(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】信号処理装置、レーダ装置、および、信号処理方法
(51)【国際特許分類】
G01S 3/48 20060101AFI20230411BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20230411BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G01S3/48
G01S7/02 218
H01Q21/06
(21)【出願番号】P 2019132627
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒野 泰寛
(72)【発明者】
【氏名】伊佐治 修
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151327(JP,A)
【文献】特開2017-040477(JP,A)
【文献】特開2005-331343(JP,A)
【文献】特開平11-166965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00 - 3/74
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
H01Q 3/00 - 3/46
H01Q 21/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N(Nは複数)個の仮想アンテナを含む複数の受信アンテナによって構成されるアンテナ群のうち、第1の軸に沿って並ぶ複数の前記受信アンテナによって構成される第1のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第1の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第1の方位算出部と、
前記アンテナ群のうち、前記第1の軸と異なる方向の第2の軸に沿って並ぶ複数の前記受信アンテナによって構成される第2のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第2の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第2の方位算出部と、
前記アンテナ群の一部である複数の前記受信アンテナの受信信号に基づき、前記第1の軸及び前記第2の軸それぞれと異なる方向の第3の軸に沿って並ぶ前記N個以下の複数の前記仮想アンテナによって構成される第3のアンテナアレイを生成する生成部と、
前記第3のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第3の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第3の方位算出部と、
前記第1の方位算出部
の算出結果と前記第2の方位算出部
の算出結果との組合せに基づき、前記物標の2次元方位候補を算出し、前記第3の方位算出部
の算出結果
と前記物標の2次元方位候補から得られる前記第3の軸に対する電波の到来方向を表す方位との比較結果に基づき、
推定結果として採用する前記物標の2次元方位を
決定する方位推定部と、
を備える、信号処理装置。
【請求項2】
前記方位推定部は、前記比較結果から前記物標の2次元方位候補それぞれの信頼度を算出し、前記信頼度に基づき、推定結果として採用する前記物標の2次元方位を決定する、請求項
1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記第3の軸の方向を可変する、請求項1
又は請求項
2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
第4の方位算出部をさらに備え、
前記生成部は、前記第1のアンテナアレイの受信信号及び前記第2のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第1の軸、前記第2の軸、及び前記第3の軸それぞれと異なる方向の第4の軸に沿って並ぶ複数の前記仮想アンテナによって構成される第4のアンテナアレイを生成し、
前記第4の方位算出部は、前記第4のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第4の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出し、
前記方位推定部は、前記第1の方位算出部、前記第2の方位算出部、前記第3の方位算出部、及び前記第4の方位算出部の各算出結果に基づき、前記物標の2次元方位を推定する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の信号処理装置と、
前記第1のアンテナアレイ及び前記第2のアンテナアレイの少なくとも一部を構成する少なくとも1つの実在アンテナと、
を備える、レーダ装置。
【請求項6】
