(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】仮想現実外科手術デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20230411BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J13/08 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021015389
(22)【出願日】2021-02-03
(62)【分割の表示】P 2019202908の分割
【原出願日】2015-05-05
【審査請求日】2021-02-16
(32)【優先日】2014-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516327022
【氏名又は名称】バイカリアス サージカル インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サックス,アダム
(72)【発明者】
【氏名】カリファ,サミー
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,バーリィ スチュアート
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-036931(JP,A)
【文献】特開2013-150833(JP,A)
【文献】特開平07-328016(JP,A)
【文献】特開2002-238844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0131695(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0171373(US,A1)
【文献】特表2009-540934(JP,A)
【文献】特表2000-505318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0176948(US,A1)
【文献】国際公開第2013/121610(WO,A1)
【文献】特開2007-029232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30-34/37
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体内での人間型ロボットの外科手術相互作用をユーザ(使用者)に提供するためのロボット外科手術システムであって、当該ロボット外科手術システムは、
(a) 人体内に挿入されるように構成されたロボットアームアセンブリであって、
中心体と、
第1のロボットショルダにおいて前記中心体に取り付けられた第1のロボットアームと、
第2のロボットショルダにおいて前記中心体に取り付けられた第2のロボットアームと、
を備えて
なる、ロボットアームアセンブリ、
(b) 人体内に挿入されるように構成されたカメラアセンブリであって、
前記第1のロボットショルダが前記中心体に取り付けられたポイントと前記第2のロボットショルダが前記中心体に取り付けられたポイントとの間の水平距離の、前記ロボットショルダと当該カメラアセンブリとの間の垂直距離に対する比が1~4となるように、
当該カメラアセンブリが、前記中心体に取り付けられると共に、当該ロボット外科手術システムが人体内に配置されたときに、
当該カメラアセンブリは、前記第1及び第2のロボットショルダのやや上方に位置
すると共に、前記第1のロボットショルダと前記第2のロボットショルダとの間の中央に配置され、
前記比は、ユーザの両肩間の水平距離の、ユーザの肩とユーザの目との間の垂直距離に対するユーザ側の比率にほぼ等し
く、人体内でのユーザにとっての人間的観点を提供するものである、カメラアセンブリ、
並びに、
(c) 前記カメラアセンブリからのデータに基づいて、人体内での前記ロボットアームアセンブリの少なくとも一部の描写を提供するように構成されたディスプレイ、
を備えてなり、
当該ロボット外科手術システムは人間の目の人間の肩に対する解剖学的関係に基づいて構成されていることを特徴とする、ロボット外科手術システム。
【請求項2】
前記第1及び第2のロボットアームはそれぞれ、人の腕と同様の動作範囲を有してなる、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項3】
前記第1のロボットアーム及び第2のロボットアームの各々は、人間の肩、人間の肘、および人間の手首と等価な働きをするジョイントを備える、請求項2に記載のロボット外科手術システム。
【請求項4】
外科手術用トロカールを更に備えており、前記ロボットアームアセンブリ及び前記カメラアセンブリは、前記外科手術用トロカールを通して人体内に挿入されるように構成されている、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項5】
前記ロボットアームアセンブリ及び前記カメラアセンブリは、単一の切開部を通して人体内に挿入されるように構成されている、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項6】
前記カメラアセンブリは、当該カメラアセンブリをパン移動又はチルト移動するように構成されたパンシステム又はチルトシステムを備える、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項7】
前記比が、概ね2に等しい、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項8】
前記比が、概ね4に等しい、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項9】
前記描写は、仮想現実の描写である、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項10】
前記描写は、拡張現実の描写である、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項11】
ユーザの頭部の動きを検知するように構成されたセンサシステムを更に備える、
請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項12】
前記カメラアセンブリの位置が、前記検知された動きに応じて調節されるように構成されている、請求項11に記載のロボット外科手術システム。
【請求項13】
前記カメラアセンブリは、当該カメラアセンブリをパン移動又はチルト移動するように構成されたパンシステム又はチルトシステムを備えており、
前記検知された動きに応じてカメラアセンブリの位置を調節することは、カメラアセンブリをパン移動又はチルト移動することを含むものである、請求項12に記載のロボット外科手術システム。
【請求項14】
前記カメラアセンブリのビュー(視野)は、前記カメラアセンブリの位置とユーザの頭部の位置との差を補うべく、コンピュータソフトウェアによって調節されるように構成されている、請求項13に記載のロボット外科手術システム。
【請求項15】
前記カメラアセンブリは、第1のカメラアセンブリ及び第2のカメラアセンブリを含んでおり、視覚的な前記描写は、これら第1及び第2のカメラアセンブリからのデータを用いて作り出された立体的なビューを含む、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【請求項16】
前記ロボットアームアセンブリ及び前記カメラアセンブリは、人体の腹部内に挿入されて腹部内での外科手術を実行するように構成されている、請求項1に記載のロボット外科手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下に、2014年5月5日に出願されたMethod for Natural Human-Like Motion and
Human Interface in Surgical Roboticsと題される米国仮特許出願第61/988498号、及び2015年3月23日に出願されたVirtual Reality Surgical Deviceと題される米国仮特許出願第62/136883号の利益を主張し、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
本出願は、概して、低侵襲の外科手術及び仮想現実システムに関する。
【0003】
関連技術の説明
低侵襲外科手術の分野は、1990年代初めに開始してから、急速に成長してきた。低侵襲外科手術により患者の予後は大幅に改善されるが、この改善には、外科医が正確かつ容易に施術を行う能力が欠かせない。腹腔鏡検査の際、外科医は、患者の腹壁の小さな切開部を通して腹腔鏡器具を挿入しなければならない。腹腔鏡器具は腹壁を傷つけることなしに横に動かすことができないため、腹壁への器具の挿入という性質から、腹腔鏡器具の動きは制限される。標準的な腹腔鏡器具は、4軸の動きに制限される。これらの4軸の動きは、トロカールへの出入りの動き(軸1)、トロカール内での器具の回転(軸2)、ならびにトロカールが腹腔内に進入する枢動点を維持しながら、2つの面でのトロカールの角運動(軸3及び4)である。二十年以上の間、低侵襲外科手術のほとんどが、これらの4つの運動度で行われてきた。
【0004】
既存のロボット外科手術デバイスは、これらの問題の多くを解決しようと試みた。一部の既存のロボット外科手術デバイスは、器具の端部に追加の自由度を用いて、非ロボットの腹腔鏡手術を再現する。しかしながら、外科処置に多数の高額な変更を行ってすら、既存のロボット外科手術デバイスは、それらが使用される処置の多くにおいて、患者の予後に改善をもたらすことができなかった。更に、既存のロボットデバイスは、外科医と外科用エンドエフェクタとが離れた状態であることを増加させる。この離れた状態の増加により、外科医による動作の誤った理解及びロボットデバイスによって適用される力に起因する傷害が生じている。多くの既存のロボットデバイスの自由度は人間の操作者には馴染みがないため、外科医は、不慮の傷害を引き起こす可能性を最小限に抑えるために、患者に手術を行う前に、ロボットシミュレーターで長期間訓練する必要がある。
【0005】
既存のロボットデバイスを制御するためには、外科医は、コンソールに座り、手足を用いて操作装置の制御を行う。更に、ロボットカメラは、準固定の位置にあり、外科医の手足の動きの組み合わせによって動かされる。これらの準固定カメラは視野が限られており、結果として、手術野の明視化は困難となる。
【0006】
他のロボットデバイスは、単一の切開部を通して挿入される2つのロボット操作装置を有する。これらのデバイスは、しばしば、臍において、単一の切開に必要とされる切開部の数を減少させる。しかしながら、既存の単一切開ロボットデバイスには、そのアクチュエータ設計に起因する重大な欠点がある。既存の単一切開ロボットデバイスには、サーボモータ、エンコーダ、ギヤボックス、及び他の全てのアクチュエーションデバイスがイン
ビボロボット内に含まれる。モータ及びギヤボックスを患者の体内に含めるというこの決定は、能力が限られた大型のロボットをもたらした。そのような大型のロボットは、大きな切開部を通して挿入されることになるため、したがって、ヘルニア形成の危険性、感染の危険性、疼痛、及び一般的な罹患率が上がる。一部の既存デバイスに必要な切開部のサイズは、1.5~2インチであり、切開部のサイズは観血外科手術と同様である。更に、モータ、ギヤ等がインビボデバイス内に含まれるため、これらのデバイスのサイズが今後著しく小さくなる可能性は低い。この切開部サイズの増大は、結果として、患者の傷害を著しく増加させ、既存のデバイスの実用性を大幅に低減させる。
【0007】
単一切開の既存デバイスはまた、自由度が制限されている。これらの自由度のうちの一部、例えば、処置中のアームの伸長は、人間にとっては直感的でない。これらの自由度は、外科医が直感的でない動き(学習するもの、切開部が複数の既存デバイスの動きに類似)を行わなければならないユーザインターフェースを必要とする。
【0008】
人間型ロボット装置
人間の腕の自由度を再現するように設計された外科手術用ロボット装置の概念が、これまでに何度か提案されている。しかしながら、既存の設計はいずれも、極めて複雑なギヤボックス及びギヤトレーンを含んでおり、これらは全てロボットアーム内に設置される。これらのギヤボックス及びギヤトレーンの結果として、既存の人間型アームは、製造が困難であり、サイズが大きく、速度が遅い。加えて、人間型ロボット装置の利点を完全に活用するように設計された人間と機械とのインターフェースについて記載している人間型ロボット装置の発明者はいない。人間と機械との適切なインターフェースがなければ、人間型アームは他のロボット装置設計よりも優れた利点を提供することはないか、またはないに等しい。
【発明の概要】
【0009】
