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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】エネルギー供給システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20220101AFI20230411BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230411BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230411BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20230411BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230411BHJP
【FI】
F24H1/00 631A
F24H1/00 631J
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/04858
H01M8/04537
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019053810
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153613
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】指原 和秀
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-190309(JP,A)
【文献】特開2012-251766(JP,A)
【文献】特開2003-329292(JP,A)
【文献】特開2016-114271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
H01M 8/04
H01M 8/00
H01M 8/04858
H01M 8/04537
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱と電力を発生させる発電部と、
前記熱で加熱された湯水を利用し、前記湯水を所定の熱用途のために通流させるように構成された熱供給設備と、
前記発電部と前記熱供給設備を制御する制御部と、を備え、
前記熱供給設備は、前記発電部と商用電源の少なくとも一方から供給される電力を消費して運転を行うように構成され、
前記制御部は、前記所定の熱用途のための運転を前記熱供給設備が開始する前のタイミングから、前記発電部の出力を定格電力の範囲内で上昇させておく出力上昇制御と、前記所定の熱用途のための運転を前記熱供給設備が開始する前の段階においては、システム全体の負荷電力が低下した場合でも、前記発電部に出力を低下させない出力維持制御と、を共に行うように構成されている
エネルギー供給システム。
【請求項2】
前記所定の熱用途は、時間予約された暖房運転と、間欠的な暖房運転の、少なくとも一方の熱用途を含む
請求項1のエネルギー供給システム。
【請求項3】
前記所定の熱用途は、時間予約された湯張り運転と追い焚き運転の、少なくとも一方の熱用途を含む
請求項1又は2のエネルギー供給システム。
【請求項4】
前記所定の熱用途は、前記熱供給設備の凍結予防運転の熱用途を含む
請求項1から3のいずれか一項のエネルギー供給システム。
【請求項5】
前記発電部は、燃料電池である
請求項1から4のいずれか一項のエネルギー供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池等の発電部を備えたエネルギー供給システムが、一般家庭で利用されている。エネルギー供給システムでは、発電部にて電力を発生させることに加えて、電力と共に生じた熱を回収して利用する。
【0003】
上記のエネルギー供給システムでは、発電部が負荷変動に追従して出力を立ち上げる速度(以下「負荷追従速度」という。)が、負荷変動に追いつかない場合がある。この場合には、商用電源から電力を購入して対応するので、その分だけ電力コストが高くなる。
【0004】
