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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
F16B2/12 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019085182
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180666
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000205007
【氏名又は名称】大研医器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】大橋 慶郎
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-045114(JP,A)
【文献】特開2015-042895(JP,A)
【文献】特開2007-125248(JP,A)
【文献】特開平01-112011(JP,A)
【文献】特開2015-232366(JP,A)
【文献】特表平10-501048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/00-9/00
31/00
39/00-39/28
B23Q 3/00- 3/154
3/16- 3/18
F16B 2/00- 2/26
23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側把持面を有する固定部材と、
前記固定側把持面との間で被固定物を把持する可動側把持面を有し、前記可動側把持面が前記固定側把持面に対して進退可能な可動部材と、
前記可動部材の進退方向に沿って延びるとともに、軸心を中心に回転自在に前記可動部材に取り付けられ、かつ、前記進退方向に前記可動部材と一体に移動可能に前記固定部材に取り付けられた軸体と、
前記固定部材及び前記軸体のうちの一方の第1部材に設けられた第1ねじ部と、前記固定部材及び前記軸体のうちの他方の第2部材に取り付けられ、前記軸心を中心とする周方向の一部の領域に設けられた第2ねじ部材と、前記第2部材と前記第2ねじ部材との間に設けられ、前記第2ねじ部材を前記第1ねじ部に付勢するねじ用付勢部材と、を有し、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部材との螺合により前記進退方向に移動可能となるように前記軸体を支持する軸体支持機構と、
前記第1ねじ部と前記第2ねじ部材とが互いに螺合した螺合状態と、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れて前記螺合が解除された螺合解除状態との間で前記軸体の支持状態を切り換える螺合切換機構と、
記軸体の回転を阻止するための回転阻止部と、を備え、
前記螺合切換機構は、前記軸体の回転力によって前記第2ねじ部材を前記第1ねじ部から引き離すように押圧する押圧部と、前記軸体と一体に前記周方向に回転して前記軸体の回転力を前記押圧部に伝達するように前記押圧部と係合する回転伝達部と、を有し、
前記押圧部の前記周方向の一回転範囲には、前記第2ねじ部材を押圧して前記軸体の支持状態を前記螺合解除状態にする押圧区域と、前記第2ねじ部材の押圧を解除して前記軸体の支持状態を前記螺合状態にする押圧解除区域と、が設定され、
前記回転阻止部は、前記押圧部が前記周方向に回転したときに、前記押圧部に前記周方向に接触することによって前記押圧部の回転を阻止するように構成され、
前記回転伝達部は、前記押圧部が前記回転阻止部に接触した状態で前記押圧部が前記回転阻止部から一定以上の反力を受けることにより、前記押圧部に対して相対回転するように前記押圧部に係合しており、
前記回転阻止部は、前記押圧部が前記第2ねじ部材を押圧する方向とは反対方向に前記軸体が回転したときに、前記螺合状態から前記螺合解除状態に前記軸体の支持状態が移行するのを阻止する螺合状態回転阻止部を有する
クランプ装置。
【請求項2】
固定側把持面を有する固定部材と、
前記固定側把持面との間で被固定物を把持する可動側把持面を有し、前記可動側把持面が前記固定側把持面に対して進退可能な可動部材と、
前記可動部材の進退方向に沿って延びるとともに、軸心を中心に回転自在に前記可動部材に取り付けられ、かつ、前記進退方向に前記可動部材と一体に移動可能に前記固定部材に取り付けられた軸体と、
前記固定部材及び前記軸体のうちの一方の第1部材に設けられた第1ねじ部と、前記固定部材及び前記軸体のうちの他方の第2部材に取り付けられ、前記軸心を中心とする周方向の一部の領域に設けられた第2ねじ部材と、前記第2部材と前記第2ねじ部材との間に設けられ、前記第2ねじ部材を前記第1ねじ部に付勢するねじ用付勢部材と、を有し、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部材との螺合により前記進退方向に移動可能となるように前記軸体を支持する軸体支持機構と、
前記第1ねじ部と前記第2ねじ部材とが互いに螺合した螺合状態と、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れて前記螺合が解除された螺合解除状態との間で前記軸体の支持状態を切り換える螺合切換機構と、
記軸体の回転を阻止するための回転阻止部と、を備え、
前記螺合切換機構は、前記軸体の回転力によって前記第2ねじ部材を前記第1ねじ部から引き離すように押圧する押圧部と、前記軸体と一体に前記周方向に回転して前記軸体の回転力を前記押圧部に伝達するように前記押圧部と係合する回転伝達部と、を有し、
前記押圧部の前記周方向の一回転範囲には、前記第2ねじ部材を押圧して前記軸体の支持状態を前記螺合解除状態にする押圧区域と、前記第2ねじ部材の押圧を解除して前記軸体の支持状態を前記螺合状態にする押圧解除区域と、が設定され、
前記回転阻止部は、前記押圧部が前記周方向に回転したときに、前記押圧部に前記周方向に接触することによって前記押圧部の回転を阻止するように構成され、
前記回転伝達部は、前記押圧部が前記回転阻止部に接触した状態で前記押圧部が前記回転阻止部から一定以上の反力を受けることにより、前記押圧部に対して相対回転するように前記押圧部に係合しており、
前記回転阻止部は、前記押圧部が前記第2ねじ部材を押圧する方向に前記軸体が回転したときに、前記螺合解除状態から前記螺合状態に前記軸体の支持状態が移行するのを阻止する螺合解除状態回転阻止部を有する
クランプ装置。
【請求項3】
前記回転阻止部は、前記押圧部が前記第2ねじ部材を押圧する方向に前記軸体が回転したときに、前記螺合解除状態から前記螺合状態に前記軸体の支持状態が移行するのを阻止する螺合解除状態回転阻止部を有する、
請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記第2部材は、前記螺合状態において前記第1ねじ部のねじ山における前記進出方向に向く進出面から前記進出方向の力を前記第2ねじ部材が受けたときに、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れる方向に移動するのを許容するように前記第2ねじ部材を支持する移動許容部を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記押圧部と前記第2ねじ部材のうちの少なくとも一方は、前記回転力を前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れる方向の力に変換するように形成された変換面を有する、
請求項4に記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記移動許容部は、前記第2ねじ部材が前記押圧から押圧された場合と、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部の前記進出面から前記進出方向の力を受けた場合と、のうちの少なくとも一方の場合において、前記進出方向に向かって前記第1ねじ部から離れるように斜めに前記第2ねじ部材を案内する傾斜案内面を有する、