一実施形態において、本発明は、中心体、中心体に操作可能に接続された明視化システム(少なくとも1つのカメラ、パンシステム及びチルトシステムのうちの少なくとも1つを備える)、少なくとも1つのカメラからの情報に基づいて画像を生成するためのビデオレンダリングシステム、カメラから受信した画像を表示する頭部装着型ディスプレイ、頭部装着型ディスプレイの空間内での基準点に対する位置及び頭部装着型ディスプレイの空間内での基準点に対する配向のうちの少なくとも1つを追跡するためのセンサシステム(ここで、パンシステム及びチルトシステムのうちの少なくとも1つが、頭部装着型ディスプレイの空間内での前記基準点に対する位置及び配向のうちの少なくとも1つの変化に関するセンサからの情報に応答して、カメラの視野を調整するように構成される)、ならびに中心体に操作可能に接続されるロボットデバイスを備える、外科手術に使用するためのシステムを含む。外科手術システムにおいて、ビデオレンダリングシステムは更に、センサシステムからの情報に基づいて、生成された画像の視野をデジタル調整するように構成される。外科手術システムはまた、第2のカメラを備えてもよい。2つのカメラを備える外科手術システムでは、ビデオレンダリングシステムによって生成された画像はまた、第1及び第2のカメラからの情報に基づく立体画像を含んでもよい。
【0010】
外科手術システムはまた、複数のカメラを備えてもよい。複数のカメラを備える外科手術システムでは、ビデオレンダリングシステムはまた、複数のカメラからのシグナル情報を織り交ぜるソフトウェアに基づいて画像を生成することもできる。
【0011】
外科手術システムはまた、カメラの位置及び配向のうちの少なくとも1つを測定するための少なくとも1つのセンサを備えてもよい。2つのカメラを備える外科手術システムは、挿入構成において、挿入軸に垂直な面での明視化システムの断面寸法が、挿入軸に沿った第1のカメラと第2のカメラとの中心間距離よりも小さい。
【0012】
外科手術システムのロボットデバイスは、ロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第1の回転式アクチュエータと、第1の回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第1のヒンジ式アクチュエータと、を更に備えてもよい。ロボットデバイスは、ロボットデバイスを中心体の第1の側部または第2の側部のいずれかで使用することができるように、ロボットデバイスの位置を中心体に対して変化させるための位置アクチュエータを更に備えてもよい。
【0013】
他の実施形態では、外科手術システムのロボットデバイスは、ロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第1の回転式アクチュエータと、第1の回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第1のヒンジ式アクチュエータと、第1のヒンジ式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第2の回転式アクチュエータと、第2の回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第2のヒンジ式アクチュエータと、第2のヒンジ式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第3の回転式アクチュエータと、第3の回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第3のヒンジ式アクチュエータと、第3のヒンジ式アクチュエータに操作可能に連結された外科手術用エンドエフェクタと、を更に備えてもよい。
【0014】
更に他の実施形態では、外科手術システムは、第2のロボットデバイスを更に備えてもよく、この第2のロボットデバイスは、ロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第4の回転式アクチュエータと、第4の回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第4のヒンジ式アクチュエータと、第4のヒンジ式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第5の回転式アクチュエータと、第5の回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第5のヒンジ式アクチュエータと、ロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第5のヒンジ式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第6の回転式アクチュエータと、第6の回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第6のヒンジ式アクチュエータと、第6のヒンジ式アクチュエータに操作可能に連結された外科手術用エンドエフェクタとを備える。
【0015】
別の態様において、本発明は、ロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第1のケーブル駆動型回転式アクチュエータと、第1のケーブル駆動型回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第1のケーブル駆動型ヒンジ式アクチュエータと、第1のケーブル駆動型ヒンジ式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第2のケーブル駆動型回転式アクチュエータと、第2のケーブル駆動型回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第2のケーブル駆動型ヒンジ式アクチュ
エータと、ロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別の部分との間の角度を変化させるための第2のケーブル駆動型ヒンジ式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分をロボットデバイスの別の部分に対して回転させるための第3のケーブル駆動型回転式アクチュエータと、第3の回転式アクチュエータに操作可能に連結されたロボットデバイスの1つの部分とロボットデバイスの別のケーブル駆動型部分との間の角度を変化させるための第3のケーブル駆動型ヒンジ式アクチュエータと、第3のケーブル駆動型ヒンジ式アクチュエータに操作可能に連結された外科手術用エンドエフェクタと、を備える、ロボット外科手術デバイスを含む。一部の実施形態では、ロボットデバイスは、部分的に患者の身体内に設置される。他の実施形態では、ロボットデバイスは、完全に患者の身体内に設置される。
【0016】
更に別の態様において、本発明は、ロボットアクチュエータを近位システムに連結させる近位接続構成要素及び第1の軸受面を備える第1の本体と、ロボットアクチュエータを遠位システムに連結させる遠位接続構成要素及び第1の軸受面と共に軸受を形成する第2の軸受面(軸受により少なくとも1自由度で第1の本体の動きを第2の本体に対して制限する)を備える第2の本体と、第1の本体または第2の本体に操作可能に連結されたプーリまたはキャプスタンと、プーリまたはキャプスタンを作動させるように構成されるアクチュエータケーブルと、ロボットアクチュエータによって画定され、かつ外形付けされた経路を形成して、複数の追加のケーブルがこの経路を通って近位接続構成要素に連結されたシステムから遠位接続構成要素に連結されたシステムに到達することを可能にする、少なくとも1つの外形付けされた表面と、を備え、ここで、経路の形状及び位置は、追加のケーブルの長さが、ロボットアクチュエータに使用される動きの実質的に全範囲に関して、実質的に一定に留まるようなものである、ロボットアクチュエータを含む。
【0017】
本発明はまた、近位接続構成要素を備える第1の本体と、遠位接続構成要素を備える第2の本体と、ロボットアクチュエータの遠位-近位軸に垂直な1つの軸を中心とした回転を除き全ての自由度で第1の本体の動きを第2の本体の動きに対して制限する軸受システムと、第1の本体または第2の本体に操作可能に連結されるプーリまたはキャプスタンと、プーリまたはキャプスタンを作動させるように構成されるアクチュエータケーブルと、ロボットアクチュエータによって画定され、かつ外形付けされた経路を形成して、複数の追加のケーブルがこの経路を通過して近位接続構成要素に連結されたシステムから遠位接続構成要素に連結されたシステムに到達することを可能にする、少なくとも1つの外形付けされた表面と、を備え、ここで、経路の形状及び位置が、ロボットアクチュエータが使用される動きの実質的に全範囲に関して、実質的に一定に留まるようなものである、ロボットアクチュエータを含む。
【0018】
本発明はまた、近位接続部品を備える第1の本体と、遠位接続部品を備える第2の本体と、ロボットアクチュエータの遠位-近位軸を中心とした回転を除き全ての自由度で第1の本体の動きを第2の本体に対して制限する軸受システムと、第1の本体または第2の本体に操作可能に連結されたプーリまたはキャプスタンと、プーリまたはキャプスタンを作動させるように構成されるアクチュエータケーブルと、ロボットアクチュエータによって画定され、追加のケーブルが穴を通って近位接続部品に連結されたシステムから遠位接続部品に連結されたシステムに到達することができるように構成される、アクチュエータケーブルの直径の少なくとも3倍の内径を有する穴と、を備えるロボットアクチュエータを含み、ここで、穴の形状及び位置は、追加のケーブルの長さが、ロボットアクチュエータが使用される動きの実質的に全範囲に関して実質的に一定なままとなるようなものである。
【0019】
本発明の更なる態様は、主把持体と、把持体に操作可能に連結された第1の把持器ジョー部と、把持体に操作可能に連結された第2の把持器ジョー部と、第1の把持器ジョー部
及び第2の把持器ジョー部のうちの少なくとも1つを、アクチュエーションケーブルと連結させる連結機構と、を備える、外科手術用把持器を含み、ここで、連結機構により、アクチュエーションケーブルの動きに応答して、第1の把持器ジョー部または第2の把持器ジョー部の遠位端の非線形移動がもたらされる。外科手術用把持器は更に、主把持体、第1の把持器ジョー部、第2の把持器ジョー部、アクチュエーションケーブル、及び連結機構のうちの1つ以上に工程されたひずみゲージを備え、それによって、ひずみゲージによって測定された歪みは、第1の把持器ジョー部の遠位端と第2の把持器ジョー部の遠位端との間の力を計算することができる。別の実施形態では、外科手術用把持器は、第1の把持器ジョー部及び第2の把持器ジョー部のうちの少なくとも1つと操作可能に連結されたバネの少なくとも1つを更に含み得る。別の実施形態では、外科手術用把持器は、把持器ジョー部の力及び把持器ジョー部の一のうちの少なくとも1つを制御するためのソフトウェア制御ループ及びハードウェア制御ループのうちの少なくとも1つを更に備え得る。別の実施形態では、外科手術用把持器は、アクチュエーションケーブルに操作可能に連結されたサーボモータのうちの少なくとも1つを更に備え得る。別の実施形態では、外科手術用把持器は、位置センサのうちの少なくとも1つを更に備えてもよく、それによって、位置センサが、第1の把持器ジョー部及び第2の把持器ジョー部のうちの少なくとも1つの一を測定する。
【0020】
外科手術用把持器は、触覚的フィードバックを提供するデバイスを更に備えてもよく、それによって、計算された力を使用して触覚的フィードバックが決定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
番号が付いた項目は、全ての図で一貫したままであることに留意されたい。同じ番号が付いた項目は、同じ項目であるか、またはその項目の同一な複製物であるかのいずれかである。異なる番号が付いた項目は、異なる設計の部品であるか、または時として異なる目的を果たす同一の部品であるかのいずれかである。
【0022】
【
図1A】使用されるように構成される、アームが2つの外科手術用ロボットデバイスの一実施形態の前面等角図である。
【
図1B】使用されるように構成される、アームが2つの外科手術用ロボットデバイスの一実施形態の背面等角図である。
【
図2A】一実施形態における外科手術用ロボットデバイスの右のアームの分解等角図である。
【
図2B】第1のアクチュエータが第1の位置に配向された、アームが2つの外科手術用ロボットデバイスの一実施形態の図である。
【
図2C】第1のアクチュエータが第2の位置に配向された、アームが2つの外科手術用ロボットデバイスの一実施形態の図である。
【
図3A】トロカールにより挿入するように構成された、アームが2つの外科手術用ロボットデバイスの一実施形態の等角図である。
【
図3B】一実施形態による、アームが2つの外科手術用ロボットデバイスが完全に挿入された、トロカールの等角図である。
【
図3C】一実施形態における内部スリーブを有するトロカールの図である。
【
図3D】特許ルーメンを示すトロカールの一実施形態の図である。
【
図4】挿入体を示す、代替的な実施形態の等角図である。
【
図5A】一実施形態による、カメラを有するトロカールスリーブの等角図である。
【
図5B】一実施形態による、トロカールを通して挿入する際のカメラを有するトロカールスリーブの等角図である。
【
図5C】一実施形態による、使用時にカメラが適切な場所にあるトロカールスリーブの等角図である。
【
図6A】一実施形態による、使用のために構成される、カメラの前面図である。
【
図6B】一実施形態による、腹部に挿入するように構成される、カメラの前面図である。
【
図7A】一実施形態による、中心接続構成要素の等角図である。
【
図7B】一実施形態による、中心接続部前面図の分解図である。
【
図7C】一実施形態による、中心接続部背面図の分解図である。
【
図8A】一実施形態による、ヒンジアクチュエータの等角図である。
【
図8B】一実施形態による、ヒンジアクチュエータの分解図である。
【
図9A】0度に作動されているヒンジアクチュエータの断面の一実施形態の図である。
【
