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特許7260337電気めっき電流制御方法及び電気めっき電流制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】電気めっき電流制御方法及び電気めっき電流制御装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/12 20060101AFI20230411BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20230411BHJP
   C25D 21/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C25D21/12 M
C25D7/06 K
C25D7/06 N
C25D21/00 J
C25D21/12 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019037748
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020139218
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 功司
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
(72)【発明者】
【氏名】山本 昇一
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-202950(JP,A)
【文献】特開2004-131786(JP,A)
【文献】特開2004-068130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/12
C25D 7/06
C25D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき材の進行方向に沿って配置されると共に所定長さの複数のパスに分割されためっきラインを備えた電気めっき設備への供給電流を制御する電気めっき電流制御方法であって、
前記被めっき材が既に通過した前記パスであって前記被めっき材の目付のための電流が供給される前記パスである一又は複数の使用パスにおける目付量と、既に通過した前記パスであって前記使用パスでない一又は複数の非使用パスにおける目付量とを考慮して、前記被めっき材が通過する前の前記パスである一又は複数の未通過パスにおける前記めっき電極への供給電流値を導出することを含み、
前記非使用パスにおける目付量は、前記非使用パスにおける前記めっき電極への供給電流として予め定められたベース電流の電流値に応じて導出され、
前記被めっき材の第1領域が一の前記パスを通過する毎に、前記第1領域における目標目付量から、前記第1領域について既に目付が完了している完了目付量を差し引いた残り目付量を導出し、該残り目付量を充足する必要総電流を導出すると共に、該必要総電流に基づき、一又は複数の前記未通過パスから、前記被めっき材の目付のための電流が供給される前記パスである一又は複数の使用予定パスを特定する工程と、
特定された一又は複数の前記使用予定パスの情報に基づき、一又は複数の前記未通過パスそれぞれにおける前記めっき電極への供給電流値を導出する工程と、
導出された前記供給電流値に基づき、前記被めっき材が次に通過する次パスにおいて前記めっき電極に供給される電流を設定する工程と、を備え、
前記供給電流値を導出する工程では、
一又は複数の前記使用予定パスの情報に基づき、
一又は複数の前記使用予定パスについては、前記必要総電流に基づく目付量に応じて、前記めっき電極に供給される前記供給電流値を導出し、
前記未通過パスのうち、前記使用予定パスでない一又は複数の非使用予定パスについては、前記ベース電流の電流値を、前記めっき電極に供給される前記供給電流値として導出し、
前記使用予定パスを特定する工程では、
一又は複数の前記使用パスにおける目付量の合算値と、一又は複数の前記非使用パスにおける前記ベース電流の供給に応じた目付量の合算値とを合算した値を前記完了目付量として、前記残り目付量を導出し、
前記使用予定パスを特定する工程では、
前記非使用予定パスにおける前記ベース電流に応じた想定目付量を考慮して、一又は複数の前記使用予定パスを特定する、電気めっき電流制御方法。
【請求項2】
前記使用予定パスを特定する工程では、
前記残り目付量から前記想定目付量を差し引いた値を再算出残り目付量として導出し、該再算出残り目付量を充足する前記必要総電流を導出し、一又は複数の前記使用予定パスを特定する、請求項記載の電気めっき電流制御方法。
【請求項3】
前記使用予定パスを特定する工程では、
前記被めっき材の搬送速度が変化した場合において、前記ベース電流の値を前記搬送速度の変化に応じて補正し、更に補正されたベース電流の値から前記想定目付量を導出する、請求項1又は2記載の電気めっき電流制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっき電流制御方法及び電気めっき電流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、めっき電極を収納するめっき槽が被めっき材の進行方向に沿って並べて配置されためっきラインを備えた電気めっき設備において、被めっき材が加減速するときの必要電流の増減に応じて、使用するめっき電極数及び使用するめっき電極に流す電極電流をそれぞれ増減させることにより、所望の目付量の実現を図った電気めっき電流制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-202950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した特許文献1では、使用しないめっき電極に電流を流していない。しかしながら、使用しないめっき電極に電流を流さない場合には、該めっき電極にめっき材が析出し、析出しためっき材が被めっき材に付着して欠陥となってしまうおそれがある。そこで、実際の電気めっき設備においては、使用しないめっき電極に対して一定の小電流(以下「BASE電流」又は「ベース電流」と記載する場合がある)を流している。小電流であるものの、BASE電流を流すことによっても、目付量が変化(詳細には、目付量が増加)する。
【0005】
この点、上述した特許文献1に記載された技術では、BASE電流を流すことによる目付量の変化が考慮されていないことから、目標目付量よりも最終製品のめっきが厚くなってしまうおそれがある。近年、めっきラインの高速化が進み、めっき電極数が増加しているため、目付量の幅(最薄目付と最厚目付との差)が大きくなっている。薄目付を行う場合においては、使用しない電極が多数を占めるため、特許文献1のようにBASE電流を考慮しない場合には、目標目付量よりも最終製品のめっきが厚くなるという現象がより顕著に現れることとなる。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、所望の目付量を実現可能な電気めっき電流制御方法及び電気めっき電流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電気めっき電流制御方法は、被めっき材の進行方向に沿って配置されると共に所定長さの複数のパスに分割されためっきラインを備えた電気めっき設備への供給電流を制御する電気めっき電流制御方法であって、被めっき材が既に通過したパスであって被めっき材の目付のための電流が供給されるパスである一又は複数の使用パスにおける目付量と、既に通過したパスであって使用パスでない一又は複数の非使用パスにおける目付量とを考慮して、被めっき材が通過する前のパスである一又は複数の未通過パスにおけるめっき電極への供給電流値を導出することを含み、非使用パスにおける目付量は、非使用パスにおけるめっき電極への供給電流として予め定められたベース電流の電流値に応じて導出される。
