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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】懸垂碍子
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/06 20060101AFI20230411BHJP
   H01B 17/00 20060101ALI20230411BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H01B17/06 A
H01B17/00 B
H02G7/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018145297
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020021654
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227722
【氏名又は名称】株式会社日本ネットワークサポート
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】喜多 守幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆俊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄史
(72)【発明者】
【氏名】増井 裕太
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-260241(JP,A)
【文献】特開2012-226867(JP,A)
【文献】特開2004-288377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/06
H01B 17/00
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状を有し、セラミックスからなる本体部と、
前記本体部を囲むように前記本体部に取り付けられ、ポリマー材料からなる外被部と、
を備え、
前記外被部は、
前記本体部の径方向に延びる笠形状を有し、前記基端部から前記遊端部に向かうにつれて、先細りとなる第1笠部と、
前記径方向に延びる笠形状を有し、前記第1笠部に対して下側に配置される第2笠部であって、前記基端部から前記遊端部に向かうにつれて、先細りとなり、かつ、外径が第1笠部の外径よりも小さい第2笠部と、の2つの笠部のみを備えることを特徴とする、懸垂碍子。
【請求項2】
前記第1笠部および前記第2笠部のそれぞれは、前記径方向において、前記本体部側の基端部と、前記基端部と反対側の遊端部とを有し、
前記第1笠部の前記基端部と、前記第2笠部の前記基端部とは、互いに一体となるように連結されており、
前記第1笠部の前記遊端部と、前記第2笠部の前記遊端部とは、互いに間隔を空けて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の懸垂碍子。
【請求項3】
上下方向に投影したときに、前記第2笠部の投影面のすべてが、前記第1笠部の投影面内に含まれることを特徴とする、請求項1または2に記載の懸垂碍子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸垂碍子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄塔や電柱などの支持構造物に設けられ、送電線を支持するとともに支持構造物と送電線とを絶縁する送電用碍子が知られている。そのような送電用碍子は、使用電圧や汚損区分などの使用条件に応じた複数の種類があり、例えば、高電圧を送電する場合、懸垂碍子が使用される。懸垂碍子は、笠部と頭部とを一体に有する磁器部を備えており、複数の懸垂碍子が連結されることにより、碍子連として利用される。
【0003】
このような懸垂碍子は、取付作業性やメンテナンス性向上の観点から、軽量化が望まれている。
【0004】
そこで、例えば、頭部を磁器にて構成するとともに、笠部を撥水性を有するポリマー材料にて構成し、笠部の下面に同心円状の複数のひだが形成される懸垂碍子が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-226867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の懸垂碍子では、笠部の下面に形成される複数のひだにより、沿面距離を確保している一方、笠部の形状が複雑となるため、ポリマー材料から笠部を成形することが困難となる場合がある。また、ひだを形成する場合には、笠部を肉厚とする必要があり、笠部の薄肉化には限度があり、ひいては、懸垂碍子の軽量化には限度がある。
