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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ロータ鉄心
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20230411BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/22 A
H02K1/22 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019090626
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020188557
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】森島 忠
(72)【発明者】
【氏名】谷口 光浩
(72)【発明者】
【氏名】井阪 智大
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 洋一
(72)【発明者】
【氏名】浦野 雅春
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054680(JP,A)
【文献】特開2005-293183(JP,A)
【文献】特開2014-155243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のロータを構成する鉄心であって、
複数枚の鉄心材が積層されることにより構成される鉄心本体部と、
前記鉄心本体部の一部に設けられる情報部と、
を備え
前記鉄心本体部は、
冷媒が流れる冷媒流通孔と、
磁石が挿入される磁石挿入孔と、
を備え、
前記情報部は、
コード化されることなく示される非コード化情報と、
コード化されて示されるコード化情報と、
を含み、少なくとも人が視認可能な大きさを有し、且つ、直線状に設けられており、前記冷媒流通孔と前記磁石挿入孔との間に備えられているロータ鉄心。
【請求項2】
前記情報部は、
前記鉄心材を打ち抜いた金型を示す金型情報と、
前記鉄心材が打ち抜かれた列を示す列情報と、
を含む請求項に記載のロータ鉄心。
【請求項3】
前記鉄心本体部は、
シャフトが挿入されるシャフト挿入孔と、
前記シャフト挿入孔の内周面に設けられ、前記シャフトに嵌合する嵌合部と、
を備え、
前記情報部は、前記シャフト挿入孔よりも外側において、前記嵌合部と同じ側に備えられている請求項1または2に記載のロータ鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機のロータを構成するロータ鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、回転電機のロータを構成するロータ鉄心は、帯状の電磁鋼板を金型によって打ち抜くことにより鉄心材を形成し、その鉄心材を複数枚積層することにより製造される。ここで、鉄心材の打ち抜きは、帯状の電磁鋼板の短手方向に沿って配置された多列の金型を備える製造装置において、電磁鋼板を当該電磁鋼板の長手方向に順送しながら多列の金型によってプレスすることによって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-187253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電磁鋼板を多列の金型によって打ち抜く従来の製造態様では、電磁鋼板の板厚の偏差や金型の摩耗度などの違いにより、各列から得られる抜き板、即ち、鉄心材の形状や厚さにばらつきが生じる。そのため、このようなばらつきのある鉄心材を積層したロータ鉄心においては、例えば、寸法公差の範囲から外れたり、性能が低下したりするという不具合が生じる。そのため、このような不具合の原因を特定するために、ロータ鉄心を構成する鉄心材のトレーサビリティを実現する必要がある。
【0005】
そこで、構成要素である鉄心材のトレーサビリティを行うことができるようにしたロータ鉄心を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るロータ鉄心は、回転電機のロータを構成する鉄心であって、複数枚の鉄心材が積層されることにより構成される鉄心本体部と、前記鉄心本体部の一部に設けられる情報部と、を備え、前記鉄心本体部は、冷媒が流れる冷媒流通孔と、磁石が挿入される磁石挿入孔と、を備え、前記情報部は、コード化されることなく示される非コード化情報と、コード化されて示されるコード化情報と、を含み、少なくとも人が視認可能な大きさを有し、且つ、直線状に設けられており、前記冷媒流通孔と前記磁石挿入孔との間に備えられている
