合物およびこれを含む有機発光素子を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一実施態様において、下記化学式1で表されるヘテロ環化合物を提供する。
【化1】
【0008】
前記化学式1において、
は、水素;C1~C60のアルキル基;C6~C60のアリール基;C2~C60のヘテロアリール基;P(=O)RR’;またはSiRR’R”であり、
Arは、重水素;ハロゲン基;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;-SiRR’R”;-P(=O)RR’;および置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のアミン基からなる群より選択され、
~R、RおよびRは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアルキニル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;-SiRR’R”;-P(=O)RR’;および置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のアミン基からなる群より選択されるか、互いに隣接する2以上の基は、互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族または芳香族炭化水素環を形成し、
前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、
pおよびqは、0~5の整数である。
【0009】
また、本出願の一実施態様において、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、本出願の一実施態様に係るヘテロ環化合物を含むものである有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書に記載の化合物は、有機発光素子の有機物層材料として使用することができる。前記化合物は、有機発光素子において正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料、電子注入材料などの役割を果たすことができる。特に、前記化合物が有機発光素子の電子輸送層材料または正孔阻止層材料として使用可能である。
【0011】
前記化学式1で表される化合物を有機物層に使用する場合、素子の駆動電圧を低くし、光効率を向上させ、化合物の熱的安定性によって素子の寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本出願の一実施態様に係る有機発光素子の積層構造を概略的に示す図である。
図2】本出願の一実施態様に係る有機発光素子の積層構造を概略的に示す図である。
図3】本出願の一実施態様に係る有機発光素子の積層構造を概略的に示す図である。
図4】本出願の一実施態様に係る有機発光素子の積層構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本出願について詳細に説明する。
【0014】
前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子の置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0015】
本明細書において、前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であってもよい。
【0016】
本明細書において、前記アルキル基は、炭素数1~60の直鎖もしくは分枝鎖を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。前記アルキル基の炭素数は1~60、具体的には1~40、さらに具体的には1~20であってもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチル-ブチル基、1-エチル-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1-エチル-プロピル基、1,1-ジメチル-プロピル基、イソヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0017】
本明細書において、前記アルケニル基は、炭素数2~60の直鎖もしくは分枝鎖を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。前記アルケニル基の炭素数は2~60、具体的には2~40、さらに具体的には2~20であってもよい。具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、アリル基、1-フェニルビニル-1-イル基、2-フェニルビニル-1-イル基、2,2-ジフェニルビニル-1-イル基、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル基、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル基、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書において、前記アルキニル基は、炭素数2~60の直鎖もしくは分枝鎖を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。前記アルキニル基の炭素数は2~60、具体的には2~40、さらに具体的には2~20であってもよい。
【0019】
本明細書において、アルコキシ基は、直鎖、分枝鎖もしくは環鎖であってもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~20のものが好ましい。具体的には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、i-プロピルオキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、3,3-ジメチルブチルオキシ、2-エチルブチルオキシ、n-オクチルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デシルオキシ、ベンジルオキシ、p-メチルベンジルオキシなどになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、前記シクロアルキル基は、炭素数3~60の単環もしくは多環を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。ここで、多環とは、シクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味する。ここで、他の環基とは、シクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。前記シクロアルキル基の炭素数は3~60、具体的には3~40、さらに具体的には5~20であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、2,3-ジメチルシクロヘキシル基、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などがあるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書において、前記ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロ原子として、O、S、Se、N、またはSiを含み、炭素数2~60の単環もしくは多環を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。ここで、多環とは、ヘテロシクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味する。ここで、他の環基とは、ヘテロシクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。前記ヘテロシクロアルキル基の炭素数は2~60、具体的には2~40、さらに具体的には3~20であってもよい。