【0008】
このような電気めっき電流制御方法では、使用パスにおける目付量だけでなく、ベース電流が供給される未使用パスにおける目付量(ベース電流に応じた目付量)が考慮されて、めっき電極への供給電流値が導出される。このように、ベース電流によって生じる目付量を加味して供給電流値が導出されることによって、ベース電流による厚目付を抑制することができ、所望の目付量を実現することができる。
【0009】
上記制御方法は、被めっき材の第1領域が一のパスを通過する毎に、第1領域における目標目付量から、第1領域について既に目付が完了している完了目付量を差し引いた残り目付量を導出し、該残り目付量を充足する必要総電流を導出すると共に、該必要総電流に基づき、一又は複数の未通過パスから、被めっき材の目付のための電流が供給されるパスである一又は複数の使用予定パスを特定する工程と、特定された一又は複数の使用予定パスの情報に基づき、一又は複数の未通過パスそれぞれにおけるめっき電極への供給電流値を導出する工程と、導出された供給電流値に基づき、被めっき材が次に通過する次パスにおいてめっき電極に供給される電流を設定する工程と、を備え、供給電流値を導出する工程では、一又は複数の使用予定パスの情報に基づき、一又は複数の使用予定パスについては、必要総電流に基づく目付量に応じて、めっき電極に供給される供給電流値を導出し、未通過パスのうち、使用予定パスでない一又は複数の非使用予定パスについては、ベース電流の電流値を、めっき電極に供給される供給電流値として導出し、使用予定パスを特定する工程では、一又は複数の使用パスにおける目付量の合算値と、一又は複数の非使用パスにおけるベース電流の供給に応じた目付量の合算値とを合算した値を完了目付量として、残り目付量を導出してもよい。このように、目標目付量と完了目付量とから残り目付量を導出するに際し、非使用パスにおけるベース電流の供給に応じた目付量を完了目付量に加味することにより、ベース電流によって生じる目付量を確実に加味して供給電流値を導出することができる。
【0010】
上記制御方法において、使用予定パスを特定する工程では、非使用予定パスにおけるベース電流に応じた想定目付量を考慮して、一又は複数の使用予定パスを特定してもよい。非使用パスにおけるベース電流を考慮して供給電流値を導出する場合においては、被めっき材が既に通過したパス(通過パス)のベース電流の供給に応じた目付量については適切に考慮することができるものの、今後通過するパス(未通過パス)のベース電流の供給に応じた目付量については通過速度が未確定であるため考慮することができない。このため、例えば、以降に使用パスがない区間において供給電流値の導出がなされない態様においては、最後の使用パス以降の非使用予定パスにおけるベース電流の供給に応じた目付量が考慮されずに供給電流値が導出されるため、最後の使用パス以降の非使用パスのベース電流によって厚目付が生じてしまうおそれがある。この点、非使用予定パスにおけるベース電流に応じた想定目付量を現在速度が継続した前提で考慮して使用予定パスが特定され供給電流値を導出することにより、最後の使用パス以降の非使用予定パスでの目付量も考慮して供給電流値が導出されることになり、最後の使用パス以降の非使用パスのベース電流によって厚目付が生じてしまうことを回避することができる。
【0011】
上記制御方法において、使用予定パスを特定する工程では、残り目付量から想定目付量を差し引いた値を再算出残り目付量として導出し、該再算出残り目付量を充足する必要総電流を導出し、一又は複数の使用予定パスを特定してもよい。このように、ベース電流に応じた想定目付量が差し引かれて再算出残り目付量が導出され使用予定パスが特定されることにより、最後の使用パス以降の非使用予定パスにおけるベース電流の供給に応じた目付量を確実に考慮して供給電流値を導出することができる。
【0012】
上記制御方法において、使用予定パスを特定する工程では、被めっき材の搬送速度が変化した場合において、ベース電流の値を搬送速度の変化に応じて補正し、更に補正されたBASE電流値から想定目付量を導出してもよい。このように、搬送速度の変化に応じてベース電流の値が変化されることにより、搬送速度が変化した場合においてもベース電流に応じた目付量を均一に保つことが可能になり、目付量の過不足が生じることを抑制できる。
【0013】
本発明の他の態様に係る電気めっき電流制御装置は、被めっき材の進行方向に沿って配置されると共に所定長さの複数のパスに分割されためっきラインを備えた電気めっき設備における電流制御装置(整流器)への供給電流を制御する電気めっき電流制御装置であって、被めっき材の目付量を同一長さの分割区間で管理し、その分割区間毎に被めっき材が既に通過したパスであって被めっき材の目付のための電流が供給されるパスである一又は複数の使用パスにおける目付量と、既に通過したパスであって使用パスでない一又は複数の非使用パスにおける目付量とを考慮して、被めっき材が通過する前のパスである一又は複数の未通過パスにおけるめっき電極への供給電流値を導出する導出部を備え、導出部は、非使用パスにおける目付量を、非使用パスにおけるめっき電極への供給電流として予め定められたベース電流の電流値に応じて導出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所望の目付量を実現可能な電気めっき電流制御方法及び電気めっき電流制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る電気めっき電流制御システムの概略構成を示す模式図である。
図2図1の電気めっき電流制御システムに含まれる電気めっき設備の概略構成を示す模式図である。
図3】制御装置のハードウェア構成図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る電気めっき電流制御処理の実行手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1実施形態に係る電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(a)は第1パスの計算位置における電流値算出結果を示す表、(b)は第1パスを示す図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(a)は第4パスの計算位置における電流値算出結果を示す表、(b)は第4パスを示す図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(a)は第5パスの計算位置における電流値算出結果を示す表、(b)は第5パスを示す図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(a)は第6パスの計算位置における電流値算出結果を示す表、(b)は第6パスを示す図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(a)は第7パスの計算位置における電流値算出結果を示す表、(b)は第7パスを示す図である。