これに対して、商用電源からの電力購入を抑えるために、急激な変動を生じないように負荷を抑制的に制御する手段が、従来提案されている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-17076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の手段によれば、電力コストを抑えることができる一方で、負荷側の運転が制限されてしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、負荷側の運転が制限されることを避けながら、商用電源からの電力購入を抑えることのできるエネルギー供給システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係るエネルギー供給システムは、熱と電力を発生させる発電部と、前記熱で加熱された湯水を利用し、前記湯水を所定の熱用途のために通流させるように構成された熱供給設備と、前記発電部と前記熱供給設備を制御する制御部と、を備え、前記熱供給設備は、前記発電部と商用電源の少なくとも一方から供給される電力を消費して運転を行うように構成され、前記制御部は、前記所定の熱用途のための運転を前記熱供給設備が開始する前のタイミングから、前記発電部の出力を上昇させておくように構成されている。
【0009】
本発明の第2の態様に係るエネルギー供給システムは、熱と電力を発生させる発電部と、前記熱で加熱された湯水を利用し、前記湯水を所定の熱用途のために通流させるように構成された熱供給設備と、前記発電部と前記熱供給設備を制御する制御部と、を備え、前記熱供給設備は、前記発電部と商用電源の少なくとも一方から供給される電力を消費して運転を行うように構成され、前記制御部は、前記所定の熱用途のための運転を前記熱供給設備が開始する前の段階においては、システム全体の負荷電力が低下した場合でも、前記発電部に出力を低下させないように構成されている。
【0010】
本発明の第3の態様に係るエネルギー供給システムは、第1又は第2の態様において、前記所定の熱用途は、時間予約された暖房運転と、間欠的な暖房運転の、少なくとも一方の熱用途を含む。
【0011】
本発明の第4の態様に係るエネルギー供給システムは、第1から第3のいずれか一つの態様において、前記所定の熱用途は、時間予約された湯張り運転と追い焚き運転の、少なくとも一方の熱用途を含む。
【0012】
本発明の第5の態様に係るエネルギー供給システムは、第1から第4のいずれか一つの態様において、前記所定の熱用途は、前記熱供給設備の凍結予防運転の熱用途を含む。
【0013】
本発明の第6の態様に係るエネルギー供給システムは、第1から第5のいずれか一つの態様において、前記発電部は、燃料電池である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様に係るエネルギー供給システムにあっては、熱供給設備の運転開始時に負荷電力が上昇するのに対して、発電部の負荷追従速度が比較的に緩やかであっても、商用電源から電力を購入することを抑えることができ、これのために負荷側の運転を制限することは避けられる。
【0015】
本発明の第2の態様に係るエネルギー供給システムにあっては、熱供給設備の運転開始時に負荷電力が上昇するのに対して、発電部の負荷追従速度が比較的に緩やかであっても、商用電源からの電力を購入することを抑えることができ、これのために負荷側の運転を制限することは避けられる。
【0016】
本発明の第3の態様に係るエネルギー供給システムにあっては、本発明の第1又は第2の態様に係るエネルギー供給システムの効果に加えて、暖房運転(時間予約された暖房運転、間欠的な暖房運転)を行うときに、商用電源から電力を購入することを抑えることができる。
【0017】
本発明の第4の態様に係るエネルギー供給システムにあっては、本発明の第1から第3のいずれか一つの態様に係るエネルギー供給システムの効果に加えて、風呂の自動運転(湯張り運転、追い焚き運転)を行うときに、商用電源から電力を購入することを抑えることができる。
【0018】
本発明の第5の態様に係るエネルギー供給システムにあっては、本発明の第1から第4のいずれか一つの態様に係るエネルギー供給システムの効果に加えて、熱供給設備の凍結予防運転を行うときに、商用電源から電力を購入することを抑えることができる。
【0019】
本発明の第6の態様に係るエネルギー供給システムにあっては、本発明の第1から第5のいずれか一つの態様に係るエネルギー供給システムの効果に加えて、熱供給設備の運転開始時に消費電力が上昇するのに対して、燃料電池の負荷追従速度が比較的に緩やかであっても、商用電源からの電力購入を抑えることができ、これのために負荷側の運転を制限することは避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態のエネルギー供給システムの全体構成図である。
図2】同上のエネルギー供給システムの暖房運転における電力推移を模式的に示すグラフ図である。
図3】同上の暖房運転における別の電力推移を模式的に示すグラフ図である。
