(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】呼吸器系の炎症を予防または治療するための有効成分として、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア)と紅参の複合ハーブ抽出物を含む組成物、およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/258 20060101AFI20230411BHJP
A61K 36/537 20060101ALI20230411BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20230411BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230411BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230411BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230411BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230411BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230411BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230411BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230411BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230411BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20230411BHJP
【FI】
A61K36/258
A61K36/537
A61P29/00
A61P11/00
A61P27/16
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/10
A61K9/107
A61P43/00 121
A23L33/105
A61K125:00
(21)【出願番号】P 2019562656
(86)(22)【出願日】2018-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2018005361
(87)【国際公開番号】W WO2018208094
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0058865
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】519398548
【氏名又は名称】コリア ジンセン コープ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】シン,ハン-ジェ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョ グン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ムン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】カク,ヒョ-ミン
(72)【発明者】
【氏名】ミン,へ-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-シン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チャン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】キョン,ジョンス
(72)【発明者】
【氏名】イン,キョ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,キョン ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム,スン-ヒョン
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0127328(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0007037(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0146007(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0129474(KR,A)
【文献】Biol Res. ,2016年,Vol. 49, Article No. 41,DOI 10.1186/s40659-016-0102-7
【文献】J Ginseng Res. ,2015年,39(1),38-45,DOI 10.1016/j.jgr.2014.07.004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器炎症性疾患を予防および治療するための
医薬組成物であって、有効成分として、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参の複合ハーブ抽出物を含
み、
前記医薬組成物が、各抽出物の乾燥重量に基づく混合比率(w/w)が0.01~100:100~0.01(w/w)の範囲である、ミゾコウジュと紅参の複合ハーブ抽出物を含み、
前記複合ハーブ抽出物が、蒸留水、C
1~C
4アルコールまたはそれらの混合物に可溶であり、
前記呼吸器炎症性疾患が、鼻炎、中耳炎、喉頭咽頭炎、扁桃炎、肺炎、喘息、およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)からなる群より選択される、
医薬組成物。
【請求項2】
前記ミゾコウジュ
は、基本的な抽出材料として用いる「ミゾコウジュ」
の植物体、根、茎又は花である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記紅参が、オタネニンジン(Panax ginseng)、アメリカニンジン(Panax quinquefolia)、サンシチニンジン(Panax notoginseng)、ベトナムニンジン(Panax vietnamensis)、パナクス・エレガティオール(Panax elegatior)、ホソバチクセツニンジン(Panax wangianus)及びウヨウサンシチニンジン(Panax bipinratifidus)より選択される2~10年生育させたニンジンの根の加工ニンジンである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
オタネニンジン(Panax ginseng)、アメリカニンジン(Panax quinquefolia)、サンシチニンジン(Panax notoginseng)、ベトナムニンジン(Panax vietnamensis)、パナクス・エレガティオール(Panax elegatior)、ホソバチクセツニンジン(Panax wangianus)及びウヨウサンシチニンジン(Panax bipinratifidus)より選択される2~10年生育させたニンジンの根を10~60℃で1~24時間乾燥して、第1の乾燥ニンジンを調製する第1工程;前記第1の乾燥ニンジンを水で洗浄した後、水を乾燥除去する第2工程;前記第1の乾燥ニンジンを60~120℃で1~48時間蒸して、第1の蒸しニンジンを調製する第3工程;前記第1の蒸しニンジンを30~80℃で1~72時間乾燥して、水分含量40~70%(w/w)の第1の乾燥蒸しニンジンを調製する第4工程;及び前記第1の乾燥蒸しニンジンを10~60℃で1~20日間乾燥して、水分含量10~20%(w/w)の最終乾燥紅参を得る第5工程を含む工程を有する、請求項3に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項5】
基本的な抽出材料として用いるため、ミゾコウジュ
の植物体、根、茎または花をスライスして洗浄する第1工程;1~20倍容量の、蒸留水、C
1~C
4アルコール又はこれらの混合物からなる群より選択される抽出溶媒を前記基本的な抽出材料に加える第2工程;熱水抽出、冷水抽出、または超音波抽出による抽出方法で各溶液を抽出する第3工程;上記第3工程の抽出プロセスを繰り返して各濾液を濾過で回収し、凍結乾燥による乾燥、自然空気乾燥または熱風乾燥プロセスにより、ミゾコウジュおよび紅参の各乾燥抽出物を得る第4工程;および各ハーブのそれぞれの乾燥抽出物を、各ハーブの乾燥重量に基づく混合比(w/w)が0.01~100:100~0.01(w/w)である範囲で混合する工程を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第3工程の前記抽出方法は、50℃~120℃の範囲の温度で1~48時間の範囲の時間行う熱水抽出である、請求項5に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項7】
前記第4工程の前記乾燥は、凍結乾燥プロセスである、請求項5に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項8】
呼吸器炎症性疾患を予防および治療するための健康機能性食品であって、有効成分としてミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参の複合ハーブ抽出物を
含み、
前記健康機能性食品が、前記複合ハーブ抽出物を、前記健康機能性食品の総重量に基づいて、30~99%(w/w)含
み、
前記ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参の複合ハーブ抽出物は、各抽出物(w/w)を乾燥重量に基づいて0.01~100:100~0.01(w/w)の範囲の混合比で含み、
前記複合ハーブ抽出物が、蒸留水、C
1
~C
4
アルコールまたはそれらの混合物に可溶である、
健康機能性食品。
【請求項9】
前記健康機能性食品が、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、丸薬、懸濁液、エマルション、シロップ、ティーバッグ、浸出茶、または飲料タイプとして提供される、請求項8に記載の健康機能性食品。
【請求項10】
