(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】水噴射式織機における緯入れ方法及び装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/32 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
D03D47/32
(21)【出願番号】P 2019087219
(22)【出願日】2019-05-06
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
(72)【発明者】
【氏名】名木 啓一
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137438(JP,A)
【文献】特開2004-346457(JP,A)
【文献】特開昭56-4746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に回転駆動される回転ヤーンガイド及び該回転ヤーンガイドの回転によって緯糸が巻き付けられて貯留される貯留ドラムを含む貯留装置と給糸体からの緯糸を緯入れ長さに対応させた所定の送り速度で前記回転ヤーンガイドへ向けて連続的に送り出す測長ローラを含む測長装置とで構成された測長貯留装置、緯入れに関与すると共に緯糸が飛走を開始するタイミング又は緯糸が飛走する状態に影響を及ぼす緯入れ関連装置であって設定値記憶器に記憶された設定値に従って駆動される緯入れ関連装置、及び前記設定値記憶器を含むと共に前記緯入れ関連装置の駆動を制御する緯入れ制御装置を有する緯入れ装置を備え、前記貯留ドラム上の緯糸が前記貯留ドラムから解舒されつつ引き出されることで自由飛走の状態で緯糸が飛走する自由飛走過程の後に、緯糸が前記貯留ドラムを経ずに前記回転ヤーンガイドから直接的に引き出される状態となることで前記測長ローラによる送り速度に拘束された状態で緯糸が飛走する拘束飛走過程を経て1回の緯入れが行われる水噴射式織機において、
前記緯入れ装置は、前記貯留ドラムと対向するように設けられた緯糸検出センサであって、緯入れに伴って前記貯留ドラム周りを周回する緯糸の通過のタイミングである通過タイミングを求めるべく前記通過を検出する緯糸検出センサを備え、
緯入れの終了時点を含む緯入れ過程において緯糸の先端が達する到達位置であって該到達位置に緯糸の先端が達するタイミングが前記自由飛走過程における前記通過タイミングから求めることが可能な複数の到達位置のうちの1つである設定到達位置及び該設定到達位置に緯糸の先端が達する設定位置到達タイミングに関し、前記設定位置到達タイミングの基準値を前記設定到達位置と関連付けて予め設定しておき、
製織中の緯入れにおいて前記緯糸検出センサから出力される検出信号に基づいて前記通過タイミングを求めると共に前記通過タイミングから求められた実際の前記設定位置到達タイミングに基づく実際値を求め、その求められた前記実際値を前記基準値と比較し、その両者に偏差が生じている場合に、前記偏差が減少するように前記緯入れ関連装置の駆動態様を変更すべく前記設定値の補正量を前記偏差に基づいて求める
ことを特徴とする水噴射式織機における緯入れ装置による緯入れ方法。
【請求項2】
前記自由飛走過程において前記貯留ドラムと前記緯糸検出センサとの間を複数回に亘って通過する緯糸の各通過時点で緯糸の先端が達する到達位置のうちの1つを前記設定到達位置として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の水噴射式織機における緯入れ装置による緯入れ方法。
【請求項3】
前記緯入れ関連装置は、前記貯留ドラム上で緯糸を係止及び解舒するために駆動される係止ピン、及び緯入れノズルと前記測長貯留装置との間で緯糸を把持すると共に緯入れ時にその把持を解放するように駆動されるクランプ機構を含み、
前記係止ピン及び前記クランプ機構のうちの少なくとも一方について、前記設定値の補正量を求める
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水噴射式織機における緯入れ装置による緯入れ方法。
【請求項4】
連続的に回転駆動される回転ヤーンガイド及び該回転ヤーンガイドの回転によって緯糸が巻き付けられて貯留される貯留ドラムを含む貯留装置と給糸体からの緯糸を緯入れ長さに対応させた所定の送り速度で前記回転ヤーンガイドへ向けて連続的に送り出す測長ローラを含む測長装置とで構成された測長貯留装置、緯入れに関与すると共に緯糸が飛走を開始するタイミング又は緯糸が飛走する状態に影響を及ぼす緯入れ関連装置であって設定値記憶器に記憶された設定値に従って駆動される緯入れ関連装置、及び前記設定値記憶器を含むと共に前記緯入れ関連装置の駆動を制御する緯入れ制御装置を有する緯入れ装置を備え、前記貯留ドラム上の緯糸が前記貯留ドラムから解舒されつつ引き出されることで自由飛走の状態で緯糸が飛走する自由飛走過程の後に、緯糸が前記貯留ドラムを経ずに前記回転ヤーンガイドから直接的に引き出される状態となることで前記測長ローラによる送り速度に拘束された状態で緯糸が飛走する拘束飛走過程を経て1回の緯入れが行われる水噴射式織機において、
前記緯入れ装置は、前記貯留ドラムと対向するように設けられた緯糸検出センサであって緯入れに伴って前記貯留ドラム周りを周回する緯糸の通過を検出する緯糸検出センサを備え、
前記緯入れ制御装置は、前記緯糸検出センサから出力される検出信号に基づいて前記通過のタイミングである通過タイミングを求める通過タイミング検出器と、緯入れの終了時点を含む緯入れ過程において緯糸の先端が達する到達位置であって該到達位置に緯糸の先端が達するタイミングが前記自由飛走過程における前記通過タイミングから求めることが可能な複数の到達位置のうちの1つである設定到達位置及び該設定到達位置に緯糸の先端が達する設定位置到達タイミングに関し、前記設定位置到達タイミングの基準値を前記設定到達位置と関連付けて記憶する基準値記憶器と、前記通過タイミング検出器で求められた前記通過タイミングに基づき、実際の設定位置到達タイミングに基づく実際値を求める実際値決定器と、前記実際値と前記基準値とを比較する比較器と、その両者に偏差が生じている場合に、前記偏差が減少するように前記緯入れ関連装置の駆動態様を変更すべく前記設定値の補正量を前記偏差に基づいて求める設定値補正器とを備える
ことを特徴とする水噴射式織機における緯入れ装置。
【請求項5】
前記自由飛走過程において前記貯留ドラムと前記緯糸検出センサとの間を複数回に亘って通過する緯糸の各通過時点で緯糸の先端が達する到達位置のうちの1つを前記設定到達位置として設定する
ことを特徴とする請求項4に記載の水噴射式織機における緯入れ装置。
【請求項6】
前記緯入れ関連装置は、前記貯留ドラム上で緯糸を係止及び解舒するために駆動される係止ピン、及び緯入れノズルと前記測長貯留装置との間で緯糸を把持すると共に緯入れ時にその把持を解放するように駆動されるクランプ機構を含み、
前記設定値補正器は、前記係止ピン及び前記クランプ機構のうちの少なくとも一方について、前記設定値の補正量を求める