図4】同上のエネルギー供給システムの湯張り運転における電力推移を模式的に示すグラフ図である。
図5】同上の湯張り運転における別の電力推移を模式的に示すグラフ図である。
図6】同上のエネルギー供給システムの保温中の追い焚き運転における電力推移を模式的に示すグラフ図である。
図7】同上の追い焚き運転における別の電力推移を模式的に示すグラフ図である。
図8】同上のエネルギー供給システムの凍結予防運転における電力推移を模式的に示すグラフ図である。
図9】同上の凍結予防運転における別の電力推移を模式的に示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一実施形態のエネルギー供給システムについて、添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に全体を示しているように、一実施形態のエネルギー供給システムは、発電部1を備える第1ユニットUaと、熱供給設備9を備える第2ユニットUbを具備した家庭用コージェネレーションシステムである。発電部1は燃料電池11である。熱供給設備9は、第1ユニットUaの排熱を回収した湯水を、多様な形態で通流させるように構成されている。第1ユニットUaと第2ユニットUbの運転は、制御部2によって制御される。制御部2は、発電部1を制御する第1制御部21と、熱供給設備9を制御する第2制御部22を有している。
【0023】
第1ユニットUaは、原料ガスを改質処理して水素ガス(水素含有ガス)を生成する改質部12と、ここで生成した水素ガスを燃料電池11に供給する水素ガス供給路13を備える。更に、第1ユニットUaは、燃料電池11が発生する熱を冷却水で回収する冷却水循環路14と、第1ユニットUaと第2ユニットUbの間で熱媒(湯水)を循環させる熱媒循環路15と、冷却水循環路14を循環する冷却水と熱媒循環路15を循環する熱媒との間で熱交換を行う熱交換部16を備える。
【0024】
冷却水循環路14には、冷却水循環ポンプ141と冷却水貯留タンク143が設けられている。熱媒循環路15には、熱媒循環ポンプ151と余剰電力ヒーター153が設けられている。余剰電力ヒーター153は、燃料電池11による発電電力の余剰電力を熱に換えて回収するためのヒーターである。
【0025】
商用電源100に接続された分電盤102には、電力供給ライン104を介して、住戸の電気負荷108と第2ユニットUbが電気的に接続されており、商用電源100からの電力を、住戸の電気負荷108と第2ユニットUbに供給可能に構成されている。電気負荷108は、例えばテレビ、冷蔵庫、洗濯機等である。
【0026】
また、分電盤102には、第1ユニットUaが電気的に接続されており、燃料電池11からの発電電力を、住戸の電気負荷108と第2ユニットUbに供給することができる。一実施形態のエネルギー供給システムでは、基本的には、燃料電池11からの発電電力によって、住戸の電気負荷108のための電力と第2ユニットUbの運転のための電力を足した、システム全体の負荷電力(家庭内需要電力)を賄う。システム全体の負荷電力が燃料電池11の定格電力を超えたときには、その不足分を商用電源100から購入する。
【0027】
第1ユニットUaが備える第1制御部21は、第2ユニットUbが備える第2制御部22との間で、各種の情報を通信自在に構成されている。図示略の外部リモコンは、第1制御部21と第2制御部22に対して、運転開始指令、運転停止指令等の各種の情報を指令することができる。
【0028】
次に、第2ユニットUbが備える熱供給設備9の具体的な構成について説明する。
【0029】
熱供給設備9は、貯湯タンク3、補助熱源機4、循環ポンプ50、暖房用循環ポンプ51、追焚用循環ポンプ52、排熱回収用熱交換器53、暖房用熱交換器54及び追焚用熱交換器55を備える。
【0030】
更に熱供給設備9は、給湯用混合弁56、湯張弁57、暖房回路補給弁58、蓄熱切換弁59、循環開閉弁60、三方弁61及び循環量調整弁62を備える。
【0031】
貯湯タンク3は、第1ユニットUaの排熱を回収した湯水を貯湯するタンクである。貯湯タンク3の上部には、タンク上部路63が接続され、貯湯タンク3の底部には、タンク下部路64が接続されている。タンク上部路63は給湯用混合弁56に接続され、タンク下部路64は三方弁61に接続されている。
【0032】
更に熱供給設備9は、給水路65、循環路66、蓄熱路67、暖房用循環路68、膨張タンク69、補給路70、風呂用循環路71及び給湯路72を備えている。
【0033】
補助熱源機4は、都市ガス等の燃料ガスを用いて燃焼を生じさせる機器である。補助熱源機4は、湯水が通流するフィンチューブ式の熱交換部41と、熱交換部41を加熱するバーナー42と、バーナー42に燃焼用空気を供給する送風ファン43を備えている。