図9B】30度に作動されているヒンジアクチュエータの断面の一実施形態の図である。
【
図10A】一実施形態による、回転式アクチュエータの第1の側部の側面図である。
【
図10B】一実施形態による、回転式アクチュエータの第2の側部の側面図である。
【
図10C】一実施形態による、回転式アクチュエータの分解図である。
【
図10D】一実施形態による、回転式アクチュエータの断面図である。
【
図11A】一実施形態による、把持器の等角図である。
【
図11B】一実施形態による、把持器の分解図である。
【
図11C】一実施形態による、閉じている間の把持器の断面である。
【
図11D】一実施形態による、開いている間の把持器の断面である。
【
図12A】一実施形態による、把持器の開放を示す図である。
【
図12B】一実施形態による、把持器の閉鎖を示す図である。
【
図13】一実施形態による、延長セグメントの等角図である。
【
図14A】一実施形態による、アームが4つの外科手術用ロボットシステムの等角図である。
【
図14B】一実施形態による、アームが4つの外科手術用ロボットトロカールの等角図である。
【
図15】一実施形態による、ユーザが仮想現実ヘッドセットを着用した状態でのユーザ上のMEMSセンサの設置を示す図である。
【
図16】仮想現実ロボットシステムの一実施形態のブロック図である。
【
図17】一実施形態による、別個のロボット装置及びカメラシステムを有するデバイスの前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本システムは、外科医が腹腔内で使用するために設計されているが、デバイスの多数の代替的な使用が可能である。例えば、ユーザは、医師の助手、看護師、外科手術補佐、または任意の他の外科手術関与者であり得る。加えて、デバイスは、患者の身体の任意の部位に設置され得、患者の体のより小範囲での使用が可能となるように、将来的な実施形態は更に小さくなるように設計され得る。より小さなデバイス及びより大きなデバイスのいずれも、副鼻腔、結腸、胃、または人間の身体の任意の他の部位といった場所で使用されるように作製することができる。MEMSまたは他の手段を用いた微細製造により、デバイスを人間の血管等の非常に小さな場所に位置付けることができるようになり得る。あるいは、本システムを使用して、デバイスが部分的または全体的に人間の身体の外側に配置された状態での観血処置中ですら、素晴らしい巧妙さ及び明視化を得ることができる。
【0024】
他の実施形態では、本デバイスは、微細構造体の製造、部品の組み立て、爆弾の解除、または微細な運動技能を要する任意の他の作業といった、外科手術作業でも医療作業でもない作業に使用される。本デバイスの代替的な実施形態は、人間サイズまたは実際よりも大きいアームを伴って製造され得、これにより人間では小さすぎる、弱すぎる、または行
えない作業を人間が行うことが可能となる。明白なことに、そのような実施形態では、ユーザは、必ずしも外科医でない場合がある。
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語を次のように定義する。
【0026】
外科医:デバイスのユーザ
【0027】
腹腔:デバイスが挿入される任意の閉鎖された領域または部分的に閉鎖された領域
【0028】
腹壁:前述の腹腔を部分的または完全に閉鎖する壁部
【0029】
トロカール:前述の腹壁を通してデバイスを挿入するためのチューブ
【0030】
遠位:ロボットアームのエンドエフェクタに近い側
【0031】
近位:ロボットアームのエンドエフェクタから遠い側
【0032】
[全体的なデバイスの設計]
図1Aは、患者の腹腔内に設置される、本発明者らのデバイスの一実施形態の等角図を示す。本デバイスは、中心体101に接続された導管100を備える。中心体は、患者の腹部内に配置される。導管は、腹壁を横断し、それによって電力、信号、制御ケーブル、灌水、真空、及び任意の他のシステムを患者の体外のシステムから患者の身体内に入れる、中空のチューブで構成されている。一部の実施形態では、導管100は、様々なシステム及びケーブルを分離させ、独立した流体チャネルを提供するために、複数のルーメンを含む。他の実施形態では、導管は、全ての制御ケーブルが緩んでいる間は導管が可撓性であるが、張力が導管内の制御ケーブルに適用されると硬直するように、複数の連動セグメントを有する。この設計は、連動セグメントがケーブルによって接続されているキャンプ用テントの支持ポールに類似の様式で機能する。ケーブルが引っ張られ、セグメントが一緒に移動すると、硬性のポールが形成される。更に別の実施形態では、導管は硬性のチューブが非線形の形状に曲げられたものである。
【0033】
図1Aは更に、中心体101に取り付けられた右のロボットアーム103及び左のロボットアーム104を示す。これらのロボットアームのそれぞれは、人間型ロボットアームを成すように接続される、複数のアクチュエータを備える。各ロボットアームのアクチュエータが組み立てられて、ロボットショルダ105、ロボットエルボ106、ロボットリスト107、及び外科手術用エンドエフェクタ109を成す。
【0034】
図1Bは、中心体101に取り付けられたカメラアセンブリ102を示す。このカメラ本体は、ロボットショルダ105間のほぼ中央、かつロボットショルダのやや上に位置するように配置される。カメラ本体は、以下の比率に忠実になるように配置される。
【数1】
【0035】
典型的な人間ではこの比は大体2に等しくなるが、比は人によって変動し得ることを理解されたい。一実施形態において、本デバイスは、外科医の比の正確に一致するように作製されてもよいが、別の実施形態では、汎用の比は、大体、一般的な外科医の比率に維持される。別の実施形態において、この比は、使用中または患者への挿入前のいずれかに調整することができる。あるいは、この比は、使用時のデバイスの全体的な垂直方向高さを低減させるように、意図的に増加させることもできる。この低減は、患者の腹腔内の作業部位を増大させるように機能する。初期のデバイスの汎用性を最大にするために、一実施形態は、およそ4の比で設計され、人間に似た感覚の一部はデバイスの汎用性を増加させるために妥協される。1~4の比を有するデバイスであれば、外科医の人間的な観点が十分に保たれると仮説される。
【0036】
上述の比で、カメラアセンブリは、自然な人間的観点のロボットアームが得られるような位置に配置される。人間型ロボットアームを1つだけ有するデバイスの代替的な実施形態では、カメラは、依然として、人間のような視点を維持するようにアームよりも上に配置される。更に、別の代替的な実施形態では、カメラは、カメラアセンブリ102と2つのロボットショルダ105とによって形成される面が、中心体101と2つのロボットショルダとによって形成される面に対して垂直となるように、前方に移動される。あるいは、カメラのズームにより、カメラがより前方に配置されているというカメラの印象をユーザに与えてもよく、またはアクチュエータにより、処置中に前方に移動する能力がカメラ本体に与えられてもよい。
【0037】
他の実施形態では、右のロボットアーム103、左のロボットアーム104、及びカメラアセンブリ102のうちのいずれも、中心体101に取り付けられていない。これらの実施形態では、このシステムの個々の構成要素は、患者の腹腔に別々に挿入される。これらの構成要素は、単一のトロカールを通して、または複数のトロカールを通して挿入されてもよい。これらの構成要素は、腹腔内で組み立てられ得る。あるいは、これらの構成要素は、別個のままであるが、人間型ロボット装置が、自然で人間的な明視化と一緒に機能するように、配置され得る。1つのそのような実施形態には、
図17に示されるような、別個に挿入され、専用の導管234によって支持されるカメラシステムが含まれる。
【0038】
[ロボットアームの設計]
図2Aは、右のロボットアーム103(
図1A)の等角図を示す。このアームは、複数のロボットジョイントから構成されている。第1のアクチュエータ110(
図2A)は、中心体101(
図1A)に接続される。一実施形態において、第1のアクチュエータは、外科医が、デバイスのいずれの側でも操作を行うことを可能にし、腹腔への挿入及びそこからの取り出しのためにデバイスを真っ直ぐにするように機能する。
図2Bは、ロボットアームがデバイスの一方の側部で動作するように配置されるように配向された、左右両方のアームの第1のアクチュエータを示す。同様に、
図2Cは、外科手術用アームがデバイスの第2の側部で動作するように配置されるように配向された、左右両方のアームの第1のアクチュエータを示す。デバイスの第2の側部で動作している場合、右のアームが左のアームとなり、左のアームが右のアームとなる。この変更は、デバイスを制御するソフトウェアで行われる。
【0039】
更に、カメラアセンブリ102(
図1A)は、180度を上回って回転することができる。この運動範囲は、外科医が、患者の腹腔の任意の場所にデバイスを設置し、任意の配向から腹部を確認することが可能にする。例えば、患者の胆嚢に施術を行うために、外科医は、患者の左側にデバイスを設置し、患者の右側に向けてアーム及びカメラを配向することができる。あるいは、胃への施術のために、外科医は、患者の右側にデバイスを設置し、患者の左側に向けてアーム及びカメラを配向してもよい。この汎用性により、1つの
デバイスを多数の異なる処置に使用することが可能となる。
【0040】
図2Aは更に、第1のアクチュエータ110に接続された第2のアクチュエータ111及び第2のアクチュエータに接続された第3のアクチュエータ112を示す。第2のアクチュエータは、アームの中心部に沿って軸を中心とした回転動作を提供する。第3のアクチュエータは、第2のアクチュエータの軸に垂直な軸を中心とした回転により、ヒンジ動作を提供する。第2及び第3のアクチュエータが一緒になって、人間の肩の球関節のものを模した2自由度を有するロボットショルダ105(
図1A)が提供される。これらの運動度は、人間の肩の外転/内転及び人間の腕の屈曲/伸展を模倣する。代替的な実施形態では、ボールジョイントアクチュエータを含む他のアクチュエータ種により、ショルダの自由度を可能にすることができる。
【0041】
図2Aは更に、第4のアクチュエータ113及び第5のアクチュエータ114を示す。第4のアクチュエータは第3及び第5のアクチュエータに接続し、アームの中心部に沿って軸を中心とした回転動作を提供する。第4のアクチュエータの回転動作は、人間の腕の外向き/内向きの回転運動を模倣する。第5のアクチュエータは第4のアクチュエータに接続し、ロボットエルボ106(
図1A)を形成する。第5のアクチュエータは、第4のアクチュエータの軸に垂直な軸を中心とした回転により、ヒンジ動作を提供する。第5のアクチュエータのヒンジ式アクチュエータは、人間の肘の屈曲/伸展運動を模倣する。
【0042】
図2Aは更に、第6のアクチュエータ115及び第7のアクチュエータ116を示す。第6のアクチュエータは第5及び第7のアクチュエータに接続し、アームの中心部に沿って軸を中心とした回転動作を提供する。第6のアクチュエータの回転動作は、人間の手掌の回外/回内運動を模倣する。第7のアクチュエータは第6のアクチュエータに接続し、ロボットリストを形成する。第7のアクチュエータは、第6のアクチュエータの軸に垂直な軸を中心とした回転により、ヒンジ動作を提供する。第7のアクチュエータのヒンジ式アクチュエータは、手首の伸長及び屈曲運動を模倣する。外科手術用エンドエフェクタ109は、第7のアクチュエータに接続される。一実施形態において、外科手術用エンドエフェクタにより、親指と人差し指(第一指と第二指)とによる挟持に類似の運動を有するロボット把持器が外科医に提供される。
【0043】
上述のアクチュエータの組み合わせにより、ロボットアームは、人間の腕のものを模した自由度を有する。したがって、アームは、人間の腕の動きをほぼ正確に再現することができる。以下に記載される回転式及びエルボ型アクチュエータのいずれについても特定の設計により、この自由度の大きなロボットアームが人間の動きの再現及び標準的な12mmのトロカールに適合することの両方が可能となる。
【0044】
一実施形態において、回転式アクチュエータは、無制限に連続的な回転を提供するものではない。したがって、アームは、無制限に人間の肩の全ての動きを完全に模倣することはできない。ある特定の動きが何回か繰り返されると、結果として第2のアクチュエータが機械的限界に達する。この限界を克服するために、一実施形態では、コンピュータ制御アルゴリズムにより、連続的な回転を必要としないように、ショルダジョイントの動きを制限する。ソフトウェアにより、外科医が仮想平面を通ってロボットアームを移動させないようにする。連続的な回転は、それぞれの第2のアクチュエータの軸がそのそれぞれのアームの面と一致するように、仮想平面が各ロボットアームに対して配置されている限り、必要となることはない。この面は、外科手術毎の必要性に応じて異なって配向され得る。例えば、完全にデバイスよりも低い位置で施術する場合、両方のアームの面は、地面と平行であり、それによって、ロボットエルボは、ロボットショルダの高さを超えて通過することはあり得ない。あるいは、デバイスの前方での外科手術については、これらの面は、地面と垂直に配置されてもよい。
【0045】
一実施形態において、ロボットデバイスには、橈屈/尺屈を模倣する自由度は含まれない。人間の腕はこの自由度を有するが、発明者らの実験により、この自由度がデバイスの機能には重要でないことが分かった。しかしながら、本デバイスの代替的な実施形態では、この自由度が提供される。
【0046】
[デバイスの挿入及び取り出し]
