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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】自動電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
H02J3/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019062178
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020162381
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】桑原 祐
(72)【発明者】
【氏名】苻川 謙治
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀則
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 和雅
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-017488(JP,B1)
【文献】特公昭46-039030(JP,B1)
【文献】特開昭56-125922(JP,A)
【文献】特開昭56-146210(JP,A)
【文献】特開昭57-020819(JP,A)
【文献】特開昭59-044933(JP,A)
【文献】特開昭61-106018(JP,A)
【文献】特開昭63-007018(JP,A)
【文献】特開2004-222476(JP,A)
【文献】特開2006-166683(JP,A)
【文献】特開2012-182897(JP,A)
【文献】特開2017-085715(JP,A)
【文献】特開2018-057135(JP,A)
【文献】特開2018-137845(JP,A)
【文献】特開2018-174600(JP,A)
【文献】実開昭53-104336(JP,U)
【文献】実開昭57-050716(JP,U)
【文献】飯尾稔,負荷時タップ切換変圧器の最適タップ切換に関する一考察,電気学会論文誌B ,Vol.90 No.4,日本,電気学会,1970年04月30日,pages.173-181
【文献】苻川謙治,梶田寛,若松友晴,普天間淳,高木俊明,須田芳和,安藤匡宏,桑原祐,新形三相静止形高圧自動電圧調整器(三相VTR)の開発,愛知電機技報,No.33,日本,愛知電機株式会社,2012年03月23日,pages.7-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/14
H02J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線に設置されて、線路電圧をタップ切換により調整する自動電圧調整装置において、タップ切換え手段を半導体スイッチを用いて任意のタップ位置へ一回で切換えることを可能とした半導体タップ切換器と、 線路電圧と整定電圧との差電圧を小さく調整するべく、該半導体タップ切換器に対し、各タップ切換え毎の限時特性にしたがって、目的のタップ位置に一回で切換える指令を出力する電圧調整継電器を備え、当該電圧調整継電器を、タップ電圧に対応した多段の積分限時特性と、少なくとも最高段を定限時特性とした組み合わせとし、前記定限時特性の動作時間を積分限時特性の動作時間より短い時間で電圧調整の目的のタップに切換えて電圧調整を行うことを特徴とした自動電圧調整装置。
【請求項2】
配電線に設置されて、線路電圧をタップ切換により調整する自動電圧調整装置において、タップ切換え手段を半導体スイッチを用いて任意のタップ位置へ一回で切換えることを可能とした半導体タップ切換器と、 線路電圧と整定電圧との差電圧を小さく調整するべく、該半導体タップ切換器に対し、各タップ切換え毎の限時特性にしたがって、目的のタップ位置に一回で切換える指令を出力する電圧調整継電器を備え、当該電圧調整継電器を、タップ電圧に対応した多段の反限時特性と、少なくとも最高段を定限時特性とした組み合わせとし、前記定限時特性の動作時間を反限時特性の動作時間より短い時間で電圧調整の目的のタップに切換えて電圧調整を行うことを特徴とした自動電圧調整装置。
【請求項3】