呼吸器炎症性疾患の予防および改善のための健康補助食品であって、主成分としてミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参の複合ハーブ抽出物を
含み、
前記健康補助食品が、前記複合ハーブ抽出物を、前記健康補助食品の総重量に基づいて、30~99%(w/w)含
み、
前記ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参の複合ハーブ抽出物は、各抽出物(w/w)を乾燥重量に基づいて0.01~100:100~0.01(w/w)の範囲の混合比で含み、
前記複合ハーブ抽出物が、蒸留水、C
1
~C
4
アルコールまたはそれらの混合物に可溶である、
健康補助食品。
【請求項11】
ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参の複合ハーブ抽出物の、ヒトまたは哺乳動物の呼吸器炎症性疾患の治療に使用される薬剤の製造のための使用であって、
前記使用が、各抽出物の乾燥重量に基づく混合比率(w/w)が0.01~100:100~0.01(w/w)の範囲である、ミゾコウジュと紅参の複合ハーブ抽出物を含み、
前記複合ハーブ抽出物が、蒸留水、C
1~C
4アルコールまたはそれらの混合物に可溶であり、
前記呼吸器炎症性疾患が、鼻炎、中耳炎、喉頭咽頭炎、扁桃炎、肺炎、喘息、およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)からなる群より選択される、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器系の炎症を治療および予防するための有効成分として、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア)および紅参(red ginseng)の複合ハーブ抽出物を含む組成物、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炎症反応は、組織または細胞が、それらに何らかの器質的な変化を引き起こす侵入を受けた場合の浮腫、痛みなどに関連する人体の正常な反応である。最近、さまざまな種類のサイトカインが炎症性疾患に関与していることが判明している。
【0003】
アレルギー反応は、反応のタイプに応じて、I型、II型、III型、IV型の4つのカテゴリーに分類することができる。あるいは、アレルゲンによって引き起こされる再感作時間から反応の開始時間までの期間のタイプに応じて、I型、II型、III型などの即時型アレルギー反応と、IV型などの遅延型アレルギー反応の2つのカテゴリに分類することができる。
【0004】
これらの中で、IgE抗体が関与するアナフィラキシー型アレルギーと呼ばれるI型アレルギーは、気管支喘息、皮膚炎などのアトピー性疾患や胃腸炎、花粉症などのアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギーなどを引き起こす。
【0005】
喘息は、咳、気流閉塞に起因する呼吸困難、急性または慢性の気道炎症、気道過敏性(AHR)および構造的リモデリングなどのさまざまな臨床症状によって特徴付けられる気道の複合症候群とみなされ、可逆的または不可逆的に回復可能である。喘息のほとんどはアレルギー性疾患であり、慢性気道炎症および気管支過敏症によって特徴付けられる(Minoguchi K and Adachi M., Pathophysiology of asthma. In: Cherniack NS, Altose MD, Homma I. editors. Rehabilitation of the patient with respiratory disease. New York: McGraw-Hill, 1999, pp97-104)。
【0006】
喘息は2つのタイプ、すなわち外因性喘息と内因性喘息に分類できる。外因性喘息は抗原の暴露によって引き起こされ、皮膚試験または抗原に対する気管支誘発試験で陽性反応を示す。通常、年齢の要因は若いほど高くなる。これは主に、House Dust Mite Dermatophagoides、花粉、動物の上皮、真菌などが原因である。内因性喘息は、上気道感染症、運動、情緒不安定、湿度の変化によって引き起こされ、成人患者によく見られる。また、外因性喘息のIgE抗原は、血清中のIgEが増加するため、皮膚テストで検出できる。
【0007】
病態生理学に関して、喘息はT-helper2(Th2)細胞駆動型慢性炎症によって認識され、免疫細胞および気道内の構造細胞からの、サイトカイン、ケモカイン、シグナル伝達分子、接着分子、成長因子などのさまざまな炎症メディエーターが、喘息のさまざまな段階において関与している(Elias JA et al., J Clin Invest., 111, pp 291-7, 2003)。喘息患者の気管支内の好酸球、マスト細胞、肺胞マクロファージなどの活性化された炎症細胞は、システイニルロイコトリエン、プロスタグランジンなどのさまざまな炎症性メディエーターを放出し、強力な気管支収縮に関与している(Maggi E., Immunotechnology 3, pp233-244, 1998; Pawankar R. Curr. Opin. Allergy Clin. Immunol., 1, pp3-6, 2001; Barnes PJ et al., Phamacol. Rev. 50, pp515-596, 1998)。
【0008】
したがって、炎症細胞の活性化に関与するIL-4、IL-5、IL-13等の様々なサイトカインおよびIgEの再生、および炎症細胞から放出されるシステイニルロイコトリエンの再生は、炎症、アレルギー反応および喘息の主要な原因であるため、現在までそれらの再生を阻害する阻害剤を開発するために多くの研究が行われてきた。
【0009】
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、心血管疾患の罹患率と死亡率の危険因子の1つであり、2001年には世界で5番目の主要な死因として報告されている。慢性閉塞性肺疾患のグローバルイニシアチブ(COLD)基準(FEV1とFVCの比率が0.7未満)に基づく慢性閉塞性肺疾患の有病率は、韓国の45歳より上の高齢者で17.2%(男性、25.8%、女性、9.6%)であった(Dong Soon Kim, Young Sam Kim, Ki-Suck Jung, Jung Hyun Chang, Chae-Man Lim, Jae Ho Lee, Soo-Taek Uh, Jae Jeong Shim, and Woo Jin Lew, on behalf of the Korean Academy of Tuberculosis and Respiratory Diseases, Am J Respir Crit Care Med Vol 172. pp 842-847, 2005; Don D. Sin and S. F. Paul Man, Chronic Obstructive Pulmonary Disease as a Risk Factor for Cardiovascular Morbidity and Mortality, Proc Am Thorac Soc Vol 2. pp 8-11, 2005; A Sonia Buist, Mary Ann McBurnie, William M Vollmer, Suzanne Gillespie, Peter Burney, David M Mannino, Ana M B Menezes, Sean D Sullivan, Todd A Lee, Kevin B Weiss, Robert L Jensen, Guy B Marks, Amund Gulsvik, Ewa Nizankowska-Mogilnicka, International variation in the prevalence of COPD (The BOLD Study): a population-based prevalence study, Lancet, Vol 370;741-750, September 1, 2007)。
【0010】
COPD患者のほとんどは喫煙によって誘発されるため、3つの病理学的メカニズム(慢性閉塞性気管支炎、肺気腫、および粘液詰まり)すべてがあるが、肺気腫と閉塞性気管支炎の割合が異なる場合がある。先進国では、たばこ喫煙がCOPDの最も一般的な原因であるが、大気汚染(特に、燃料の燃焼による屋内大気汚染)、劣悪な食事、職業被ばくなど、その他のリスク要因がいくつかある。COPDは、年齢とともに見られる肺機能の正常な低下の加速によって特徴付けられる。ゆっくりと進行する気流制限は、障害および早死につながり、重症度がめったに進行しないさまざまな気道閉塞および喘息の症状とはまったく異なる。
【0011】
COPDの病態生理学的作用と症候群は喘息のそれとは根本的に異なることが報告されている。COPDと喘息は両方とも気道の炎症を伴うが、炎症プロセスの性質には顕著な違いがあり、炎症細胞、メディエーター、炎症への反応、解剖学的分布、および抗炎症療法への反応に違いがある。(a)炎症細胞、マスト細胞、好酸球、D4+細胞(Th2)、マクロファージなどに関しては、主に喘息の発生に作用し、好中球、CD8+(Tc)などは主にCOPDの発生に作用する。(b)炎症性メディエーターに関しては、ロイコトリエンB、ヒスタミン、IL-4、IL-5、IL-13、エオタキシン、RENTES、酸化ストレスなどが主に喘息の発生に関与しているのに対し、TNF-α、IL-8、 GRO-αなどは、主にCOPDの発生に関与している。(c)炎症性症候群に関して、喘息は、AHR(気道過敏症)、上皮脱落、線維症、非実質的病変(併発)、粘液分泌、比較的可逆的な気道閉塞、咳、くしゃみ、呼吸困難など、早い年齢で肺全体に作用することにより、COPDの、成人の末梢気道に作用することにより発生し、(扁平)上皮化生、肺気腫病変、比較的不可逆的な気道閉塞、慢性気管支炎、肺気腫などのさまざまな現象を示す炎症性症候群とは異なる炎症性症候群を示す(Barnes PJ (2000b) Mechanisms in COPD: differences from asthma. Chest 117(Suppl):10S-14S.; Saetta M, Turato G, Maestrelli P, Mapp CE, and Fabbri LM (2001) Cellular and structural bases of chronic obstructive pulmonary disease. (Am. J. Respir. Crit. Care Med. 163:1304-1309)。
