(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】解凍装置および解凍システム
(51)【国際特許分類】
A23L 3/365 20060101AFI20230411BHJP
F25D 23/12 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A23L3/365 Z
F25D23/12 U
(21)【出願番号】P 2021532749
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024896
(87)【国際公開番号】W WO2021010120
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019130318
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500514052
【氏名又は名称】株式会社サンテツ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五代 友行
(72)【発明者】
【氏名】森島 靖之
(72)【発明者】
【氏名】濱田 文彦
(72)【発明者】
【氏名】金山 賢一
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-088348(JP,A)
【文献】特開2005-328724(JP,A)
【文献】特開2010-183905(JP,A)
【文献】特開2003-217817(JP,A)
【文献】登録実用新案第3189319(JP,U)
【文献】特開平05-284893(JP,A)
【文献】実開平06-038589(JP,U)
【文献】特開2019-097547(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049717(WO,A1)
【文献】特開平09-275955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/36- 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根の回転数を制御可能な2以上の送風機と、前記送風機によって生じる空気の流れ場上に配されたヒーターと、前記送風機および前記ヒーターを収容する筐体と、を備え、
前記ヒーターの熱で昇温された空気との熱交換によって、前記筐体の近傍に配された冷凍食品が解凍される解凍装置であって、
前記送風機は、吸い込
み口および吹き出し口が鉛直方向に向くように水平方向に並んで配された軸流ファンであり、
前記筐体は、前記軸流ファンによって鉛直方向に吹き出した空気を前記筐体の近傍に配された棚上の前記冷凍食品に導くための第1エアガイド部材を備え、前記第1エアガイド部材は、前記筐体内を仕切るための複数の仕切板を備え
、前記仕切板は、前記筐体の正面視において、前記鉛直方向に延伸している解凍装置。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記軸流ファンの吸い込み口側に設けられている請求項1に記載の解凍装置。
【請求項3】
前記送風機が、前記羽根の回転方向を反転させることで前記空気の流れ方向が逆になるように構成されている請求項1または2に記載の解凍装置。
【請求項4】
前記送風機は、吸い込
み口および吹き出し口が鉛直方向に向くように水平方向に並んで配された一対の第1軸流ファンおよび第2軸流ファンであり、前記冷凍食品の解凍時に、前記第1軸流ファンの回転方向と前記第2軸流ファンの回転方向とが逆になっている請求項1から3のいずれか1項に記載の解凍装置。
【請求項5】
羽根の回転数を制御可能な2以上の送風機と、前記送風機を収容する筐体と、を備え、
ヒーターの熱で昇温された空気との熱交換によって、前記筐体の近傍に配された冷凍食品が解凍される解凍装置であって、
前記筐体は、鉛直方向に立設する第1隔壁部材および第2隔壁部材
と、第1隔壁部材および第2隔壁部材間の空間を外側から覆う第2エアガイド部材と、を備え、
前記送風機は、前記第1隔壁部材および第2隔壁部材間の空間に配された遠心ファンであり、
前記遠心ファンはそれぞれ、前記第1隔壁部材に設けられた開口部のそれぞれを通じて前記空間内に空気を取り込むように吸い込み口および吹き出し口が向いて
おり、
前記第2エアガイド部材は、前記冷凍食品が陳列された棚と前記第1隔壁部材とが近接する位置において、前記遠心ファンで前記空間内に取り込まれた空気を前記棚上の前記冷凍食品に導くように構成されている解凍装置。
【請求項6】
前記ヒーターは、前記第2エアガイド部材の内部に設けられている請求項
5に記載の解凍装置。
【請求項7】
前記筐体を床面に沿って移動可能に保持する保持装置を備える請求項
5または6に記載の解凍装置。
【請求項8】
前記冷凍食品に、10V以上、10kV以下の交流電圧を印加する電圧印加器を備える請求項1から
7のいずれか1項に記載の解凍装置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれかに記載の解凍装置を収容する解凍室と、前記解凍室を収容する保管室と、前記解凍室の壁部に設けられた換気器と、を備え、
前記換気器は、前記保管室から冷気を前記解凍室内に取り入れるとともに、前記解凍室内の暖気を前記保管室内に吐き出すように構成されている解凍システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は解凍装置および解凍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品を解凍する方法として、古くから冷蔵庫解凍、流水解凍、高周波解凍、温風解凍、ミスト解凍など様々な方式が検討されており、これらが実用化されている。例えば、特許文献1には、温風解凍の一例が開示されている。
【0003】
また、近年は、冷凍食品の解凍品質および経済性を追求する中で、冷凍食品に交流電圧を印加することで、冷凍食品の細胞活性化および酸化防止を図りながら、例えば、冷蔵庫内で解凍する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-295816号公報
【文献】国際公開第2008/096631号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一例として、冷凍食品を温風で解凍する際に、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを従来よりも抑制し得る解凍装置を提供することを課題とする。また、本発明は、一例として、冷凍食品の解凍にかかる時間を従来よりも短縮し得る解凍装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様(aspect)の解凍装置は、羽根の回転数を制御可能な2以上の送風機と、前記送風機によって生じる空気の流れ場上に配されたヒーターと、前記送風機および前記ヒーターを収容する筐体と、を備え、前記ヒーターの熱で昇温された空気との熱交換によって、前記筐体の近傍に配された冷凍食品が解凍される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の解凍装置は、一例として、冷凍食品を温風で解凍する際に、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを従来よりも抑制し得るという効果を奏する。