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特許7260348散気システム及び散気システムの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】散気システム及び散気システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/20 20230101AFI20230411BHJP
【FI】
C02F3/20 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019050182
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020151628
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-034116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-78、3/00-34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理系統ごとに設けられた散気部と、
前記散気部へ気体を供給する主送風機を備える主送風部と、
前記主送風部と並列に設けられ、前記散気部へ気体を供給する副送風部と、を備えた散気システムであって、
前記副送風部は2以上の送風機が直列に接続されており、
前記主送風機よりも、前記副送風部の各送風機の圧力が低いことを特徴とする、散気システム。
【請求項2】
前記主送風部と、前記副送風部の圧力が等しいことを特徴とする、請求項1に記載の散気システム。
【請求項3】
前記散気部で必要とされる風量は、前記主送風部から供給される風量よりも多く、かつ前記主送風部及び前記副送風部から供給される風量以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の散気システム。
【請求項4】
水処理系統ごとに設けられた散気部を備えた散気システムの運転方法であって、
主送風機により前記散気部へ気体を供給する主送風工程と、
前記主送風工程と並列に設けられ、前記散気部へ気体を供給する副送風工程とを備え、
前記副送風工程は、直列に接続された2以上の送風機を用いるものであり、
前記主送風機よりも、前記副送風工程の各送風機の圧力が低いことを特徴とする、散気システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に微細な気泡を分散させるための散気装置を備える散気システム及び散気システムを運転する方法に関するものである。更に詳しくは、排水等を水処理するための散気槽に用いる散気装置を備える散気システム及び散気システムの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水処理方法の一つとして、水処理装置に散気槽を設け、この散気槽内に散気装置を設置し、この散気装置により空気などの気体を微細な気泡として被処理水中に分散する方法が知られている。散気装置は、送風機を備える送風部により供給された気体を、散気部を介して微細な気泡に変えて散気槽内に供給するものであり、気体が空気や酸素の場合には、被処理水中の溶存酸素量を高めることができるものである。
【0003】
散気装置を用いた水処理において、散気装置の駆動に係る消費電力は、処理全体における消費電力の中でも高い割合を占めている。また、散気装置により供給される気体量は、水処理の処理効率に影響を与えるものである。特に、好気性微生物を用いた生物処理では、散気装置により供給される空気量(酸素供給量)が微生物の活性に大きく影響することが知られている。
したがって、散気装置を用いた水処理では、省エネルギー化及び処理効率の維持・向上の観点から、散気装置により散気槽へ供給される気体量を適正範囲とすることが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、被処理水の導入とともに空気を供給して好気性生物処理を行う散気槽(曝気槽)を備え、硝酸計、アンモニア計、溶存酸素計、水温計の4つの測定値に基づき、散気槽に空気を供給する送風部(送風設備)の制御を行う送風量制御器を備える排水処理装置が記載されている。また、特許文献1には、送風量制御としてインレットベーンを取り付けた送風機を用いることや、複数の送風機を設けて台数制御を行うことなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-133202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、散気装置を用いた水処理において、インレットベーンを取り付けた送風機を用いることや、複数の送風機を設けて台数制御を行うことで送風部の送風量制御を行い、散気装置から供給される気体量の制御を行うことは知られている。