図10】第2実施形態に係る電気めっき電流制御処理の実行手順を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態に係る電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(a)は第1パスの計算位置における電流値算出結果を示す表、(b)は第1パスを示す図である。
図12】第2実施形態に係る電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(a)は第2パスの計算位置における電流値算出結果を示す表、(b)は第2パスを示す図である。
図13】第3実施形態に係る電気めっき電流制御処理の実行手順を示すフローチャートである。
図14】第3実施形態に係る電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(a)は第3パスの計算位置における電流値算出結果を示す表、(b)は第3パスを示す図である。
図15】第3実施形態に係る電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(a)は第4パスの計算位置における電流値算出結果を示す表、(b)は第4パスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
<電気めっき電流制御システム>
まず、図1図3を参照して、第1実施形態に係る電気めっき電流制御システム1を説明する。図1は、第1実施形態に係る電気めっき電流制御システム1の概略構成を示す模式図である。
【0018】
図1に示されるように、電気めっき電流制御システム1は、電気めっき設備10と、制御装置50と、目付量設定器70と、速度設定器80とを備える。目付量設定器70及び速度設定器80は、制御装置50に所定の情報を出力することにより、制御装置50による電気めっき設備10の制御を可能にする構成である。詳細には、目付量設定器70は、被めっき材に対する目標目付量(めっきの付着量の目標値)を制御装置50に出力(設定)する。また、速度設定器80は、被めっき材の目標搬送速度(ライン速度)を制御装置50に出力(設定)する。
【0019】
(電気めっき設備)
図2は、電気めっき設備10の概略構成を示す模式図である。電気めっき設備10は、鋼板である被めっき材11の進行方向に沿って配置されると共に所定長さの複数のパスP(第1パスP1、第2パスP2、第3パスP3、第4パスP4、第5パスP5、第6パスP6、第7パスP7、第8パスP8、及び第9パスP9)に分割されためっきラインLを備えている。電気めっき設備10では、被めっき材11がめっきラインLを通過しながら、各パスPに設けられためっきセル13の一対の電極13a,13aに流れる電流に応じた目付がなされ、次工程へ送られる。めっきセル13においては、被めっき材11の両面(表面及び裏面)にめっきができるように、被めっき材11の表面及び裏面のそれぞれに対向して電極13a,13aが設けられている。被めっき材11は、電動機(不図示)に駆動力を付与されるブライドル(不図示)、及び、略等間隔に設けられた複数のコンダクターロール19a及びシンクロール19bにより搬送される。めっきセル13は、めっき槽14に収容されている。めっき槽14内にはめっき電解液が入っている。電極13a,13a、めっき電解液、被めっき材11、及びコンダクターロール19aに電流が流れることにより、被めっき材11に、各めっきセル13の物質或いは電解液中に含まれるめっき物質がめっきされる。
【0020】
めっきラインLは、略等間隔で、第1パスP1、第2パスP2、第3パスP3、第4パスP4、第5パスP5、第6パスP6、第7パスP7、第8パスP8、及び第9パスP9に分割されている。各パスPの制御区間は例えば互いに連続するコンダクターロール19a,シンクロール19b間(詳細にはコンダクターロール19a,シンクロール19bの計算位置CR間)とされている。また、図2に示されるように、被めっき材の分割区間は、例えば第1領域をトラッキングポイントTa~Tb、第2領域をトラッキングポイントTb~Tc、第3領域をトラッキングポイントTc~Td、第4領域をトラッキングポイントTd~Te、第5領域をトラッキングポイントTe~Tf、第6領域をトラッキングポイントTf~Tg、第7領域をトラッキングポイントTg~Th、第8領域をトラッキングポイントTh~Ti、第9領域をトラッキングポイントTi~Tjのように分割する。各パスPの上流側は、電流値を計算する計算位置CRとされている。また、各パスPのめっきセル13の電極13a上流端の位置は、計算位置CRにおいて算出された電流値が電気めっき設備10に設定される出力位置ORとされている。
【0021】
(制御装置)
図1に戻り、制御装置50の機能について説明する。制御装置50は、電気めっき設備10を制御する装置である。制御装置50は、取得部51と、記憶部52と、導出部53と、設定部54と、を備える。
【0022】
取得部51は、目付量設定器70から目標目付量を取得すると共に、速度設定器80から、被めっき材11の搬送速度であるライン速度を取得する。取得部51は、取得した目標目付量及びライン速度を記憶部52に格納する。取得部51は、所定の時間間隔で上記情報を取得してもよいし、目標目付量又はライン速度が変化した場合にのみこれらの情報を取得してもよい。
【0023】
導出部53は、各めっきセル13の電極13a,13a(めっき電極)への供給電流値を導出する。導出部53は、記憶部52から目標目付量及びライン速度を取得し、被めっき材11のトラッキングポイントTa~Tjが各パスPの計算位置CRを通過する毎に、各めっきセル13の電極13a,13a(めっき電極)への供給電流値を導出する。導出部53は、導出した各めっきセル13の電極13a,13aへの供給電流値を記憶部52に格納する。
【0024】
導出部53は、まず、被めっき材11の所定の領域における目標目付量から該所定の領域について既に目付が完了している完了目付量を差し引いた残り目付量を導出する。つづいて、導出部53は、残り目付量を充足する(残り目付量分だけ目付を行うことができる)必要総電流を導出する。つづいて、導出部53は、必要総電流に基づき、一又は複数の未通過パスから一又は複数の使用予定パスを特定する。未通過パスとは、被めっき材11が通過する前(被めっき材11が今後通過する予定)のパスPである。未通過パスには、上述した使用予定パスと、非使用予定パスとが含まれている。使用予定パスとは、被めっき材11の目付のための電流が供給される予定のパスPである。非使用予定パスとは、使用予定パスでないパスPである。なお、非使用予定パスにも、一定の小電流(BASE(ベース)電流)が供給されるが、該BASE電流は、電極13a,13aにめっき材が析出することを抑制するための電流である。よって、「被めっき材11の目付のための電流」には、BASE電流は含まれず、非使用予定パスは、使用予定パス(被めっき材11の目付のための電流が供給される予定のパスP)とは異なる。そして、導出部53は、特定された一又は複数の使用予定パスの情報に基づき、一又は複数の未通過パス(使用予定パス及び未使用予定パスの双方を含みうる一又は複数のパスP)それぞれにおける電極13a,13aへの供給電流値を導出する。
【0025】