【0012】
シソ科(Labiatae family)に属し、南韓国に分布するミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)は、フラボノイド(flavoinds)、ホモプランタギニン(homoplantaginin)、ヒスピドリン(hispidulin)、ユーパフォリン(eupafolin)、ユーパフォリン-7-グルコシド(eupafolin-7-glucoside)などを含むことが報告されている(B.S. Chung et al., YoungRim Press, 2nd Edition, DohaeHyangYakDaeSaJeon., pp862-863, 1998)。
【0013】
ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)の抽出物または精製画分を含む、STAT3-媒介性疾患を予防または治療するための薬理組成物が報告されている(韓国特許公開第10-2013-0129868 A) 。また、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa)、サルビア・プレベイア(Salvia plebeia)、エリムス・モリス(Elymus mollis)、クリソスプレニウム・ピロサム var. バルデピロサム(Chrysosplenium pilosum var. valdepilosum)、シペラス・サンギノレンタ(Cyperus sanguinolentus)、クリソスプレニウム・ジャポニカ(Chrysosplenium japonicum)、クリソスプレニウム・トラキスペルナム(Chrysosplenium trachyspernum)、及びクリソスプレニウム・フラジェルリフェルマン(Chrysosplenium flagelliferuman)のハーブを組み合わせた抽出物を、アレルギー性または非アレルギー性皮膚疾患の予防と治療のための有効成分として含む組成物が報告されている(韓国特許公開第10-2015-0026579 A)。
【0014】
人参(ginseng)は、アジア諸国および世界の他の国々の代表的な栄養強壮剤であることが報告されており、ウコギ科(Araliaceae)に属するトチバニンジン属植物(Panax genus plant)の多くの種類がある。例えば、アジアの極東地域に分布または栽培されているオタネニンジン(Panax ginseng)、アメリカ及びカナダのアメリカニンジン(Panax quinquefolia)、中国のサンシチニンジン(Panax notoginseng)、北アメリカ東部のミツバニンジン(Panax trifolia)、日本、中国及びネパールのトチバニンジン(Panax japonica)、ネパールのヒマラヤニンジン(Panax pseudoginseng)、ベトナムニンジン(Panax vietnamensis)、パナクス・エレガティオール(Panax elegatior)、ホソバチクセツニンジン(Panax wangianus)及びウヨウサンシチニンジン(Panax bipinratifidus)などである。
【0015】
トチバニンジン属(Panax genus)に属する植物中にある最も重要な成分は、1~4個の糖類を含むダンマランサポニン(dammarane saponin)であり、特に、高麗人参(Korean ginseng)は、ジンセノサイドRb1、Rb2、Rc、Rd、Rg1、Reなどのジンセノサイド(ginsenoside)を大量に含んでいる。これらのサポニンは、その構造に応じてさまざまな効能と薬理作用を示す。
【0016】
薬効を高めるため、トチバニンジン属植物(Panax genus plant)を処理または変更する、特にその中に含まれているジンセノイサイド(ginsenoiside)の構造を変更する多くの試みがなされている。トチバニンジン属植物(Panax genus plant)の主成分はジンセノサイドRb1、Rb2、Rc、Rd、Rg1、およびReなどのダンマランサポニン(dammarane-saponin)であり、それらの活性はそれらの化学構造に応じて異なる(Chung B.S.およびShin M.K.; HyangyakDaesacheon、Youngrimsa., pp 439-442, 1998)。
【0017】
韓国では、人参(高麗人参)(ginseng)は加工方法に従っていくつかのタイプに分類されている。すなわち、フレッシュ人参(fresh ginseng)と呼ばれる4年より長く栽培された(生育させた)未加工の天然人参、白色人参(white ginseng)と呼ばれるフレッシュ人参の皮を除去するなどの単純な加工をした人参、紅参(red ginseng)と呼ばれる6年より長く栽培され(生育させ)複雑な加工、すなわち、約130℃で1時間または2時間蒸気で蒸す第1のスチーミング(蒸し工程)、空気での冷却、約70℃で7~10時間蒸気で蒸す第2のスチーミング(蒸し工程)、ひげ根などの不要な部分の除去、乾燥室で乾燥させて高麗人参の水分含有量を12.5~13.5%の範囲にする乾燥からなる加工工程を経る人参がある。この紅参は、人参の中で最も高価で薬理学的に活性な形態である。
【0018】
上記の高温処理により加工された紅参は、フレッシュ人参(fresh ginseng)や白色人参(white ginseng)には見られないさまざまなユニークで且つ修飾されたジンセノサイド(ginsenoiside)、例えば、ジンセノサイドRg2、Rg3、Rg5、Rh2、Rh3、Rh4、Rs1、Rs2、Rs3などを含んでいることが報告されている(Bae E. A. et al. 2006, Inhibitory effect of Korean red ginseng and its genuine constituents ginsenosides Rg3, Rf and Rh2 in mouse passive cutaneous anaphylaxis reaction and contact dermatitis models, Biol. Pharm、Bull、29; pp1862-1867)。
【0019】
本発明者らは、様々なハーブからの呼吸器炎症性疾患を治療するための強力な薬剤、例えば、呼吸器炎症性疾患を予防または治療するための有効成分であるレオヌルス・シビリカス(Leonurus sibiricus)から単離された特定の抽出物を開発した(韓国特許登録番号10-1770766 B2);呼吸器炎症性疾患の予防または治療のための有効成分であるトゥジャ・オリエンタリス(Thuja orientalis)から単離された特定の抽出物または化合物(韓国特許公開第10-2016-0021038 A)などを開発した。
【0020】
しかし、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)からなる組み合わせハーブ抽出物(複合ハーブ抽出物)の、上記引用文献のいずれにおける呼吸器炎症性疾患に関する上記治療効果について、報告も開示もされていない。それらの引用文献の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】韓国特許公開第10-2013-0129868 A
【文献】韓国特許公開第10-2015-0026579 A
【文献】韓国特許登録番号10-1770766 B2
【文献】韓国特許公開第10-2016-0021038 A
【非特許文献】
【0022】
【文献】Minoguchi K and Adachi M., Pathophysiology of asthma. In: Cherniack NS, Altose MD, Homma I. editors. Rehabilitation of the patient with respiratory disease. New York: McGraw-Hill, 1999, pp97-104
【文献】Elias JA et al., J Clin Invest., 111, pp 291-7, 2003
【文献】Maggi E., Immunotechnology 3, pp233-244, 1998
【文献】Pawankar R. Curr. Opin. Allergy Clin. Immunol., 1, pp3-6, 2001
【文献】Barnes PJ et al., Phamacol. Rev. 50, pp515-596, 1998
【文献】Dong Soon Kim, Young Sam Kim, Ki-Suck Jung, Jung Hyun Chang, Chae-Man Lim, Jae Ho Lee, Soo-Taek Uh, Jae Jeong Shim, and Woo Jin Lew, on behalf of the Korean Academy of Tuberculosis and Respiratory Diseases, Am J Respir Crit Care Med Vol 172. pp 842-847, 2005
【文献】Don D. Sin and S. F. Paul Man, Chronic Obstructive Pulmonary Disease as a Risk Factor for Cardiovascular Morbidity and Mortality, Proc Am Thorac Soc Vol 2. pp 8-11, 2005
【文献】A Sonia Buist, Mary Ann McBurnie, William M Vollmer, Suzanne Gillespie, Peter Burney, David M Mannino, Ana M B Menezes, Sean D Sullivan, Todd A Lee, Kevin B Weiss, Robert L Jensen, Guy B Marks, Amund Gulsvik, Ewa Nizankowska-Mogilnicka, International variation in the prevalence of COPD (The BOLD Study): a population-based prevalence study, Lancet, Vol 370;741-750, September 1, 2007
【文献】Barnes PJ (2000b) Mechanisms in COPD: differences from asthma. Chest 117(Suppl):10S-14S.
