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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】鉄道駆動用電動機アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/24 20060101AFI20230411BHJP
   B61C 3/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H02K5/24 C
B61C3/00 A
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018141301
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2019058055
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】102017000087339
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516257589
【氏名又は名称】ヒタチ レール ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ポルツィオ
(72)【発明者】
【氏名】チーロ マイエッロ
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ シナッティ
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-233104(JP,A)
【文献】実開昭58-006562(JP,U)
【文献】特開平01-167500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
B61C 3/00
H02K 5/20
H02K 9/06
H02K 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動手段(10)と、
冷却空気によって前記電気駆動手段(10)を換気し冷却する換気冷却手段(20)であり、前記電気駆動手段(10)の軸(16)上に取り付けられた前記換気冷却手段と、
前記電気駆動手段(10)を換気し冷却するのに用いられる換気冷却空気流を排出する排出手段(30)であり、冷却空気流の消音手段(70)を備えた前記排出手段と、
を備えた、鉄道駆動用電動機アセンブリ(100)であって、
前記消音手段(70)が、少なくとも1つの直線状チャネル(39D)であって、乱流を、前記排出手段(30)から流出する換気冷却空気の実質的に層流に減少させる前記少なくとも1つの直線状チャネルを備え、
前記排出手段(30)が、渦巻体(300)を更に備え、該渦巻体が、2つの別個のアーチ状チャネル(39A、39B)を備えた換気手段(21)の周囲に配置され、前記アーチ状チャネル(39A、39B)が、換気冷却空気の共通出口領域(39C)においてのみ、流体の観点から互いに連通しており、前記渦巻体(300)と、前記少なくとも1つの直線状チャネル(39D)が、互いに直列に配置され
前記渦巻体(300)が、内側シェル(301)であって、第1の一連の上部開口(32、33、34)と、第2の一連の下部開口(35、36、37)とが設けられた前記内側シェルを備えることを特徴とする鉄道駆動用電動機アセンブリ(100)。
【請求項2】
前記直線状チャネル(39D)の長手方向軸線(X2)が、前記電気駆動手段(10)の長手方向軸線(X1)と平行であることを特徴とする、請求項1に記載の電動機アセンブリ(100)。
【請求項3】
前記直線状チャネル(39D)が、正方形又は矩形断面を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電動機アセンブリ(100)。
【請求項4】
一部の開口(32、34、35、37)が台形状であり、他の開口(33、36)が三角形状であることを特徴とする、請求項に記載の電動機アセンブリ(100)。
【請求項5】
前記内側シェル(301)が外側シェル(308)内に収容されることを特徴とする、請求項又はに記載の電動機アセンブリ(100)。
【請求項6】
前記外側シェル(308)が、前記上部開口(32、33、34)に面する上部半割シェル(308A)と、前記下部開口(35、36、37)に面する下部半割シェル(308B)と、を備えることを特徴とする、請求項に記載の電動機アセンブリ(100)。
【請求項7】