上述した残り目付量の導出について詳細に説明する。導出部53は、被めっき材11が既に通過したパスPであって被めっき材11の目付のための電流が供給されたパスPである一又は複数の使用パスにおける目付量と、被めっき材11が既に通過したパスPであって上述した使用パスでない一又は複数の非使用パスにおける目付量とを考慮して、残り目付量を導出する。各使用パスにおける目付量は、目標目付量とパスP毎の重みとに基づき設定されるものである(詳細は後述)。非使用パスにおける目付量は、非使用パスにおける電極13a,13aへの供給電流として予め定められたBASE電流の電流値に応じて導出される。導出部53は、各使用パスにおける目付量の合算値と、各非使用パスにおけるBASE電流の供給に応じた目付量の合算値とを合算した値を完了目付量として導出し、目標目付量から該完了目付量を差し引くことによって残り目付量(今後、使用予定パス及び非使用予定パスにおいて目付される量)を導出する。
【0026】
上述した未通過パスそれぞれにおける電極13a,13aへの供給電流値の導出について詳細に説明する。導出部53は、特定された一又は複数の使用予定パスの情報に基づき、一又は複数の使用予定パスについては、上述した必要総電流に基づく目付量に応じて、電極13a,13aに供給される供給電流値を導出し(詳細は後述)、一又は複数の非使用予定パスについては、BASE電流の電流値を、電極13a,13aに供給される供給電流値として導出する。
【0027】
設定部54は、導出部53によって導出された供給電流値に基づき、被めっき材11が次に通過するパスPである次パスにおいて電極13a,13aに供給される電流を設定する。設定部54は、次パスのめっきセル13の電極13a,13aへの供給電流値を記憶部52から取得し、該電極13a,13aに供給される電流を設定する。
【0028】
図3は、制御装置50のハードウェア構成図である。図3に示されるように、制御装置50は、一つ又は複数のプロセッサ103と、メモリ104と、ストレージ105と、入出力ポート106と、を有する回路100により構成される。入出力ポート106は、電気めっき設備10、目付量設定器70、及び速度設定器80との間で制御信号の入出力を行う。ストレージ105は、支援効果計算機3による処理を実行させるためのプログラムを記録している。ストレージ105は、コンピュータ読み取り可能であればどのようなものであってもよい。具体例として、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等が挙げられる。メモリ104は、ストレージ105からロードしたプログラム及びプロセッサ103の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ103は、メモリ104と協働してプログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。
【0029】
なお、制御装置50のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば制御装置50の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0030】
<電気めっき電流制御処理の実行手順>
次に、図4を参照して、制御装置50が行う電気めっき電流制御処理(制御方法)の実行手順について詳細に説明する。
【0031】
図4に示されるように、制御装置50の取得部51は、最初に、目付量設定器70から目標目付量を取得する(ステップS1)。また、取得部51は、速度設定器80からライン速度を取得する。取得部51は、取得した目標目付量及びライン速度を記憶部52に格納する。
【0032】
つづいて、制御装置50の導出部53は、トラッキングポイントTa~Tjが各パスPの計算位置CRを通過すると(ステップS2)、目標目付量から完了目付量を差し引いた残り目付量を算出する(ステップS3)。具体的には、導出部53は、記憶部52から目標目付量を取得すると共に、各使用パスにおける目付量の合算値と各非使用パスにおけるBASE電流の供給に応じた目付量の合算値とを合算した値を完了目付量として導出し、目標目付量から完了目付量を差し引いて残り目付量を算出する。
【0033】
つづいて、導出部53は、以下の(1)式から、残り目付量Fに応じた必要総電流Iを算出する(ステップS4)。導出部53は、必要総電流の導出に際して、記憶部52からライン速度Vを取得する。なお、係数Kは所定値であり、被めっき材11の幅W及びめっき効率Eについても制御処理中において変化することがない所定値であるとする。
I=K*F*W*V/E (1)
I:必要総電流(A)、K:係数、F:残り目付量(g/m2)、W:被めっき材11の幅(mm)、V:ライン速度(mpm)、E:めっき効率(%)
【0034】
つづいて、導出部53は、以下の(2)式を満たすように、使用パス数mを決定する(ステップS5)。すなわち、導出部53は、使用パス数mを、必要総電流を満たす最小の数とする。各パスPの起動優先順位及び負担割合Bnについては予め定められている。
Σn=1~m-1(iR*Bn)<I<Σn=1~m(iR*Bn) (2)
m:使用パス数、iR:各パスの定格電流(A)、I:必要総電流(A)、Bn:起動優先順位n番目のパスPの負担割合(LOAD RATIO)
【0035】
つづいて、導出部53は、被めっき材11のトラッキングポイントTa~Tjがこれから通過するパスPである次パスが使用パスであるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6において、次パスが使用パスである場合には、導出部53は、以下の(3)式から、次電極13a,13aでの目付量fを算出する(ステップS7)。
f=F*Bnx/Bna (3)
f:次電極13a,13aの目付量(g/m2)、F:残り目付量(g/m2)、Bnx:次パスの負担割合、Bna:使用パス全ての負担割合の合計
【0036】
つづいて、導出部53は、以下の(4)式から、次電極13a,13aへの供給電流値iを算出する(ステップS8)。
i=K*f*W*V/E (4)
i:次電極13a,13aへの供給電流値(A)、K:係数、F:次電極13a,13aの目付量(g/m2)、W:被めっき材11の幅(mm)、V:ライン速度(mpm)、E:めっき効率(%)
【0037】
ステップS6において、次パスが使用パスではなく非使用パスである場合には、制御装置50の設定部54は、次電極13a,13aにBASE電流が流れるように電流値を設定する(ステップS9)。なお、導出部53は、次パスの電流値だけでなく、同様にして他の未通過パスそれぞれの電流値を導出し、算出結果(例えば図5(a)参照)を記憶部52に格納してもよい。図5(a)に示されるように、算出結果においては、各パスPについて、起動優先順位、負担割合、使用予定パスであるか(図5中の「ON」)非使用予定パスであるか(図5中の「BASE」)を示す情報、供給電流値、及び、供給電流値に応じた目付量の割合が対応付けられている。
【0038】
つづいて、導出部53は、被めっき材11のトラッキングポイントTa~Tjが各パスPの出力位置ORを通過したか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10において出力位置ORを通過したと判定された場合には、導出部53は、前述にて算出・設定された電流値又はBASE電流値を電流制御装置(整流器)に出力する(ステップS11)。そして、まだ供給電流値を設定していない使用パスがないかを判定する(ステップS12)。ステップS12において供給電流値を設定していない使用パスがないと判定された場合には、処理が終了する。一方で、ステップS12において供給電流値を設定していない使用パスがあると判定された場合には、導出部53は、各使用パスにおける目付量の合算値と各非使用パスにおけるBASE電流の供給に応じた目付量の合算値とを合算した値を完了目付量として導出し(ステップS13)、再度ステップS2以降の処理が行われる。以上が、制御装置50が行う電気めっき電流制御処理(制御方法)の実行手順である。