【0022】
本明細書において、前記アリール基は、炭素数6~60の単環もしくは多環を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。ここで、多環とは、アリール基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味する。ここで、他の環基とは、アリール基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基などであってもよい。前記アリール基は、スピロ基を含む。前記アリール基の炭素数は6~60、具体的には6~40、さらに具体的には6~25であってもよい。前記アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ナフチル基、アントリル基、クリセニル基、フェナントレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、フェナレニル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、フルオレニル基、インデニル基、アセナフチレニル基、ベンゾフルオレニル基、スピロビフルオレニル基、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル基、これらの縮合環基などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0023】
本明細書において、シリル基は、Siを含み、前記Si原子がラジカルとして直接連結される置換基であり、-SiR104105106で表され、R104~R106は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;アルキル基;アルケニル基;アルコキシ基;シクロアルキル基;アリール基;およびヘテロ環基のうちの少なくとも1つからなる置換基であってもよい。シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、前記フルオレニル基は置換されていてもよいし、隣接した置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0025】
前記フルオレニル基が置換される場合、
【化2】

などになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、前記ヘテロアリール基は、ヘテロ原子として、S、O、Se、N、またはSiを含み、炭素数2~60の単環もしくは多環を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。ここで、前記多環とは、ヘテロアリール基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味する。ここで、他の環基とは、ヘテロアリール基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基などであってもよい。前記ヘテロアリール基の炭素数は2~60、具体的には2~40、さらに具体的には3~25であってもよい。前記ヘテロアリール基の具体例としては、ピリジル基、ピロリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、フラニル基、チオフェン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、フラザニル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ジチアゾリル基、テトラゾリル基、ピラニル基、チオピラニル基、ジアジニル基、オキサジニル基、チアジニル基、ジオキシニル基、トリアジニル基、テトラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、イソキナゾリニル基、キノゾリリル基、ナフチリジル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、イミダゾピリジニル基、ジアザナフタレニル基、トリアザインデン基、インドリル基、インドリジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、ジベンゾフラン基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、フェナジニル基、ジベンゾシロール基、スピロビ(ジベンゾシロール)、ジヒドロフェナジニル基、フェノキサジニル基、フェナントリジル基、イミダゾピリジニル基、チエニル基、インドロ[2,3-a]カルバゾリル基、インドロ[2,3-b]カルバゾリル基、インドリニル基、10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン基、9,10-ジヒドロアクリジニル基、フェナントラジニル基、フェノチアチアジニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾリル基、5,10-ジヒドロジベンゾ[b,e][1,4]アザシリニル、ピラゾロ[1,5-c]キナゾリニル基、ピリド[1,2-b]インダゾリル基、ピリド[1,2-a]イミダゾ[1,2-e]インドリニル基、5,11-ジヒドロインデノ[1,2-b]カルバゾリル基などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、前記アミン基は、モノアルキルアミン基;モノアリールアミン基;モノヘテロアリールアミン基;-NH;ジアルキルアミン基;ジアリールアミン基;ジヘテロアリールアミン基;アルキルアリールアミン基;アルキルヘテロアリールアミン基;およびアリールヘテロアリールアミン基からなる群より選択されてもよいし、炭素数は特に限定されないが、1~30のものが好ましい。前記アミン基の具体例としては、メチルアミン基、ジメチルアミン基、エチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニルアミン基、ナフチルアミン基、ビフェニルアミン基、ジビフェニルアミン基、アントラセニルアミン基、9-メチル-アントラセニルアミン基、ジフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、トリフェニルアミン基、ビフェニルナフチルアミン基、フェニルビフェニルアミン基、ビフェニルフルオレニルアミン基、フェニルトリフェニレニルアミン基、ビフェニルトリフェニレニルアミン基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、アリーレン基は、アリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したアリール基の説明が適用可能である。また、ヘテロアリーレン基は、ヘテロアリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したヘテロアリール基の説明が適用可能である。