【0007】
本発明は、沿面距離を十分に確保できながら製造効率の向上を図ることができ、かつ、軽量化を図ることができる懸垂碍子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、円筒形状を有し、セラミックスからなる本体部と、前記本体部を囲むように前記本体部に取り付けられ、ポリマー材料からなる外被部と、を備え、前記外被部は、前記本体部の径方向に延びる笠形状を有する第1笠部と、前記径方向に延びる笠形状を有し、前記第1笠部に対して下側に配置される第2笠部とを備える、懸垂碍子を含む。
【0009】
このような構成によれば、第1笠部および第2笠部を備える外被部が、ポリマー材料からなり、第1笠部および第2笠部のそれぞれが、笠形状という簡易な形状を有するので、外被部の軽量化を図ることができ、ひいては、懸垂碍子の軽量化を図ることができる。
【0010】
また、第1笠部および第2笠部のそれぞれが笠形状であっても、外被部において2段の笠部が設けられているので、沿面距離を十分に確保できる。さらに、第1笠部および第2笠部のそれぞれが簡易な形状であることから、外被部を安定的に成形でき、懸垂碍子の製造効率の向上を図ることができる。
【0011】
そのため、このような懸垂碍子によれば、沿面距離を十分に確保できながら製造効率の向上を図ることができ、かつ、軽量化を図ることができる。
【0012】
本発明[2]は、前記第1笠部および前記第2笠部のそれぞれは、前記径方向において、前記本体部側の基端部と、前記基端部と反対側の遊端部とを有し、前記第1笠部の前記基端部と、前記第2笠部の前記基端部とは、互いに一体となるように連結されており、前記第1笠部の前記遊端部と、前記第2笠部の前記遊端部とは、互いに間隔を空けて配置されている、上記[1]に記載の懸垂碍子を含む。
【0013】
このような構成によれば、第1笠部の基端部と第2笠部の基端部とが、互いに一体となるように連結されているので、第1笠部と第2笠部との相対的な位置精度の向上を図ることができる。
【0014】
そのため、第1笠部の遊端部および第2笠部の遊端部の間の間隔を精度よく確保することができ、放電発生時において、第1笠部の遊端部と第2笠部の遊端部との間の短絡を安定して抑制できる。
【0015】
本発明[3]は、上下方向に投影したときに、前記第2笠部の投影面のすべてが、前記第1笠部の投影面内に含まれる、上記[1]または[2]に記載の懸垂碍子を含む。
【0016】
しかるに、第1笠部に対して下側に配置される第2笠部を、第1笠部の上下方向の投影面からはみ出すまで延長すると、第2笠部のすべてが第1笠部の投影面内に含まれる場合と比較して、第2笠部の遊端部が、より下側に位置する。
【0017】
すると、複数の懸垂碍子を連結して碍子連を構成したときに、碍子連において互いに隣り合う懸垂碍子のうち、上側の懸垂碍子の第2笠部と、下側の懸垂碍子との間の間隔が小さくなり、それらの間に短絡が生じるおそれがある。
【0018】
これに対して、上記の構成によれば、上下方向に投影したときに、第2笠部の投影面のすべてが、第1笠部の投影面内に含まれるので、複数の懸垂碍子が碍子連を構成したときに、碍子連において互いに隣り合う懸垂碍子のうち、上側の懸垂碍子の第2笠部と下側の懸垂碍子との間の間隔を十分に確保することができ、それらの間に短絡が生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の懸垂碍子によれば、沿面距離を十分に確保できながら製造効率の向上を図ることができ、かつ、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の懸垂碍子の一実施形態の概略構成図を示す。
図2図2は、図1に示す懸垂碍子が複数連結された碍子連を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.懸垂碍子の構成
本発明の懸垂碍子の一実施形態としての懸垂碍子1を、図1を参照して説明する。
【0022】
図1に示すように、懸垂碍子1は、本体部2と、キャップ4と、外被部3と、ピン部材5とを備える。このような懸垂碍子1は、キャップ4が上側に位置し、外被部3が下側に位置するように、支持構造物(例えば、鉄塔、電柱など)に設けられる。そこで、以下の説明では、懸垂碍子1が支持構造物に設けられた状態を基準として上下を規定する。
【0023】
本体部2は、上下方向に延びる円筒形状を有し、セラミックス(磁器)からなる。本体部2の上端部は、閉鎖されており、本体部2の下端部は、開放されている。
【0024】
本体部2の外径は、例えば、8.5cm以上9.5cm以下である。
【0025】