【0034】
給水路65は、水道管等の給水源からの湯水を供給するための流路であり、給湯用混合弁56に接続される第1給水路651と、貯湯タンク3の底部に接続される第2給水路652とに分岐されている。
【0035】
循環路66は、循環ポンプ50が配置された循環流路であって、その流路中に排熱回収用熱交換器53、補助熱源機4、循環量調整弁62、循環開閉弁60、暖房用熱交換器54、追焚用熱交換器55及び三方弁61がこの順で配置されている。循環路66を循環する湯水は、排熱回収用熱交換器53を介して伝わる第1ユニットUaの排熱により加熱される。
【0036】
暖房用熱交換器54と追焚用熱交換器55は、循環路66に直列状態で配置されており、循環開閉弁60の開閉により、暖房用熱交換器54と追焚用熱交換器55における湯水の通流の断続が切り換えられる。
【0037】
蓄熱路67は、循環路66における補助熱源機4の下流側の箇所と、タンク上部路63とを接続する流路である。この蓄熱路67に、蓄熱切換弁59が設けられている。
【0038】
暖房用循環路68は、床暖房装置等の暖房用の端末106に対して暖房用熱媒(湯水)を循環させる循環路であり、その流路中に暖房用循環ポンプ51と暖房用熱交換器54が設けられている。暖房用循環路68には、暖房用熱媒を短絡通流させるための短絡路681が設けられている。
【0039】
膨張タンク69は、暖房用循環路68に設けられている。補給路70は、給水路65からの湯水を膨張タンク69に補給する流路である。この補給路70に、暖房回路補給弁58が設けられている。
【0040】
風呂用循環路71は、浴槽107に接続された循環路である。風呂用循環路71の流路中には、追焚用循環ポンプ52と追焚用熱交換器55が設けられている。
【0041】
給湯路72は、給湯用混合弁56から延出された流路であり、図示略の一般給湯栓に接続された状態で用いられる。湯張路73は、給湯路72の途中の箇所と風呂用循環路71とを接続する流路である。この湯張路73に、湯張弁57が設けられている。
【0042】
次に、第2ユニットUbにおける熱供給設備9の各種の運転制御について説明する。
【0043】
熱供給設備9が備える各機器は、発電部1と商用電源100の少なくとも一方から供給される電力を消費して動作するように構成されており、第2制御部22によって制御される。
【0044】
第2ユニットUbは、貯湯運転、暖房運転、追い焚き運転、一般給湯運転、湯張り運転及び凍結予防運転を行うことができる。
【0045】
貯湯運転は、発電部1の排熱を利用して加熱した湯水を貯湯タンク3に貯める運転である。貯湯運転を行うために、第2制御部22は、蓄熱切換弁59を開き、循環開閉弁60を閉じ、タンク下部路64と循環路66が連通するように三方弁61を切り換えた状態で、循環ポンプ50を駆動させる。
【0046】
これにより、タンク下部路64から取出した湯水を、三方弁61を経由して循環路66に通流させて排熱回収用熱交換器53にて加熱し、加熱した湯水を、蓄熱路67を経由して貯湯タンク3に戻すことができる。
【0047】
暖房運転は、暖房用の端末106に暖房用熱媒を供給する運転である。暖房運転を行うために、第2制御部22は、蓄熱切換弁59を閉じ、循環開閉弁60を開き、タンク下部路64と循環路66が連通しないように三方弁61を切り換えた状態で、循環ポンプ50を駆動させる。これにより、循環路66を通して湯水を循環させるとともに、循環する湯水を排熱回収用熱交換器53で加熱する。更に、第2制御部22は、暖房用循環ポンプ51を駆動させ、暖房用循環路68において暖房用熱媒(湯水)を循環させるとともに、循環する暖房用熱媒を暖房用熱交換器54で加熱する。加熱された暖房用熱媒は、暖房用循環路68を通して暖房用の端末106に供給される。
【0048】
追い焚き運転は、浴槽107に貯められた浴槽水を、風呂用循環路71を通して循環させながら加熱する運転である。追い焚き運転を行うために、第2制御部22は、暖房運転の場合と同様に蓄熱切換弁59を閉じ、循環開閉弁60を開き、タンク下部路64と循環路66が連通しないように三方弁61を切り換えた状態で、循環ポンプ50を駆動させる。これにより、循環路66を通して湯水を循環させるとともに、循環する湯水を排熱回収用熱交換器53で加熱する。更に、第2制御部22は、追焚用循環ポンプ52を駆動させ、風呂用循環路71において浴槽水を循環させるとともに、追焚用熱交換器55で浴槽水を加熱する。
【0049】
一般給湯運転は、タンク3に貯められた湯水を、給水源からの低温の湯水と混合させて適温としたうえで、一般給湯栓に供給する運転である。一般給湯栓が開かれると、給水源からの湯水は第2給水路652を通じて貯湯タンク3の下部に供給され、貯湯タンク3の上部に貯められた高温の湯水はタンク上部路63を流れ、給湯用混合弁56において、給水源から第1給水路651を通じて供給された低温の湯水と混合したうえで、給湯路72を通じて一般給湯栓に供給される。