【0029】
本明細書において、ホスフィンオキシド基は、具体的には、ジフェニルホスフィンオキシド基、ジナフチルホスフィンオキシドなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本明細書において、「隣接した」基は、当該置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基と立体構造的に最も近く位置した置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味することができる。例えば、ベンゼン環におけるオルト(ortho)位に置換された2つの置換基、および脂肪族環における同一炭素に置換された2つの置換基は、互いに「隣接した」基と解釈される。
【0031】
本明細書において、前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子の置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0032】
本明細書において、「置換もしくは非置換」とは、C1~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル;C2~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルケニル;C2~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルキニル;C3~C60の単環もしくは多環のシクロアルキル;C2~C60の単環もしくは多環のヘテロシクロアルキル;C6~C60の単環もしくは多環のアリール;C2~C60の単環もしくは多環のヘテロアリール;-SiRR’R”;-P(=O)RR’;C1~C20のアルキルアミン;C6~C60の単環もしくは多環のアリールアミン;およびC2~C60の単環もしくは多環のヘテロアリールアミンからなる群より選択された1以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記例示された置換基の中から選択された2以上の置換基が連結された置換基で置換もしくは非置換であることを意味する。
【0033】
本出願の一実施態様において、前記pが2以上の場合、2以上のRaは、互いに同一でも異なっていてもよいし、前記qが2以上の場合、2以上のRbは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0034】
本出願の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物を提供する。
【0035】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のRは、水素;C1~C60のアルキル基;C6~C60のアリール基;C2~C60のヘテロアリール基;P(=O)RR’;またはSiRR’R”であってもよい。
【0036】
他の実施態様において、前記化学式1のRは、水素;C1~C40のアルキル基;C6~C40のアリール基;C2~C40のヘテロアリール基;P(=O)RR’;またはSiRR’R”であってもよい。
【0037】
さらに他の実施態様において、前記化学式1のRは、水素;またはC6~C40のアリール基であってもよい。
【0038】
さらに他の実施態様において、前記化学式1のRは、水素;フェニル基;ビフェニル基;ナフチル基;フェナントレニル基;またはトリフェニレニル基であってもよい。
【0039】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のR~R、RおよびRは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアルキニル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;-SiRR’R”;-P(=O)RR’;および置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のアミン基からなる群より選択されるか、互いに隣接する2以上の基は、互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族または芳香族炭化水素環を形成してもよい。
【0040】
他の実施態様において、前記化学式1のR~R、RおよびRは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であってもよい。
【0041】
さらに他の実施態様において、前記化学式1のR~R、RおよびRは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換のC6~C60のアリール基;または置換もしくは非置換のC2~C60のヘテロアリール基であってもよい。
【0042】
さらに他の実施態様において、前記化学式1のR~R、RおよびRは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;C6~C60のアリール基;またはC2~C60のヘテロアリール基であってもよい。
【0043】
さらに他の実施態様において、前記化学式1のR~R、RおよびRは、水素であってもよい。
【0044】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のArは、重水素;ハロゲン基;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;-SiRR’R”;-P(=O)RR’;および置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のアミン基からなる群より選択されてもよい。
【0045】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のArは、-(L)m-(Z)nで表してもよいし、
前記Lは、直接結合;置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
前記Zは、重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;ハロゲン基;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;-SiRR’R”;または-P(=O)RR’であり、
mは、0~4の整数であり、
nは、1~5の整数である。
【0046】
本出願の一実施態様において、前記mが2以上の場合、2以上のLは、互いに同一でも異なっていてもよいし、前記nが2以上の場合、2以上のZは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0047】
本出願の一実施態様において、前記Lは、直接結合;置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0048】