図3Aは、患者の腹腔に挿入し、そこから取り出すように構成される、アームが2つの外科手術用ロボットデバイスの一実施形態を示す。挿入については、全てのヒンジジョイントが、
図3Aに示される直線配向で配置される。一実施形態において、ヒンジジョイントは、ケーブルにかかっている力を取り除くことによって直線状になり、これによって全てのヒンジジョイントが緩む。緩んだジョイントは、必要に応じて手作業で真っ直ぐにする。代替的な実施形態では、アクチュエータが駆動して直線状配置となる。一部の実施形態では、アクチュエータは、電力供給され、更に、自由に動いているアクチュエータを制動によりシミュレートする制動アルゴリズムにより制御され続け得る。別の実施形態では、ジョイントを作動させて、以下に考察されるような湾曲したトロカールを通すために非線形の配向にする。
【0047】
一部の実施形態では、外科手術用ロボットデバイスは、トロカール117を通して腹部に挿入され得る。一実施形態において、トロカールは、挿入時のデバイスのものに類似した断面プロファイルを有して設計される。挿入時に、デバイスは、患者の腹壁の切開部を可能な限り小さいものにすることができるように、最小限の間隙でトロカールを通過する。代替的な実施形態では、デバイスは、標準的な市販のトロカールを通して挿入され得る。
【0048】
図3Bは、デバイスが既に挿入されたトロカールを示す。
図3C及び
図3Dは、トロカール及びトロカールの内部スリーブ118を示す。挿入されると、導管100(
図3B)が、非円形のトロカール117の一部分119(
図3D)を消費する。一実施形態において、トロカールの内部スリーブ118は、導管を正しい位置に保つように配置され、それによって、トロカールには12mmの円形開口部120が残る。一部の実施形態では、この内部スリーブが、トロカールにガス封止を形成する。他の実施形態では、内部スリーブは、外科手術時の送気のためのガス封止の維持に役立つように、ゴム製の逆止弁を含む。1つの代替的な実施形態では、トロカールは、可撓性かつ/または湾曲している。この可撓性により、湾曲したデバイスまたは導管がトロカールを通ることが可能となる。
【0049】
一部の実施形態では、内部スリーブは、患者の外部のガスポートと患者の腹部の内部とを接続するチューブを含む。このチューブ及びガスポートにより、腹腔の送気が可能となる。あるいは、トロカール117が、送気を可能にするそのようなチューブ及びガスポートを含んでもよい。一部の実施形態では、トロカールは、ロボットデバイスの挿入前に、送気圧力を維持するための逆止弁を含む。他の実施形態では、取り外し可能なプラグにより、ロボットデバイスが取り外された状態でトロカールの開口部が送気されることを防ぐ。
【0050】
図4は、挿入体121内に配置された本デバイスの一実施形態を示す。この挿入体により、患者の腹部にデバイスを容易に移動させることが可能となる。デバイスは、外科医が手作業でデバイスのヒンジジョイントを真っ直ぐにする必要性を防ぐために、挿入体内に入れて輸送され得る。外科医は、単純に、トロカールを通して挿入体122の遠位端を摺動させる。挿入体の遠位端は、挿入の際に組織を傷つけないように、軟質で丸みを帯びて形成されている。外科医は、抵抗を感じ、腹壁または器官との接触が示されるまで、挿入体を患者の腹腔に摺動させる。接触すると、外科医は、デバイスを前進させながら挿入体
を後退させる。デバイスが挿入体の保護から離れると、柔弱なヒンジジョイントが屈曲して、デバイスが腹部内で丸まることが可能となる。一部の実施形態では、挿入体の遠位端122には、任意の標準的な感知手段(静電容量、抵抗、導電性、圧力等)を用いて、腹壁との接触及び/または腹壁への近接性を検出するためのセンサが含まれる。他の実施形態では、挿入体全体が可撓性かつ/または湾曲している。
【0051】
挿入体はまた、デバイスの取り出しにも役立ち得る。助手が、トロカールを通して挿入体を設置する場合がある。外科医は、アームを挿入体に最も近い位置から挿入体内へと移動させ、それによって、挿入体は、それが腹部から取り出されるときに、デバイスの全体にわたり摺動する。
【0052】
図5Aは、更なるトロカールの内部スリーブ123を示す。このスリーブは、極めて薄く、トロカールが腹壁を横断して配置された後に、トロカール内に挿入される。カメラ124は、トロカールの開口部を塞がないように、トロカールの内部スリーブの端部に取り付けられる。
図5Bは、トロカールを通して挿入されている、更なるトロカールの内部スリーブを示す。
図5Cは、適切な位置にあり、トロカールに完全に挿入された、更なるトロカールの内部スリーブを示す。いったん挿入されると、カメラは、腹腔の明視化を提供し、またデバイスの安全な腹腔への挿入及びそこからの取り出しに役立つ。このカメラは更に、光源、ならびに処置の際に役立ち、その際にデータを取得するための他のセンサを更に備えてもよい。このカメラは、追加として、腹部内において複数の視点を提供する複数のカメラから構成されてもよい。
【0053】
[カメラ及び明視化システム]
図6Aは、患者の腹腔内で使用するように構成される、カメラ及び明視化システムを示す。
図6Bは、トロカールを通して挿入するように構成される、カメラ及び明視化システムを示す。カメラシステムは、ヒンジジョイント126及びボールジョイント127の作動によって、
図6Aに示される使用中の位置と、
図6Bに示される挿入位置との間を移動する。ヒンジジョイント126は、
図7Cに最も良好に明視化されている。ヒンジジョイント及びボールジョイントは、ケーブル、モータ、磁石、電磁石等を含む、任意の標準的な作動手段を用いて作動させることができる。一実施形態において、ヒンジジョイントは、バネがカメラを作動させて
図6Aに示される使用中の位置にすることで、バネによって作動される。トロカールを通してデバイスを後退させると、トロカールの端部によって適用される力の方向が、バネ作動型ヒンジジョイントに向けられて、
図6Bに示される挿入位置へと移動し、それがトロカールまたは挿入チューブ内に嵌合することが可能となる。
【0054】
図6Aに示されるカメラシステムは、カメラ本体125に隣接して、またはその上に配置される、第1のカメラ128及び第2のカメラ129を備える。カメラ本体は、ボールジョイント127の作動によって2自由度で枢動する。2自由度のこの運動により、カメラのパンシステム及びチルトシステムを成す。パンシステムはパン軸でカメラの視野を調整し、チルトシステムはチルト軸でカメラの視野を調整する。代替的な実施形態では、ボールジョイントは、2つのヒンジジョイントまたは1つの回転ジョイント及び1つのヒンジジョイントと置き換えられる。更に別の実施形態では、回転ジョイントは垂直軸を中心にカメラ本体を回転させ、一方でチルト運動はカメラの視野をデジタル調整することによって提供される。位置センサは、カメラ本体を移動させる各ジョイントの位置を正確に測定する。位置センサは、ホール効果センサ、光学エンコーダ、相対位置センサ、または任意の他の標準的な位置測定手段のいずれかを含んでもよい。
【0055】
別の実施形態では、パン及びチルトの一方または両方の調整がカメラ本体内でのカメラの移動によって提供されるように、カメラがカメラ本体内で移動する。この調整は、カメラ本体の移動と共に用いられてもよく、またはカメラ本体の移動の代わりとして用いられ
てもよい。カメラは、一緒または別個に移動し得る。カメラは、モータ作動、ケーブル作動、または任意の他の標準的な作動手段によって移動し得る。あるいは、カメラは、2自由度で自由に回転してもよく、磁気コイルによって作り出された磁場の方向で移動してもよい。
【0056】
一部の実施形態では、パン及びチルトのいずれの動きも、デジタルパン及びチルト調整によって提供される。デジタル調整は、デジタルカメラ画像をクロップすることによって提供される。クロップした画像は、パンまたはチルト移動が所望されるため、ユーザに表示されている画像の一部分が変化し、それによってカメラ移動の幻影を作成するように、自動で調整される。別の実施形態では、デジタルパン及びチルト調整が微細かつ高速な調整を行い、一方で機械的パン及びチルト調整が大きなパン及びチルト移動を可能にするように、デジタル調整と機械的調整との組み合わせが使用される。
【0057】
別の実施形態では、カメラアセンブリは、デバイスの他の部分とは異なる別個のユニットとして、腹部に挿入される。この別個のカメラアセンブリは、腹腔の内部に入れた後に、デバイスと取り外し可能に連結し得るか、または独立型ユニットとして機能してもよい。
【0058】
一部の実施形態では、カメラは、手術野の広範な明視化を可能にする広角レンズを有する。他の実施形態では、カメラは、広い垂直方向ビューと狭い水平方向ビューを可能にする非球面レンズを有する。歪みは、デジタル調整により取り除かれる。この広い垂直方向ビューにより、デジタル技術のみを用いてチルトの動きを提供することが可能となる。更に別の実施形態では、カメラ本体125は、視野を更に増やす複数のカメラデバイスを備える。カメラの複数のビューをデジタルで織り交ぜて、パノラマビューの1つの大きな画像が形成される。当該技術分野で既知の標準的なデジタル技術を使用して、画像が織り交ぜられる。別の実施形態では、カメラ本体は更に、圧力、静電容量、温度、赤外線、紫外線のいずれかを感知する他のデバイス、または任意の他のセンサデバイスを備える。
【0059】
一実施形態において、カメラ本体125は、1つのカメラ128と2つ目のカメラ129との間に配置されるLEDアレイを更に備える。これらのLEDは、手術野を照明するように機能する。これらのLEDは、本体の外側に繋がっているワイヤから電力を得る。LEDからの熱は、カメラ本体内で消散される。一部の実施形態では、少量の滅菌食塩水または他の生体適合性流体が、カメラ本体を流れて、カメラ本体を冷却してもよい。他の実施形態は、カメラ本体が安全な温度範囲内にあることを確実にするために、温度センサを更に備える。別の実施形態では、LEDは、デバイスの他の本体内に設置され、異なる角度の照明ならびにより大きな吸熱体が提供される。
【0060】
腹部を光ファイバまたは別の光源により照明することもできると考えられる。光ファイバは、アクチュエーションケーブルを用いて、または別の切開部を通して、体内に供給され得る。一実施形態において、光ファイバは、21ゲージの血管カテーテル等の非常に小さなチューブから腹部に通される。ファイバは、腹部の内部でデバイスに嵌合してもよく、またはデバイスと嵌合せずに照明を提供するように機能してもよい。そのような照明システムは、少ない熱でたくさんの光を提供するが、システム全体の複雑さが増すという犠牲を伴う。
【0061】
カメラ本体は、その視野が、トロカールによる挿入方向に垂直となる状態で挿入される。これにより、カメラ間の距離130が、デバイスが挿入される切開部のサイズよりも大きくなるように、カメラ本体125(
図6A)の上またはその中にカメラを設置することが可能となる。カメラ間の距離が大きくなることで、カメラシステムは、視差を明視化し、ユーザに奥行きを気付かせるという能力が増加している。カメラ間の距離は、自然かつ
人間に似たシステムを維持し、次のことが得られるように選択される。
【数2】
【0062】
[人間とデバイスとの相互作用]
自然な人間と機械とのインターフェース(HMI)は、人間型ロボットデバイスと自然な明視化システムとを最良に活用するように設計された。一実施形態は、外科医が、自身の腕を動かしてデバイスを制御することを可能にする。外科医は、一連のゴムバンドを着用し、各バンドが外科医の腕にセンサを固定する。一実施形態では、このセンサは、MPU-6050センサである。MPU-6050は、センサの配向を計算するために、MEMSジャイロスコープ、加速度計、及びデジタル運動プロセッサを含む。
【0063】
図15Aを参照すると、一実施形態では、外科医は、8つのゴムバンド226及び227を着用している。これらのゴムバンドにより、
図15に示されるように、8つのMPU-6050センサが外科医の腕に固定される。左右の人差し指224、手背223、前腕遠位背側222、及び上腕遠位背側221のそれぞれに、1つのバンドが設置されている。各上腕センサを格納する筐体は、更に、マイクロコントローラ、電池、及びBluetooth(登録商標)モジュールを格納する。遠位センサからのデータは、ワイヤ225を通じてI2Cプロトコルを用いて収集され、Bluetooth(登録商標)で中央コンピュータへと送信される。
【0064】
8つのMPU-6050センサからのデータを用いて、中央コンピュータは、外科医の各部分の位置と配向を計算することができる。将来的なソリューションとしては、外科医の胴または任意の他の身体部位の追跡が含まれる。更に、代替的な実施形態は、各加速度計、ジャイロスコープ、及び運動プロセッサユニットに追加して、MEMS磁力計を含む。MPU-9250等のMEMSチップは、上述のものの全てを単一のパッケージで提供する。磁針路は垂直軸を中心とするセンサのドリフトを減少させるため、磁力計を追加することは当該分野で標準的な慣習である。代替的な実施形態はまた、手袋、手術用洗浄具、または手術衣といった、手術用具にセンサを設置することを含む。これらのセンサは、再利用可能であってもよく、または使い捨てであってもよい。
【0065】
更に別の実施形態は、外科医の腕及び身体の位置を追跡するためのセンサの追加を含む。そのようなセンサは、Xbox Kinect(登録商標)のセンサに類似であり、外科医の腕の絶対位置の追跡及び互いに対する腕の位置の追跡を可能にする。一部の実施形態では、これらの追加のセンサは、外科医の身体に着用される。他の実施形態では、センサは、室内の固定位置に配置される。
【0066】
