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特許7260301ブロー成形用熱可塑性樹脂組成物およびこれから成形される成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ブロー成形用熱可塑性樹脂組成物およびこれから成形される成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/16 20060101AFI20230411BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20230411BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20230411BHJP
   C08L 39/04 20060101ALI20230411BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20230411BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230411BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230411BHJP
   B29C 49/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C08L25/16
C08L51/04
C08L25/12
C08L39/04
C08K3/30
C08K3/22
C08K3/34
B29C49/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018246805
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2019119888
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】10-2017-0184920
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】任 宰 ▲せき▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲とん▼ 槿
(72)【発明者】
【氏名】權 奇 惠
(72)【発明者】
【氏名】金 永 孝
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-137018(JP,A)
【文献】特開2000-186178(JP,A)
【文献】特開2009-007559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0119750(US,A1)
【文献】特開平10-110075(JP,A)
【文献】特開2001-011275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、B29C49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジエン系グラフト共重合体 20~40質量%、
(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体 10~20質量%、
(C)アルファ-メチルスチレン共重合体 30~50質量%、および
(D)N-フェニルマレイミド共重合体10~20質量%(ただし、(A)~(D)の合計は100質量%)を含む基礎樹脂 100質量部;ならびに
前記基礎樹脂100質量部に対して、(E)硫化亜鉛および二酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種である無機粒子 0.1~3質量部、
を含み、
前記(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体 100質量部を基準として、前記(C)アルファ-メチルスチレン共重合体の含有量は200~400質量部であり、前記(D)N-フェニルマレイミド共重合体の含有量は50~160質量部である、ブロー成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)アルファ-メチルスチレン共重合体 100質量部を基準として、前記(D)N-フェニルマレイミド共重合体の含有量は、25~40質量部である、請求項1に記載のブロー成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体の重量平均分子量は、100,000g/mol~600,000g/molである、請求項1または2に記載のブロー成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体 100質量部を基準として、前記芳香族ビニル化合物由来の構成単位の含有量は50~90質量部であり、前記シアン化ビニル化合物由来の構成単位の含有量は10~50質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載のブロー成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体は、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)樹脂であって、前記(C)アルファ-メチルスチレン共重合体と異なる値の重量平均分子量を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のブロー成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)ジエン系グラフト共重合体は、コア-シェル構造を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のブロー成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記コア-シェル構造のコアは、ブタジエンゴムを含み、
前記コア-シェル構造のシェルは、アクリロニトリルとスチレンとの混合物が前記コアにグラフト重合されて形成されたものである、請求項に記載のブロー成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のブロー成形用熱可塑性樹脂組成物から成形される成形品。
【請求項9】