【0050】
貯湯タンク3に所定温度の湯水が貯まっていないときは、これを検知した第2制御部22が補助熱源機4と循環ポンプ50を駆動させて給湯を行う。つまり、循環ポンプ50の駆動によって、タンク下部路64から三方弁61を経由して循環路66に湯水を通流させ、この湯水を補助熱源機4にて加熱したうえで、蓄熱路67を経由してタンク上部路63及び給湯路72に供給する。
【0051】
湯張り運転は、貯湯タンク3に貯められた湯水を、給水源からの低温の湯水と混合させて適温としたうえで、浴槽107に供給する運転である。貯湯タンク3の上部に貯められた湯水が適温とされて給湯路72に送られるまでは一般給湯運転と同様であるが、湯張り運転においては第2制御部22が湯張弁57を開いており、適温とされた湯水は湯張路73及び風呂用循環路71を通じて、浴槽107に供給される。
【0052】
貯湯タンク3に所定温度の湯水が貯まっていないときは、これを検知した第2制御部22が、一般給湯運転の場合と同様に補助熱源機4と循環ポンプ50を駆動させる。つまり、循環ポンプ50の駆動によって、タンク下部路64から循環路66に通流した湯水を補助熱源機4にて加熱し、加熱された湯水を、蓄熱路67を経由してタンク上部路63に供給し、更に給湯路72、湯張路73及び風呂用循環路71を通じて浴槽107に供給する。
【0053】
湯張り運転において、浴槽107に供給された湯水が設定水位に至ると、これを検知した第2制御部22が湯張弁57を閉じ、追い焚き運転に移行する。追い焚き運転では、上記したように第2制御部22が追焚用循環ポンプ52を駆動させ、風呂用循環路71において浴槽水を循環させながら、この浴槽水を追焚用熱交換器55で加熱する。
【0054】
凍結予防運転は、冬季等の低温環境において配管内で凍結が生じないように、配管の加熱と湯水の循環の少なくとも一方を行う運転である。
【0055】
凍結予防運転を行うために、第2制御部22は、複数のヒーター75による配管の加熱と、配管内での湯水の循環の少なくとも一方を実行する。複数のヒーター75は、給水路65、第1給水路651、第2給水路652、循環路66、補給路70及び給湯路72の夫々を加熱するように配置されている。
【0056】
配管の加熱を行うとき、第2制御部22は、これら複数のヒーター75の少なくとも一つを通電加熱する。湯水の循環を行う場合に、第2制御部22は、循環ポンプ50、暖房用循環ポンプ51及び追焚用循環ポンプ52の少なくとも一つを駆動させる。
【0057】
次に、一実施形態のエネルギー供給システムにおいて、商用電源100からの電力購入を抑えるための制御について説明する。
【0058】
上記したように、第1ユニットUaが備える第1制御部21と、第2ユニットUbが備える第2制御部22との間では、各種の情報が通信される。第2制御部22から第1制御部21に通信される各種の情報には、第2ユニットUbが運転を開始するタイミングの情報が含まれる。
【0059】
上記したように、第2ユニットUbの熱供給設備9は、発電部1が発生する熱で加熱された湯水を、複数の熱用途のために通流させる設備である。複数の熱用途には、例えば貯湯運転、暖房運転、追い焚き運転、一般給湯運転、湯張り運転及び凍結予防運転が含まれる。このうち幾つかの熱用途(以下「所定の熱用途」という。)では、予め運転開始時間を把握することが可能である。
【0060】
一実施形態のエネルギー供給システムにおいて、予め運転開始時間を把握することが可能な所定の熱用途には、時間予約された暖房運転と、間欠的な暖房運転が含まれる。
【0061】
熱供給設備9が暖房運転を開始するときには、上記したように、第2ユニットUbが備える第2制御部22が蓄熱切換弁59、循環開閉弁60及び三方弁61を作動させ、循環ポンプ50や暖房用循環ポンプ51を駆動させる。そのため、図2に示すように、暖房運転の開始時において熱供給設備9の消費電力が急激に上昇する。これに対して、発電部1(燃料電池11)の負荷追従速度は比較的に緩やかである。
【0062】
これに対して、第1ユニットUaの第1制御部21は、運転開始のタイミング(使用者が予約した運転開始時刻)を第2ユニットUbの第2制御部22から予め習得しておき、熱供給設備9が暖房運転を開始する前のタイミング(例えば、運転開始よりも所定時間t1だけ早いタイミング)で、熱供給設備9が運転開始に要する電力分を確保できるように、発電部1の出力を定格電力の範囲内で上昇させる制御(以下、この制御を「出力上昇制御」という。)を行う。所定時間t1は、一例として3.3~16.7分の範囲内で設定される時間である。出力上昇制御により、暖房リモコン等で開始時刻が予約された暖房運転の立ち上げにおいて、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが抑えられる。