前記自動電圧調整装置を3相Y結線もしくは2相V結線として、各相を独立に電圧制御をすることにより、三相電圧不平衡を解消するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップ切換えの動作時間特性を適正化したサイリスタ式自動電圧調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの大量導入が進められている。また、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による電力供給不安から、国内の再生可能エネルギーへの転換の機運は更に高まってきた。
【0003】
一方で、再生可能エネルギーが配電系統に大量に連系されると、急激な電圧変動が発生する恐れがある。高圧配電系統では負荷時タップ切換変圧器(LRT)や自動電圧調整器(SVR)などで適正電圧範囲内に収まるように制御されてはいるが、高圧配電系統への再生可能エネルギーの連系や家庭用太陽光発電等の大量導入に伴う急激な電圧変動への対応は難しい。
【0004】
そこで、近年、急激な電圧変動への対応が可能であり、電圧調整を高速かつ多頻度に行えるサイリスタ式自動電圧調整器(TVR)が注目されている(下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】愛知電機技報No.33、平成25年3月23日発行、p.7~12
【0006】
図5に上記非特許文献1記載のサイリスタ式高圧自動電圧調整器を示す。本機器は、変圧器の結線をV-星形結線しており、電圧調整変圧器ETrの低圧回路側と、線路に直列に挿入した直列変圧器STrの低圧回路側をサイリスタ式タップ切換器で結合した間接切換方式を採用している。
【0007】
本機器の制御装置は、電圧調整制御及び装置の外部・内部故障に対する保護制御を行う制御部と、該制御部及び当該制御部が選択したサイリスタの組み合わせに応じたタップ切換指令信号を出力するGA部及び電源部からなる制御・GAユニットと、本自動電圧調整器の運転開始、停止時及び外部・内部故障保護動作時に前記制御部からの指令により電磁接触器MC1,MC2の開閉を行うMCユニットによって構成されている。
【0008】
サイリスタ式タップ切換器は、タップ切換用サイリスタTh1~Th6及び限流ヒューズF1,F2と、ブリッジ用サイリスタThb、及び、該ブリッジ用サイリスタThbと限流抵抗器R間に取り付けられた変流器CT、スナバ回路やサージ吸収器及びゲート駆動装置からなるGUユニットによって構成されており、制御装置からのタップ切換信号を受けて、所定のサイリスタ素子を投入/開放する。
【0009】
上記の如く構成される従来の自動電圧調整器によって配電線の電圧を調整する場合、制御装置の制御部において、取り込んだ電圧、電流要素をアナログ処理した後、A/D変換し、CPUによってデジタル演算処理を行い、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するために投入/開放するサイリスタの組み合わせを選択する。
【0010】
制御部によって選択されたサイリスタの組み合わせ指令は、サイリスタ式タップ切換器に出力され、当該指令に応じてタップ切換用サイリスタTh1~Th6およびブリッジ用サイリスタThbを切換えて電圧調整変圧器ETrのタップを切換え、配電線電圧を基準電圧に調整する。
【0011】
前記制御装置の制御部を構成する電圧調整用継電器(90リレー)はタップ点数が7点であり、電圧調整範囲は100[V]ステップの±300[V]である。また、大きな電圧変動に対して一回でタップ切換を行うために飛越しタップ切換機能が付加されている。
【0012】
飛越しタップ切換機能は最大4タップ(±400[V])の飛越しタップ切換が可能であり、大きく急峻な電圧変動を抑制する飛越しタップ切換動作と緩やかな電圧変動を抑制する1タップ切換動作を併用することで、さまざまな電圧変動に対し迅速な電圧調整を可能としている。
【0013】
具体的には、図6に示すように不感帯が0で、1タップ切換えを積分限時特性とし、2タップ切換え以上を定限時特性としている。
【0014】
このようなサイリスタ式の自動電圧調整器(TVR)を用いれば、負荷時タップ切換変圧器(LRT)や自動電圧調整器(SVR)と異なり、高圧配電系統への再生可能エネルギーの連系や家庭用太陽光発電等の大量導入に伴う急激な電圧変動に対応することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
然るに、非特許文献1記載のサイリスタ式自動電圧調整器は、前述したとおり、1タップの切換えが積分限時特性によって行われ、2タップ以上の切換えが定限時特性によって行われるので、図7に示すように、より細かな電圧調整をするべくタップ間電圧を小さく(100[V]→67[V])した場合、電圧変動としては67[V]と小さな値から瞬時にタップ切換えが実行されてしまい、電圧調整の要請が低い電圧偏差においても電圧調整動作が実行されてしまう欠点があった。