請求項5に記載のクランプ装置。
【請求項7】
前記移動許容部は、前記螺合状態において前記第1ねじ部のねじ山における前記退出方向に向く退出面から前記退出方向の力を前記第2ねじ部材が受けたときに、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れる方向に移動するのを規制するように前記第2ねじ部材に接触する規制面を有する、
請求項4~6のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記押圧部は、前記周方向に連続するように形成された複数の係合部を有し、
前記回転伝達部は、前記複数の係合部と係合する複数の被係合部を有し、前記押圧部が前記回転阻止部に接触した状態で前記押圧部が前記回転阻止部から一定以上の反力を受けると、前記押圧部に対して前記退出方向の移動と前記進出方向の移動とを繰り返すことによって前記係合と係合解除とを繰り返すことにより、前記押圧部に対して相対回転するように構成されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【請求項9】
前記第2ねじ部材は、前記第1ねじ部と螺合する第2ねじ部と、前記第2ねじ部と直交する方向に面し、前記押圧部から押圧される受け面と、を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液ポンプを輸液スタンドのポール等に取り付けるためのクランプ装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のクランプ装置は、輸液ポンプが取り付けられ、固定側把持面を有する固定部材と、前記固定側把持面との間で被固定物を把持する可動側把持面を有し、前記可動側把持面が前記固定側把持面に対して進退可能となるように前記固定部材に取り付けられた可動部材と、前記可動部材の進退方向に沿って延びるとともに、前記進退方向に前記可動部材と一体に移動可能で、かつ、軸心を中心に回転自在に前記可動部材に一端が取り付けられた軸体と、を備える。さらに、前記クランプ装置は、前記軸体に設けられた雄ねじ部と、前記固定部材における前記軸体の軸心を中心とする周方向の一部に設けられた雌ねじ部材と、雌ねじ部材を前記雄ねじ部に付勢する付勢部材と、を有し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部材との螺合により前記進退方向に移動可能となるように前記軸体を支持する軸体支持機構を備える。さらに、前記クランプ装置は、前記軸体の他端に固定され、前記軸心を中心に前記軸体を回転させるための第1操作部材と、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との螺合を解除する螺合解除機構を備える。
【0003】
前記螺合解除機構は、前記軸体と間隔を空けて前記軸体と平行に延び、前記軸体の軸心を中心に回転自在に前記可動部材に取り付けられた螺合解除部材と、前記軸体が回転自在に挿入され、前記螺合解除部材の一端に固定された第2操作部材と、を備える。
【0004】
このクランプ装置の取付操作では、まず、作業者は、前記第2操作部材を回転させると、前記螺合解除部材が前記雌ねじ部材を押圧して、前記雌ねじ部材が前記雄ねじ部から離れることによって前記螺合が解除される。この状態で、作業者は、前記軸体を前記進退方向の進出方向に移動させ、前記可動側把持面と前記固定側把持面との間にポールを挟み込む。次いで、作業者は、第2操作部材から手を離すと、前記付勢部材の付勢力によって前記雌ねじ部材が前記雄ねじ部に螺合する。最後に、作業者は、第1操作部材を回転させて、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との間のねじ作用によってポールを締め付ける。このようにして、クランプ装置が輸液スタンドのポールに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-42895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のクランプ装置では、輸液ポンプのポールに取り付けられる際に、第1操作部材と第2操作部材の2つの操作部材を操作する必要があるので、クランプ装置の取付作業が煩雑であり、操作対象を誤りやすいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、その目的は、簡単な操作によって被固定物に取り付けることができるクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係るクランプ装置は、固定側把持面を有する固定部材と、前記固定側把持面との間で被固定物を把持する可動側把持面を有し、前記可動側把持面が前記固定側把持面に対して進退可能な可動部材と、前記可動部材の進退方向に沿って延びるとともに、軸心を中心に回転自在に前記可動部材に取り付けられ、かつ、前記進退方向に前記可動部材と一体に移動可能に前記固定部材に取り付けられた軸体と、前記固定部材及び前記軸体のうちの一方の第1部材に設けられた第1ねじ部と、前記固定部材及び前記軸体のうちの他方の第2部材に取り付けられ、前記軸心を中心とする周方向の一部の領域に設けられた第2ねじ部材と、前記第2部材と前記第2ねじ部材との間に設けられ、前記第2ねじ部材を前記第1ねじ部に付勢するねじ用付勢部材と、を有し、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部材との螺合により前記進退方向に移動可能となるように前記軸体を支持する軸体支持機構と、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部材とが互いに螺合した螺合状態と、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れて前記螺合が解除された螺合解除状態との間で前記軸体の支持状態を切り換える螺合切換機構と、前記軸体の回転を阻止するための回転阻止部と、を備える。前記螺合切換機構は、前記軸体の回転力によって前記第2ねじ部材を前記第1ねじ部から引き離すように押圧する押圧部と、前記軸体と一体に前記周方向に回転して前記軸体の回転力を前記押圧部に伝達するように前記押圧部と係合する回転伝達部と、を有する。前記押圧部の前記周方向の一回転範囲には、前記第2ねじ部材を押圧して前記軸体の支持状態を前記螺合解除状態にする押圧区域と、前記第2ねじ部材の押圧を解除して前記軸体の支持状態を前記螺合状態にする押圧解除区域と、が設定される。前記回転阻止部は、前記押圧部が前記周方向に回転したときに、前記押圧部に前記周方向に接触することによって前記押圧部の回転を阻止するように構成される。前記回転伝達部は、前記押圧部が前記回転阻止部に接触した状態で前記押圧部が前記回転阻止部から一定以上の反力を受けることにより、前記押圧部に対して相対回転するように前記押圧部に係合している。前記回転阻止部は、前記押圧部が前記第2ねじ部材を押圧する方向とは反対方向に前記軸体が回転したときに、前記螺合状態から前記螺合解除状態に前記軸体の支持状態が移行するのを阻止する螺合状態回転阻止部を有する。
【0009】
この構成によれば、押圧部は、回転伝達部から軸体の回転力が伝達されると、その回転力により第2ねじ部材を第1ねじ部から引き離すように押圧する。その結果、第2ねじ部材が第1ねじ部から離れ、軸体の支持状態が螺合状態から螺合解除状態に切り換えられる。螺合解除状態では、軸体は、第2ねじ部材に拘束されることなく、進退方向に自由に移動することができるので、作業者は、固定側把持面と可動側把持面とを被固定物にスムーズに近付けることができる。一方、螺合解除状態において、押圧部は、前記方向とは反対方向の軸体の回転力が回転伝達部から伝達されると、第2ねじ部材は、押圧部による押圧が解除され、ねじ用付勢部材の付勢力によって第1ねじ部に近づく方向に移動して第1ねじ部と螺合する。その結果、軸体の支持状態が螺合解除状態から螺合状態に切り替えられる。この螺合状態で、さらに軸体を回転させると、第1ねじ部と第2ねじ部材との間のねじ作用により、固定側把持面と可動側把持面との間で被固定物を締め付けることができる。このように、固定部材に対する軸体という1つの部材を回転させるだけによってクランプ装置を被固定物に取り付けることができるので、クランプ装置の簡単な取付操作を実現できる。