【0039】
<電気めっき電流制御処理の一例>
次に、図5図9を参照して、電気めっき電流制御処理の一例(具体例)について説明する。図5図9は、電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(b)は被めっき材のトラッキングポイントTaがどのパスPの計算位置CRにおける処理であるかを示しており、(a)は(b)に示されるトラッキングポイントTaにおける各パスPについての電流値算出結果を示している。図5は第1パスP1、図6は第4パスP4、図7は第5パスP5、図8は第6パスP6、図9は第7パスP7に関する情報を示している。なお、以下に述べる計算例における数値は錫めっきの例としている。
【0040】
最初に、図5(b)に示されるトラッキングポイントTaが第1パスP1の計算位置CRに到達した際の処理の具体例について説明する。例えば、導出部53は、記憶部52を参照し、目標目付量:2.800(g/m2)を取得する。第1パスP1であるので、導出部53は、残り目付量=目標目付量=2.800(g/m2)を算出する。導出部53は、上述した(1)式から、必要総電流を算出する。係数K:2.71、残り目付量F:2.800(g/m2)、被めっき材11の幅W:1000(mm)、ライン速度V:200(mpm)、めっき効率E:90(%)である場合、(1)式より、導出部53は、以下のとおり必要総電流を算出する。
必要総電流I=2.71*2.8*1000*200/90=16862.2(A)
【0041】
つづいて、導出部53は、上述した(2)式から、全9パスのうち、起動優先順位が高い5つのパスP(第1パスP1、第8パスP8、第2パスP2、第7パスP7、及び第3パスP3)を使用予定パスとして特定し、その他のパスP(第4パスP4、第5パスP5、第6パスP6、及び第9パスP9)を非使用予定パスとして特定する(図5(a)参照)。
【0042】
つづいて、導出部53は、上述した(3)式から、次パスであって使用予定パスである第1パスP1の電極13a,13aにおける目付量を算出する。図5(a)に示されるように、次パスである第1パスP1の負担割合Bnx:80、使用予定パス全ての負担割合の合計Bna:380(80+70+80+70+80)である場合、(3)式より、導出部53は、以下のとおり第1パスP1の電極13a,13aにおける目付量を算出する。
第1パスP1の目付量f1=2.8*80/380=0.5895(g/m2)
【0043】
つづいて、導出部53は、上述した(4)式から、第1パスP1の電極13a,13aへの供給電流値iを算出する。なお、係数K等の条件は上述したものと同じであるとする。
第1パスP1の供給電流値i1=2.71*0.589*1000*200/90≒3549.9(A)
【0044】
導出部53は、被めっき材のトラッキングポイントTaにおいて、次パスである第1パスP1だけでなく、他のトラッキングポイントTb~Tjそれぞれの計算位置CRにおける次パスへの供給電流値についても導出し、電流値算出結果を出力する。設定部54は、第1パスP1の電極13a,13aの電流値として供給電流値i1≒3549.9(A)を設定する。制御装置50は、第2パスP2及び第3パスP3の計算位置CRをそれぞれ通過するトラッキングポイントTb~Tjについても、同様の処理を行い、第2パスP2の電極13a,13aへの供給電流値の設定、及び、第3パスP3の電極13a,13aへの供給電流値の設定を行う。
【0045】
つづいて、図6(b)に示される第4パスP4の計算位置CRにおいては、導出部53は、まず、通過パスである第1パスP1、第2パスP2、及び第3パスP3での目付量の合算値を完了目付量:1.768(g/m2)として導出し、目標目付量:2.800(g/m2)から完了目付量:1.768(g/m2)を差し引き、残り目付量:1.032(g/m2)を算出する。そして、導出部53は上述した(1)式から、必要総電流I=2.71*1.032*1000*200/90=6212.4(A)を算出し、(2)式から、2つのパスP(第7パスP7及び第8パスP8)を使用予定パスとして特定し、その他のパスP(第4パスP4、第5パスP5、第6パスP6、及び第9パスP9)を非使用予定パスとして特定する(図6(a)参照)。図6(a)に示されるように、第4パスP4は非使用予定パスであるので、設定部54は、BASE電流の電流値を、第4パスP4の電極13a,13aへの供給電流値として設定する。
【0046】
つづいて、図7(b)に示される第5パスP5の計算位置CRにおいては、導出部53は、まず、1つ前に通過した非使用パスである第4パスP4での目付量を算出する。非使用パスの目付量は、上述した(1)式を変形することにより算出され、いま、BASE電流:200(A)であるので、非使用パスでの目付量fb=200*90/(2.71*1000*200)=0.033(g/m2)と算出される。導出部53は、第4パスP4での残り目付量:1.032(g/m2)から非使用パスでの目付量fb:0.033(g/m2)を差し引き、残り目付量:0.998(g/m2)を算出する。そして、導出部53は上述した(1)式から、必要総電流I=2.71*0.998*1000*200/90=6012.4(A)を算出し、(2)式から、2つのパスP(第7パスP7及び第8パスP8)を使用予定パスとして特定し、その他のパスP(第5パスP5、第6パスP6、及び第9パスP9)を非使用予定パスとして特定する(図7(a)参照)。図7(a)に示されるように、第5パスP5は非使用予定パスであるので、設定部54は、BASE電流の電流値:200(A)を、第5パスP5の電極13a,13aへの供給電流値として設定する。
【0047】
つづいて、図8(b)に示される第6パスP6の計算位置CRにおいては、導出部53は、まず、1つ前に通過した非使用パスである第5パスP5での目付量を算出する。非使用パスの目付量は、上述した(1)式を変形することにより算出され、いま、BASE電流:200(A)であるので、非使用パスでの目付量fb=200*90/(2.71*1000*200)=0.033(g/m2)と算出される。導出部53は、第5パスP5での残り目付量:0.998(g/m2)から非使用パスでの目付量fb:0.033(g/m2)を差し引き、残り目付量:0.965(g/m2)を算出する。そして、導出部53は上述した(1)式から、必要総電流I=2.71*0.965*1000*200/90=5812.4(A)を算出し、(2)式から、2つのパスP(第7パスP7及び第8パスP8)を使用予定パスとして特定し、その他のパスP(第6パスP6及び第9パスP9)を非使用予定パスとして特定する(図8(a)参照)。図8(a)に示されるように、第6パスP6は非使用予定パスであるので、設定部54は、BASE電流の電流値:200(A)を、第6パスP6の電極13a,13aへの供給電流値として設定する。
【0048】