ASTM D648により測定した熱変形温度が95℃~105℃である、請求項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形用熱可塑性樹脂組成物およびこれから成形される成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(以下、ABS)樹脂は、耐衝撃性、化学的耐性、成形加工性などの物性に優れており、各種事務用機器、電気電子部品、自動車の内外装材などに幅広く使用されている材料である。このうち、自動車外装材であるリアスポイラー(rear spoiler)などの成形品は、ブロー成形(Blow molding)を利用して製造される。
【0003】
ブロー成形は、射出成形によりパリソン(parison)を成形し、これに空気を注入して製造する方法である。具体的には、押出機を利用して樹脂を溶かした後、押出機の端部に中空パイプ模様のように、中身が空洞の模様を形成することができるダイを装着して、パリソンを成形する。垂直に落ちるパリソンを、開いているブロー成形用の金型内に入るようにした後、金型を閉じてパリソンを切断した後、パリソン内に空気を吹き込んで所望の成形品を製造する。
【0004】
一般に、ABS樹脂は、ブロー成形の際に、表面に微細な気孔が発生して品質低下が発生する虞があり、そのために表面加工、すなわち、サンディング(sanding)が必要である。
【0005】
サンディング容易性を高めるために、従来、一般にABS樹脂のゴム含有量を増やして、表面硬度を低下させる方法が用いられてきた。しかし、ゴム含有量を増加させる場合、耐熱性および流動性などの物性を維持し難いだけでなく、サンディング容易性の向上にも限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-007599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ブロー成形以降に行われる表面加工の効率を向上させて、つまり、サンディング容易性を高めて、成形品の表面品質を改善することができるだけでなく、耐熱性および流動性も確保することができるブロー成形用熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るブロー成形用熱可塑性樹脂組成物は、(A)ジエン系グラフト共重合体20~40質量%、(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体10~20質量%、(C)アルファ-メチルスチレン共重合体30~50質量%、および(D)N-フェニルマレイミド共重合体10~20質量%(ただし、(A)~(D)の合計は100質量%)を含む基礎樹脂100質量部に対して、(E)硫化亜鉛、二酸化チタン、タルク、またはこれらの組み合わせである無機粒子0.1~3質量部を含む。
【0009】
本発明の他の一実施形態に係る成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一般的な熱可塑性樹脂組成物に要求される特性である耐熱性および流動性の確保が可能なだけでなく、ブロー成形以降に行われる表面加工作業において、表面に微細な凹凸を生成させることによってサンディングの作業時間が減少してサンディング容易性が向上し、後加工作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例2の摩耗量評価前の試験片表面を示す光学顕微鏡写真である。
図2】実施例2の摩耗量評価後の試験片表面を示す光学顕微鏡写真である。
図3】比較例1の摩耗量評価前の試験片表面を示す光学顕微鏡写真である。
図4】比較例1の摩耗量評価後の試験片表面を示す光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、添付された請求の範囲のみによって定義される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、(A)ジエン系グラフト共重合体 20~40質量%、(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体 10~20質量%、(C)アルファ-メチルスチレン共重合体 30~50質量%、および(D)N-フェニルマレイミド共重合体 10~20質量%(ただし(A)~(D)の合計は100質量%)を含む基礎樹脂 100質量部;ならびに前記基礎樹脂 100質量部に対して、(E)硫化亜鉛、二酸化チタン、およびタルクからなる群より選択される少なくとも1種の無機粒子 1~3質量部を含むブロー成形用熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0014】
以下、前記ブロー成形用熱可塑性樹脂組成物に含まれる各成分について具体的に説明する。
【0015】
(A)ジエン系グラフト共重合体
本発明のジエン系グラフト共重合体は、コア(core)がジエン系ゴム質重合体であり、シェル(shell)が芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の共重合体であるコア-シェル形態のグラフト共重合体であることが好ましい。これは、ジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含有する混合物をグラフト共重合させて製造することができる。重合方法は、当該技術分野に自明に公知となった方法であれば制限されず、例えば塊状重合、懸濁重合、または乳化重合等により製造され得る。
【0016】
一例として、ジエン系ゴム質重合体と、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の混合物との合計量を100質量%としたときに、ジエン系ゴム質重合体 40~60質量%の存在下で、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の混合物 40~60質量%を乳化重合法でグラフト共重合させて、ジエン系グラフト共重合体を製造する方法が挙げられる。
【0017】
この際、前記ジエン系ゴム質重合体は、ブタジエンゴム、ブタジエンとスチレンとの共重合体ゴム、ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体ゴム等であり得る。より好ましくは、ブタジエンゴムである。
【0018】
ジエン系ゴム質重合体は、平均粒径が0.1~0.5μmであることが好ましく、0.1~0.3μmであることがより好ましい。平均粒径が0.1μm未満である場合には、耐衝撃性が低下することがあり、0.5μmを超える場合には、外観が低下するという問題が発生することがある。