【0007】
一方、水処理における散気装置は水中に配置されるものであるため、散気装置から散気槽内に気体を供給するためには、水圧よりも高い圧力で送風する必要がある。つまり、水処理における散気装置においては、送風部からの圧力(以下、「送風圧力」という。)を維持した上で、さらに風量調整を行う必要がある。
しかし、特許文献1には、送風圧力の減少幅を考慮して送風量を設定することは記載されているが、送風圧力を維持した状態で送風量を制御することについては記載されていない。特許文献1に記載されるように、送風圧力の減少幅を考慮した送風量の制御を行う場合、実質的に制御可能な送風量範囲が狭くなってしまうという問題がある。
【0008】
水処理系統に対して散気装置を設ける場合において、送風部で制御可能な送風量範囲が狭いと、散気部に対して送風機から適正量の気体を供給することが困難となるため、省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が実現できないという問題がある。
【0009】
また、近年、散気装置の散気部側については、高効率化が進んでいる。しかし、送風部側で制御可能な送風量範囲が狭い場合、高効率の散気部を用いても送風部から適正量の気体を供給することができず、散気部の性能を十分に発揮させることができないという問題がある。
【0010】
本発明の課題は、水処理系統ごとに散気を行う水処理において、送風部で制御可能な送風量範囲を拡張し、散気部に対して必要な気体量を送風部から適正範囲で供給できるようにすることで、省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が可能となる散気システム及び散気システムの運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、水処理系統ごとに散気部を設ける散気システムにおいて、水処理系統に対して送風する主送風部と、主送風部と並列に水処理系統に対して送風する副送風部を設け、副送風部として2以上の送風機を直列に接続させることで、制御可能な送風量範囲を拡張できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の散気システム及び散気システムの運転方法である。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の散気システムは、水処理系統ごとに設けられた散気部と、散気部へ気体を供給する主送風部と、主送風部と並列に設けられ、散気部へ気体を供給する副送風部とを備えた散気システムであって、副送風部は2以上の送風機が直列に接続されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の散気システムによれば、散気部に気体を供給する主送風部に対し、2以上の送風機を直列に接続した副送風部を並列に接続することで、送風部として並列運転と直列運転を併用することができる。送風部において並列運転と直列運転を併用することで、送風に必要な送風圧力の維持と、送風量の制御とを並行して行うことができ、送風部側で制御可能な送風量範囲を広げるとともに、送風量の微調整が可能となる。これにより、散気部に対して必要な気体量を、送風部から適正範囲で供給することができ、散気システムの省エネルギー化とともに、処理効率の維持・向上が可能となる。
【0014】
また、本発明の散気システムの一実施態様としては、主送風部よりも、副送風部の各送風機単体の圧力が低いという特徴を有する。
この特徴によれば、副送風部を構成する送風機単体の圧力を、主送風部の圧力より低くすることで、主送風部と副送風部の圧力バランスを容易に保つことができる。これにより、2以上の送風機を備える副送風部側の圧力が主送風部の圧力を超え、散気部側に送風が行われなくなる状態を回避することが可能となる。また、主送風部と副送風部の併用による効果として、制御可能な送風量範囲の拡張と送風量の微調整を、安定して実施することが可能となる。
【0015】
また、本発明の散気システムの一実施態様としては、散気部で必要とされる風量は、主送風部から供給される風量よりも多く、かつ主送風部及び副送風部から供給される風量以下であるという特徴を有する。