他の実施態様において、前記Lは、直接結合;置換もしくは非置換のC6~C60のアリーレン基;または置換もしくは非置換のC2~C60のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0049】
さらに他の実施態様において、前記Lは、直接結合;置換もしくは非置換のC6~C40のアリーレン基;または置換もしくは非置換のC2~C40のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0050】
さらに他の実施態様において、前記Lは、直接結合;C6~C40のアリーレン基;またはC2~C40のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0051】
さらに他の実施態様において、前記Lは、直接結合;C6~C40の単環もしくは多環のアリーレン基;またはC2~C40のN含有ヘテロアリーレン基であってもよい。
【0052】
さらに他の実施態様において、前記Lは、直接結合;フェニレン基;ビフェニレン基;アントラセニレン基;2価のフェナントロリン基;2価のトリアジン基;2価のピリミジン基;2価のピリジン基;または2価のキナゾリン基であってもよい。
【0053】
本出願の一実施態様において、前記Zは、重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;ハロゲン基;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;-SiRR’R”;または-P(=O)RR’であってもよい。
【0054】
他の実施態様において、前記Zは、置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;-SiRR’R”;または-P(=O)RR’であってもよい。
【0055】
さらに他の実施態様において、前記Zは、置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;または-P(=O)RR’であってもよい。
【0056】
さらに他の実施態様において、前記Zは、置換もしくは非置換のC6~C60のアリール基;置換もしくは非置換のC2~C60のヘテロアリール基;または-P(=O)RR’であってもよい。
【0057】
さらに他の実施態様において、前記Zは、置換もしくは非置換のC6~C40のアリール基;置換もしくは非置換のC2~C40のヘテロアリール基;または-P(=O)RR’であってもよい。
【0058】
さらに他の実施態様において、前記Zは、C6~C40のアリール基およびC2~C40のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のC6~C40のアリール基;C6~C40のアリール基およびC2~C40のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のC2~C40のヘテロアリール基;または-P(=O)RR’であってもよい。
【0059】
さらに他の実施態様において、前記Zは、C6~C40の単環もしくは多環のアリール基およびC2~C40の単環もしくは多環のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のC6~C40のアリール基;C6~C40の単環もしくは多環のアリール基およびC2~C40の単環もしくは多環のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のC2~C40のヘテロアリール基;または-P(=O)RR’であってもよい。
【0060】
さらに他の実施態様において、前記Zは、ピリジン基、カルバゾール基、ジベンゾフラン基、およびジベンゾチオフェン基からなる群より1以上の置換基で置換もしくは非置換のフェニル基;フェニル基で置換もしくは非置換のビフェニル基;フェナントレン基;スピロビフルオレン基;トリフェニレン基;フェニル基、キサンテン基、またはアクリジン基で置換もしくは非置換のフルオレン基;またはフェニル基で置換もしくは非置換のアントラセニル基であってもよい。
【0061】
さらに他の実施態様において、前記Zは、フェニル基で置換もしくは非置換のピリジン基;フェニル基、ターフェニル基、ビフェニル基、スピロビフルオレニル基、ジメチルフルオレニル基、トリフェニレニル基、ジベンゾフラン基、およびカルバゾール基からなる群より1以上の置換基で置換もしくは非置換のピリミジン基;フェニル基、ターフェニル基、ビフェニル基、スピロビフルオレニル基、ジメチルフルオレニル基、トリフェニレニル基、ジベンゾフラン基、およびカルバゾール基からなる群より1以上の置換基で置換もしくは非置換のトリアジン基;フェニル基、ビフェニル基、またはターフェニル基で置換もしくは非置換のキナゾリン基;フェニル基で置換もしくは非置換のフェナントロリン基;カルバゾール基;ジベンゾフラン基;ジベンゾチオフェン基;フェニル基で置換もしくは非置換のベンゾイミダゾール基;またはベンゾチアゾール基であってもよい。
【0062】
さらに他の実施態様において、前記Zは、P(=O)RR’であってもよい。
【0063】
本出願の一実施態様において、前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;-CN;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であってもよい。
【0064】
他の実施態様において、前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であってもよい。
【0065】
さらに他の実施態様において、前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基であってもよい。
【0066】
さらに他の実施態様において、前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6~C60のアリール基であってもよい。
【0067】
さらに他の実施態様において、前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、C6~C60のアリール基であってもよい。
【0068】
さらに他の実施態様において、前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、C6~C40のアリール基であってもよい。
【0069】
さらに他の実施態様において、前記R、R’およびR”は、フェニル基であってもよい。
【0070】
本出願の一実施態様において、前記化学式1は、下記の化合物のうちのいずれか1つで表されるものであるヘテロ環化合物を提供する。
【0071】
【化3】
























【0072】
本出願の一実施態様に係る化合物は、後述する製造例により合成される。
【0073】
また、前記化学式1の構造に多様な置換基を導入することにより、導入された置換基固有の特性を有する化合物を合成することができる。例えば、有機発光素子の製造時に使用される正孔注入層物質、正孔輸送層物質、発光層物質、電子輸送層物質、および電荷生成層物質に主に使用される置換基を前記コア構造に導入することにより、各有機物層で要求する条件を満たす物質を合成することができる。
【0074】
また、前記化学式1の構造に多様な置換基を導入することにより、エネルギーバンドギャップを微細調節可能にし、一方で、有機物の間における界面での特性を向上させ、物質の用途を多様化することができる。
