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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】アクスル・ドライブ・システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/348 20060101AFI20230411BHJP
   F16H 1/14 20060101ALI20230411BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20230411BHJP
   B60K 17/36 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B60K17/348 B
F16H1/14
F16H1/06
B60K17/36 Z
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018219044
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2019094054
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】10 2017 127 583.5
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517449763
【氏名又は名称】エムアーエヌ トラック アンド バス エスエー
【氏名又は名称原語表記】MAN Truck & Bus SE
【住所又は居所原語表記】Dachauer Strasse 667, 80995 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(72)【発明者】
【氏名】クリスト ブライコフ
(72)【発明者】
【氏名】ハンスイェルク シュルタイス
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3045339(EP,A1)
【文献】実開平4-118822(JP,U)
【文献】実開平7-35156(JP,U)
【文献】特開昭60-121126(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107107746(CN,A)
【文献】米国特許第5711389(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/348
F16H 1/14
F16H 1/06
B60K 17/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブ・ユニット(17)を有する自動車用アクスル・ドライブ・システム(10、110)であって、
前記ドライブ・ユニット(17)へと駆動連結するための第1のドライブ・アクスルであって、中間ピニオン(28)および中間ギア(30)を有する中間ギア段(18)と、ベベル・ピニオン(34)およびリング・ギア(36)を有する第1のベベル・ギア段(20)とを有する第1のドライブ・アクスル(12、112)と、
前記第1のドライブ・アクスル(12、112)に駆動連結された第2のドライブ・アクスルであって、ベベル・ピニオン(48)およびリング・ギア(50)を有する第2のベベル・ギア段(44)を有する第2のドライブ・アクスル(14、113)と、
を有し、
前記中間ギア段(18)の伝達比は1に等しくなく、
前記第1のドライブ・アクスル(12、112)の全体的な伝達比は、前記第2のドライブ・アクスル(14、113)の全体的な伝達比に等しく
前記中間ギア段(18)の前記中間ギア(30)の歯数は前記第2のベベル・ギア段(44)の前記リング・ギア(50)の歯数に等しく、前記第1のベベル・ギア段(20)の前記ベベル・ピニオン(34)の歯数は前記第2のベベル・ギア段(44)の前記ベベル・ピニオン(48)の歯数に等しく、および/または、前記中間ギア段(18)の前記中間ピニオン(28)の歯数は前記第1のベベル・ギア段(20)の前記リング・ギア(36)の歯数に等しいものである、
アクスル・ドライブ・システム。
【請求項2】
前記中間ギア段(18)の前記中間ピニオン(28)の歯数と、前記中間ギア段(18)の前記中間ギア(30)の歯数とは、1.0より大きい整数共通因数を有しないものである、請求項1に記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項3】
前記中間ギア段(18)の前記中間ピニオン(28)は前記中間ギア段(18)の前記中間ギア(30)を駆動するものである、請求項1または2に記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項4】