N(Nは複数)個の仮想アンテナを含む複数の受信アンテナによって構成されるアンテナ群のうち、第1の軸に沿って並ぶ複数の前記受信アンテナによって構成される第1のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第1の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第1の方位算出工程と、
前記アンテナ群のうち、前記第1の軸と異なる方向の第2の軸に沿って並ぶ複数の前記受信アンテナによって構成される第2のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第2の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第2の方位算出工程と、
前記アンテナ群の一部である複数の前記受信アンテナの受信信号に基づき、前記第1の軸及び前記第2の軸それぞれと異なる方向の第3の軸に沿って並ぶ前記N個以下の複数の前記仮想アンテナによって構成される第3のアンテナアレイを生成する生成工程と、
前記第3のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第3の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第3の方位算出工程と、
前記第1の方位算出工程
の算出結果と前記第2の方位算出工程
の算出結果との組合せに基づき、前記物標の2次元方位候補を算出し、前記第3の方位算出工程
の算出結果
と前記物標の2次元方位候補から得られる前記第3の軸に対する電波の到来方向を表す方位との比較結果に基づき、
推定結果として採用する前記物標の2次元方位を
決定する方位推定工程と、
を備える、信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、レーダ装置、および、信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載用ミリ波レーダ装置は、主に自動運転における周辺監視の用途で開発が進んでいる。車載用ミリ波レーダ装置では、看板などの上方物、マンホールなどの下方物のような走行の妨げになり得ない物体と、前方走行車両などのような走行の妨げになり得る物体とを判別できる機能の要望が高まっているため、水平方位に加えて垂直方位も検知する必要が出てきている。
【0003】
水平方位および垂直方位を検知できるレーダ装置として、複数の受信アンテナを垂直方向および水平方向に沿って二次元配置することで、電波(物標からの反射波)の到来方向を水平方向の角度および垂直方向の角度の両方で演算することができるレーダ装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-241521号公報
【文献】特開2005-331343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の受信アンテナを二次元配置したレーダ装置は、受信アンテナ数が多く必要でコストが高いという問題および処理負荷が大きいという問題を有する。
【0006】
そこで、上記問題を解決することができるレーダ装置として、垂直水平方向に直交する一列状態の二つのアンテナ素子アレイを有するレーダ装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。垂直水平方向に直交する一列状態の二つのアンテナ素子アレイを有するレーダ装置は、水平方向の角度及び垂直方向の角度を別々に算出してそれらの組合せを実施して物標の二次元方位候補を算出し、物標の二次元方位候補の中から、推定結果として採用する物標の二次元方位を決定する。物標が複数存在する場合に上記決定が困難になるが、特許文献2では、端末ID情報を送信信号に含めるという特別な処置を行い、受信信号に含まれる端末ID情報に基づき正しい組み合わせを求めることによって上記決定の困難性を解消している。しかしながら、特許文献2で提案されているレーダ装置には、送信信号が特殊であるという問題が残る。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、物標の二次元方位を低い処理負荷で推定でき且つ物標が複数存在する場合でも各物標の二次元方位を容易に推定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る信号処理装置は、N(Nは複数)個の仮想アンテナを含む複数の受信アンテナによって構成されるアンテナ群のうち、第1の軸に沿って並ぶ複数の前記受信アンテナによって構成される第1のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第1の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第1の方位算出部と、前記アンテナ群のうち、前記第1の軸と異なる方向の第2の軸に沿って並ぶ複数の前記受信アンテナによって構成される第2のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第2の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第2の方位算出部と、前記アンテナ群の一部である複数の前記受信アンテナの受信信号に基づき、前記第1の軸及び前記第2の軸それぞれと異なる方向の第3の軸に沿って並ぶ前記N個以下の複数の前記仮想アンテナによって構成される第3のアンテナアレイを生成する生成部と、前記第3のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第3の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第3の方位算出部と、前記第1の方位算出部、前記第2の方位算出部、及び前記第3の方位算出部の各算出結果に基づき、物標の2次元方位を推定する方位推定部と、を備える構成(第1の構成)である。
