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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】推定装置および推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/931 20200101AFI20230411BHJP
   G01S 13/89 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G01S13/931
G01S13/89
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019063034
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020160024
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】志手 和彦
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/097824(WO,A1)
【文献】特開2017-151043(JP,A)
【文献】特開2012-128592(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1696870(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G06T 7/00
G06V 10/26
G06V 20/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上に存在する検出対象となる対象物が前記路面を占有する占有領域を推定する推定装置であって、
前記対象物の計測点に関するデータである計測データを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記計測データについて所定の分割領域毎に所定の統計処理により統計値を算出する統計処理部と、
前記統計処理部によって算出された前記分割領域毎の前記統計値の結果を統合し、当該統合した結果に基づいて、前記対象物が前記路面を占有する前記占有領域を推定する推定部と
を備えた、
推定装置。
【請求項2】
計測点に関する計測データを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記計測データについて分割領域毎に所定の統計処理により統計値を算出する統計処理部と、
前記統計処理部によって算出された前記分割領域毎の前記統計値の結果を統合して、検出対象となる対象物が路面を占有する占有領域を推定する推定部と、
を備え、
前記統計処理部は、
前記計測点の反射強度に基づいて前記計測点毎に重み付けすることで、前記分割領域毎に前記統計値を算出する算出部を備え、
前記推定部は、
所定の条件を満たす前記統計値を抽出して、前記抽出した統計値に基づいて前記占有領域を推定するように構成された、
推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、
前記抽出した統計値に基づく前記計測点を所定の条件に基づいて繋いだ線分に基づいて前記占有領域を推定するように構成された、
請求項に記載の推定装置。
【請求項4】
計測点に関する計測データを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記計測データについて分割領域毎に所定の統計処理により統計値を算出する統計処理部と、
前記統計処理部によって算出された前記分割領域毎の前記統計値の結果を統合して、検出対象となる対象物が路面を占有する占有領域を推定する推定部と、
を備え、
前記推定部は、
所定の条件を満たす前記統計値を抽出して、前記抽出した統計値に基づいて前記占有領域を推定する構成を有するとともに、
前記推定の際には、前記抽出した統計値に基づく前記計測点を所定の条件に基づいて繋いだ線分に基づいて前記占有領域を推定するように構成された、
推定装置。
【請求項5】
前記占有領域は、
矩形形状であって、
前記推定部は、
前記占有領域の2辺に対応する前記線分を推定する場合に、当該2辺の交点を求めたうえで、当該交点を基準として前記線分を推定するように構成された、
請求項3または4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記統計処理部は、
前記計測点の分布形状に基づいて、前記計測点をクラスタリングしたクラスタリング枠を設定する第1設定部と、
前記第1設定部によって設定された前記クラスタリング枠を分割した前記分割領域を設定する第2設定部と、
を備えた、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、
前記対象物との距離及び前記対象物の方向に基づいて、前記占有領域を推定するように構成された、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項8】
路面上に存在する検出対象となる対象物が前記路面を占有する占有領域を推定する推定方法であって、