前記中間ギア段(18)の伝達比は1より大きいものである、請求項1乃至3のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項5】
前記中間ギア段(18)は平歯車段として構成されるものである、請求項1乃至4のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項6】
前記第1のドライブ・アクスル(12、112)は貫通連結型のドライブ・アクスルとして構成されるものである、請求項1乃至5のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項7】
前記第2のドライブ・アクスル(14)は単独のドライブ・アクスルとして構成されるものである、請求項1乃至6のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項8】
前記中間ギア段(18)および前記第1のベベル・ギア段(20)の全体的な伝達比は、前記第2のベベル・ギア段(44)の伝達比に等しいものである、請求項1乃至7のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項9】
前記アクスル・ドライブ・システム(10)は、前記自動車のタンデム・アクスルとし構成されるものである、請求項1乃至8のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項10】
さらに、貫通連結型のドライブ・アクスルとして構成された少なくとも1つの別のドライブ・アクスル(113)を有する、請求項1乃至9のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの別のドライブ・アクスル(113)は、前記第1のドライブ・アクスルと前記第2のドライブ・アクスルの間に配置されるものである、請求項10に記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項12】
前記第1のドライブ・アクスル(112)の全体的な伝達比は前記少なくとも1つの別のドライブ・アクスル(113)の全体的な伝達比に等しいものである、請求項10または11に記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの別のドライブ・アクスル(113)は別の中間ギア段(18)および別のベベル・ギア段(20)を有し、
前記中間ギア段(18)および前記第1のベベル・ギア段(20)の全体的な伝達比は、前記別の中間ギア段(18)および前記別のベベル・ギア段(20)の全体的な伝達比に等しいものである、
請求項10乃至12のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項14】
前記第1のドライブ・アクスル(12、112)は、
前記ドライブ・ユニット(17)へと駆動連結するための入力シャフト、および/または
前記第2のドライブ・アクスル(14、113)へと駆動連結するための貫通シャフト(26)、および/または
縦方向のディファレンシャル(16
を有する、請求項1乃至13のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項15】
前記第1のドライブ・アクスル(12、112)は少なくとも前記縦方向のディファレンシャル(16)を有し、前記縦方向のディファレンシャル(16)は、一方の前記入力シャフト(24)と、他方の前記貫通シャフト(26)および前記中間ギア段(18)との間に駆動用に設けられているものである、請求項14に記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項16】
前記自動車がユティリティ・ビークルである、請求項1乃至15のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)。
【請求項17】
請求項1乃至15のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)を有する自動車
【請求項18】