外科医の腕を追跡する能力により、中央コンピュータ内の制御ループは、デバイスの人間型ロボットアームを制御するサーボモータを駆動する。これは、
図16のブロック図に見ることができる。アームは、縮小された外科医の腕の動きに従うように制御される。ロボットエルボは、人間の肘の位置及び配向に従う。ロボットリストは、人間の手首の位置及び配向に従う。外科手術用エンドエフェクタは、外科医が人差し指と親指を一緒に挟むときの外科医の人差し指の動きに従う。
【0067】
デバイスのアームは、外科医の腕の動きに従うが、デバイスのショルダは位置が固定されている。一実施形態において、外科医の胴の位置及び配向が、外科医の腕の位置及び配向から差し引かれる。この差し引きにより、外科医が腕を動かすことなく自身の胴を動かすことが可能となる。代替的な実施形態には、外科医が自身の肩を空間内に固定して保つことを促すために、パッド付きの椅子が含まれる。外科医が自身の肩を動かすことを防止することにより、外科医は、デバイスが再現できない動きを行うことを回避し、それによって、デバイスの自然な感覚が増す。
【0068】
外科医は、デバイスの最良な明視化のために仮想現実頭部装着型ディスプレイ220(
図15)を着用する。Oculus Rift等の適切な頭部装着型ディスプレイにより、頭部装着型ディスプレイ、ディスプレイの集中ビューを可能にするレンズ、ならびにディスプレイの位置及び配向の追跡を提供するためのセンサシステムがユーザに提供される。位置及び配向センサシステムは、加速度計ジャイロスコープ、磁力計、運動プロセッサ、赤外線追跡、コンピュータビジョン、位置及び配向のうちの少なくとも1つを追跡する任意の他の方法、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。市場には多数のディスプレイが出ているが、本システムに最良なものを選択することが重要である。典型的に本システムのデバイス機能の改善をもたらすディスプレイの特徴としては、視野の増加、待ち時間の減少、残像の減少、解像度の向上、低重量、快適さの向上、ならびに表示の位置及び配向の追跡の改善が挙げられる。
【0069】
頭部装着型ディスプレイを用いて、
図16のブロック図に見られるように、コンピュータは、デバイスの明視化システムから収集したビデオを処理する。一実施形態において、この節で後述されるように、第1及び第2のカメラ128及び129(
図6A)の両方からビデオが収集され、処理される。1つのカメラ128からの処理されたビデオが、外科医の右目に表示される。同様に、1つのカメラ129からの処理されたビデオが、外科医の左目に表示される。腹腔内で離間した別個のカメラからの右目及び左目のビューを組み合わせることにより、外科医には立体的なビューが提供される。
【0070】
完全な仮想現実体験を維持するために、センサシステムは、外科医の頭部装着型ディスプレイの位置及び配向を追跡する。このセンサシステムは、リアルタイムでデータを中央コンピュータへと中継する。中央コンピュータは、ユーザの頭部の動きに従うように可能な限り迅速にデバイスのカメラシステムのパン及びチルトを調整する。外科医が遅れに気付くことがないように十分に速くカメラのパン及びチルトを調節することは困難であるため、ソフトウェアにより、カメラのビューをわずかに調整して、カメラ位置と外科医の頭部位置との間の任意の差を補う。
【0071】
一部の実施形態は、外科医に明視的なフィードバックのみを提供するが、代替的な実施形態では、多数の追加のフィードバックシステムが提供される。一実施形態において、外科医はデバイスを保持して、触覚によるフィードバックを得る。そのようなデバイスは、2つの部材に接続された小型のサーボモータと同程度に単純なものであり得る。外科医が部材を挟むと、サーボモータがその動きに抵抗する。触覚的フィードバックを提供するサーボモータ、ならびにロボット把持器において位置及び力を感知することにより、標準的な力制御アルゴリズムを用いて、把持器が呈する力を外科医が「感じる」ことが可能となり得る。
【0072】
代替的な実施形態では、外科医には、自身の腕のそれぞれに着用する外骨格型デバイスが提供される。そのようなデバイスは、ロボットアームのそれぞれのアクチュエータのためのサーボ機構を格納しており、外科医がそれぞれのロボットアクチュエータに関する触覚的フィードバックを経験することを可能にするであろう。更に別の実施形態では、外科
医は、現在市場で知られている標準的な触覚的相互作用デバイスを使用して、デバイスと相互作用する。
【0073】
一実施形態において、外科医の腕からの動作は、直接的なスケーリングでのみデバイスのアームの動きに変換される。しかしながら、他の実施形態では、調整可能な動作のスケーリングが含まれる場合がある。一実施形態において、動作は、外科医の肘が10度移動すると、デバイスのエルボが5度移動するように、更に縮小される。このスケーリングは、デバイスの自然な感覚が減少する代わりに、巧妙さの向上を可能にする。別の実施形態では、調整可能なスケーリングが含まれ、ここで、倍率は、移動の速度と関連している。例えば、外科医の肘が1秒間につき10度で10度移動した場合、デバイスのエルボは3度移動する。外科医の肘が1秒間につき50度で10度移動した場合、デバイスのエルボは15度移動する。
【0074】
図16のブロック図は、デバイスが全体としてどのように情報を収集し、それを使用するかを示す全体図を示す。センサ229は、外科医の身体運動を追跡し、この情報を中央コンピュータへと中継する。中央コンピュータは、制御ループ230、ならびにビデオレンダリング及び拡大ソフトウェア及びハードウェア231を含んでいる。外科医の腕及び身体の位置に関する情報を使用して、意図されるロボットアクチュエータの位置が計算される。制御ループは、所望されるロボットアクチュエータ位置をサーボモータのエンコーダ、サーボモータトルク、デバイスエンコーダ、及び任意の他の関連システムと組み合わせて使用して、サーボモータ232への電力出力を計算し続ける。これらの制御ループは、標準的な調節された比例積分導関数「PID」による制御を使用して、サーボモータへの電力出力を決定することができる。あるいは、特別な制御ループを用いてもよい。サーボモータは、本出願で後述されるように、患者の内部でデバイス233に接続される。
【0075】
デバイスは、患者の内部で、カメラシステムからのビデオ信号を収集し、これらの信号を中央コンピュータのビデオレンダリング及びオーグメンテーションシステム231に送信する。このシステムは、カメラの位置及び配向に関する情報を、ビデオ信号ならびに外科医の頭部の位置及び配向と組み合わせる。この情報を用いて、ビデオレンダリング及びオーグメンテーションシステムは、ビデオ信号を作り出し、この信号を外科医の仮想現実ディスプレイ228へと送信する。このブロック図は、概して、デバイスに関して記載しているが、代替的な実施形態は、システム内でのデータのより複雑な処理及び使用を可能にするために追加のセンサ及び要素ならびにブロック図の構成要素間の追加の接続を有することに留意されたい。
【0076】
[現実性の拡張]
外科医の施術能力を更に強化するために、現実性が、外科医に多くの情報を提供するように拡張されてもよい。この現実性の拡張は、仮想現実体験に追加することによって、外科医の施術能力を助長するように機能する。例えば、一実施形態では、デバイスのカメラはズーム機能を有する。外科医自身の眼はズームするよう命令することができないため、外科医にとって施術中にこのズーム機能を使用することは不自然であろう。しかしながら、アニメーションを使用して、外科医は、使用中に、拡大鏡またはルーペを選択し、自身の仮想眼球の前に拡大鏡を持ってくることができる。この現実性の拡張により、外科医は自身がズームの増加をもたらしているような感覚を得、それによって、外科医とデバイスとの間の自然な仮想現実の繋がりを維持することが可能となる。
【0077】
別の実施形態では、外科医は、患者の腹部内に拡張現実要素を設置することができる。例えば、患者のX線スキャンを確認するために、外科医は、患者の腹腔内に(施術範囲外の領域であることが多い)仮想コンピュータモニタを設置することを選択する場合がある。この仮想現実モニタにより、外科医が、施術の仮想現実性から出ることなく画像をめく
ることが可能となる。
【0078】
別の実施形態では、コンピュータは、外科医の視野の範囲内でロボットアームの位置を追跡する。外科医が過剰な力を加えると、コンピュータが、外科医のビュー内のロボットアームの色を赤く見えるように拡張させる。同様に、ロボットアームまたは外科手術用エンドエフェクタは、外科医が焼灼装置での焼灼を有効にしたときに色を変化させるように設定されてもよい。
【0079】
[中央接続システム]
図7A及び7Bは、中央接続システムを示す。中央接続システムは、アームの支持、カメラアセンブリ102の支持、ならびにケーブル及び電力システムのルーティングを含む、複数の目的を果たす。中央接続システムは、導管100に接続された主中心体131を備える。この接続は、スプライン、圧入、接着、溶接、または任意の他の既存の取り付け手段といった、当業者に既知の任意の標準的な取り付け方法により形成される。
図7Bは、後述されるように、アームが4つの実施形態で使用される接続ワイヤのケーブルトラック137を示す。前部カバー133により、ケーブルがトラック内に保持される。
【0080】
患者の体内に入るケーブルは、導管内で、
図7Cの分解図に示されるように、プーリシステム132を介して適切なアクチュエータへとルーティングされる。これらのプーリは、ケーブルが緩んでいるときでさえも適切な場所に留まるように、v字の溝135内にケーブルを捉えている。プーリの車軸136は、適切な場所に機械加工されるか、または事前に開けられた穴に嵌合するかのいずれかである。後部カバー134は、テープ穴138に螺合するボルトで適切な位置に固定される。
【0081】
一実施形態で使用される中央接続システムは、1つのトロカールを通してシステム全体を挿入することを可能にするが、代替的な実施形態は、複数個の単一アームユニットが別個のトロカールを通して挿入されることを可能にする。例えば、3つのトロカールを使用して、2つの人間型ロボット操作装置と1つの仮想現実カメラとを導入してもよい。この構成により、同じ仮想現実手術が、中央接続システムを必要とすることなく達成されるであろう。しかしながら、必要とされる患者の切開部の数を増加させ、挿入された後のデバイスの操縦性を低下させるであろう。
【0082】
[ヒンジアクチュエータの設計]
第1のアクチュエータ110(
図2A)、第3のアクチュエータ112、第5のアクチュエータ114、及び第7のアクチュエータ116は、ヒンジアクチュエータである。一実施形態において、ヒンジアクチュエータは、可能な限り小さな空間で適切なトルク及び速度を提供するために、ケーブル駆動型である。この小型のアクチュエータ設計により、非常に小さな切開部による挿入が可能となる。
図8A及び
図8Bは、ヒンジアクチュエータの斜視図である。このヒンジアクチュエータには、メス型部品を別のアクチュエータまたは他のデバイス要素に取り付けるために、複数のボルト穴140を伴う2つのメス型構成要素139が含まれる。この取り付けにより、近位接続構成要素が形成される。代替的な設計には、他の既知の手段による取り付けが含まれる。これらの手段は、単一体としてのメス型ヒンジ構成要素及び近位に取り付けられた構成要素の作製を含み得る。メス型構成要素は、アクチュエータのオス型構成要素のための領域を除き、離間している。各メス型構成要素には、近位に接続されたシステムから遠位のアクチュエータまで紐、ケーブル、ワイヤ、及び他のシステムをアクチュエータに通すための、複数の紐誘導穴142が含まれる。代替的な設計では、紐誘導穴は、システムが同様に通過できるスロットまたは単一の穴と置き換えられる。更に、各メス型ヒンジ構成要素は、メス型軸受面141を含む。一実施形態において、メス型軸受面は、平滑な機械加工面を備える。しかしながら、代替的な設計としては、転がり軸受、ニードル軸受、流体軸受、または任意の他の軸受種が
含まれる。
【0083】
図8A及び
図8Bは、更に、主ヒンジ体143を示す。この主ヒンジ体には、更なるアクチュエータまたはシステムへの接続に使用される、複数のボス144をその遠位端に備える、遠位接続構成要素が含まれる。これらのボスには、遠位システムをアクチュエータのボスに取り付けることを可能にするための複数のネジ穴145が含まれる。一実施形態ではボルトによる取り付けが含まれるが、主ヒンジ体を有する単一体として遠位に取り付けられる構成要素の作製を含む、任意の取り付け手段が適切であり得る。主ヒンジ体には、近位に接続されたシステムから遠位のアクチュエータまで紐、ケーブル、ワイヤ、及び他のシステムをアクチュエータに通すための、複数の紐誘導穴153が含まれる。これらの紐誘導穴は、メス型構成要素の紐誘導穴142と同じ邸宅で機能する。主ヒンジ体は更に、プーリまたはキャプスタン146を備える。このキャプスタンは、ヒンジジョイントを作動させる手段である。2つのアクチュエーションケーブルが、近位に取り付けられた本体において導管149内から経路147に沿って供給される。これらのケーブルは、プーリの周りに巻き付き続け、ケーブル終端部位148において終端処理される。
【0084】