【0075】
一方、前記化合物は、ガラス転移温度(Tg)が高く、熱的安定性に優れている。このような熱的安定性の増加は、素子に駆動安定性を提供する重要な要因になる。
【0076】
本出願の一実施態様に係るヘテロ環化合物は、多段階の化学反応で製造することができる。一部の中間体化合物が先に製造され、その中間体化合物から化学式1の化合物が製造できる。より具体的には、本出願の一実施態様に係るヘテロ環化合物は、後述する製造例に基づいて製造できる。
【0077】
本出願の他の実施態様は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0078】
また、本出願の一実施態様において、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化学式1によるヘテロ環化合物を含むものである有機発光素子を提供する。
【0079】
本出願の一実施態様において、前記第1電極は、陽極であってもよく、前記第2電極は、陰極であってもよい。
【0080】
他の実施態様において、前記第1電極は、陰極であってもよく、前記第2電極は、陽極であってもよい。
【0081】
本出願の一実施態様において、前記有機発光素子は、青色有機発光素子であってもよいし、前記化学式1によるヘテロ環化合物は、前記青色有機発光素子の材料に使用できる。
【0082】
本出願の一実施態様において、前記有機発光素子は、緑色有機発光素子であってもよいし、前記化学式1によるヘテロ環化合物は、前記緑色有機発光素子の材料に使用できる。
【0083】
本出願の一実施態様において、前記有機発光素子は、赤色有機発光素子であってもよいし、前記化学式1によるヘテロ環化合物は、前記赤色有機発光素子の材料に使用できる。
【0084】
前記化学式1で表されるヘテロ環化合物に関する具体的な内容は、前述したものと同じである。
【0085】
本発明の有機発光素子は、前述したヘテロ環化合物を用いて1層以上の有機物層を形成することを除けば、通常の有機発光素子の製造方法および材料によって製造できる。
【0086】
前記ヘテロ環化合物は、有機発光素子の製造時、真空蒸着法のみならず、溶液塗布法によって有機物層に形成される。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらのみに限定されるものではない。
【0087】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少数の有機物層を含むことができる。
【0088】
本発明の有機発光素子において、前記有機物層は、発光層を含むことができ、前記発光層は、前記ヘテロ環化合物を含むことができる。
【0089】
本発明の有機発光素子において、前記有機物層は、電子注入層または電子輸送層を含み、前記電子注入層または電子輸送層は、前記ヘテロ環化合物を含むことができる。
【0090】
本発明の有機発光素子において、前記有機物層は、電子輸送層を含み、前記電子輸送層は、前記ヘテロ環化合物を含むことができる。
【0091】
他の有機発光素子において、前記有機物層は、電子阻止層または正孔阻止層を含み、前記電子阻止層または正孔阻止層は、前記ヘテロ環化合物を含むことができる。
【0092】
さらに他の有機発光素子において、前記有機物層は、電子輸送層、発光層、または正孔阻止層を含み、前記電子輸送層、発光層、または正孔阻止層は、前記ヘテロ環化合物を含むことができる。
【0093】
本発明の有機発光素子は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、電子ブロック層、および正孔ブロック層からなる群より選択される1層または2層以上をさらに含んでもよい。
【0094】
図1~3に本出願の一実施態様に係る有機発光素子の電極と有機物層の積層順序を例示した。しかし、これらの図によって本出願の範囲が限定されることを意図したわけではなく、当技術分野で知られている有機発光素子の構造が本出願にも適用可能である。
【0095】
図1によれば、基板100上に、陽極200、有機物層300、および陰極400が順次に積層された有機発光素子が示される。しかし、このような構造にのみ限定されるものではなく、図2のように、基板上に、陰極、有機物層、および陽極が順次に積層された有機発光素子が実現されてもよい。
【0096】
図3は、有機物層が多層の場合を例示するものである。図3による有機発光素子は、正孔注入層301、正孔輸送層302、発光層303、正孔阻止層304、電子輸送層305、および電子注入層306を含む。しかし、このような積層構造によって本出願の範囲が限定されるものではなく、必要に応じて、発光層を除いた残りの層は省略されてもよく、必要な他の機能層がさらに追加されてもよい。
【0097】
また、本出願の一実施態様に係る有機発光素子は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に備えられた2以上のスタックとを含み、前記2以上のスタックは、それぞれ独立して、発光層を含み、前記2以上のスタック間の間には電荷生成層を含み、前記電荷生成層は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む。
【0098】
さらに、本出願の一実施態様に係る有機発光素子は、第1電極と、前記第1電極上に備えられ、第1発光層を含む第1スタックと、前記第1スタック上に備えられる電荷生成層と、前記電荷生成層上に備えられ、第2発光層を含む第2スタックと、前記第2スタック上に備えられる第2電極とを含む。この時、前記電荷生成層は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含むことができる。また、前記第1スタックおよび第2スタックは、それぞれ独立して、前述した正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層などを1種以上追加的に含んでもよい。
【0099】
前記電荷生成層は、N-タイプの電荷生成層であってもよく、前記電荷生成層は、化学式1で表されるヘテロ環化合物のほか、当技術分野で知られたドーパントを追加的に含んでもよい。
【0100】
本出願の一実施態様に係る有機発光素子として、2-スタックタンデム構造の有機発光素子を下記図4に概略的に示した。
【0101】
この時、前記図4に記載の第1電子阻止層、第1正孔阻止層、および第2正孔阻止層などは、場合によって省略可能である。
【0102】
本明細書に係る有機発光素子は、有機物層のうちの1層以上に前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含むことを除けば、当技術分野で知られている材料および方法で製造できる。
【0103】
前記化学式1を含む有機物層は、必要に応じて、他の物質を追加的に含んでもよい。
【0104】
前記化学式1で表されるヘテロ環化合物は、有機発光素子において電荷生成層の材料として使用できる。
【0105】
本出願の一実施態様に係る有機発光素子において、前記化学式1の化合物以外の材料を下記に例示するが、これらは例示に過ぎず、本出願の範囲を限定するためのものではなく、当技術分野で公知の材料に代替できる。
【0106】
陽極材料としては、比較的仕事関数の大きい材料を用いることができ、透明導電性酸化物、金属、または導電性高分子などを使用することができる。前記陽極材料の具体例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0107】