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の水噴射式織機における緯入れ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に回転駆動される回転ヤーンガイド及び該回転ヤーンガイドの回転によって緯糸が巻き付けられて貯留される貯留ドラムを含む貯留装置と給糸体からの緯糸を緯入れ長さに対応させた所定の送り速度で前記回転ヤーンガイドへ向けて連続的に送り出す測長ローラを含む測長装置とで構成された測長貯留装置、緯入れに関与すると共に緯糸が飛走を開始するタイミング又は緯糸が飛走する状態に影響を及ぼす緯入れ関連装置であって設定値記憶器に記憶された設定値に従って駆動される緯入れ関連装置、及び前記設定値記憶器を含むと共に前記緯入れ関連装置の駆動を制御する緯入れ制御装置を有する緯入れ装置を備え、前記貯留ドラム上の緯糸が前記貯留ドラムから解舒されつつ引き出されることで自由飛走の状態で緯糸が飛走する自由飛走過程の後に、緯糸が前記貯留ドラムを経ずに前記回転ヤーンガイドから直接的に引き出される状態となることで前記測長ローラによる送り速度に拘束された状態で緯糸が飛走する拘束飛走過程を経て1回の緯入れが行われる水噴射式織機に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような水噴射式織機としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。その水噴射式織機においては、測長貯留装置は、貯留ドラムに対し緯糸を巻き付ける回転ヤーンガイド、及び回転ヤーンガイドに向けて給糸体からの緯糸を送り出す測長ローラを備え、測長ローラが織機の1サイクルに相当する期間(主軸が1回転する期間)において1回の緯入れに要する長さ(緯入れ長さ)の緯糸を送り出すような回転速度で連続的に回転駆動されると共に、回転ヤーンガイドが前記期間において前記緯入れ長さ分の緯糸を貯留ドラムに巻き付けるような回転数で連続的に回転駆動されるように構成された型式となっている。
【0003】
また、水噴射式織機においては、測長貯留装置と緯入れノズルとの間にクランプ機構が設けられており、緯入れ時以外では、緯糸は、測長貯留装置においてその測長貯留装置における係止ピンによって係止されると共に、クランプ機構によって把持されている。その上で、緯入れ時においては、先ず、ポンプから所定のタイミングで吐出された圧力水が緯入れノズルに供給されて緯入れノズルから噴射される。それに続き、予め設定されたタイミングで係止ピン及びクランプ機構が駆動され、係止ピンによる係止が解舒されると共にクランプ機構による把持が解放される。それにより、緯入れが可能な状態となり、前記のように緯入れノズルから噴射される圧力水により、緯糸の飛走が開始される。そして、緯糸は、先ずは、貯留ドラム上の緯糸がその貯留ドラム上から解舒されつつ飛走する自由飛走の状態で飛走する。
【0004】
なお、測長貯留装置が前記のような型式のものである場合においては、前記のような回転速度で回転する測長ローラから緯糸が送り出されるため、緯糸の飛走が開始される時点(緯入れ開始時点)では、貯留ドラム上に巻き付けられている緯糸の長さは、1回の緯入れに要する緯入れ長さよりも短い。また、前記の自由飛走の過程(自由飛走過程)でも回転ヤーンガイドによる貯留ドラムに対する緯糸の巻き付けが継続されているが、その巻き付け速度よりも緯糸の飛走に伴う貯留ドラム上からの解舒速度の方が速いため、貯留ドラム上の緯糸は次第に減少し、緯入れが終了する前に全ての緯糸が貯留ドラム上から解舒された状態となる。
【0005】
それにより、それ以降では、緯糸が貯留ドラム周りを回転する回転ヤーンガイドから直接的に引き出される状態、すなわち、緯糸が測長ローラによる送り速度に拘束された状態で飛走する拘束飛走の状態となる。その後、予め設定されたタイミングにおいて係止ピンが駆動され、貯留ドラム上で緯糸が係止されることにより、緯入れが終了される。また、その緯入れ終了後、クランプ機構が駆動されることで、前記のようにクランプ機構で緯糸が把持された状態とされる。このように、前記のような型式の測長貯留装置を備えた水噴射式織機においては、自由飛走の状態で緯糸が飛走する自由飛走過程の後に前記のような拘束飛走の状態で緯糸が飛走する拘束飛走過程を経て、1回の緯入れが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、緯入れ開始から終了までに亘って緯糸が自由飛走状態で飛走するように緯入れが行われる織機においては、製織の進行に伴い、緯入れされた緯糸の到達タイミング(緯糸の先端が反給糸側の所定の位置に達するタイミング)が変化する(遅くなる、又は早くなる)ことが往々にして発生する。原因として種々のことが考えられるが、緯糸を供給する給糸体の径の変化がその原因の1つと言われている。
【0008】
そして、その到達タイミングの変化量が大きくなると、反給糸側において緯糸の到達が検知される空気噴射式織機においては、所定の検知期間内で緯糸の到達が検知されないこととなり、緯入れ不良として判断されて織機が停止される。一方、水噴射式織機においては、反給糸側での緯糸の到達の検知は行われないため、緯糸の先端部が反給糸側に到達している限りにおいては、緯入れ不良とは判断されない。しかし、水噴射式織機において、緯糸の到達タイミングが遅すぎる、もしくは早すぎると、緯糸が緩んだ状態で織り込まれる所謂緯緩みの状態が発生し、それによって製織された織布の品質が低下するといった問題が生じる場合がある。
【0009】
但し、従来においては、測長貯留装置が前記のような型式である水噴射式織機(以下、「当該水噴射式織機」とも言う。)では、1回の緯入れの平均飛走速度がそれ程大きく変化することはなく、到達タイミングは殆ど変化しないと考えられていた。何故なら、前記型式の測長貯留装置においては、測長ローラが主軸と同期して駆動されて緯糸を送り出しており、緯入れの後期では緯糸の飛走が前記のような拘束飛走の状態となるからである。したがって、従来においては、当該水噴射式織機では、到達タイミングの変化に起因する緯緩みは発生しないと考えられていた。
【0010】
なお、織機において製織された織布に緯緩みが発見された場合、そのような緯緩みが発生する状態を放置すると織布の品質の低下を招くため、その原因を突き止めて解消する必要がある。それは当該水噴射式織機においても同じであるが、従来においては、前記のように到達タイミングの変化は当該水噴射式織機においては起こり得ないと考えられていたため、その原因を突き止めるにあたり、到達タイミングの変化は除外されていた。
【0011】
しかし、本出願の発明者らによる鋭意研究の結果として、当該水噴射式織機においても到達タイミングの変化が発生し、しかも、その変化の度合いが前記のような緯緩みを招く程度にまでなる、ということを突き止めた。なお、その到達タイミングの変化の原因は、一つとして、給糸体における緯糸の状態(緯糸の太さや張力)が緯糸の長さ方向に一様ではないことによる影響であると推測される。
【0012】
詳しくは、緯糸を供給するための給糸体は複数の糸層によって形成されているが、その糸層間、特に、半径方向における内側の糸層と外側の糸層とにおける緯糸に状態の違いが生じている場合がある。その場合、その状態の違いによって貯留ドラムからの解舒抵抗や緯入れノズルから噴射される噴射水による搬送力の緯糸への作用度合いが変化し、それによって自由飛走過程における緯糸の飛走状態が変化する。その結果として、拘束飛走が開始されるタイミングが変化するため、それが前記のように到達タイミングが変化する発生原因の一つと推測される。
【0013】
このように、実際には、当該水噴射式織機においても、緯緩みを招く程度の到達タイミングの変化が発生する。しかしながら、従来においては、前述のように当該水噴射式織機ではそのような到達タイミングの変化は発生しないと認識されていた。そのため、当該水噴射式織機において製織された織布に緯緩みが発見された場合において、その原因が到達タイミングの変化であったとしても、従来においては、その原因を突き止めることができず、緯糸の到達タイミングの変化を解消するといった解決策には至らなかった。その結果として、従来においては、緯緩みが発生し得る状態で製織が継続され、製織される織布の品質の低下を招いていた。
【0014】