前記自動車がユティリティ・ビークルである請求項1乃至15のいずれかに記載のアクスル・ドライブ・システム(10、110)を有すユティリティ・ビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のアクスル・ドライブ(駆動)システム(Achsgetriebesystem)またはアクスル・ドライブ装置(Achsgetriebevorrichtung)に関し、特にユティリティ・ビークルまたは商用車(Nutzfahrzeug)用のアクスル・ドライブ・システムまたはアクスル・ドライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つより多い(2つ以上の)被駆動リア・アクスル(車軸)または被駆動フロント・アクスルを有する車両の場合、いわゆる貫通連結型のドライブ(駆動装置)(through-connected drive、Durchtriebgetriebe)を使用することができる。前記ドライブは、例えば単独アクスルのような簡易なアクスル・ドライブと比較して、必要な動力分割を生じさせるために、追加的に縦方向ディファレンシャル(差動装置)(longitudinal differential、Laengsdifferential)および平歯車段(spur gear stage、Stirnradstufe:スパーギア段)を有することができる。このようにして、前方直進駆動している間には縦方向ディファレンシャルに差動回転速度が生じず、貫通連結型のドライブにおける平歯車段は、典型的にi=1.0の伝達比(速度伝達比)で構成される。
【0003】
複数の被駆動フロント・アクスルまたはリア・アクスルの一例は、アクスル・タンデム(縦列形)である。アクスル・タンデムは2つのドライブ・アクスルを有する。ここで、第1のドライブ・アクスルは、例えば内燃エンジン(機関)のようなドライブ・ユニット(装置)によって駆動されそれと同時に第2のドライブ・アクスルを駆動する貫通連結型のドライブ・アクスルとして、構成される。
【0004】
独国特許第102005002858号にはタンデム・アクスル配置構成が開示されている。タンデム・アクスル配置構成の1つのアクスルは互いに噛み合う中間ギア(歯車)(Vorgelegeraeder)を有する。それらの中間ギアは、同一の直径および歯数を有し、結果的に1:1の伝達比が得られる。このようにして、タンデム・アクスル配置構成の双方のアクスルは、互いに対応する、横方向ディファレンシャル(横方向差動装置、デフ)、ベベル(斜角)ピニオン(Kegelritzel)およびリング・ギア(Tellerraeder)を有することができ、また、貫通連結型のドライブ・シャフトは、関節連結式シャフト(articulated shaft、Gelenkwelle:プロペラ・シャフト、カルダン式シャフト)を介して第2のアクスルのベベル・ピニオンに直接的に駆動結合させることができる。
【0005】
しかし、ここでは、両中間ギアの伝達比i=1.0は音響的な欠点および耐荷力の欠点を伴い得る。さらに、2つの中間ギアの歯先(先端)円径が同一であるので、設置空間(スペース)に欠点を生じ得る。
【0006】
欧州特許出願公開第3045339号には、タンデム・ドライブ・アクスル・アセンブリ(組立体)が開示されている。フロントのリア・シャフトは、第1の回転軸を中心に回転する入力シャフトと、第2の回転軸を中心に回転するベベル・ピニオンとを有する。入力シャフトおよびベベル・ピニオンは平歯車対(ペア)を介して連結され、両平歯車は異なる歯数を有する。タンデム・ドライブ・アクスル・アセンブリのフロント(前側)のリア・アクスルとリア(後側)のリア・アクスルの間には、回転速度差を吸収するための中間アクスル・ディファレンシャル・ギア(差動歯車)が設けられる。
【0007】
ここで、中間ギア段の伝達比i≠1.0によって、縦方向ディファレンシャルにおいて望ましくない永続的な回転速度差が生じ得る。貫通連結型のアクスルと単独アクスルの伝達比が等しくない場合には、係合した(噛合った)縦方向ロック(固定)状態での駆動は不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許第102005002858号
【文献】欧州特許出願公開第3045339号
【発明の開示】
【0009】
本発明の基礎的な目的は、従来技術の欠点を解消(克服)することができる、代替的なまたは改良されたアクスル・ドライブ・システムを実現することである。特に、アクスル・ドライブ・システムは、改善された音響特性、改善された耐荷能力および/または改善された設置空間利用率を有することとなる。
【0010】
発明の概要
その目的は、独立請求項に記載のアクスル・ドライブ・システムによって達成される。有利な展開形態が、従属請求項および説明に記載されている。
【0011】
アクスル・ドライブ・システムは、ドライブ・ユニットを有する自動車に、特にユティリティ・ビークルまたは商用車に適している。アクスル・ドライブ・システムは、ドライブ・ユニットへと駆動連結するための第1のドライブ・アクスル(第1のアクスル・ドライブ)を有する。第1のドライブ・アクスルは、中間ピニオンおよび中間ギアを有する中間ギア段と、ベベル・ピニオンおよびリング・ギアを有する第1のベベル・ギア段とを有する。アクスル・ドライブ・システムは第2のドライブ・アクスルを有し、第2のドライブ・アクスルは、第1のドライブ・アクスルに駆動連結されベベル・ピニオンおよびリング・ギアを有する第2のベベル・ギア段を有する。中間ギア段の中間ギアの伝達比は1に等しくない。第1のドライブ・アクスルの全体的な伝達比は、第2のドライブ・アクスルの全体的な伝達比に対応する(等しい)。中間ギア段の中間ギアの歯数は第2のベベル・ギア段のリング・ギアの歯数に対応し(等しく)、第1のベベル・ギア段のベベル・ピニオンの歯数は第2のベベル・ギア段のベベル・ピニオンの歯数に対応し(等しく)、および/または、中間ギア段の中間ピニオンの歯数は第1のベベル・ギア段のリング・ギアの歯数に対応する(等しい)