この特徴によれば、散気部で必要な風量について、主送風部のみで満たすものとせず、副送風部により制御可能な送風量範囲とすることにより、送風量の微調整に係る精度がより一層向上する。また、散気部で必要な風量を主送風部及び副送風部で満たすものとするため、主送風機及び副送風機をそれぞれ小型化することができる。これにより、散気システムの省エネルギー化がより一層可能となる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の散気システムの運転方法は、水処理系統ごとに設けられた散気部を備えた散気システムの運転方法であって、散気部へ気体を供給する主送風工程と、主送風工程と並列に設けられ、散気部へ気体を供給する副送風工程とを備え、副送風工程は、直列に接続された2以上の送風機を用いるものであるという特徴を有する。
本発明の散気システムの運転方法によれば、散気部に気体を供給する主送風工程に対し、直列に接続された2以上の送風機を用いる副送風工程を並列に接続することで、送風に必要な送風圧力の維持と、送風量の制御とを並行して行うことができ、送風部側で制御可能な送風量範囲を広げるとともに、送風量の微調整が可能となる。これにより、散気部に対して必要な気体量を、送風部から適正範囲で供給することができ、散気システムの省エネルギー化とともに、処理効率の維持・向上が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水処理系統ごとに散気を行う水処理において、送風部で制御可能な送風量範囲を拡張し、散気部に対して必要な気体量を送風部から適正範囲で供給できるようにすることで、省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が可能となる散気システム及び散気システムの運転方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施態様の散気システムを示す概略説明図である。
図2】本発明の実施態様の散気システムにおける散気部の構造を示す概略説明図である。
図3】本発明の実施態様の主送風部の主送風機に係る風量-圧力特性の模式図である。
図4】本発明の実施態様の副送風部の副送風機に係る風量-圧力特性の模式図である。
図5】本発明の実施態様の散気システムの運転制御に係るフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る散気システム及び散気システムの運転方法の実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載する散気システムの構造については、本発明に係る散気システムを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。また、実施態様に記載する散気システムの運転方法については、本発明に係る散気システムの運転方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明の散気システム及び散気システムの運転方法は、液体中に微細な気泡を分散させるための散気を伴う水処理に係るものである。散気を伴う水処理としては、特に限定されないが、例えば、河川水、地下水、雨水などの原水に対する水質改善に係る上水処理のほか、工場排水や生活排水(下水)などの排水処理などが挙げられる。特に、排水等の被処理水を活性汚泥により生物処理する水処理に対し、本発明を好適に利用することができる。
【0021】
[実施態様]
(散気システム)
図1は、本発明の実施態様の散気システムの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る散気システム1は、図1に示すように、散気槽2と、散気槽2に設けられた散気部3と、主送風部4と、主送風部4と並列に設けられ、2以上の送風機を直列に接続した副送風部5とを備えている。また、散気システム1は、主送風部4と接続される流路4aと、副送風部5と接続される流路5aと、流路4a及び流路5aが合流した供給流路6を備えている。
主送風部4及び副送風部5は、供給流路6を介して散気槽2の散気部3に気体を供給する。また、主送風部4及び副送風部5の風量制御を行う制御部7を備えている。
なお、主送風部4と副送風部5を合わせたものについては、以下「送風部B」と呼ぶ。また、図1中の一点鎖線は、入力可能及び制御可能に接続されていることを示している。
【0022】
本実施態様の散気システム1では、1つの散気槽2で、1つの水処理系統Sを形成しているものとし、図1には、1つの水処理系統Sを備えるものについて示している。また、以下の説明は、散気システム1が1つの水処理系統Sを備えているものについて説明する。なお、水処理系統Sの数についてはこれに限定されるものではなく、被処理水Wの処理量などに基づき、適宜選択することができるものであり、散気システム1は複数の水処理系統Sを備えるものであってもよい。
【0023】
散気槽2は、被処理水Wを貯留し、散気を行うためのものである。