以上のような実情を鑑み、本発明は、前記のような型式の測長貯留装置を備えた水噴射式織機において、到達タイミングの変化に起因する織布の品質低下の発生を防止するべく、到達タイミングを可及的に一定とするための緯入れ方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記のような型式の測長貯留装置、前記緯入れ関連装置、及び前記緯入れ制御装置を有する前記緯入れ装置が備えられた水噴射式織機を前提とする。
【0016】
そして、本発明による緯入れ方法では、前記貯留ドラムと対向するように設けられた緯糸検出センサであって緯入れに伴って前記貯留ドラム周りを周回する緯糸の通過のタイミングである通過タイミングを求めるべく前記通過を検出する緯糸検出センサが、前記緯入れ装置に備えられる。その上で、前記緯入れ方法は、緯入れの終了時点を含む緯入れ過程において緯糸の先端が達する到達位置であって該到達位置に緯糸の先端が達するタイミングが前記自由飛走過程における前記通過タイミングから求めることが可能な複数の到達位置のうちの1つである設定到達位置及び該設定到達位置に緯糸の先端が達する設定位置到達タイミングに関し、前記設定位置到達タイミングの基準値を前記設定到達位置と関連付けて予め設定しておき、製織中の緯入れにおいて前記緯糸検出センサから出力される検出信号に基づいて前記通過タイミングを求めると共に前記通過タイミングから求められた実際の前記設定位置到達タイミングに基づく実際値を求め、その求められた前記実際値を前記基準値と比較し、その両者に偏差が生じている場合に、前記偏差が減少するように前記緯入れ関連装置の駆動態様を変更すべく前記設定値の補正量を前記偏差に基づいて求めることを特徴とする。
【0017】
また、前記緯入れ方法を実現するための本発明による緯入れ装置は、前記緯糸検出センサに加えて、前記緯入れ制御装置が、前記緯糸検出センサから出力される検出信号に基づいて前記通過タイミングを求める通過タイミング検出器と、緯入れの終了時点を含む緯入れ過程において緯糸の先端が達する到達位置であって該到達位置に緯糸の先端が達するタイミングが前記自由飛走過程における前記通過タイミングから求めることが可能な複数の到達位置のうちの1つである設定到達位置及び該設定到達位置に緯糸の先端が達する設定位置到達タイミングに関して前記設定位置到達タイミングの基準値を前記設定到達位置と関連付けて記憶する基準値記憶器と、前記通過タイミング検出器で求められた前記通過タイミングに基づいて実際の設定位置到達タイミングに基づく実際値を求める実際値決定器と、前記実際値と前記基準値とを比較する比較器と、その両者に偏差が生じている場合に、前記偏差が減少するように前記緯入れ関連装置の駆動態様を変更すべく前記設定値の補正量を前記偏差に基づいて求める設定値補正器とを備えることを特徴とする。
【0018】
但し、その本発明における「緯入れ関連装置」について、前述において「設定値記憶器に記憶された設定値に従って駆動される」と記載されていることから明らかなように、その緯入れ関連装置は、その駆動が電気的に行われる装置である。そして、その緯入れ関連装置は、前述のように緯糸が飛走を開始するタイミング又は緯糸が飛走する状態に影響を及ぼす装置であり、ソレノイド等の電気アクチュエータで駆動される前記した係止ピン、クランプ機構を含む。また、緯入れノズルに圧力水を供給する緯入れ用ポンプが電気的に駆動される場合には、その緯入れ用ポンプも含む。
【0019】
なお、その本発明による前記緯入れ方法及び前記緯入れ装置においては、前記自由飛走過程において前記貯留ドラムと前記緯糸検出センサとの間を複数回に亘って通過する緯糸の各通過時点で緯糸の先端が達する到達位置のうちの1つを前記設定到達位置として設定しても良い。
【0020】
また、前記緯入れ関連装置が前記係止ピン及び前記クランプ機構である場合に、前記緯入れ方法において、前記係止ピン及び前記クランプ機構のうちの少なくとも一方について、前記設定値の補正量を求めるようにしても良い。同様に、前記緯入れ装置において、前記設定値補正器を、前記係止ピン及び前記クランプ機構のうちの少なくとも一方について、前記設定値の補正量を求めるように構成されたものとしても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前記のような型式の測長貯留装置を含む前記緯入れ装置を備えた水噴射式織機において、製織中に、前記実際値と前記基準値とを比較した結果、その両者に偏差が生じている場合には、緯入れ関連装置について、前記偏差が減少するように駆動態様を変更すべく設定値の補正量が前記偏差に基づいて求められる。そして、その設定値がその補正量に基づいて補正されると、その補正された設定値に従って緯入れ関連装置が駆動される。それにより、製織は、その進行に伴って到達タイミングの変化が発生してもその変化が解消されるため、到達タイミングが可及的に一定となる状態で行われる。
【0022】
したがって、緯緩みを招く程度の到達タイミングの変化が発生する場合においてもその変化が解消された状態で製織が行われるため、その緯緩みが発生し得る状態で製織が継続されないようになる。それにより、到達タイミングの変化に起因する織布の品質低下の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、
図1、2に基づき、本発明による水噴射式織機における緯入れ方法及び緯入れ装置について、一実施例を説明する。
【0025】
先ず前提として、水噴射式織機1における緯入れ装置2は、緯入れノズル3、測長貯留装置4、及びクランプ装置7を備えている。そして、緯入れノズル3は、その緯入れノズル3に対し緯入れ用の圧力水を供給するためのポンプ8に接続されている。但し、本実施例の水噴射式織機1は、そのポンプ8が織機1の主軸MAを駆動源として機械的に駆動されるように構成されており、織機1の1サイクル中の一定のタイミングにおいて緯入れノズル3への圧力水の供給が行われるようになっている。したがって、各製織サイクルにおいて緯入れノズル3から圧力水の噴射が開始されるタイミング(以下、「噴射開始タイミング」と言う。)は一定となっている。
【0026】
測長貯留装置4は、回転ヤーンガイド61及び回転ヤーンガイド61の回転によって緯糸Wが巻き付けられて貯留される貯留ドラム62を含む貯留装置6と、給糸体9からの緯糸Wを回転ヤーンガイド61へ向けて送り出す測長ローラ51を含む測長装置5とで構成されている。詳しくは、以下の通り。
【0027】
先ず、測長装置5は、前述のように測長ローラ51を含んでおり、測長ローラ51が主軸MAと機械的に連結されて主軸MAを駆動源として回転駆動されるように構成されている。また、測長装置5は、その測長ローラ51に圧接した状態で設けられた従動ローラ52を含んでいる。その上で、測長装置5においては、給糸体9から引き出された緯糸Wが圧接状態とされた測長ローラ51と従動ローラ52との間を通されている。それにより、測長装置5は、前記のように測長ローラ51が回転駆動されることで、測長ローラ51と従動ローラ52との協働で貯留装置6側へ向けて緯糸Wを送り出すようになっている。但し、その回転駆動される測長ローラ51の回転速度は、その測長ローラ51の外径との関係で、織機1の1サイクルに相当する期間(主軸MAが1回転する期間)で1回の緯入れに要する長さ(緯入れ長さ)の緯糸Wが送り出されるように設定されている。
【0028】
また、貯留装置6は、前述のように回転ヤーンガイド61を含んでおり、その回転ヤーンガイド61が主軸MAと機械的に連結されて主軸MAを駆動源として連続的に回転駆動されるように構成されている。また、貯留装置6は、その回転ヤーンガイド61によって緯糸Wが巻き付けられる貯留ドラム62を含んでいる。その上で、前記のように回転駆動される回転ヤーンガイド61の回転速度は、その貯留ドラム62の外径(巻径)及び測長装置5における前記回転速度を踏まえた速度となっている。
【0029】