【0009】
上記第1の構成の信号処理装置において、前記方位推定部は、前記第1の方位算出部の算出結果と前記第2の方位算出部の算出結果との組合せに基づき、前記物標の2次元方位候補を算出し、前記第3の方位算出部の算出結果と前記物標の2次元方位候補から得られる前記第3の軸に対する電波の到来方向を表す方位との比較結果に基づき、推定結果として採用する前記物標の2次元方位を決定する構成(第2の構成)であってもよい。
【0010】
上記第2の構成の信号処理装置において、前記方位推定部は、前記比較結果から前記物標の2次元方位候補それぞれの信頼度を算出し、前記信頼度に基づき、推定結果として採用する前記物標の2次元方位を決定する構成(第3の構成)であってもよい。
【0011】
上記第1~第3いずれかの構成の信号処理装置において、前記生成部は、前記第3の軸の方向を可変する構成(第4の構成)であってもよい。
【0012】
上記第1~第4いずれかの構成の信号処理装置において、第4の方位算出部をさらに備え、前記生成部は、前記第1のアンテナアレイの受信信号及び前記第2のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第1の軸、前記第2の軸、及び前記第3の軸それぞれと異なる方向の第4の軸に沿って並ぶ複数の前記仮想アンテナによって構成される第4のアンテナアレイを生成し、前記第4の方位算出部は、前記第4のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第4の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出し、前記方位推定部は、前記第1の方位算出部、前記第2の方位算出部、前記第3の方位算出部、及び前記第4の方位算出部の各算出結果に基づき、前記物標の2次元方位を推定する構成(第5の構成)であってもよい。
【0013】
本発明に係るレーダ装置は、上記第1~第5いずれかの構成の信号処理装置と、前記第1のアンテナアレイ及び前記第2のアンテナアレイの少なくとも一部を構成する少なくとも1つの実在アンテナと、を備える構成(第6の構成)である。
【0014】
本発明に係る信号処理方法は、N(Nは複数)個の仮想アンテナを含む複数の受信アンテナによって構成されるアンテナ群のうち、第1の軸に沿って並ぶ複数の前記受信アンテナによって構成される第1のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第1の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第1の方位算出工程と、前記アンテナ群のうち、前記第1の軸と異なる方向の第2の軸に沿って並ぶ複数の前記受信アンテナによって構成される第2のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第2の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第2の方位算出工程と、前記アンテナ群の一部である複数の前記受信アンテナの受信信号に基づき、前記第1の軸及び前記第2の軸それぞれと異なる方向の第3の軸に沿って並ぶ前記N個以下の複数の前記仮想アンテナによって構成される第3のアンテナアレイを生成する生成工程と、前記第3のアンテナアレイの受信信号に基づき、前記第3の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第3の方位算出工程と、前記第1の方位算出工程、前記第2の方位算出工程、及び前記第3の方位算出工程の各算出結果に基づき、物標の2次元方位を推定する方位推定工程と、を備える構成(第7の構成)である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、物標の二次元方位を低い処理負荷で推定でき且つ物標が複数存在する場合でも各物標の二次元方位を容易に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】第1~第3のアンテナアレイについて説明するための図
【
図3】レーダ装置の概略動作例を示すフローチャート
【
図5】3つの物標の二次元方位候補を模式的に示す図
【
図6】3つの物標の二次元方位候補を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<1.レーダ装置の構成>
図1は本発明の実施形態に係るレーダ装置1の構成を示す図である。レーダ装置1は、例えば車両、ロボット、航空機、船舶などの移動体に搭載することができる。本実施形態では、レーダ装置1は、例えば自動車などの車両に搭載される。以下、レーダ装置1が搭載されている車両のことを自車両と表現する。