また、本発明の一態様の解凍装置は、一例として、冷凍食品の解凍にかかる時間を従来よりも短縮し得るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、従来の解凍装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の解凍装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の解凍装置の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、送風機が単一の場合における従来の解凍装置による冷凍食品の温度の時間変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の解凍装置による冷凍食品の温度の時間変化の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の第1変形例の解凍装置におけるヒーターの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の解凍装置の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の解凍装置の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の解凍装置の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の解凍装置による冷凍食品の温度の時間変化の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の解凍装置を解凍庫に配置する場合における配置レイアウトと従来の解凍装置を解凍庫に配置する場合における配置レイアウトとを対比した図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態の解凍システムの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の実施例における解凍装置の一例を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、第1実施形態の実施例における解凍装置の第1軸流ファンおよび第2軸流ファンによって生じる冷凍食品上の空気の風速分布の一例を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、第1実施形態の実施例における解凍装置の第1軸流ファンおよび第2軸流ファンによって生じる冷凍食品上の空気の風速分布の一例を示す図である。
【
図14C】
図14Cは、第1実施形態の実施例における解凍装置の第1軸流ファンおよび第2軸流ファンによって生じる冷凍食品上の空気の風速分布の一例を示す図である。
【
図14D】
図14Dは、第1実施形態の実施例における解凍装置の第1軸流ファンおよび第2軸流ファンによって生じる冷凍食品上の空気の風速分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
冷凍食品を温風で解凍する際に、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを抑制すべく鋭意検討が行われ、以下の知見が得られた。
【0010】
冷凍食品を温風で解凍する温風解凍は、例えば、特許文献2に開示された冷凍食品の解凍に比べて解凍時間を短縮できる。また、この温風解凍は、冷凍食品の高周波解凍に比べて解凍時間で劣るが、投資額が少なくて済み、例えば、冷凍食品への交流電圧印加による効果を組み合わせることで、高周波、流水、ミストなどを利用した冷凍食品の解凍に比べて衛生的で冷凍食品の劣化が少ない高品質の解凍が可能である。
【0011】
しかし、上記の温風解凍は、温風との熱交換により行われるので、冷凍食品の解凍速度が、温風の温度および風速に依存する。このため、冷凍食品を通過する温風の風速を均一に制御することが、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを抑制する視点において重要である。
【0012】
具体的には、冷凍食品を温風で解凍する場合、温風の風速が小さい領域上の冷凍食品の解凍が遅くなる。よって、冷凍食品の解凍にかかる時間は、本領域上の冷凍食品の解凍終了時刻に律速される。逆に、温風の風速が大きい領域上の冷凍食品は、解凍が終了した後であっても所定時間の間、温風に曝されることになるので、食品の品質が劣化する恐れがある。
【0013】
以上の温風解凍の問題点について、出願人によって開発された従来の解凍装置の図面を参照しながら、さらに詳しく説明する。
【0014】
図1は、従来の解凍装置の一例を示す図である。
図1(a)には、従来の解凍装置200の側面図が示され、
図1(b)には、従来の解凍装置200の正面図が示されている。
【0015】
この解凍装置200では、単一の送風機201の動作によって、筐体210の上端部に設けられた矩形状の開口部207を通じて筐体210内に空気が取り込まれる。その後、空気は、送風機201の吹き出し口側に設けられたヒーター(図示せず)の熱によって昇温される。そして、ヒーターの熱で昇温された温風は、風向板203および風向フィン204によって鉛直方向から水平方向に向きを変えた後、スリット状の開口部205を通じて筐体210の前方領域に排出される。すると、ヒーターの熱で昇温された温風が、この前方領域に置かれた棚(図示ぜす)上の冷凍食品を通過するとき、温風との熱交換によって、筐体の近傍に配された棚上の冷凍食品が解凍される。
【0016】
しかし、本発明者らは、従来の解凍装置200の改良を目指して鋭意検討を行った結果、解凍装置200に、風向板203および風向フィン204を取り付けても、冷凍食品を通過する温風の風速を十分に均一化することが困難であることが次第に分かってきた。そして、冷凍食品を温風で解凍する場合、温風の風速を適切に均一化できないと、上記のとおり、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきが発生する。詳細は、後述の実験データで説明する。
【0017】
また、送風機201が単一の場合における従来の解凍装置200では、送風機201の羽根径を大きくする必要がある。よって、従来の解凍装置200は、送風機201を収容する筐体210の部分(例えば、上端部)のコンパクト化が困難である。
【0018】
本発明の第1態様の解凍装置は、このような知見に基づいて案出できたものであり、羽根の回転数を制御可能な2以上の送風機と、送風機によって生じる空気の流れ場上に配されたヒーターと、送風機およびヒーターを収容する筐体と、を備え、ヒーターの熱で昇温された空気との熱交換によって、筐体の近傍に配された冷凍食品が解凍される。
【0019】
かかる構成によると、本態様の解凍装置は、冷凍食品を温風で解凍する際に、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを従来よりも抑制し得る。具体的には、複数の送風機を適切に配置するとともに、羽根の回転数に基づいて送風機から吹き出す空気流量を所望の値に制御することで、冷凍食品を通過する空気の風速を均一化することができる。その結果、本態様の解凍装置は、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきが従来よりも抑制される。かかる本態様の解凍装置による作用効果の検証結果は、後述の実験データで説明する。