【0010】
また、回転阻止部は、押圧部が前記周方向に回転したときに、押圧部に周方向に接触することによって押圧部の回転を阻止するように構成されているので、作業者が、螺合解除状態または螺合状態に向けて軸体を回転する際に、軸体を回転しすぎて、意図せず軸体の支持状態を変更してしまうことを防止することができる。
【0011】
さらに、回転伝達部は、押圧部が回転阻止部に接触した状態で押圧部が回転阻止部から一定以上の反力を受けることにより、押圧部に対して相対回転するように押圧部に係合しているので、押圧部の回転が回転阻止部によって阻止されても、軸体と一体に回転する回転伝達部は、押圧部に対して回転を続けることができる。したがって、上述のように意図しない支持状態への変更を防止しつつ、軸体の回転に規制がかからないとの誤解に基づく操作継続によって装置が故障するのを防止できる。
【0012】
さらに、この構成によれば、例えば、螺合解除状態から螺合状態に軸体の支持状態を切り換える際に、軸体を回転しすぎて、誤って螺合解除状態にしてしまうことを防止することができる。さらに、螺合状態が維持された状態で軸体を回転させることができるので、螺合状態において確実にねじ作用を発生させることができる。そのため、固定側把持面と可動部材との間で被固定物をねじ作用により確実に締め付けることができる。
【0013】
本発明の別の局面に係るクランプ装置は、固定側把持面を有する固定部材と、前記固定側把持面との間で被固定物を把持する可動側把持面を有し、前記可動側把持面が前記固定側把持面に対して進退可能な可動部材と、前記可動部材の進退方向に沿って延びるとともに、軸心を中心に回転自在に前記可動部材に取り付けられ、かつ、前記進退方向に前記可動部材と一体に移動可能に前記固定部材に取り付けられた軸体と、前記固定部材及び前記軸体のうちの一方の第1部材に設けられた第1ねじ部と、前記固定部材及び前記軸体のうちの他方の第2部材に取り付けられ、前記軸心を中心とする周方向の一部の領域に設けられた第2ねじ部材と、前記第2部材と前記第2ねじ部材との間に設けられ、前記第2ねじ部材を前記第1ねじ部に付勢するねじ用付勢部材と、を有し、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部材との螺合により前記進退方向に移動可能となるように前記軸体を支持する軸体支持機構と、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部材とが互いに螺合した螺合状態と、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れて前記螺合が解除された螺合解除状態との間で前記軸体の支持状態を切り換える螺合切換機構と、前記軸体の回転を阻止するための回転阻止部と、を備える。前記螺合切換機構は、前記軸体の回転力によって前記第2ねじ部材を前記第1ねじ部から引き離すように押圧する押圧部と、前記軸体と一体に前記周方向に回転して前記軸体の回転力を前記押圧部に伝達するように前記押圧部と係合する回転伝達部と、を有する。前記押圧部の前記周方向の一回転範囲には、前記第2ねじ部材を押圧して前記軸体の支持状態を前記螺合解除状態にする押圧区域と、前記第2ねじ部材の押圧を解除して前記軸体の支持状態を前記螺合状態にする押圧解除区域と、が設定される。前記回転阻止部は、前記押圧部が前記周方向に回転したときに、前記押圧部に前記周方向に接触することによって前記押圧部の回転を阻止するように構成される。前記回転伝達部は、前記押圧部が前記回転阻止部に接触した状態で前記押圧部が前記回転阻止部から一定以上の反力を受けることにより、前記押圧部に対して相対回転するように前記押圧部に係合している。前記回転阻止部は、前記押圧部が前記第2ねじ部材を押圧する方向に前記軸体が回転したときに、前記螺合解除状態から前記螺合状態に前記軸体の支持状態が移行するのを阻止する螺合解除状態回転阻止部を有する。
【0014】
上記本発明の一局面に係るクランプ装置の構成において、前記回転阻止部は、前記押圧部が前記第2ねじ部材を押圧する方向に前記軸体が回転したときに、前記螺合解除状態から前記螺合状態に前記軸体の支持状態が移行するのを阻止する螺合解除状態回転阻止部を有してもよい。
【0015】
螺合解除状態回転阻止部を有するれらの構成によれば、螺合状態から螺合解除状態に軸体の支持状態を切り換える際に、軸体を回転しすぎて、誤って螺合状態にしてしまうことを防止することができる。
【0016】
上記構成において、前記第2部材は、前記螺合状態において前記第1ねじ部のねじ山における前記進出方向に向く進出面から前記進出方向の力を前記第2ねじ部材が受けたときに、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れる方向に移動するのを許容するように前記第2ねじ部材を支持する移動許容部を有してもよい。
【0017】
この構成によれば、螺合状態において軸体に進出方向の力を作用させると、第2ねじ部材は、第1ねじ部のねじ山における進出面から進出方向の力を受けて第1ねじ部から離れる方向に移動する。そのため、作業者は、軸体の支持状態を螺合状態から螺合解除状態に切り換えなくても、軸体に進出方向の力を作用させるだけで、軸体を進出方向に移動させることができるので、被固定物を固定側把持面と可動側把持面とによって挟み込む作業が容易になる。
【0018】
上記構成において、前記押圧部と前記第2ねじ部材のうちの少なくとも一方は、前記回転力を前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れる方向の力に変換するように形成された変換面を有してもよい。
【0019】
この構成によれば、第2ねじ部材は、押圧部から押圧される際の第2ねじ部材を第1ねじ部から引き離す方向の力が大きくなる。そのため、第2ねじ部材が押圧部から押圧されたときに、第1ねじ部から離れる方向への第2ねじ部材の移動が移動許容部によって許容されやすくなるので、軸体の支持状態を螺合状態から螺合解除状態にスムーズに切り換えることができる。
【0020】
上記構成において、前記移動許容部は、前記第2ねじ部材が前記押圧から押圧された場合と、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部の前記進出面から前記進出方向の力を受けた場合と、のうちの少なくとも一方の場合において、前記進出方向に向かって前記第1ねじ部から離れるように斜めに前記第2ねじ部材を案内する傾斜案内面を有してもよい。
【0021】
この構成によれば、第2ねじ部材は、押圧部の押圧面から押圧されるときや、第1ねじ部の進出面から押圧されるときに、進出方向に向かって第1ねじ部から離れるように斜めに傾斜案内面によって案内されるので、第1ねじ部から離れやすくなる。そのため、軸体の支持状態を螺合状態から螺合解除状態によりスムーズに切り換えることができるとともに、被固定物を固定側把持面と可動側把持面とによって挟み込む作業をよりスムーズに行うことができる。
【0022】
上記構成において、前記移動許容部は、前記螺合状態において前記第1ねじ部のねじ山における前記退出方向に向く退出面から前記退出方向の力を前記第2ねじ部材が受けたときに、前記第2ねじ部材が前記第1ねじ部から離れる方向に移動するのを規制するように前記第2ねじ部材に接触する規制面を有してもよい。
【0023】