つづいて、図9(b)に示される第7パスP7の計算位置CRにおいては、導出部53は、まず、第6パスP6での残り目付量:0.965(g/m2)から1つ前の非使用パスでの目付量fb:0.033(g/m2)を差し引き、残り目付量:0.932(g/m2)を算出する。そして、導出部53は上述した(1)式から、必要総電流I=2.71*0.932*1000*200/90=5612.4(A)を算出し、(2)式から、2つのパスP(第7パスP7及び第8パスP8)を使用予定パスとして特定し、その他のパスP(第9パスP9)を非使用予定パスとして特定する(図9(a)参照)。導出部53は、上述した(3)式から、次パスであって使用予定パスである第7パスP7の電極13a,13aにおける目付量を算出する。図9(a)に示されるように、次パスである第7パスP7の負担割合Bnx:70、使用予定パス全ての負担割合の合計Bna:140(70+70)である場合、(3)式より、導出部53は、第7パスP7の目付量f=0.932*70/140=0.466(g/m2)を算出する。そして、導出部53は、上述した(4)式から、第7パスP7の供給電流値i=2.71*0.466*1000*200/90≒2806.2(A)を算出する。設定部54は、第7パスP7の電極13a,13aの電流値として供給電流値i≒2806.2(A)を設定する。制御装置50は、トラッキングポイントTaが第8パスP8の計算位置CRに到達した際も、同様の処理を行う。そして、図9(a)に示されるように、第8パスP8が最後の使用パスであるので、以降は電流値算出処理が行われず、電流値の設定(非使用予定パスである第9パスP9の供給電流値:200(A)の設定)のみが行われる。なお、上述の各パス通過中にライン速度が変化した場合、使用パスの電流は、(4)式よりライン速度Vの変化に応じて変化する。この結果ライン速度が変化してもパス通過中の予定目付量は確保される。
【0049】
<作用効果>
次に、第1実施形態に係る電気めっき電流制御方法の作用効果について、説明する。
【0050】
電気めっき設備においては、使用しない(目付のための電流を積極的には流さない)電極についても、めっき材が付着することを抑制する観点から、一定の小電流(BASE電流)が流される。このようなBASE電流によっても、被めっき材の目付量が増加するものの、従来、BASE電流を流すことによる目付量の変化は考慮されずに、電極への供給電流値が決定されている。このことで、目標目付量よりも最終製品のめっきが厚くなってしまうおそれがある。近年、めっきラインの高速化が進み、めっき電極数が増加していることに加えて、目付量の幅(最薄目付と最厚目付との差)が大きくなっている。薄目付を行う場合においては、使用しない電極が多数を占めるため、特許文献1のようにBASE電流を考慮しない場合には、目標目付量よりも最終製品のめっきが厚くなるという現象がより顕著に現れることとなり、BASE電流による目付量が無視できなくなる。
【0051】
このような課題に対して、本実施形態に係る電気めっき電流制御方法は、被めっき材11の進行方向に沿って配置されると共に所定長さの複数のパスPに分割されためっきラインLを備えた電気めっき設備10への供給電流を制御する電気めっき電流制御方法であって、被めっき材11が既に通過したパスPであって被めっき材11の目付のための電流が供給されるパスPである一又は複数の使用パスにおける目付量と、既に通過したパスPであって使用パスでない一又は複数の非使用パスにおける目付量とを考慮して、被めっき材11が通過する前のパスPである一又は複数の未通過パスにおける電極13a,13aへの供給電流値を導出することを含み、非使用パスにおける目付量は、非使用パスにおける電極13a,13aへの供給電流として予め定められたBASE電流の電流値に応じて導出される。このような電気めっき電流制御方法では、使用パスにおける目付量だけでなく、BASE電流が供給される未使用パスにおける目付量(BASE電流に応じた目付量)が考慮されて、電極13a,13aへの供給電流値が導出される。このように、BASE電流によって生じる目付量を加味して供給電流値が導出されることによって、BASE電流による厚目付を抑制することができ、所望の目付量を実現することができる。
【0052】
本実施形態に係る電気めっき電流制御方法は、より詳細には、被めっき材11の所定の領域が一のパスPを通過する毎に、所定の領域における目標目付量から、所定の領域について既に目付が完了している完了目付量を差し引いた残り目付量を導出し、該残り目付量を充足する必要総電流を導出すると共に、該必要総電流に基づき、一又は複数の未通過パスから、被めっき材11の目付のための電流が供給されるパスPである一又は複数の使用予定パスを特定する工程と、特定された一又は複数の使用予定パスの情報に基づき、一又は複数の未通過パスそれぞれにおける電極13a,13aへの供給電流値を導出する工程と、導出された供給電流値に基づき、被めっき材11が次に通過する次パスにおいて電極13a,13aに供給される電流を設定する工程と、を備え、供給電流値を導出する工程では、一又は複数の使用予定パスの情報に基づき、一又は複数の使用予定パスについては、必要総電流に基づく目付量に応じて、電極13a,13aに供給される供給電流値を導出し、未通過パスのうち、使用予定パスでない一又は複数の非使用予定パスについては、BASE電流の電流値を、電極13a,13aに供給される供給電流値として導出し、使用予定パスを特定する工程では、一又は複数の使用パスにおける目付量の合算値と、一又は複数の非使用パスにおけるBASE電流の供給に応じた目付量の合算値とを合算した値を完了目付量として、残り目付量を導出する。このように、目標目付量と完了目付量とから残り目付量を導出するに際し、非使用パスにおけるBASE電流の供給に応じた目付量を完了目付量に加味することにより、BASE電流によって生じる目付量を確実に加味して供給電流値を導出することができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電気めっき電流制御方法について、図10図12を参照して説明する。以下の説明では、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0054】
第2実施形態に係る電気めっき電流制御方法は、使用予定パス数の特定に関して、第1実施形態に係る電気めっき電流制御方法と一部異なる処理を行う。具体的には、第2実施形態に係る電気めっき電流制御方法では、使用予定パス数を仮決定した後に、次パスを通過する前において、以降の非使用予定パスでの想定目付量(すなわちBASE電流に基づく目付量)を考慮して、使用予定パス数を再考する。
【0055】
図10は、第2実施形態に係る電気めっき電流制御処理の実行手順を示すフローチャートである。第2実施形態に係る電気めっき電流制御方法では、図4に示されるステップS5に相当する処理(使用パス数決定処理)として、図10に示されるステップS51~S55の処理が行われる。
【0056】
図10に示されるように、使用パス数決定処理では、制御装置50の導出部53は、最初に、使用パス数を仮決定する(ステップS51)。使用パス数は、例えば上記(2)式から仮決定される。つづいて、導出部53は、非使用予定パス(残りのBASE電流パス)における目付量を、現在速度を前提に算出する(ステップS52)。非使用予定パスの目付量は、上述した(1)式を変形することにより導出され、BASE電流に応じた値とされる。
【0057】
つづいて、導出部53は、非使用予定パス(BASE電流パス)における目付量を考慮して残り目付量を再算出する(ステップS53)。具体的には、残り目付量から非使用予定パスにおける目付量を差し引くことにより残り目付量を再算出する。つづいて、導出部53は、上記(1)式を用いて、再算出した残り目付量に基づき必要総電流を再算出する(ステップS54)。最後に、導出部53は、再算出した必要総電流に基づき、上記(2)式から使用予定パス数を決定(本決定)する(ステップS55)。
【0058】
