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  • 特許-スパッタ捕集装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】スパッタ捕集装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
B23K9/32 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019074789
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020171938
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
【審査官】梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-188451(JP,A)
【文献】実開平07-026068(JP,U)
【文献】特開2014-075411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パイプに第2パイプを溶接することにより、内部空間を有する溶接部材を形成する際に発生するスパッタを捕集するスパッタ捕集装置であって、
磁力を有する捕集部材を備え、
前記捕集部材は、前記内部空間に配置される、スパッタ捕集装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスパッタ捕集装置であって、
前記捕集部材を前記内部空間に配置する支持部材をさらに備える、スパッタ捕集装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスパッタ捕集装置であって、
前記支持部材は、前記溶接部材の外部から前記溶接部材を支持する基台を有する、スパッタ捕集装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスパッタ捕集装置であって、
前記捕集部材を覆うカバーをさらに備える、スパッタ捕集装置。
【請求項5】
請求項4に記載のスパッタ捕集装置であって、
前記カバーは、非磁性体である、スパッタ捕集装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のスパッタ捕集装置であって、
前記捕集部材は、前記溶接部材における溶接位置よりも鉛直方向下方に位置する、スパッタ捕集装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のスパッタ捕集装置であって、
前記捕集部材は、それぞれ磁極を構成する第1面及び第2面を有し、
前記捕集部材は、前記第1面が前記溶接部材における溶接位置を向くように配置される、スパッタ捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパッタ捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属製のパイプ等の内部空間を有する部材の溶接において、溶接時に発生するスパッタが部材の内面に付着すると製品不良につながるおそれがある。そこで、溶接を行うパイプの内側に小径のパイプを挿入して、スパッタを捕集する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-237679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の方法では、スパッタの捕集範囲が、小径のパイプの存在領域に限定される。そのため、スパッタの飛散状況によっては、スパッタが小径のパイプに捕集されずに、溶接するパイプの内面に付着するおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、スパッタの捕集性能を高められるスパッタ捕集装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、内部空間を有する溶接部材を溶接によって形成する際に発生するスパッタを捕集するスパッタ捕集装置である。スパッタ捕集装置は、磁力を有する捕集部材を備える。捕集部材は、内部空間に配置される。
【0007】
このような構成によれば、捕集部材の磁力によって、第1部材の内部空間で発生したスパッタが捕集部材に引き寄せられる。その結果、広範囲においてスパッタを捕集部材に捕集することができるので、溶接時のスパッタの捕集性が高められる。