この構成によれば、螺合状態において軸体に退出方向の力を作用させたときに、第1ねじ部のねじ山における退出面から退出方向の力を第2ねじ部材が受けても、その第2ねじ部材は、第1ねじ部から離れる方向に移動するのを規制するように規制面に接触するので、螺合状態が維持される。そのため、軸体が退出方向に移動することができず、固定側把持面と可動側把持面とによる被固定物の挟み込みが誤って解除されてしまうことが防止される。
【0024】
上記構成において、前記押圧部は、前記周方向に連続するように形成された複数の係合部を有してもよい。前記回転伝達部は、前記複数の係合部と係合する複数の被係合部を有し、前記押圧部が前記回転阻止部に接触した状態で前記押圧部が前記回転阻止部から一定以上の反力を受けると、前記押圧部に対して前記退出方向の移動と前記進出方向の移動とを繰り返すことによって前記係合と係合解除とを繰り返すことにより、前記押圧部に対して相対回転するように構成されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、回転伝達部は、押圧部に対して相対回転するときに、押圧部に対して退出方向の移動と進出方向の移動とを繰り返すことによって係合と係合解除とを繰り返すので、この係合と係合解除の繰り返しによる接触音または感触が発生する。一方、回転阻止部に押圧部が接触していない状態では、回転伝達部と押圧部とは、係合部と被係合部との係合によって一体に回転するので、接触音または感触は発生しない。そのため、作業者は、前記接触音または感触を体感することにより、軸体の支持状態が、完全に切り換えられたか、もしくは、切換え途中の段階にあるのか知ることができる。
【0026】
上記構成において、前記第2ねじ部材は、前記第1ねじ部と螺合する第2ねじ部と、前記第2ねじ部と直交する方向に面し、前記押圧部から押圧される受け面と、を有してもよい。
【0027】
この構成によれば、第2ねじ部材が押圧部から押圧されるときに、第2ねじ部と直交する方向に面する受け面が押圧されるので、第2ねじ部は、押圧部に押圧されない。そのため、第2ねじ部の摩耗を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡単な操作によってクランプ装置を被固定物に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係るクランプ装置の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るクランプ装置の分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るクランプ装置の螺合状態を示す部分拡大断面図である。
図4】(a)は雌ねじ部材の退出側接触面を示す拡大斜視図であり、(b)は雌ねじ部材の進出側接触面を示す拡大斜視図であり、(c)は図3において雌ねじ部の最も退出側の位置で軸体に直交する平面で切断して退出方向側から見た簡略断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るクランプ装置の螺合切換機構を示すための側面図である。
図6図3のVI-VI線で切断した断面図である。
図7図3のVI-VI線で切断した断面図であって、本発明の実施形態に係るクランプ装置の押圧面によって雌ねじ部材が押圧された状態を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るクランプ装置の螺合解除状態を示す部分拡大断面図である。
図9】本発明の実施形態に係るクランプ装置の伝達部材が押圧部に対して相対回転した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態に係るクランプ装置1を説明するために必要となる主要な構成要素を簡略化して示したものである。したがって、本発明の実施形態に係るクランプ装置1は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成要素を備え得る。
【0031】
クランプ装置1は、輸液ポンプやシリンジポンプを含む医療用ポンプ(図示省略)などの被取付物をスタンドのポール等の被固定物に固定するための装置である。具体的には、クランプ装置1は、図1、2に示すように、固定部材2と、可動部材3と、軸体4と、軸体支持機構5と、螺合切換機構6と、回転阻止部7と、を備える。クランプ装置1は、固定部材2の後述する固定側把持面10aと可動部材3の後述する可動側把持面28aとの間で被固定物を挟み込むことによって被固定物に固定される。
【0032】
以下、固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間隔が狭くなる方向に可動部材3が移動する方向を進出方向と言う。固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間隔が広くなる方向に可動部材3が移動する方向を退出方向と言う。進出方向と退出方向を合せて進退方向と言う。
【0033】
固定部材2は、可動部材3との間で被固定物を把持する固定側把持部10と、軸体4が取り付けられる軸体取付部11と、固定側把持部10と軸体取付部11とを連結する連結部12と、被取付物が載置される載置台(図示省略)を取り付けるための載置台取付部13と、を有する。
【0034】
固定側把持部10は、可動部材3との間で被固定物を把持するように前記退出方向を向く固定側把持面10aを有する。固定側把持面10aは、前記進出方向に凹むように形成されている。これにより、固定側把持面10aは、可動部材3との間で被固定物を把持しやすくしている。
【0035】
軸体取付部11は、固定側把持部10に対して前記退出方向に間隔を空けて配置されている。軸体取付部11は、略直方体状の収納空間を内部に有する箱型の箱型ハウジング14と、箱型ハウジング14の前記収納空間に配置され、軸体4を前記進退方向に移動自在に支持する筒状の軸体支持部15と、を有する。尚、箱型ハウジング14と軸体支持部15とは、一体に結合されていてもよい。
【0036】
箱型ハウジング14は、前記進退方向に前記収納空間を開放するように形成されている。箱型ハウジング14の前記退出方向の開放部は、前記退出方向から軸体支持部15を前記収納空間に収めることができる大きさに形成されている。箱型ハウジング14の前記進出方向の開放部は、軸体4が前記進退方向に移動自在となるように軸体4に接触しない大きさに形成されている。
【0037】
箱型ハウジング14の内面には、図3に示すように、軸体支持機構5の後述のねじ用付勢部材43が取り付けられるハウジング側ばね取付面14aが設けられている。ハウジング側ばね取付面14aは、軸体支持機構5の後述の雌ねじ部材42と対向するように配置されている。ハウジング側ばね取付面14aには、ねじ用付勢部材43の一端部が嵌め込まれるばね取付用穴(図示省略)が設けられている。
【0038】
軸体支持部15は、軸体4を前記進退方向に移動自在に挿通させるために前記進退方向に延びて軸体挿通空間を形成する軸体挿通孔16と、軸体挿通孔16から軸体支持部15を半径方向に延びて雌ねじ部材42が配置されるねじ配置空間を形成するねじ配置孔18と、を有する。
【0039】
軸体挿通孔16は、軸体4を摺動可能に挿通する摺動部分と、前記退出方向側において螺合切換機構6の後述の押圧部61を挿入可能な押圧部挿通空間17を形成するように、摺動部分よりも大きな径を有する拡径部分と、を有する。詳細は後述するが、押圧部61は、押圧部挿通空間17に入り込んだ状態で、雌ねじ部材42を軸体支持機構5の後述の雄ねじ部41から引き離すように押圧可能に構成されている。
【0040】
ねじ配置孔18は、雌ねじ部材42が押圧部61から押圧された場合や、雌ねじ部材42の後述の雌ねじ部45が雄ねじ部41から前記進出方向に押圧された場合に、雄ねじ部41から離れるように移動するのを許容するものである。ねじ配置孔18は、雌ねじ部材42の一部が押圧部挿通空間17に位置できるように、押圧部挿通空間17から半径方向に延びている。
【0041】