【0020】
また、本態様の解凍装置は、2以上の送風機を備えることで、送風機が単一の場合における従来の解凍装置に比べて、筐体のコンパクト化を行いやすくなる。
【0021】
本発明の第2態様の解凍装置は、第1態様の解凍装置において、送風機は、吸い込み口および吹き出し口が鉛直方向に向くように水平方向に並んで配された軸流ファンであり、筐体は、軸流ファンによって鉛直方向に吹き出した空気を筐体の近傍に配された棚上の冷凍食品に導くための第1エアガイド部材を備え、ヒーターは、軸流ファンの吸い込み口側に設けられていてもよい。
【0022】
かかる構成によると、本態様の解凍装置は、軸流ファンによって鉛直方向に吹き出した空気がヒーターで遮られないので、このような空気の風速低下を軽減することができる。ここで、冷凍食品の解凍にかかる時間は、温風の風速が速いほど短縮される。よって、本態様の解凍装置は、軸流ファンの吹き出し口側にヒーターを設ける場合に比べて、冷凍食品の解凍にかかる時間を短縮することができる。
【0023】
本発明の第3態様の解凍装置は、第1態様または第2態様の解凍装置において、送風機が、羽根の回転方向を反転させることで空気の流れ方向が逆になるように構成されていてもよい。
【0024】
かかる構成によると、本態様の解凍装置は、送風機として両方向の送風が可能なリバーシブルフローファンを使用することで、棚の両側から冷凍食品の解凍を行いやすくなる。よって、本態様の解凍装置は、リバーシブルフローファンを使用しない場合に比べて、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを抑制することができる。また、本態様の解凍装置は、リバーシブルフローファンを使用しない場合に比べて、冷凍食品の解凍にかかる時間を短縮することができる。
【0025】
本発明の第4態様の解凍装置は、第2態様または第3態様の解凍装置において、送風機は、吸い込む口および吹き出し口が鉛直方向に向くように水平方向に並んで配された一対の第1軸流ファンおよび第2軸流ファンであり、冷凍食品の解凍時に、第1軸流ファンの回転方向と第2軸流ファンの回転方向とが逆になっていてもよい。
【0026】
かかる構成によると、本態様の解凍装置は、第1軸流ファンおよび第2軸流ファンの回転方向を逆にすることで、冷凍食品上を通過する空気の風速を均一化することができる。
【0027】
本発明の第5態様の解凍装置は、第2態様から第4態様のいずれか一つの解凍装置において、第1エアガイド部材は、筐体内を仕切るための複数の仕切板を備え、仕切板は、筐体の正面視において、鉛直方向に延伸していてもよい。
【0028】
かかる構成によると、本態様の解凍装置は、筐体内に複数の仕切板を設けることで、冷凍食品上を通過する空気の風速を均一化することができる。
【0029】
ところで、本発明者らは、解凍装置の省スペース化を目指して鋭意検討を行った結果、送風機として遠心ファンを使用することを見出して、以下の解凍装置に想到した。
【0030】
すなわち、本発明の第6態様の解凍装置は、第1態様の解凍装置において、筐体は、鉛直方向に立設する第1隔壁部材および第2隔壁部材を備え、送風機は、第1隔壁部材および第2隔壁部材間の空間に配された遠心ファンであり、遠心ファンはそれぞれ、第1隔壁部材に設けられた開口部のそれぞれを通じて空間内に空気を取り込むように吸い込み口および吹き出し口が向いてもよい。
【0031】
かかる構成によると、本態様の解凍装置は、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを抑制しながら、装置の省スペース化を図ることができる。例えば、第1隔壁部材および第2隔壁部材間の空間に、軸流ファンを配置する場合において、第1隔壁部材と第2隔壁部材とを接近させると、軸流ファンの吹き出し口から吹き出した空気が第2隔壁部材に当たる。このとき、仮に、第1隔壁部材と第2隔壁部材とを接近させ過ぎる場合、空間内における空気のスムーズな流れが阻害されることで、空気の風速が不均一化する恐れがある。つまり、第1隔壁部材および第2隔壁部材間の空間に、軸流ファンを配置する場合、第1隔壁部材と第2隔壁部材とを接近させることは自ずと限界があり、このことが、解凍装置の大型化を招く一要因となる可能性がある。
【0032】
これに対して、本態様の解凍装置は、第1隔壁部材および第2隔壁部材間の空間に遠心ファンを配置することで、第1隔壁部材と第2隔壁部材とを十分に接近させても、空間内における空気のスムーズな流れを実現できるので、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを抑制しながら、装置の省スペース化を図ることができる。
【0033】
本発明の第7態様の解凍装置は、第6態様の解凍装置において、筐体は、第1隔壁部材および第2隔壁部材間の空間を外側から覆う第2エアガイド部材を備え、第2エアガイド部材は、冷凍食品が陳列された棚と筐体の第1隔壁部材とが近接する位置において、遠心ファンで上記の空間内に取り込まれた空気を棚上の冷凍食品に導くように構成されていてもよい。また、本発明の第8態様の解凍装置は、第7態様の解凍装置において、ヒーターは、第2エアガイド部材の内部に設けられていてもよい。
【0034】
以上の構成によると、本態様の解凍装置は、遠心ファンで空間内に取り込まれた空気を、第2エアガイド部材内のヒーターの熱で昇温させながら筐体の前方領域で適切に循環させることができる。すると、解凍装置および棚がオープンな空間に存在する場合であっても、ヒーターの熱で昇温された温風が、筐体の前方領域に置かれた棚上の冷凍食品を循環するとき、温風との熱交換によって、棚上の冷凍食品を適切に解凍することができる。
【0035】
本発明の第9態様の解凍装置は、第6態様から第8態様のいずれか一つの解凍装置において、筐体を床面に沿って移動可能に保持する保持装置を備えてもよい。
【0036】
かかる構成によると、本態様の解凍装置は、例えば、筐体を解凍庫に配置する場合、保持装置を用いて筐体を解凍庫内で自由に移動することができるので、解凍庫内の空きスペースの有効活用が可能になる。その結果、本態様の解凍装置は、解凍庫内の解凍装置の設置台数を増やすことで、冷凍食品の解凍処理能力を向上させることができる。
【0037】
本発明の第10態様の解凍装置は、第1態様から第9態様のいずれか一つの解凍装置において、冷凍食品に、10V以上、10kV以下の交流電圧を印加する電圧印加器を備えてもよい。
【0038】
かかる構成によると、本態様の解凍装置は、冷凍状態の食品を解凍する際、または、解凍された食品を冷蔵保存する際に、これらの食品に電圧印加器の交流電圧を適切に付与することができる。これにより、本態様の解凍装置は、冷凍食品の解凍品質、食品の冷蔵保存品質を向上させることができる。
【0039】
本発明の第11態様の解凍システムは、第1態様から第10態様のいずれか一つの解凍装置を収容する解凍室と、解凍室を収容する保管室と、解凍室の壁部に設けられた換気器と、を備え、換気器は、保管室から冷気を解凍室内に取り入れるとともに、解凍室内の暖気を保管室内に吐き出すように構成されていてもよい。