前記対象物の計測点に関するデータである計測データを取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された前記計測データについて所定の分割領域毎に所定の統計処理により統計値を算出する統計処理工程と、
前記統計処理工程によって算出された前記分割領域毎の前記統計値の結果を統合し、当該統合した結果に基づいて、前記対象物が前記路面を占有する前記占有領域を推定する推定工程と
を含む
推定方法。
【請求項9】
計測点に関する計測データを取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された前記計測データについて分割領域毎に所定の統計処理により統計値を算出する統計処理工程と、
前記統計処理工程による前記分割領域毎の前記統計値の結果を統合して、検出対象となる対象物が路面を占有する占有領域を推定する推定工程と、
を含み、
前記統計処理工程は、
前記計測点の反射強度に基づいて前記計測点毎に重み付けすることで、前記分割領域毎に前記統計値を算出する算出工程を含み、
前記推定工程は、
所定の条件を満たす前記統計値を抽出して、前記抽出した統計値に基づいて前記占有領域を推定するように構成された、
推定方法。
【請求項10】
計測点に関する計測データを取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された前記計測データについて分割領域毎に所定の統計処理により統計値を算出する統計処理工程と、
前記統計処理工程によって算出された前記分割領域毎の前記統計値の結果を統合して、検出対象となる対象物が路面を占有する占有領域を推定する推定工程と、
を含み、
前記推定工程は、
所定の条件を満たす前記統計値を抽出して、前記抽出した統計値に基づいて前記占有領域を推定する構成を有するとともに、
前記推定の際には、前記抽出した統計値に基づく前記計測点を所定の条件に基づいて繋いだ線分に基づいて前記占有領域を推定するように構成された、
推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置および推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自車両に搭載されたレーダ装置によって計測された計測点に基づいて、各計測点をグルーピング化し、物標の種別を推定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-270348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、検出対象となる対象物が路面に占める占有領域を迅速に推定するうえで改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、対象物の占有領域を迅速に推定することができる推定装置および推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る推定装置は、取得部と、統計処理部と、推定部とを備える。前記取得部は、計測点に関する計測データを取得する。前記統計処理部は、前記取得部によって取得された計測データについて分割領域毎に所定の統計処理により統計値を算出する。前記推定部は、前記統計処理部によって算出された分割領域毎の統計値の結果を統合して、検出対象となる対象物が路面を占有する占有領域を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象物の占有領域を迅速に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、推定装置の搭載例を示す図である。
図1B図1Bは、推定方法の概要を示す図である。
図2図2は、推定装置のブロック図である。
図3図3は、統計処理部のブロック図である。
図4A図4Aは、クラスタリング枠の具体例を示す図(その1)である。
図4B図4Bは、クラスタリング枠の具体例を示す図(その2)である。
図5A図5Aは、分割領域の具体例を示す図(その1)である。
図5B図5Bは、分割領域の具体例を示す図(その2)である。
図6図6は、計測点の分布状態と、計測点との距離関係を示す図である。
図7A図7Aは、占有領域の具体例を示す図(その1)である。
図7B図7Bは、占有領域の具体例を示す図(その2)である。
図7C図7Cは、占有領域の具体例を示す図(その3)である。
図8図8は、推定装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る推定装置および推定方法について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下では、推定装置が車両に搭載される場合を例に挙げて説明するが、車両に限定されるものではない。また、以下では、検出対象となる対象物が他車両である場合を例に挙げて説明する。
【0010】