【0008】
本開示の一態様は、捕集部材を内部空間に配置する支持部材をさらに備えてもよい。このような構成によれば、支持部材によって捕集部材の位置及び姿勢の調整が容易に行えるため、捕集部材の捕集性能が高められる。
【0009】
本開示の一態様は、捕集部材を覆うカバーをさらに備えてもよい。このような構成によれば、溶接時に捕集部材に引き寄せられるスパッタがカバーに付着するため、捕集部材の再利用が容易になる。
【0010】
本開示の一態様では、カバーは、非磁性体であってもよい。このような構成によれば、捕集部材のスパッタの捕集範囲を維持しつつ、捕集部材へのスパッタの付着を抑えることができる。
【0011】
本開示の一態様では、捕集部材は、前溶接部材における溶接位置よりも鉛直方向下方に位置してもよい。このような構成によれば、自重によって落下するスパッタを捕集部材に誘導できるので、捕集部材の捕集性能が高められる。
【0012】
本開示の一態様では、捕集部材は、それぞれ磁極を構成する第1面及び第2面を有してもよい。捕集部材は、第1面が溶接部材における溶接位置を向くように配置されてもよい。このような構成によれば、磁力が最も強い磁極にスパッタの発生源を近接させられるので、捕集部材の捕集性能が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態におけるスパッタ捕集装置の模式的な正面図である。
図2図2は、図1のII-II線での模式的な断面図である。
図3図3は、実施形態におけるスパッタの捕集方法のフロー図である。
図4図4は、図1とは異なる溶接部材を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1及び図2に示すスパッタ捕集装置1は、内部空間を有する第1部材W1に、第2部材W2をガス溶接(例えばMIG溶接)又は電気溶接することにより、内部空間を有する溶接部材(つまり第1部材W1に第2部材W2が接合されたもの)を形成する際に用いられる。
【0015】
本実施形態では、第1部材W1及び第2部材W2は、それぞれ、金属製のパイプである。ただし、第1部材W1は、内部空間を有する金属製の部材であればパイプに限定されず、シェルやコーンであってもよい。第2部材W2も、第1部材W1に溶接される金属製の部材であればパイプに限定されない。
【0016】
自動車の排気系部品では、内部にスパッタが付着することで、エンジンの不具合(例えばエンジンストール)等を引き起こす可能性がある。そのため、スパッタ捕集装置1は、特に自動車のエンジンへの給気系統に用いられる部品の溶接に好適において使用できる。
【0017】
本実施形態では、第1部材W1は、支持部材4によって中心軸が鉛直方向と平行となる向きに支持されている。第2部材W2の下端は、第1部材W1の上端に重なるように配置され、第1部材W1の上端に周方向にトーチTによって溶接される。例えば、第1部材W1の上端が第2部材W2の下端における径方向外側に配置されることで、第1部材W1と第2部材W2とが重ねられている。また、トーチTは、第2部材W2から第1部材W1の上端に向かう方向に先端部が延伸すると共に、先端部が鉛直方向(つまり第1部材W1及び第2部材W2の中心軸)に対して傾斜した姿勢で溶接を行う。
【0018】
なお、第1部材W1及び第2部材W2の溶接時の向きは上述に限定されず、例えば、第1部材W1の中心軸が水平方向と平行となるように第1部材W1及び第2部材W2を配置してもよい。
【0019】
第1部材W1と第2部材W2との溶接位置Pは、第1部材W1の上端と第2部材W2の下端とが円環状に重なった位置である。なお、スパッタは部材同士の隙間からも第1部材W1及び第2部材W2の内部空間に飛散する。
【0020】
スパッタ捕集装置1は、第1部材W1と第2部材W2との溶接の際に、第1部材W1の内部空間に発生するスパッタを捕集する。スパッタ捕集装置1は、捕集部材2と、カバー3と、支持部材4とを備える。
【0021】
<捕集部材>
捕集部材2は、磁力を有する磁性体である。捕集部材2は、永久磁石であってもよいし、電磁石であってもよい。捕集部材2として永久磁石を用いると、スパッタ捕集装置1のセッティングから溶接開始までの待ち時間を不要とできる。
【0022】
一方、捕集部材2として電磁石を用いると、電源を切ることで、捕集部材2又はカバー3に付着したスパッタを落下させることができる。その結果、捕集部材2又はカバー3の交換頻度が下げられるため、溶接コストを低減できる。