【0016】
請求項1記載の発明は、配電線に設置されて、線路電圧をタップ切換により調整する自動電圧調整装置において、タップ切換手段をサイリスタ等の半導体スイッチを用いて任意のタップ位置へ一回で切換えることを可能とした半導体タップ切換器と、線路電圧と整定電圧との差電圧を小さく調整するべく、該半導体タップ切換器に対し、各タップ切換え毎の限時特性にしたがって、目的のタップ位置に一回で切換える指令を出力する電圧調整継電器を備え、当該電圧調整継電器を、タップ電圧に対応した多段の積分限時特性と、少なくとも最高段を定限時特性とした組み合わせとし、前記定限時特性の動作時間を積分限時特性の動作時間より短い時間で電圧調整の目的のタップに切換えて電圧調整を行うことに特徴を有する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項記載の発明は、配電線に設置されて、線路電圧をタップ切換により調整する自動電圧調整装置において、タップ切換え手段をサイリスタ等の半導体スイッチを用いて任意のタップ位置へ一回で切換えることを可能とした半導体タップ切換器と、 線路電圧と整定電圧との差電圧を小さく調整するべく、該半導体タップ切換器に対し、各タップ切換え毎の限時特性にしたがって、目的のタップ位置に一回で切換える指令を出力する電圧調整継電器を備え、当該電圧調整継電器を、タップ電圧に対応した多段の反限時特性と、少なくとも最高段を定限時特性とした組み合わせとし、前記定限時特性の動作時間を反限時特性の動作時間より短い時間で電圧調整の目的のタップに切換えて電圧調整を行うことに特徴を有する。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項1又は2記載の自動電圧調整器を3相Y結線もしくは2相V結線として、各相を独立に電圧制御することにより、三相電圧不平衡も解消できるように構成したことに特徴を有する。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5記載の自動電圧調整器を3相Y結線もしくは2相V結線として、各相を独立に電圧制御することにより、三相電圧不平衡も解消できるように構成したことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0023】
また、請求項記載の発明によれば、電圧調整継電器を、タップ電圧に対応した多段の積分限時特性と定限時特性の組み合わせとしたので、電圧変動が小さい場合に瞬時にタップ切換えが行われることはなく、切換頻度が過多になることを防止できる。
【0024】
さらに、請求項記載の発明によれば、最高段のみを定限時特性とし、その他の段を積分限時特性としたので、電圧変動が大きいときは瞬時にタップ切換えを行うことができる。
【0025】
請求項記載の発明によれば、電圧調整継電器を、タップ電圧に対応した多段の反限時特性と定限時特性の組み合わせとしたので、電圧変動が小さい場合に瞬時にタップ切換えが行われることはなく、切換頻度が過多になることを防止できる。
【0026】
また、請求項記載の発明によれば、最高段のみを定限時特性とし、その他の段を反限時特性としたので、電圧変動が大きいときは瞬時にタップ切換えを行うことができる。
【0027】
請求項記載の発明によれば、自動電圧調整装置を3相Y結線もしくは2相V結線として、各相を独立に電圧制御をするように構成したので、三相電圧不平衡を解消することができる。
【0028】
請求項6記載の発明によれば、自動電圧調整装置を3相Y結線もしくは2相V結線として、各相を独立に電圧制御をするように構成したので、三相電圧不平衡を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施例に係る自動電圧調整器のタップ切換動作時間特性を示すグラフである。
図2】本発明の第1実施例に係るタップ切換動作時間特性(1~3タップ切換)を実現する方法を説明するグラフである。
図3】本発明の第1実施例に係るタップ切換動作時間特性(4~6タップ切換)を実現する方法を説明するグラフである。
図4】本発明の第2実施例に係る自動電圧調整器のタップ切換動作時間特性を示すグラフである。
図5】従来の自動電圧調整器の構成を示すブロック図である。
図6】従来の自動電圧調整器に係るタップ切換動作時間特性を示すグラフである。
図7】従来の自動電圧調整器のタップ間電圧を小さくした場合のタップ切換動作時間特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施例1を図1により説明する。本発明に係るサイリスタ式自動電圧調整器の回路構成および動作は、前述した従来のサイリスタ式自動電圧調整器と概ね同一であるので、以下、図5を併用して説明する。