【0012】
この場合、“伝達比”(transmission ratio、Uebersetzung)という用語は、特に、被駆動歯車と駆動歯車の間の歯数の比(nteeth_output/nteeth_drive)または(nZaehne_Abtrieb/nZaehne_Antrieb)を意味する、と理解することができる。全体的な伝達比は、結果的に、例えばそれぞれの歯車対の間のそれぞれの個々の伝達比の積として得られる。
【0013】
特に、第1の中間ギアは第1のベベル・ギア段に駆動形態で(駆動的に)連結され、および/または、第1のドライブ・アクスルは第2のドライブ・アクスルに駆動形態で連結される。
【0014】
第1の中間ギア段の伝達比が1に等しくない(≠1)ことによって、中間ピニオンの歯数と中間ギア段の中間ギアの歯数とが等しくないことになる。これは、音響的な理由および耐荷力の理由から有利である。それらの歯数が等しくないことに基づいて、中間ピニオンと中間ギアの同じ歯が必ずしも互いに噛み合わないことが、確実なものとされる。例えば、中間ピニオンの1つの歯が、製造で生じた偏差(deviations、Abweichungen)を有し、その偏差が、中間ピニオンの関連(対応)する歯上におよび中間ピニオンの関連する歯と噛み合う中間ギアのそれぞれの歯上に望ましくない過剰な応力および/または圧力を生じさせる場合に、過剰な応力および/または圧力の損傷効果(損傷作用)が、中間ギアの複数の歯に分散分配される。換言すれば、中間ギアの同じ歯が中間ピニオンの欠陥のある歯によって常に損傷を受ける状況が防止され、その逆も成り立つ。これによって、耐用年数(寿命期間)にわたって中間ギア段(Vorgeleges)の耐荷力が向上し、動作期間中の音響放出が低下する。
【0015】
さらに、例えば設置空間を改良形態で(有効に)利用するために、中間ギア段の2つの歯車の歯先(先端)円径(円形直径)、従ってパッケージに、目標を定めて影響を与えることができる。
【0016】
第1のドライブ・アクスル 対 第1のドライブ・アクスルの両車輪(ホイール)の伝達比が、第2のドライブ・アクスル 対 第2のドライブ・アクスルの両車輪(ホイール)の伝達比に対応する場合には、第1のアクスル・ドライブの縦方向ディファレンシャルにおいて(望ましくない永続的な)回転速度差は発生しない。縦方向ディファレンシャルは、原則として、第1のドライブ・アクスルと第2のドライブ・アクスルの間の回転速度差によって生じる永続的な回転速度補償を行うようには、設計されていない。従って、永続的な回転速度差によって、縦方向ディファレンシャルの耐用年数が短縮し得る。
【0017】
さらに、中間ギア段、第1のベベル・ギア段および第2のベベル・ギア段のそれぞれの歯数に関する有利な設計手法が提案され、その設計手法の場合、中間ギア段および第1のベベル・ギア段の全体的な伝達比は、第2のベベル・ギア段の伝達比に対応する。
【0018】
特に好ましい一実施形態では、中間ギア段の中間ピニオンの歯数と、中間ギア段の中間ギアの歯数とは、1.0より大きい整数共通因数を有しない。これの利点は、中間ピニオンの全ての歯が中間ギアの全ての歯と噛み合い、その結果、例えば中間ピニオンの欠陥のある歯によって生じる損傷が中間ギアの全ての歯に(均一に)分散分配することができること、である。
【0019】
別の実施形態では、中間ギア段の中間ピニオンは中間ギア段の中間ギアを駆動する。
【0020】
別の実施形態では、中間ギア段の伝達比は1より大きい。
【0021】
一実施形態では、中間ギア段は平歯車段として構成される。
【0022】
別の実施形態では、第1のドライブ・アクスルは、貫通連結型のドライブ・アクスルとして構成される。
【0023】
1つの例示的な実施形態では、第2のドライブ・アクスルは単独ドライブ・アクスルとして構成される。単独ドライブ・アクスルは、そのドライブ・アクスルに直接連結される各車輪を単に駆動するだけの役割を果たす。別のドライブ・アクスルへの伝達(転送)(貫通連結型のドライブ)は形成されない。
【0024】
一展開形態において、中間ギア段および第1のベベル・ギア段の全体的な伝達比は、第2のベベル・ギア段の伝達比に対応する。
【0025】
一設計変形例では、アクスル・ドライブ・システムは、特にユティリティ・ビークルまたは商用車の、タンデム・アクスルとして構成される。
【0026】