【文献】Saetta M, Turato G, Maestrelli P, Mapp CE, and Fabbri LM (2001) Cellular and structural bases of chronic obstructive pulmonary disease. (Am. J. Respir. Crit. Care Med. 163:1304-1309)
【文献】B.S. Chung et al., YoungRim Press, 2nd Edition, DohaeHyangYakDaeSaJeon., pp862-863, 1998
【文献】Chung B.S.およびShin M.K.; HyangyakDaesacheon、Youngrimsa., pp 439-442, 1998
【文献】Bae E. A. et al. 2006, Inhibitory effect of Korean red ginseng and its genuine constituents ginsenosides Rg3, Rf and Rh2 in mouse passive cutaneous anaphylaxis reaction and contact dermatitis models, Biol. Pharm、Bull、29; pp1862-1867
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明者らは、呼吸器炎症性疾患を治療および予防するための有効なハーブ製剤を見つけるよう鋭意努力し、前記複合ハーブ組成物は、個々のハーブ組成物よりも呼吸器炎症に対してより強力な治療効果を示すことを見出した。これは、様々な実験、例えば、BAL(気管支肺胞洗浄)の細胞数についての相乗的に強力な阻害活性を確認するための、BAL(気管支肺胞洗浄)の細胞数の決定(測定)(実験例1);BAL液内の白血球のCD11b+/Gr-1+比についての相乗的に強力な阻害活性を確認するための、BAL液内の白血球のCD11b+/Gr-1+比の決定(測定)(実験例2);肺組織における炎症性サイトカインの発現RNAレベルについての相乗的に強力な阻害活性を確認するための、肺組織における炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定(測定)(実験例3);BAL液の炎症性サイトカインの発現RNAレベルについての相乗的に強力な阻害活性を確認するための、BAL液(BALF)の炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定(測定)(実験例4);気管支肺胞組織の組織病理学的解析を通じて抗喘息効果を確認するための肺組織学(実験例5);呼吸器疾患などに対する本発明の抽出物のヒトにおける臨床的有効性および安全性を確認するための簡単な臨床試験(実験例7)などによって確認されている。これにより、本発明の組み合わせ抽出物は、各ハーブ抽出物よりも呼吸器炎症疾患に対してより強力な阻害効果を示すことが確認された。したがって、本発明のハーブ抽出物は、呼吸器炎症性疾患を予防および治療するための医薬組成物、健康機能性食品、および健康補助食品に有用に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
背景技術の課題を解決するための技術的解決策は、呼吸器炎症性疾患を治療および予防するための新規なハーブ製剤の開発である。
【0025】
一態様によれば、本発明は、呼吸器炎症性疾患を予防および治療するための有効成分として、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)の複合ハーブ抽出物(組み合わせハーブ抽出物)を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明はまた、呼吸器炎症性疾患を予防および治療するための有効成分として、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)の複合ハーブ抽出物(組み合わせハーブ抽出物)を含む健康機能性食品を提供する。
【0027】
本明細書で定義される用語「複合ハーブ抽出物」は、複合ハーブ抽出物、すなわち、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)とを、各抽出物の乾燥重量混合比(w/w)、0.01~100:100~0.01(w/w)、好ましくは0.1~50:50~0.1(w/w)、より好ましくは0.5~20:20~0.5(w/w)、さらに好ましくは1~10:10~1(w/w)、最も好ましくは1~5:5~1(w/w)の範囲で含む複合ハーブ抽出物を含む。
【0028】
具体的には、本明細書で定義される用語「抽出物」は、蒸留水、C1~C4アルコールまたはそれらの混合物、好ましくは水、エタノールまたはそれらの混合物、より好ましくは水または水中10~90%(v/v)エタノール、最も好ましくは水または水中20~80%(v/v)エタノールに可溶な抽出物を含む。
【0029】
本明細書で定義される用語「ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)」または「紅参(red ginseng)」は、もとになる抽出材料として使用する「サルビア・プレベイア R. Br.」または「紅参(red ginseng)」の全体(植物体)、根、茎または花を含む。
【0030】
本明細書で定義される用語「紅参(red ginseng)」は、オタネニンジン(Panax ginseng)、アメリカニンジン(Panax quinquefolia)、サンシチニンジン(Panax notoginseng)、ベトナムニンジン(Panax vietnamensis)、パナクス・エレガティオール(Panax elegatior)、ホソバチクセツニンジン(Panax wangianus)及びウヨウサンシチニンジン(Panax bipinratifidus)からなる群より選択された、2~10年、好ましくは3~8年、より好ましくは5~7年栽培した人参の根の加工された人参を含む。
【0031】
具体的には、本明細書で定義される用語「紅参(red ginseng)」は、オタネニンジン(Panax ginseng)、アメリカニンジン(Panax quinquefolia)、サンシチニンジン(Panax notoginseng)、ベトナムニンジン(Panax vietnamensis)、パナクス・エレガティオール(Panax elegatior)、ホソバチクセツニンジン(Panax wangianus)及びウヨウサンシチニンジン(Panax bipinratifidus)からなる群より選択された、2~10年、好ましくは3~8年、より好ましくは5~7年栽培した(生育させた)人参の根を、10~60℃、好ましくは室温で、1~24時間、好ましくは1~3時間乾燥させて第1の乾燥人参を調製する第1工程;前記乾燥した人参を水で洗浄し、水を乾燥させる第2工程;前記乾燥した人参を、60~120℃、好ましくは80~110℃で、1~48時間、好ましくは1~12時間、より好ましくは1~3時間蒸して、第1の蒸し人参を調製する第3工程;第1の蒸し人参を、30~80℃、好ましくは40~70℃で、1~72時間、好ましくは2~48時間、より好ましくは4~12時間乾燥させて、水分含量が40~70%(w/w)、好ましくは45~55%(w/w)の第1の乾燥蒸し人参を調製する第4工程;及び、第1の乾燥蒸し人参を、10~60℃、好ましくは15~35℃で、1~20日、好ましくは6~20日乾燥させて、水分含量が10~20%(w/w)、好ましくは12~17%(w/w)の最終乾燥紅参を調製する第5工程を含む工程によって調製される加工された人参を含む。
【0032】
本明細書で定義される「ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)の複合ハーブ抽出物」という用語は、もとになる抽出材料として使用する「ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)」または「紅参(red ginseng)」の全体(植物体)、根、茎または花をスライスして洗浄する第1工程;もとになる抽出材料に対して、1~20倍容量、好ましくは4~8倍容量の、蒸留水、C1~C4アルコールまたはその混合物、好ましくは、水、エタノールまたはその混合物からなる群より選択された抽出溶媒を添加する第2工程;熱水抽出、冷水抽出、または超音波抽出、好ましくは50℃~120℃、好ましくは約80℃~100℃の温度範囲で、1~48時間、好ましくは2~24時間の熱水抽出による抽出方法で各溶液を抽出する第3工程;上記の抽出プロセスを繰り返し、濾過して濾液を回収し、凍結乾燥による乾燥、自然空気乾燥または熱風乾燥プロセス、好ましくは凍結乾燥プロセスにより、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)及び紅参(red ginseng)のそれぞれの乾燥抽出物を得る第4工程;各ハーブ(ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)及び紅参(red ginseng))の各乾燥抽出物を、各ハーブの乾燥重量に基づく混合比(w/w)、0.01~100:100~0.01(w/w)、好ましくは0.1~50:50~0.1(w/w)、より好ましくは0.5~20:20~0.5(w/w)、さらに好ましくは1~10:10~1(w/w)、最も好ましくは1~5:5~1(w/w)で混合して、本発明の複合抽出物を調製する工程を含む方法により調製することができる。
【0033】