【0023】
本実施形態の捕集部材2は、第1面21と第2面22とを有する柱状体である。第1面21は、鉛直方向上方を向いている。第2面22は、鉛直方向下方を向いており、後述する支持部材4のボルト42に下方から支えられている。
【0024】
第1面21及び第2面22は、それぞれ磁極を構成している。第1面21はN極及びS極のいずれであってもよい。つまり、捕集部材2の磁力線は、第1面21から出て第2面22に入るか、又は、第2面22から出て第1面21に入る。
【0025】
<カバー>
カバー3は、捕集部材2の外面のうち、下面以外の全体を覆っている。カバー3は、捕集部材2と第1部材W1及び第2部材W2の内面との間に配置されている。そのため、溶接位置Pにおける溶接で発生したスパッタは、カバー3の外面に付着する。
【0026】
カバー3は、円筒状の筒体31と、第1キャップ32と、第2キャップ33とを有する。筒体31は、軸方向が鉛直方向と平行となるように配置されている。第1キャップ32は、筒体31の上端を塞いでいる。第2キャップ33は、筒体31の下端を塞いでいる。第2キャップ33には、後述するボルト42が貫通する孔が設けられている。
【0027】
カバー3は、捕集部材2と共に、支持部材4によって支持されている。具体的には、カバー3の第2キャップ33は、支持部材4に載置されている。また、カバー3は、その全体が第1部材W1の内部に配置されている。つまり、カバー3は、第1部材W1と第2部材W2との溶接位置Pよりも下方に配置されている。
【0028】
カバー3は、スパッタの付着量が多くなった時点で交換される。本実施形態では、カバー3のうち、筒体31と第1キャップ32とが交換される。つまり、支持部材4に固定された第2キャップ33から筒体31と第1キャップ32とが取り外され、新しい筒体31と第1キャップ32とが第2キャップ33に装着される。
【0029】
カバー3は、非磁性体であるとよい。カバー3を非磁性体とすることで、カバー3によって、捕集部材2の磁力が遮断、又は減衰されることが抑制される。そのため、捕集部材2のスパッタの捕集範囲を維持しつつ、捕集部材2へのスパッタの付着を抑えることができる。
【0030】
特に、カバー3は、少なくともスパッタが付着する筒体31と第1キャップ32とが非磁性体であるとよい。例えば、筒体31と第1キャップ32とを非磁性体であるアルミニウムで形成し、第2キャップ33をステンレスで形成してもよい。
【0031】
さらに、カバー3を伝熱性の低い材質とすることで、溶接時における内部空間から捕集部材2への伝熱を抑制できる。これにより、捕集部材2が加熱によって劣化する(つまり捕集部材2の磁力が低下する)ことを抑制できる。
【0032】
<支持部材>
支持部材4は、捕集部材2を支持する部材である。支持部材4は、捕集部材2を第1部材W1の内部空間に配置している。支持部材4は、基台41と、ボルト42と、ナット43とを有する。
【0033】
基台41は、第1部材W1及びカバー3が載置された載置面41Aを有する。ボルト42は、基台41とカバー3の第2キャップ33とを鉛直方向に貫通している。ボルト42の頭部は、カバー3の内部に配置され、ボルト42の頭部の上には、捕集部材2が載置されている。また、ボルト42は、ナット43と共に、基台41に第2キャップ33を締結している。
【0034】
支持部材4は、第1部材W1と第2部材W2との溶接位置(つまり溶接部材における溶接位置)Pよりも鉛直方向下方に捕集部材2が位置するように、捕集部材2をボルト42等によって支持している。つまり、捕集部材2の第1面21は、溶接位置Pよりも下方に位置している。
【0035】
また、支持部材4は、捕集部材2の第1面21が第1部材W1と第2部材W2との溶接位置Pを向くように捕集部材2を支持している。ここで、「第1面21が溶接位置Pを向く」とは、第1面21から溶接位置Pまで、カバー3以外の部材に遮られずに直線が引ける位置関係を意味する。
【0036】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)捕集部材2の磁力によって、第1部材W1の内部空間で発生したスパッタが捕集部材2に引き寄せられる。その結果、広範囲においてスパッタを捕集部材2に捕集することができるので、溶接時のスパッタの捕集性が高められる。
【0037】
(1b)支持部材4によって捕集部材2の位置及び姿勢の調整が容易に行えるため、捕集部材2の捕集性能が高められる。