前記内側シェル(301)の第1の部分の外壁(301*)、前記上部半割シェル(308A)の内壁(308A*)、底壁(308A**)、及び前壁(308A***)が、第1のアーチ状チャネル(39A)を形成し、そして、前記内側シェル(301)の第2の部分の外壁(301**)、前記下部半割シェル(308B)の内壁(308B*)、底壁(308B**)、及び前壁(308B***)が、第2のアーチ状チャネル(39B)を形成することを特徴とする、請求項に記載の電動機アセンブリ(100)。
【請求項8】
前記共通出口領域(39C)が、前記アーチ状チャネル(39A、39B)から流出する2つの空気流を案内するように構成されたデフレクタ手段(41)を備えることを特徴とする、請求項に記載の電動機アセンブリ(100)。
【請求項9】
前記直線状チャネル(39D)及び/又は前記アーチ状チャネル(39A、39B)には、吸音材料からなる少なくとも1つの層(60)が被覆されていることを特徴とする、請求項1からの何れか一項に記載の電動機アセンブリ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月28日に出願されたイタリア特許出願第102017000087339号の優先権を主張し、当該イタリア特許出願の開示内容は、参照により援用される。
【0002】
本発明は、鉄道駆動用電動機アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、環境基準では列車の音の発生の点から制限を設定しており、この制限は、ますます厳しくなっている。
【0004】
これらの音の重大な発生源は、電気駆動モータ、具体的には、いわゆる「自己通風式(self-ventilated)」換気システムを有するモータである。
【0005】
自己通風式換気システムでは、モータ冷却流は、モータの軸上に直接取り付けられたファンによって発生する。
【0006】
さらに、近年では、列車の先頭にある唯一の機関車が機関車自体と他の貨車とを駆動する役割がある「機関車駆動(locomotive-drive)」システムから、それぞれの客車が自己移動するために、自律移動手段が設けられた鉄道駆動手段への移行があったことが知られている。
【0007】
したがって、これによって、それぞれの列車の駆動システムの数が大幅に増加した。
【0008】
現在施行されている基準に従って実施されたノイズ測定によれば、モータの軸に沿って、音の発生は、冷却ファンによって発生するものよりも大きい。
【0009】
電動機の防音についての課題は、下記の特許文献1ないし4において考慮されており、これらの文献にはそれぞれ、個別に挙げる場合、請求項1の前提部が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-233104号公報
【文献】特開2005-312242号公報
【文献】国際公開第97/37421(A1)号
【文献】スイス特許出願公開第495651(A)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、鉄道分野において用いられる電気駆動モータのノイズを低減する、単純でかつ効果的なシステムを見いだす必要がある。
【0012】
よって、本発明の目的は、上述の欠点による影響を受けない電動機アセンブリ、具体的には鉄道駆動用電動機アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その結果、本発明によれば、請求項1に係る電動機アセンブリ、具体的には鉄道駆動用電動機アセンブリ、又は、直接的若しくは間接的に請求項1に従属する請求項のうちのいずれか一項に係る電動機アセンブリ、具体的には鉄道駆動用電動機アセンブリが提供される。
【0014】
本発明は、添付図面を参照して、単に説明のための限定的でない例として示されている、好適な実施形態についての次の説明を精読することにより、最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る鉄道駆動用電動機アセンブリの全体斜視図を示す。
図2図1に示されている電動機アセンブリの分解組立図を示す。
図3図1の電動機アセンブリの長手方向断面図を示す。
図4図1の電動機アセンブリの断面図を示す。
図5図1~4に示されている電気駆動モータアセンブリに属する消音器の斜視図を示す。
図6図5の消音器の断面A‐Aを示す。
図7図5の消音器の長手方向断面B‐Bを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~4では、符号100は、全体として、本発明の技術開示に係る電気駆動モータアセンブリを示している。