具体的には、本明細書で開示される「呼吸器炎症性疾患」という用語は、すべての呼吸器炎症性疾患、例えば、鼻炎、中耳炎、咽頭咽頭炎、扁桃炎、肺炎、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などを含む。
【0034】
本発明のハーブ抽出物は、以下の好ましい実施形態に従って調製することができる。
【0035】
例えば、本発明は、もとになる抽出材料として使用する「ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)」または「紅参(red ginseng)」の全体(植物体)、根、茎または花をスライスして洗浄する第1工程;もとになる抽出材料に対して、1~20倍容量、好ましくは4~8倍容量の、蒸留水、C1~C4アルコールまたはその混合物、好ましくは、水、エタノールまたはその混合物からなる群より選択された抽出溶媒を添加する第2工程;熱水抽出、冷水抽出、または超音波抽出、好ましくは50℃~120℃、好ましくは約80℃~100℃の温度範囲で、1~48時間、好ましくは2~24時間の熱水抽出による抽出方法で各溶液を抽出する第3工程;上記の抽出プロセスを繰り返し、濾過して濾液を回収し、凍結乾燥による乾燥、自然空気乾燥または熱風乾燥プロセス、好ましくは凍結乾燥プロセスにより、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)及び紅参(red ginseng)のそれぞれの乾燥抽出物を得る第4工程;各ハーブ(ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)及び紅参(red ginseng))の各乾燥抽出物を、各ハーブの乾燥重量に基づく混合比(w/w)、0.01~100:100~0.01(w/w)、好ましくは0.1~50:50~0.1(w/w)、より好ましくは0.5~20:20~0.5(w/w)、さらに好ましくは1~10:10~1(w/w)、最も好ましくは1~5:5~1(w/w)で混合して、本発明の組み合わせ抽出物を調製する工程を含む本発明のハーブ抽出物の調製方法も提供する。
【0036】
本発明の別の目的は、目的の疾患を治療または予防するのに有効な組成物を調製するための上記の本発明の抽出物の調製方法を提供することである。
【0037】
本発明のさらに他の目的は、上記方法により得られた上記ハーブのハーブ抽出物を呼吸器炎症疾患の予防および治療のための有効成分として含む医薬組成物または健康機能食品を提供することである。
【0038】
本発明の組成物は、呼吸器炎症疾患に対する強力な治療効果を示し、これは、様々な実験、例えば、BAL(気管支肺胞洗浄)の細胞数についての相乗的に強力な阻害活性を確認するための、BAL(気管支肺胞洗浄)の細胞数の決定(実験例1);BAL液内の白血球のCD11b+/Gr-1+比についての相乗的に強力な阻害活性を確認するための、BAL液内の白血球のCD11b+/Gr-1+比の決定(実験例2);肺組織における炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定(実験例3);肺組織における炎症性サイトカインの発現RNAレベルについての相乗的に強力な阻害活性を確認するための、BAL液の炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定(実験例4);気管支肺胞組織の組織病理学的分析を通じて抗喘息効果を確認するための肺組織学(実験例5);呼吸器疾患などに対する本発明の抽出物のヒトにおける臨床的有効性および安全性を確認するための簡単な臨床試験(実験例7)により確認され、本発明の組み合わせ抽出物は、各ハーブ抽出物よりも呼吸器炎症疾患に対してより強力な阻害効果を示すことが確認された。したがって、本発明のハーブ抽出物は、呼吸器炎症性疾患を予防および治療するための医薬組成物、健康機能性食品、および健康補助食品に有用に使用することができる。
【0039】
目的の疾患を治療するための医薬組成物は、本発明の上記ハーブ抽出物を、組成物の総重量に基づいて約0.01~99w/w%含むことができる。
【0040】
ただし、上記の組成物の量と各成分は、患者の状態、患者の病気の進行、病気の種類などによって変化する可能性がある。
【0041】
本発明の組成物は、使用方法に応じて、慣用のキャリア(carrier)、アジュバントまたは希釈剤をさらに含んでもよい。
【0042】
本発明によるハーブ組成物は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口剤形;局所製剤;または注射液に製剤化することができる。本発明によるハーブ組成物は、薬学的に許容される担体、アジュバントまたは希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油を含む医薬組成物として提供することができる。 製剤は、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、希釈剤などの賦形剤をさらに含んでもよい。固体経口剤形は、錠剤、丸剤、粉末、顆粒、カプセルなどを含み、固体経口剤形は、デンプン、炭酸カルシウム、ショ糖、乳糖またはゼラチンなどの少なくとも1つの賦形剤をハーブ抽出物に加えることにより調製される。ステアリン酸マグネシウムまたはタルクなどの潤滑剤を使用できる。水性経口剤形は、懸濁液、経口液剤、乳剤、シロップを含み、水性経口剤形は、湿潤剤、甘味料香料、防腐剤、ならびに水、液体パラフィンなどのいくつかの賦形剤を含んでもよい。非経口剤形は、滅菌水溶液、非水性溶媒溶液、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥製剤、坐薬などを含む。キャリア(carrier)の適切な例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルが含まれる。坐剤の基剤には、ウィテップゾール、マクロゴール、トゥイーン61、カカオバター、ラウリン、グリセロゼラチンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の組成物の望ましい用量は、対象の状態および体重、重症度、薬物形態、投与経路および期間に応じて異なり、当業者により選択され得る。しかし、望ましい効果を得るために、本発明の組成物を、0.01mg/kg~10g/kg、好ましくは1mg/kg~1g/kg(体重/日)で投与することが一般に推奨される。前記用量は、1日1回または複数回に分けて投与されてもよい。
【0044】
本発明の医薬組成物は、哺乳動物(ラット、マウス、家畜またはヒト)などの対象動物に様々な経路で投与することができる。投与のすべての様式が考えられ、例えば、投与は経口的、直腸内または静脈内注射により行うことができる。
【0045】
本発明の他の目的は、呼吸器炎症性疾患の治療または予防を必要とする対象への有効成分として、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)の複合ハーブ抽出物を含む組成物を投与することを含む治療または予防方法を提供することである。
【0046】
本発明の別の目的は、ヒトおよび哺乳動物の呼吸器炎症性疾患の治療または予防に使用される医薬品の製造のための有効成分としての、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)の複合ハーブ抽出物の使用を提供することである。
【0047】
本発明の一態様によれば、呼吸器炎症疾患の予防または改善のための有効成分として、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)の複合ハーブ抽出物を含む健康機能性食品が提供される。
【0048】
本明細書で定義される「健康機能性食品」という用語は、本発明の抽出物を従来の食品に添加して、ヒトまたは哺乳動物の目的の疾患を予防または改善することにより物理的機能性または生理学的機能性などの機能性が強化された機能性食品を含み、大韓民国の健康機能性食品法6727で規定される機能性食品を含む。
【0049】
目的の疾患を予防および改善するための健康機能性食品組成物は、本発明の上記ハーブ組成物を、組成物の総重量に基づいて、約0.01~95w/w%、好ましくは1~80w/w%含み得る。
【0050】
さらに、本発明の抽出物は、呼吸器炎症性疾患の予防または改善のための様々な機能的健康食品および健康補助食品の調製における主成分または添加剤および補助剤としても使用できる。
【0051】
本発明の健康機能性食品は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、丸薬、懸濁液、乳液、シロップなどの薬学的に許容される剤形の形態;またはティーバッグ、浸出茶、健康飲料タイプなどの機能性健康食品の形態で調製および加工することができる。
【0052】
本発明の他の目的は、呼吸器炎症性疾患の予防または改善のための主成分として、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)の複合ハーブ抽出物を含む健康補助食品を提供することである。
【0053】
上記の「主成分として」という用語は、上記健康補助食品が、本発明の抽出物を、組成物の総重量に基づいて、約30~99(w/w%)、好ましくは50~99(w/w%)、より好ましくは70~99(w/w%)を含むことを意味する。
【0054】