【0063】
出力上昇制御において第1制御部21が発電部1の出力を上昇させる目標値は、過去の暖房運転の消費電力等の記録に基づいて定められてもよいし、運転の種類ごとに設定された既定値に基づいて定められてもよい。所定時間t1は、出力上昇の目標値と発電部1の負荷追従速度から逆算することが可能である。発電部1の出力が目標値だけ上昇した後に、熱供給設備9に暖房運転を開始させることも好ましい。発電部1で発生した電力の余剰分は、余剰電力ヒーター153で消費される。
【0064】
第1ユニットUaの第1制御部21は、間欠的な暖房運転を行う場合も、同様の出力上昇制御を行う。つまり、第1ユニットUaの第1制御部21は、間欠的な暖房運転を自動的に開始するそれぞれのタイミングを第2ユニットUbの第2制御部22から習得しておき、図2に示すように、熱供給設備9が間欠的な暖房運転を開始するそれぞれの前のタイミング(例えば、運転開始よりも所定時間t2だけ早いタイミング)で、熱供給設備9が運転開始に要する電力分を確保できるように、発電部1の出力を定格電力の範囲内で上昇させておく。
【0065】
間欠的な暖房運転のインターバルが、暖房の設定温度等の諸条件に基づいて変更される場合には、第1制御部21が、第2制御部22から習得した設定温度等に基づいてインターバルを判断してもよいし、第2制御部22がインターバルの情報を第1制御部21に発信してもよい。
【0066】
所定時間t2は、一例として3.3~16.7分の範囲内で設定される時間である。出力上昇制御により、間欠的な暖房運転においても、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが抑えられる。
【0067】
出力上昇制御において第1制御部21が発電部1の出力を上昇させる目標値は、過去の間欠的な暖房運転の消費電力等の記録に基づいて定められてもよいし、運転の種類ごとに設定された既定値に基づいて定められてもよい。所定時間t2は、出力上昇の目標値と発電部1の負荷追従速度から逆算することが可能である。発電部1の出力が目標値だけ上昇した後に、熱供給設備9に暖房運転を開始させることも好ましい。発電部1で発生した電力の余剰分は、余剰電力ヒーター153で消費される。
【0068】
加えて、図3に示すように、第1ユニットUaの第1制御部21は、熱供給設備9が暖房運転を開始する前の段階において、住戸の電気負荷108が低下することでシステム全体の負荷電力が低下した場合であっても、暖房運転が開始するまでは発電部1に出力を低下させずに維持する制御(以下、この制御を「出力維持制御」という。)を行うことが好ましい。
【0069】
出力維持制御における、熱供給設備9が暖房運転を開始する前の段階とは、例えば、運転開始よりも所定時間t3だけ早いタイミングから、運転開始までの範囲である。
【0070】
出力維持制御によれば、運転開始時の出力上昇に備えて電力を維持しておくことができるので、時間予約された暖房運転の立ち上げにおいて、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが、効果的に抑えられる。
【0071】
図3に示す例では、暖房運転において出力上昇制御と出力維持制御の両方を行っているが、出力維持制御だけを行うことも好ましい。この場合、所定時間t3は、一例として3.3~16.7分の範囲内で設定される。
【0072】
第1制御部21は、間欠的な暖房運転を行う場合も、同様の出力維持制御を行うことが好ましい。つまり、第1制御部21は、熱供給設備9が間欠的な暖房運転を開始するそれぞれの前の段階において、住戸の電気負荷108が低下することでシステム全体の負荷電力が低下した場合であっても、暖房運転が開始するまでは発電部1に出力を低下させないように制御することが好ましい。ここにおける、暖房運転を開始する前の段階とは、例えば、運転開始よりも所定時間t4(不図示)だけ早いタイミングから、運転開始までの範囲である。
【0073】
間欠的な暖房運転においても、出力維持制御により、運転開始時の出力上昇に備えて電力を維持しておくことができ、運転の立ち上げにおいて、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが、効果的に抑えられる。
【0074】
間欠的な暖房運転において、出力維持制御だけを行う場合、所定時間t4は、一例として3.3~16.7分の範囲内で設定される。
【0075】