さらに、貯留装置6は、貯留ドラム62上で緯糸Wを係止するための係止ピン631、及びその係止ピン631を進退駆動するピン駆動部632から成る緯糸係止装置63を含んでいる。但し、そのピン駆動部632は、ソレノイド等の駆動手段を含み、係止ピン631を電気的に駆動するように構成されている。そして、貯留装置6においては、緯糸係止装置63における係止ピン631が進出状態とされて緯糸Wが係止される状態とされることにより、前記した回転ヤーンガイド61の回転に伴って緯糸Wが貯留ドラム62に巻き付けられると共に、係止ピン631が後退駆動されて貯留ドラム62から離間することにより、貯留ドラム62上に巻き付けられた緯糸Wが解舒可能な状態となる。
【0030】
クランプ装置7は、緯入れノズル3と測長貯留装置4との間に設けられている。そして、そのクランプ装置7は、緯糸Wを把持するための一対の円盤状の把持部材を含むクランプ機構71と、そのクランプ機構71を駆動するクランプ駆動部72によって構成されている。但し、そのクランプ駆動部72は、ソレノイド等の駆動手段を含み、クランプ機構71を電気的に駆動するように構成されている。そして、そのクランプ駆動部72は、緯糸Wを把持する把持状態とその把持が解放された解放状態とに切り換えるように、クランプ機構71における把持部材を駆動する。
【0031】
さらに、緯入れ装置2は、前記のように電気的に駆動される緯糸係止装置63における係止ピン631及びクランプ装置7におけるクランプ機構71(把持部材)の駆動を制御する緯入れ制御装置10を備えている。
【0032】
その緯入れ制御装置10は、設定値記憶器11を有し、その設定値記憶器11には、係止ピン631を駆動するタイミング及びクランプ機構71を駆動するタイミングについて、そのそれぞれの設定値が記憶される。具体的には、係止ピン631を駆動するタイミングの設定値は、係止ピン631を進出駆動するタイミング(進出タイミング)の設定値、及び係止ピン631を後退駆動するタイミング(後退タイミング)の設定値である。また、クランプ機構71を駆動するタイミングの設定値は、前記解放状態から前記把持状態にクランプ機構71を切り換えるタイミング(把持タイミング)の設定値、及び前記把持状態から前記解放状態にクランプ機構71を切り換えるタイミング(解放タイミング)の設定値である。
【0033】
但し、本実施例では、後述のように係止ピン631の後退に伴って緯糸Wの飛走が開始されるように、係止ピン631の前記後退タイミングがクランプ機構71の前記解放タイミングよりも後のタイミングとして設定されているものとする。したがって、その係止ピン631の前記後退タイミングは、緯糸Wの飛走が開始されるタイミング(緯入れ開始タイミング)となり、クランプ機構71の前記解放タイミングは、その緯入れ開始タイミングよりも前に設定されることとなる。因みに、係止ピン631の前記進出タイミングは、飛走する緯糸Wの先端が反給糸側の所定の位置に達する時点(緯入れ終了タイミング)よりも前に設定され、クランプ機構71の前記把持タイミングは、その緯入れ終了タイミングよりも後に設定される。
【0034】
なお、水噴射式織機1は、入力設定器12を備えており、緯入れ制御装置10は、その入力設定器12に対し電気的に接続されている。そして、前記の各設定値は、その入力設定器12によって入力設定されると共に、その入力設定器12から緯入れ制御装置10における設定値記憶器11に伝送され、設定値記憶器11において記憶される。因みに、その入力設定器12は、表示画面(図示略)を備えると共に、その表示画面が所謂タッチパネルで構成されている。その上で、入力設定器12は、その表示画面をタッチ操作することで前記の各設定値の入力設定が行えるように構成されているものとする。
【0035】
さらに、緯入れ制御装置10は、緯糸係止装置63における係止ピン631を駆動するピン駆動部632及びクランプ装置7におけるクランプ機構71(把持部材)を駆動するクランプ駆動部72の動作を制御する駆動制御器13を有している。そして、その駆動制御器13は、設定値記憶器11に対し電気的に接続されており、設定値記憶器11に記憶された前記の各設定値に従い、その各設定値による各タイミングで係止ピン631及び把持部材が駆動されるようにピン駆動部632及びクランプ駆動部72の動作を制御する。そのため、駆動制御器13は、水噴射式織機1に備えられた主軸MAの回転角度を検出するエンコーダENに対しても電気的に接続されており、エンコーダENで検出された主軸MAの回転角度に応じた角度信号S1が入力されるようになっている。
【0036】
以上のような緯入れ装置2において、緯入れに関しては、先ずは前記した噴射開始タイミングにおいて緯入れノズル3からの圧力水の噴射が開始される。次いで、前記解放タイミングにおいてクランプ装置7におけるクランプ機構71が解放駆動されると共に、それに続く前記後退タイミングにおいて係止ピン631が後退駆動される。そして、そのように緯入れノズル3から圧力水が噴射されると共にクランプ装置7(クランプ機構71)による把持が解放された状態において係止ピン631が後退駆動されることで、その係止ピン631が後退した時点(前記後退タイミング)において緯糸Wの飛走が開始される。
【0037】
なお、そのように緯糸Wの飛走が開始される時点では、前回の緯入れが終了した時点からその緯糸Wの飛走が開始される時点(開始時点)までの回転ヤーンガイド61の回動量に応じた長さの緯糸Wが貯留ドラム62上に貯留されている。したがって、前記開始時点から暫くの間は、貯留ドラム62上の緯糸Wがその貯留ドラム62から解舒されつつ引き出される所謂自由飛走の状態で緯糸Wが飛走することとなる。但し、そのような自由飛走の状態で緯糸Wが飛走する過程(自由飛走過程)でも、回転ヤーンガイド61による貯留ドラム62への緯糸Wの巻き付けは継続されている。しかし、その自由飛走過程では、貯留ドラム62上からの緯糸Wの解舒速度が回転ヤーンガイド61による巻き付け速度よりも速いため、貯留ドラム62上の緯糸Wは次第に減少する。
【0038】
そして、貯留ドラム62上の緯糸Wが全て解舒されると、その後は、緯糸Wが貯留ドラム62を経ずに回転ヤーンガイド61から直接的に引き出される状態となる。なお、その状態では、緯糸Wは、その飛走速度が測長ローラ51(測長装置5)による送り速度に拘束された所謂拘束飛走の状態で飛走することとなる。すなわち、緯入れ装置2における測長貯留装置4が前述のように構成されている本発明の前提では、1回の緯入れは、緯糸Wが自由飛走の状態で飛走するかたちで開始され、その自由飛走過程が前記緯入れ終了タイミングよりも前に終了すると共に、それに続いて前記のように拘束飛走の状態で緯糸Wが飛走する過程(拘束飛走過程)が存在するといったかたちで行われる。
【0039】
そして、前記進出タイミングで係止ピン631が進出駆動されることで、前記拘束飛走の状態で飛走する緯糸Wが貯留ドラム62上において係止ピン631に係止され、その飛走が停止された状態となる。それにより、緯入れ装置2は、1回の緯入れが完了した状態となる。なお、その緯入れ過程において、そのように緯糸Wが係止ピン631に係止された時点は、前述のように緯糸Wの先端が反給糸側の所定の位置に達した時点であり、前記緯入れ終了タイミングに一致した時点(緯入れの終了時点)である。
【0040】
また、以上で説明したように本実施例の水噴射式織機1における緯入れ装置2においては、係止ピン631及びクランプ機構71は、設定値記憶器11に記憶されたタイミングの設定値に従って駆動される。また、前述のように、緯糸Wの把持が解放された状態となるようにクランプ機構71が解放駆動された後、その状態において係止ピン631が後退駆動されるのに伴い、緯糸Wは飛走を開始する。すなわち、係止ピン631は、その動作によって緯糸Wが飛走を開始するタイミングに影響を及ぼすものとなっている。したがって、本実施例では、その係止ピン631が本発明で言う「緯入れ関連装置」に相当する。