本発明の組み合わせ(複合)ハーブ抽出物が健康機能性飲料組成物の成分として使用される場合、健康機能性飲料組成物は、その典型的な飲料組成物のように制限なしに、香味料または天然炭水化物などの他の成分を含むことができる。天然炭水化物の例には、グルコース、フルクトースなどの単糖類;マルトース、スクロースなどの二糖類;多糖類、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが含まれる。天然香味料(ソーマチン、ステビア抽出物(レバウジオシドA、グリチルリジンなど))および合成香味料(サッカリン、アスパルテームなど)を健康機能性飲料組成物に添加してもよい。天然炭水化物の量は一般に、本組成物100mlあたり約1~20g、好ましくは約5~12gの範囲である。
【0055】
本発明の複合ハーブ抽出物が健康食品の食品添加物として使用される場合、複合ハーブ抽出物はそのまま添加されてもよく、または一般的なプロセスに従って他の食品成分とともに使用されてもよい。食品の例には、肉製品、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ、スナック、クラッカー、ビスケット、ピザ、ラーメン、麺製品、チューインガム、アイスクリームなどの乳製品、スープ、飲料、茶、飲み物、アルコール飲料、ビタミン複合体などが含まれる。ただし、本明細書では、目的の疾患を予防または改善するために、それに限定することを意図していない。
【0056】
上記の組成物以外の成分として、さまざまな栄養素、ビタミン、ミネラルまたは電解質、合成香味料、着色剤、チーズの場合における品質改良剤、チョコレートなど、ペクチン酸とその塩、アルギン酸とその塩、有機酸、保護コロイド状接着剤、pH調整剤、安定剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料などで使用される炭化剤(carbonizing agent)がある。前述のもの以外の成分としては、天然果汁、果汁飲料、および野菜飲料を調製するための果汁であってもよく、その成分は単独でまたは組み合わせて使用することができる。成分の割合はそれほど重要ではないが、一般に、本組成物100w/w%に対して約0~20w/w%の範囲である。
【0057】
また、上記の抽出物は、目的とする病気(不調)の予防および改善のために、食物または飲料に添加することができる。機能性健康食品または健康補助食品としての食品または飲料中の上記抽出物の量は、一般に、機能性健康食品組成物の食品の総重量の約0.01~15w/w%の範囲であり得る。そして、本発明の抽出物は、健康飲料組成物100ml当たり0.02~5g、好ましくは0.3~1g添加することができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明に記載のように、本発明の複合ハーブ組成物は呼吸器炎症疾患に対して強力な治療効果を示し、複合ハーブ組成物は個々のハーブ組成物よりも呼吸器炎症に対してより強力な治療効果を示す。これは様々な実験、例えば、BAL(気管支肺胞洗浄)の細胞数の決定(実験例1);BAL液内の白血球のCD11b+/Gr-1+比の決定(実験例2);肺組織における炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定(実験例3);BAL液における炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定(実験例4);肺組織学(実験例5);簡単な臨床試験(実験例7)などにより確認される。本発明の組み合わせ(複合)抽出物は、各ハーブ抽出物よりも呼吸器炎症疾患に対してより強力な阻害効果を示すことが確認された。したがって、本発明のハーブ抽出物は、呼吸器炎症性疾患を予防および治療するための医薬組成物、健康機能性食品、および健康補助食品に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】染色剤で染色された気管支肺胞組織の組織病理学的解析を示す(NC:正常対照群、AIG:喘息誘発群、CB3:CB3複合抽出物で治療した試験サンプル群)。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の組成物、使用および調製において様々な修正および変更を行うことができることは当業者には明らかであろう。
【0061】
本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に決して限定されないことを理解すべきである。
【実施例】
【0062】
以下の実施例および実験例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに説明することを意図している。
【0063】
比較例1.ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)の抽出物の調製
1.5kgの乾燥ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)(韓国、全羅北道扶安郡に分布)を22.5Lの30%エタノールに加えて、80±2℃で4時間の還流抽出を2回行った。残渣をろ紙でろ過して抽出物を得て、ろ過した抽出物を650±30mmHg、52.5±2.5℃で濃縮した。濃縮抽出物を85.0±2.0℃で1時間滅菌し、55℃に冷却した。滅菌した抽出物を凍結乾燥機(KL-8、SeoGang Engineering Co. Ltd.、入口温度:190±10℃、出口温度:95±5℃)で乾燥し、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)の30%エタノール抽出物の乾燥品458gを得た(以下「SP」と表記)。これは次の実験で比較試験サンプル1として使用される。
【0064】
比較例2.紅参抽出物の調製
2-1.紅参の準備
KT&G Corp(韓国、大田市西区平村洞100、韓国の金山郡忠清南道で栽培)から調達した乾燥された6年栽培したフレッシュ人参根(オタネニンジン C.A. Meyer)の10kgを蒸留水で洗浄し、さらに、慣用の超音波洗浄器(Branson 5210、Emerson Electric Co. United States)を使用して30分間さらに洗浄した。洗浄されたフレッシュ人参は、蒸煮装置(KMC-1221、Jeiotech Co. Ltd.、大田、韓国)を使用して、蒸気で約80~100℃で90~110分間蒸煮され、乾燥装置(KMC-1202D3、Jeiotech Co. Ltd.、大田、韓国)を使用して、約60~65℃で9時間乾燥させて、第1の乾燥人参(水分含量:45~55%)を得た。第1の乾燥人参は、13~17日間乾燥室で第2の乾燥プロセスに付され、紅参(水分含量:約14%、以下「RG1」と称される)を作製した。
【0065】
2-2.紅参抽出物の調製
上記の工程で調製された紅参500gを、遠赤外線乾燥装置(Korea Energy Technicals Co. Ltd.、HKD-LAB)を使用して、約100~120℃で15~20分の第3の乾燥プロセスに付し、細かく切った。乾燥した紅参を4~8倍量の蒸留水に注ぎ、85℃で8~12時間還流抽出を行った。溶液をろ紙でろ過し、0~10℃に冷却した。残渣を4~8倍量の蒸留水に注ぎ、85℃で8~12時間還流抽出を行い、抽出を4回繰り返した。抽出物を集め、ろ紙でろ過し、0~10℃に冷却した。冷却された抽出物は、不要な破片を取り除くために、遠心装置(Supra22K、Hanil Science Medicals Co. Ltd.、大田市)を使用して、5,000~8,000rpmの速度で4℃で10~20分間遠心分離し、エバポレーターを用いて50~60℃で蒸発させて水を除去し、濃縮エキス(71°Brix)を得た。最後に、濃縮紅参エキスを蒸留水に溶解して希釈エキス(15°Brix)を調製し、噴霧乾燥して230gの紅参抽出物(以下「RG」と称する)を得た。これは次の実験で比較サンプル2として使用された。
【0066】
実施例1.複合製剤の調製(CB1~CB7)
上記の比較例で調製されたミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)の乾燥抽出物と紅参抽出物を、ミキサー(Vortex genie-2、Scientific Industries、USA)を使用して、異なる混合重量比(表1を参照)で完全に混合して、さまざまな種類の発明製剤(以下、「CB1-CB7」と称する)を得た。これは次の実験で試験サンプルとして使用される。
【0067】
【0068】
実験例1.BAL(気管支肺胞洗浄)での細胞数の決定
本発明の組み合わせが比較例と比較してBAL(気管支肺胞洗浄)の細胞数について相乗的に強力な阻害活性を示すことを確認するため、文献(Schins et al., Toxicol. Appl. Pharmacol., 195(1), pp1-11, 2004; Smith et al., Toxicol. Sci., 93(2), pp390-399, 2006)に開示された方法により以下の試験を行った。
【0069】
1-1. 試験手順
関連する呼吸器病原体について血清学的に定期的にスクリーニングされた6週齢の特定の病原体を含まない雌のBALB/cマウス(約20g)を、ORIENT Co.(ソウル、韓国)から購入し、1週間実験環境に順応させた。ミョウバンを微粉塵混合物(025mg/mlの石炭、10mg/mlのフライアッシュおよび0.25mg/mlのディーゼル排気微粒子)と混合することにより調製した50μLの微粉塵混合物を、上記のマウスに経鼻・経気管(INT(Intra-Nazal-Trachea))投与して感作させ、最初の感作後3日目および6日目に8%の最終濃度になるようにして、喘息誘発動物モデルを調製した。