【0019】
レーダ装置1は、他の車両、標識、ガードレール、人などの、自車両の周囲に存在する物標を検知するために用いられる。物標の検知結果は、自車両の記憶装置や、自車両の挙動を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)5などに対して出力される。物標の検知結果は、例えば、PCS(Pre-crash Safety System)やAEBS(Advanced Emergency Braking System)などの車両制御に用いられる。
【0020】
図1に示すように、レーダ装置1は、送信部2と、複数の受信部3と、信号処理装置4とを備える。
【0021】
レーダ装置1は、FCM(Fast Chirp Modulation)方式のレーダ装置である。ただし、本実施形態とは異なり、レーダ装置1を、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式などのFCM方式以外のレーダ装置に変更してもよい。
【0022】
送信部2は、信号生成部21と、発信器22と、送信アンテナ23とを備える。信号生成部21は、ノコギリ波状に電圧が変化する変調信号を生成し、発信器22へ供給する。発信器22は、信号生成部21で生成された変調信号に基づいてチャープ信号である送信信号を生成して、送信アンテナ23へ出力する。
【0023】
送信アンテナ23は、発信器22から送信信号を受け取り、その送信信号を送信波TWに変換して出力する。
【0024】
受信部3は、複数の受信アンテナ31と、複数の個別受信部32とを備える。各受信アンテナ31に対して、個別受信部32が1つずつ接続される。各受信アンテナ31は、物標からの反射波RWを受信して受信信号を取得し、各個別受信部32に出力する。なお、個別受信部32の数は、スイッチを導入することにより、受信アンテナ31の本数よりも少なくしてよい。
【0025】
各個別受信部32は、対応する受信アンテナ31で得られた受信信号を処理する。個別受信部32は、ミキサ33とA/D変換器34とを備える。受信アンテナ31で得られた受信信号は、ローノイズアンプ(図示省略)で増幅された後にミキサ33に送られる。ミキサ33には、各送信部2の各発信器22からの送信信号が入力され、ミキサ33において各送信信号と受信信号とがミキシングされる。これにより、各送信信号の周波数と受信信号の周波数との差となるビート周波数を有するビート信号が生成される。ミキサ33で生成されたビート信号は、A/D変換器34でデジタルの信号に変換された後に、信号処理装置4に出力される。
【0026】
信号処理装置4は、各A/D変換器34を介して取り込んだ各ビート信号に基づいて各種の処理を実行する。信号処理装置4は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ41などを含むマイクロコンピュータを備える。信号処理装置4は、演算の対象とする各種のデータを、記憶装置であるメモリ41に記憶する。メモリ41は、例えばRAM(Random Access Memory)などである。信号処理装置4は、マイクロコンピュータでソフトウェア的に実現される機能として、送信制御部42、変換部43、および、データ処理部44を備える。送信制御部42は、信号生成部21を制御する。
【0027】
変換部43は、受信アンテナ31において複数の物標からの反射波が重なり合った状態で受信されるために、受信信号に基づいて生成されたビート信号から、各物標の反射波に基づく周波数成分を分離する処理を行う。本実施形態では、変換部43は、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理により、周波数成分の分離を行う。FFT処理では、所定の周波数間隔で設定された周波数ポイント(周波数ビンという場合がある)ごとに受信レベルや位相情報が算出される。変換部43は、FFT処理の結果をデータ処理部44に出力する。
【0028】
変換部43は、詳細には、各A/D変換部34から出力されるビート信号に対してそれぞれ2次元FFT処理を行う。1回目のFFT処理を行うことで、物標との距離に対応する周波数ビン(以下、距離ビンと記載する場合がある)にピークが出現する周波数スペクトルが得られる。1回目のFFT処理により得られた周波数スペクトルを時系列に並べて2回目のFFT処理を行うことで、ドップラー周波数に対する周波数ビン(以下、速度ビンと記載することがある)にピークが出現する周波数スペクトルが得られる。変換部43は、2次元FFT処理により、距離ビンと速度ビンとを軸とする2次元パワースペクトルを得る。
【0029】
データ処理部44は、ピーク抽出部44Aと、距離・相対速度演算部44Bと、第1の方位算出部44Cと、第2の方位算出部44Dと、生成部44Eと、第3の方位算出部44Fと、方位推定部44Gとを備える。
【0030】
ピーク抽出部44Aは、変換部43におけるFFT処理等の結果からピークを検出する。本実施形態では、ピーク抽出部44Aは、2次元FFT処理によって得られた距離ビンと速度ビンとを軸とする2次元パワースペクトルに基づいて、所定以上のパワー値を示すピークを抽出する。