散気槽2としては、散気槽2内部に散気部3を備え、被処理水Wに対して散気を行うものであれば特に限定されない。例えば、散気槽2内に生物処理に用いられる各種微生物や活性汚泥を収容した生物処理槽とすることや、被処理水WのpH調整槽とすることなどが挙げられる。
また、散気槽2は、1つの区画のみからなるものであってもよく、散気槽2内を複数の区画に区分するものであってもよい。
【0024】
散気部3は、被処理水Wに対し気体を供給するためのものであり、散気槽2内に設けられている。
散気部3としては、微細な気泡を発生させ、被処理水Wに対し気体を供給することができるものであれば特に限定されない。例えば、散気板や散気管からなる散気体を備えるものなどが挙げられる。
【0025】
また、散気部3の規模、配置及び設置方法については特に限定されない。散気部3の規模や配置については、例えば、散気槽2の規模や、散気システム1として必要な処理効率等に応じ、散気部3の規模や配置範囲を定めることなどが挙げられる。また、散気部3の設置方法については、例えば、散気部3自体に散気槽2の底部あるいは側面に設置可能な構造を設けることや、散気槽2の底部あるいは側面に散気部3を固定するための構造を設けることなどが挙げられる。
【0026】
本実施態様の散気部3の一例について、図2を用いて説明する。
図2は、本実施態様の散気システムにおける散気部の概要説明図を示す。
散気部3は、図2に示すように、供給流路6から分岐したライザー管31を介して気体が供給されるヘッダー管32と、ヘッダー管32の軸線方向に沿って配置され、ヘッダー管32から気体が供給される複数の散気体33を有する散気ユニット34を備えている。
【0027】
散気体33は、ヘッダー管32から供給された気体を微細気泡にして被処理水W中に拡散させる構造を有するものである。
散気体33としては、図2に示すように、気体が通過する微細な散気孔を有するメンブレンが巻かれた管状部材からなり、微細気泡を発生させることができる超微細気泡式散気管が挙げられるが、これに限定されるものではない。散気体33の他の例としては、多孔質の合成樹脂又はセラミックからなる散気筒や、多数のスリットを設けたフレキシブルチューブのような管状部材からなる散気管などが挙げられる。また、散気体33は、管状部材に限定されるものではなく、例えば、角型、丸型などの板状部材からなる散気板であってもよい。
【0028】
散気部3内の散気ユニット34の数は特に限定されず、散気槽2の規模や、散気システム1として必要な処理効率に応じて適宜選択することができる。例えば、散気部3は、1つの散気ユニット34からなるものとすることや、複数の散気ユニット34を備えるものとすることが挙げられる。なお、図1には、散気槽2内に、散気部3として2つの散気ユニット34を有するものを示しているが、これに限定されるものではない。
【0029】
主送風部4は、散気槽2内の散気部3に対して気体を供給するためのものであり、図1に示すように、流路4a及び供給流路6を介し、散気部3に気体を供給する。
【0030】
主送風部4から供給される気体は、被処理水Wに対する散気の種類によって選択することができ、例えば、空気、酸素、窒素などが挙げられる。
【0031】
主送風部4としては、気体を圧送することができるものであれば特に限定されず、例えば、送風機を用いることが挙げられる。なお、本発明において、「送風機」とは、送風機及び圧縮機を含むものである。
本実施態様の主送風部4に用いる送風機(主送風機41)としては、散気槽2内の水圧と同程度、あるいはそれ以上の圧力上昇が可能なものが好ましく、例えば、吐出圧力が10kPa以上(圧力比1.1以上)のブロワなどを用いることが挙げられる。
【0032】
本実施態様の散気システム1における主送風部4は、水中に配置されている散気部3から気体を吐出するために必要な送風圧力を確保することができるものであればよい。一方、散気部3で必要とされる風量については、後述する副送風部5により補填することから、主送風部4で満たす必要はない。したがって、主送風機41としては、少なくとも送風圧力が水圧以上となる状態で連続運転が可能なものであれば特に限定されず、風量が一定値に固定されたものであってもよく、風量可変のものであってもよい。
【0033】
また、主送風部4を後述する制御部7と接続し、制御部7により主送風部4の風量に関するデータを取得可能とするものとしてもよい。また、制御部7により主送風部4の風量が制御されるものとしてもよい。
【0034】
副送風部5は、散気槽2内の散気部3に気体を供給するためのものであり、図1に示すように、主送風部4に対して並列に設けられ、流路5a及び供給流路6を介し、散気部3に気体を供給する。また、副送風部5は、2以上の送風機を直列に接続しているものであり、図1では、2つの送風機(副送風機51及び副送風機52)を備えるものを示している。