【0041】
以上のような緯入れ装置2を備えた水噴射式織機1において、本発明では、その緯入れ装置2は、緯糸Wの到達タイミングを可及的に一定とするために、緯入れに伴って貯留ドラム62周りを周回する緯糸Wの通過のタイミングである通過タイミングを求めるべく前記通過を検出する緯糸検出センサ20を備えている。その上で、その緯入れ装置2は、自由飛走過程における前記通過タイミング(貯留ドラム62からの緯糸Wの解舒が行われる解舒タイミング)に基づき、緯入れ関連装置の駆動を制御するように構成されている。但し、本実施例では、緯入れ関連装置は前述のように係止ピン631であり、緯入れ開始タイミングである前記後退タイミングが制御される。詳しくは、以下の通りである。
【0042】
先ず、本発明において、緯入れ装置2は、前述のように前記通過タイミングを求めるための緯糸検出センサ20を備えている。その緯糸検出センサ20は、貯留ドラム62の半径方向において貯留ドラム62と対向するように設けられている。また、緯糸検出センサ20は、貯留ドラム62の円周方向においては、本実施例では、緯糸係止装置63の近傍に位置するように設けられている(但し、
図1においては、便宜上、貯留ドラム62を挟んで緯糸係止装置63とは反対側の位置に設けられるように図示してある)。その上で、緯糸検出センサ20は、その緯糸検出センサ20と貯留ドラム62との間を緯糸Wが通過するのに伴い、その通過を検出すると共にその検出信号S2を出力するように構成されている。なお、緯糸検出センサ20は、緯入れ制御装置10に対し電気的に接続されている。そして、その検出信号S2は、緯入れ制御装置10に対し出力される。
【0043】
なお、本実施例では、1回の緯入れにおける自由飛走過程において、貯留ドラム62から5巻分の緯糸Wが解舒されるものとする。したがって、緯糸検出センサ20は、その自由飛走過程において、前記通過を5回検出すると共に、緯入れ制御装置10に対し検出信号S2を5回出力する。
【0044】
緯入れ制御装置10は、前記のような設定値記憶器11及び駆動制御器13に加えて、緯糸検出センサ20から出力される検出信号S2から求められる通過タイミングに基づいて緯入れ関連装置の設定値(本実施例では係止ピン631の前記後退タイミングの設定値)を補正する設定値補正装置21を有している。そこで、その設定値補正装置21は、前記通過タイミングを求める通過タイミング検出器211、及び前記後退タイミングの設定値を補正する設定値補正器212を含んでいる。なお、その通過タイミング検出器211は、緯糸検出センサ20及びエンコーダENに対し電気的に接続されており、緯糸検出センサ20から出力される検出信号S2とエンコーダENから出力される角度信号S1とから前記通過タイミング(前記解舒タイミング)を求めるように構成されている。
【0045】
但し、本実施例では、前記後退タイミングの設定値の補正は、自由飛走過程における5回目の検出信号S2から求められる前記通過タイミング(前記解舒タイミング)に基づいて行われるものとする。したがって、通過タイミング検出器211は、各製織サイクルにおいて前記のように緯糸検出センサ20から出力される検出信号S2のうちの5回目に入力された検出信号S2のみについて前記解舒タイミングを求め、それを出力するように構成されている。
【0046】
また、本実施例では、前記後退タイミングの設定値の補正は、前記のように通過タイミング検出器211で求められた前記解舒タイミングの平均値であって30回分の緯入れにおける平均値に基づいて行われるものとする。そこで、設定値補正装置21は、通過タイミング検出器211に対し電気的に接続された平均値算出器213を含む。
【0047】
そして、その平均値算出器213は、通過タイミング検出器211から出力された前記解舒タイミングを順次記憶すると共に、その記憶された前記解舒タイミングの数が緯入れ30回分に達した時点でその前記解舒タイミングの平均値を算出するように構成されている。なお、平均値算出器213は、入力設定器12に対し電気的に接続されている。そして、平均値算出器213は、前記算出の基となる緯入れの回数の設定値(緯入れ30回分)について、その入力設定器12によって入力設定されて入力設定器12から伝送されたその緯入れの回数の設定値を記憶するように構成されている。また、その平均値算出器213は、その前記算出によって求めた平均値を出力すると共に、その出力に伴って記憶している前記解舒タイミングをリセットするように構成されている。
【0048】
その上で、設定値補正装置21は、前記した設定値補正器212が前記のように検出に基づいて求められた前記解舒タイミングの平均値と予め設定された前記した5回目の前記解舒タイミングの基準値との偏差に基づいて前記後退タイミングの設定値を補正するように構成されているものとする。そこで、設定値補正装置21は、前記基準値を記憶する基準値記憶器214、及び前記偏差を求めるべく前記平均値と前記基準値とを比較する比較器215を含んでいる。なお、基準値記憶器214は、比較器215における前記比較のために比較器215に対し電気的に接続されると共に、入力設定器12に対しても電気的に接続されている。そして、前記基準値は、入力設定器12によって入力設定されると共に入力設定器12から基準値記憶器214に伝送され、前記のように基準値記憶器214に記憶されている。
【0049】
また、比較器215は、前記した平均値算出器213の出力端に対し電気的に接続されると共に設定値補正器212の入力端に対し電気的に接続されている。したがって、前記のように求められて平均値算出器213から出力された前記平均値は、比較器215に対し入力される。その上で、比較器215は、その前記平均値が入力されるのに伴い、前記比較を行うと共に、その前記比較の結果として前記偏差が生じている場合にその前記偏差に応じた偏差信号S3を設定値補正器212に対し出力するように構成されている。また、比較器215は、前記比較の結果として前記偏差が生じていない場合に、偏差信号S3を発生しない(設定値補正器212に対する出力を行わない)ように構成されている。
【0050】
また、設定値補正器212は、比較器215からの偏差信号S3の入力に伴って前記のように前記後退タイミングの設定値を補正するように構成されている。そのために、設定値補正器212は、偏差信号S3(前記偏差)に基づいて前記後退タイミングの設定値の補正量を求めるように構成されている。さらに、設定値補正器212は、そのように前記補正量を求めるのに伴い、設定値記憶器11に記憶されている前記後退タイミングの設定値を読み出すと共に、その求められた前記補正量に基づいて前記後退タイミングの設定値を補正し(具体的には、前記補正量を前記後退タイミングの設定値に加算(前記補正量が負の値である場合にはその絶対値を減算)する。)、その補正後の前記後退タイミングの設定値を設定値記憶器11に対し出力するように構成されている。その上で、設定値記憶器11は、前記した補正後の前記後退タイミングの設定値が入力されるのに伴い、記憶している前記後退タイミングの設定値が更新されるように構成されている。
【0051】
なお、設定値補正器212による前記補正量の求め方(前記補正量を求めるための構成)は、例えば、前記偏差と前記補正量とを対応させたかたちで設定されたデータベースを設定値補正器212に予め記憶させておき、比較器215からの偏差信号S3に基づいてその前記偏差に対応する前記補正量をそのデータベースから選出する、といった方法(構成)とすれば良い。また、その求め方(構成)は、前記偏差に基づいて前記補正量を算出するための演算式を設定値補正器212に予め設定させておき、比較器215からの偏差信号S3に基づいてその前記偏差に対応する前記補正量を前記演算式を用いて算出する、といった方法(構成)であっても良い。
【0052】