まず、図1Aおよび図1Bを用いて実施形態に係る推定装置および推定方法の概要について説明する。図1Aは、推定装置の搭載例を示す図である。図1Bは、推定方法の概要を示す図である。なお、図1Bでは、X軸方向を自車両Cの車幅方向とし、Y軸方向を自車両Cの進行方向であるものとする。また、図1Bに示す座標系の原点は、自車両Cであるものとする。なお、図1Bに示す座標系は、他の図面においても用いる場合がある。
【0011】
図1Aに示すように、実施形態に係る推定装置1は、自車両Cに搭載され、自車両Cに搭載されたレーダ装置5a~5dに接続される。推定装置1は、レーダ装置5a~5dの計測結果である計測データに基づいて、他車両が路面に占める占有領域を推定する。
【0012】
例えば、自車両Cは、推定装置1によって推定された占有領域に基づいて、走行経路を設定することができる。
【0013】
レーダ装置5a~5dは、自車両Cの周囲に存在する物標を計測する装置である。図1Aに示すように、レーダ装置5a~5dは、自車両Cの周縁部にそれぞれ設けられ、それぞれの計測範囲で自車両Cの全周囲がカバーされるように設けられる。
【0014】
レーダ装置5a~5dは、それぞれ所定周期で送信波を送信し、計測点で反射した反射波に基づいて、計測点の計測データを生成する。レーダ装置5a~5dは、生成した計測データを推定装置1へ出力する。
【0015】
計測データには、自車両Cから計測点までの距離、自車両Cと計測点との相対速度、自車両Cに対する計測点の角度、計測点の反射強度に関する情報等が含まれる。なお、以下では、レーダ装置5a~5dを区別する必要がない場合、レーダ装置5と記載する。
【0016】
ところで、計測点から他車両を識別する手法として、計測点と所定のテンプレートを用いたマッチング処理が考えられる。この場合、例えば、他車両の占有領域を示す矩形状のテンプレートを用いることで、他車両の占有領域を推定することが可能である。
【0017】
しかしながら、例えば、他車両が車線を変更する場合や、他車両がカーブを走行する場合など、自車両Cと他車両との進行方向が一致しない場合には、テンプレートの角度をずらしながらマッチング処理を行う必要がある。このため、他車両が路面に占める占有領域を推定するまでに多くの時間を割く恐れがあった。
【0018】
そこで、実施形態に係る推定方法では、テンプレートを用いることなく、占有領域を推定することで、他車両の占有領域を推定することとした。
【0019】
具体的には、図1Bに示すように、実施形態に係る推定方法では、各レーダ装置5a~5dによって計測された計測点Pについて、短冊状に分割した分割領域Rd毎に統計処理を行う(ステップS1)。図1Bの例では、Y軸に長い矩形状の分割領域Rdである場合を示す。
【0020】
実施形態に係る推定方法では、分割領域Rd毎に各計測点Pを反射強度に応じた重み付けし、平均位置を算出するとともに、各分割領域Rdにおける計測点Pの標準偏差を求めることで、統計値Sを分割領域Rd毎に求める。例えば、統計値Sは、平均位置を基準とし、標準偏差に基づく範囲の楕円として求まる。
【0021】
続いて、実施形態に係る推定方法では、統計値Sに基づいて、他車両が路面に占める占有領域を推定する推定処理を行う(ステップS2)。例えば、実施形態に係る推定方法では、所定の反射強度を超える計測点Pが含まれる統計値Sを抽出し、抽出した統計値Sに基づいて線分Lを得る。
【0022】
具体的には、所定の反射強度を超える計測点Pが含まれる統計値Sに基づいて、各統計値Sに含まれる計測点Pを再度配置し、かかる計測点Pに基づく統計処理を再度行うことで、各統計値Sを統合した統合統計値Siを算出する。図1Bに示すように、統合統計値Siも統計値Sと同様に楕円形状となる。
【0023】
実施形態に係る推定方法では、統合統計値Siの長径を線分Lとして得るとともに、線分Lに基づいて占有領域を推定する。すなわち、他車両の占有領域を矩形状であると仮定した場合、線分Lは、占有領域の手前側の1辺を構成することとなる。
【0024】
つまり、実施形態に係る推定方法では、自車両Cから見て、線分Lの奥行方向に他車両の占有領域があると推定することができる。なお、ここでは、1つの線分Lが得られる場合について示したが、線分Lと略直交する他の線分Lが得られる場合もあるが、かかる場合の処理の具体例については、図7Cを用いて後述する。
【0025】
このように、実施形態に係る推定方法では、分割領域Rd毎に統計処理を行うとともに、各分割領域Rdの統計値Sを統合して、占有領域を推定する。つまり、実施形態に係る推定方法では、他車両の占有領域を構成する少なくとも1つの辺を推定し、推定した辺に基づいて占有領域を推定する。
【0026】
これにより、実施形態に係る推定方法によれば、他車両の占有領域を迅速に推定することができる。
【0027】
次に、図2を用いて、実施形態に係る推定装置1の構成例について説明する。図2は、推定装置1のブロック図である。なお、図2には、レーダ装置5および車両制御ECU(Electronic Control Unit)50を併せて示す。車両制御ECU50は、推定装置1の推定結果に基づいて自車両Cを制御するECUである。
【0028】
図2に示すように、実施形態に係る推定装置1は、制御部2と、記憶部3とを備える。制御部2は、取得部21と、統計処理部22と、推定部23とを備える。記憶部3は、計測点情報31と、統計値情報32とを記憶する。
【0029】