一実施形態のエネルギー供給システムにおいて、予め運転開始時間を把握することが可能な所定の熱用途には、時間予約された湯張り運転と、追い焚き運転が更に含まれる。
【0076】
熱供給設備9が湯張り運転を開始するときには、上記したように、第2ユニットUbが備える第2制御部22が湯張弁57を電動で作動させ、貯湯タンク3に所定温度の湯水が貯まっていないとき(いわゆる湯切れを生じているとき)は、補助熱源機4と循環ポンプ50を駆動させて給湯を行う。そのため、図4に示すように、運転開始時において熱供給設備9の消費電力が上昇する。
【0077】
これに対して、第1ユニットUaの第1制御部21は、運転開始のタイミング(使用者が予約した湯張り時刻)を第2ユニットUbの第2制御部22から習得しておき、熱供給設備9が自動的に湯張り運転を開始する前のタイミング(例えば、運転開始よりも所定時間t5だけ早いタイミング)で、熱供給設備9が運転開始に要する電力分を確保できるように、発電部1の出力を定格電力の範囲内で上昇させる出力上昇制御を行う。所定時間t5は、一例として1.7~8.3分の範囲内で設定される時間である。出力上昇制御により、湯張り運転の立ち上げ時において、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが抑えられる。
【0078】
出力上昇制御において第1制御部21が発電部1の出力を上昇させる目標値は、過去の湯張り運転の消費電力等の記録に基づいて定められてもよいし、運転の種類ごとに設定された既定値に基づいて定められてもよい。また、貯湯タンク3の残湯量の情報を得ることができれば、湯切れに対応した目標値を定めることが可能である。所定時間t5は、出力上昇の目標値と発電部1の負荷追従速度から逆算することが可能である。発電部1の出力が目標値だけ上昇した後に、熱供給設備9に湯張り運転を開始させることも好ましい。発電部1で発生した電力の余剰分は、余剰電力ヒーター153で消費される。
【0079】
第1ユニットUaの第1制御部21は、湯張り運転の後半で行われる追い焚き運転においても、同様の出力上昇制御を行う。追い焚き運転を開始するときには、第2制御部22が追焚用循環ポンプ52を駆動させ、また、補助熱源機4や循環ポンプ50を駆動させる。そのため、運転開始時において熱供給設備9の消費電力が更に上昇する。これに対して、第1ユニットUaの第1制御部21は、追い焚き運転を開始するタイミングを第2ユニットUbの第2制御部22から習得しておき、熱供給設備9が追い焚き運転を開始する前のタイミング(例えば、運転開始よりも所定時間t6だけ早いタイミング)で、熱供給設備9が運転開始に要する電力分を確保できるように、発電部1の出力を定格電力の範囲内で更に上昇させておく。所定時間t6は、一例として1.7~8.3分の範囲内で設定される時間である。出力上昇制御により、追い焚き運転において、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが抑えられる。
【0080】
出力上昇制御において第1制御部21が発電部1の出力を上昇させる目標値は、過去の追い焚き運転の消費電力等の記録に基づいて定められてもよいし、運転の種類ごとに設定された既定値に基づいて定められてもよい。所定時間t6は、出力上昇の目標値と発電部1の負荷追従速度から逆算することが可能である。発電部1の出力が目標値だけ上昇した後に、熱供給設備9に追い焚き運転を開始させることも好ましい。発電部1で発生した電力の余剰分は、余剰電力ヒーター153で消費される。湯張り運転の後半において追い焚き運転を開始するタイミングは、浴槽107の水位情報を基に判断することができる。
【0081】
上記の追い焚き運転は、湯張り運転の後半で行われる運転であるが、保温のために自動的に行われる追い焚き運転においても、同様の出力上昇制御を行うことが好ましい(図6参照)。この場合、追い焚き運転を開始するタイミングは、浴槽107内の湯水の温度情報を基にして判断することが可能であり、また、過去の複数回の追い焚き実施のインターバルの情報を基にして判断することも可能である。
【0082】
また、図5に示すように、第1ユニットUaの第1制御部21は、熱供給設備9が湯張り運転を開始する前の段階において、住戸の電気負荷108が低下することでシステム全体の負荷電力が低下した場合であっても、湯張り運転が開始するまでは発電部1に出力を低下させない出力維持制御を行うことが好ましい。ここにおける、熱供給設備9が湯張り運転を開始する前の段階とは、例えば、運転開始よりも所定時間t7だけ早いタイミングから、運転開始までの範囲である。
【0083】
湯張り運転においても、出力維持制御により、運転開始時の出力上昇に備えて電力を維持しておくことができ、運転の立ち上げにおいて、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが、効果的に抑えられる。