【0040】
かかる構成によると、本態様の解凍システムは、冷凍食品を温風で解凍する際に、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを従来よりも抑制し得る。また、本態様の解凍システムは、冷凍食品の解凍にかかる時間を短縮することができる。なお、このような本態様の解凍システムの作用効果は、上記の解凍装置の作用効果と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0041】
ここで、冷凍食品は、解凍装置で解凍が行われた後には、一定の低温に保つ必要がある。このため、解凍装置が収容される解凍室に、例えば、室内ユニットと室外冷凍機で構成される冷凍ユニットを設けることが多い。
【0042】
ところで、冷凍食品を扱う食品工場には、一般的に、室内を所定の低温に維持可能な保管室(冷凍施設)が設置されている。
【0043】
そこで、本態様の解凍システムは、解凍室を上記の保管室内に収容することで、保管室の冷気を利用して、解凍装置で解凍が行われた食品の温度を一定の低温に保つことができる。よって、本態様の解凍システムは、解凍室に、上記の冷凍ユニットを設ける場合に比べて、設備コストを削減することができる。
【0044】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下で説明する実施形態は、上記各態様の一具体例を示すものである。よって、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、あくまで一例であり、上記の各態様を限定するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比などについては正確な表示ではない場合がある。
【0045】
(第1実施形態)
図2および
図3は、第1実施形態の解凍装置の一例を示す図である。
図3には、解凍装置100の筐体10の正面図が示されている。
図2には、
図3の解凍装置100の筐体10のA-A部の断面図が示されている。
【0046】
ここで、
図2および
図3には、説明の便宜上、「上」および「下」、「右」および「左」、および、「前」および「後」が、これらの図面の如く取られている。図面の上下方向は、解凍装置100の高さ方向に対応しており、必要に応じて、鉛直方向と言い換える場合がある。図面の左右方向および前後方法は、解凍装置100の幅方向に対応しており、必要に応じて、水平方向と言い換える場合がある。
【0047】
なお、
図2では、冷蔵庫Rおよび複数の棚Sが二点鎖線で図示されている。そして、冷蔵庫Rの庫内には筐体10および棚Sが収容され、棚Sが、筐体10の前方に配されている。さらに、棚S上には、図示しない冷凍食品(例えば、冷凍食肉)が陳列されている。
【0048】
図2および
図3に示す例では、本実施形態の解凍装置100は、筐体10と、送風機11と、ヒーター16と、電圧印加器30と、制御器40と、を備える。
【0049】
筐体10は、2以上の送風機11およびヒーター16を収容する金属製の部材で構成されている。
【0050】
具体的には、4台の送風機11が、筐体10の上端に設けられた矩形状の開口部17の近傍であって筐体10内の適所(本例では、開口部17から隠れた下方の空洞内)において、筐体10の左右方向に等間隔に並んで配されている。ただし、送風機11の台数および配置位置は上記に限定されない。つまり、送風機11の台数および配置位置は、筐体10の容量、解凍装置100が解凍する冷凍食品の解凍条件をもとに適宜、設定することができる。
【0051】
送風機11は、羽根の回転数を制御可能なファンである。送風機11は、羽根の回転数を自在に制御可能なファンであれば、どのような構成であってもよい。
【0052】
例えば、送風機11は、モータと回路により羽根の回転速度が自在に変えることが可能なDCファンであってもよいし、交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換器が内蔵されたAC/DCファンであってもよい。後者の場合、AC(商用電源)で送風機11を動作させることができるので都合がよい。
【0053】
なお、送風機11の種類として、例えば、羽根正面から空気を吸い込み,後方へ吐き出すタイプの軸流ファン、吸い込み口から吐き出し口へ空気の流れ方向が約90°変化するタイプの遠心ファンなどがある。
【0054】
本実施形態の解凍装置100では、送風機11は、吸い込む口および吹き出し口が鉛直方向に向くように水平方向に並んで配された前者の軸流ファン11Aである。ここで、「軸流ファン11Aの吸い込む口および吹き出し口が鉛直方向を向く」とは、軸流ファン11Aの吸い込む口および吹き出し口の中心線の方向が、重力が作用する方向と完全に平行であることを要求するものではなく、軸流ファン11Aによって生じる空気を筐体10内で鉛直方向に導くのに支障がない範囲で、両者が、所定の鋭角で交差する場合を含み得る。
【0055】
なお、送風機11として、後者の遠心ファンを使用する場合の解凍装置の具体例は、第2実施形態で説明する。
【0056】
ヒーター16は、筐体10内において、送風機11によって生じる空気の流れ場上に配されている。すると、本ヒーター16の熱で送風機11によって生じる空気を適温にまで昇温することができる。ヒーター16は、このような空気を適温にまで昇温できれば、どのような構成であってもよい。
【0057】
本実施形態の解凍装置100では、ヒーター16は、軸流ファン11Aの吸い込み口側に配されている。例えば、
図2および
図3に示すように、ヒーター16は、開口部17と軸流ファン11Aとの間の筐体10内に設けられ、左右方向に延伸する棒状ヒーターであってもよい。なお、本例では、軸流ファン11Aは、棒状ヒーターの延伸方向に沿うように等間隔に並んでいる。
【0058】
ヒーター16は、例えば、電気ヒーターなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、ヒーター16の本数は、筐体10の大きさ、解凍装置100が解凍する冷凍食品の解凍条件をもとに適宜の数に設定することができる。
【0059】
また、本実施形態の解凍装置100では、筐体10は、軸流ファン11Aによって鉛直方向に吹き出した空気を筐体10の近傍に配された棚S上の冷凍食品に導くための第1エアガイド部材を備える。
【0060】
例えば、
図2および
図3に示す例では、第1エアガイド部材は、風向板13および風向フィン14によって構成されている。つまり、風向板13および風向フィン14によって、軸流ファン11Aの下方領域における筐体10の空気通過領域が形成されている。
【0061】
具体的には、風向フィン14は、スリット状の開口部15を形成するように上下方向に所定間隔毎に配された複数枚の帯状の板部材で構成されている。
【0062】
これらの帯状の板部材はそれぞれ、正面視(
図3)においては、筐体10の幅方向の両端の壁部にまで延伸している。また、これらの帯状の板部材はそれぞれ、断面視(
図2)においては、筐体10の前面に対して所定の角度で交差するように、所定の長さ分、延伸している。
【0063】
風向板13は、筐体10の上方から下方に向かうに連れて、筐体10の空洞部の前後間隔が狭くなるように配された矩形状の板部材で構成されている。
【0064】
