(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】建材パネルおよびその建材パネルを用いた接続構造体
(51)【国際特許分類】
E04C 2/30 20060101AFI20230411BHJP
E04C 2/34 20060101ALI20230411BHJP
E04C 2/292 20060101ALI20230411BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20230411BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20230411BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
E04C2/30 D
E04C2/34 G
E04C2/34 Q
E04C2/34 S
E04C2/292
E04B1/684 B
E04B2/56 604Z
E04B2/56 622J
E04B2/56 622C
E04B2/56 642E
E04B2/56 644B
E04F13/08 Y
(21)【出願番号】P 2019040906
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 直樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 一尚
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-300968(JP,A)
【文献】特開平06-336775(JP,A)
【文献】特開平06-002422(JP,A)
【文献】特開平07-108638(JP,A)
【文献】特開2013-091904(JP,A)
【文献】特開2005-016136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04C 2/26
E04C 2/30
E04F 13/08
E04F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の短尺端縁と該短尺端縁につながる一対の長尺端縁とによって取り囲まれた輪郭形状を有し、芯材を外皮材と内皮材とによって挟み込んだ積層構造からなるパネル本体を備え、
前記一対の短尺端縁側に他の建材パネルをそれぞれ隣接配置して短尺端縁同士を相互に突き合せる一方、前記一対の長尺端縁側に別の建材パネルをそれぞれ隣接配置して長尺端縁同士を向かい合わせに配置することにより建築構造物の接続構造体を構築する建材パネルであって、
前記一対の短尺端縁のうちの一の短尺端縁は、他の建材パネルの凹部に嵌合させて実継手を形成する凸部を有し、もう一の短尺端縁は、他の建材パネルの凸部を嵌合させて実継手を形成する凹部を有し、
前記一対の長尺端縁は、該長尺端縁に対して段下がりをなしてつながり、該段下がりにてカバーキャップの設置座面を形成する継手部を有し、前記設置座面は、前記カバーキャップの本体部分の裏側面に当接して該カバーキャップを前記パネル本体の外表面と面一状態に保持する少なくとも1本のリブを有することを特徴とする建材パネル。
【請求項2】
前記凸部、前記凹部は、前記芯材に隣接配置された樹脂ブロックを前記外皮材と前記内皮材とによって挟み込んだ積層構造からなることを特徴とする
請求項1に記載した建材パネル。
【請求項3】
前記外皮材、前記内皮材は、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、銅板またはそれらの塗装、被覆鋼板から選ばれるいずれか1種からなり、前記芯材は、発泡プラスチック系あるいは鉱物繊維系の断熱材からなることを特徴とする請求項1
または2に記載した建材パネル。
【請求項4】
前記継手部は、その突端面に、前記カバーキャップの脚部を嵌合させて該カバーキャップの本体部分を前記設置座面に固定保持する凹所を有することを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載した建材パネル。
【請求項5】
請求項4に記載された建材パネルを用いて構築された接続造体であって、