陰極材料としては、比較的仕事関数の低い材料を用いることができ、金属、金属酸化物、または導電性高分子などを使用することができる。前記陰極材料の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造の物質などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0108】
正孔注入材料としては、公知の正孔注入材料を用いてもよいが、例えば、米国特許第4,356,429号に開示された銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、または文献[Advanced Material,6,p.677(1994)]に記載されているスターバースト型アミン誘導体類、例えば、トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、4,4’,4”-トリ[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、1,3,5-トリス[4-(3-メチルフェニルフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン(m-MTDAPB)、溶解性のある導電性高分子であるポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Polyaniline/Dodecylbenzenesulfonic acid)またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/Poly(4-styrenesulfonate))、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Polyaniline/Camphor sulfonic acid)またはポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(Polyaniline/Poly(4-styrene-sulfonate))などを使用することができる。
【0109】
正孔輸送材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン系誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などが使用可能であり、低分子または高分子材料が使用されてもよい。
【0110】
電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体などが使用可能であり、低分子物質だけでなく、高分子物質が使用されてもよい。
【0111】
電子注入材料としては、例えば、LiFが当業界で代表的に使用されるが、本出願がこれに限定されるものではない。
【0112】
発光材料としては、赤色、緑色、または青色発光材料が使用可能であり、必要な場合、2以上の発光材料を混合して使用することができる。この時、2以上の発光材料を個別的な供給源として蒸着して使用するか、予備混合して1つの供給源として蒸着して使用することができる。また、発光材料として蛍光材料を使用してもよいが、燐光材料として使用してもよい。発光材料としては、単独として陽極と陰極からそれぞれ注入された正孔と電子を結合して発光させる材料が使用されてもよいが、ホスト材料とドーパント材料が共に発光に関与する材料が使用されてもよい。
【0113】
発光材料のホストを混合して使用する場合には、同じ系のホストを混合して使用してもよく、異なる系のホストを混合して使用してもよい。例えば、Nタイプのホスト材料またはPタイプのホスト材料のうちいずれか2種類以上の材料を選択して発光層のホスト材料として使用することができる。
【0114】
本出願の一実施態様に係る有機発光素子は、使用される材料によって、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であってもよい。
【0115】
本出願の一実施態様に係るヘテロ環化合物は、有機太陽電池、有機感光体、有機トランジスタなどをはじめとする有機電子素子においても、有機発光素子に適用されるのと類似の原理で作用できる。
【実施例
【0116】
以下、実施例を通じて本明細書をさらに詳細に説明するが、これらは本出願を例示するためのものに過ぎず、本出願の範囲を限定するためのものではない。
【0117】
<製造例>
<製造例1>化合物3の製造
【化4】
【0118】
(1)化合物3-1の製造
2-ブロモベンズアルデヒド(2-bromobenzaldehyde)(150g、0.81mol、1eq)、エチニルベンゼン(ethynylbenzene)(99g、0.97mol、1.2eq)、Pd(PPhCl(11.8g、0.016mol、0.02eq)、CuI(1.54g、0.008mol、0.01eq)に、トリエチルアミン(Triethylamine)(1500ml)を入れて、60℃で4h撹拌した。水を入れて反応を終結させた後、MCと水を用いて抽出した。その後、無水NaCOで水分を除去した。シリカゲル(Silicagel)カラムで分離して、化合物3-1 150gを90%の収率で得た。
【0119】
(2)化合物3-2の製造
化合物3-1(155g、0.75mol、1eq)、TsNHNH(168g、0.90mol、1.2eq)を、EtOH(3100ml)に入れて、常温(R.T)で1h撹拌した。生成された固体をフィルタ乾燥後、化合物3-2 150gを53%の収率で得た。
【0120】
(3)化合物3-3の製造
化合物3-2(30g、0.08mol、1eq)、AgOTf(3g、0.012mol、0.15eq)を、EtOH(450ml)に入れて、70℃で2h撹拌した。2-フェニルアセトアルデヒド(2-phenylacetaldehyde)(11.55g、0.09mol、1.2eq)、KPO(68g、0.32mol)を入れて、70℃で6h撹拌した。水を入れて反応を終結させた後、MCと水を用いて抽出した。その後、無水NaCOで水分を除去した。シリカゲル(Silicagel)カラムで分離して、化合物3-3 19gを74%の収率で得た。
【0121】
(4)化合物3-4の製造
化合物3-3(19g、0.059mol、1eq)とNBS(11g、0.062mol、1.05eq)を、DMF(190ml)に入れて、R.Tで24h撹拌した。水を入れて反応を終結させた後、MCと水を用いて抽出した。その後、無水NaCOで水分を除去した。シリカゲル(Silicagel)カラムで分離して、化合物3-4 16gを67%の収率で得た。
【0122】
(5)化合物3の製造
化合物3-4(8g、0.020mol、1eq)、2-(4-(4,4,5,6-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-1,10-フェナントロリン(2-(4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)phenyl)-1,10-phenanthroline)(8g、0.021mol、1.05eq)、KPO(8.5g、0.040mol、2eq)、Pd(PPh(1.1g、0.001mol、0.05eq)を、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)(160ml)、HO(40ml)に入れて、70℃で6h撹拌した。生成された固体をフィルタ乾燥後、化合物3 8gを70%の収率で得た。