一実施形態において、硬性表面とネジ穴150に配置された止めネジとの間にケーブルを挟むことによって、ケーブルが終端処理される。あるいは、ケーブルは、当該技術分野で既知の任意の適切な手段を用いて終端処理されてもよい。例えば、ポリマーファイバケーブルは、ケーブル結び目を作ることにより終端処理してもよく、または金属ファイバケーブルは、圧着接続によって終端処理してもよい。一実施形態において、2つの作動方向のそれぞれに、反対方向でプーリの周りに通された独立したケーブルが提供される。代替的な設計は、第1のアクチュエーションケーブル導管穴149を介して進入し、プーリの周りを1回または複数回巻き付き、第2のケーブル導管穴から出る単一のケーブルを含む。この設計により、アクチュエータ内でケーブルを終端処理する必要性が排除され、ケーブルがプーリを滑ることを可能にする。いずれの実施形態も、特定の用途に応じて適切であり得る。別の実施形態では、単一のケーブルが、ヒンジアクチュエータをある方向に作動させ、一方でバネまたは他のエネルギー蓄積装置により反対方向の作動が提供される。
【0085】
図8A及び
図8Bは更に、主ヒンジ体143の両側に、外形付けられたプロファイル表面152が作製されていることを示す。この外形付けされたプロファイルにより、アクチュエータケーブル、ワイヤ、及び任意の他のシステムが、ヒンジジョイントを通って近位アクチュエータ及びデバイスから遠位アクチュエータ及びデバイスに到達することが可能となる。
図9A及び9Bは、外形経路の機能を示す断面図を示す。経路は、通過するケーブル及びシステムの中立軸158(
図9A及び
図9B)が、全ての時点でほぼ同じ長さに留まるように、外形付けられる。長さは、主ヒンジ体143がメス型ヒンジ部品に対して回転する間も、相対的に変化しない。この外形状は、アクチュエータを通るケーブルのCAD分析を用いて生成された。外形状は、一実施形態において、ケーブルが全ての作動位置でその開始時の長さの約1%以内に留まるまで、調整した。本実施形態では、外形表面は、アルミニウムから形成される。ポリマーファイバケーブルが表面に沿って通っている。代替的な設計としては、低摩擦性材料から作成された(または低摩擦性材料でコーティングされた)表面、低摩擦性材料でコーティングされたケーブル、または摩耗耐性材料から作成された表面のいずれかが含まれる。更に、表面は、表面とケーブルとの間の摩擦を更に低減させるように、複数の捕捉されたローラ、ボール、またはプーリを更に備えてもよい。
【0086】
外形付けした表面152を追加することにより、ヒンジアクチュエータは、結果として遠位システムを作動させることなく、広い角度範囲で作動することができる。外形付けした表面により、連動した運動を伴うことなく数十のケーブルをヒンジアクチュエータに通すことが可能となる。これにより、アクチュエータ間でいずれの大幅な連動した運動を伴
うことなく、多数のケーブル駆動型アクチュエータをヒンジアクチュエータの遠位側に取り付けることが可能となる。現在外科手術で使用されている代替的なアクチュエータ設計は、せいぜい、ある程度連動した運動を伴って数個のケーブルを通すことができるだけである。この外形付けした表面により、多数のケーブルの連動する運動をほぼ完全に解除することが可能となり、それによって、7自由度のロボットアームが12mmのトロカールに適合することを可能にする。
【0087】
一部の実施形態では、アクチュエータ内のアクチュエータケーブルの長さの変化は、アクチュエータが110度の移動範囲にわたって移動するため、約10%未満である。他の実施形態において、長さの変化は、約9%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約8%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約7%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約6%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約5%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約4%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約3%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約2%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約1%未満である。
【0088】
各ヒンジアクチュエータは更に、
図8Bに示されるように、2つのオス型ヒンジ体154を備える。各オス型ヒンジ体は、プロファイルが主ヒンジ体143の歪曲プロファイル表面に同一のプロファイルである歪曲プロファイル表面152を有する。このプロファイル表面は、主ヒンジ体のプロファイル表面と同一に機能する。更に、各オス型ヒンジ体は、オス型ヒンジ体を主ヒンジ体に取り付けるための複数のボルト穴157を備える。ボルトが主ヒンジ体のネジ穴151に螺合されて、オス型ヒンジ体が主ヒンジ体に半永久的に固定される。オス型ヒンジ体は、ヒンジジョイントのヒンジピンとして作用するオス型ボス155を更に備える。オス型ボスに沿った軸受面156は、メス型ヒンジ構成要素139の軸受面141と関連して作用する。これらの面は、ヒンジジョイントの軸受を提供する。軸受が一緒に機能して、軸受システムが形成される。メス型軸受面にあるように、オス型軸受面は、円筒状の機械加工面であってもよく、または代替として、レースと、ボール、ニードル、流体等といった任意の種類の軸受とを含んでもよい。
【0089】
一実施形態では、複数のボルトによりオス型ヒンジ体154が主ヒンジ体143に固定されるが、任意の代替的な固定方法が許容され得る。1つの代替的な設計では、接着剤を用いて本体を固定する。別の設計では、本体は、単一体として作製され、それによって固定手段の必要性が排除される。1つの部品として作製することにより、作製作業の複雑さは増すが、組み立ての複雑さは軽減される。
【0090】
一実施形態において、全てのヒンジアクチュエータは同一となるように設計されるが、しかしながら、代替的な実施形態には、1つ、3つ、5つ、及び7つのアクチュエータの具体的な必要性を満たすために異なるヒンジアクチュエータが含まれる。例えば、第1のアクチュエータは、マイナス50度~プラス50度の範囲の動作を必要とし得る。したがって、本設計のアクチュエータは、理想的に機能する。しかしながら、第5のアクチュエータ(エルボジョイントを表す)は、約0度~160度の範囲の動作を必要とし得る。したがって、適切な動作範囲を有する改良されたアクチュエータが、このジョイントには理想的である。
【0091】
更に、代替的な実施形態には、一実施形態のアクチュエータとは大幅に異なるヒンジ式アクチュエータが含まれてもよい。アクチュエータは、モータ、ギヤボックス、ピストン、または任意の他のジョイントアクチュエーション手段を含み得る。
【0092】
別の実施形態において、アクチュエータは、ジョイントの位置を測定するためのエンコ
ーダを更に備える。測定は、ams AGによるAS5055に類似のホール効果エンコーダを用いて取得される。そのようなエンコーダは、ヒンジジョイント内に容易に嵌合し、12ビットの解像度で位置のリアルタイム測定を提供する。あるいは、光学及び抵抗エンコーダを含む、位置を測定する任意の手段を使用してもよい。データは、ワイヤを介して腹腔外のシステムに通信される。一部の実施形態では、データは無線で通信される。他の実施形態では、データは、導電性アクチュエータケーブルをワイヤとして使用して通信される。アクチュエータケーブルまたはその個々の線は、電気絶縁体でコーティングされ、ケーブルが、機械力の伝送に加えて、電力及びデータのうちの少なくとも1つを伝送することが可能となる。
【0093】
代替的な実施形態では、更に、ヒンジジョイントの負荷時に歪みを受ける部材に固定された少なくとも1つの歪みゲージを備える。そのような歪みゲージにより、アクチュエータが受ける力の測定が可能となる。
【0094】
[回転式アクチュエータの設計]
一実施形態の第2、第4、及び第6のアクチュエータ111、113、115(
図2A)は、回転式アクチュエータである。
図10A、
図10B、及び
図10Cは、一実施形態の回転式アクチュエータの図を示す。一実施形態において使用されるヒンジアクチュエータと同様に、回転式アクチュエータは、ケーブルにより駆動される。アクチュエータは、最小限のサイズで最大限のトルク及び速度を提供するように設計されている。
【0095】
回転式アクチュエータは、回転式メス型本体160を備える。回転式メス型本体は、それぞれが複数のボルト穴172を有する複数の近位接続ボス179を備える、近位接続部品を有する。ボルトによって近位接続ボスが近位アクチュエータまたは構造体に固定される。一実施形態では、固定手段としてボルトを用いるが、種々の代替的な固定手段が許容される。1つの代替的な設計では、回転式メス型本体及びそれが固定される近位構造体は、単一体として作製される。
【0096】
回転式オス型本体159は、回転式メス型本体160内に挿入される。回転式オス型本体は、それぞれが複数のテープ穴168(
図10C)を有する遠位接続ボス180(
図10A及び
図10B)を備える、遠位接続構成要素を有する。テープ穴に螺合されるボルトは、遠位システムを回転式オス型本体に接続する機能を果たす。ここでも、任意の代替的な取り付け手段が適切であり得る。
【0097】
回転式オス型本体は、小さな転がり軸受161及び大きな転がり軸受162(
図10A及び
図10B)の2つの転がり軸受を備える軸受システムによって、回転式メス型本体と比べると拘束されている。これらの転がり軸受は、V字型の軸受レース173及び174(
図10Dの断面図が最もよくわかる)によって軸方向の荷重及び半径方向の荷重の両方を支えるように作用する。V字型のレースにより、軸受は、実質的な軸方向及び半径方向の荷重を受けることができるが、軸受は、もはや最適な回転要素としての軸受ではなくなる。軸受のボール181(
図10C)が軸受レースに沿って回転するときに、わずかな滑りが起こるが、この滑りは、非常に小さなボールにより最小限に抑えられる。一実施形態において、軸受のボールは、直径およそ1mmである。デバイスのRPMが低いため、摩耗の心配はほとんどない。
【0098】
デバイスのサイズを最小限に抑えるために、転がり軸受は、デバイスに内蔵される。大きな転がり軸受162は、2つの軸受レース173を有する。一方のレースは、回転式メス型本体の遠位面に形成され、他方のレースは、大きな軸受のレースリング163に形成される。一実施形態では、製造費用を減らすために別個のリングに形成された軸受レース備えるが、代替的な実施形態では、回転式オス型本体に直接形成された軸受レースが含ま
れる。この代替的な設計により、製造の複雑さが増すが、デバイスのサイズは小さくなる。
【0099】
小さな軸受161は、アクチュエータの近位端に設置される。この小さな軸受は、回転式オス型本体159を回転式アクチュエータの近位回転式メス型本体160内に拘束する機能を果たす。この小さな転がり軸受は、近位接続ボス179の間に嵌合できるように、大きな転がり軸受162よりも小さい。小さな転がり軸受は、小さな転がり軸受のレースリング164及びスプライン転がり軸受のレースリング165に形成されたV溝レースを備える。スプライン転がり軸受のレースは、回転式オス型本体の近位端の表面に形成されたスプラインと嵌合するスプラインをその内面に有する。最後に、ナット166が、回転式オス型本体の近位表面に螺合される。このナットにより、小さい転がり軸受と大きい転がり軸受の両方が圧迫され、このナットは、ナットを回転させることによって印加される逆歪み力により2つの軸受の間に回転式メス型本体を挟持するように機能する。この逆歪み力は、意図される作動軸を除く全ての自由度で、回転式オス型本体を回転式メス型本体に拘束させる。
【0100】
更に、回転式オス型本体とスプライン型転がり軸受レースリング165との間のスプライン表面は、スプライン型転がり軸受レースリングが使用時に回転式オス型本体に対して回転することを防ぐ。これにより、時間と共にナットを緩める可能性のあるあらゆるトルクをナットから取り除く。代替的な実施形態では、ナットは、ネジロック剤、接着剤、割りピン、または任意の単手段により、正しい位置で保持される。更に別の代替的な実施形態において、ナットは、E型クリップまたは他の取り付け手段と置き換えられ、回転式オス型本体は、取り付けの際に歪みを受け、軸受の逆歪みが生じ得る。更に別の実施形態では、小さな軸受レースリング及びスプライン型軸受レースリングの一方または両方が除去され、軸受レースが、ナット及び回転式メス型本体のうちの1つ以上に形成される。この変化により、デバイス全体の長さ及びデバイスの部品の数が減少する。
【0101】
回転式ケーブルアクチュエータの小さな転がり軸受及び大きな転がり軸受のいずれも、Vレース型転がり軸受であるが、適切な荷重を支持することができる任意の種類の軸受を使用してもよいことに留意されたい。例えば、代替的な実施形態では、スラスト荷重及びアキシアル荷重に対して2つずつ、4つの転がり軸受を用いる。別の代替的な実施形態では、アキシアル荷重には滑り軸受を使用し、スラスト荷重には転がり軸受を使用する。更に他の実施形態では、アキシアル荷重及びスラスト荷重に滑り軸受のみを用いる。滑り軸受は、摩擦が増すが、サイズ及び複雑さの減少は、一部の用途では有益である。別の実施形態には、円錐型ニードル軸受が含まれ、そのような軸受は、理論上は、回転式ケーブルアクチュエータ内に荷重がかかるタイプには理想的であるが、製造はより困難かつ高価である。
【0102】
回転式オス型本体159が回転式メス型本体160内に固定された状態で、アクチュエーションケーブルは、近位側に取り付けられたアクチュエータから、経路に沿って供給される。これらのケーブルは、回転式オス型本体と回転式メス型本体との間の空間に供給される。