この矩形状の板部材は、正面視においては、解凍装置100の幅方向の両端の壁部にまで延伸している(図示省略)。また、この矩形状の板部材は、断面視(
図2)においては、筐体10の後面から下面にまで延伸している。
【0065】
このようにして、軸流ファン11Aの動作によって矩形状の開口部17を通じて、筐体10内に取り込まれた空気は、筐体10内を鉛直方向に流れる間に、ヒーター16の熱で昇温される。そして、ヒーター16の熱で昇温された温風は、風向板13および風向フィン14によって鉛直方向から水平方向に向きを変えた後、スリット状の開口部15を通じて筐体10の前方領域に排出される。すると、ヒーター16の熱で昇温された温風が、この前方領域に置かれた棚S上の冷凍食品を後方から水平方向に通過するとき、温風との熱交換によって、棚S上の冷凍食品を適切に解凍することができる。
【0066】
電圧印加器30は、棚S上の冷凍食品に、10V以上、10kV以下の交流電圧を印加する装置である。電圧印加器30は、このような交流電圧を冷凍食品に印加することができれば、どのような構成であってもよい。例えば、電圧印加器30は、変圧器(図示せず)を備え、変圧器の一対の二次側端子の一方が、適宜の接続端子を介して金属製の棚Sに電気的に接続され、変圧器の二次側端子の他方(図示せず)は開放されていてもよい。金属製の棚Sと変圧器の一対の二次側端子の他方との間は、空気によって絶縁されていてもよい。なお、棚Sと冷蔵庫Rの筐体とは、適宜の絶縁部材(図示せず)で絶縁が適切に保たれている。
【0067】
制御器40は、軸流ファン11A、ヒーター16および電圧印加器30などの解凍装置100の制御対象機器の動作を制御する制御装置である。
【0068】
制御器40は、例えば、演算回路(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶回路(図示せず)と、を備える。演算回路として、例えば、MPU、CPUなどを挙げることができる。記憶回路として、例えば、メモリなどを挙げることができる。制御器40は、集中制御を行う単独の制御装置で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御装置で構成されていてもよい。
【0069】
以上のとおり、本実施形態の解凍装置100は、冷凍食品を温風で解凍する際に、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを従来よりも抑制し得る。具体的には、4台の軸流ファン11Aを適切に配置するとともに、羽根の回転数に基づいて軸流ファン11Aから吹き出す空気流量を所望の値に制御することで、冷凍食品を通過する空気の風速を均一化することができる。その結果、本実施形態の解凍装置100は、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきが従来よりも抑制される。
【0070】
図4は、送風機が単一の場合における従来の解凍装置による冷凍食品の温度の時間変化の一例を示す図である。
図5は、第1実施形態の解凍装置による冷凍食品の温度の時間変化の一例を示す図である。
【0071】
具体的には、
図4および
図5では、棚Sの様々な位置における冷凍食品の芯部温度の時間変化、および、これらの冷凍食品近傍の庫内温度の時間変化が示されている。
【0072】
なお、
図4および
図5の解凍時間の評価において、冷凍食品の芯部温度が、約-1℃に達する時刻において、食品内に含まれる自由水が氷から水に変化し、冷凍食品の解凍が終了すると定義した。また、
図4および
図5の実験において、上記庫内温度がいずれも、約+3℃~約+10℃の範囲になるように、送風機出力およびヒーター出力の制御器40によるフィードバック制御を行った。
【0073】
図4に示すように、従来の解凍装置において、棚Sの様々な配置位置における冷凍食品のうち、解凍が最も早く終了した冷凍食品の解凍時刻と解凍が最も遅く終了した冷凍食品の解凍時刻との時間差Tを計測すると、本時間差Tは、約2時間55分であった。
【0074】
これに対して、
図5に示すように、本実施形態の解凍装置100において、上記と同様の時間差TAを計測すると、本時間差TAは、約2時間23分であった。つまり、本実施形態の解凍装置100では、解凍が最も早く終了した冷凍食品の解凍時刻と解凍が最も遅く終了した冷凍食品の解凍時刻との時間差TAを、従来の解凍装置を使用した場合の時間差T(
図4)よりも短縮できることがわかった。
【0075】
このように、本実施形態の解凍装置100は、送風機が単一の場合における従来の解凍装置に比べて、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを抑制できることが実験データによって検証された。
【0076】
また、本実施形態の解凍装置100では、軸流ファン11Aの吸い込み口側にヒーター16が設けられている。これにより、本実施形態の解凍装置100は、軸流ファン11Aによって鉛直方向に吹き出した空気がヒーターで遮られないので、このような空気の風速低下を軽減することができる。ここで、冷凍食品の解凍にかかる時間は、温風の風速が速いほど短縮される。よって、本実施形態の解凍装置100は、軸流ファン11Aの吹き出し口側にヒーターを設ける場合に比べて、冷凍食品の解凍にかかる時間を短縮することができる。
【0077】
また、本実施形態の解凍装置100は、電圧印加器30を備えることで、棚S上の冷凍状態の食品を解凍する際、または、解凍された食品を冷蔵保存する際に、これらの食品に電圧印加器30の交流電圧を適切に付与することができる。これにより、本実施形態の解凍装置100は、冷凍食品の解凍品質、食品の冷蔵保存品質を向上させることができる。
【0078】
さらに、本実施形態の解凍装置100は、4台の送風機11を備えることで、送風機が単一の場合における従来の解凍装置に比べて、筐体10のコンパクト化を行いやすくなる。
【0079】
(第1変形例)
図6は、第1実施形態の第1変形例の解凍装置におけるヒーターの一例を示す図である。
【0080】
本変形例の解凍装置100は、ヒーター16に放熱フィンが設けられていること以外は、第1実施形態の解凍装置100と同様である。
【0081】
具体的には、
図6に示す如く、棒状のヒーター16の軸に、螺旋状に延伸する放熱フィン16Aが設けられていてもよい。すると、ヒーター16の熱が送風機11によって生じる空気に伝わりやすい。これにより、ヒーター16の温度が過昇温になることを抑制することができる。また、送風機11によって生じる空気の昇温を効率的に行うことができる。
【0082】
本変形例の解凍装置100は、上記の特徴以外は、第1実施形態の解凍装置100と同様であってもよい。
【0083】
(第2変形例)
本変形例の解凍装置100は、送風機11が、羽根の回転方向を反転させることで空気の流れ方向が逆になるように構成されていること以外は、第1実施形態の解凍装置100と同様である。
【0084】
具体的には、送風機11が、両方向の送風が可能なリバーシブルフローファンであってもよい。
【0085】
以上により、本変形例の解凍装置100は、送風機11として両方向の送風が可能なリバーシブルフローファンを使用することで、棚Sの両側から冷凍食品の解凍を行いやすくなる。よって、本変形例の解凍装置100は、リバーシブルフローファンを使用しない場合に比べて、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを抑制することができる。また、本変形例の解凍装置100は、リバーシブルフローファンを使用しない場合に比べて、冷凍食品の解凍にかかる時間を短縮することができる。