【0038】
(1c)スパッタ捕集装置1が捕集部材2を覆うカバー3を備えることで、溶接時に捕集部材2に引き寄せられるスパッタがカバー3に付着する。そのため、捕集部材2の再利用が容易になる。
【0039】
(1d)第1部材W1と第2部材W2との溶接位置Pよりも鉛直方向下方に捕集部材2が位置することで、自重によって落下するスパッタを捕集部材2に誘導できる。そのため、捕集部材2の捕集性能が高められる。
【0040】
(1e)捕集部材2の第1面21が第1部材W1と第2部材W2との溶接位置Pを向くことで、磁力が最も強い磁極にスパッタの発生源を近接させられる。そのため、捕集部材2の捕集性能が高められる。
【0041】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図3に示すスパッタの捕集方法は、図1のスパッタ捕集装置1を用いて、第1部材W1に第2部材W2を溶接する際に発生するスパッタを捕集する方法(つまり、第1部材W1と第2部材W2との溶接方法)である。当該スパッタの捕集方法は、配置工程S10と、溶接工程S20と、取出工程S30とを備える。
【0042】
<配置工程>
本工程では、第1部材W1の内部空間に、カバー3と共に支持部材4に支持された捕集部材2を配置する。
【0043】
具体的には、まず、捕集部材2をカバー3の内部に収納すると共に、ボルト42及びナット43によってカバー3を基台41に締結する。その後、カバー3を囲うように、第1部材W1を基台41に載置する。
【0044】
なお、2回目以降(つまり、一度捕集部材2を用いて溶接を行った後)の溶接作業では、カバー3がすでに基台41に締結されているので、本工程では第1部材W1の載置のみを行えばよい。
【0045】
<溶接工程>
本工程では、捕集部材2を第1部材W1の内部空間に配置した状態で、第1部材W1に第2部材W2を溶接する。
【0046】
<取出工程>
本工程では、捕集部材2を第1部材W1の内部空間から取り出す。つまり、溶接された第1部材W1と第2部材W2とを基台41から離間させる。これにより、第1部材W1に第2部材W2が溶接された溶接品が得られる。
【0047】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)溶接工程S20において、捕集部材2の磁力によって、第1部材W1の内部空間で発生したスパッタが捕集部材2に引き寄せられる。その結果、広範囲においてスパッタを捕集部材2に捕集することができるので、スパッタの付着が抑制された溶接品が得られる。
【0048】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0049】
(3a)上記実施形態のスパッタ捕集装置1は、1つの部材の端部同士を接合させることによって内部空間を有する溶接部材を形成する溶接にも適用可能である。例えば、図4に示す部材W3は、板材を円筒状に丸めた形状を有する。部材W3は、周方向の端部同士が突き合わされた溶接位置(つまり溶接ライン)PにおいてトーチTによって軸方向に溶接されることで、パイプ形状の溶接部材に加工される。
【0050】
部材W3の溶接時において、熱変形によって部材W3の接合端部間に隙間ができ、スパッタが内部空間に飛散する可能性がある。そのため、捕集部材2を部材W3の内部空間(つまりパイプの中空部を構成する部分)に配置することで、内部空間に飛散するスパッタが捕集される。
【0051】
(3b)上記実施形態のスパッタ捕集装置1において、必ずしも溶接部材における溶接位置Pよりも鉛直方向下方に捕集部材2が位置しなくてもよい。また、必ずしも捕集部材2の第1面21が溶接部材における溶接位置Pを向かなくてもよい。
【0052】
(3c)上記実施形態のスパッタ捕集装置1は、必ずしも支持部材4を備えなくてもよい。つまり、溶接部材の内面等に直接捕集部材2が配置されてもよい。
【0053】
(3d)上記実施形態のスパッタ捕集装置1は、必ずしもカバー3を備えなくてもよい。つまり、溶接位置Pにおける溶接で発生したスパッタが捕集部材2の外面に直接付着してもよい。
【0054】
(3e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0055】
1…スパッタ捕集装置、2…捕集部材、3…カバー、4…支持部材、21…第1面、
22…第2面、31…筒体、32…第1キャップ、33…第2キャップ、41…基台、
41A…載置面、42…ボルト、43…ナット。
図1
図2
図3
図4