前記建材パネルの内皮材側を、ハット型部材が設置された取付け下地に向けるとともに、各建材パネルの継手部をそれぞれ該ハット型部材を挟んで突き合せ状態で位置せしめ、前記設置座面の少なくとも一箇所にドリルねじを打ち込んでパネル本体を取付け下地に固定し、該継手部の相互間に形成された隙間を通してカバーキャップの脚部を挿入、前記凹所に嵌合させて該カバーキャップの本体部分を前記設置座面に固定保持してなることを特徴とする建材パネルを用いた接続構造体。
【請求項6】
前記カバーキャップの本体部分は、前記設置座面を覆い隠す板状体からなり、該カバーキャップの脚部は、該板状体に片持ち状態で吊り下げ保持され、スプリングバックによって前記凹所に嵌合可能な一対の鉤状片からなることを特徴とする請求項5に記載した建材パネルを用いた接続構造体。
【請求項7】
前記隙間に止水用の環状ガスケットを配置してなることを特徴とする請求項5または6に記載した建材パネルを用いた接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物の屋根や壁等に用いて好適な建材パネルおよびその建材パネルを用いた接続構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二枚の金属板で断熱材を挟み込んだ積層構造からなるサンドイッチパネルは、軽量、高強度、高断熱、長尺材を効率的に製造できるメリットを有しており、工場や倉庫、一般住宅や集合住宅、店舗等の商業施設、あるいは畜舎等の建築構造物の外壁材や屋根材として広く採用されている。
【0003】
とくに、外観上パネルのつなぎ合わせ部分を隠すためにカバーキャップを使用するサンドイッチパネルとしては、例えば特許文献1が参照される。
【0004】
ところで、従来のサンドイッチパネルは、カバーキャップを固定するための部材を別途に用意する必要があり効率的な施工が実施できない不具合を有しており、また、カバーキャップそのものがサンドイッチパネルの外表面よりも外方へ突出して配置されることから、外観上好ましくないものであってその改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、部品点数を少なくし、パネルの外表面と同じ仕上がり面となるカバーキャップを確実に固定保持することができる建材パネルおよびその建材パネルを用いた接続構造体を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一対の短尺端縁と該短尺端縁につながる一対の長尺端縁とによって取り囲まれた輪郭形状を有し、芯材を外皮材と内皮材とによって挟み込んだ積層構造からなるパネル本体を備え、
前記一対の短尺端縁側に他の建材パネルをそれぞれ隣接配置して短尺端縁同士を相互に突き合せる一方、前記一対の長尺端縁側に別の建材パネルをそれぞれ隣接配置して長尺端縁同士を向かい合わせに配置することにより建築構造物の接続構造体を構築する建材パネルであって、
前記一対の短尺端縁のうちの一の短尺端縁は、他の建材パネルの凹部に嵌合させて実継手を形成する凸部を有し、もう一の短尺端縁は、他の建材パネルの凸部に嵌合させて実継手を形成する凹部を有し、
前記一対の長尺端縁は、該長尺端縁に対して段下がりをなしてつながり、該段下がりにてカバーキャップの設置座面を形成する継手部を有し、前記設置座面は、前記カバーキャップの本体部分の裏側面に当接して該カバーキャップを前記パネル本体の外表面と面一状態に保持する少なくとも1本のリブを有することを特徴とする建材パネルである。
【0008】
上記の構成からなる建材パネルにおいては、
1)前記継手部は、その突端面に、前記カバーキャップの脚部を嵌合させて該カバーキャップの本体部分を前記設置座面に固定保持する凹所を有すること、
2)前記凸部、前記凹部は、前記芯材に隣接配置された樹脂ブロックを前記外皮材と前記内皮材とによって挟み込んだ積層構造からなること、
3)前記外皮材、前記内皮材は、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、銅板またはそれらの塗装、被覆鋼板から選ばれるいずれか1種からなり、前記芯材は、発泡プラスチック系あるいは鉱物繊維系の断熱材からなること、が課題解決のための具体的手段として好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記の構成からなる建材パネルを用いて構築された接続造体であって、