図11及び図12を参照して、第2実施形態に係る電気めっき電流制御処理の一例(具体例)について説明する。図11及び図12は、電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(b)は被めっき材のトラッキングポイントTaがどのパスPの計算位置CRにおける処理であるかを示しており、(a)は(b)に示されるトラッキングポイントTaにおける各パスPについての電流値算出結果を示している。図11は第1パスP1、図12は第2パスP2に関する情報を示している。
【0059】
最初に、図11(b)に示されるトラッキングポイントTaが第1パスP1の計算位置CRに到達した際の処理の具体例について説明する。例えば、導出部53は、記憶部52を参照し、目標目付量:2.800(g/m2)を取得する。第1パスP1であるので、導出部53は、残り目付量=目標目付量=2.800(g/m2)を算出する。導出部53は、上述した(1)式から、必要総電流:16862.2(A)を導出する。
【0060】
つづいて、導出部53は、上述した(2)式から、全9パスのうち、起動優先順位が高い5つのパスP(第1パスP1、第8パスP8、第2パスP2、第7パスP7、及び第3パスP3)を使用予定パスとして仮決定し、その他のパスP(第4パスP4、第5パスP5、第6パスP6、及び第9パスP9)を非使用予定パスとして仮決定する。すなわち、導出部53は、使用予定パス数を「5つ」と仮決定する。
【0061】
つづいて、導出部53は、非使用予定パス(残りのBASE電流パス)における目付量を現在速度を前提に算出する。いま、BASE電流:200(A)であり、非使用予定パスが4つであるので、各非使用予定パスでの目付量の合計fbase=[200*(9-5)]*90/(2.71*1000*200)=0.133(g/m2)と算出される。
【0062】
つづいて、導出部53は、残り目付量:2.800(g/m2)から非使用予定パスにおける目付量の合計:0.133(g/m2)を差し引くことにより再算出された残り目付量:2.667(g/m2)を導出する。そして、導出部53は、再算出された残り目付量に基づき必要総電流を再算出し、必要総電流:16062.2(A)が再算出される。このようにして再算出された必要総電流は、非使用予定パスのBASE電流による目付量を考慮して再考されたものである。導出部53は、当該再算出された必要総電流に基づき、仮決定した使用予定パス数が正しいかを判定する。今回の場合は、再算出された必要総電流16062.2(A)であっても使用予定パス数は「5つ」となるため、仮決定時と同様に、使用予定パス数を「5つ」に決定する。そして、導出部53は、上述した(3)式から、次パスであって使用予定パスである第1パスP1の電極13a,13aにおける目付量を算出し、第1パスP1の目付量f1=2.667*80/380=0.562(g/m2)を導出する。そして、導出部53は、上述した(4)式から、第1パスP1の電極13a,13aへの供給電流値i=2.71*0.562*1000*200/90≒3381.5(A)を導出する。このように、非使用予定パスでの目付量を考慮して必要総電流を再算出することによって、考慮しない場合(第1実施形態)とは、供給電流値が異なっている。
【0063】
つづいて、図12(b)に示されるトラッキングポイントTaが第2パスP2の計算位置CRに到達した際は、導出部53は、残り目付量から必要総電流:13480.7(A)を算出し、上述した(2)式から使用予定パス数を1つ増やして「5つ」に仮決定する。この場合、上述した処理と同様に、導出部53は、まず、非使用予定パス(残りのBASE電流パス)における目付量を算出する。いま、BASE電流:200(A)であり、非使用予定パスが3つであるので、現在速度を前提とした各非使用予定パスでの目付量の合計fbase=[200*(8-5)]*90/(2.71*1000*200)=0.100(g/m2)と算出される。
【0064】
導出部53は、残り目付量:2.238(g/m2)から非使用予定パスにおける目付量の合計:0.100(g/m2)を差し引くことにより再算出された残り目付量:2.139(g/m2)を導出する。そして、導出部53は、再算出された残り目付量に基づき必要総電流を再算出し、必要総電流:12880.7(A)が再算出される。このようにして再算出された必要総電流は、非使用予定パスのBASE電流による目付量を考慮して再考されたものである。導出部53は、当該再算出された必要総電流に基づき、仮決定した使用予定パス数が正しいかを判定する。今回の場合は、再算出された必要総電流12680.7(A)であるため使用予定パス数は「4つ」となる。いま、仮決定していた使用予定パス数から変更になっているため、該変更後の使用予定パス数で再度計算が行われる。すなわち、導出部53は、非使用予定パスを4つとして、現在速度を前提とした各非使用予定パスでの目付量の合計fbase=[200*(8-4)]*90/(2.71*1000*200)=0.133(g/m2)を算出する。導出部53は、残り目付量:2.238(g/m2)から非使用予定パスにおける目付量の合計:0.133(g/m2)を差し引くことにより、残り目付量:2.106(g/m2)を再算出する。そして、導出部53は、再算出された残り目付量に基づき必要総電流を再算出し、必要総電流:12680.7(A)が再算出される。導出部53は、非使用予定パス数を「4つ」に決定し、使用予定パスの追加は不要であると判定する。そして、導出部53は、次パスであって使用予定パスである第2パスP2の電極13a,13aにおける目付量を算出し、第2パスP2の目付量f=2.667*80/300=0.562(g/m2)を導出する。そして、導出部53は、上述した(4)式から、第2パスP2の電極13a,13aへの供給電流値i=2.71*0.562*1000*200/90≒3381.5(A)を導出する。この場合、負担割合が互いに同じ使用パスである第1パスP1時点における第2パスP2への供給予定電流値及び第2パスP2の供給電流値が同じであり、算出結果が矛盾していないことが確認できる(図12(a)参照)。
【0065】
上述したように、第2実施形態に係る電気めっき電流制御方法では、使用予定パスを特定する工程において、非使用予定パスにおけるBASE電流に応じた現在速度を前提とした想定目付量を考慮して、一又は複数の使用予定パスが特定される。第1実施形態による非使用パスにおけるBASE電流を考慮して供給電流値を導出する場合においては、被めっき材11が既に通過したパス(通過パス)のBASE電流の供給に応じた目付量については適切に考慮することができるものの、今後通過するパス(未通過パス)のBASE電流の供給に応じた目付量については考慮することができない。このため、例えば、以降に使用パスがない区間において供給電流値の導出がなされない態様においては、最後の使用パス以降の非使用予定パスにおけるBASE電流の供給に応じた目付量が考慮されずに供給電流値が導出されるため、最後の使用パス以降の非使用パスのBASE電流によって厚目付が生じてしまうおそれがある。この点、非使用予定パスにおけるBASE電流に応じた現在速度を前提とした想定目付量が考慮されて使用予定パスが特定され供給電流値が導出されることにより、最後の使用パス以降の非使用予定パスでの目付量も考慮して供給電流値が導出されることになり、最後の使用パス以降の非使用パスのBASE電流によって厚目付が生じてしまうことを回避することができる。
【0066】