代替的に、アクスル・ドライブ・システムは、少なくとも1つの別のドライブ・アクスルを有することができる。このようにして、3つ以上の被駆動アクスル(アクスル・ドライブ)を有するアクスル・ドライブ・システムも、本発明を利用することができる。
【0027】
別の実施形態では、第1のドライブ・アクスルと第2のドライブ・アクスルの間に少なくとも1つの別のドライブ・アクスルが配置され、および/または、第1のドライブ・アクスルの全体的な伝達比は少なくとも1つの別のドライブ・アクスルの全体的な伝達比に対応する。
【0028】
一展開形態において、少なくとも1つの別のドライブ・アクスルは、別の中間ギア段および別のベベル・ギア段を有する。第1の中間ギア段および第1のベベル・ギア段の全体的な伝達比は、別の中間ギア段および別のベベル・ギア段の全体的な伝達比に対応する。このようにして、2つの貫通連結型のドライブ・アクスルの各中間ギア段および各ベベル・ギア段は、同じ部品として構成できおよび/または同じに(一致)することができる。さらに、中間ギア段は、1に等しくない伝達比による恩恵を受けて、その結果、第1のドライブ・アクスルおよび第2のドライブ・アクスルについて、音響および耐荷力に関して上述した利点を達成することができる。
【0029】
特に、第1の中間ギア段の伝達比は、第2の中間ギア段の伝達比に対応し得る。また、第1のベベル・ギア段の伝達比は、第2のベベル・ギア段の伝達比に対応し得る。
【0030】
例示的な一実施形態において、第1のドライブ・アクスルは、ドライブ・ユニットへと駆動連結するための入力シャフトを有する。代替的にまたは追加的に、第1のドライブ・アクスルは、第2のドライブ・アクスルへと駆動連結するための貫通シャフトを有する。代替的にまたは追加的に、一方の入力シャフトと他方の貫通シャフトおよび中間ギア段との間に駆動用に(駆動に関して、駆動的に、駆動上)設けられることが好ましい縦方向ディファレンシャルを有する。
【0031】
さらに、第1のドライブ・アクスル、第2のドライブ・アクスル、および/または(存在する場合には)別のドライブ・アクスルは、それぞれ、横方向ディファレンシャルおよび両車輪(ホイール)を有することができる。それぞれのドライブ・アクスルのベベル・ギア段は、横方向ディファレンシャルに駆動形態で連結することができ、次いでその横方向ディファレンシャルはホイール・シャフト(車輪軸)を介して両車輪に駆動形態で連結することができる。
【0032】
特に、第1のベベル・ギア段および/または(存在する場合には)第2のベベル・ギア段は、平歯付き(spur toothed)、螺旋状歯付き(helically toothed)、二重螺旋状歯付き、渦巻状歯付き(spirally toothed)(渦巻またはハイポイドの)ベベル・ギア、またはそうでない場合は必要に応じて別の歯のタイプに従って構成された歯車、を有することができる。
【0033】
中間ギア段は、好ましくは、平歯付き(spur toothed)、螺旋状歯付き(helically toothed)、二重螺旋状歯付き歯車、または必要に応じて別の歯のタイプに従って構成された歯車、を有することができる。
【0034】
また、本発明は、ここに開示されたアクスル・ドライブ・システムを有する自動車、特にユティリティ・ビークルまたは商用車(例えば、バスまたは貨物自動車もしくはトラック)、に関する。
【0035】
本発明の上述の好ましい実施形態は、任意の所望の形態で互いに組み合わせることができる。本発明の他の詳細および利点を、図面を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本開示による例示的なアクスル・ドライブ・システムの概略図を示している。
図2図2は、本開示による別の例示的なアクスル・ドライブ・システムの概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
各図に示されている実施形態は少なくとも部分的に互いに一致しており、その結果、類似のまたは同様の部分には同じ参照番号が付され、また、それらを説明するには、繰り返しを避けるために他の実施形態および/または図の説明が参照される。
【0038】
図1は、アクスル・ドライブ・システム10を示している。アクスル・ドライブ・システム10は、自動車、特にユティリティ・ビークルまたは商用車、に含ませることができる。例えば、アクスル・ドライブ・システム10は、貨物自動車もしくはトラックまたはバスのタンデム・アクスル・ドライブ装置として使用することができる。アクスル・ドライブ・システム10は、第1のドライブ・アクスル(Antriebsachse)(第1のアクスル・ドライブ(Achsgetriebe:アクスル・ギア、トランスアクスル))12と、第2のドライブ・アクスル(第2のアクスル・ドライブ)14とを有する。
【0039】