【0017】
電気駆動モータアセンブリ100は、実質的に、
電気駆動モータ10(図2、3)と、
冷却空気によって電気駆動モータ10を換気し冷却する換気冷却装置20(図2)と、
電気駆動モータ10の換気冷却空気流を排出する排出装置30と、を備えている。
【0018】
更に詳細には、図1~4を参照すると、電気駆動モータ10は、既知の方法により、ケーシング11を備え、ケーシング11は、実質的に多面体形状であり、電気駆動モータ10の機能素子の大部分を収容する。
【0019】
ケーシング11は、環境から生じる冷却空気流の入口グリッド40を備えた第1の軸線方向開口12を有している(図3)。
【0020】
ケーシング11は、更に、第2の軸線方向開口13を備え、第2の軸線方向開口13は、冷却空気流の出口用のものであり、そして、前述の換気冷却装置20及び前述の排出装置30への方向を変える(図3)。
【0021】
図3に更に詳細に示されているように、ケーシング11は、電動固定子14を収容し、そして、電動固定子は、既知の方法により、長手方向軸線(X1)を有する軸16上に取り付けられた電動回転子15を収容する。
【0022】
軸16は、本明細書には示されていない既知の手段によって、列車の駆動システム(図示されていない。)に機械的に接続される。
【0023】
電動固定子14及び電動回転子15の給電手段は既知であるため、詳細に説明しない。
【0024】
図2によれば、前述した換気冷却装置20に属するファン21は、軸16上に取り付けられている。
【0025】
ファン21は既知であり、図4に更に詳細に示されている。
【0026】
ファン21は、軸16上に取り付けられたハブ21Aを備え、ハブ21Aにはブレード21Bが設けられている(図3)。
【0027】
当業者であれば、本発明の保護範囲を越えることなく、電動機10を冷却するように環境空気を効果的に吸引するのに適したものであれば、種々の形状のブレードを採用可能であることは明らかである。
【0028】
実際に、冷却空気の吸引は、回転子15の、したがってファン21の両方の回転方向に対して効果的に行う必要がある。
【0029】
実際に、鉄道駆動では、同じ電動機アセンブリ100は、それが取り付けられている車両の前進と後進の両方に用いられることが知られている。その結果、回転子15及びファン21は、2つの考えられる回転方向(正転及び逆転)において長手方向軸線(X1)を中心に回転する可能性を有する必要がある、という事実がもたらされる。
【0030】
さらに、電動機10が(例えば、ファン21を時計方向に回転させて)加速するときと、電動機10が(例えば、ファン21を反時計方向に回転させて)減速するときの両方において、冷却空気の吸引が最適である必要がある。
【0031】
冷却空気を排出するのに用いられる排出装置30は、渦巻体(scroll)300を備え(図4)、渦巻体は、ファン21の周囲に配置され、内側シェル301からなり、内側シェルには、第1の一連の上部開口32、33、34(図4)と、第2の一連の下部開口35、36、37と、が設けられている。
【0032】
必ずしも必要ではないが、外側開口32、34は台形状であり、中間開口33は三角形状であることが好適である(図2、4)。
【0033】
同様に、必ずしも必要ではないが、外側開口35、37は台形状であり、中間開口36は三角形状であることが好適である(図2、4)。
【0034】
当業者であれば、ブレード21Bの形状、及び冷却空気換気モードに応じて、開口32~37の最良の形態を選択するのが効果的であることは明らかである。
【0035】
具体的には、図1及び4によれば、内側シェル301は外側シェル308内に収容されている。
【0036】
そして、外側シェル308は、内側シェル301に形成された上部開口32~34に面する上部半割シェル(half-shell)308Aと、内側シェル301に形成された下部開口35~37に面する下部半割シェル308Bと、を備えている。
【0037】
内側シェル301の第1の部分の外壁301*、上部半割シェル308Aの内壁308A*、底壁308A**、及び前壁308A***(図1)は、第1のアーチ状チャネル39A(円弧形状を有する。)を形成することが示される(図4)。
【0038】
同様に、内側シェル301の第2の部分の外壁301**、下部半割シェル308Bの内壁308B*、底壁308B**、及び前壁308B***(図1)は、第2のアーチ状チャネル39B(すなわち、同様に円弧形状を有する。)を形成する。
【0039】
第1のアーチ状チャネル39Aと第2のアーチ状チャネル39Bのアセンブリは、前述の渦巻体300を形成する。
【0040】