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係るロータ鉄心の構成例を概略的に示す図
図2】本実施形態に係る鉄心材の構成例を概略的に示す図
図3】本実施形態に係るロータ鉄心の製造装置の構成例を概略的に示す図
図4】本実施形態に係る識別ラベルの構成例を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ロータ鉄心に係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に例示するロータ鉄心1は、回転電機のロータを構成する鉄心であって、鉄心本体部2を備えている。鉄心本体部2は、ロータ鉄心1の主体部を構成するものであり、ほぼ円柱状に形成されている。鉄心本体部2は、ほぼ円板状に形成される複数枚の鉄心材3が積層されることにより構成されている。この場合、鉄心本体部2は、複数、この場合、2つの鉄心材ブロック4を組み合わせた構成となっている。鉄心材ブロック4は、それぞれ複数枚の鉄心材3が積層された構成となっている。なお、それぞれの鉄心材ブロック4を構成する鉄心材3の積層数は、同じとしてもよいし、異ならせてもよい。
【0009】
次に、鉄心本体部2を構成する鉄心材3の構成例について説明する。図2に例示するように、鉄心本体部2を構成する鉄心材3は、そのほぼ中央部にシャフト挿入孔5を備えている。シャフト挿入孔5の内周面には、複数、この場合、2つのキー6が設けられている。キー6は、嵌合部の一例であり、シャフト挿入孔5の内周面から内方に突出している。また、キー6は、シャフト挿入孔5の内周面において相互に対向する位置に設けられている。また、キー6は、シャフト挿入孔5の内周面からほぼ矩形状に突出している。
【0010】
なお、キー6の数は、例えば、1つであってもよいし、3つ以上の複数であってもよく、つまり、図示しないシャフトに設けられるキー溝の数に応じて適宜変更して設けることができる。また、キー6の形状は、例えば、円弧状や多角形状などに突出したものでもよく、つまり、図示しないシャフトに設けられるキー溝の形状に応じて適宜変更して設けることができる。また、ロータ鉄心1は、シャフト挿入孔5の内周面にキー溝を設け、シャフトの周面にキーを設けた構成としてもよい。
【0011】
鉄心本体部2を構成する鉄心材3は、さらに、冷媒流通孔7を備えている。ロータ鉄心1の使用時において、冷媒流通孔7の内部には冷媒が流れるようになっており、これにより、ロータ鉄心1の冷却が行われる。鉄心材3は、複数、この場合、8つの冷媒流通孔7を備えている。また、冷媒流通孔7は、シャフト挿入孔5の外周部において、鉄心材3の周方向に沿って相互に等間隔を有して配置されている。冷媒流通孔7の基端部、この場合、シャフト挿入孔5側つまり鉄心材3の径方向内側に配置される部分は、ほぼ矩形状に形成されている。一方、冷媒流通孔7の先端部、この場合、シャフト挿入孔5とは反対側つまり鉄心材3の径方向外側に配置される部分は、径方向外側に向かうほど細くなる先細状に形成されている。なお、冷媒流通孔7の数は、適宜変更して設けることができる。
【0012】
鉄心本体部2を構成する鉄心材3は、さらに、磁石挿入孔8を備えている。磁石挿入孔8内には、図示しない永久磁石が挿入される。鉄心材3は、複数、この場合、16個の磁石挿入孔8を備えている。複数の磁石挿入孔8は、この場合、2つで一組を構成しており、それぞれの組が鉄心材3の外縁部において、鉄心材3の周方向に沿って相互に等間隔を有して配置されている。また、相互に組をなす複数組の磁石挿入孔8は、それぞれ冷媒流通孔7よりも径方向外側に配置されている。また、相互に組をなす複数組の磁石挿入孔8は、それぞれ、相互に隣接する冷媒流通孔7の間に対応する位置に設けられている。また、複数の磁石挿入孔8は、鉄心材3の径方向に対して傾斜した構成となっている。そして、相互に組をなす2つの磁石挿入孔8は、冷媒流通孔7の先端部の傾斜形状に対応して傾斜するようにして配置されており、これにより、鉄心材3の径方向内側に向かって突出するほぼ山形状を形成している。
【0013】
以上のように構成される鉄心材3が複数枚積層されることにより、本実施形態に係るロータ鉄心1が製造される。次に、ロータ鉄心1の製造装置の構成例について説明する。図3に例示する製造装置100は、ロータ鉄心1を製造する製造装置の一例である。製造装置100は、電磁鋼板搬送部101、打ち抜き部102、鉄心材搬送部103、積層部104を備えている。
【0014】
電磁鋼板搬送部101は、例えばベルトコンベアなどにより構成されており、鉄心材3の母材である電磁鋼板Pを搬送する。この場合、電磁鋼板搬送部101は、電磁鋼板Pを、当該電磁鋼板Pの長手方向である矢印X方向に沿って搬送する。
【0015】