ねじ配置孔18は、雌ねじ部材42の移動方向に対する直角方向のうち軸体4の軸心を中心とする周方向の両側から雌ねじ部材42を支持する一対の周方向側支持面21と、雌ねじ部材42の移動方向に対する直角方向のうち雌ねじ部材42を前記進出方向側から支持する進出側支持面22と、雌ねじ部材42の移動方向に対する直角方向のうち雌ねじ部材42を前記退出方向側から支持する退出側支持面24と、を有する。
【0042】
進出側支持面22は、軸体支持部15の半径方向に対して前記進出方向に傾斜するように形成されている。これにより、雌ねじ部材42の後述の雌ねじ部45が雄ねじ部41の後述の進出面41aから前記進出方向に押圧された場合に、雌ねじ部材42は、進出側支持面22に沿って雄ねじ部45から前記進出方向の斜めに離れるように案内される。
【0043】
退出側支持面24は、進出側支持面22と平行になるように、軸体支持部15の半径方向に対して前記進出方向に傾斜するように形成されている。これにより、雌ねじ部材42が押圧部61から押圧された場合に、雌ねじ部材42は、退出側支持面24に沿って雄ねじ部45から前記進出方向の斜めに離れるように案内される。さらに、雌ねじ部45が雄ねじ部41の後述の退出面41bから前記退出方向に押圧された場合に、雌ねじ部材42が退出側支持面24から雄ねじ部41に近づく方向の力を受けることにより、雌ねじ部材42の雄ねじ部45から離れる方向への移動が規制される。進出側支持面22と退出側支持面24とは、傾斜案内面の一例である。退出側支持面24は、規制面の一例でもある。
【0044】
尚、進出側支持面22と退出側支持面24とは、軸体支持部15の半径方向に対して前記進出方向に傾斜していなくてもよい。この場合、進出側支持面22と退出側支持面24とは、軸体支持部15の半径方向に延びるように形成される。ねじ配置孔18は、移動許容部の一例である。
【0045】
軸体支持部15の外面形状は、箱型ハウジング14の内面に嵌め込むことができるように、略直方体状の前記収納空間の大きさに対応する略直方体状に形成されている。これにより、軸体支持部15は、箱型ハウジング14の前記退出方向から前記収納空間に嵌め込むことによって箱型ハウジング14の内面に回転不能に取り付けられる。このとき、軸体支持部15は、ねじ配置孔18がハウジング側ばね取付面14aと向かい合う向きで箱型ハウジング14の内面に取り付けられる。
【0046】
連結部12は、固定側把持部10における前記進退方向と直交する方向の端部と軸体取付部11における前記進退方向と直交する方向の端部とを連結している(図1参照)。
【0047】
載置台取付部13は、連結部12における固定側把持部10とは反対側の面に設けられている。載置台取付部13は、連結部12から突出する突出片25と、突出片25に形成された雌ねじ26と、を有する。これにより、載置台に形成された貫通孔にボルトを差し込んで雌ねじ26と螺合することによって載置台が載置台取付部13に取り付けることができるように構成されている。載置台取付部13は、本実施形態では、前記進退方向に間隔を空けて2つ設けられているが、載置台を載置台取付部13に取り付けることができれば、載置台取付部13の数は、特に限定されない。載置台取付部13は、1つでもよく、3つ以上設けられてもよい。固定部材2は、第2部材の一例である。
【0048】
可動部材3は、軸体4の前記進出方向の一端部に取り付けられている(図1、3参照)。可動部材3は、軸体4の前記進出方向の一端部に取り付けられる軸体取付片27と、軸体取付片27から前記進出方向に突出して、固定側把持部10との間で被固定物を挟み込む可動側把持片28と、を有する。
【0049】
軸体取付片27は、略矩形板状に形成されている。軸体取付片27の中央には、軸体4の先端部が挿通される挿通孔29が形成されている。挿通孔29は、軸体4の先端部が挿通された状態で軸体4が軸体取付片27に対して回転自在となるように、軸体4の外径よりも大きくなるように形成されている。
【0050】
可動側把持片28は、軸体取付片27において上下方向に間隔を空けて2つ設けられている。可動側把持片28は、前記退出方向に凹むように形成されている。これにより、可動側把持片28は、固定側把持面10aとの間で被固定物を把持しやすくしている。2つの可動側把持片28は、固定側把持面10aとの間で被固定物を挟み込む可動側把持面28aをそれぞれ有している。
【0051】
軸体4は、前記進退方向に沿って延びるように形成された軸部31と、軸部31の前記退出方向の一端部に取り付けられた操作部材32と、を有する。軸体4は、軸部31の前記進出方向の一端部が軸体取付片27の挿通孔29に挿通された状態で、軸体取付片27から前記退出方向に抜けないように構成されている。これにより、軸体4は、可動部材3に回転自在に取り付けられるとともに、可動部材3と一体に前記進退方向に移動可能に構成されている。
【0052】
操作部材32は、軸体4を、軸心を中心とする周方向に回転させるためにユーザが把持して操作するためのものである。操作部材32は、軸部31の前記退出方向の一端部が固定される固定部33と、固定部33から前記進出方向に延びて螺合切換機構6の後述の筒型ハウジング64が挿通される筒状の把持部34と、を有する。把持部34の内径は、操作部材32及び軸体4が筒型ハウジング64に対して回転自在になるように、筒型ハウジング64の外径よりも大きくなるように設定されている。軸体4は、第1部材の一例である。
【0053】
軸体支持機構5は、図2、3に示すように、軸体4の軸部31の外面に形成された雄ねじ部41と、軸体支持部15のねじ配置孔18に配置された雌ねじ部材42と、雌ねじ部材42とハウジング側ばね取付面14aとの間に配置されたねじ用付勢部材43と、を有する。軸体支持機構5は、雄ねじ部41と雌ねじ部材42との螺合により、軸体4を前記進退方向に移動可能となるように支持するものである。
【0054】
雄ねじ部41は、軸部31の外面において前記進出方向の一端部から前記退出方向に向かって延びている。雄ねじ部41は、ねじ山における前記進出方向に向く進出面41aと、ねじ山における前記退出方向に向く退出面41bと、を有する。進出面41aは、前記退出方向に傾斜するように形成されている。退出面41bは、前記進出方向に傾斜するように形成されている。雄ねじ部41の前記進退方向の長さは、可動部材3の前記進退方向の可動範囲に応じて設定される。本実施形態では、雄ねじ部41の前記進退方向の長さは、軸部31の前記進退方向の長さの半分程度に設定されている。
【0055】
雌ねじ部材42は、ねじ配置孔18の延びる方向に沿って摺動可能な状態で押圧部挿通空間17からねじ配置孔18に亘って設けられている。
【0056】
雌ねじ部材42は、図3、4に示すように、ねじ配置孔18の進出側支持面22に沿って接触する進出側接触面46と、ねじ配置孔18の退出側支持面24に沿って接触する退出側接触面47と、ねじ配置孔18の一対の周方向側支持面21に前記周方向に接触する周方向側接触面48と、前記螺合状態において前記退出方向を向く雌ねじ退出面49と、を有する。進出側接触面46と退出側接触面47とは、平行に形成されている。周方向側接触面48は、進出側接触面46と退出側接触面47とを繋いでいる。雌ねじ退出面49は、退出側接触面47と雌ねじ部45とを繋いでいる。
【0057】
雌ねじ部材42は、雄ねじ部45に最も近づいたときに、雄ねじ部41と螺合する雌ねじ部45と、雌ねじ部45と反対側においてねじ用付勢部材43の他端部が嵌め込まれるばね取付用穴50aと、を更に有する。ばね取付用穴50aは、箱型ハウジング14側のばね取付用穴50aに向いている。
【0058】
雌ねじ部材42は、図4、6に示すように、雌ねじ部45と直交する方向に面し、押圧部61の後述の押圧面65aから押圧される受け面51を更に有する。本実施形態では、受け面51は、雌ねじ退出面49の前記周方向の端部に設けられている(図4a参照)。受け面51は、押圧面65aから押圧されるときの力を、雌ねじ部材42を雄ねじ部45から引き離す方向の力に変換するように、前記周方向に直交する仮想面51aに対して軸体4の軸心側を僅かに向くように傾斜している(図4c参照)。受け面51は、変換面の一例である。雌ねじ部材42は、第2ねじ部材の一例である。