第1のドライブ・アクスル12は、縦方向のディファレンシャル(Laengsdifferential)16、中間ギア段(Vorgelegestufe)18、第1のベベル・ギア段(Kegelradstufe)20、および第1の横方向のディファレンシャル(Querdifferential)22を有する。
【0040】
ドライブ・ユニット(装置)17、例えば電動モータまたは内燃エンジン(機関)は、第1のドライブ・アクスル12の入力シャフト24に駆動形態でまたは駆動的に連結される。入力シャフト24は、縦方向のディファレンシャル16に駆動形態で連結される。入力シャフト24は、車両縦(前後)方向に伸びる。
【0041】
第1のドライブ・アクスル12は、貫通連結型のアクスル・ドライブとして構成される。第1のドライブ・アクスル12は、貫通連結型の(貫通連結された)ドライブとして機能するために、縦方向のディファレンシャル16および貫通連結型のドライブ・シャフト26を含んでいる。縦方向のディファレンシャル16は、駆動動力を、中間ギア段18と、貫通連結型のドライブ・シャフト26とに分配する。貫通連結型のドライブ・シャフト26は、クラッチを介して第2のドライブ・アクスル14の入力シャフトに駆動形態で連結される。貫通連結型のドライブ・シャフト26は、車両の縦(長手)方向に伸びる。
【0042】
縦方向のディファレンシャル(差動装置、デフ)のないアクスル・ドライブ・システムも考えられる。その際、第1のドライブ・アクスルは、シャフトを介して第2のドライブ・アクスルに連結することができる。それは、即ち、従来の方法における縦方向のディファレンシャルを介した2つのアクスル相互間の回転速度の補償は、可能ではないことを意味する。本発明の重要性は、このタイプの構成の場合に、特に高い。
【0043】
第1のドライブ・アクスル12は、さらに、ロック(lock:固定)(縦方向のディファレンシャル・ロック(差動固定装置)、デフロック)として機能する切替(スイッチ)要素(図示せず)を有することができる。その切替要素は、入力シャフト24と中間ギア段18の間に直接的な駆動連結を確立することができる。その切替要素は、例えば噛合い継手(claw coupling、Klauenkupplung:咬合継手)として構成することができる。
【0044】
中間ギア段18は平歯車段(Stirnradstufe)として構成される。中間ギア段18は中間ピニオン(Vorgelegeritzel)28および中間ギア(Vorgelegerad)30を有する。中間ピニオン28は、縦方向のディファレンシャル16によって駆動される。中間ピニオン28と貫通連結型のドライブ・シャフト26の間の差動回転速度がΔn=0の場合(およびΔn≠0の場合にも)、導入されたトルクは、通常の動作期間において中間ピニオン28と貫通連結型のドライブ・シャフト26に対して、等しく分割(等分)される。中間ピニオン28は中間ギア30と噛み合う。中間ギア30は、中間シャフト32を介して第1のベベル・ギア段20に駆動形態で連結される。中間シャフト32は、入力シャフト24および貫通連結型のドライブ・シャフト26に対して平行または並列に配置される。
【0045】
第1のベベル・ギア段20は、第1のベベル・ピニオン34および第1のリング・ギア36を有する。第1のベベル・ピニオン34は第1のリング・ギア36と噛み合う。第1のベベル・ギア段20は、中間シャフト32によって供給された動力を、約90°だけ方向を変えて第1の横方向ディファレンシャル22を介してホイール・シャフト(車輪軸)38および40に伝達する(方向転換する)。幾つかの実施形態において、中間シャフト32と、ベベル・ギア段20の第1のベベル・ピニオン34とは、ベベル・ピニオン・シャフトの形態の一体型ユニットとして構成することができる。第1のベベル・ギア段20は、例えば、平歯付き、螺旋状歯付き(helically toothed:ハスバ歯形、ヘリカル歯形)または渦巻(螺旋)状歯付き(spirally toothed:曲歯形、スパイラル歯型)(渦巻またはハイポイドの)ベベル・ギア(傘歯車)を有することができる。ホイール・シャフト38および40は、自動車の車輪(ホイール)42を駆動する。
【0046】
第2のドライブ・アクスル14は、第2のベベル・ギア段44および第2の横方向ディファレンシャル46を有する。第2のドライブ・アクスル14は、単独のドライブ・アクスルとして構成される。換言すれば、第2のドライブ・アクスル14は、受け取ったトルクを、第2のドライブ・アクスル14に取り付けられた各車輪56にのみ伝達する。
【0047】
第2のベベル・ギア段44は、第2のベベル・ピニオン48および第2のリング・ギア50を有する。貫通連結型のドライブ・シャフト26は第2のベベル・ピニオン48に駆動形態で連結される。第2のベベル・ピニオン48は第2のリング・ギア50と噛み合う。第2のベベル・ギア段44は、貫通連結型のドライブ・シャフト26によって供給された動力を、約90°だけ方向を変えて第2の横方向ディファレンシャル46を介してホイール・シャフト52および54に伝達する(方向転換する)。第2のベベル・ギア段44は、例えば、平歯付き、螺旋状歯付き(ハスバ歯形、ヘリカル歯形)または渦巻(螺旋)状歯付き(曲歯形、スパイラル歯型)(渦巻またはハイポイドの)ベベル・ギアを有することができる。ホイール・シャフト52および54は、自動車の車輪56を駆動する。