【0019】
ジエン系ゴム質重合体にグラフト共重合されるシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との混合物は、混合物の全質量に対して、20~40質量%のシアン化ビニル化合物と60~80質量%の芳香族ビニル化合物とからなりうる。
【0020】
前記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびフマロニトリルなどを用いることができ、これらは単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。より好ましくは、アクリロニトリルを用いることができる。
【0021】
前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、炭素数1~10のアルキル基で置換されたアルキル置換スチレン、ハロゲン置換スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどを用いることができ、これらは単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。より好ましくは、スチレンを用いることができる。
【0022】
前記ジエン系グラフト共重合体の含有量は、基礎樹脂である(A)~(D)の合計質量を100質量%として、20~40質量%であり、25~40質量%が好ましい。前記ジエン系グラフト共重合体の含有量が20質量%未満である場合、耐衝撃性が低下することがあり、40質量%を超える場合、成形性が低下することがある。
【0023】
(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体
本発明の芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物が共重合されて形成される。
【0024】
前記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびフマロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0025】
前記芳香族ビニル化合物としては、炭素数1~10のアルキル基で置換されたアルキル置換スチレン、ハロゲン置換スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどを用いることができ、これらは単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0026】
芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体は、好ましくはスチレン-アクリロニトリル共重合体(styrene-acrylonitrile copolymer、SAN)である。
【0027】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物においては、前記芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体100質量部に対して、芳香族ビニル化合物由来の構成単位 50~90質量部、およびシアン化ビニル化合物由来の構成単位 10~50質量部を含むことができる。
【0028】
芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体の重量平均分子量は、100,000g/mol~600,000g/molであることが好ましく、100,000g/mol~300,000g/molであることがより好ましく、100,000g/mol~200,000g/molであることがさらに好ましい。
【0029】
前記芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体の含有量は、基礎樹脂である(A)~(D)の合計質量を10質量%として、10~20質量%であり、12~18質量%が好ましい。芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体の含有量が前記範囲を外れる場合、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性およびブロー成形性が低下する虞がある。
【0030】
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体は、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)樹脂であって、後述の(C)アルファ-メチルスチレン共重合体と異なる値の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0031】
(C)アルファ-メチルスチレン(α-Methylstyrene、AMS)共重合体
アルファ-メチルスチレン共重合体は、アルファ-メチルスチレン(AMS)およびこれと共重合可能な単量体を含む混合物の共重合体であって、例えばアルファ-メチルスチレンとアクリロニトリルとの共重合体、アルファ-メチルスチレン、アクリロニトリルおよびスチレンとの共重合体であり得る。アルファ-メチルスチレン共重合体は、例えばアルファ-メチルスチレン 50~80質量部、アクリロニトリル 20~50質量部およびスチレン 0~10質量部を所定の比率で共重合して製造することができる。この際、アルファ-メチルスチレンの量が50質量部未満である場合には、耐熱度が低くなり、加工時に熱により簡単に変色する場合がある。一方、80質量部を超える場合には、アルファ-メチルスチレン共重合体鎖に、熱により簡単に分解されるアルファ-メチルスチレンが連続して3個以上結合した構造が多く生成される場合がある。また、スチレンの量が10質量部を超える場合には、耐熱性が低下する場合がある。
【0032】
前記アルファ-メチルスチレン共重合体の含有量は、基礎樹脂である(A)~(D)の合計質量を100質量%として、30~50質量%であり、30~45質量%が好ましい。前記アルファ-メチルスチレン共重合体の含有量が30質量%未満である場合、十分な耐熱性を得ることができず、50質量%を超える場合、耐衝撃性が低下する虞がある。
【0033】
また、前記(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体 100質量部を基準として、前記アルファ-メチルスチレン共重合体の含有量は、200~400質量部であり得る。前記アルファ-メチルスチレン共重合体の含有量が200質量部未満であれば、十分な耐熱性を得ることができない場合があり、400質量部を超えると耐衝撃性が低下する場合がある。