前記建材パネルの内皮材側を、ハット型部材が設置された取付け下地に向けるとともに、各建材パネルの継手部をそれぞれ該ハット型部材を挟んで突き合せ状態で位置せしめ、前記設置座面の少なくとも一箇所にドリルねじを打ち込んでパネル本体を取付け下地に固定し、該継手部の相互間に形成された隙間を通してカバーキャップの脚部を挿入、前記凹所に嵌合させて該カバーキャップの本体部分を前記設置座面に固定保持してなることを特徴とする建材パネルを用いた接続構造体である。
【0010】
上記の接続構造体においては、前記カバーキャップの本体部分を、前記設置座面を覆い隠す板状体からなるものとし、該カバーキャップの脚部を、該板状体に片持ち状態で吊り下げ保持され、スプリングバックによって前記凹所に嵌合可能な一対の鉤状片からなるものとするのが好ましい。
【0011】
また、前記隙間には、止水用の環状ガスケットを配置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一対の長尺端縁に、長尺端縁に対して段下がりをなしてつながる継手部を設け、この段下がりにてカバーキャップの設置座面を形成するようにしたため、カバーキャップが取り付けられた状態では、カバーキャップは、建材パネルの外表面と面一となり美観が保たれる。
【0013】
また、本発明によれば、カバーキャップは、その脚部が継手部の突端面に設けられた凹所に嵌合することにより固定されるため、カバーキャップを固定するための下地部材は不要であり、建築構造物の屋根、壁等の接続構造体を効率的に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明にしたがう建材パネルの実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1に示した建材パネルのA-A矢視の拡大図であり、(b)は、
図1に示した建材パネルのB-B矢視の拡大図である。
【
図4】本発明にしたがう建材パネルのつなぎ合わせ状況を示した図である。
【
図5】(a)は、カバーキャップの表面側の外観斜視図であり、(b)は、カバーキャップの裏面側の外観斜視図である。
【
図6】本発明にしたがう建材パネルを用いて建築構造物の壁等の接続構造体を構築する構築要領の説明図である。
【
図7】本発明にしたがう建材パネルとカバーキャップとを用いて構築された接続構造体の一部分を示した外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう建材パネルの実施の形態を模式的に示した外観斜視図であり、
図2(a)(b)は、
図1に示した建材パネルのA-A矢視およびB-B矢視の拡大図であり、
図3は、
図1のC-C断面を示した図である。
【0016】
建築構造物の壁を構築するに当たっては、本発明にしたがう建材パネルを複数枚用いることが前提であり、本発明でいう他の建材パネル、別の建材パネルとは、本発明にしたがう建材パネルと同じ構成からなるものを意味している。建材パネルの幅寸法や長さは任意に変更し得るものであって、図示のものには限定されることはない。
【0017】
図1~3における符号1は、芯材Aを外皮材Bと内皮材Cとによって挟み込んだ積層構造からなるパネル本体である。パネル本体1は、一対の短尺端縁1a、1bと、この短尺端縁1a、1bにつながる長尺端縁1c、1dによって区画された輪郭形状を有している。
【0018】
芯材Aは、厚さ50~150mm程度の発泡プラスチック系あるいは鉱物繊維系の断熱材を用いることができ、外皮材B、内皮材Cは、厚さ0.2~1.0mm程度の亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、銅板またはそれらの塗装、被覆鋼板を用いることができる。芯材Aの厚さは、75mm程度とするのが好ましく、外皮材B、内皮材Cとしては、厚さ0.5mm程度なるものを用いるのが好ましい。外皮材Bは、壁等の外表面に位置するものであり、内皮材Cは、胴縁等の取付け下地側に位置するものである。
【0019】
また、符号2は、短尺端縁1aに設けられ、
図4に示すように、他の建材パネルの凹部3′に嵌合させて実継手を形成する凸部、3は、もう一方の短尺端縁1bに設けられ、他の建材パネルの凸部2′に嵌合させて実継手を形成する凹部である。凸部2、凹部3は、芯材Aに隣接配置された樹脂ブロックDを外皮材Bと内皮材Cとによって挟み込んだ積層構造にて構成され、これによりつなぎ合わせ部位の強度を高めることができるようになっている。凸部2は、凹部3に嵌合可能なサイズ、形状に、また、凹部3は、凸部2に嵌合可能なサイズ、形状に設定されるものであって、外皮材B、内皮材Cに成形加工を施すことにより形成される。