ここで、制御部2は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0030】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部2の取得部21、統計処理部22および推定部23として機能する。
【0031】
また、記憶部3は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、計測点情報31、統計値情報32、各種プログラムの情報等を記憶することができる。なお、推定装置1は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
【0032】
計測点情報31は、各レーダ装置5による計測結果である計測点Pに関する情報である。統計値情報32は、計測点Pの分割領域Rd毎の統計値Sに関する情報である。
【0033】
制御部2は、各レーダ装置5から計測点Pに関する計測データを取得し、計測データに基づいて分割領域Rd毎に統計値Sを算出するとともに、各分割領域Rdの統計値Sを統合して、他車両の占有領域を推定する。
【0034】
取得部21は、各レーダ装置5から計測点Pに関する計測データを取得し、計測点情報31として、記憶部3に格納する。なお、取得部21は、例えば、各レーダ装置5から入力される計測データが、各レーダ装置5を基準とする座標系である場合、自車両Cを基準とする座標系(図1B参照)へ変換する処理を行う。
【0035】
統計処理部22は、取得部21によって取得された計測データについて短冊状に分割した分割領域Rd毎に所定の統計処理を行う。すなわち、統計処理部22は、分割領域Rd毎に各計測点Pに対する統計値Sを算出する。
【0036】
図3は、統計処理部22のブロック図である。図3に示すように、統計処理部22は、第1設定部22a、第2設定部22bおよび算出部22cを備える。第1設定部22aは、計測点Pの分布形状に基づいて、計測点Pをクラスタリングしたクラスタリング枠を設定する。
【0037】
図4Aおよび図4Bは、クラスタリング枠の具体例を示す図である。図4Aに示すように、クラスタリング枠Fは、例えば、他車両の計測点Pと推定される計測点Pを囲う枠である。
【0038】
図4Aの例では、他車両の進行方向と、自車両Cの進行方向とが略平行である場合を示す。また、図4Bの例では、他車両の進行方向と、自車両Cの進行方向とが所定角(例えば、30°)ずれている場合を示す。
【0039】
図4Aおよび図4Bの例において、第1設定部22aは、自車両Cの進行方向に沿う矩形状のクラスタリング枠Fを設定する。すなわち、他車両の進行方向を考慮せずにクラスタリング枠Fを設定することで、クラスタリング枠Fを設定する際の処理負荷を抑制することができる。
【0040】
図3の説明に戻り、第2設定部22bについて説明する。第2設定部22bは、第1設定部22aによって設定されたクラスタリング枠Fに基づいて、分割領域Rdを設定する。図5Aおよび図5Bは、分割領域Rdの具体例を示す図である。
【0041】
図5Aに示すように、分割領域Rdは、自車両Cの進行方向を長辺とする短冊状の領域である。各分割領域Rdの長辺(Y軸方向の辺)は、例えば、クラスタリング枠Fの長辺よりも長く、各分割領域Rdの短辺は、例えば、レーダ装置5の分解能の2~3倍(例えば、30cm)程度に設定する。
【0042】
このように、クラスタリング枠Fを設定することで、1つの他車両に絞って占有領域を推定することができるので、占有領域の推定精度を向上させることができる。また、クラスタリング枠Fに応じて、分割領域Rdを設定することで、分割領域Rd毎に統計値Sを算出する。これにより、分割領域Rd毎に算出される各統計値Sの精度を向上させることができる。
【0043】
また、図5Aの例では、各分割領域Rdによって、クラスタリング枠F全体を覆うこととなる。なお、図5Bに示すように、各分割領域Rdは、X軸を長辺とする短冊状の領域であってもよいし、X軸およびY軸の双方にマトリクス状に分割した領域であってもよい。つまり、分割領域Rdの大きさや形状は、要求される占有領域の推定精度に応じて、任意に設定することが可能である。例えば、高い精度で占有領域の推定精度が求められるほど、分割領域Rdを細かく設定する。
【0044】
また、分割領域Rdは、クラスタリング枠F内において全てが同一である必要はなく、例えば、異なる形状や大きさであってもよい。この場合、例えば、クラスタリング枠Fにおいて、手前側(紙面下側)の分割領域Rdを奥行側(紙面上側)の分割領域Rdに比べて、細かく設定することにしてもよい。
【0045】
図3の説明に戻り、算出部22cについて説明する。算出部22cは、分割領域Rd毎に統計値Sを算出する。具体的には、算出部22cは、各分割領域Rdに含まれる計測点Pの反射強度に基づいて各計測点Pに重みを付与する。すなわち、重み付けによって、反射強度が大きい計測点Pほど、重みが大きくなるようになる。
【0046】
続いて、算出部22cは、重み付けした計測点Pに基づいて、分割領域Rd毎に計測点Pの平均位置および、分割領域Rd毎に各計測点Pの標準偏差を算出する。平均位置は、複数の計測点Pを考慮した場合において、他車両が存在する確率が最も高い位置である。なお、平均位置は、1つの分割領域に複数存在する場合もある。