さらに、第1のアーチ状チャネル39Aと、第2のアーチ状チャネル39Bは、冷却空気の共通出口領域39Cにおいてのみ、流体の観点から互いに連通している。
【0041】
第1のアーチ状チャネル39Aは、空気の少なくとも一部が、実質的に静止した状態において、同様の寸法及びサイズを有する2つのアーチ状チャネル39A、39B内を連続的に再循環するのを回避するように、中断領域50(図1、4)によって第2のアーチ状チャネル39Bから分離されている。換言すると、中断領域50の存在、ひいては2つの別個のアーチ状チャネル39A、39Bの存在によって、システムの電力の望ましくない損失となる、渦巻体300内部の静止渦の形成が妨げられる。
【0042】
また、静止渦の形成によってシステムのノイズが増加することは周知である。
【0043】
さらに、既に上述したように、渦巻体300は、共通出口領域39Cにおいてのみ、流体の観点から互いに連通している2つのアーチ状チャネル39A、39Bに分割されているため、ファン21は、長手方向軸線(X1)を中心に、その考え得る回転方向(時計回りと反時計回り)の両方において十分に作動し、さらに、渦巻体300において形成され得る静止渦により、電力の損失を回避する。
【0044】
共通出口領域39Cは、デフレクタ41を備えていることが好適であり、デフレクタ41は、2つの空気流を別々に案内し、例えば、第1のアーチ状チャネル39Aから流出する空気が、第2のアーチ状チャネル39Bに不適切に流入することを、又はその逆も同様に防止する。
【0045】
換言すると、アーチ状チャネル39A、39Bはそれぞれ、実質的に円弧形状であり、前述の長手方向軸線(X1)に対して周方向に配置されている。
【0046】
共通出口39Cは、必ずしも必要ではないが、軸16及びモータ10の長手方向軸線(X1)と平行な長手方向軸線(X2)を有する正方形又は矩形断面を有することが好適な、第3の直線状チャネル39Dの口部に相当する(図1~4)。
【0047】
また、共通出口39Cは、第3の直線状チャネル39Dの口部にも相当するため、渦巻体300と第3の直線状チャネル39Dは、互いに直列に配置される。
【0048】
必ずしも必要ではないが、第3の直線状チャネル39Dは、電気駆動モータ10の近くにあることが好適である。
【0049】
したがって、ブレード21Bの回転方向と他の回転方向の両方において、すべての冷却空気は、システムから流出して環境中に再び導入される前に、第3の直線状チャネル39Dに沿って軸線方向に流れる。
【0050】
概括すると、その流路の端部において、冷却空気が実質的に層流である(加えて、乱流を低減する)場合、システムの音発生が大幅に減少することが実験によって示されている。
【0051】
冷却空気の流路は、図1に概略的に示されている。
【0052】
環境空気(矢印(F1))は、ファン21によって吸引されたグリッド40(図3)を通ってシステムに入る。冷却空気は、電動機10のアクチュエータ14及び回転子15を横断し(矢印(F2))、その後、2つの周方向アーチ状チャネル39A、39Bを流れ、周方向アーチ状チャネルでは、冷却空気は共通出口39Cの方へ流れる(矢印(F3)、(F4))。
【0053】
共通出口39Cの領域では、冷却空気は直線状チャネル39Dに入り(矢印(F5))、その後、環境中に再び導入される(矢印(F6))。
【0054】
必ずしも必要ではないが、チャネル39A、39Bの全部又は一部には、吸音材料からなる適切に保護された層60が内側に被覆されていることが好適である(図5、6、7)。
【0055】
概括すると、排出装置30は、消音器70であって、直線状チャネル39Dと、可能であれば、吸音材料からなる層60とを備えた消音器を備えている。
【0056】
システムのノイズの低減に対する更なる肯定的な効果は、静止渦が形成されない、2つの別個のアーチ状チャネル39A、39Bからなる渦巻体300によってもたらされる。
【0057】
本発明の主な利点は、冷却空気排出チャネルの革新的な形状と配置により、鉄道駆動用電動機アセンブリの音発生を大幅に減少させるとともに、作業者の作業条件及び乗客の快適性を相対的に向上させる、という事実に存在する。
【0058】
更なる利点は、渦巻体が、共通出口領域においてのみ互いに連通している、2つの別個のアーチ状チャネルに分割されているため、ファンの回転方向(時計回りと反時計回り)の両方において、その内部には渦が存在しない、という事実に存在する。これによって、電力損失の低減及びシステムのノイズの低減に肯定的な影響が及ぼされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7