打ち抜き部102は、電磁鋼板搬送部101によって搬送される電磁鋼板Pから鉄心材3を打ち抜く。この場合、打ち抜き部102は、電磁鋼板搬送部101によって搬送される電磁鋼板Pの短手方向に沿って複数、この場合、3つの金型105を配列した構成となっている。即ち、打ち抜き部102は、電磁鋼板搬送部101によって搬送される電磁鋼板Pから複数、この場合、3つの鉄心材3を多列で打ち抜く構成となっている。なお、説明の便宜上、図3において最も上部に配置されている金型105を第1列の金型105、最も下部に配置されている金型105を第3列の金型105、第1列の金型105と第3列の金型105の間に配置されている金型105を第2列の金型105と定義する。
【0016】
鉄心材搬送部103は、例えばベルトコンベアなどにより構成されており、打ち抜き部102によって打ち抜かれた鉄心材3を積層部104に搬送する。この場合、鉄心材搬送部103は、複数、この場合、打ち抜き部102の金型105の列数に応じて3つの鉄心材搬送レーン103rを備えている。打ち抜き部102の各列の金型105により打ち抜かれた鉄心材3は、それぞれ、対応する鉄心材搬送レーン103rを介して積層部104に搬送される。
【0017】
積層部104は、鉄心材搬送部103によって搬送されてくる鉄心材3を複数枚積層して鉄心材ブロック4を形成する。この場合、積層部104は、鉄心材搬送部103の複数の鉄心材搬送レーン103rごとに、当該鉄心材搬送レーン103rから搬送される鉄心材3を積層するようになっている。そして、積層部104により形成された鉄心材ブロック4は、作業者あるいは図示しない組み合わせ装置などによって適宜組み合わされ、これにより、鉄心本体部2、換言すれば、当該鉄心本体部2を本体部とするロータ鉄心1が製造される。
【0018】
以上のように構成される製造装置100において、打ち抜き部102は、電磁鋼板Pを当該電磁鋼板Pの長手方向Xに順送しながら、多列、この場合、3列の金型105によってプレスすることによって、鉄心材3を打ち抜くようになっている。そして、この製造装置100においては、各列の金型105について、それぞれ、Aタイプの金型105とBタイプの金型105とが用意されている。そして、例えば金型105のメンテナンスを行うために、打ち抜き部102に取り付ける金型105を、Aタイプの金型105とBタイプの金型105とで適宜交換することが行われている。
【0019】
ここで、Aタイプの金型105とBタイプの金型105は、何れも鉄心材3を打ち抜くために製造されたもの、つまり、基本的には同一形状の金型となっている。しかし、金型105の製造時においては、その製造精度に避けがたい相違が生じ得る。そのため、完全に同じ形状の金型105を複数製造することは困難であり、従って、Aタイプの金型105とBタイプの金型105とでは、その形状に若干の相違が生じる。また、複数の金型105について、例えば使用頻度や使用期間などが異なる場合には、それぞれの金型105の摩耗度などにも相違が生じ、その形状に若干の相違が生じる。そのため、Aタイプの金型105とBタイプの金型105とを全く同じ形状とすることは困難であり、ひいては、Aタイプの金型105により打ち抜かれる鉄心材3とBタイプの金型105により打ち抜かれる鉄心材3とを全く同じ形状とすることは困難である。
【0020】
また、鉄心材3の母材である電磁鋼板Pについても、その全体にわたって板厚を均一とすることは困難である。そのため、電磁鋼板Pの異なる部位から打ち抜かれるそれぞれの鉄心材3の厚さを全く同じ形状とすることは困難である。
【0021】
以上の通り、実際の製造状況においては、電磁鋼板Pから得られる複数の鉄心材3の形状および厚さを全く同じ形状および同じ厚さとすることが困難であり、従って、打ち抜き部102の各列から得られる鉄心材3の形状や厚さにばらつきが生じる。そして、このようなばらつきのある鉄心材3を複数枚積層したロータ鉄心1においては、例えば、鉄心本体部2が寸法公差の範囲から外れたり、ロータ鉄心1としての性能が低下したりするという不具合が生じる。そのため、このような不具合の原因を特定するために、ロータ鉄心1を構成する鉄心材3のトレーサビリティを実現する必要がある。
【0022】
そこで、本実施形態に係るロータ鉄心1においては、図2に例示するように、鉄心本体部2の一部、この場合、鉄心本体部2を構成する少なくとも1枚の鉄心材3に識別ラベル10が備えられている。識別ラベル10は、情報部の一例であり、この場合、鉄心本体部2を構成する鉄心材ブロック4の軸方向の一端面を構成する鉄心材3に設けられている。鉄心本体部2は、鉄心材ブロック4の軸方向の両端面のうち識別ラベル10が設けられている面を相互に対向させて組み合わせることにより構成される。従って、鉄心本体部2が構成された状態では、識別ラベル10は、鉄心材ブロック4の間に挟まれて、外部から視認することができなくなる情報となっている。
【0023】