以下、副送風部5としては、2つの送風機(副送風機51及び副送風機52)を直列に接続したものについて説明するが、直列に接続する送風機の数はこれに限定されるものではなく、3以上の送風機を直列に接続するものであってもよい。
【0035】
副送風部5から供給される気体は、主送風部4から供給される気体と同一とする。
【0036】
副送風機51、52としては、主送風機41と同様に、気体を圧送することができるものであれば特に限定されない。また、副送風機51、52としては、風量が可変であるものを用い、供給流路6から散気部3に供給する風量を変動させることができるものとする。これにより、主送風機41から供給された風量をベースとし、主送風機41のみでは不足する風量について、副送風機51、52で風量の調整及び補填を行い、散気部3で必要とされる風量に応じた気体の供給を行うことが可能となる。
【0037】
副送風機51及び副送風機52は、同じ性能を有する送風機とするものとしてもよく、異なるものとしてもよい。なお、制御の容易性を鑑みると、副送風機51及び副送風機52は、送風圧力及び供給可能な風量が略同一であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0038】
副送風機51、52の風量を可変とする手段は特に限定されない。例えば、副送風機51、52の吐出弁の開度調整やインレットベーンの開度調整を制御する制御部7を設けることが挙げられる。なお、制御部7は、副送風機51、52から供給する風量に係るデータを直接入力されるものであってもよく、副送風機51、52から供給する風量に関連したパラメータを入力することで副送風機51、52から供給する風量の演算を行うものとしてもよい。
また、制御部7では、上記入力結果又は演算結果に基づき、開閉スイッチまたはインバータ等により吐出弁の開度調整やインレットベーンの開度調整を行うことなどが挙げられる。なお、副送風部5から供給する風量の微調整を可能とするという観点から、制御部7としてはインバータ制御に基づくものとすることが特に好ましい。
【0039】
また、制御部7を主送風部4とも接続させ、主送風部4から供給する風量のデータを取得し、副送風機51、52から供給する風量の演算に用いるパラメータとしてもよい。また、制御部7により、主送風部4の主送風機41の風量を可変とするものとしてもよい。
【0040】
ここで、散気部3に気体を供給する際、主送風部4からの圧力と副送風部5からの圧力について、いずれか片方が高くなる(又は低くなる)と、散気部3側に気体が供給されなくなる。したがって、主送風部4からの圧力と副送風部5からの圧力は等しくなる必要がある。
【0041】
本実施態様の散気システム1では、副送風部5は2つの送風機を直列に接続しているため、例えば、主送風部4の主送風機41と副送風部5の副送風機51及び副送風機52の3つの送風機を全て同じ圧力としてしまうと、副送風部5側の圧力が主送風部4側の圧力を大きく上回ってしまう。したがって、本実施態様の散気システム1では、副送風部5を構成する送風機単体(副送風機51、52)の圧力を、主送風部4(主送風機41)の圧力より低くすることが好ましい。これにより、主送風部4と副送風部5の圧力バランスを容易に保つことができる。また、2つの送風機を備える副送風部5側の圧力が主送風部4の圧力を超え、散気部3側に送風が行われない状態となることを回避することが可能となる。
【0042】
また、主送風部4からは一定程度の風量が供給されることが好ましいが、散気部3で必要とされる風量を主送風部4だけで供給可能とした場合、主送風機41から供給される風量を調整する必要があるため、風量制御が複雑になる。したがって、散気部3で必要とされる風量は、主送風部4から供給される風量よりも多く、かつ主送風部4及び副送風部5から供給される風量以下とすることが好ましい。これにより、主送風機41から供給される風量は一定とし、副送風部5により風量調整を行うものとすることができ、風量制御を容易にするとともに、風量の微調整に係る精度がより一層向上する。また、散気部3で必要とされる風量を、主送風部4及び副送風部5によって満たすものとするため、主送風機41、副送風機51及び副送風機52をそれぞれ小型化することができ、散気システム1全体の省エネルギー化が可能となる。
【0043】
散気部3で必要とされる風量は、散気槽2や散気部3の設計上、あらかじめ定めるものとしてもよく、散気槽2内での処理効率等に応じてその都度設定するものとしてもよい。