【0031】
距離・相対速度演算部44Bは、ピーク抽出部44Aによってピークが存在するとして特定された距離ビンおよび速度ビンの組み合わせに基づいて物標との距離および相対速度を導出する。
【0032】
第1の方位算出部44Cは、第1のアンテナアレイを構成する受信アンテナ31ごとにピーク抽出部44Aで抽出された同一周波数ビンのピークに注目し、それらのピークの位相情報に基づいて第1の軸(垂直方向)に対する物標が存在する方位(電波の到来方向を表す方位)を算出する。第1の方位算出部44Cは、周波数ビンが異なる複数のピークが存在する場合、ピークごとに方位を算出する。第1のアンテナアレイについては後述する。
【0033】
第1の方位算出部44Cは、MUSIC(Mutiple Signal Classification)やESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)等の公知の手法を用いて方位を算出する。第2の方位算出部44Dおよび第3の方位算出部44Fも同様に、MUSICやESPRIT等の公知の手法を用いて方位を算出する。
【0034】
第2の方位算出部44Dは、第2のアンテナアレイを構成する受信アンテナ31ごとにピーク抽出部44Aで抽出された同一周波数ビンのピークに注目し、それらのピークの位相情報に基づいて第2の軸(水平方向)に対する物標が存在する方位(電波の到来方向を表す方位)を算出する。第2の方位算出部44Dは、周波数ビンが異なる複数のピークが存在する場合、ピークごとに方位を算出する。第2のアンテナアレイについては後述する。
【0035】
生成部44Eは、第1のアンテナアレイの受信信号および第2のアンテナアレイの受信信号に基づき、複数の仮想アンテナによって構成される第3のアンテナアレイを生成する。第3のアンテナアレイについては後述する。
【0036】
第3の方位算出部44Fは、第3のアンテナアレイを構成する仮想アンテナごとにピーク抽出部44Aで抽出された同一周波数ビンのピークに注目し、それらのピークの位相情報に基づいて第3の軸(斜め方向)に対する物標が存在する方位(電波の到来方向を表す方位)を算出する。第3の方位算出部44Fは、周波数ビンが異なる複数のピークが存在する場合、ピークごとに方位を算出する。
【0037】
方位推定部44Gは、第1~第3の方位算出部44C、44D、および44Fの各算出結果に基づき、物標の2次元方位を推定する。
【0038】
なお、距離・相対速度演算部44Bおよび方位推定部44Gにより求められた、物標までの距離、物標の相対速度、物標の二次元方位を含む物標データは、車両制御ECU5に出力される。
【0039】
<2.第1~第3のアンテナアレイ>
図2は、第1~第3のアンテナアレイA1~A3について説明するための図である。
【0040】
本実施形態では、第1のアンテナアレイA1は、第1の軸(垂直方向)に沿って並ぶ9つの受信アンテナRx1~Rx9によって構成される。受信アンテナRx1~Rx9は、レーダ装置1が実際に備える実在アンテナである。
【0041】
第1のアンテナアレイA1において、隣り合う受信アンテナ31のアンテナ間隔は、同一である。なお、第1のアンテナアレイA1において、隣り合う受信アンテナ31のアンテナ間隔は、複数の組(本実施形態では八組)の間で厳密に同一でなくてもよく、設計上の誤差やばらつきなどを考慮した上で複数の組の間で同一とみなすことができればよい。
【0042】
本実施形態では、第2のアンテナアレイA2は、第2の軸(水平方向)に沿って並ぶ9つの受信アンテナRx9~Rx17によって構成される。受信アンテナRx1~Rx9は、レーダ装置1が実際に備える実在アンテナである。
【0043】
受信アンテナRx9は、第1のアンテナアレイA1と第2のアンテナアレイA2の双方に属する。第2のアンテナアレイA2において、隣り合う受信アンテナ31のアンテナ間隔は、同一である。なお、第2のアンテナアレイA2において、隣り合う受信アンテナ31のアンテナ間隔は、複数の組(本実施形態では八組)の間で厳密に同一でなくてもよく、設計上の誤差やばらつきなどを考慮した上で複数の組の間で同一とみなすことができればよい。
【0044】
隣り合う受信アンテナ31のアンテナ間隔は、第1のアンテナアレイA1と第2のアンテナアレイA2で同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0045】
生成部44Eは、第1のアンテナアレイA1を構成する受信アンテナ31と第2のアンテナアレイA2を構成する受信アンテナ31との組み合わせにより第3の軸(斜めの方向)に沿って並ぶ仮想アンテナVx1~Vx8を仮想的に生成し、仮想アンテナVx1~Vx8によって構成される第3のアンテナアレイA3を仮想的に生成する。
【0046】
本実施形態では、受信アンテナRx1と受信アンテナRx17との組合せによって仮想アンテナVx1が仮想的に生成される。具体的には、生成部44Eは、Toeplizによる拡張の原理を用いて、受信アンテナRx1の受信信号と受信アンテナRx17の受信信号の複素共役との乗算を算出することで仮想アンテナVx1の受信信号を得る。
【0047】