図10Dは、回転式ケーブルアクチュエータの断面図を示す。この断面図では、回転式メス型本体160に形成されたケーブル分離隆起部175が容易に確認される。分離隆起部は、各アクチュエータケーブルを回転式オス型本体159に巻き付けるようにほぼ完全に封入するポケット176を形成する機能を果たす。
【0103】
アクチュエーションケーブルのそれぞれは、外形付けされた経路169及び177に従ってアクチュエータに入る(
図10A及び
図10B)。これらの経路により、アクチュエータケーブルが閉鎖されたポケット176(
図10D)へと入ることが可能となる。経路は、回転式メス型本体160に形成され、ケーブルが平滑な経路に従って閉鎖ポケットに
入り、回転式オス型本体を囲むように、外形付けられる。2つのアクチュエータケーブルのそれぞれが、逆方向で回転式オス型本体に巻き付くことに留意することが重要である。したがって、回転式オス型本体は、各回転方向の作動に1つずつ、2つのプーリを形成する。アクチュエーションケーブルは、それぞれが、回転式オス型本体に複数回巻き付き、多数の回転の作動が可能となる。回転式オス型本体に巻き付いた後、アクチュエーションケーブルは、ケーブル終端処理穴171から回転式オス型本体へと進入し、ネジ穴に設置されるネジセットを用いて回転式オス型本体にしっかりと取り付けられる。回転式メス型本体の穴170により、レンチが留めネジにアクセスすることが可能となる。
【0104】
回転式アクチュエータの代替的な実施形態は、任意の適切な代替手段で終端処理されたアクチュエーションケーブルの取り付けを含む。例えば、ケーブルは、ケーブルに結び目を作ることにより終端処理され得る。他の代替的な終端処理手段としては、接着剤、圧着接続、挟着、キャプスタン、溶接、または任意の他の適切な手段が挙げられる。あるいは、アクチュエーションケーブルは、全く終端処理がなされなくてもよい。単一のアクチュエーションケーブルが、アクチュエータの一方の側から挿入され、回転式オス型本体の周りに複数回巻き付けられ、アクチュエータの反対側から出てもよい。そのような回転式アクチュエータは、連続的な回転を可能にし、なおもまた回転式オス型本体に沿ったケーブルの滑りを可能にする。
【0105】
回転式オス型本体の中心は、中空になるように形成される。これにより、アクチュエータを通る穴178が形成される。この穴は、
図10Dの断面図に最も良好に明視化されているが、
図10Cでも見ることができる。この穴は、ケーブル及び他のシステムが、回転式アクチュエータを通って近位側のアクチュエータ及びシステムから遠位側のアクチュエータ及びシステムに至ることを可能にするため、デバイスの機能にとって極めて重要である。面取り部167は、ケーブルが穴を通るときに鋭利な縁部を除去することによって、ケーブルの摩耗を低減させる。回転式アクチュエータの中心を一直線に通る経路を提供することにより、回転式アクチュエータが位置を変化させたときに、通っているケーブルの長さがほとんど変化しない。これは、遠位側のアクチュエータを回転式アクチュエータの動きからほぼ完全に切り離すため、非常に重要である。穴178を通るケーブルのねじれに起因していくらかの連動する動きが生じるが、このねじれにより生じる全回転(360度)1回以内の作動の効果は無視できる程度であり、全回転2回以内の作動の効果はほとんどないことに留意されたい。当然ながら、1つを上回るケーブルが穴を通ることにより、回転式アクチュエータは、ケーブルの束がねじれることに起因して無限に回転することはできない。
【0106】
穴178がケーブル駆動型回転式アクチュエータに含まれることにより、多自由度のデバイスが12mmのトロカールに適合することが可能となる。動きがほぼ連動することなくケーブルをアクチュエータに通すことを可能にする手段を微小なケーブル駆動型アクチュエータに提供することによって、複数の回転式アクチュエータは、ロボットアーム内で直列に用いられ得る。遠位に取り付けられた回転式アクチュエータならびに任意の遠位に取り付けられたシステムからのケーブルは、単純に、穴178を通過することができ、それによって、動きが十分に切り離された状態でアクチュエータにデイジーチェーンを行うことが可能となる。
【0107】
一部の実施形態では、アクチュエータ内でのアクチュエータケーブルの長さの変化は、アクチュエータが360度の可動域全体で移動するとき、約20%未満である。他の実施形態において、長さの変化は、約19%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約18%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約17%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約16%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約15%未満である。なおも更なる実施
形態において、長さの変化は、約14%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約13%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約12%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約11%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約10%未満である。他の実施形態において、長さの変化は、約9%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約8%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約7%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約6%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約5%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約4%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約3%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約2%未満である。なおも更なる実施形態において、長さの変化は、約1%未満である。
【0108】
[把持器の設計]
デバイスの最大限の有用性を可能にするために、一実施形態のエンドエフェクタは、複数の作業を達成するように設計される。非ロボットの低侵襲の外科手術の際には、外科医は、単純に、機器を取り出し、別の機器を挿入することができる。しかしながら、一実施形態に記載されるように、本発明の外科手術用デバイスでは、エンドエフェクタを取り替えるためにデバイスを取り出すことは、非実用的な場合がある。この理由から、汎用エンドエフェクタが、一実施形態に組み込まれる。
【0109】
典型的な外科手術処置の際、外科医は、柔らかい組織と硬い機器の両方を把持する必要がある。例えば、外科医は、腸の2つの柔らかい部分を一緒に動かし、小さく硬いニードルで縫合することを所望する場合がある。腸の把持には、繊細な操作を行うことが可能な把持器が必要とされ、一方でニードルの把持には、強い力が必要とされる。単一のエンドエフェクタの能力を最大限にするために、一実施形態の把持器を、可変の力で把持するように設計した。
【0110】
図11Aは、一実施形態における把持器の斜視図を示す。
図11Aは、更に、取り付け済みの遠位ヒンジジョイント、デバイス内の他のヒンジジョイントのものと同一であるメス型ヒンジ構成要素139を有する第7のアクチュエータ116(
図2A)も示す。把持器は、汎用の組織操作に十分な長さを提供するように設計された2つのジョー部187及び188から構成される。一実施形態において、把持器ジョー部は、更なる把持トラクションを可能にするためにギザギザの歯189を有する。あるいは、把持器は、当該技術分野で既知の任意の適切な表面を有して設計されてもよい。
【0111】
ジョーは、オス型把持体185とメス型把持体186との間、ならびに屈曲性挟着体182と183との間で、適所に保持される。オス型把持体、メス型把持体、及び屈曲性挟着体は、一緒に、主把持体を形成する。代替的な実施形態には、単一の本体、より少ない本体、またはより多くの本体から構成される主把持体を含む。これらの本体は、把持器内の構成要素を支持し、第7のアクチュエータ116を含むヒンジジョイントの遠位部分を形成するように作用する。把持器ジョー部と第7のアクチュエータとの間の距離を可能な限り小さくするために、ヒンジジョイントの遠位部分が、オス型把持体185及びメス型把持体186に形成される。代替的な実施形態では、別個のヒンジジョイントが使用され、把持器には、代わりに、ヒンジジョイントの遠位端に把持器の近位端を固定するための取り付け部位が含まれる。
【0112】
一実施形態において、オス型把持体185は、嵌合特徴部198ならびにボルト穴に螺合する複数のボルトによって、メス型把持体186に固定される。代替的な実施形態では、本体は接着剤等の手段によって一緒に固定されてもよく、または複数の構成要素が1つの本体として製造されてもよい。把持器を収容することに加えて、組み立てられたオス型
把持体及びメス型把持体は、オス型ヒンジ体184と共に、ヒンジの遠位部分を形成する。このヒンジジョイントは、システム内で、記載される他のヒンジジョイントと同じ様式で機能する。
【0113】
図11Bは、把持器の分解図を示す。把持器の中央には、把持器ジョー部187及び188がある。これらのジョー部は、ピン199、200、201、及び202によってオス型把持体185及びメス型把持体186に連結される。これらのピンは、把持器ジョー部の穴197に滑合する。一実施形態において、ピンは、把持器ジョー部の中心までは延在せず、したがって、把持器ジョー部の中心部内に開放された切り欠きスロット207が維持される。
【0114】
ピン203は、各把持器ジョー部187及び188(
図11B)の端部に形成される。これらのピンは、連結部材190及び191の穴204に滑合し、ヒンジ接続を形成する。各連結部材が、把持器ジョー部のピン203に接続され、プーリピン205のうちの1つが、各プーリ192及び193の本体に形成される。加えて、プーリピン210が移動して、オス型把持体185及びメス型把持体186に形成されたスロット内に入る。オス型把持体に形成されたスロット206は、
図11Aにはっきりと見られる。同一のスロット(図示されない)が、メス型把持体に形成される。
【0115】
前述の把持器部品によって形成される連結機構は、各プーリ192及び193の動きが遠位方向と近位方向との間で直線に制限されるような連結を形成する。アクチュエーションケーブルは、主把持体から各プーリの周りを通って、主把持体内で近位に位置する終端部位に供給される。各アクチュエータケーブルが引っ張られると、それぞれのプーリが近位方向に引き込まれる。滑車機構による2倍の機械倍力が、各連結用プーリによって得られる。代替的な実施形態では、代替的なプーリ配設が含まれるか、またはプーリを全く有さず、1倍の機械倍力となる。一実施形態では、ケーブルは、止めネジによってネジ穴に挟着される。他の実施形態では、ケーブルは、ノット、屈曲挟着、または接着剤といった、当該技術分野で既知の任意の手段によって終端処理され得る。
【0116】
一実施形態では、遠位プーリ192及び近位プーリ193という2つのプーリがある。把持器ジョー部が移動すると、プーリは反対方向に移動する。関連する連結部は、
図11C及び
図11Dの断面図に見ることができる。
図12A及び
図12Bの連結図が示すように、把持器の先端部が離れると、プーリは離れる。把持器の先端部が一緒に移動すると、プーリは一緒に移動する。第1のケーブルが、矢印211が示すように引っ張られると、近位プーリが近位方向に引き込まれる。近位連結部214を通じて力が伝達され、この連結により、把持器ジョー部の先端部208が、
図12Aが示すように矢印209の方向に離される。第2のケーブルが矢印212により示されるように引っ張られると、遠位プーリが近位方向に引き込まれる。遠位連結部213を通じて力が伝達され、この連結により、把持器ジョー部の先端部208が、
図12Bが示すように矢印210の方向に一緒に移動する。本実施形態における把持機構は、アクチュエータケーブルの動きと把持器ジョー部の先端部の動きとの間に非直線関係を有する。この非直線運動は、ジョー部が閉じるときに最も高い倍力を提供する。これは、把持器が、ニードル等の小さなツールの取り扱い中には高い荷重に対応することができ、一方で組織等の大きな物体を把持するときには小さな力を与えることもできるという利点を有する。
【0117】
代替的な実施形態では、単一の連結及びプーリを使用して、把持器の先端部を両方向に動かす。1つのケーブルが近位方向から引かれ、1つが遠位方向から引かれる。一実施形態では二重連結により両方のケーブルを近位方向から引くことが可能となり、それによってケーブルのルーティングが単純化できるが、複雑さが増し、部品の数が増える。別の実施形態では、バネまたは他のエネルギー蓄積装置により1つの方向での作動が得られ、一
方で単一のアクチュエーションケーブルにより、反対方向での作動が得られる。
【0118】
一実施形態では、ジョー部187及び188(