本実施態様の散気システム1には、散気部3で必要とされる風量を設定するための風量設定手段を設けるものとしてもよい(不図示)。風量設定手段としては、例えば、散気槽2内に、散気槽2内での被処理水Wの処理効率に係るパラメータを検出する各種検出器を設けるとともに、各種検出器の検出結果に基づき、散気部3で必要とされる風量を演算する演算部を設けることなどが挙げられる。各種検出器としては、例えば、DO計、アンモニア計、pH計、水温計などが挙げられる。
また、制御部7に、風量設定手段の演算結果を自動又は手動で入力し、主送風部4の主送風機41、及び副送風部5の副送風機51、52の自動制御又は作業員による手動制御を行うものとしてもよい。
【0044】
以下、主送風部4と副送風部5の組み合わせによる風量制御について説明する。
図3は、本実施態様における主送風部4の主送風機41に係る風量-圧力特性の模式図である。図3中、横軸は風量、縦軸は圧力を示している。
【0045】
図3は、主送風機41の出力を回転数により制御を行った場合について示している。なお、図3には、主送風機41の100%回転数時と80%回転数時のものを太線で示している。
送風機から供給された気体を、水中にある散気部3から吐出するためには、図3中の破線で示した水圧(必要圧力)を上回る必要がある。図3に示すように、主送風機41の80%回転数時では、主送風機41の圧力が水圧を下回るため、散気部3に気体を供給することができない。一方、主送風機41の100%回転数時では、主送風機41の圧力は水圧を上回り、散気部3に向かって気体を供給することができることが分かる。ここでは、本実施態様の主送風部4としては、100%回転数時の主送風機41を用いるものとする。
【0046】
図3には、散気部3で必要とされる風量Q(以下、「必要風量Q」という。)として、必要風量QR1、QR2、QR3の3つの必要風量を示している。なお、必要風量QR3が散気部3の最大必要風量とする。図3から、100%回転数時の主送風機41は、気体を供給する送風圧力は満たすものの、抵抗曲線を超える圧力範囲では必要風量QR1、QR2、QR3に相当する風量は満たさないことが分かる。
【0047】
図3から、必要風量QR1、QR2、QR3に対して不足している100%回転数時の主送風機41の風量(補填分)を求める。ここで、必要風量QR1、QR2、QR3と抵抗曲線の交点における圧力をそれぞれ圧力PS1、PS2、PS3とし、このときの圧力(圧力PS1、PS2、PS3)における主送風機41の風量と、必要風量QR1、QR2、QR3との差分が、補填分に相当する。この差分を、以下、差分風量QS1、QS2、QS3とする。
したがって、副送風部5から、差分風量QS1、QS2、QS3を吐出することで、送風部Bから散気部3の必要風量QR1、QR2、QR3を供給することができるようになる。
【0048】
図4は、本実施態様における副送風部5の副送風機51、52に係る風量-圧力特性の模式図である。図4中、横軸は風量、縦軸は圧力を示している。なお、図4において、副送風部5の副送風機51及び副送風機52は同一の性能を有するものとしている。
【0049】
図4に示すように、副送風機51、52単体(図4中の実線)では、送風圧力が低く、主送風部4と圧力のバランスがとれないが、副送風機51及び52の直列運転を行ったもの(図4中の太線)については、副送風部5としての圧力が倍となり、主送風部4の圧力範囲と重なるものとなる。これにより、主送風部4の圧力PS1、PS2、PS3のときに不足した差分風量QS1、QS2、QS3を、副送風部5から供給できるようになる。
【0050】
副送風機51及び52の100%回転数で直列運転を行ったものを、副送風部5の最大風量、最大圧力となる運転条件とし、ここから、圧力PS1、PS2、PS3のときに差分風量QS1、QS2、QS3を供給可能な副送風部5の運転条件を演算する。すなわち、図4中の点(圧力P、差分風量Q)を通る副送風部5の運転条件を演算する。例えば、図4においては、点(圧力PS1、差分風量QS1)を通る運転条件は、副送風機51及び52の60%回転数で直列運転を行ったものであり、点(圧力PS2、差分風量QS2)を満たす運転条件は、副送風機51及び52の80%回転数で直列運転を行ったものであり、点(圧力PS3、差分風量QS3)を満たす運転条件は、副送風機51及び52の100%回転数で直列運転を行ったものとなる。
この演算結果に基づき、副送風部5から差分風量QS1、QS2、QS3を吐出することで、主送風部4からの風量と合算したものが送風部Bの風量として散気部3に供給される。これにより、散気部3の最大必要風量QR3以下において、広範囲にわたり、送風部Bから供給する風量を制御することが可能となる。
【0051】
(散気システムの運転方法)
図5を参照して、散気システムの運転制御例について説明する。