【0031】
本発明の自動電圧調整器においても従来のサイリスタ式自動電圧調整器と同様、図5に示す制御装置の制御部で配電線の電圧および電流要素を取り込んだ後、これをアナログ処理し、A/D変換後、CPUによってデジタル演算処理を行う。
【0032】
その後、制御部は配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するために投入/開放するサイリスタの組み合わせを選択する。
【0033】
制御部によって選択されたサイリスタの組み合わせ指令は、GA部等を介してサイリスタ式タップ切換器に出力される。サイリスタ式タップ切換器は、当該指令に応じてサイリスタTh1~Th6およびブリッジ用サイリスタThbを切換えて電圧調整変圧器ETrのタップを切換えることで、配電線電圧を基準電圧に調整する。
【0034】
前記制御部を構成する電圧調整用継電器(90リレー)の限時特性を図1に示す。図1では電圧調整範囲を±400[V]、67[V]ステップのタップ点数13点とした場合における各タップ切換えに対応した限時特性を示している。なお、図1では、サイリスタTh1~Th6,Thbの切換頻度を減少させるべく、不感帯±47[V]を設け、また、2~6タップの飛越タップ機能が付加されている。
【0035】
図1に示す限時特性を有する電圧調整用継電器(90リレー)は、タップ点数13点で±400[V]の電圧調整が可能なTVRに適用することにより、より細かな電圧調整の要求に応えることを可能としている。
【0036】
図1に示す限時特性を有する電圧調整継電器(90リレー)によれば、比較的緩やかな電圧変動を抑制する1~3タップ切換は積分限時特性で切換動作が実行され、大きく急峻な電圧変動を抑制する4~6タップの切換は、定限時特性の飛越タップ切換えによって切換動作が実行される。
【0037】
図1に示すように、より細かな電圧調整をするべくタップ間電圧を小さく(67[V])した場合、図7に示すように1タップ切換えのみを積分限時特性とし、2タップ以上の切換えを定限時特性とすると、例えば、70[V]程度の小さな電圧変動に対して瞬時に2タップ切換えが実行されてしまう。結果的に、電圧調整の要請が低い電圧偏差においても高頻度に電圧調整動作が実行されることになる。
【0038】
そこで、より細かな電圧調整をするべくタップ間電圧を小さく(67[V])する場合は、図1に示すように、1~3タップ切換えを積分限時特性とすることにより、電圧調整の要請が比較的低い小さな電圧変動に対してはタップ切換えを極力抑制するとともに、4タップ以上のタップ切換えが必要な急峻な電圧変動に対しては定限時特性とすることによって瞬時に電圧調整を実行することが可能となる。
【0039】
次に、図1に示すように、電圧調整継電器(90リレー)の限時特性を、多段の積分限時特性と定限時特性の組み合わせとして制御する方法を図2図3を用いて説明する。
【0040】
本発明の電圧調整継電器(90リレー)は、図2図3に示すように、各タップ切換えに応じた限時特性をソフト(プログラム)に組み込むことよって実現し、それらの限時特性を組み合わせて制御することにより、図1に示す1~6タップまでの限時特性を実現するものである。
【0041】
つまり、図2(a)は不感帯を±47[V]として1タップ切換えに対応した限時特性を積分限時特性としたものであり、同図(b)は不感帯を±113[V]として2タップ切換えに対応した限時特性を積分限時特性としたものである。
【0042】
また、同図(c)は、不感帯を±180[V]として3タップ切換えに対応した限時特性を積分限時特性としたものであり、図3(d)は不感帯を±247[V]として4タップ切換えに対応した限時特性を定限時特性としたものである。
【0043】
さらに、図3(e)は、不感帯を±313[V]として5タップ切換えに対応した限時特性を定限時特性としたものであり、同図(f)は不感帯を±380[V]として6タップ切換えに対応した限時特性を定限時特性としたものである。
【0044】
図5に示す制御装置の制御部は、上記のように各タップ切換えに応じた限時特性をソフトによって実現し、これらを組み合わせて制御することで、図1に示す限時特性を実現することが可能となる。
【0045】
組み合わせて制御するとは、制御部で取り込んだ電圧、電流要素に基づき、図2図3に示す限時特性にしたがって配電線電圧を基準電圧にするために必要なタップの上下指令を制御・GAユニットのGA部に出力し、GA部は入力された指令に対応するサイリスタの組み合わせ指令をサイリスタ式タップ切換器に出力するものである。