本体部2の外径が上記下限以上であるので、放電発生時において電界の集中を抑制することができる。本体部2の外径が上記上限以下であるので、懸垂碍子1の軽量化を確実に図ることができる。
【0026】
キャップ4は、本体部2に装着されている。キャップ4は、金属からなり、カップ部8と、2つの連結部9とを備える。
【0027】
カップ部8は、下方に向かって開放される椀形状を有する。カップ部8は、本体部2の下端部2Aがカップ部8から露出するように、本体部2を受け入れている。言い換えれば、本体部2の上側部分は、カップ部8に嵌っており、本体部2の下端部2Aは、カップ部8から下側に突出している。そして、カップ部8の内面と本体部2の外面との間には、セメント6が充填されている。これにより、カップ部8は、本体部2に固定されている。
【0028】
2つの連結部9は、カップ部8の上端部に設けられている。2つの連結部9は、カップ部8の上端部から上方に向かって突出している。2つの連結部9は、水平方向に互いに間隔を空けて配置される。2つの連結部9のそれぞれは、第1連結穴9Aを有する。第1連結穴9Aは、2つの連結部9が向かい合う方向において、各連結部9を貫通している。
【0029】
外被部3は、カップ部8から突出する本体部2の下端部2Aを囲むように、本体部2に取り付けられている。なお、外被部3の詳細については後述する。
【0030】
ピン部材5は、金属からなり、上下方向に延びる。ピン部材5の上側部分は、本体部2の内部空間に挿入され、ピン部材5の下側部分は、本体部2から露出している。そして、ピン部材5の上側部分と本体部2の内面との間には、セメント6が充填されている。これにより、ピン部材5は、本体部2に固定されている。また、ピン部材5の下側部分は、セメント6から突出しており、第2連結穴5Aを有する。第2連結穴5Aは、水平方向にピン部材5を貫通している。
【0031】
2.外被部の詳細
外被部3は、ポリマー材料からなる。これによって、外被部3は、優れた防汚損性および撥水性を有する。
【0032】
ポリマー材料として、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴムなどが挙げられ、好ましくは、シリコーンゴムが挙げられる。ポリマー材料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0033】
外被部3は、第1笠部10と、第2笠部11とを備える。
【0034】
第1笠部10は、本体部2の径方向に延びる笠形状を有する。詳しくは、第1笠部10は、上下方向から見て、本体部2と中心を共有する円環形状を有しており、本体部2の下端部2Aの周方向の全体から、径方向の外側に向かって延びている。
【0035】
また、第1笠部10は、本体部2の径方向において、本体部2側の基端部10Aと、基端部10Aと反対側の遊端部10Bとを有する。第1笠部10は、基端部10Aから遊端部10Bに向かうにつれて、下方に向かうように傾斜している。また、第1笠部10を本体部2の径方向に沿って切断したときの切断面は、直線状に延びている。
【0036】
第1笠部10は、基端部10Aから遊端部10Bに向かうにつれて、先細りとなる。また、第1笠部10の上面および下面のそれぞれは、平坦であり、第1笠部10は、ひだを有していない。
【0037】
水平方向に対する第1笠部10の上面の傾斜角度θ1は、例えば、3°以上15°以下である。
【0038】
第1笠部10の外径は、本体部2の外径に対して、例えば、2倍以上4倍以下である。第1笠部10の外径は、具体的には、24cm以上27cm以下である。
【0039】
第2笠部11は、第1笠部10に対して下側に配置される。第2笠部11は、本体部2の径方向に延びる笠形状を有する。詳しくは、第2笠部11は、上下方向から見て、本体部2と中心を共有する円環形状を有しており、本体部2の下端部2Aの周方向の全体から、径方向の外側に向かって延びている。
【0040】
第2笠部11は、本体部2の径方向において、本体部2側の基端部11Aと、基端部11Aと反対側の遊端部11Bとを有する。第2笠部11は、基端部11Aから遊端部11Bに向かうにつれて、下方に向かうように傾斜している。また、第2笠部11を本体部2の径方向に沿って切断したときの切断面は、直線状に延びている。
【0041】
第2笠部11は、基端部11Aから遊端部10Bに向かうにつれて、先細りとなる。また、第2笠部11の上面および下面のそれぞれは、平坦であり、第2笠部11は、ひだを有していない。
【0042】
水平方向に対する第2笠部11の上面の傾斜角度θ2は、例えば、水平方向に対する第1笠部10の上面の傾斜角θ1の角度よりも大きい。水平方向に対する第2笠部11の上面の傾斜角θ2は、具体的には、25°以上40°以下である。
【0043】