図5は、本実施態様における散気システムの運転制御に係るフロー図である。なお、図5における散気システムの装置構成及び説明については図1と同様である。また、図5内の太線の矢印は、気体の流れを示すものである。
【0052】
まず、散気槽2に設けられた散気部3の必要風量Qを決定する。必要風量Qは、設計上定められる値であってもよく、風量設定手段により設定されるものであってもよい。
【0053】
次に、主送風機41から流路4aを介し、散気槽2に設けられた散気部3に気体を供給する(主送風工程)。このとき、主送風機41から供給される風量Q1は、必要風量Qよりも小さいものとする。
主送風機41から供給される風量Q1及び送風圧力P1が安定した後(例えば、主送風機41の100%回転数時など)、副送風部5から流路5aを介して、散気槽2に設けられた散気部3に気体を供給する(副送風工程)。このとき、散気部3の必要風量Qから風量Q1を減算した風量Q2を、副送風部5から供給する風量とする。これにより、散気部3の必要風量Qに対して適正な風量を送風部Bから供給することができる。
【0054】
散気槽2内の処理状況の変化に伴い、例えば、散気部3の必要風量Qが変化した場合、主送風機41から供給される風量Q1は一定のまま、副送風部5の副送風機51及び52からの風量Q2を変化させることで、必要風量Qを満たすものとすることができる。これにより、必要風量Qに対して常に適正な風量を供給することが可能となる。
【0055】
また、主送風部4と副送風部5により、散気部3の必要風量Qに対して適正な風量を満たした後、主送風部4の風量Q1を下げ、主送風部4の風量Q1を下げた分を副送風部5の風量Q2を上げることで満たすようにするものとしてもよい。これにより、主送風部4の圧力P1は維持したまま風量Q1のみを下げることができ、送風部Bの省エネルギー化を行うことが可能となる。
【0056】
本実施態様の散気システム及び散気システムの運転方法により、散気を伴う水処理において、送風機によって制御可能な送風量範囲を広げ、散気部に対して必要な気体量を適切に送風機から供給できるようにすることで、散気システム全体の省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が可能となる。
【0057】
なお、上述した実施態様は散気システム及び散気システムの運転方法の一例を示すものである。本発明に係る散気システム及び散気システムの運転方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る散気システム及び散気システムの運転方法を変形してもよい。
【0058】
例えば、本実施態様の散気システムにおいて、主送風部は、1台の送風機からなるものに限定されるものではなく、複数の送風機を直列に設けたものであってもよい。このとき、主送風部と副送風部の送風圧力のバランスをとるため、副送風部の送風機の台数を増加するものとしてもよい。これにより、送風部全体として、送風圧力を高めることが可能となり、水深の深い散気槽等に対応することが可能となる。
【0059】
また、例えば、本実施態様の散気システム及び散気システムの運転方法において、散気槽2に導入される被処理水Wの導入量及び水質を測定し、この測定結果に基づき、散気部3で必要とされる風量を決定するものであってもよい。これにより、散気部3に対して必要な気体量に係るデータの精度が向上するため、散気システムの処理効率を向上させることが可能となる。
さらに、散気槽2に導入される被処理水Wの導入量及び水質が、人間の生活サイクルなど1日の中の時間帯や、カレンダーに応じて変わるものである場合、過去の実績などから主送風部4及び副送風部5から供給する風量を時間帯やカレンダーのデータに基づき推計して、制御するものとしてもよい。これにより、被処理水Wの導入量及び水質に関連するパラメータの測定点数を増やすことなく、散気システムの処理効率を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の散気システム及び散気システムの制御方法は、液体中に微細な気泡を分散させるための散気を伴う水処理に利用することができる。特に、排水等の被処理水を活性汚泥により生物処理を行う水処理に対し、本発明を好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 散気システム、2 散気槽、3 散気部、31 ライザー管、32 ヘッダー管、33 散気管、34 散気ユニット、4 主送風部、4a 流路、41 主送風機、5 副送風部、5a 流路、51,52 副送風機、6 供給流路、7 制御部、B 送風部、P1 主送風部からの送風圧力、P2,P3 副送風部からの送風圧力、Q1 主送風部からの気体供給量、Q2 副送風部からの気体供給量、Q 散気部の必要風量、S 水処理系統、W 被処理水
図1
図2
図3
図4
図5