本実施形態では、受信アンテナRx2と受信アンテナRx16との組合せによって仮想アンテナVx2が仮想的に生成される。具体的には、生成部44Eは、Toeplizによる拡張の原理を用いて、受信アンテナRx2の受信信号と受信アンテナRx16の受信信号の複素共役との乗算を算出することで仮想アンテナVx2の受信信号を得る。
【0048】
本実施形態では、受信アンテナRx3と受信アンテナRx15との組合せによって仮想アンテナVx3が仮想的に生成される。具体的には、生成部44Eは、Toeplizによる拡張の原理を用いて、受信アンテナRx3の受信信号と受信アンテナRx15の受信信号の複素共役との乗算を算出することで仮想アンテナVx3の受信信号を得る。
【0049】
本実施形態では、受信アンテナRx4と受信アンテナRx14との組合せによって仮想アンテナVx4が仮想的に生成される。具体的には、生成部44Eは、Toeplizによる拡張の原理を用いて、受信アンテナRx4の受信信号と受信アンテナRx14の受信信号の複素共役との乗算を算出することで仮想アンテナVx4の受信信号を得る。
【0050】
本実施形態では、受信アンテナRx5と受信アンテナRx13との組合せによって仮想アンテナVx5が仮想的に生成される。具体的には、生成部44Eは、Toeplizによる拡張の原理を用いて、受信アンテナRx5の受信信号と受信アンテナRx13の受信信号の複素共役との乗算を算出することで仮想アンテナVx5の受信信号を得る。
【0051】
本実施形態では、受信アンテナRx6と受信アンテナRx12との組合せによって仮想アンテナVx6が仮想的に生成される。具体的には、生成部44Eは、Toeplizによる拡張の原理を用いて、受信アンテナRx6の受信信号と受信アンテナRx12の受信信号の複素共役との乗算を算出することで仮想アンテナVx6の受信信号を得る。
【0052】
本実施形態では、受信アンテナRx7と受信アンテナRx11との組合せによって仮想アンテナVx7が仮想的に生成される。具体的には、生成部44Eは、Toeplizによる拡張の原理を用いて、受信アンテナRx7の受信信号と受信アンテナRx11の受信信号の複素共役との乗算を算出することで仮想アンテナVx7の受信信号を得る。
【0053】
本実施形態では、受信アンテナRx8と受信アンテナRx10との組合せによって仮想アンテナVx8が仮想的に生成される。具体的には、生成部44Eは、Toeplizによる拡張の原理を用いて、受信アンテナRx8の受信信号と受信アンテナRx10の受信信号の複素共役との乗算を算出することで仮想アンテナVx8の受信信号を得る。
【0054】
<3.レーダ装置の概略動作>
図3は、レーダ装置1の概略動作例を示すフローチャートである。
図3は、各方位演算部による処理を中心に示したものである。すなわち、
図3においては、物標までの距離や相対速度を求める処理については省略されている。レーダ装置1は、
図3に示す処理を一定時間ごとに周期的に繰り返す。
【0055】
まず、送信アンテナ23が送信波TWを出力する(ステップS1)。次に、受信アンテナ31が物標で反射された反射波RWを受信して受信信号を取得する(ステップS2)。次に、信号処理装置4が所定数のビート信号を取得する(ステップS3)。次に、変換部43が取得したビート信号を対象にFFT処理を行う(ステップS4)。
【0056】
次に、ピーク抽出部44Aが、FFT処理の結果に基づきピーク抽出を行う(ステップS5)。ステップS5の後に実行されるステップS6~S10は、ピーク抽出部44Aで抽出された同一周波数ビンのピークごとに実行される。
【0057】
以下、
図4に示す3つの物標T1~T3についてピーク抽出部44Aで同一周波数ビンのピークが抽出され、
図4に示す3つの物標T1~T3についてステップS6~S10が実行される場合を例に挙げて説明を続ける。
【0058】
なお、
図3に示す動作例では、ステップS6~S9がステップS6、ステップS7、ステップS8、およびステップS9の順で実行されるが、ステップS8の後にステップS9が実行される限りにおいて、ステップS6~S9間での実行順の変更、複数ステップの並列処理を行ってもよい。また、複数の物標についてピーク抽出部44Aで同一周波数ビンのピークが抽出されず、物標の二次元方位候補が一つしか算出されない場合にはステップS8およびS9の処理を省略してもよい。
【0059】
ステップS6において、第1の方位算出部44Cは、第1のアンテナアレイA1の受信信号に基づき、第1の軸(垂直方向)に対する物標が存在する方位(電波の到来方向を表す方位)、すなわち垂直方位を算出する。
図4に示す例の場合、3つの垂直方位θV1[deg]、θV2[deg]、およびθV3[deg]が算出される。
【0060】
ステップS7において、第2の方位算出部44Dは、第2のアンテナアレイA2の受信信号に基づき、第2の軸(水平方向)に対する物標が存在する方位(電波の到来方向を表す方位)、すなわち水平方位を算出する。
図4に示す例の場合、3つの水平方位θH1[deg]、θH2[deg]、およびθH3[deg]が算出される。
【0061】
ステップS8において、生成部44Eは、仮想アンテナVx1~Vx8によって構成される第3のアンテナアレイA3を仮想的に生成し、仮想アンテナVx1~Vx8の受信信号を算出する。
【0062】
ステップS9において、第3の方位算出部44Fは、仮想アンテナVx1~Vx8の受信信号および受信アンテナRx9の受信信号に基づき、第3の軸(斜め方向)に対する物標が存在する方位(電波の到来方向を表す方位)、すなわち斜め方位を算出する。