識別ラベル10は、この場合、鉄心材3の表面にレーザにより刻印することによって設けられている。この場合、識別ラベル10は、複数の鉄心材3が積層されて鉄心材ブロック4が構成された後において、当該鉄心材ブロック4の軸方向の一端面を構成する鉄心材3の表面にレーザ刻印することによって設けられる。
【0024】
また、識別ラベル10は、鉄心材3のうち冷媒流通孔7と磁石挿入孔8との間に設けられている。ここで、識別ラベル10が設けられている冷媒流通孔7と磁石挿入孔8との間の部分は、鉄心材3において比較的大きな面積を確保しやすい部位となっている。この場合、冷媒流通孔7と磁石挿入孔8との間の部分は、少なくとも、シャフト挿入孔5と冷媒流通孔7との間の部分、相互に隣り合う冷媒流通孔7の間の部分、相互に隣り合う磁石挿入孔8の間の部分よりも大きな面積を有する部位となっている。また、冷媒流通孔7と磁石挿入孔8との間の部分は、少なくとも人が視認可能な情報を示すことが可能な大きさの面積を有する部位となっている。また、冷媒流通孔7と磁石挿入孔8との間の部分は、直線状に延びる部分となっている。
【0025】
そして、このような部位に設けられる識別ラベル10は、少なくとも人が視認可能な大きさを有し、且つ、直線状に設けられた情報となっている。また、識別ラベル10は、1枚の鉄心材3に対し1つ設けられており、シャフト挿入孔5よりも外側において、当該シャフト挿入孔5内の2つのキー6のうち一方のキー6と同じ側に設けられている。
【0026】
次に、この識別ラベル10の構成例について説明する。図4に例示するように、識別ラベル10は、非コード化部11およびコード化部12を含む。非コード化部11は、情報をコード化することなく示す部位であり、この場合、金型情報11aおよび列情報11bを含む。
【0027】
金型情報11aは、当該識別ラベル10が設けられている鉄心材3を打ち抜いた金型105のタイプを示す情報、この場合、文字情報となっている。この場合、金型情報11aは、この鉄心材3を打ち抜いた金型105がBタイプであることを、人が認識可能な文字「B」によって直接的に示している。
【0028】
列情報11bは、打ち抜き部102が備える複数の列のうち当該識別ラベル10が設けられている鉄心材3を打ち抜いた列を示す情報、この場合、文字情報となっている。この場合、列情報11bは、当該鉄心材3を打ち抜いた列が打ち抜き部102の第1列であることを、人が認識可能な文字「R1」によって直接的に示している。なお、金型情報11aおよび列情報11bは、コード化されることなく示される非コード化情報の一例である。
【0029】
コード化部12は、情報をコード化して示す部位であり、例えば、バーコードやQRコード(登録商標)などといった各種のコードによって構成されている。コード化部12には、非コード化部11に示されている情報、この場合、上述した金型情報11aおよび列情報11b以外の情報がコード化されて示されている。コード化部12にコード化されて示される情報は、コード化情報の一例であり、例えば、ロータ鉄心1の製造番号、製造日、製造時の温度、検査番号、検査日、検査結果、検査時の温度などのロータ鉄心1全体に関する情報、鉄心材3の製造番号、製造日、製造時の温度、検査番号、検査日、検査結果、検査時の温度などの鉄心材3に関する情報、鉄心材ブロック4の製造番号、製造日、製造時の温度、検査番号、検査日、検査結果、検査時の温度などの鉄心材ブロック4に関する情報、電磁鋼板Pの製造番号、製造日、製造時の温度、検査番号、検査日、検査結果、検査時の温度などの電磁鋼板Pに関する情報など、を含ませることができる。なお、コード化部12にコード化する情報は、上述した例に限られるものではなく、その他の情報を含ませるようにしてもよい。
【0030】
以上に説明した本実施形態によれば、鉄心本体部2に設けられた識別ラベル10に基づいて、当該鉄心本体部2を構成する鉄心材3のトレーサビリィティを行うことができる。即ち、鉄心本体部2を構成する鉄心材3がどのような条件で製造されたのかを確認することができる。そのため、製造したロータ鉄心1に仮に不具合が生じた場合には、そのロータ鉄心1を構成する鉄心材3が製造された条件、例えば、その鉄心材3を打ち抜いた金型105のタイプや列番号などの情報に基づいて、その不具合の原因を特定することができる。
【0031】