第2笠部11の外径は、本体部2の外径に対して、例えば、1.5倍以上3倍以下である。第2笠部11の外径は、具体的には、19cm以上21cm以下である。
【0044】
また、第2笠部11の外径は、好ましくは、第1笠部10の外径よりも小さい。本実施形態において、上下方向に投影したときに、第2笠部11の投影面のすべてが、第1笠部10の投影面内に含まれる。つまり、第2笠部11の遊端部11Bは、第1笠部10の遊端部10Bよりも、本体部2側に位置する。
【0045】
また、第2笠部11の延びる方向は、第1笠部10の延びる方向と交差する。第1笠部10の延びる方向と第2笠部11の延びる方向とがなす角θ3は、例えば、15°以上30°以下である。
【0046】
このような第1笠部10の基端部10Aと、第2笠部11の基端部11Aとは、互いに一体となるように連結されている。これによって、基端部10Aおよび基端部11Aは、リング部分12を構成する。リング部分12は、本体部2の下端部2Aの全体を囲んでいる。また、リング部分12は、円弧面12Aを有している。円弧面12Aは、本体部2の径方向外側に向かって開放される円弧形状を有し、第1笠部10の下面と第2笠部11の上面との間に位置する。円弧面12Aは、第1笠部10の下面における本体部2側の端部と、第2笠部11の上面における本体部2側の端部とを連結している。
【0047】
また、第1笠部10における基端部10A以外の部分と、第2笠部11における基端部11A以外の部分とは、本体部2から離れるにつれて、それらの間の間隔が徐々に大きくなるように、互いに間隔を開けて配置されている。
【0048】
そして、第1笠部10の遊端部10Bと、第2笠部11の遊端部11Bとは、互いに下記範囲の間隔Lを空けて配置されている。
【0049】
第1笠部10の遊端部10Bと、第2笠部11の遊端部11Bとの間の間隔Lは、例えば、3cm以上6cm以下である。
【0050】
このような外被部3は、公知の成形方法により成形できる。具体的には、上記したポリマー材料に対応するポリマー原料を準備し、ポリマー原料を所定の金型に充填した後、加熱硬化させる。これにより、ポリマー材料からなる外被部3が調製される。
【0051】
そして、別途準備した本体部2の下端部2Aを外被部3のリング部分12に挿入した後、リング部分12の上下両側にシール材7を設ける。これにより、外被部3が本体部2の下端部2Aに固定される。
【0052】
4.碍子連
このような懸垂碍子1は、図2に示されるように、複数の懸垂碍子1を連結することにより、碍子連20を構成することができる。なお、図2では、便宜上、2つの懸垂碍子1により、碍子連20が構成されているが、碍子連20における懸垂碍子1の個数は、必要に応じて適宜変更でき、特に制限されない。
【0053】
なお、以下では、碍子連20において上下方向に互いに隣り合う懸垂碍子1のうち、上側に位置する懸垂碍子1を第1の懸垂碍子1Aとし、下側に位置する懸垂碍子1を第2の懸垂碍子1Bとして区別する。
【0054】
碍子連20を構成するには、第1の懸垂碍子1Aのピン部材5の下側部分を、第2の懸垂碍子1Bの2つの連結部9の間に挿入して、2つの連結部9の第1連結穴9Aと、ピン部材5の第2連結穴5Aとを連通させる。そして、第1連結穴9Aおよび第2連結穴5Aに、締結具13を挿入する。これによって、複数(2つ)の懸垂碍子1が連結されて、碍子連20が構成される。
【0055】
5.作用効果
公知の送電用碍子のうち、比較的軽量な送電用碍子として、ポリマー碍子が知られている。ポリマー碍子は、一般に、繊維強化プラスチック(FRP)からなる芯材と、ポリマー材料からなり、芯材を被覆するカバーと、を備える。
【0056】
しかし、このようなポリマー碍子を、塩分などの付着が多い重汚損地域において使用すると、ポリマー碍子に付着した塩分および水から酸が生じて、ポリマー碍子の芯材が、酸により腐食される場合がある。すると、ポリマー碍子に比較的大きな張力が付与されたときに、ポリマー碍子が破断するおそれがある。
【0057】
そのため、重汚損地域に配置される送電用碍子のうち、比較的大きな張力が付与される箇所には、一般に、耐食性に優れるセラミックから笠部と頭部とが形成される懸垂碍子が用いられる。しかし、そのような懸垂碍子では、要求される耐汚損性を十分に確保できず、笠部の表面にシリコーンコンパウンドを塗布して耐汚損性の向上を図る必要がある。
【0058】
一方、シリコーンコンパウンドの塗布作業は、非常に煩雑であり、また、そのような懸垂碍子は、重量化してしまうおそれがある。
【0059】
これらに対して、図1に示すように、上記した懸垂碍子1は、セラミックスからなる本体部2と、ポリマー材料からなる外被部3とを備えるハイブリッド懸垂碍子である。
【0060】
このような懸垂碍子1は、優れた耐食性を有するセラミックスが本体部2に利用されているので、懸垂碍子1を重汚損地域において使用しても、懸垂碍子1が破断することを防止できる。