【0123】
前記製造例1において、2-(4-(4,4,5,6-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-1,10-フェナントロリン(2-(4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)phenyl)-1,10-phenanthroline)の代わりに下記表1の中間体Aを用いたことを除き、前記製造例1と同様の方法で製造して、目的化合物Aを合成した。
【0124】
【表1】





【0125】
<製造例2>化合物115の製造
【化5】
【0126】
(1)化合物115-1の製造
前記製造例1の化合物3-2(30g、0.08mol、1eq)、AgOTf(3g、0.012mol、0.15eq)を、EtOH(450ml)に入れて、70℃で2h撹拌した。1,2-ジフェニルエタノン(1,2-diphenylethanone)(18.8g、0.09mol、1.2eq)、KPO(68g、0.32mol)を入れて、70℃で6h撹拌した。水を入れて反応を終結させた後、MCと水を用いて抽出した。その後、無水NaCOで水分を除去した。シリカゲル(Silicagel)カラムで分離して、化合物115-1 18gを56%の収率で得た。
【0127】
(2)化合物115-2の製造
化合物115-1(18g、0.045mol、1eq)とNBS(8.5g、0.047mol、1.05eq)を、DMF(180ml)に入れてR.Tで24h撹拌した。水を入れて反応を終結させた後、MCと水を用いて抽出した。その後、無水NaCOで水分を除去した。シリカゲル(Silicagel)カラムで分離して、化合物115-2 18gを83%の収率で得た。
【0128】
(3)化合物115の製造
化合物115-2(8g、0.016mol、1eq)、2-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-1,10-フェナントロリン(2-(4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)phenyl)-1,10-phenanthroline)(6.7g、0.017mol、1.05eq)、KPO(7.1g、0.033mol、2eq)、Pd(PPh(1.0g、0.0008mol、0.05eq)を、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)(160ml)、HO(40ml)に入れて、70℃で6h撹拌した。生成された固体をフィルタ乾燥後、化合物115 7gを64%の収率で得た。
【0129】
前記製造例2において、2-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-1,10-フェナントロリン(2-(4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)phenyl)-1,10-phenanthroline)の代わりに下記表2の中間体Bを用いたことを除き、前記製造例2と同様の方法で製造して、目的化合物Bを合成した。
【0130】
【表2】



【0131】
前記製造例と同様の方法で化合物を製造し、その合成確認結果を表3および表4に示した。表3は、1H NMR(CDCl、200Mz)の測定値であり、表4は、FD-質量分析計(FD-MS:Field desorption mass spectrometry)の測定値である。
【0132】
【表3】


【0133】
【表4】






【0134】
[実験例]
<実験例1>
(1)有機発光素子の作製
OLED用ガラス(サムスン-コーニング社製)から得られた透明電極ITO薄膜を、トリクロロエチレン、アセトン、エタノール、蒸留水を順次に用いて各5分間超音波洗浄を施した後、イソプロパノールに入れて保管した後に使用した。次に、真空蒸着装置の基板フォルダにITO基板を設け、真空蒸着装置内のセルに、下記の4,4’,4”-トリス(N,N-(2-ナフチル)-フェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N,N-(2-naphthyl)-phenylamino)triphenyl amine:2-TNATA)を入れた。
【化6】
【0135】
次いで、チャンバ内の真空度が10-6torrに到達するまで排気させた後、セルに電流を印加して2-TNATAを蒸発させて、ITO基板上に600Åの厚さの正孔注入層を蒸着した。真空蒸着装置内の他のセルに、下記のN,N’-ビス(α-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(N,N’-bis(α-naphthyl)-N,N’-diphenyl-4,4’-diamine:NPB)を入れて、セルに電流を印加して蒸発させて、正孔注入層上に300Åの厚さの正孔輸送層を蒸着した。
【化7】
【0136】
このように正孔注入層および正孔輸送層を形成させた後、その上に、発光層として次のような構造の青色発光材料を蒸着させた。具体的には、真空蒸着装置内の一方のセルに青色発光ホスト材料であるH1を200Åの厚さに真空蒸着させ、その上に、青色発光ドーパント材料であるD1をホスト材料対比5%真空蒸着させた。
【化8】
【0137】
次いで、電子輸送層として下記構造式E1の化合物を300Åの厚さに蒸着した。
【化9】
【0138】
電子注入層としてリチウムフルオライド(lithium fluoride:LiF)を10Åの厚さに蒸着し、Al陰極を1,000Åの厚さにしてOLED素子を作製した。一方、OLED素子の作製に必要なすべての有機化合物は、材料ごとにそれぞれ10-6~10-8torr下で真空昇華精製してOLEDの作製に使用した。
【0139】
前記実験例1において、電子輸送層の形成時に使用された化合物E1の代わりに下記表5に表されている化合物を用いることを除けば、実験例1と同様に行って、有機電界発光素子を作製した。本発明により製造された青色有機発光素子の駆動電圧、発光効率、色座標(CIE)、寿命を測定した結果は、下記表5の通りであった。
【0140】
(2)有機発光素子の駆動電圧および発光効率
前記のように製造された有機発光素子に対してマックサイエンス社のM7000で電界発光(EL)特性を測定し、その測定結果をもって、マックサイエンス社製の寿命測定装置(M6000)により、基準輝度が700cd/mの時、T95を測定した。本発明により製造された白色有機発光素子の駆動電圧、発光効率、外部量子効率、色座標(CIE)を測定した結果は、下記表5の通りであった。
【0141】
【表5】

【0142】
前記表5の結果から分かるように、本発明の青色有機発光素子の電子輸送層材料を用いた有機発光素子は、比較例1、3-1、3-2および3-3に比べて駆動電圧が低く、発光効率および寿命が著しく改善された。特に、化合物9、13、17、37、41、45、121、125、129、149、153および157は、駆動、効率、寿命のあらゆる面で優れていることを確認した。このような結果の原因は、適切な長さと強度および平坦な特性を有する発明された化合物が電子輸送層として用いられた時、特定の条件下で電子を受けて励起された状態の化合物を作り、特に、化合物のヘテロ骨格部位の励起された状態が形成されると、励起されたヘテロ骨格部位が他の反応をする前に励起されたエネルギーが安定した状態に移動するはずであり、比較的安定した化合物は、化合物の分解あるいは破壊は起こらず電子を効率的に伝達できるためと判断される。