【0034】
(D)N-フェニルマレイミド(N-Phenyl Maleimide、PMI)共重合体
N-フェニルマレイミド共重合体は、N-フェニルマレイミド、芳香族ビニル単量体、および無水マレイン酸の共重合体であり得る。N-フェニルマレイミド共重合体は、芳香族ビニル単量体-無水マレイン酸共重合体のイミド化反応を行うことにより製造することができ、ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは180~200℃である。
【0035】
前記N-フェニルマレイミド共重合体は、例えばN-フェニルマレイミド-スチレン-無水マレイン酸共重合体であり得る。前記N-フェニルマレイミド-スチレン-無水マレイン酸共重合体は、N-フェニルマレイミド由来の構成単位 45~55質量%、スチレン由来の構成単位 40~50質量%、および無水マレイン酸由来の構成単位 1~10質量%から構成され得る。
【0036】
前記N-フェニルマレイミド共重合体の含有量は、基礎樹脂である(A)~(D)の合計質量を100質量%として、10~20質量%であり、10~15質量%が好ましい。前記N-フェニルマレイミド共重合体の含有量が10質量%未満である場合、十分な耐熱性を得ることができず、20質量%を超える場合、外観および耐衝撃性が低下する虞がある。
【0037】
また、前記(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体 100質量部を基準として、前記N-フェニルマレイミド共重合体の含有量は、50~160質量部であり得る。前記N-フェニルマレイミド共重合体の含有量が前記範囲内である場合、優れた耐熱度および耐衝撃性を示すことができる。
【0038】
さらに、前記(C)アルファ-メチルスチレン共重合体 100質量部を基準として、前記N-フェニルマレイミド共重合体の含有量は、25~40質量部であり得る。前記N-フェニルマレイミド共重合体が25質量部未満である場合、十分な耐熱性を得ることができない場合があり、40質量部を超えると、仕上げ加工(サンディング)が難しく、後加工性が低下する虞がある。
【0039】
(E)無機粒子
本発明のブロー成形用熱可塑性樹脂組成物は、硫化亜鉛(ZnS)、二酸化チタン(TiO)、およびタルク(talc)からなる群より選択される少なくとも1種の無機粒子を含む。
【0040】
前記無機粒子の平均粒径(D50)は、好ましくは5~10mmであるが、これに限定されるものではない。無機粒子の平均粒径が上記範囲内である場合、サンディング(sanding、紙やすり作業)が容易で、後加工性に優れるという効果を発現することができる。
【0041】
前記無機粒子は、前記基礎樹脂100質量部に対して、0.1~3質量部で含まれ得る。前記無機粒子の含有量が0.1質量部未満である場合、サンディング容易性の効果を発現し難く、3質量部を超える場合、ブロー成形の際に、成形品表面に形成される凹凸の大きさが過度に大きくなって、サンディング容易性が低下する虞がある。
【0042】
(F)その他添加剤
本発明のブロー成形用熱可塑性樹脂組成物は、その用途により選択的に添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、難燃剤、滑剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤または着色剤等が挙げられ、最終成形品の特性により、2種以上の添加剤を混合して用いることができる。
【0043】
難燃剤は、燃焼性を低くさせる物質であって、ホスフェート(phosphate)化合物、ホスファイト(phosphite)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ポリシロキサン、ホスファゼン(phosphazene)化合物、ホスフィネート(phosphinate)化合物またはメラミン化合物のうちの少なくとも一つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
滑剤は、加工/成形/押出中に、熱可塑性樹脂組成物と接触する金属表面を潤滑させて、熱可塑性樹脂組成物の流れまたは移動を助ける物質であって、通常使用される物質を使用することができる。
【0045】
可塑剤は、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性、加工作業性、または膨張性を増加させる物質であって、通常使用される物質を使用することができる。
【0046】
熱安定剤は、高温で混練または成形するときの熱可塑性樹脂組成物の熱的分解を抑制する物質であって、通常使用される物質を使用することができる。
【0047】
酸化防止剤は、熱可塑性樹脂組成物と酸素との化学的反応を抑制または防止することによって、熱可塑性樹脂組成物が分解されて固有の物性が喪失されることを防止する物質である。酸化防止剤は、フェノール型酸化防止剤、ホスファイト型酸化防止剤、チオエーテル型酸化防止剤、およびアミン型酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
光安定剤は、紫外線から熱可塑性樹脂組成物が分解されて色が変わったり、機械的性質が喪失されたりすることを抑制または防止する物質である。好ましくはヒンダードフェノール型光安定剤、ベンゾフェノン型光安定剤、またはベンゾトリアゾール型光安定剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができるが、これらに限定されるのではない。
【0049】
着色剤としては、通常の顔料または染料を使用することができる。
【0050】
添加剤の含有量は、前記基礎樹脂 100質量部に対して、0.1質量部~15質量部で含まれ得る。
【0051】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、樹脂組成物を製造する公知の方法により製造され得る。
【0052】
例えば、本発明による熱可塑性樹脂組成物は、本発明の構成成分とその他添加剤とを同時に混合した後、押出機内で溶融押出する方法により、ペレットの形態で製造され得る。
【0053】
本発明の一実施例による成形品は、前述した熱可塑性樹脂組成物から製造(成形)され得る。前記熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性および耐衝撃性に優れ、成形性および外観に優れてブロー成形品に制限なしに適用が可能であり、具体的には、自動車用外装材として使用され得る。