【0059】
ねじ用付勢部材43は、圧縮コイルばねによって形成されている。ねじ用付勢部材43の一端部は、ハウジング側ばね取付面14aのばね取付用穴に嵌め込まれている。ねじ用付勢部材43の他端部は、雌ねじ部材42のばね取付用穴50aに嵌め込まれている。この状態で、ねじ用付勢部材43は、雌ねじ部45が雄ねじ部41と螺合するように雌ねじ部材42を付勢している。
【0060】
螺合切換機構6は、前記螺合状態と、雌ねじ部45が雄ねじ部41から離れて前記螺合が解除された螺合解除状態との間で軸体4の支持状態を切り換えるものである。具体的には、螺合切換機構6は、図3、5に示すように、軸体4の回転力によって雌ねじ部材42を雄ねじ部41から引き離すように押圧する押圧部61と、軸体4と一体に前記周方向に回転して軸体4の回転力を押圧部61に伝達する回転伝達部62と、押圧部61を前記進出方向に向けて付勢する押圧用付勢部材63と、押圧部61と回転伝達部62と押圧用付勢部材63とを覆う筒状の筒型ハウジング64と、を有する。
【0061】
押圧部61は、筒状に形成され、軸体4に回転自在に挿通されている。押圧部61は、その前記進出方向側の一端部が押圧部挿通空間17に入り込んだ状態になるように押圧用付勢部材63によって付勢されている。押圧部61の前記進出方向の一端には、図6に示すように、前記螺合状態の雌ねじ部材42が嵌まり込む雌ねじ用切欠部65と、後述の回転阻止部7が嵌まり込む回転阻止用切欠部66と、が設けられている。
【0062】
雌ねじ用切欠部65は、押圧部61の前記進出方向の一端における前記周方向の一部の領域から前記退出方向に凹むように形成されている。これにより、雌ねじ用切欠部65は、雌ねじ部材42が嵌まり込んだ状態で雌ねじ部材42と前記周方向に重なるように配置される。雌ねじ用切欠部65の前記周方向の隙間は、雌ねじ部材42の周方向側接触面48間の長さよりも若干長くなるように設定されている。
【0063】
雌ねじ用切欠部65には、図7に示すように、押圧部61が前記周方向に回転したときに、前記螺合状態の雌ねじ部材42を雄ねじ部41から引き離すように押圧する押圧面65aが設けられている。押圧面65aは、雌ねじ部材42を押圧するときに、前記周方向の回転力を雌ねじ部材42が雄ねじ部41から離れる方向の力に変換するように、前記周方向に直交する仮想面65bに対して前記進出方向側を向くように傾斜している(図4c、5参照)。押圧面65aは、軸体4の半径方向に平行な面を形成している。
【0064】
尚、押圧面65aは、受け面51が前記周方向に直交する仮想面51aに対して軸体4の軸心側を僅かに向くように傾斜している場合には、図4cの破線で示されるように、前記周方向に直交する仮想面65bと平行になるように形成されてもよい。
【0065】
また、押圧面65aは、前記周方向に直交する仮想面65bに対して前記進出方向側を向くように傾斜するとともに、軸体4の半径方向に平行な前記面に対して軸体4の軸心とは反対側を僅かに向くように傾斜していてもよい。この場合、受け面51は、図4cの破線で示されるように、前記周方向に直交する仮想面51aと平行になるように形成されてもよい。押圧面65aは、変換面の一例である。
【0066】
回転阻止用切欠部66は、押圧部61の前記進出方向の一端における前記周方向の一部の領域から前記退出方向に凹むように形成されている。これにより、回転阻止用切欠部66は、回転阻止部7が嵌まり込んだ状態で回転阻止部7と前記周方向に重なるように配置される。回転阻止用切欠部66は、雌ねじ用切欠部65から前記周方向に軸心を中心とした略180°の位置に配置されている。回転阻止用切欠部66の前記周方向の隙間は、回転阻止部7の前記周方向の長さよりも長くなるように設定されている。
【0067】
押圧部61の前記周方向の一回転範囲には、雌ねじ部材42を押圧して軸体4の支持状態を前記螺合解除状態にする押圧区域と、雌ねじ部材42の押圧を解除して軸体4の支持状態を前記螺合状態にする押圧解除区域と、が設定されている。
【0068】
本実施形態では、前記押圧区域は、雌ねじ用切欠部65に嵌まり込んだ状態の雌ねじ部材42に押圧面65aが接触する位置から、回転阻止用切欠部66が回転阻止部7の後述の螺合解除状態接触面7bに接触することによって押圧部61の回転が阻止される位置までの範囲に設定されている(図7参照)。前記押圧区域内では、雌ねじ部材42は、押圧面65aによって押圧されて押圧部61の前記進出方向の一端に乗り上げた状態になる(図8参照)。
【0069】
前記押圧解除区域は、雌ねじ用切欠部65に嵌まり込んだ状態の雌ねじ部材42が押圧面65aから離れた位置から、回転阻止用切欠部66が回転阻止部7の後述の螺合状態接触面7aに接触することによって押圧部61の回転が阻止される位置までの範囲に設定されている(図6参照)。
【0070】
押圧部61の前記退出方向の一端には、後述の伝達部材68の複数の被係合部70と係合する複数の係合部67が設けられている。
【0071】
複数の係合部67は、押圧部61の前記退出方向の一端において前記周方向の全周に亘って連続するように形成されている。各係合部67は、押圧部61の前記退出方向の一端から前記退出方向に突出するように形成されている。各係合部67は、その前記周方向の長さが徐々に短くなるように、前記進退方向に対して前記周方向に傾斜する係合側傾斜面67aを有する(図5参照)。
【0072】
回転伝達部62は、押圧部61の前記退出方向に隣接する位置に配置され、軸体4の回転力を押圧部61に伝達するものである。回転伝達部62は、軸体4に前記進退方向に移動自在に挿通されるように筒状に形成されるとともに、軸体4と一体に前記周方向に回転するように構成されている。回転伝達部62は、押圧部61に軸体4の回転力を伝達する伝達部材68と、伝達部材68を軸体4と一体に回転させる回転部材69と、を有する。尚、伝達部材68と回転部材69とは、一体に結合されていてもよい。
【0073】
伝達部材68は、複数の係合部67と係合する複数の被係合部70と、回転部材69の後述の突出部72が係合される係合用切欠部71と、を有する。
【0074】
複数の被係合部70は、伝達部材68の前記進出方向の一端において前記周方向の全周に亘って連続するように形成されている。各被係合部70は、伝達部材68の前記進出方向の一端から前記進出方向に突出するように形成されている。各被係合部70は、その前記周方向の長さが前記進出方向に向かってが徐々に短くなるように、前記進出方向に対して前記周方向に傾斜する被係合側傾斜面70aを有する。
【0075】
係合部67と被係合部70とは、係合側傾斜面67aと被係合側傾斜面70aとが接触するように噛み合っている。係合側傾斜面67aと被係合側傾斜面70aの傾斜角度は、押圧部61が回転阻止部7に接触した状態で押圧部61が回転阻止部7から一定以上の反力を受けると、被係合部70が係合部67を前記周方向に乗り越えることができる角度に設定されている。
【0076】
係合用切欠部71は、伝達部材68の前記退出方向の一端から前記進出方向に凹むように形成されている。係合用切欠部71は、本実施形態では、軸体4の軸心を挟む位置に2つ設けられている。係合用切欠部71の数は、伝達部材68と回転部材69とが一体に回転できれば、特に限定されることはない。係合用切欠部71の数は、例えば、1つでもよい。
【0077】
回転部材69は、前記進出方向の一端から前記進出方向に向かって突出して、伝達部材68の係合用切欠部71に嵌まり込む突出部72と、半径方向に貫通するとともに、前記進退方向に延びるスリット73と、を有する。
【0078】
突出部72は、伝達部材68の係合用切欠部71に嵌まり込むことができるように、軸体4の軸心を挟む位置に2つ設けられている。突出部72の数は、特に限定されることはない。突出部72は、少なくとも1つあれば足りる。突出部72の前記周方向の長さは、係合用切欠部71の前記周方向の長さよりも若干短く形成されている。これにより、回転部材69と伝達部材68とは、突出部72が係合用切欠部71に嵌まり込んだ状態で一体に前記周方向に回転するように構成されている。
【0079】