以上のような本実施例の緯入れ装置2によれば、各緯入れにおいて貯留ドラム62上から緯糸Wが解舒されるのに伴い、その緯糸Wが貯留ドラム62の周りを周回し、貯留ドラム62と緯糸検出センサ20との間を通過する。なお、前述のように、その緯入れ過程における自由飛走過程では、貯留ドラム62の5巻分の緯糸Wが貯留ドラム62から解舒される。言い換えれば、その緯入れ過程では、貯留ドラム62の5巻分の緯糸Wが貯留ドラム62から解舒された時点で、自由飛走過程から拘束飛走過程に移行される。そして、その拘束飛走過程では、緯糸Wは、回転ヤーンガイド61から緯入れノズル3へ向けて直接的に引き出される状態で、貯留ドラム62周りを周回する状態となる。
【0053】
そして、前記のように貯留ドラム62と緯糸検出センサ20との間を緯糸Wが通過する毎に、緯糸検出センサ20は、その通過を検出し、その検出信号S2を通過タイミング検出器211に対し出力する。通過タイミング検出器211は、その入力の回数を計数するように構成されており、その計数値が5に達した時点、すなわち、5回目の検出信号S2が入力された時点で、その時点の主軸MAの回転角度をエンコーダENからの角度信号S1により求める。その求められた主軸MAの回転角度は前記した前記解舒タイミングであり、通過タイミング検出器211は、その求めた前記解舒タイミングを平均値算出器213に対し出力する。なお、通過タイミング検出器211において、前記の計数値は、その前記解舒タイミングが出力された時点でリセットされる。
【0054】
緯入れ毎に前記のように前記解舒タイミングが通過タイミング検出器211から出力されると、平均値算出器213は、その入力された前記解舒タイミングを順次記憶する。また、平均値算出器213は、その入力の回数を計数するように構成されており、その計数値が30に達した時点、すなわち、記憶された前記解舒タイミングの数が緯入れ30回分に達した時点で、その前記解舒タイミング(緯入れ30回分の前記解舒タイミング)の平均値を算出する。そして、平均値算出器213は、その算出された前記平均値を比較器215に対し出力する。なお、平均値算出器213において、前記のように記憶された緯入れ30回分の前記解舒タイミング及び前記の計数値は、その前記平均値が出力された時点でリセットされる。
【0055】
平均値算出器213から前記平均値が出力されると、比較器215は、その入力された前記平均値を基準値記憶器214に記憶されている前記基準値と比較する。そして、比較器215は、その比較の結果として前記偏差が生じている場合に、その偏差に応じた偏差信号S3を設定値補正器212に対し出力する。但し、前記比較の結果として前記偏差が零の場合には、比較器215は、前記のように偏差信号S3を発生しない(設定値補正器212に対する出力を行わない)。
【0056】
なお、前記平均値が前記解舒タイミングから求められていることに基づけば、前記偏差が生じている状態は、その前記平均値を求めた緯入れにおいて前記解舒タイミング(前記通過タイミング)が前記基準値に対し変化してしまっていることに起因する。そして、前述のようにその解舒タイミングの変化は前記到達タイミングに影響するため、その状態では、前記到達タイミングも、緯入れが正常に行われた状態での前記到達タイミングである目標タイミングに対し変化してしまっていることになる。
【0057】
そこで、その前記偏差が生じている状態を解消するための制御(緯入れ制御)が行われる。具体的には、前記のように比較器215から偏差信号S3が出力されると、設定値補正器212は、その入力された偏差信号S3(前記偏差)に基づき、前述のような求め方で前記後退タイミングの設定値の補正量を求める。それに伴い、設定値補正器212は、設定値記憶器11に記憶されている前記後退タイミングの設定値をその求められた前記補正量に基づいて補正する。そして、その補正以降では、その補正された前記後退タイミングの設定値に従って係止ピン631が後退駆動される。
【0058】
それにより、緯入れ開始タイミングが前記偏差を解消し得るようなタイミングに変更され、その結果として、前記解舒タイミングについての前記偏差が解消された状態、すなわち、前記解舒タイミング(前記通過タイミング)が前記基準値と略一致した状態となる。そして、それに伴い、前記のような前記到達タイミングの前記目標タイミングに対する変化が解消され、それ以降(次に前記のような変化が生じるまで)は、前記到達タイミングが前記目標タイミングに略一致した状態での緯入れが行われる。その後、再び前記のような前記解舒タイミング(前記到達タイミング)の変化が発生しても、その度に前記緯入れ制御が行われてそれが解消されるため、全体的に見て緯入れが可及的に一定の状態で行われることになる。
【0059】
また、本実施例では、前記緯入れ制御を、自由飛走過程での複数回の貯留ドラム62からの緯糸Wの解舒における最後の解舒時の前記通過タイミングである5回目の前記解舒タイミングに基づいて行っている。それにより、前記到達タイミングの変化の解消がより適切に行われる。詳しくは、5回目の前記解舒タイミングは自由飛走過程の終期の時点であってその直後に拘束飛走過程が開始される時点である。そして、拘束飛走過程における緯糸Wの飛走速度が測長ローラ51による送り速度に拘束されていて一定であるため、5回目の前記解舒タイミングに基づいて求められた前記偏差は、そのまま前記到達タイミングの前記目標タイミングに対する偏差とみなすことができる。そこで、求められた前記偏差を解消するように緯入れを制御することで前記到達タイミングの変化が解消されるため、その前記到達タイミングの変化の解消がより適切に行われることとなる。
【0060】
なお、以上で説明した本実施例について、前述のように緯入れの自由飛走過程では貯留ドラム62に巻かれた緯糸Wが貯留ドラム62から解舒されつつ緯入れが行われるため、その自由飛走過程において緯糸Wの先端が達する到達位置(以下、「緯糸Wの先端が達する到達位置」を単に「到達位置」と言う。)の緯入れノズル3からの距離は、貯留ドラム62からの解舒長さと略一致する。そして、一般的に緯入れ過程における到達位置は緯入れノズル3からの距離によって表されるため、自由飛走過程における到達位置は、その解舒長さに相当する。因みに、貯留ドラム62における1巻分の緯糸長さは、自由飛走過程において解舒される1巻目から最終巻目(本実施例では5巻目)まで略同じであるため、自由飛走過程における到達位置は、解舒数×1巻分の緯糸長さで求められる。そして、その1巻分の緯糸長さは予め求められる既知の値であって固定値であることから、その到達位置は、貯留ドラム62から解舒される緯糸Wの巻数(解舒数)で代替することが可能である。
【0061】
その上で、本実施例では、5回目の前記解舒タイミング(5回目の前記通過タイミングであって5巻目の緯糸Wが貯留ドラム62から解舒された時点)についての基準値と検出から求められた値とから前記偏差を求めている。言い換えれば、5回目の前記解舒タイミングが求められたこと(5巻分の緯糸Wが解舒されたこと)に基づいて前記偏差を求めるように設定されている。なお、前記から明らかなように、5巻分の緯糸Wが解舒されたことは、その5巻分の緯糸長さに相当する距離に緯糸Wの先端が達したことと一致する。
【0062】
したがって、前記した本実施例の説明では到達位置に関する記載は無いが、その本実施例における貯留ドラム62の5巻分(5回目の前記通過タイミング)という設定が、本発明で言う「設定到達位置」に相当する。すなわち、その5巻分の緯糸Wが解舒されたことが、本発明で言う「設定到達位置に緯糸の先端が達する」ことに相当する。それにより、その5回目の前記通過タイミング(前記解舒タイミング)が、本発明で言う「設定位置到達タイミング」に相当する。
【0063】