【0054】
本発明の一実施形態による成形品は、ASTM D648により測定した熱変形温度が95℃~105℃であることが好ましい。
【実施例
【0055】
以下で本発明を実施例および比較例によりより詳細に説明するが、下記の実施例および比較例は、説明の目的のためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。
【0056】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施形態に過ぎず、本発明が下記の実施例により限定されるのではない。
【0057】
(実施例1~2および比較例1~2)
実施例1~2および比較例1~2の熱可塑性樹脂組成物は、下記表1に記載した含有量比により製造した。
【0058】
表1中、基礎樹脂を構成する成分(A、B、C、D)は、基礎樹脂の総質量を基準に質量%で示し、基礎樹脂に添加される無機粒子(E1、E2)は、基礎樹脂100質量部に対する質量部単位で示した。
【0059】
表1に記載された成分を乾式混合し、二軸押出機(L/D=29、φ=45mm)の供給部に定量的に連続投入して溶融/混練した。次に、二軸押出機をによりペレット化された熱可塑性樹脂組成物を、約80℃で約2時間乾燥した後、シリンダー温度約260℃、金型温度約60℃の6オンス射出成形機を用い、物性および外観評価用の試験片を射出成形により製造した。
【0060】
【表1】
【0061】
上記表1に記載した各成分に対する説明は、次のとおりである。
【0062】
基礎樹脂
(A)ジエン系グラフト共重合体
ブタジエンゴムの平均粒径が約0.3μmであり、ブタジエンゴムの含有量が約58質量%である、ロッテアドバンストマテリアル社製のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体(g-ABS)を用いた。
【0063】
(B)芳香族ビニル化合物-シアン化ビニル化合物共重合体
アクリロニトリル由来の構成単位の含有量が32質量%であり、重量平均分子量が120,000g/molであるロッテアドバンストマテリアル社製のスチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)を用いた。
【0064】
(C)アルファ-メチルスチレン共重合体
アルファ-メチルスチレン由来の構成単位の含有量が54質量%であり、重量平均分子量が130,000g/molであるロッテアドバンストマテリアル社製のアルファ-メチルスチレン-スチレン-アクリロニトリル共重合体(AMS-SAN)を用いた。
【0065】
(D)N-フェニルマレイミド共重合体
N-フェニルマレイミド由来の構成単位の含有量が50質量%であり、ガラス転移温度(Tg)が196℃であり、重量平均分子量が150,000g/molであるデンカ株式会社製のN-フェニルマレイミド-スチレン-マレイン酸無水物共重合体(製品名:MS-NB)を用いた。
【0066】
無機粒子
(E1)硫化亜鉛(ZnS)
Sachtleben Chemie社製の硫化亜鉛(製品名:SACHTOLITH(登録商標) HD-S)を用いた。
【0067】
(E2)二酸化チタン(TiO
Cristal社製の二酸化チタン(製品名:TiONA(登録商標)188)を用いた。
【0068】
物性試験
実施例1~2および比較例1~2で製造された試験片に対して、下記のように物性試験を行い、その結果を表2に示した。
【0069】
(1)流動性(単位:g/10min)
ASTM D1238に基づいて、220℃、10kgf荷重下でメルトフローインデックス(Melt-flow index、MI)を測定した。
【0070】
(2)耐熱性(単位:℃)
(2-1)ISO 306/B50に基づいてビカット軟化温度(Vicat softening temperature、VST)を測定した。
【0071】
(2-2)ASTM D648に基づいて1/4 インチ厚さ試験片に対して、1.8MPa荷重下で熱変形温度(Heat deflection temperature、HDT)を測定した。
【0072】
(3)耐衝撃性(単位:kgf・cm/cm)
ASTM D256に基づいて1/4 インチ厚さ試験片に対して、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度(Izod impact strength、notched)を測定した。
【0073】
(4)サンディング特性(摩耗量)(単位:重量%)
100mm×100mm×3.2mmの大きさの試験片を、常温で24時間安定化させた後、耐磨耗評価装置(製造会社:Taber Industries、モデル名:Taber(登録商標)Rotary Abraser 5135)を用いて、1kgf荷重、研摩機回転速度70rpmの条件下で40分間摩耗評価を行い、試験片の摩耗量を評価前後の試験片の重量差を用いて計算した。摩耗量が多いほどサンディング(sanding)容易性に優れていると判断した。
【0074】
(5)表面外観
試験片表面にガスシルバー(silver streak)および/または白化(whitening)発生しているかどうかを、肉眼で見て評価した。ガスシルバーおよび/または白化発生がない場合、○と判定し、発生した場合×と判定した。
【0075】
【表2】
【0076】
実施例2および比較例1の摩耗評価前/後の試験片表面の光学顕微鏡写真を、図1~4に示した。
【0077】
図1および2は、それぞれ、実施例2の摩耗量評価前/後の試験片表面を示す光学顕微鏡写真であり、図3および4は、それぞれ、比較例1の摩耗量評価前/後の試験片表面を示す光学顕微鏡写真である。
【0078】
表1~2および図1~4を参照すれば、実施例1~2による熱可塑性樹脂組成物の場合、優れた耐衝撃性および耐熱性を維持しながら、表面外観改善と同時にサンディング容易性が向上して、成形品の外観品質および作業容易性と生産性とがともに向上したことが確認できる。これは、実施例1~2による熱可塑性樹脂組成物内に含有されている無機粒子が、成形品表面に微細な凹凸を形成してサンディング容易性が優秀になったと理解される。
【0079】
以上で、本発明を前述のとおり好ましい実施例を通じて説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲の概念と範囲とを逸脱しない限り、多様な修正および変形が可能であることを、本発明が属する技術分野における従事者は簡単に理解できるだろう。
図1
図2
図3
図4