【0086】
本変形例の解凍装置100は、上記の特徴以外は、第1実施形態または第1実施形態の第1変形例の解凍装置100と同様であってもよい。
【0087】
(実施例)
図13は、第1実施形態の実施例における解凍装置の一例を示す図である。
図13には、解凍装置100Aの筐体10Aの斜視図が示されている。
【0088】
本実施例の解凍装置100Aは、以下に説明する送風機および第1エアガイド部材の構成以外は、第1実施形態の解凍装置100と同様である。
【0089】
送風機11は、吸い込む口および吹き出し口が鉛直方向に向くように水平方向に並んで配された一対の第1軸流ファン11AAおよび第2軸流ファン11ABである。
【0090】
ここで、本実施例の解凍装置100Aでは、冷凍食品の解凍時に、第1軸流ファン11AAの回転方向と第2軸流ファン11ABの回転方向とが逆になっている。
【0091】
また、
図13に示す例では、第1エアガイド部材は、第1実施形態で説明した風向板13および風向フィン14(
図2および
図3参照)の他、筐体10A内を仕切るための複数の仕切板120によって構成されている。仕切板120は、筐体10Aの正面視において、水平方向に等間隔に並ぶとともに、鉛直方向に延伸している。なお、
図13では、筐体10A内に、4枚の仕切板120が設けられているが、これは、例示であって本例に限定されない。
【0092】
ただし、
図13に示す如く、仕切板120の枚数を4枚である場合において、第1軸流ファン11AAおよび第2軸流ファン11ABの吹き出し口から見て、左側に存在する第1軸流ファン11AAの回転方向を時計周りに設定して、右側に存在する第2軸流ファン11ABの回転方向を反時計周りに設定すると、冷凍食品上を通過する空気の風速を均一化する視点において好ましい。詳細は、以下の実験で説明する。
【0093】
以上により、本実施例の解凍装置100Aは、冷凍食品上を通過する空気の風速を均一化することができる。
【0094】
<空気の風速測定の実験>
図14A、
図14B、
図14Cおよび
図14Dは、第1実施形態の実施例における解凍装置の第1軸流ファンおよび第2軸流ファンによって生じる冷凍食品上の空気の風速分布の一例を示す図である。
図14A、
図14B、
図14Cおよび
図14Dは、それぞれ、第1軸流ファン11AAおよび第2軸流ファン11ABの回転方向、および、仕切板120の枚数を以下の如く設定することで、冷凍食品上を通過する空気の風速分布の測定結果が模式的に示されている。つまり、
図14A、
図14B、
図14Cおよび
図14Dにおいて、風速計(図示せず)で測定した空気の風速分布が、視覚的に把握しやすいように3次元の面分布で表されており、これらの面分布における高低差が小さい程、冷凍食品が存在する領域内で空気が通過する際、空気の風速が均一であることを意味する。
【0095】
図14Aには、仕切板120の枚数を2枚である場合において、第1軸流ファン11AAおよび第2軸流ファン11ABの吹き出し口から見て、左側に存在する第1軸流ファン11AAの回転方向を時計周りに設定して、右側に存在する第2軸流ファン11ABの回転方向を反時計周りに設定したときの冷凍食品が存在する領域内を通過する空気の風速分布が示されている。
【0096】
図14Bには、仕切板120の枚数を2枚である場合において、第1軸流ファン11AAおよび第2軸流ファン11ABの吹き出し口から見て、左側に存在する第1軸流ファン11AAの回転方向を反時計周りに設定して、右側に存在する第2軸流ファン11ABの回転方向を時計周りに設定したときの冷凍食品が存在する領域内を通過する空気の風速分布が示されている。
【0097】
図14Cには、仕切板120の枚数を4枚である場合において、第1軸流ファン11AAおよび第2軸流ファン11ABの吹き出し口から見て、左側に存在する第1軸流ファン11AAの回転方向を時計周りに設定して、右側に存在する第2軸流ファン11ABの回転方向を反時計周りに設定したときの冷凍食品が存在する領域内を通過する空気の風速分布が示されている。
【0098】
図14Dには、仕切板120の枚数を4枚である場合において、第1軸流ファン11AAおよび第2軸流ファン11ABの吹き出し口から見て、左側に存在する第1軸流ファン11AAの回転方向を反時計周りに設定して、右側に存在する第2軸流ファン11ABの回転方向を時計周りに設定したときの冷凍食品が存在する領域内を通過する空気の風速分布が示されている。
【0099】
図14A、
図14B、
図14Cおよび
図14Dで示された空気の風速分布の比較から容易に理解できるとおり、仕切板120の枚数、並びに、第1軸流ファン11AAおよび第2軸流ファン11ABの回転方向を、
図14Cの如く設定することにより、冷凍食品上を通過する空気の風速が最も均一化する。
【0100】
本実施例の解凍装置100Aは、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1変形例-第2変形例のいずれかの解凍装置100と同様であってもよい。
【0101】
(第2実施形態)
図7、
図8および
図9は、第2実施形態の解凍装置の一例を示す図である。
図9には、解凍装置150の筐体50の正面図が示されている。
図7には、
図9の解凍装置150の筐体50のA-A部の断面図が示されている。
図8には、
図9の解凍装置150の筐体50のB-B部の断面図が示されている。
【0102】
ここで、
図7、
図8および
図9には、説明の便宜上、「上」および「下」、「右」および「左」、および、「前」および「後」が、これらの図面の如く取られている。図面の上下方向は、解凍装置150の高さ方向に対応しており、必要に応じて、鉛直方向と言い換える場合がある。図面の左右方向および前後方向は、解凍装置150の幅方向に対応しており、必要に応じて、水平方向と言い換える場合がある。
【0103】
なお、
図7および
図8では、複数の棚Sを備えるキャスター付きのカートKが二点鎖線で図示されている。そして、カートKは、解凍装置150の前方に設けられ、床面500上を、キャスターを用いて容易に移動させることができる。また、棚S上には、図示しない冷凍食品(例えば、冷凍食肉)が陳列されている。
【0104】
図7、
図8および
図9に示す例では、本実施形態の解凍装置150は、筐体50と、保持装置60と、送風機71と、ヒーター66と、電圧印加器30と、制御器40と、を備える。ここで、電圧印加器30は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0105】
筐体50は、2以上の送風機71およびヒーター66を収容する金属製の部材で構成されている。
【0106】
具体的には、筐体50は、鉛直方向に立設する第1隔壁部材51および第2隔壁部材52を備え、複数の送風機71が、第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間に等間隔で配されている。例えば、
図7、
図8および
図9に示す例では、8台の送風機71が上下に沿って4台、左右に2列で格子状に配置されている。ただし、送風機71の台数および配置位置は上記に限定されない。つまり、送風機71の台数および配置位置は、筐体50の容量、解凍装置150が解凍する冷凍食品の解凍条件をもとに適宜、設定することができる。