【0047】
算出部22cは、平均位置を基準とした、標準誤差に基づく範囲を統計値Sとして算出し、算出結果を統計値情報32として記憶部3に格納する(図2参照)。
【0048】
図2の説明に戻り、推定部23について説明する。推定部23は、統計処理部22による分割領域Rd毎の統計結果に基づいて、他車両が路面に占める占有領域を推定する。本実施形態において、推定部23は、自車両Cと、統計値S(計測点P)との距離に基づいて、占有領域の推定方法を決定する。
【0049】
図6は、計測点Pの分布状態と、計測点Pとの距離関係を示す図である。図6のAに示すように、例えば、自車両Cが他車両の後方であり、かつ自車両Cと、他車両との距離が比較的離れた遠距離である場合、自車両Cからは、他車両のリアバンパやトランクなどに対応する計測点Pが計測されることになる。
【0050】
つまり、図6のAに示すように、自車両Cが他車両の後方遠距離に存在する場合において、計測点Pは、他車両の後端Lbを示すため、線分L(図1B参照)を後端Lbと仮定して占有領域を推定する。
【0051】
また、図6のBに示すように、自車両Cが他車両の後方に位置し、かつ、他車両との距離が中距離である場合、上述の後端Lbに基づく計測点Pに加えて、他車両の側端Lsに対応する計測点Pが計測される。
【0052】
この場合、線分Lを、後端Lbおよび側端Lsのいずれかと仮定して、占有領域を推定する。なお、後述するように、この場合においては、後端Lbおよび側端Lsにそれぞれ対応する2本の線分Lが求まる場合もある。
【0053】
さらに、図6のCに示すように、自車両Cが他車両の真横に位置し、自車両Cと他車両との距離が近い場合には、他車両の側端Lsに対応する計測点Pが計測され、後端Lbに対応する計測点Pは計測され難い。
【0054】
したがって、この場合においては、線分Lを側端Lsと仮定して占有領域を推定することができる。このように、推定部23は、各線分Lを後端Lbや側端Lsとして仮定し、占有領域を推定することで、占有領域を容易、かつ、精度よく推定することができる。
【0055】
次に、図7A図7Cを用いて、占有領域の具体例について説明する。図7A図7Cは、占有領域の具体例を示す図である。まず、図7Aを用いて、他車両が近距離(図6のCに対応)に位置する場合について説明する。
【0056】
図7Aに示すように、推定部23は、各統計値Sのうち、所定条件を満たす統計値Sを抽出し、抽出した統計値Sに基づく計測点Pを配置する。ここで、所定条件とは、統計値Sに、反射強度が所定値を超える計測点Pが含まれることである。
【0057】
つまり、この段階で、反射強度が弱い計測点Pのみで構成される統計値Sや、統計値Sの外にある計測点Pが除かれることになる。したがって、不要な統計値Sおよび計測点Pを容易に除去することが可能となる。
【0058】
続いて、推定部23は、抽出した統計値Sの計測点P全体を統合した統合統計値Siを算出する。推定部23は、抽出した統計値Sの計測点Pを反射強度に応じて重み付けし、平均位置および標準誤差を求めることで、統合統計値Siを算出することができる。
【0059】
すなわち、統合統計値Siとは、抽出した統計値Sの計測点P全体の平均位置を基準とする標準誤差の範囲に相当する。図7Aに示すように、統合統計値Siは、楕円形状であり、統合統計値Siの長軸が線分Lとなる。
【0060】
続いて、推定部23は、線分Lに基づいて、占有領域Rを推定する。図7Aに示す例において、他車両が近距離であることから、線分Lは、他車両の側端Ls(図6参照)であると推定することができる。
【0061】
ここで、多くの車両ではそのおおよその形状・大きさがいくつかのパターンで区分けできることから、後端長は側端Ls長によりある程度予測でき、また車両走行制御・周辺監視で重要となる情報はこの場合に他車両の側端Lsとなることから、占有領域Rは他車両側端Ls長とその位置、側端Ls長から推定される他車両後端長により推定すれば多くの制御上では支障のない精度で占有領域Rを推定することができることとなる。
【0062】
したがって、推定部23は、自車両Cから見て、線分Lの奥行方向に線分Lに沿って他車両が進行していると仮定し、占有領域Rを推定する。
【0063】
続いて、図7Bを用いて、自車両Cが他車両の後方遠距離(図6のAに対応)に位置する場合について説明する。図7Bにおいても、線分Lを求めるまでの処理は、図7Aと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0064】
図7Bの例においては、推定部23は、線分Lを他車両の後端Lbとして、占有領域Rを推定することになる。ここで、側端長は後端Lb長によりある程度予測でき、また車両走行制御・周辺監視で重要となる情報はこの場合に他車両の後端Lbとなることから、占有領域Rは他車両後端Lb長とその位置、後端Lb長から推定される他車側端長により推定すれば多くの制御上では支障のない精度で占有領域Rを推定することができることとなる。
【0065】