【0061】
また、第1笠部10および第2笠部11を備える外被部3が、優れた防汚損性および撥水性を有し、かつ、軽量であるポリマー材料からなる。そして、第1笠部10および第2笠部11のそれぞれが、笠形状という簡易な形状を有する。
【0062】
そのため、優れた防汚損性および撥水性を確保できながら、外被部3の軽量化を図ることができ、ひいては、懸垂碍子1の軽量化を図ることができる。
【0063】
また、第1笠部10および第2笠部11のそれぞれが笠形状であっても、外被部3において2段の笠部が設けられているので、笠部に複数のひだを設けることなく、沿面距離を十分に確保できる。そのため、外被部3の成形に必要なポリマー材料の量の低減を図ることができ、懸垂碍子1の製造コストの低減を図ることができる。
【0064】
さらに、第1笠部10および第2笠部11のそれぞれが簡易な形状であることから、外被部3を安定的に成形でき、懸垂碍子1の製造効率の向上を図ることができる。
【0065】
また、第1笠部10の基端部10Aと第2笠部11の基端部11Aとは、互いに一体となるように連結されている。そのため、第1笠部10と第2笠部11との相対的な位置精度の向上を図ることができる。
【0066】
その結果、第1笠部10の遊端部10Bおよび第2笠部11の遊端部11Bの間の間隔Lを確実に確保することができ、放電発生時において、第1笠部10の遊端部10Bと第2笠部11の遊端部11Bとの間の短絡を抑制できる。
【0067】
また、懸垂碍子1では、上下方向に投影したときに、第2笠部11の投影面のすべてが、第1笠部10の投影面内に含まれる。
【0068】
そのため、図2に示すように、複数の懸垂碍子1が碍子連20を構成したときに、碍子連において互いに隣り合う懸垂碍子1のうち、上側の懸垂碍子1Aの第2笠部11と下側の懸垂碍子1Bとの間の間隔を十分に確保することができ、それらの間に短絡が生じることを抑制できる。
【0069】
また、図1に示すように、互いに一体となるように連結される基端部10Aおよび基端部11Aは、リング部分12を構成し、リング部分12は、第1笠部10の下面と第2笠部11の上面とを連結する円弧面12Aを有する。
【0070】
そのため、第1笠部10の下面と第2笠部11の上面とが、上下方向に沿って延びる鉛直面により連結される場合と比較して、リング部分12の上下方向の小型化を図ることができ、ひいては、リング部分12が取り付けられる本体部2の部分(本実施形態では、本体部2の下端部2A)の上下方向の小型化を図ることができる。
【0071】
6.変形例
なお、上記の実施形態では、上下方向に投影したときに、第2笠部11の投影面のすべてが、第1笠部10の投影面内に含まれるが、本発明はこれに限定されない。
【0072】
図2において仮想線で示すように、上下方向に投影したときに、第2笠部11の上下方向の投影面が第1笠部10の投影面からはみ出してもよい。
【0073】
しかし、この場合、第2笠部11の遊端部11C(仮想線参照)は、上記の実施形態における第2笠部11の遊端部11Bよりも下側に位置する。これにより、複数の懸垂碍子1を連結して碍子連を構成したときに、碍子連において互いに隣り合う懸垂碍子1のうち、上側の懸垂碍子1Aの第2笠部11と下側の懸垂碍子1Bとの間の間隔が比較的狭くなる。
【0074】
そのため、短絡抑制の観点から、碍子連において上側の懸垂碍子1Aの第2笠部11と下側の懸垂碍子1Bとの間の間隔を比較的大きく確保できる上記の実施形態が好ましい。
【0075】
また、上記の実施形態では、外被部3が、2つの笠部(第1笠部10および第2笠部11)を備えるが、笠部の個数は、これに限定されない。外被部3は、懸垂碍子1に要求される沿面距離に応じて、3つ以上の笠部を備えてもよい。
【0076】
しかし、外被部3が3つ以上の笠部を備えると、外被部3の上下方向の寸法を増大することなく、互いに隣り合う笠部の遊端部間の間隔を十分に確保することは困難である。そのため、小型化および短絡抑制の観点から、外被部3が2つの笠部(第1笠部10および第2笠部11)のみを備える上記の実施形態が好ましい。
【0077】
また、上記の実施形態では、第1笠部10および第2笠部11が一体に形成されるが、第1笠部10および第2笠部11の構成はこれに限定されない。第1笠部10および第2笠部11のそれぞれがポリマー材料から形成されれば、第1笠部10および第2笠部11は、別体であってもよい。
【0078】
しかし、第1笠部10および第2笠部11の相対的な位置精度の観点から、第1笠部10および第2笠部11が一体である上記の実施形態が好ましい。
【符号の説明】
【0079】
1 懸垂碍子
2 本体部
3 外被部
10 第1笠部
10A 基端部
10B 遊端部
11 第2笠部
11A 基端部
11B 遊端部
図1
図2