【0107】
送風機71は、羽根の回転数を制御可能なファンである。送風機71は、羽根の回転数を自在に制御可能なファンであれば、どのような構成であってもよい。
【0108】
例えば、送風機71は、モータと回路により羽根の回転速度が自在に変えることが可能なDCファンであってもよいし、交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換器が内蔵されたAC/DCファンであってもよい。後者の場合、AC(商用電源)で送風機71を動作させることができるので都合がよい。
【0109】
なお、送風機71の種類として、例えば、羽根正面から空気を吸い込み,後方へ吐き出すタイプの軸流ファン、吸い込み口から吐き出し口へ空気の流れ方向が約90°変化するタイプの遠心ファンなどがある。
【0110】
本実施形態の解凍装置150では、送風機71は、後者の遠心ファン71Aである。そして、遠心ファン71Aはそれぞれ、第1隔壁部材51に設けられた開口部51Aのそれぞれを通じて第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間内に空気を取り込むように吸い込み口および吹き出し口が向いている。つまり、遠心ファン71Aのそれぞれの吸い込み口は、第1隔壁部材51の主面に対して垂直な方向に向いており、これらの吹き出し口は、第1隔壁部材51の主面に対して平行な方向に向いている。
【0111】
また、筐体50は、第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間を外側から覆う第2エアガイド部材を備える。そして、第2エアガイド部材は、冷凍食品が陳列された棚Sと筐体50の第1隔壁部材51とが近接する位置において、遠心ファン71Aで上記の空間内に取り込まれた空気を棚S上の冷凍食品に導くように構成されている。
【0112】
例えば、
図7、
図8および
図9に示す例では、第2エアガイド部材は、上壁部材53、下壁部材54、左右一対の内壁部材55および左右一対の外壁部材56によって構成されている。
【0113】
図7に示すように、上壁部材53は、第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間を上方から覆いながら、第2隔壁部材52の上端部から前方に突出する平板で構成されている。
【0114】
下壁部材54は、第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間を下方から覆う平板で構成されている。
【0115】
図8および
図9に示すように、内壁部材55はそれぞれ、第1隔壁部材51の左右端部のそれぞれから前方に突出する平板で構成されている。
【0116】
外壁部材56はそれぞれ、第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間を左右からそれぞれ覆いながら、内壁部材55との間で所定の間隔を隔てて前方に突出するL型板で構成されている。つまり、L型板は、第2隔壁部材52の左右端部のそれぞれから上記の間隔だけ外側に突出した後、直角に曲がることで前方に突出している。
【0117】
ヒーター66は、筐体50内において、送風機71によって生じる空気の流れ場上に配されている。すると、本ヒーター66の熱で送風機71によって生じる空気を適温にまで昇温することができる。ヒーター66は、このような空気を適温にまで昇温できれば、どのような構成であってもよい。
【0118】
本実施形態の解凍装置150では、ヒーター66は、遠心ファン71Aの吹き出し口側に配されている。例えば、
図8および
図9に示すように、ヒーター66は、左右の第2エアガイド部材のそれぞれの内部に設けられ、上下方向に延伸する一対の棒状ヒーターであってもよい。なお、本例では、遠心ファン71Aは、棒状ヒーターの延伸方向に沿うように左右に2列で等間隔に並んでいる。
【0119】
ヒーター66として、電気ヒーターなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、ヒーター66の本数は、筐体50の大きさ、解凍装置150が解凍する冷凍食品の解凍条件をもとに適宜の数に設定することができる。
【0120】
このようにして、本実施形態の解凍装置150は、遠心ファン71Aの動作によって開口部51Aを通じて、第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間内に取り込まれた空気を、第2エアガイド部材内のヒーター66の熱で昇温させながら筐体50の前方領域で適切に循環させることができる。すると、解凍装置150およびカートK(棚S)がオープンな空間に存在する場合であっても、ヒーター66の熱で昇温された温風が、筐体50の前方領域に置かれた棚S上の冷凍食品を左右から水平方向に通過するとき、温風との熱交換によって、棚S上の冷凍食品を適切に解凍することができる。
【0121】
保持装置60は、筐体50を床面500に沿って移動可能に保持する装置である。保持装置60は、例えば、移動用の一対の前方キャスター61Fおよび一対の後方キャスター61Bと、第2隔壁部材52に固定された手すり(図示せず)などで構成されていてもよい。
【0122】
制御器40は、遠心ファン71A、ヒーター66および電圧印加器30などの解凍装置150の制御対象機器の動作を制御する制御装置である。
【0123】
制御器40は、例えば、演算回路(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶回路(図示せず)と、を備える。演算回路として、例えば、MPU、CPUなどを挙げることができる。記憶回路として、例えば、メモリなどを挙げることができる。制御器40は、集中制御を行う単独の制御装置で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御装置で構成されていてもよい。
【0124】
以上のとおり、本実施形態の解凍装置150は、冷凍食品を温風で解凍する際に、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを従来よりも抑制し得る。具体的には、8台の遠心ファン71Aを適切に配置するとともに、羽根の回転数に基づいて遠心ファン71Aから吹き出す空気流量を所望の値に制御することで、冷凍食品を通過する空気の風速を均一化することができる。その結果、本実施形態の解凍装置150は、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきが従来よりも抑制される。
【0125】
図10は、第2実施形態の解凍装置による冷凍食品の温度の時間変化の一例を示す図である。
【0126】
具体的には、
図10では、棚Sの様々な位置における冷凍食品の芯部温度の時間変化、および、これらの冷凍食品近傍の庫内温度の時間変化が示されている。
【0127】
なお、
図10の解凍時間の評価において、冷凍食品の芯部温度が、約-1℃に達する時刻において、食品内に含まれる自由水が氷から水に変化し、冷凍食品の解凍が終了すると定義した。また、
図10の実験において、上記庫内温度がいずれも、約+3℃~約+10℃の範囲になるように、送風機出力およびヒーター出力の制御器40によるフィードバック制御を行った。
【0128】