また、本実施例では、製織中に求められたその5回目の前記通過タイミング(前記解舒タイミング)に基づいてその緯入れ30回分の平均値が求められ、その平均値が前記基準値と比較される。したがって、本実施例では、そのように求められた前記平均値が、本発明で言う「実際値」に相当する。さらに、本実施例では、実際値としての前記平均値は、通過タイミング検出器211で求められた5回目の前記通過タイミング(前記解舒タイミング)に基づいて平均値算出器213が算出する。すなわち、その前記平均値は、通過タイミング検出器211及び平均値算出器213によって求められる。したがって、本実施例では、通過タイミング検出器211と平均値算出器213との組み合わせが、本発明で言う「実際値決定器」に相当する。
【0064】
なお、本発明は、以上で説明した実施例に限定されるものではなく、以下(1)~(4)のように変形させた態様でも実施することができる。
【0065】
(1)前記実施例では、自由飛走過程において貯留ドラム62から5巻分の緯糸Wが解舒される(貯留ドラム62と緯糸検出センサ20との間の緯糸Wの通過が5回発生する)緯入れ装置2において、その貯留ドラム62の5巻分(5回目の緯糸Wの通過が検出される時点の到達位置)を本発明で言う設定到達位置として設定している。その上で、前記実施例では、その5回目(最後)の通過が検出される時点で本発明で言う通過タイミング(前記解舒タイミング)が求められるように緯入れ装置2が設定されている。すなわち、前記実施例では、自由飛走過程において貯留ドラム62と緯糸検出センサ20との間を複数回に亘って通過する緯糸Wの各通過時点における到達位置のうちの最後の到達位置(自由飛走過程における最終到達位置)を設定到達位置として設定している。
【0066】
しかし、本発明では、設定到達位置は、そのように自由飛走過程における複数の到達位置のうちの1つとする場合であっても、前記実施例のような自由飛走過程における最終到達位置に限らず、前記通過タイミングによる到達位置であって自由飛走過程における中間の到達位置(以下、単に「中間到達位置」と言う。)であっても良い。すなわち、例えば前記実施例のように自由飛走過程において貯留ドラム62から5巻分の緯糸Wが解舒される場合において、その設定到達位置は、その貯留ドラム62の4巻分以下(4回目以下の緯糸Wの通過が検出される時点の到達位置)に設定されても良い。
【0067】
但し、前記のように中間到達位置を設定到達位置として設定する場合は、前記到達タイミングの変化を解消するためには、実際値と基準値の偏差及びその中間到達位置に相当する解舒数に基づいて緯入れ関連装置の設定値の補正量が求められるようにする。
【0068】
詳しくは、前記の自由飛走過程における最終到達位置に緯糸Wの先端が達した時点でのタイミングに関する偏差は、前述のように前記到達タイミングの前記目標タイミングに対する偏差と略一致するとみなすことができる。一方で、その自由飛走過程における最終到達位置よりも前に(給糸側で)緯糸Wの先端が達する中間到達位置での前記偏差は、自由飛走過程における緯糸Wの飛走速度が実質的には変化しないとみなした場合、その同じ緯入れの自由飛走過程における最終到達位置での前記偏差と比べ、小さい偏差として現れる。その場合において前記実施例と同じく、その中間到達位置での前記偏差に基づき、その前記偏差が解消されるように緯入れ関連装置の設定値の補正量を求めると、その中間到達位置での前記偏差と自由飛走過程における最終到達位置での前記偏差との差の分だけ前記到達タイミングの変化が解消されない状態となる。
【0069】
そこで、中間到達位置を設定到達位置として設定する場合は、その中間到達位置に対する前記通過タイミングの実際値を用いて演算等により最終到達位置に対する前記通過タイミングや前記偏差を求めるようにすれば良い。具体的には、例えば、その中間到達位置とその中間到達位置に対する前記通過タイミングの実際値とからその緯入れにおける自由飛走過程での緯糸Wの飛走速度を求める。そして、その求められた飛走速度に基づき、演算により最終到達位置に対する前記通過タイミング(演算値)を求める。その上で、その求められた最終到達位置に対する前記通過タイミングの演算値を用い、前記実施例と同様に前記基準値との比較や前記緯入れ制御が行われるようにすれば良い。
【0070】
(2)以上では、自由飛走過程における複数の到達位置(中間到達位置及び最終到達位置)のうちの1つを設定到達位置に設定する例について述べた。しかし、本発明は、そのように自由飛走過程における前記通過タイミングが直接的に対応する(前記通過タイミングから直接的に求められる)到達位置を設定到達位置に設定するものには限られず、自由飛走過程における前記通過タイミングから演算等により求められる到達位置が設定到達位置に設定されるものであっても良い。
【0071】
したがって、例えば、前記した反給糸側の所定の到達位置(緯入れの終了時点における到達位置)が設定到達位置に設定されても良い。但し、その場合には、比較される実際値と基準値とは、その反給糸側の所定の到達位置に対する前記到達タイミングについての値となる。その上で、各緯入れにおいて、その反給糸側の所定の到達位置に対する前記到達タイミングの演算値が求められる。なお、その演算値の求め方については、例えば次のように行えば良い。
【0072】
先ず、自由飛走過程における最終到達位置は、前述のように予め把握することができる。したがって、その最終到達位置から前記した反給糸側の所定の到達位置(設定到達位置)までの距離も予め求めることが可能である。その上で、拘束飛走過程における緯糸Wの飛走速度は測長ローラ51(測長装置5)による送り速度に一致しており予め把握できるため、前記距離、その飛走速度及び織機1の回転数に基づき、拘束飛走が開始された時点からその設定到達位置に緯糸Wの先端が達するまでの時間を主軸MAの回転角度で予め求めることができる。
【0073】
そこで、その時間を予め求めて、自由飛走過程における最終到達位置に対する前記通過タイミングにその求められた時間(主軸MAの回転角度)が加算されるようにしておくことで、反給糸側の所定の到達位置に対する前記到達タイミングの演算値を求めることができる。なお、その前記到達タイミングの演算値を求めるための構成は、例えば前記実施例における通過タイミング検出器211において、前記実施例と同様に緯糸検出センサ20からの検出信号S2に基づいて最終到達位置に対する前記通過タイミングが求められるようにすると共に、予め求められた前記時間、及びその前記時間を求められた最終到達位置に対する前記通過タイミングに加算する演算式を記憶させておく。その上で、その通過タイミング検出器211を、各緯入れにおいて求められた最終到達位置に対する前記通過タイミング、及び記憶された前記時間、演算式により、前記到達タイミングの演算値を求めるように構成すれば良い。
【0074】
(3)基準値と比較される設定位置到達タイミングに基づく実際値について、前記実施例では、5巻目の緯糸Wが解舒された時点での前記通過タイミング(5回目の前記解舒タイミング)を設定位置到達タイミングとした上で、緯入れ複数回分(30回分)のその前記通過タイミング(設定位置到達タイミング)の平均値を実際値としている。その上で、前記実施例は、その平均値を求める回数分の緯入れが完了する毎に実際値(設定位置到達タイミングの平均値)を求める例となっている。
【0075】
しかし、本発明においては、前記実施例のように複数回分の緯入れにおける設定位置到達タイミングの平均値を実際値とする場合であっても、その実際値を求める周期は、その平均値を求める緯入れ回数よりも少ない回数の緯入れ毎であっても良い。すなわち、m回分の緯入れにおける設定位置到達タイミングの平均値を緯入れn回(n<m)毎に求め、その求められた平均値を実際値として基準値と比較するようにしても良い。なお、その場合において、その平均値を求めるための構成については、例えば、前記実施例における平均値算出器213にその平均値を求める周期(緯入れn回)を記憶させておくと共に、その周期毎にそれ以前のm回分の緯入れにおける設定位置到達タイミングを用いて平均値を求めるように平均値算出器213を構成すれば良い。