簡単に説明すると、マウスを、各群6匹のマウスからなる以下の4群に分割した。すなわち、(a)正常対照群(NC):微粉塵混合物で処理されていないグループ、(b)喘息誘発群(AIG):喘息を誘発するために微粉塵混合物で処理されたグループ、(c)比較群:比較例において0.5%CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム、419273、Sigma-Aldrich)に溶解することにより調製された比較サンプルで10日間毎日経口治療したグループ、(d)実施例において0.5%CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム、419273、Sigma-Aldrich)に溶解することにより調製された試験サンプルプで10日間毎日経口治療した試験サンプル群である。
実験後11日目に、マウスを剖検し、マウスのBAL(気管支肺胞洗浄)液を採取した。
【0070】
1-2. 試験結果
表2に示すように、本発明の組み合わせで治療した試験サンプル群のBAL(気管支肺胞洗浄)液の総細胞数は、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)単独抽出物(SP)または紅参抽出物(RG)でそれぞれ治療した比較群の細胞数よりも相乗的に減少した。
【0071】
【0072】
実験例2.BAL液内の白血球のCD11b+/Gr-1+比の決定
比較例よりも本発明の組み合わせのBAL液内の白血球におけるCD11b+/Gr-1+比に対する相乗的に強力な阻害活性を確認するために、以下の試験を文献(Beutner E. H., bacteriological Reviews, 25(1), pp49-76, 1961)に開示された方法で実施した。
【0073】
2-1.試験手順
実験例1から採取したマウスのBAL(気管支肺胞洗浄)液について、蛍光標識CD11b抗体(553310、BD Biosciences、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)およびGr-1抗体(553128、BD Biosciences、米国カリフォルニア州サンノゼ)を用いた特定の蛍光抗体染色法を行った。BAL液中の総白血球のCD11b+/Gr-1+比は、FACS法(蛍光活性化セルソーティング、BD Biosciences、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)に従って決定した。
【0074】
2-2.試験結果
表3に示すように、本発明の組み合わせで治療した試験サンプル群のBAL液中の総白血球のCD11b+/Gr-1+比は、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)単独抽出物(SP)または紅参抽出物(RG)でそれぞれ治療した比較群よりも相乗的に減少した。
【0075】
【0076】
実験例3.肺組織における炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定
本発明の組み合わせが比較例よりも肺組織における炎症性サイトカインの発現RNAレベルにおいて相乗的に強力な阻害活性を示すことを確認するために、RT-PCR(リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応)試験を文献(Adelroth E., CancerRespir. J.、pp. 18A-21A、1998)に開示された方法で行った。
【0077】
3-1. 試験手順
(1)肺組織からのRNAの分離と抽出
実験例1に開示された方法に従って、マウスのBAL(気管支肺胞洗浄)液ではなく肺組織を摘出した。摘出された肺組織を500mLのRNAzolB(Tel-Test、Friendswood、USA)に加え、すりつぶして溶解させた。50mLのCHCl3を懸濁液に加え、15秒間再び撹拌した。懸濁液を氷中に15分間放置し、13,000rpmの速度で遠心分離した。回収した上清約200mLを等量の2-プロパノール(19516、Sigma-Alrich、USA)に加え、穏やかに攪拌して15分間氷中に放置した。溶液を再び13,000rpmの速度で遠心分離し、80%エタノールで洗浄し、真空中で3分間乾燥させてRNAを抽出した。抽出したRNAを20mLの蒸留水に溶解し、DEPC(ジエチルピロカーボネート、750023、Thermo Scientific、マサチューセッツ州、米国)で処理し、75℃で不活性化してcDNA(一本鎖相補DNA)合成に使用した。
【0078】
(2)cDNA合成
2μgの全RNAを2U/tubeDNase I(AB0620、Thermo Scientific、マサチューセッツ州、米国)に添加し、35℃で30分間反応させ、10分間変性させ、2.5mLの10mM dNPTs ミックス(4030、TaKaRa Shiga、日本)、1mLのランダム配列ヘキサヌクレオチド(N8080127、Thermo Scientific、マサチューセッツ州、米国)、1mLのRNase阻害剤(2313A、TaKaRa Shiga、日本)、1mLの100mM DTT(4029、TaKaRa Shiga、日本)および4.5mLの5 x RTバッファー(M5313, Promega, Wisconsin-Madison, USA)からなる反応混合物に添加した。その溶液を、4.5mLのM-MLV RT(M1701、プロメガ、ウィスコンシン州マディソン、米国)に加え、DEPC(ジエチルピロカルボネート、750023、サーモサイエンティフィック、マサチューセッツ州、米国)で処理した蒸留水に溶解して20mLにした。十分に撹拌した後、溶液を2000rpmの速度で5秒間遠心分離し、加熱ブロック(Multi-blockヒーター、TRIPUNITHURA、USA)で37℃で60分間反応させてcDNAを合成し、95℃で5分間放置し、M-MLV RTを不活性化した。合成されたcDNAはPCR法で用いた。
【0079】
(3)PCR
合成されたcDNAは、文献(Galli et al., Nat.Immunol., 6(2), pp135-142, 2005)に開示された手順に従ってRT-PCR法を行った。
Sper-Taqman PCR Masterミックス(4304437、Applied Biosystems、San Mateo、USA)および表4に開示されているさまざまなプライマー(最終濃度:200nM)がRT-PCR法で使用された。RT-PCRは、50℃で2分間、94℃で10分間予備変性し、40サイクル(すなわち95℃で0.15分、60℃で1分間)反応させることにより行った。GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、4352339E、Thermo Scientific、マサチューセッツ、米国)を内部標準として使用した。
【0080】
【0081】
3-2. 試験結果
表5に示すように、本発明の組み合わせで治療した試験サンプル群のMUC5AC、CCR5などの炎症組織の炎症性サイトカインの発現RNAレベルは、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)の単独抽出物(SP)または紅参抽出物(RG)でそれぞれ治療した比較群よりも相乗的に減少した。
【0082】
【0083】
実験例4.BAL液の炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定
本発明の組み合わせが比較例よりもBAL液の炎症性サイトカインの発現RNAレベルにおいて相乗的に強力な阻害活性を示すことを確認するために、以下のELISA(酵素結合免疫吸着測定法)試験を文献(Brandt E.B. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 132(5), pp. 1194-1204, 2013)に開示されている方法に従って行った。
【0084】
4-1. 試験手順
実験例1から採取したマウスのBAL(気管支肺胞洗浄)液をELISA(酵素結合免疫吸着測定法)試験にかけ、実験例3に開示されている方法と同様に、IL-17A、TNF-α、MIP2、およびCXCL-1のレベルを決定した。IL-17A抗体(M1700、R&D Systems、ミネアポリス、米国)、TNF-α抗体(MTA00B、R&D Systems、ミネアポリス、米国)、MIP2抗体(MM200、R&D Systems、ミネアポリス、米国)、およびCXCL-1抗体(MKC00B 、R&D Systems、米国ミネアポリス)を緩衝液で希釈し、マイクロセルでコーティングして、95℃で16時間インキュベートした。各ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄し、100μLの10倍希釈血清をそれに接種した。室温で1時間放置した後、ウェルを2回洗浄し、100μLのアビジン-HRP結合抗体(DY007、R&D System、ミネアポリス、米国)で処理し、室温で1時間放置した。再度洗浄した後、TMB基質(DY999、R&D System、米国ミネアポリス)100μLをそれに接種し、30分間暗所に放置した。50μLの停止溶液(DY994、R&Dシステム、ミネアポリス、米国)で処理し、次に溶液の吸光度を450nmで決定した。
【0085】
4-2. 試験結果
表6に示すように、本発明の組み合わせで治療した試験サンプル群のIL-17A、TNF-α、MIP2、CXCL-1などのBAL液の炎症性サイトカインの発現RNAレベルは、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)の単独抽出物(SP)または紅参抽出物(RG)でそれぞれ治療した比較群よりも相乗的に減少した。