【0143】
参照として、励起された時に安定した状態を有するものは、アリールあるいはアセン類化合物あるいは多員環ヘテロ化合物であると考えられる。したがって、本発明の化合物が向上した電子-輸送特性あるいは改善された安定性を向上させて、駆動、効率、寿命のあらゆる面で優れると判断される。
【0144】
<実験例2>
(1)有機発光素子の作製
OLED用ガラス(サムスン-コーニング社製)から得られた透明電極ITO薄膜を、トリクロロエチレン、アセトン、エタノール、蒸留水を順次に用いて各5分間超音波洗浄を施した後、イソプロパノールに入れて保管した後に使用した。次に、真空蒸着装置の基板フォルダにITO基板を設け、真空蒸着装置内のセルに、下記の4,4’,4”-トリス(N,N-(2-ナフチル)-フェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N,N-(2-naphthyl)-phenylamino)triphenyl amine:2-TNATA)を入れた。
【化10】
【0145】
次いで、チャンバ内の真空度が10-6torrに到達するまで排気させた後、セルに電流を印加して2-TNATAを蒸発させて、ITO基板上に600Åの厚さの正孔注入層を蒸着した。真空蒸着装置内の他のセルに、下記のN,N’-ビス(α-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(N,N’-bis(α-naphthyl)-N,N’-diphenyl-4,4’-diamine:NPB)を入れて、セルに電流を印加して蒸発させて、正孔注入層上に300Åの厚さの正孔輸送層を蒸着した。
【化11】
【0146】
このように正孔注入層および正孔輸送層を形成させた後、その上に、発光層として次のような構造の青色発光材料を蒸着させた。具体的には、真空蒸着装置内の一方のセルに青色発光ホスト材料であるH1を200Åの厚さに真空蒸着させ、その上に、青色発光ドーパント材料であるD1をホスト材料対比5%真空蒸着させた。
【化12】
【0147】
次いで、電子輸送層として下記構造式E1の化合物を300Åの厚さに蒸着した。
【化13】
【0148】
電子注入層としてリチウムフルオライド(lithium fluoride:LiF)を10Åの厚さに蒸着し、Al陰極を1,000Åの厚さにしてOLED素子を作製した。一方、OLED素子の作製に必要なすべての有機化合物は、材料ごとにそれぞれ10-6~10-8torr下で真空昇華精製してOLEDの作製に使用した。
【0149】
実験例2において、電子輸送層E1の厚さを250Å形成した後、前記電子輸送層の上部に下記表6に表されている化合物の厚さを50Åに正孔阻止層を形成したことを除けば、実験例2と同様に行って、有機電界発光素子を作製した。本発明により製造された青色有機発光素子の駆動電圧、発光効率、色座標(CIE)、寿命を測定した結果は、下記表6の通りであった。
【0150】
【表6】

【0151】
前記表6の結果から分かるように、本発明の青色有機発光素子の正孔阻止層材料を用いた有機発光素子は、比較例3-4、3-5、3-6に比べて駆動電圧が低く、発光効率および寿命が著しく改善された。このような結果の原因は、P-タイプとN-タイプをすべて有するバイポーラタイプであるので、正孔漏れを防止し、発光層内でエキシトンを効果的に閉じ込めることができるからである。
【0152】
<実験例3>
(1)有機発光素子の作製
1500Åの厚さにITOが薄膜コーティングされたガラス基板を蒸留水超音波洗浄した。蒸留水洗浄が終わると、アセトン、メタノール、イソプロピルアルコールなどの溶剤で超音波洗浄をし乾燥させた後、UV洗浄機でUVを用いて5分間UVO処理した。この後、基板をプラズマ洗浄機(PT)に搬送させた後、真空状態でITOの仕事関数および残膜除去のためにプラズマ処理をして、有機蒸着用熱蒸着装置に搬送した。
【0153】
前記ITO透明電極(陽極)上に2スタックWOLED(White Orgainc Light Device)構造で有機物を形成した。第1スタックは、まず、TAPCを300Åの厚さに熱真空蒸着して正孔輸送層を形成した。正孔輸送層を形成させた後、その上に、発光層を次のように熱真空蒸着させた。発光層はホストであるTCz1に青色燐光ドーパントとしてFIrpicを8%ドーピングして300Å蒸着した。電子輸送層はTmPyPBを用いて400Åを形成した後、電荷生成層として下記表7に記載の化合物にCsCOを20%ドーピングして100Å形成した。
【0154】
第2スタックは、まず、MoOを50Åの厚さに熱真空蒸着して正孔注入層を形成した。共通層である正孔輸送層をTAPCにMoOを20%ドーピングして100Å形成した後、TAPCを300Å蒸着して形成した。その上に、発光層はホストであるTCz1に緑色燐光ドーパントであるIr(ppy)を8%ドーピングして300Å蒸着した後、電子輸送層としてTmPyPBを用いて600Åを形成した。最後に、電子輸送層上にリチウムフルオライド(lithium fluoride:LiF)を10Åの厚さに蒸着して電子注入層を形成した後、電子注入層上にアルミニウム(Al)陰極を1,200Åの厚さに蒸着して陰極を形成することにより、有機発光素子を製造した。
【0155】
一方、OLED素子の作製に必要なすべての有機化合物は、材料ごとにそれぞれ10-6~10-8torr下で真空昇華精製してOLEDの作製に使用した。
【化14】
【0156】
2)有機発光素子の駆動電圧および発光効率
前記のように製造された有機発光素子に対してマックサイエンス社のM7000で電界発光(EL)特性を測定し、その測定結果をもって、マックサイエンス社製の寿命測定装置(M6000)により、基準輝度が3,500cd/mの時、T95を測定した。本発明により製造された白色有機発光素子の駆動電圧、発光効率、外部量子効率、色座標(CIE)を測定した結果は、表7の通りであった。
【0157】
【表7】
【0158】
前記表7の結果から分かるように、本発明の2-スタック白色有機発光素子の電荷生成層材料を用いた有機発光素子は、比較例1に比べて駆動電圧が低く、発光効率が改善された。特に、化合物2、3、4、114、115、116は、駆動、効率、寿命のあらゆる面で著しく優れていることを確認した。
【0159】
このような結果が出た理由は、適切な長さと強度および平坦な特性を有する発明された骨格とメタルとバインディングできる適切なヘテロ化合物から構成されたNタイプの電荷生成層として用いられた本発明の化合物が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属がドーピングされてNタイプの電荷生成層内にギャップステートが形成されたと推定され、Pタイプの電荷生成層から生成された電子がNタイプの電荷生成層内で生成されたギャップステートを通して電子輸送層に電子注入が容易になったものと判断される。したがって、Pタイプの電荷生成層は、Nタイプの電荷生成層に電子注入と電子伝達をきちんと行えるようにし、このために、有機発光素子の駆動電圧が低くなり、効率と寿命が改善されたと判断される。
【符号の説明】
【0160】
100:基板
200:陽極
300:有機物層
301:正孔注入層
302:正孔輸送層
303:発光層
304:正孔阻止層
305:電子輸送層
306:電子注入層
400:陰極
図1
図2
図3
図4