【0076】
また、本発明においては、実際値は、以上で説明したような設定位置到達タイミングの平均値に限らず、1回の緯入れにおいて求められる設定位置到達タイミング自体であっても良い。また、その場合においては、緯入れ毎の設定位置到達タイミングを実際値としても良いし、予め定められた緯入れ回数毎の緯入れにおける設定位置到達タイミングを実際値としても良い。なお、後者の場合は、求められる設定位置到達タイミングを実際値として出力する周期(緯入れ回数)を通過タイミング検出器211に記憶させておき、その周期毎に設定位置到達タイミング(実際値)を出力するように通過タイミング検出器211を構成すれば良い。また、いずれの場合も、前記実施例の構成における平均値算出器213が省略されて通過タイミング検出器211から比較器215に対し実際値が直接的に出力される構成となり、通過タイミング検出器211が本発明で言う「実際値決定器」に相当することとなる。
【0077】
(4)本発明の緯入れ関連装置について、前記実施例は、係止ピン631が緯入れ関連装置に相当する例となっている。しかし、本発明においては、緯入れ関連装置は、そのように係止ピン631に限られるものではない。
【0078】
例えば、前記実施例のようにクランプ機構71が電気的に駆動されるようにクランプ装置7が構成されている場合においては、そのクランプ機構71が本発明で言う緯入れ関連装置に相当する場合がある。詳しくは、前記実施例では、クランプ機構71が解放駆動された後に係止ピン631が後退駆動される場合、すなわち、係止ピン631の後退駆動に伴って緯入れが開始される場合について、本発明が説明されている。しかし、一般的な織機におけるクランプ機構71と係止ピン631との駆動順は、前記実施例の場合に限らず、係止ピン631が後退駆動された後にクランプ機構71が解放駆動される場合もある。そして、その場合は、クランプ機構71の解放駆動に伴って緯入れが開始されることとなる。したがって、その場合には、クランプ機構71が緯糸Wの飛走開始タイミングに影響を及ぼす緯入れ関連装置に相当することとなる。
【0079】
そこで、そのようにクランプ機構71が緯入れ関連装置に相当する場合には、そのクランプ機構71の解放駆動が、前記実施例における係止ピン631の後退駆動と同様に、設定位置到達タイミングについての実際値と基準値との偏差に基づいて制御されることとなる。すなわち、その場合には、その偏差に基づいてクランプ機構71の前記解放タイミングの設定値が補正されることとなる。
【0080】
なお、前記のように係止ピン631が後退駆動された後にクランプ機構71が解放駆動される場合、前記のように前記解放タイミングが補正されると、その補正によって貯留ドラム62とクランプ機構71との間における緯糸Wの弛み度合いが変化し、その変化が緯糸Wの飛走状態(前記到達タイミング)に影響する場合がある。詳しくは、前記のように係止ピン631が後退駆動された後にクランプ機構71が解放駆動される場合、係止ピン631が後退駆動される時点からクランプ機構71が解放駆動される時点までの期間においては、貯留ドラム62とクランプ機構71との間における緯糸Wが弛んだ状態となる。その上で、前記解放タイミングの補正によってその期間が変化すると、その変化に伴って前記弛み度合いが変化する。そして、その前記弛み度合いの変化によって自由飛走過程の初期における貯留ドラム62からの緯糸Wの解舒抵抗が変化し、それに伴って緯糸Wの飛走速度(飛走状態)が変化する場合がある。
【0081】
そこで、前記弛み度合いの変化が緯糸Wの飛走状態(前記到達タイミング)に影響する場合には、前記偏差に基づく前記解放タイミングの補正について、その前記偏差だけではなく、その補正による前記弛み度合いの変化に伴う飛走速度の変化も踏まえてその補正量が決定されるようにするのが望ましい。
【0082】
なお、前記のように前記弛み度合いの変化が生じるのは、緯入れ関連装置としてのクランプ機構71の前記解放タイミングのみが変更され、係止ピン631の前記後退タイミングの設定値が一定となっているためである。それに対し、前記のようにクランプ機構71を緯入れ関連装置としてその前記解放タイミングが前記偏差に応じて補正されるようにした上で、それに伴い、係止ピン631の前記後退タイミングも同じ量だけ補正されるように緯入れ装置2を構成すれば、前記弛み度合いの変化は生じない。したがって、その構成の場合、その前記解放タイミングの設定値の補正量(=前記後退タイミングの設定値の補正量)は、前記実施例と同様に、前記偏差に対応させたものとすれば良い。そして、その場合、係止ピン631の前記後退タイミングの補正は、緯糸Wの飛走速度(飛走状態)の変化を考慮して為されるものであるため、係止ピン631も緯入れ関連装置に相当することとなる。
【0083】
また、緯入れ関連装置について、以上では係止ピン631及びクランプ機構71のうちの少なくとも一方が本発明で言う緯入れ関連装置に相当する場合について説明したが、本発明における緯入れ関連装置は、それらに限定されるものではなく、電気的に駆動される装置であって、緯糸Wが飛走を開始するタイミング又は緯糸Wが飛走する状態に影響を及ぼす装置であれば、前記以外の装置であっても良い。
【0084】
例えば、緯入れノズル3に対し緯入れ用の圧力水を供給するポンプがその一例として挙げられる。詳しくは、前記実施例では、そのポンプ8について織機の主軸MAを駆動源として機械的に駆動されるものとして説明したが、水噴射式織機1に採用されるポンプとしては、そのような機械的に駆動されるものに限らず、モータを駆動源として電気的に駆動されるものも公知である。
【0085】
なお、そのように電気的に駆動される公知のポンプとして、吸入工程の結果としてスプリングの付勢力がプランジャに作用する状態を変更可能とすることで吐出される圧力水の圧力を変更可能としたものや、スプリングの付勢力によってプランジャによる吐出工程が開始されるタイミングを変更可能としたものがある。そして、前者の場合は、緯入れノズルから噴射される圧力水の圧力が変更されることで、緯糸Wの飛走速度(飛走状態)が変更される。また、後者の場合は、緯入れノズル3から圧力水の噴射が開始されるタイミングが変更されるため、例えば係止ピン631の前記後退タイミングやクランプ機構71の前記解放タイミングが一定である場合には、緯糸Wに対する圧力水の影響度合いが変化することで、緯糸Wの飛走状態が変化する。さらに、後者の場合には、前記後退タイミングや前記解放タイミングとの兼ね合いで、その圧力水の噴射が開始されるタイミングを変更することで、緯糸Wが飛走を開始するタイミングを変更することも可能である。
【0086】
そこで、水噴射式織機1に前記のような電気的に駆動されるポンプが採用されている場合には、そのポンプを本発明における緯入れ関連装置とし、その上で、スプリングの付勢力がプランジャに作用する状態や前記吐出工程が開始されるタイミングを前記偏差に基づいて補正するようにすれば良い。
【0087】
また、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 水噴射式織機
2 緯入れ装置
3 緯入れノズル
4 測長貯留装置
5 測長装置
51 測長ローラ
52 従動ローラ
6 貯留装置
61 回転ヤーンガイド
62 貯留ドラム
63 緯糸係止装置
631 係止ピン
632 ピン駆動部
7 クランプ装置
71 クランプ機構
72 クランプ駆動部
8 ポンプ
9 給糸体
10 緯入れ制御装置
11 設定値記憶器
12 入力設定器
13 駆動制御器
20 緯糸検出センサ
21 設定値補正装置
211 通過タイミング検出器
212 設定値補正器
213 平均値算出器
214 基準値記憶器
215 比較器
MA 主軸
W 緯糸
S1 角度信号
S2 検出信号
S3 偏差信号