スリット73は、軸体4の軸心を挟む位置に2つ設けられている。スリット73には、軸体4から突出するように設けられた凸部74(図3参照)が嵌まり込んでいる。凸部74は、前記周方向の長さがスリット73の前記周方向の長さよりも若干短く形成されている。これにより、回転部材69は、凸部74がスリット73に嵌まり込んだ状態で軸体4と一体に前記周方向に回転するとともに、前記進退方向に移動自在に構成されている。
【0080】
押圧用付勢部材63は、伝達部材68の前記退出方向の一端部と筒型ハウジング64の後述の内向きフランジとに接触するように配置されている。押圧用付勢部材63は、圧縮コイルばねによって形成されている。押圧用付勢部材63は、伝達部材68の前記退出方向の一端部と内向きフランジとに接触した状態で、伝達部材68を押圧部61に付勢するように構成されている。これにより、押圧用付勢部材63は、伝達部材68を介して押圧部61を軸体支持部15に付勢している。
【0081】
筒型ハウジング64は、押圧部61と回転伝達部62と押圧用付勢部材63とを覆うものである(図3参照)。筒型ハウジング64は、前記退出方向の一端に一体に形成された内向きフランジ(図示せず)を有する。筒型ハウジング64は、操作部材32の把持部34に挿通された状態で、前記進出方向の一端部が箱型ハウジング14に固定されている。筒型ハウジング64の外径は、把持部34の内径よりも若干小さくなるように設定されている。これにより、操作部材32は、筒型ハウジング64に対して前記周方向に回転自在になっている。
【0082】
回転阻止部7は、前記螺合状態と前記螺合解除状態との間で軸体4の支持状態が移行するのを阻止するものである。回転阻止部7は、図6に示すように、軸体挿通孔16の大径部分において押圧部61の回転阻止用切欠部66に半径方向に対向する部位から半径方向内側に突出して、回転阻止用切欠部66と前記周方向に重なるように形成されている。回転阻止部7の前記周方向の長さは、回転阻止用切欠部66の前記周方向の長さよりも短くなるように形成されている。回転阻止部7は、前記螺合状態において回転阻止用切欠部66に前記周方向に接触する螺合状態接触面7aと、前記螺合解除状態において回転阻止用切欠部66に前記周方向に接触する螺合解除状態接触面7bと、を有する。螺合状態接触面7aは、螺合状態回転阻止部の一例である。螺合解除状態接触面7bは、螺合解除状態回転阻止部の一例である。
【0083】
次に、上記のように構成されたクランプ装置1の動作について説明する。可動部材3が固定側把持部10に対して前記退出方向に離れた位置にあり、かつ、軸体4の支持状態が前記螺合状態にある状態を初期状態として説明する。
【0084】
まず、作業者は、固定部材2の載置台取付部13に載置台を取り付け、次いで、載置台に医療用ポンプを取り付ける。次に、作業者は、操作部材32を把持して軸体4に前記進出方向の力を作用させる。このとき、雄ねじ部41の前記進出方向に向く進出面41aから前記進出方向に雌ねじ部45が押圧され、図8の矢印のように、雌ねじ部材42が進出側支持面22に案内されて雄ねじ部41から離れるように雌ねじ部材42が移動する。これにより、雄ねじ部41が前記進出方向に雌ねじ部45を乗り越えて軸体4の前記進出方向の移動が可能になる。そして、作業者は、固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間で被固定物を挟み込む。
【0085】
最後に、作業者は、押圧部61の押圧面65aが雌ねじ部材42を押圧する方向とは反対方向に軸体4を回転させる。このとき、軸体4の回転力が伝達部材68から押圧部61に伝達され、押圧部61と伝達部材68とが一体に回転し、押圧部61の回転阻止用切欠部66が回転阻止部7の螺合状態接触面7aに接触する(図6参照)。
【0086】
この状態で、軸体4をさらに回転すると、押圧部61が回転阻止部7から一定の反力を受ける。このとき、伝達部材68の被係合部70の被係合側傾斜面70aが押圧部61の係合部67の係合側傾斜面67aから前記退出方向の力を受けることにより、図9の矢印のように、伝達部材68が押圧用付勢部材63の付勢力に抗して前記退出方向に移動して、被係合部70が係合部67を前記周方向に乗り越える。その結果、係合部67と被係合部70との係合が解除される。被係合部70が係合部67を前記周方向に乗り越えると、伝達部材68は、押圧用付勢部材63の付勢力によって前記進出方向に戻り、被係合部70の被係合側傾斜面70aが係合部67の係合側傾斜面67aに接触した状態になる。この係合と係合解除が繰り返されることにより、伝達部材68が押圧部61に対して相対回転する。
【0087】
このとき、押圧部61の回転は螺合状態接触面7aによって阻止されているので、前記螺合解除状態に切り換えられることはなく、前記螺合状態が維持された状態で軸体4が回転する。これにより、雄ねじ部41と雌ねじ部45との間にねじ作用が確実に発生し、固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間で被固定物が締め付けられる。このようにして、クランプ装置1は、被固定物に取り付けられる。
【0088】
一方、軸体4に前記退出方向の力を作用させた場合には、雄ねじ部41の前記退出方向に向く退出面41bから前記退出方向に雌ねじ部45が押圧される。このとき、退出側支持面24に接触している雌ねじ部材42は、退出側支持面24から雌ねじ部45を雄ねじ部41に押し付ける方向の力を受けるので(図3参照)、前記螺合状態が維持され、雄ねじ部41は、雌ねじ部45を前記退出方向に乗り越えることができない。これにより、軸体4の前記退出方向の移動が阻止され、被固定物の固定側把持面10aと可動部材3との間の挟み込みが誤って解除されることが防止される。
【0089】
次に、クランプ装置1を被固定物から取り外す場合について説明する。
【0090】
まず、作業者は、軸体4を前記とは反対方向、すなわち、押圧部61の押圧面65aが雌ねじ部材42を押圧する方向に回転する。このとき、軸体4の回転力が伝達部材68から押圧部61に伝達されて押圧部61と伝達部材68とが一体に回転し、押圧部61の押圧面65aが雌ねじ部材42の受け面51を押圧する。押圧面65aから押圧された雌ねじ部材42は、退出側支持面24に案内されることにより、図8の矢印のように、前記進出方向に向かって雄ねじ部41から斜めに離れるように移動する。これにより、軸体4の支持状態が前記螺合状態から前記螺合解除状態に切り換えられ、軸体4の前記退出方向への移動が可能になる。
【0091】
そして、押圧部61の回転阻止用切欠部66が回転阻止部7の螺合解除状態接触面7bに接触すると、押圧部61が回転阻止部7から一定の反力を受け、前記と同様に、伝達部材68が押圧部61に対して相対回転する状態になる。このとき、押圧部61の回転が回転阻止部7によって阻止されているので、軸体4の支持状態が誤って前記螺合状態に切り換えられてしまうこともない。
【0092】
最後に、軸体4を前記退出方向に移動させて固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間隔を広げて被固定物の挟込みを解除する。これにより、クランプ装置1を被固定物から取り外すことができる。
【0093】
上記クランプ装置1では、前記螺合状態において軸体4に前記進出方向の力を作用させると、雌ねじ部材42は、雄ねじ部41のねじ山における進出面41aから前記進出方向の力を受けて雄ねじ部41から離れる方向に移動する。そのため、作業者は、軸体4の支持状態を前記螺合状態から前記螺合解除状態に切り換えなくても、軸体4に前記進出方向の力を作用させるだけで、軸体4を前記進出方向に移動させることができるので、被固定物を固定側把持面10aと可動側把持面28aとによって挟み込む作業が容易である。
【0094】