【0020】
また、符号4は、長尺端縁1c、1dに対して段下がりをなしてつながり、該段下がりにて後述するカバーキャップの設置座面dを形成する継手部である。継手部4は、その突端面4aにカバーキャップの脚部を嵌合させて該カバーキャップの本体部分を設置座面dに固定保持する凹所4bを有している。凹所4bとしては、V字型の傾斜壁を有するものを適用することができるが、断面形状は図示のものに限定されることはない。
【0021】
また、符号5は、設置座面dに設けられたリブである。リブ5は、カバーキャップの本体部分の裏側面に当接して該カバーキャップをパネル本体1の外表面と面一状態に保持する。リブ5は、ここでは、一つの継手部4につき、1本設けた場合について示したが、リブ5の本数は2本もしくは、2本以上設けることもできる。
【0022】
図5(a)(b)は、上記の構成からなる建材パネルを用いて壁等の接続構造体を構築する際に用いて好適なカバーキャップ6を模式的に示した外観斜視図である。カバーキャップ6としては、設置座面dを覆い隠す板状体からなる本体部分6aと、この本体部分6aの裏側面に片持ち状態で吊り下げ保持され、スプリングバックによって凹所4bに嵌合可能な鉤状片からなる脚部6bから構成されたものを適用することができる。カバーキャップ6は、単一の板材をT字状に曲げ加工を施して構成するのが好ましい。
【0023】
本発明にしたがう建材パネルと、上記のカバーキャップ6を用いて建築構造物の屋根、壁等の接続構造体を構築するには、
図6に示すように、建材パネルの内皮材側を、ハット型部材7が設置された取付け下地8に向けるとともに、各建材パネルの継手部4をそれぞれ該ハット型部材7を挟んで突き合せ状態で位置せしめる。そして、継手部4の設置座面dの一箇所もしくは複数個所にドリルねじを打ち込んでパネル本体1を取付け下地8に固定し、該継手部4の相互間に形成された隙間を通してカバーキャップ6の脚部6bを挿入して該脚部6bを凹所4bに嵌合させ、該カバーキャップ6の本体部分6aを設置座面dに固定保持すればよく、これにより下地部材を使用したり、建材パネルの外表面からカバーキャップが突出することのなしに接続構造体が構築される。
図7に、本発明にしたがう建材パネルとカバーキャップ6とを用いて構築された接続構造体の一部分の外観斜視図を示す。
【0024】
凹所4bをV字状の傾斜壁とし、カバーキャップ6の脚部6bを鉤状片とすることにより、該カバーキャップ6は、脚部6bが凹所4bに嵌合したとき、脚部6bの先端が凹所4bの傾斜壁に当接して抜け止め保持されることになる。
【0025】
カバーキャップ6を取り付けるに当たっては、それに先立ち、隙間に環状ガスケット9を配置することが可能であり、これにより止水性を高めることができる。
【0026】
ハット型部材7としては、外皮材B、内皮材Cと同材質からなり、組み付け状態で、その端縁がパネル本体1の内皮材Cに当接可能な折り返し部7aを有するものを用いることが可能であり、ハット型部材7と内皮材Cとの間に定型シーリング材11を設置することにより止水性を高めることができるが、止水性についてとくに問題がない場合には、ハット型部材7、定型シーリング材11の配置を省略することもできる。
【0027】
カバーキャップ6の本体部分6aと設置座面dとの間には、反発力で止水できる発泡系シリコーンからなる定型シーリング材10を配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、優れた断熱性、防水性、施工性を確保しながらも、下地部材を使用せずに平坦な外表面を有する屋根、壁等を効率的に構築し得る建材パネルおよびその建材パネルを用いた接続構造体が提供できる。
【符号の説明】
【0029】
1 パネル本体
1a、1b 短尺端縁
1c、1d 長尺端縁
2 凸部
3 凹部
4 継手部
4a 突端面
4b 凹所
5 リブ
6 カバーキャップ
6a 本体部分
6b 脚部
7 ハット型部材
7a 折り返し部
8 取付け下地
9 環状ガスケット
10 定型シーリング材
11 定型シーリング材
A 芯材
B 外皮材
C 内皮材
d 設置座面