なお、上述した通り、識別ラベル10は、鉄心本体部2が構成された状態では、鉄心材ブロック4の間に挟まれて、外部から視認することができなくなる情報となっている。そのため、製造したロータ鉄心1に仮に不具合が生じた場合には、作業者は、鉄心本体部2を鉄心材ブロック4に分解することで、当該鉄心材ブロック4の一端面に設けられている識別ラベル10を確認することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、識別ラベル10は、コード化されることなく示される非コード化情報として金型情報11aおよび列情報11bを含んでいる。そのため、作業者は、鉄心材3が製造された条件のうち、当該鉄心材3を打ち抜いた金型105のタイプ、および、当該鉄心材3を打ち抜いた打ち抜き部102の列番号を即座に特定することができ、不具合の原因となる鉄心材3を打ち抜いた金型105の交換を迅速に、かつ、円滑に行うことができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、識別ラベル10は、コード化されて示されるコード化情報も含んでいる。そのため、作業者は、そのコード化された情報を読み取ることによって、さらに詳細なトレーサビリィティを行うことができ、不具合の原因を一層確実に行うことができる。また、情報をコード化することにより、より多くの情報を識別ラベル10に含ませることができ、トレーサビリィティの一層の精度向上を図ることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、識別ラベル10は、鉄心材3において極力大きな面積を有する部位に設けられている。そのため、作業者は、識別ラベル10を視認しやすく、しかも、コード化されることなく人が認識可能な態様で示されている情報、この場合、金型情報11aおよび列情報11bについては、特殊な読み取り機器などを用いることなく即座に確認することができる。また、本実施形態によれば、識別ラベル10は、直線状に設けられている。そのため、識別ラベル10が示す情報、特に、金型情報11aや列情報11bが示す情報を作業者に読み易くすることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、鉄心材3において比較的大きな面積を確保することが可能な冷媒流通孔7と磁石挿入孔8との間に識別ラベル10を設けている。このように、鉄心材3において比較的大きな面積を確保することが可能な部位に識別ラベル10を設けるようにすることで、鉄心材3自体の設計変更、例えば、冷媒流通孔7の大きさ、形状、配置位置、磁石挿入孔8の大きさ、形状、配置位置などの変更を行わずとも、無理なく識別ラベル10を設けることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、識別ラベル10は、シャフト挿入孔5よりも外側において、当該シャフト挿入孔5内のキー6と同じ側に備えられている。この場合、キー6は、シャフト挿入孔5の内周面から突出する構成要素となっている。そのため、キー6が設けられている部分の周辺領域は、キー6が設けられていない部分の周辺領域よりも重くなっており、鉄心材3全体としての重量バランスを崩す要因となり得る。そのため、このようなキー6と同じ側の部位をレーザによって刻印して、つまり、鉄心材3の表面を削って識別ラベル10を設けることにより、キー6と同じ側の部位の重量を減少させることができる。つまり、キー6による重量の増加を、レーザによる刻印によって若干でも減少させることができるので、キー6を設けたことに起因する鉄心材3全体としての重量のアンバランス、ひいては、ロータ鉄心1全体としての重量のアンバランスの影響を極力抑制する効果を期待できる。
【0037】
なお、本実施形態は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の拡張や変更を行うことができる。例えば、識別ラベル10は、レーザによる刻印以外の方法、例えば、切削機によって削る方法、印刷機により印刷する方法、シールなどを貼り付ける方法などの種々の方法を適用することができる。即ち、識別ラベル10を設けることができる方法であれば、種々の方法を適用することができる。
【0038】
また、1枚の鉄心材3に複数の識別ラベル10を設けてもよい。この場合、複数の識別ラベル10を、鉄心材3の中心点を基準として対称に設けることにより、鉄心材3全体としての重量のアンバランス、ひいては、ロータ鉄心1全体としての重量のアンバランスの発生を抑制することができる。また、複数の識別ラベル10を設ける場合においては、それぞれの識別ラベル10が含む情報を同じ情報としてもよいし、異なる情報としてもよい。
【0039】
また、識別ラベル10は、鉄心本体部2を構成する複数の鉄心材ブロック4の全てに設けてもよいし、鉄心本体部2を構成する複数の鉄心材ブロック4のうち少なくとも何れか1つに設けてもよい。また、識別ラベル10は、鉄心材ブロック4の両端面に設けてもよい。
【0040】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
図面中、1はロータ鉄心、2は鉄心本体部、3は鉄心材、5はシャフト挿入孔、6はキー(嵌合部)、7は冷媒流通孔、8は磁石挿入孔、10は識別ラベル(情報部)、105は金型を示す。
図1
図2
図3
図4