図11B)、ならびに全ての接続された連結及びプーリは、組み立てられたオス型把持体及びメス型把持体へと挿入される。前述のように、これらの部品は、ピンによって適切な位置に固定され、屈曲性挟着体182及び183に形成される。1つの把持器ジョー部187を留めているピン199及び200は、屈曲性挟着体にしっかりと取り付けられる。しかしながら、第2の把持器188を留めているピン201及び202は、屈曲性挟着体にしっかりと固定されない。屈曲部194及び195は、ピン201及び202を、それぞれの屈曲性挟着体へと連結する。
【0119】
力が把持器の先端部に加えられると、ピン199、200、201、及び202の位置を動かすように作用する力がもたらされる。ピン199及び200はしっかりと固定されたままであるが、ピン201及び202は、屈曲部が弾性的に変形されると、荷重によりわずかに変位する。屈曲部の正確な変位は、屈曲部に固定され、歪みゲージポケット196(
図11A)及び図では確認できないがデバイスの反対側にあるもう1つの同様のポケット内に配置された歪みゲージを用いて測定することができる。標準的な技法を使用して、情報を取得し、屈曲部の歪み及び把持器の力を計算することができる。
【0120】
屈曲部のサイズは、歪みゲージにより用途に適した力を測定することができるように選択される。把持器の力が屈曲部の弾性変形範囲を超える場合には、屈曲部が歪みゲージポケットのいずれかの側面に接触し、そこで確実に停止する。
【0121】
屈曲部の寸法及び機械的特性を用いて、把持器ジョー部の端部に作用する力が連続的に計算される。触覚によるフィードバックまたは制御コンソールでの視覚的合図といった様々な手段により、力のフィードバックが外科医に返され得る。更に、力制御アルゴリズムにより、把持力の閉鎖型ループ制御を提供することができる。ソフトウェアリミットを有効にして、許容できない力が与えられることにより組織を損傷することが防止される。これらのリミットは、手動または自動のいずれかの手段により処置中に変更することができる。
【0122】
代替的な実施形態には、接続連結部または把持器自体といった、システムのどこかに設置される歪みゲージが含まれる。実際の荷重計は、把持器の要素に含まれて設計され、それによって、測定の正確さ及び反復可能性の増加がもたらされ得る。
【0123】
[アーム長さの調整]
一実施形態において、ロボットアーム103及び104(
図1A)は、アーム長さを増大させるために、延長セグメント108を有して構成される。このアーム長さの増大により、腹腔内での到達距離の改善が可能となる。延長部を用いることで、アクチュエータの設計を修正することなく、アーム長さの調整が可能となる。例えば、小児科で使用するためのデバイスの実施形態は、より小さな腹腔内における操縦性のために、より小さなアームを要する場合がある。そのようなデバイスは、アーム延長部を取り除いて作成されてもよい。非常に大きな長さの変化を有する代替的な実施形態は、人間に似た比率を維持するために、カメラの位置及びショルダの幅の修正を要する。
【0124】
図13は、一実施形態で使用される延長セグメントの図を示す。そのような延長セグメントは、近位接続部位215で既存の近位アクチュエータと接続し、遠位接続部位216で遠位アクチュエータと接続するのを可能にするために、近位端と遠位端とを有する1つの金属片から形成される。更に、デバイスに形成された中央チャネル217により、ケーブルが延長部を通って近位アクチュエータから遠位アクチュエータに到達することが可能となる。
【0125】
複雑な外科手術は、1人を上回る外科医の施術を要することが多い。これを考慮して、2人の外科医が使用するための、アームが4つのデバイスの実施形態を設計した。
図14Aは、アームが4つの実施形態のデバイスを示す。そのようなデバイスは、4つのアームと2つのカメラを有し、これらの全てが単一のトロカールを通して挿入される。このアームが4つの実施形態により、2人の外科医が一緒に作業することが可能となる。アームが4つの実施形態では、一実施形態のものに類似の2つのデバイスが、別個に腹腔内に挿入され、それによって、2人の外科医が2つのロボットデバイスを使用することが可能となる。
【0126】
図14Aは、2人の外科医がデバイスの片側で作業するように構成された、アームが4つの実施形態を示す。この配向では、1人の外科医がもう1人の外科医の後ろに立っているように見える。それぞれアームが2つのデバイスが、デバイスのいずれの側でも操作できるということを用いて、外科医は、アームが4つの実施形態を使用する領域を選ぶことができる。外科医は、アームが2つの両方のシステムを、アームが4つのデバイスの片側で操作するように配向することができる(アームが2つのデバイスがいずれも同じ方向を向いている)。あるいは、外科医は、アームが2つの両方のデバイスを、2つのデバイス間の空間で操作するように、互いに向かい合わせて配向してもよい。外科医は、患者の片側で別個に操作するために、互いに反対側を向いていることさえもできる。
【0127】
腹腔内に2つのデバイスがある状態で、任意選択の接続連結部218により、デバイス2つのデバイスをしっかりと相互接続することが可能となる。この連結機構は、2つのロボットデバイスと共に、順に腹腔内に挿入される。例えば、外科医は、1つのロボットデバイスを挿入した後、接続連結部を挿入し、その後に第2のロボットデバイスを挿入することができる(全て1つのトロカールを通して)。接続連結機構にはまた、任意選択の中央支持体219が含まれ得る。この支持体は、患者の腹壁の第2の切開部を通じて外部に、接続連結部をしっかりと固定し、それによってロボットデバイスをしっかりと固定する。各導管100の支持体に加えて、この第2の支持体により、デバイスの剛性を高めることが可能となる。非常に薄い中央支持体は、血管カテーテルに類似の針留置型カテーテルによって腹壁を通過し得る。この小さなカテーテルにより、中央支持体が腹壁を横断することによって引き起こされる患者損傷が、ほぼ完全に排除される。
【0128】
一設計では、追加のケーブルが、各導管100(
図7B)を通って、各主中心体131に到達する。これらのケーブルは、経路137を通って接続連結部218(
図14A)の各部材へと到達し、少なくとも1つのケーブルが中央支持体で終端処理される。該ケーブルには、デバイス及び全ての部品を腹腔内に挿入するための十分な緩みが与えられる。全てのデバイスの部品が腹腔内に挿入されると、外科医は、ケーブルの一端を引き、それによって接続連結部の全ての部材を一緒に引くことができる。この組み立てプロセスは、テントのポール部分が紐によって取り付けられたままとなるキャンプ用テントの組み立てと同じ邸宅で機能する。これらのケーブルに適用される一定の機械力は、使用時に接続連結部をしっかりと一緒に固定するように機能し得る。
【0129】
あるいは、外科医は、接続連結部を取り外すか、または、接続連結部が提供されないデバイスを使用してもよい。一実施形態に記載される2つのデバイスを、接続連結部を必要としない1回の外科手術中に用いてもよい。アームが4つのシステムの一部の実施形態は、
図14Bに示されるように、両方の導管部材のための空間を有するアームが4つの単一のトロカールを通した挿入のために設計される。他の実施形態では、アームが2つの標準的な2つのトロカールによって設置される。一部の実施形態は、外科医が、ソフトウェアコマンドを用いて制御するアームを切り替えることができ、腹部内でいずれか1つまたは2つのアームを制御するように選択することすらできるように、相互接続するようなソフ
トウェア制御が可能である。アームは、外科医の制御下にない場合には、1人の外科医が多くのデバイス間の制御を交互に行うことができるように、場合によっては、ソフトウェアを用いて適切な場所に係止することができる。
【0130】
以下に特許請求される本発明の態様に加えて、本発明には、次の態様及び実施形態も含まれる。本発明のシステムには、アームが2つのロボットデバイス2つを一緒に連結させるシステムが含まれ得る。本発明のシステムにはまた、ロボットデバイスの挿入及び支持のためのトロカール、デバイス導管の支持のためのトロカールスリーブ、ならびにカメラ及び照明システムを有するトロカールスリーブが含まれ得る。外科医の腕及び手の動きを取得するためのセンサ構成もまた、本発明の一部と見なされる。本発明はまた、仮想現実ロボット外科手術のためのデバイスを含むと見なされ、ここでは、ロボットアクチュエータは、仮想現実ロボット外科手術のためのカメラシステム及びデバイスと永久的に連結されておらず、ロボットアクチュエータは、腹腔内のカメラシステムと連結されていない。本発明はまた、小さな部品の組み立て、爆弾の解除、密閉された空間内の検査及び修復、ならびに仮想現実ロボットの任意の他の用途において使用するための仮想現実ロボットデバイスも包含する。
【0131】
本発明の他の態様には、人間の腕に対する人間の眼の位置に類似した、ロボットアクチュエーションに対して配置される仮想現実カメラ、ならびにカメラ間の距離とロボットアームのサイズとの比率が人間に似ている仮想現実カメラが含まれる。本発明の更なる態様は、ロボットの動作のコンピュータによる制限である。挿入体及び患者の身体との接触または近接性を検出するためのセンサを有する挿入体を用いたデバイスの挿入もまた、発明的である。仮想現実外科手術システムで使用するためのカメラ(複数可)に関して、発明の態様には、カメラ本体内でのカメラの移動、画像のコンピュータ調整及び補正と組み合わせた非球面レンズを有するカメラ、広角レンズを有するカメラ、画像のコンピュータ調整及び補正と組み合わせた広角レンズを有するカメラ、ならびにデジタルまたは機械的手段によるズームができるカメラが含まれる。自然な人間に似たズームを可能にする拡大鏡またはルーペを表示する現実性の拡張及び腹部内での拡張現実デバイスの移動、腹部内の仮想コンピュータモニタの確認、ならびに現実性の拡張及びロボットアームまたは関連デバイスの表示による外科医へのフィードバックもまた、本発明の態様である。システムの別の発明態様は、多数のカメラからの画像を織り交ぜて単一の画像を形成することである。
【0132】
生理食塩水を使用したシステムの冷却もまた、本発明の一部である。本発明の別の態様は、照明を提供するため、かついくつかの小さな切開部を通して挿入される、光ファイバである。外科医の腕とロボットデバイスとの間の動きの拡大縮小を一定の倍率で行うこと、外科医の腕とロボットデバイスとの間の動きの拡大縮小をユーザにより構成可能な倍率で行うこと、ならびに外科医の腕とロボットデバイスとの間の動きの拡大縮小を外科医脳での位置における変化率に基づいて調整される倍率で行うこともまた、本発明のシステムの一部である。本システムのなおも更なる発明態様には、軸方向及び半径方向の両方の荷重支持を提供する転がり軸受、デバイスが第1の側部及び第2の側部の両方で操作可能となるように、必要とされる運動を上回る運動範囲を有するアクチュエータ、ならびに腹腔内から位置データを取得するためのホール効果エンコーダの使用が含まれる。把持器に関して、発明態様には、把持器内で倍力を提供するためのプーリの使用、1つのケーブルが把持器を開放し、2つ目のケーブルが把持器を閉鎖する状態で、2つのアクチュエーションケーブルが両方とも把持器の近位側から引くことができるような、把持器内の二重連結機構、屈曲部に沿って設置される歪みゲージを使用して把持力を正確に測定することを可能にするための、把持器ジョー部の枢動ピンに取り付けられた屈曲部の使用、ならびに把持器の連結部に含まれるように設計される荷重計の使用が含まれる。
【0133】
本明細書に開示される技法及びシステムは、ある特定の制御構成要素が、コンピュータシステムまたはコンピュータ化された電子デバイスで使用するためのコンピュータプログラム製品として実装されている場合がある。そのような実装としては、コンピュータ可読媒体(例えば、ディスケット、CD-ROM、ROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ、または固定ディスク)といった有形媒体に固定されているか、あるいは媒体上でネットワークに接続された通信アダプタといった、モデムまたは他のインターフェースデバイスを介してコンピュータシステムまたはデバイスに送信可能であるかのいずれかである、一連のコンピュータ命令、すなわち論理を挙げることができる。
【0134】
媒体は、有形媒体(例えば、光学もしくはアナログ通信ライン)または無線技法(例えば、Wi-Fi、セルラー、マイクロ波、赤外線、もしくは他の伝送技法)により実装される媒体のいずれかであり得る。一連のコンピュータ命令は、システムに関して本明細書に記載された機能性の少なくとも一部を組み込む。当業者であれば、そのようなコンピュータ命令が、多数のコンピュータアーキテクチャまたはオペレーティングシステムで使用するための多数のプログラミング言語で既述され得ることを認識するはずである。
【0135】
更に、そのような命令は、任意の有形メモリデバイス、例えば、半導体、磁気、光学、または他のメモリデバイスに記憶することができ、また任意の通信技法、例えば、光学、赤外線、マイクロ波、または他の伝送技法を用いて伝送することができる。
【0136】
そのようなコンピュータプログラム製品は、付属の印刷文書または電子文書を伴う取り外し可能な媒体として配布されてもよく(収縮包装ソフトウェア)、コンピュータシステムに予め組み込まれてもよく(例えば、システムROMもしくは固定ディスク)、またはネットワーク上でサーバまたは電子掲示板から配布されてもよい(例えば、InternetもしくはWorld Wide Web)。当然ながら、本発明の一部の実施形態は、ソフトウェア(例えば、コンピュータプログラム製品)及びハードウェアの両方の組み合わせとして実装されてもよい。本発明の更なる他の実施形態は、完全にハードウェア、または完全にソフトウェア(例えば、コンピュータプログラム製品)として実装される。
【符号の説明】
【0137】
101 中心体