図4に示す例の場合、3つの斜め方位θD1[deg]、θD2[deg]、およびθD3[deg]が算出される。なお、受信アンテナRx9の受信信号を用いずに斜め方位が算出されてもよい。
【0063】
ステップS10において、方位推定部44Gは、第1~第3の方位算出部44C、44D、および44Fの各算出結果に基づき、物標の2次元方位を推定する。ステップS10の推定処理が完了すると、フローを終了する。ステップS10の推定処理の具体例は、次の通りである。
【0064】
方位推定部44Gは、ステップS6で算出された3つの垂直方位θV1[deg]、θV2[deg]、およびθV3[deg]と、ステップS7算出された3つの水平方位θH1[deg]、θH2[deg]、およびθH3[deg]との組合せに基づき、3つの物標T1~T3(
図4参照)の2次元方位候補C1~C9(
図5参照)を算出する。
【0065】
そして、方位推定部44Gは、ステップS9で算出された3つの斜め方位θD1[deg]、θD2[deg]、およびθD3[deg]と、3つの物標T1~T3(
図4参照)の2次元方位候補C1~C9(
図5参照)から得られる第3の軸(斜め方向)に対する電波の到来方向を表す方位とを比較し、両者が一致する2次元方位候補を、推定結果として採用する。つまり、2次元方位候補C1~C9の中から2次元方位候補C1、C6、およびC8が選ばれ、推定結果として採用される。
【0066】
上記両者の一致は、厳密に一致していなくともよく、上記両者の差が閾値以下である場合に上記両者は一致しているとみなしてもよい。上記閾値は、固定値でもよく、可変値でもよい。上記閾値を可変値にする場合、例えば方位算出における算出誤差が大きくなるような周辺環境であれば上記閾値を大きくする等の閾値制御を実施すればよい。
【0067】
以上説明したレーダ装置1は、複数の受信アンテナを二次元配置したレーダ装置に比べて、受信アンテナ数を少なくできるため、低コスト化を図ることができる。また、以上説明したレーダ装置1は、複数の受信アンテナを二次元配置したレーダ装置に比べて、受信アンテナ数を少なくできるため、処理負荷を小さくすることができる。
【0068】
以上説明したレーダ装置1は、垂直方位の算出結果および水平方向の算出結果に加えて斜め方位の算出結果も利用して物標の2次元方位を推定するので、物標が複数存在する場合でも各物標の二次元方位を容易に推定できる。
【0069】
より具体的には、以上説明したレーダ装置1の方位推定部44Gは、垂直方位の算出結果および水平方向の算出結果との組合せに基づき、物標の2次元方位候補を算出し、斜め方位の算出結果と物標の2次元方位候補から得られる第3の軸(斜め方向)に対する電波の到来方向を表す方位との比較結果に基づき、推定結果として採用する物標の2次元方位を決定する。これにより、受信アンテナが並ぶ方向(第1の軸および第2の軸)を基準とした物標の2次元方位を効率良く算出することができる。
【0070】
<4.留意事項>
本明細書における実施形態や実施例の構成は、本発明の例示にすぎない。実施形態や変形例の構成は、本発明の技術的思想を超えない範囲で適宜変更されてもよい。また、複数の実施形態および変形例は、可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0071】
以上においては、車載レーダ装置について説明したが、本発明は、道路などに設置されるインフラレーダ装置、船舶監視レーダ装置、航空機監視レーダ装置等にも適用されてよい。
【0072】
以上においてプログラムの実行によってソフトウェア的に実現されると説明した機能の全部又は一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。また、ハードウェア回路によって実現されると説明した機能の全部又は一部はソフトウェア的に実現されてもよい。また、1つのブロックとして説明した機能が、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。また、各機能ブロックは概念的な構成要素である。各機能ブロックが実行する機能を複数の機能ブロックに分散させたり、複数の機能ブロックが有する機能を1つの機能ブロックに結合したりしてよい。
【0073】
上述した実施形態では、受信アンテナRx1~Rx17は全て実在アンテナであったが、受信アンテナRx1~Rx17の一部は、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)、Khatri-Rao積拡張アレー、Toepliz技術などを用いて生成される仮想アンテナであってもよい。なお、MIMOを用いて仮想アンテナが生成される場合、本実施形態とは異なりレーダ装置が複数の送信アンテナを備えるようにすればよい。
【0074】
例えば、第1のアンテナアレイA1は、別の受信アンテナ31の受信信号に基づいて生成された仮想アンテナで構成されていてもよい。第2のアンテナアレイA2についても同様である。つまり、第1のアンテナアレイA1、第2のアンテナアレイA2それぞれにおいて、アンテナアレイを構成する受信アンテナ31は実在のアンテナであっても仮想アンテナであってもいずれでもよい。