より詳細には、第2実施形態に係る電気めっき電流制御方法では、使用予定パスを特定する工程において、残り目付量からBASE電流による想定目付量を差し引いた値を再算出残り目付量として導出し、該再算出残り目付量を充足する必要総電流を導出し、一又は複数の使用予定パスを特定している。このように、BASE電流に応じた想定目付量が差し引かれて再算出残り目付量が導出され使用予定パスが特定されることにより、最後の使用パス以降の非使用予定パスにおけるBASE電流の供給に応じた目付量を確実に考慮して供給電流値を導出することができる。なお、上述の各パス通過中にライン速度が変化した場合、使用パスの電流は、(4)式よりライン速度Vの変化に応じて変化する。この結果ライン速度が変化してもパス通過中の予定目付量は確保される。
【0067】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る電気めっき電流制御方法について、図13図15を参照して説明する。以下の説明では、第1及び第2実施形態と異なる点を主に説明する。
【0068】
第3実施形態に係る電気めっき電流制御方法では、被めっき材11のライン速度が変化した場合において、BASE電流の値がライン速度の変化に応じて補正されて、予定されていたBASE電流による目付量を確保すると共に、以降の非使用予定パスでの目付量が補正されたBASE電流によって導出される。
【0069】
図13(a),(b)は、第3実施形態に係る電気めっき電流制御処理の実行手順を示すフローチャートである。第3実施形態に係る電気めっき電流制御方法では、図4に示されるステップS2及びステップS3の処理と並行して実施される処理として、図13(a)に示されるステップS401及びステップS402の処理(ライン速度記憶)が行われる。また、第3実施形態に係る電気めっき電流制御方法では、図4に示されるステップS9に相当する処理(BASE電流値設定)として、図13(b)に示されるステップS410の処理が行われる。
【0070】
図13(a)に示すように、トラッキングポイントTa~Tjが第1パスの計算位置CRを通過したときに(ステップS401)、初期ライン速度V0を記憶する処理ステップS402を実施する。なお、このとき、並行して、目標目付量から完了目付量を差し引いた残り目付量を算出する(ステップS3)。
【0071】
更に、図4におけるステップS6において次電極が使用でないと判定された場合には、図13(b)に示されるように、ライン速度に応じてBASE電流値を計算する。具体的には、下記式の通り、初期ライン速度に対する現在ライン速度の比でBASE電流を補正する。
ibase=ib0*V/V0 (5)
ibase:出力(BASE)電流値(A)、ib0:設定BASE電流値(A)、V:現在ライン速度(mpm)、V0:初期ライン速度(mpm)
【0072】
図14及び図15を参照して、第3実施形態に係る電気めっき電流制御処理の一例(具体例)について説明する。図14及び図15は、電気めっき電流制御処理を説明する図であり、(b)は被めっき材のトラッキングポイントTaがどのパスPの計算位置CRにおける処理であるかを示しており、(a)は(b)に示されるトラッキングポイントTaにおける各パスPについての電流値算出結果を示している。図14は第3パスP3、図15は第4パスP4に関する情報を示している。
【0073】
最初に、図14(b)に示されるトラッキングポイントTaが第3パスP3の計算位置CRに到達した際の処理の具体例について説明する。いま、第1パスP1の計算位置CRにおいて200(ライン速度の単位を省略して記載。以下同様)であったライン速度が、第3パスP3の計算位置CRにおいて230に加速しているとする。導出部53は、残り目付量:1.677(g/m2)を算出し、残り目付量から必要総電流:11614.1(A)を算出し、使用予定パス数を1つ追加し「4つ」に仮決定しているとする。
【0074】
導出部53は、ライン速度の変化に応じた速度補正を行った上で、非使用予定パス(残りのBASE電流パス)における目付量を算出する。いま、設定BASE電流:200(A)であり、非使用予定パスが4つであり、ライン速度が200から230に加速しているので、非使用予定パスへのBASE電流値は式(5)よりibase=200*230/200=230(A)であり、更に、各非使用予定パスでの目付量の合計fbase=[230*(7-4)]*90/(2.71*1000*230)=0.100(g/m2)と算出される。導出部53は、非使用予定パスでの目付量の合計を考慮して残り目付量1.577を再算出し、該残り目付量から必要総電流10924.1(A)を再算出する。このようにして再算出された必要総電流は、ライン速度の変化を考慮して再考されたものである。導出部53は、当該再算出された必要総電流に基づき、仮決定した使用予定パス数が正しいかを判定する。今回の場合は、再算出された必要総電流10924.1(A)であっても使用予定パス数は「4つ」となるため、仮決定時と同様に、使用予定パス数を「4つ」に決定する。そして、導出部53は、上述した(3)式から、次パスであって使用予定パスである第3パスP3の電極13a,13aにおける目付量を算出し、第3パスP3の目付量f=1.577*80/290=0.435(g/m2)を導出する。そして、導出部53は、上述した(4)式から、第3パスP3の電極13a,13aへの供給電流値i=2.71*0.435*1000*230/90≒3013.5(A)を導出する。
【0075】
つづいて、図15(b)に示される第4パスP4の計算位置CRでは、ライン速度が更に260に加速しているとする。導出部53は、残り目付量:1.677-0.435=1.242(g/m2)を算出し、残り目付量から必要総電流:9722.33(A)を算出し、使用予定パス数を「3つ」に仮決定する。
【0076】
導出部53は、ライン速度の変化に応じた速度補正を行った上で、非使用予定パス(残りのBASE電流パス)における目付量を算出する。いま、設定BASE電流:200(A)であり、非使用予定パスが4つであり、ライン速度が200から260に加速しているので、非使用予定パスへのBASE電流は式(5)よりibase=200*260/200=260(A)であり、更に、各非使用予定パスでの目付量の合計fbase=[260*(7-4)]*90/(2.71*1000*260)=0.100(g/m2)と算出される。導出部53は、非使用予定パスでの目付量の合計を考慮して残り目付量1.142を再算出し、該残り目付量から必要総電流8942.33(A)を再算出する。このようにして再算出された必要総電流は、ライン速度の変化を考慮して再考されたものである。導出部53は、当該再算出された必要総電流に基づき、仮決定した使用予定パス数が正しいかを判定する。今回の場合は、再算出された必要総電流8942.33(A)であっても使用予定パス数は「3つ」となるため、仮決定時と同様に、使用予定パス数を「3つ」に決定する。第4パスP4は、図15(a)に示されるように非使用予定パスであるため、供給電流値の算出は行われず、BASE電流が設定される。
【0077】
上述したように、第3実施形態に係る電気めっき電流制御方法では、BASE電流値を設定するする工程において、被めっき材11のライン速度が変化した場合において、BASE電流の値をライン速度の変化に応じて補正し、更に、補正されたBASE電流値から想定目付量を導出している。このように、ライン速度の変化に応じてBASE電流の値が変化されることにより、ライン速度が変化した場合においてもBASE電流に応じた目付量を均一に保つことが可能になり、目付量の過不足が生じることを抑制できる。
【符号の説明】
【0078】
11…被めっき材、13…めっきライン、13a,13a…電極(めっき電極)、50…制御装置(電気めっき電流制御装置)、P…パス。
図1
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