【0046】
制御部において、同時に複数のタップ切換指令が競合した場合は、例えば、切換タップ数が大きい方を優先して対応するサイリスタの組み合わせ指令をサイリスタ式タップ切換器に出力する。
【0047】
つづいて、本発明の第2施例について図4を用いて説明する。図4の電圧調整継電器(90リレー)は、その電圧調整範囲が±400[V]、67[V]ステップのタップ点数13点、不感帯は±47[V]の飛越タップ機能付き(2~6タップ切換時)である。
【0048】
図4の電圧調整継電器(90リレー)によれば、1~5タップ切換えまでを積分限時特性とし、最高段のタップ切換えのみ定限時特性としている。
【0049】
このように構成することで、電圧偏差が380[V]以上の大きな電圧変動が発生した場合のみ瞬時に基準電圧に電圧調整することができ、それ未満の電圧変動においては、電圧偏差が大きくなるにしたがって次第に動作時間を短くしてタップ切換えを実行できるので、不必要なタップ切換動作を極力抑制しつつ、電圧調整が必須な場面においては短時間に電圧調整することが可能となる。
【0050】
なお、図4に示す限時特性も、図2,3で説明した制御方法によって実現される。
【0051】
なお、前述した第1,2の実施例においては、電圧調整継電器(90リレー)の限時特性を積分限時特性と定限時特性の組み合わせとする場合について説明したが、この組み合わせに代えて、反限時特性と定限時特性の組み合わせとしても前述したと同様の効果が得られる。
【0052】
また、反限時特性と定限時特性を組み合わせる方法についても、図2,3に示すように各タップ切換えに対応した限時特性をソフトに組み込むことで実現し、各タップ切換えに対応した限時特性を組み合わせ制御することで実現可能なことは明白である。
【0053】
なお、前述した第1,2の実施例では、各タップ切換えに応じた限時特性をソフトに組み込み、これを組み合わせ制御することによって、図1,4に示す限時特性を実現すると説明したが、本発明はソフトによって実現する場合に限らず、各限時特性を有する複数のハードを組み合わせることによって実現することも可能であり、本発明の技術的範囲に包含されることは当然である。
【0054】
また、前述した第1,2の実施例では、図1,4に示すように、不感帯を設けた場合について説明したが、不感帯を設けないことで、基準電圧への電圧調整精度を向上させるように構成しても良い。
【0055】
さらに、上述した本発明に係る自動電圧調整器は、電圧調整変圧器ETrをV結線とし、直列変圧器STrをY結線とし、サイリスタ式タップ切換器をV結線の電圧調整変圧器ETrの間接回路側の各相(2相)に接続する構成となっているので、サイリスタ式タップ切換器を各相個別に動作させることによって、三相電圧不平衡の改善を可能としている。
【0056】
この電圧不平衡の改善においては、本発明の自動電圧調整器の設置時に三相電圧の最高電圧相と最低電圧相へ電圧監視する相を接続することで、高い電圧不平衡の改善効果を得ることが可能となる。
【0057】
また、各相(2相)を独立にサイリスタ式タップ切換器によってタップ切換えすることにより、各相(2相)を独立に電圧調整して三相電圧不平衡を改善することが可能となる。
【0058】
以上説明したように、本発明の自動電圧調整装置によれば、緩やかな電圧変動を抑制するタップ切換動作と大きく急峻な電圧変動を抑制するタップ切換動作の動作時間特性を適正化することで、小さな電圧変動に対する不要なタップ切換による電圧調整動作を抑制しつつ、大きな電圧変動に対しては瞬時に電圧調整することができ、効果的な電圧調整動作を実現することができる。
【0059】
特にタップ切換動作の動作時間特性を積分限時特性又は反限時特性と定限時特性の組み合わせとすることにより、動作時間特性の適正化を図ることができ、タップ切換頻度の過多による不具合の発生や限流抵抗の温度上昇といった問題を解消することができる。
【0060】
また、積分限時特性又は反限時特性と定限時特性は、各タップ切換毎の限時特性を組み合わせて制御することによって実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
サイリスタ式の自動電圧調整器に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
STr 直列変圧器
Etr 電圧調整変圧器
VT、CT 変成器
Th1~Th6 タップ切換用サイリスタ
Thb ブリッジ用サイリスタ
F1~F2 限流ヒューズ
R 限流抵抗
MC 電磁接触器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7