続いて、図7Cを用いて、自車両Cが他車両の後方中距離(図6のBに対応)に位置する場合について説明する。図6のBにて既に説明したように、自車両Cが他車両の後方中距離に位置する場合、他車両の後端Lbおよび側端Lsが計測できる場合がある。
【0066】
したがって、この場合、推定部23は、まず、後端Lbおよび側端Lsに対応する交点を算出する。具体的には、図7Cに示すように、推定部23は、各統計値Sの平均位置Saを繋いでいき、角度が所定角になる平均位置Saを交点Piとして求める。
【0067】
ここで、所定角とは、例えば、略直角(例えば、90°±10°)であるが、単に鈍角であってもよい。すなわち、平均位置Saを繋いで、かかる平均位置Saが鋭角であれば、次の平均位置Saをさらに繋いで、交点Piを探索することになる。
【0068】
推定部23は、交点Piを求めると、交点Piに基づいて統合統計値Si1および統合統計値Si2をそれぞれ求め、統合統計値Si1および統合統計値Si2に基づいて線分L1および線分L2を求める。
【0069】
続いて、推定部23は、線分L1および線分L2に基づいて占有領域Rを推定する。ここで、例えば、推定部23は、線分L1および線分L2のうち、長さが長い線分Lを側端Ls、他方を後端Lbと仮定して、占有領域Rを推定することができる。
【0070】
このように、推定部23は、統合統計値Siを算出し、かかる統合統計値Siの長軸に対応する線分Lを用いて、占有領域Rを推定する。上述のように、線分Lは、占有領域Rの輪郭部に対応することから、推定部23は、線分Lに基づいて、占有領域Rを推定することで、占有領域Rを迅速かつ、精度よく推定することが可能となる。
【0071】
次に、図8を用いて、実施形態に係る推定装置1が実行する処理手順について説明する。図8は、実施形態に係る推定装置1が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理手順は、制御部2によって繰り返し実行される。
【0072】
図8に示すように、推定装置1は、まず、レーダ装置5から計測データを取得すると(ステップS101)、計測データに含まれる計測点Pに基づいてクラスタリング枠Fを設定する(ステップS102)。
【0073】
続いて、推定装置1は、クラスタリング枠Fに基づいて分割領域Rdを設定し(ステップS103)、分割領域Rd毎に統計値Sを算出する(ステップS104)。続いて、推定装置1は、自車両Cが他車両の後方中距離であるか否かを判定する(ステップS105)。
【0074】
推定装置1は、自車両Cが他車両の後方中距離である場合(ステップS105)、各統計値Sの平均位置Saに基づいて交点Piを決定する(ステップS105,Yes)。一方、推定装置1は、自車両Cが他車両の後方中距離以外である場合(ステップS105,No)、ステップS105の処理を省略する。
【0075】
続いて、推定装置1は、統計値Sに基づく計測点Pに基づいて、統合統計値Siを算出し(ステップS107)、統合統計値Siに基づいて線分Lを算出する(ステップS108)。
【0076】
続いて、推定装置1は、線分Lに基づいて他車両の占有領域Rを推定して(ステップS109)、処理を終了する。
【0077】
上述したように、実施形態に係る推定装置1は、取得部21と、統計処理部22と、推定部23とを備える。取得部21は、計測点Pに関する計測データを取得する。統計処理部22は、取得部21によって取得された計測データについて分割領域Rd毎に所定の統計処理により統計値Sを算出する。
【0078】
推定部23は、統計処理部22によって算出された分割領域Rd毎の統計値Sの結果を統合して、検出対象となる対象物が路面を占有する占有領域Rを推定する。したがって、実施形態に係る推定装置1によれば、対象物の占有領域を迅速に推定することができる。
【0079】
ところで、上述した実施形態では、対象物が他車両である場合について示したが、これに限定されるものではない。すなわち、対象物は、他車両以外の障害物であってもよい。この場合、対象物の種別に応じて、占有領域Rの形状を変更することにしてもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、推定装置1が複数のレーダ装置5に接続される場合について示したが、レーダ装置5は1つであってもよい。また、上述した実施形態では、推定装置1が、車両に搭載される場合について示したが、車両に限定されず、船舶などであってもよい。
【0081】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な様態は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲および、その均等物によって定義される統括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変化が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 推定装置
21 取得部
22 統計処理部
22a 第1設定部
22b 第2設定部
22c 算出部
23 推定部
S 統計値
Si 統合統計値
R 占有領域
Rd 分割領域
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8