したがって、本発明の組み合わせは、IL-17A、TNF-α、MIP2、およびCXCL-1などのBAL液の炎症性サイトカインの発現RNAレベルにおいて、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)の単独抽出物(SP)または紅参抽出物(RG)と比較してより強力な低減効果を示すことが確認された。したがって、本発明の組み合わせは、喘息疾患、アレルギー性疾患、または気道のCOPDの治療または予防に有用である。
【0086】
【0087】
実験例5.肺の組織学
実施例で調製した試験サンプルの抗喘息効果を確認するために、気管支肺胞組織の組織病理学的解析を、文献(Nandedkar SD. et al. Blood, 111(6), pp 2529-2538. 2008)に開示されている方法に従ってH&E染色およびM-T染色法を用いて行った。
【0088】
5-1. 試験手順
実験例1に開示された方法に従って、マウスのBAL(気管支肺胞洗浄)液ではなく肺組織を取り出した。取り出した肺組織について、10%中性緩衝ホルマリン溶液(F8775、Sigma-Aldrich、米国)で24時間固定化処理し、解剖し、8時間流水で洗浄した。エポキシ(A3183、Sigma-Aldrich、USA)に埋め込んだ後、組織をミクロトーム(ライカRM2265、Wetzlar、ドイツ)で厚さ4μmの切片にし、切片をMasson-Trichrome(HT10516、Sigma-Aldrich、米国)で染色し、光学顕微鏡(Bright Microscope、東京、日本)を使用して気管支肺胞組織を観察し組織病理学的解析を行った。
【0089】
5-2. 試験結果
気管支肺胞組織の組織病理学的解析を示す
図1に示されるように、喘息誘発群では、正常群と比較して、コラーゲン線維の増加と気管筋の肥大が見られた。そして、本発明の組み合わせで治療した試験サンプル群では、コラーゲン線維の顕著な減少と気管筋の薄化が見られた。
【0090】
実験例6.ラット経口投与の急性毒性試験
急性毒性試験は、6週齢のSPF Sprague-Dawleyラットに本発明の抽出物(CB3)を投与することにより実施した。
本発明の抽出物を2匹のラットからなる各グループに、250mg/kg、500mg/kg、1000mg/kg、5000mg/kgの量で経口投与し、ラットの症状を14日間観察した。抽出物または化合物を投与した後、すべての臨床的変化、すなわち死亡率、臨床徴候、体重変化を観察し、血液学的検査や血液生化学検査などの血液検査を行った。剖検後に腹部臓器および胸部臓器に異常な変化がないかを観察した。
どの群あるいはどの性別においても、死亡率、臨床徴候、体重変化、肉眼的所見に変化は見られなかった。さらに、本発明の抽出物5000mg/kgで処理された試験群でいくらかの毒性が示された。
したがって、本発明で製造された本発明の抽出物は、経口投与でLD50(5000mg /kg超)を示す効能の高い安全な物質であることが確認された。
【0091】
実験例7.簡単な臨床試験
呼吸器疾患に対する本発明の抽出物の臨床的有効性および安全性を確認するために、以下の簡単な臨床試験を実施した。
【0092】
7-1. ボランティアの選択
咳、痰、呼吸困難などの一貫した呼吸器疾患に1か月以上苦しんでいるボランティア(19~70歳)を、3つのグループに分けた。すなわち、(a)10人のボランティアで構成される低用量試験グループ(1カプセル当たりCB3抽出物を250mg含むカプセル2つを、1日2回、朝食と夕食のそれぞれ30分後、12週間経口摂取する);(b)10人のボランティアで構成される高用量試験グループ(1カプセル当たりCB3抽出物を500mg含むカプセル2つを、1日2回、朝食と夕食のそれぞれ30分後、12週間経口摂取する);(c)10人のボランティアで構成されたプラセボ群(CB3抽出物を含まないカプセル2つを、1日2回、朝食と夕食のそれぞれ30分後、経口摂取する)である。
【0093】
7-2. 試験手順
チョンブク(Chon buk)国立大学病院の機能性食品のための臨床試験センター(肺学科、メリーランド州、パーク、SJ)で無作為化、二重盲検、並行、プラセボ対照方式で簡単な臨床試験を実施し、ボランティアは3回訪問した。すなわち、(a)1日目(ボランティアは3種類の試験カプセルを提供するためにランダムに3つのグループに分けられた);(b)43日目(事前に決定された有効性試験を実施し、追加の試験カプセルを提供するためにボランティアが招待された);(c)85日目(ボランティアは事前に決定された有効性試験を実施し、簡単な臨床試験を終了するように招待された)である。
実験での所定の有効性試験は、(1)SGRQ(セントジョージの呼吸器アンケート)およびCAT(COPD評価試験)を使用して、試験サンプル群とプラセボ群の有効性を比較する第1の有効性評価、および(2)肺機能検査、感染頻度、感染期間、症候群などを使用する第2の有効性評価からなる。
【0094】
7-3. 試験結果
表7および表8に示すように、高用量および低用量の試験群をとる試験試料群は、プラセボ群と比較して有意な治療活性を示した。
したがって、本発明の組み合わせは、簡単な臨床試験でCOPD、喘息などの呼吸器疾患に対して強力な治療活性を示したため、喘息、アレルギー疾患、または気道におけるCOPDの治療または予防に有用であることが確認された。
【0095】
【0096】
【0097】
[本発明の形態]
以下に製剤化方法および賦形剤の種類について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
注射用調製物
CB1エキス(抽出物):100mg
メタ重亜硫酸ナトリウム:3.0mg
メチルパラベン:0.8mg
プロピルパラベン:0.1mg
注射用蒸留水:適量
注射製剤は、活性成分を溶解し、pHを約7.5に制御し、すべての成分を2mlのアンプルに満たし、慣用の注射液調製法で滅菌することにより調製した。
【0099】
粉末調製物
CB2エキス(抽出物):500mg
コーンスターチ:100mg
ラクトース:100mg
タルク:10mg
上記の成分を混合し、密封パッケージに充填することにより、粉末製剤を調製した。
【0100】
錠剤調製物
CB3エキス(抽出物):200mg
コーンスターチ:100mg
ラクトース:100mg
ステアリン酸マグネシウム:適量
上記の成分を混合し、錠剤化することにより、錠剤を調製した。
【0101】
カプセル調製物
CB4エキス(抽出物):100mg
ラクトース:50mg
コーンスターチ:50mg
タルク:2mg
ステアリン酸マグネシウム:適量
錠剤製剤は、上記成分を混合し、慣用のゼラチン製剤調製法でゼラチンカプセルに充填することにより調製した。
【0102】
液体調製物
CB5エキス(抽出物):1000mg
砂糖:20g
多糖類:20g
レモン香料:20g
液体製剤は、活性成分を溶解し、すべての成分を1000mlのアンプルに満たし、慣用の液体製剤調製法で滅菌することにより調製した。
【0103】
健康食品調製物
CB6エキス(抽出物):1000mg
ビタミン混合物:適量
ビタミンAアセテート:70g
ビタミンE:1.0mg
ビタミンB10:13mg
ビタミンB2:0.15mg
ビタミンB6:0.5mg
ビタミンB1:20.2mg
ビタミンC:10mg
ビオチン:10g
ニコチン酸アミド:1.7mg
葉酸:50g
パントテン酸カルシウム:0.5mg
ミネラル混合物:適量
硫酸第一鉄:1.75mg
酸化亜鉛:0.82mg
炭酸マグネシウム:25.3mg
リン酸一カリウム:15mg
リン酸二カリウム:55mg
クエン酸カリウム:90mg
炭酸カルシウム:100mg
塩化マグネシウム:24.8mg
上記のビタミンとミネラルの混合物は、さまざまな方法で変更できる。そのような変形は、本発明の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではない。
【0104】
健康飲料調製物
CB1エキス(抽出物):1000mg
クエン酸:1000mg
オリゴ糖:100g
濃縮アプリコット:2g
タウリン:1g
蒸留水:900ml
健康飲料調製物は、活性成分を溶解し、混合し、85℃で1時間撹拌し、濾過し、次いですべての成分を1000mlのアンプルに充填し、慣用の健康飲料調製方法で滅菌することにより調製した。
【0105】
このように本発明を説明してきたが、本発明は多くの方法で変更できることは明らかであろう。そのような変更は、本発明の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に明らかなそのような修正はすべて、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に記載されるように、本発明は、呼吸器疾患の予防と治療のための有効成分としての、ミゾコウジュ(サルビア・プレベイア R.Br.)と紅参(red ginseng)との複合(組み合わせ)ハーブ抽出物を提供する。この複合(組み合わせ)ハーブ組成物は、個々のハーブ組成物よりも呼吸器炎症に対してより強力な治療効果を示す。種々の実験、例えば、BAL(気管支肺胞洗浄)の細胞数の決定(実験例1);BAL液内の白血球のCD11b+/Gr-1+比の決定(実験例2);肺組織における炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定(実験例3);BAL液における炎症性サイトカインの発現RNAレベルの決定(実験例4);肺組織学(実験例5);簡単な臨床試験(実験例7)などにより、本発明の組み合わせ抽出物は、各ハーブ抽出物よりも呼吸器炎症疾患に対してより強力な阻害効果を示すことが確認された。したがって、本発明のハーブ抽出物は、呼吸器炎症性疾患を予防および治療するための医薬組成物、健康機能性食品、および健康補助食品に有用に使用することができる。
【配列表】