【0048】
本開示によれば、第1のドライブ・アクスル12および第2のドライブ・アクスル14の各伝達比の設計手法が提案される。その設計手法は、通常の手法と比較して、音響的利点および耐荷力の利点を与える。値1に等しくない中間ギア段18の伝達比の場合、中間ギア段18の2つのギア・ホイールの各歯先円径、従ってパッケージに対して、例えば改善された形態で設置空間を利用するために、さらに狙い通りに(目標を定めて)影響を与えることができる。
【0049】
中間ギア段18、即ち第1のドライブ・アクスル12の平歯車段に、伝達比iintermediate≠1.0(ivorgelege≠1.0)を与えることが、提案される。それと同時に、第1のベベル・ギア段20と第2のベベル・ギア段44の各伝達比は、中間ギア段18と第1のベベル・ギア段20の全体的な伝達比が第2のベベル・ギア段44の伝達比に対応するような形態で、構成される。その結果、縦方向ディファレンシャル16において、望ましくない永続的な(固定的な)回転速度差が生じることはない。
【0050】
一例として提案される設計手法は、第1のアクスル・ドライブ12と第2のアクスル・ドライブ14の両歯数に関する次の各比および各関係を含んでいる。
【0051】
(1) teethintermediate_pinion(28) ≠ teethintermediate_gear(30)
(zVorgelegeritzel(28) ≠ zVorgelegerad(30)
即ち、中間ギア段18の中間ピニオン28の歯数は、中間ギア段18の中間ギア30の歯数に等しくない。
【0052】
(2) teethintermediate_pinion(28) = teethfirst_ring_gear(36)
(zVorgelegeritzel(28) = zerstes Tellerrad(36)
即ち、中間ギア段18の中間ピニオン28の歯数は、第1のベベル・ギア段20の第1のリング・ギア段36の歯数に等しい。
【0053】
(3) teethintermediate_gear(30) = teethsecond_ring_gear(50)
(zVorgelegerad(30) = zzweites Tellerrad(50)
即ち、中間ギア段18の中間ギア30の歯数は、第2のベベル・ギア段44の第2のリング・ギア50の歯数に等しい。
【0054】
(4) teethsecond_bevel_pinion(48) = teethfirst_bevel_pinion(34)
(zzweites Kegelritzel(48)= zerstes Kegelritzel(34)
即ち、第2のベベル・ギア段44の第2のベベル・ピニオン48の歯数は、第1のベベル・ギア段20の第1のベベル・ピニオン34の歯数に等しい。
【0055】
このように、ドライブ・アクスル12および14は同じ伝達比を有し、第1のドライブ・アクスル12の中間ギア段18は値1に等しくない伝達比を有する。
【0056】
一例として、以下の構成を選択することができる。中間ピニオン28は、38個の歯を有することができる(teethintermediate_pinion(28)=38)。中間ギア30は、37個の歯を有することができる(teethintermediate_gear(30)=37)。第1のベベル・ピニオン34は、13個の歯を有することができる(teethfirst_bevel_pinion(34)=13)。第1のリング・ギアは、38個の歯を有することができる(teethfirst_ring_gear(36)=38)。第2のベベル・ピニオン48は、13個の歯を有することができる(teethsecond_bevel_pinion(48)=13)。第2のリング・ギア50は、37個の歯を有することができる(teethsecond_ring_gear(50)=37)。
【0057】
その設計手法によって、中間ピニオン28と中間ギア30の同じ歯が中間ギア段18において常に互いに噛み合うとは限らないようにすることができる。さらに、中間ピニオン28の歯数および中間ギア30の歯数が1より大きい整数の共通因数(common factor、gemeinsamen Teiler)を有していない場合、中間ピニオン28の各歯は中間ギア30の各歯と噛み合う。
【0058】