【0084】
図5に示す例では、湯張り運転において出力上昇制御と出力維持制御の両方を行っているが、出力維持制御だけを行うことも好ましい。この場合、所定時間t7は、一例として1.7~8.3分の範囲内で設定される。
【0085】
第1制御部21は、追い焚き運転を行う場合も、同様の出力維持制御を行うことが好ましい(図7参照)。つまり、第1制御部21は、熱供給設備9が追い焚き運転を開始する前の段階において、住戸の電気負荷108が低下することでシステム全体の負荷電力が低下した場合であっても、追い焚き運転が開始するまでは発電部1に出力を低下させない出力維持制御を行うことが好ましい。ここにおける、追い焚き運転を開始する前の段階とは、例えば、運転開始よりも所定時間t8だけ早いタイミングから、運転開始までの範囲である。
【0086】
追い焚き運転においても、出力維持制御により、運転開始時の出力上昇に備えて電力を維持しておくことができ、運転の立ち上げにおいて、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが、効果的に抑えられる。
【0087】
追い焚き運転において、出力維持制御だけを行う場合、所定時間t8は、一例として1.7~8.3分の範囲内で設定される。
【0088】
一実施形態のエネルギー供給システムにおいて、予め運転開始時間を把握することが可能な所定の熱用途には、熱供給設備9の凍結予防運転が更に含まれる。
【0089】
熱供給設備9が凍結予防運転を開始するときには、上記したように、第2ユニットUbが備える第2制御部22が、複数のヒーター75、循環ポンプ50、暖房用循環ポンプ51及び追焚用循環ポンプ52の一部又は全部を駆動させる。そのため、運転開始時において熱供給設備9の消費電力が上昇する。
【0090】
これに対して、第1ユニットUaの第1制御部21は、運転開始のタイミングを第2ユニットUbの第2制御部22から習得しておき、熱供給設備9が凍結予防運転を開始する前のタイミング(例えば、運転開始よりも所定時間t9だけ早いタイミング)で、熱供給設備9が運転開始に要する電力分を確保できるように、発電部1の出力を定格電力の範囲内で上昇させておく出力上昇制御を行う(図8参照)。所定時間t9は、一例として5~25分の範囲内で設定される時間である。出力上昇制御により、凍結予防運転の立ち上げ時において、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが抑えられる。出力上昇制御において第1制御部21が発電部1の出力を上昇させる目標値は、過去の凍結予防運転の消費電力等の記録に基づいて定められてもよいし、運転の種類ごとに設定された既定値に基づいて定められてもよい。所定時間t9は、出力上昇の目標値と発電部1の負荷追従速度から逆算することが可能である。発電部1の出力が目標値だけ上昇した後に、熱供給設備9に凍結予防運転を開始させることも好ましい。このとき発電部1で発生した電力の余剰分は、余剰電力ヒーター153で消費される。凍結予防運転を開始するタイミングは、外気温度等の温度情報を基にして判断することができる。
【0091】
また、図9に示すように、第1ユニットUaの第1制御部21は、熱供給設備9が凍結予防運転を開始する前の段階において、住戸の電気負荷108が低下することでシステム全体の負荷電力が低下した場合であっても、凍結予防運転が開始するまでは発電部1に出力を低下させない出力維持制御を行うことが好ましい。ここにおける、熱供給設備9が凍結予防運転を開始する前の段階とは、例えば、運転開始よりも所定時間t10だけ早いタイミングから、運転開始までの範囲である。
【0092】
凍結予防運転においても、出力維持制御により、運転開始時の出力上昇に備えて電力を維持しておくことができ、運転の立ち上げにおいて、不足分を賄うために商用電源100から電力を購入することが、効果的に抑えられる。
【0093】
図9に示す例では、凍結予防運転において出力上昇制御と出力維持制御の両方を行っているが、出力維持制御だけを行うことも好ましい。この場合、所定時間t10は、一例として5~25分の範囲内で設定される。
【0094】
以上、実施形態に基づいてエネルギー供給システムを説明したが、エネルギー供給システムは上記した実施形態に限定されず、同様の作用効果を奏する範囲内において適宜の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 発電部
11 燃料電池
100 商用電源
2 制御部
9 熱供給設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9