上記クランプ装置1では、固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間で被固定物を挟み付けた状態において、押圧部61の押圧面65aが雌ねじ部材42を押圧する方向とは反対方向に軸体4を回転させると、雄ねじ部41と雌ねじ部45との間にねじ作用が発生し、被固定物が固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間で締め付けられる。このように、固定部材2に対する軸体4という1つの部材を回転させるだけによってクランプ装置1を被固定物に取り付けることができるので、クランプ装置1の簡単な取付操作が実現される。
【0095】
上記クランプ装置1では、押圧部61が前記周方向に回転したときに、押圧部61の回転阻止用切欠部66が回転阻止部7に前記周方向に接触することにより、押圧部61の回転が阻止される。そのため、作業者が、軸体4を回転しすぎて、軸体4を意図しない支持状態へ変更してしまうことが防止される。
【0096】
上記クランプ装置1では、伝達部材68は、押圧部61が回転阻止部7に接触した状態で押圧部61が回転阻止部7から一定以上の反力を受けることにより、押圧部61に対して相対回転するように押圧部61に係合しているので、押圧部61の回転が回転阻止部7によって阻止されても、伝達部材68は、押圧部61に対して回転を続けることができる。そのため、上述のように軸体4の意図しない支持状態への変更を防止しつつ、軸体4の回転に規制がかからないとの誤解に基づく操作継続によって装置が故障するのを防止することができる。
【0097】
上記クランプ装置1では、回転阻止部7は、前記螺合状態において押圧部61の回転阻止用切欠部66に前記周方向に接触する螺合状態接触面7aを有する。そのため、前記螺合状態において押圧部61の回転阻止用切欠部66が螺合状態接触面7aに接触する方向に軸体4を回転させると、押圧部61が回転阻止部7に接触することにより、押圧部61の回転が阻止されるので、前記螺合状態が維持される。その結果、前記螺合状態において確実にねじ作用を発生させることができるので、固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間で被固定物をねじ作用により確実に締め付けることができる。さらに、押圧部61の回転が回転阻止部7によって阻止されていることにより、固定側把持面10aと可動部材3との間で被固定物をねじ作用により締め付ける際に、軸体4を回転しすぎて、誤って前記螺合解除状態にしてしまうことも防止される。
【0098】
上記クランプ装置1では、回転阻止部7は、前記螺合解除状態において押圧部61の回転阻止用切欠部66に前記周方向に接触する螺合解除状態接触面7bを有する。そのため、作業者が、前記螺合状態から前記螺合解除状態に軸体4の支持状態を切り換える際に、軸体4を回転しすぎて、誤って前記螺合状態にしてしまうことが防止される。
【0099】
上記クランプ装置1では、雌ねじ部材42は、押圧部61から押圧される際に、軸体4の回転力を雌ねじ部材42が雄ねじ部41から離れる方向の力に変換するように、前記周方向に直交する仮想面65bに対して前記進出方向側を向くように傾斜する押圧面65aから押圧されるので、雌ねじ部材42を雄ねじ部41から引き離す方向の力が大きい。そのため、雌ねじ部材42は、押圧部61から押圧されたときに、雄ねじ部41から離れる方向への移動がねじ配置孔18に沿って移動しやすいので、軸体4の支持状態を前記螺合状態から前記螺合解除状態にスムーズに切り換えることができる。
【0100】
上記クランプ装置1では、受け面51は、押圧面65aから押圧されるときの力を、雌ねじ部材42を雄ねじ部45から引き離す方向の力に変換するように、前記周方向に直交する仮想面51aに対して軸体4の軸心側を僅かに向くように傾斜しているので、雌ねじ部材42が押圧面65aから押圧される際の雌ねじ部材42を雄ねじ部41から引き離す方向の力が大きくなる。そのため、雌ねじ部材42が押圧部61から押圧されたときに、雄ねじ部41から離れる方向への雌ねじ部材42の移動が移動許容部によって許容されやすくなるので、軸体4の支持状態を前記螺合状態から前記螺合解除状態にスムーズに切り換えることができる。
【0101】
上記クランプ装置1では、雌ねじ部材42は、押圧面65aから押圧される際に、退出側支持面24に沿って雄ねじ部41から離れる方向に案内されるので、雌ねじ部材42の雄ねじ部41から離れる方向への移動がスムーズに行われる。
【0102】
上記クランプ装置1では、前記螺合状態において軸体4に前記退出方向の力を作用させたときに、雄ねじ部41のねじ山における退出面41bから前記退出方向の力を雌ねじ部材42が受けても、雌ねじ部材42は、前記螺合状態が維持された状態で退出側支持面24に接触するので、軸体4の前記退出方向の移動が阻止される。そのため、固定側把持面10aと可動側把持面28aとによる被固定物の挟み込みが誤って解除されてしまうことが防止される。
【0103】
上記クランプ装置1では、伝達部材68は、押圧部61に対して相対回転するときに、押圧部61に対して前記退出方向の移動と前記進出方向の移動とを繰り返すことによって係合と係合解除とを繰り返すので、この係合と係合解除の繰り返しによる接触音または感触が発生する。一方、回転阻止部7に押圧部61が接触していない状態では、回転伝達部62と押圧部61とは、係合部67と被係合部70との係合によって一体に回転するので、接触音または感触は発生しない。そのため、作業者は、前記接触音または感触を体感することにより、軸体4の支持状態が、完全に切り換えられたか、もしくは、切換え途中の段階にあるのか知ることができる。
【0104】
上記クランプ装置1では、雌ねじ部材42が押圧部61から押圧されるときに、受け面51が押圧されるので、雌ねじ部45が押圧部61によって押圧されることはない。そのため、雌ねじ部45の摩耗を防止することができる。
【0105】
以上に説明した第1実施形態のクランプ装置1は、本発明の一実施形態であり、その具体的構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態と同様の機能を有する要素については、第1実施形態と同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0106】
上記クランプ装置1では、ねじ配置孔18の進出側支持面22は、軸体支持部15の半径方向に対して前記進出方向に傾斜するように形成されたが、軸体支持部15の半径方向に延びるように形成されてもよい。この場合、固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間で被固定物を挟み込む作業は、軸体4の支持状態を前記螺合状態から前記螺合解除状態に切り換えた後に行うことができる。雄ねじ部41と雌ねじ部45との間のねじ作用によって被固定物を固定側把持面10aと可動側把持面28aとの間で締め付ける作業は、軸体4の支持状態を前記螺合解除状態から前記螺合状態に切り換えた後に行うことができる。
【0107】
上記クランプ装置1では、軸体4を第1部材として構成し、固定部材2を第2部材として構成したが、固定部材2を第1部材として構成し、軸体4を第2部材として構成してもよい。この場合、軸体4に第2ねじ部材としての雌ねじ部材が設けられ、固定部材2に第1ねじ部としての雄ねじ部が設けられてもよい。
【0108】
上記クランプ装置1では、回転阻止部7は、回転阻止用切欠部66と前記周方向に重なる位置に1つ設けられたが、2つ設けられてもよい。この場合、一方の回転阻止部に螺合状態接触面が設けられ、他方の回転阻止部に螺合解除状態接触面が設けられる。
【符号の説明】
【0109】
1 クランプ装置
2 固定部材
3 可動部材
4 軸体
5 軸体支持機構
6 螺合切換機構
7 回転阻止部
7a 螺合状態回転阻止部
7b 螺合解除状態回転阻止部
18 ねじ配置孔
22 進出側支持面
24 退出側支持面
41 第1ねじ部
41a 進出面
41b 退出面
42 第2ねじ部材
43 ねじ用付勢部材
45 第2ねじ部
51 受け面
61 押圧部
62 回転伝達部
65a 変換面
67 係合部
70 被係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9