それとは対照的に、仮に、中間ピニオンと、中間ギア段の中間ギアとが同じ数の歯数を有する(通常そうであるように)とすると、音響的な欠点および耐荷力の欠点が生じる可能性があり得るであろう。例えば、仮に、中間ピニオンまたは中間ギアの製造期間中にピッチ偏差を生じさせる不正確さまたは誤差(Ungenauigkeiten)が生じたとすると、その結果生じた負荷の増大は、互いに噛み合う中間ピニオンおよび中間ギアの同じ歯に対して常に悪影響を与えるであろう。これによって、アクスル・ドライブ・システムの寿命期間にわたって、磨耗の増大を生じさせ、音が聞こえる(音響的に知覚可能となる)(破壊的であると知覚される)可能性がある。
【0059】
ここで提案される設計手法は、所望の多数の被駆動アクスルを有するアクスル・ドライブ・システムに適用することができる。一例として、図2は、3つのドライブ・アクスルを有するアクスル・ドライブ・システム110を示している。3つのドライブ・アクスルは、2つの貫通連結型のドライブ・アクスルおよび1つの単独のドライブ・アクスルを有する。しかし、ドライブ・アクスルの数を増やすために、追加的な貫通連結型のドライブ・アクスルを設けることも可能である。
【0060】
アクスル・ドライブ・システム110は、第1のドライブ・アクスル112、第2のドライブ・アクスル113、および第3のドライブ・アクスル114を有する。
【0061】
アクスル・ドライブ・システム110の第1のドライブ・アクスル(第1のアクスル・ドライブ)112および第2のドライブ・アクスル(第2のアクスル・ドライブ)113は、それぞれ貫通連結型のドライブ・アクスルとして構成される。特に、アクスル・ドライブ・システム110のドライブ・アクスル112、113は、図2において同じ参照番号を有する同じ構成要素または部品によって示されるように、図1のアクスル・ドライブ・システム10の第1のドライブ・アクスル12と同じ形態で構成することができる。第1のドライブ・アクスル112は、第2のドライブ・アクスル113に駆動形態で(駆動的に)連結される。第2のドライブ・アクスル113は、第3のドライブ・アクスル114に駆動形態で連結される。
【0062】
第3のドライブ・アクスル114は、単独のドライブ・アクスルとして構成される。特に、アクスル・ドライブ・システム110の第3のドライブ・アクスル114は、図2において同じ参照番号を有する同じ構成要素または部品によって同様に示されるように、図1のアクスル・ドライブ・システム10の第2のドライブ・アクスル14と同じ形態で構成することができる。
【0063】
ドライブ・アクスル112、113および114のそれぞれの全体的な伝達比は同一である。第1のドライブ・アクスル112の中間ギア段18の伝達比は、第2のドライブ・アクスル113の中間ギア段18の伝達比に対応する。第1のドライブ・アクスル112のベベル・ギア段20の伝達比は、第2のドライブ・アクスル113のベベル・ギア段20の伝達比に対応する。第1のドライブ・アクスル112の中間ギア段18およびベベル・ギア段20の全体的な伝達比と、第2のドライブ・アクスル113の中間ギア段18およびベベル・ギア段20の全体的な伝達比とは、第3のドライブ・アクスル114のベベル・ギア段44の伝達比に対応する。
【0064】
本発明は、上述の好ましい例示的な実施形態に限定されない。むしろ、本発明の概念を同様に利用し、従って保護の範囲内に入る多数の変形例および変更が可能である。特に、本発明は、引用する請求項とは関係なく、従属請求項の構成および特徴の保護も請求する。特に、独立請求項1の全ての特徴は、互いに独立して開示される。さらに、従属請求項の特徴は、独立請求項1の全ての特徴と関係なくも開示され、例えば、独立請求項1の、第1のドライブ・アクスル、中間ギア段、第1のベベル・ギア段、第2のドライブ・アクスル、および第2のベベル・ギア段、の存在および/または構成とは関係なく、開示される。
【符号の説明】
【0065】
10 アクスル・ドライブ・システム
12 第1のドライブ・アクスル(第1のアクスル・ドライブ)
14 第2のドライブ・アクスル(第2のアクスル・ドライブ)
16 縦方向ディファレンシャル
17 ドライブ・ユニット(装置)
18 中間ギア段
20 第1のベベル・ギア段
22 第1の横方向ディファレンシャル
24 入力シャフト
26 貫通連結型のドライブ・シャフト
28 中間ピニオン
30 中間ギア
32 中間シャフト(ベベル・ピニオン・シャフト)
34 第1のベベル・ピニオン
36 第1のリング・ギア
38 ホイール・シャフト(車輪軸)
40 ホイール・シャフト
42 車輪(ホイール)
44 第2のベベル・ギア段
46 第2の横方向ディファレンシャル
48 第2ベベル・ピニオン
50 第2のリング・ギア
52 ホイール・シャフト(車輪軸)
54 ホイール・シャフト
56 車輪
110 アクスル・ドライブ・システムまたは装置
112 第1のドライブ・アクスル(第1のアクスル・ドライブ)
113 第2のドライブ・アクスル(第2のアクスル・ドライブ)
114 第3のドライブ・アクスル(第3のアクスル・ドライブ)
図1
図2