【0075】
具体的には、実在する受信アンテナ31と、該アンテナの受信信号に基づき生成された仮想アンテナとを含む複数のアンテナによって構成されるアンテナ群のうち、1つの軸に沿って並んだアンテナによって第1のアンテナアレイA1は構成される。第2のアンテナアレイA2も同様である。
【0076】
上述した実施形態では、2つのアンテナアレイ(第1のアンテナアレイA1、第2のアンテナアレイA2)の受信信号に基づき、仮想アンテナによって構成される1つのアンテナアレイが生成されたが、3つ以上のアンテナアレイの受信信号に基づき、仮想アンテナによって構成される3つ以上のアンテナアレイが生成されるようにしてもよい。例えば、3つのアンテナアレイの受信信号に基づき、仮想アンテナによって構成される3つのアンテナアレイが生成される場合、上述した実施形態で行った方位推定を第1の軸の方向および第2の軸の方向を変えながら3通り行うことができるので、物標の二次元方位を推定できる事態に陥る確率を低くすることができる。
【0077】
上述した実施形態では、ステップS9で算出された3つの斜め方位θD1[deg]、θD2[deg]、およびθD3[deg]と、3つの物標T1~T3(
図4参照)の2次元方位候補C1~C9(
図5参照)から得られる第3の軸(斜め方向)に対する電波の到来方向を表す方位とを比較し、両者が一致する2次元方位候補を、推定結果として採用している。
【0078】
方位算出では算出誤差が必ず生じるため、例えば上述した閾値を小さく設定した場合には両者が一致する2次元方位候補が存在しなくなる可能性が高くなり、逆に上述した閾値を大きく設定した場合には両者が一致する2次元方位候補が複数存在する可能性が高くなる。
【0079】
このような不都合を解消するために、方位推定部44Gは、ステップS9で算出された3つの斜め方位θD1[deg]、θD2[deg]、およびθD3[deg]と、3つの物標T1~T3(
図4参照)の2次元方位候補C1~C9(
図5参照)から得られる第3の軸(斜め方向)に対する電波の到来方向を表す方位との比較結果から、物標の2次元方位候補それぞれの信頼度を算出し、その信頼度に基づき、推定結果として採用する物標の2次元方位を決定するようにしてもよい。例えば、最も信頼度が高い物標の2次元方位候補を推定結果として採用すればよい。
【0080】
上記の信頼度は、例えば、ステップS9で算出された3つの斜め方位θD1[deg]、θD2[deg]、およびθD3[deg]と、3つの物標T1~T3(
図4参照)の2次元方位候補C1~C9(
図5参照)から得られる第3の軸(斜め方向)に対する電波の到来方向を表す方位との一致度合いとすればよい。
【0081】
また、たとえ方位算出の算出誤差が非常に小さい場合でも、ステップS9で算出された3つの斜め方位θD1[deg]、θD2[deg]、およびθD3[deg]と、3つの物標T1~T3(
図4参照)の2次元方位候補C1~C9から得られる第3の軸(斜め方向)に対する電波の到来方向との関係が不運にも
図6に示すようになれば、方位推定部44Gは、3つの物標T1~T3(
図4参照)の2次元方位を一義的に決定することができない。
【0082】
このような不都合を解消するために、生成部44Eは、第3の軸の方向を可変する構成であってもよい。例えば、生成部44Eが、仮想アンテナVx1~Vx8の生成以外に、受信アンテナRx2と受信アンテナRx17との組合せによる仮想アンテナVx1’、受信アンテナRx3と受信アンテナRx16との組合せによる仮想アンテナVx2’、受信アンテナRx4と受信アンテナRx15との組合せによる仮想アンテナVx3’、受信アンテナRx5と受信アンテナRx14との組合せによる仮想アンテナVx4’、受信アンテナRx6と受信アンテナRx13との組合せによる仮想アンテナVx5’、受信アンテナRx7と受信アンテナRx12との組合せによる仮想アンテナVx6’、および受信アンテナRx8と受信アンテナRx11との組合せによる仮想アンテナVx7’も生成できるようにすればよい。この変形例によると、物標の2次元方位を一義的に決定することができない場合に、第3の軸の方向を変更して物標の2次元方位を一義的に決定することができるようにすることができる。
【0083】
また、第3の軸の方向は固定しておき、例えば
図7に示すレーダ装置1’の構成にしても、第3の軸の方向を可変する構成と同様の効果を得ることができる。
図7に示すレーダ装置1’は、第4の軸に沿って並ぶ上述した仮想アンテナVx1’~Vx7’に構成される第4のアンテナアレイの受信信号に基づき、第4の軸に対する電波の到来方向を表す方位を算出する第4の方位算出部44Hをデータ処理部44内に設け、方位推定部44Gが第1~第4の方位算出部44C、44D、44F、および44Hの各算出結果に基づき、物標の2次元方位を推定する点で
図1に示すレーダ装置1と異なり、それ以外の点で
図1に示すレーダ装置1と同様である。
【符号の説明】
【0084】
1、1’ レーダ装置
4 信号処理装置
31、Rx1~Rx17 受信アンテナ
44C 第1の方位算出部
44D 第2の方位算出部
44E 生成部
44F 第3の方位算出部
44G 方位推定部
44H 第4の方位算出部
A1~A3 第1~第3のアンテナアレイ
Vx1~Vx8 仮想アンテナ