図10に示すように、本実施形態の解凍装置150において、棚Sの様々な配置位置における冷凍食品のうち、解凍が最も早く終了した冷凍食品の解凍時刻と解凍が最も遅く終了した冷凍食品の解凍時刻との時間差TBを計測すると、本時間差TBは、約1時間49分であった。つまり、本実施形態の解凍装置150では、解凍が最も早く終了した冷凍食品の解凍時刻と解凍が最も遅く終了した冷凍食品の解凍時刻との時間差TBを、従来の解凍装置を使用した場合の時間差T(
図4)よりも短縮できることがわかった。
【0129】
また、本実施形態の解凍装置150は冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを抑制しながら、装置の省スペース化を図ることができる。例えば、第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間に、軸流ファンを配置する場合において、第1隔壁部材51と第2隔壁部材52とを接近させると、軸流ファンの吹き出し口から吹き出した空気が第2隔壁部材52に当たる。このとき、仮に、第1隔壁部材51と第2隔壁部材52とを接近させ過ぎる場合、空間内における空気のスムーズな流れが阻害されることで、空気の風速が不均一化する恐れがある。つまり、第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間に、軸流ファンを配置する場合、第1隔壁部材51と第2隔壁部材52とを接近させることは自ずと限界があり、このことが、解凍装置の大型化を招く一要因となる可能性がある。
【0130】
これに対して、本実施形態の解凍装置150は、第1隔壁部材51および第2隔壁部材52間の空間に遠心ファン71Aを配置することで、第1隔壁部材51と第2隔壁部材52とを十分に接近させても、空間内における空気のスムーズな流れを実現できるので、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを抑制しながら、装置の省スペース化を図ることができる。
【0131】
さらに、本実施形態の解凍装置150は、例えば、筐体50を解凍庫に配置する場合、保持装置60を用いて筐体50を解凍庫内で自由に移動することができるので、解凍庫内の空きスペースの有効活用が可能になる。その結果、本実施形態の解凍装置150は、解凍庫内の解凍装置150の設置台数を増やすことで、冷凍食品の解凍処理能力を向上させることができる。
【0132】
例えば、
図11(a)には、解凍庫の壁部に固定された従来の解凍装置およびカートKの概略図が示されている。これに対して、本実施形態の解凍装置150は、
図11(b)に示す如く、解凍庫の壁部に固定するだけでなく、解凍庫内の中央領域のスペースにも、解凍装置150およびカートKの配置が可能であるので、解凍庫内の空きスペースの有効活用が可能になる。
【0133】
本実施形態の解凍装置150は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1変形例-第2変形例および第1実施形態の実施例のいずれかの解凍装置100と同様であってもよい。例えば、本実施形態の解凍装置150は、第1実施形態の第1変形例の解凍装置100と同様に、ヒーター66に放熱フィンが設けられていてもよい。
【0134】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態の解凍システムの一例を示す図である。
【0135】
図12に示す例では、本実施形態の解凍システム300は、解凍装置150と、解凍室80と、保管室90と、換気器81と、を備える。ここで、解凍装置150は第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0136】
解凍室80は、解凍装置150を収容する箱型の部屋である。つまり、解凍室80の壁部によって、解凍装置150の全体が覆われている。解凍室80は、解凍装置150を収容することができれば、どのような構成であってもよい。解凍室80は、例えば、断熱性のプレハブユニットなどで構成されていてもよい。
【0137】
保管室90は、解凍室80を収容する施設である。保管室90は、解凍室80を収容することができれば、どのような構成であってもよい。保管室90は、例えば、冷凍食品を扱う食品工場に設置されている既存の冷凍施設であってもよい。
【0138】
換気器81は、解凍室80の壁部に設けられた換気装置である。換気器81は、保管室90から冷気を解凍室80内に取り入れるとともに、解凍室80内の暖気を保管室90内に吐き出すように構成されている。換気器81は、例えば、換気ファンおよび通気口(図示せず)を備える。
【0139】
ここで、冷凍食品は、解凍装置150で解凍が行われた後には、一定の低温に保つ必要がある。そこで、本実施形態の解凍システム300は、解凍室80を保管室90内に収容することで、保管室90の冷気を利用して、解凍装置150で解凍が行われた食品の温度を一定の低温に保つことができる。よって、本実施形態の解凍システム300は、解凍室80に、室内ユニットと室外冷凍機で構成される冷凍ユニットを設ける場合に比べて、設備コストを削減することができる。
【0140】
本実施形態の解凍システム300は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1変形例-第2変形例、第1実施形態の実施例および第2実施形態のいずれかと同様であってもよい。例えば、本実施形態の解凍システム300では、解凍室80の内部には、第2実施形態の解凍装置150が収容されているが、これに限定されない。解凍室80の内部には、第1実施形態および第1実施形態の第1変形例-第2変形例のいずれかの解凍装置100が収容されていてもよい。
【0141】
なお、第1実施形態、第1実施形態の第1変形例-第2変形例、第1実施形態の実施例、第2実施形態および第3実施形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。
【0142】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良および他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の一態様は、例えば、冷凍食品を温風で解凍する際に、冷凍食品の解凍にかかる時間のばらつきを従来よりも抑制し得る解凍装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0144】
10 :筐体
10A :筐体
11 :送風機
11A :軸流ファン
11AA :第1軸流ファン
11AB :第2軸流ファン
13 :風向板
14 :風向フィン
15 :開口部
16 :ヒーター
16A :放熱フィン
17 :開口部
30 :電圧印加器
40 :制御器
50 :筐体
51 :第1隔壁部材
51A :開口部
52 :第2隔壁部材
53 :上壁部材
54 :下壁部材
55 :内壁部材
56 :外壁部材
60 :保持装置
61B :後方キャスター
61F :前方キャスター
66 :ヒーター
71 :送風機
71A :遠心ファン
80 :解凍室
81 :換気器
90 :保管室
100 :解凍装置
100A :解凍装置
120 :仕切板
150 :解凍装置
300 :解凍システム
500 :床面
K :カート
R :冷蔵庫
S :棚