(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】浴室手摺構造
(51)【国際特許分類】
A47K 3/12 20060101AFI20230411BHJP
E04F 11/18 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A47K3/12
E04F11/18
(21)【出願番号】P 2019175631
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】守谷 淳
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-064678(JP,A)
【文献】特開平10-179438(JP,A)
【文献】特開2001-054483(JP,A)
【文献】特開2008-073268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0222790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/12
E04F 11/18
A47K 17/02
E04H 1/12
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に対して水平方向に沿って延在された下段棒状部材と、
前記下段棒状部材の上方に設けられ、前記下段棒状部材と平行に設けられた上段棒状部材と、
前記下段棒状部材と前記上段棒状部材との間に手摺棒を架け渡された起立状態と、前記浴槽の上方に前記手摺棒を架け渡された倒伏状態と、に切り替え可能とされる可動手摺と、を備え、
前記可動手摺は、
前記下段棒状部材に対して前記手摺棒の基端部を回動可能に支持する支持部材と、
前記手摺棒の先端側に設けられ、前記倒伏状態において前記浴槽に固定される固定部材と、
前記手摺棒の先端側に設けられ、前記起立状態において前記上段棒状部材に固定される係止部材と、を有する
浴室手摺構造。
【請求項2】
前記固定部材は、
前記倒伏状態において前記浴槽の側壁に載置される載置部と、
前記浴槽の側壁の外面に配置され、前記載置部との間で前記浴槽の前記側壁を保持する保持部と、を有する、
請求項1に記載の浴室手摺構造。
【請求項3】
前記保持部は、前記浴槽の前記側壁の前記外面に延びる溝部に挿入可能であり、
前記載置部と前記保持部とが前記側壁を挟持することで前記可動手摺が固定される、請求項2に記載の浴室手摺構造。
【請求項4】
前記保持部は、前記倒伏状態において前記側壁の前記外面に配置される保持位置と、前記保持位置から待避して前記側壁の保持が解除される待避位置とに変位可能であり、
前記可動手摺は、前記保持部の前記保持位置と前記待避位置との間の変位に連動して、前記起立状態において前記係止部材を前記上段棒状部材に対して固定及び固定解除させる連動機構をさらに有する、
請求項2又は3に記載の浴室手摺構造。
【請求項5】
前記係止部材は、
前記上段棒状部材を収容可能な凹部と、
前記凹部に収容された上段棒状部材を固定及び固定解除する押さえ部と、
を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の浴室手摺構造。
【請求項6】
前記係止部材は、前記浴槽の利用者が把持可能な把持部を備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の浴室手摺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室手摺構造に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室において、体の不自由な方のために手摺を設ける場合がある。例えば、下記特許文献1には、浴室において壁付き手摺3と、浴槽を横切る浴槽手摺4とを設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手摺構造では、入浴中に浴槽手摺4が倒伏されて使用される時、浴槽手摺4の基端部となる連結部7は固定可能とされているものの、先端部は浴槽の縁に載置されるのみで固定されていない。そのため、手摺使用の際、浴槽手摺4が、不安定となることが想定される。また、浴槽手摺4の起立状態では、浴槽手摺4を手摺キャッチャー22で保持しているだけであり、入浴時の姿勢保持のための手摺として使用されることを想定していない。このように、上記特許文献1に記載の手摺構造では、浴槽利用者の入浴時及び入浴中の様々な姿勢、並びに動作に合わせて固定された手摺が提供されていないといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、浴槽利用者の入浴時及び入浴中の様々な姿勢、並びに動作に合わせて固定された手摺を有する浴室手摺構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、浴槽に対して水平方向に沿って延在された下段棒状部材と、上記下段棒状部材の上方に設けられ、上記下段棒状部材と平行に設けられた上段棒状部材と、上記下段棒状部材と上記上段棒状部材との間に手摺棒を架け渡された起立状態と、上記浴槽の上方に上記手摺棒を架け渡された倒伏状態と、に切り替え可能とされる可動手摺と、を備え、上記可動手摺は、上記下段棒状部材に対して上記手摺棒の基端部を回動可能に支持する支持部材と、上記手摺棒の先端側に設けられ、上記倒伏状態において上記浴槽に固定される固定部材と、上記手摺棒の先端側に設けられ、上記起立状態において上記上段棒状部材に固定される係止部材と、を有する浴室手摺構造が提供される。
【0007】
上記固定部材は、上記倒伏状態において上記浴槽の側壁上面に載置される載置部と、上記浴槽の側壁の外面に配置され、上記載置部との間で上記浴槽の上記側壁を保持する保持部と、を有してもよい。
【0008】
上記保持部は、上記浴槽の上記側壁の上記外面に延びる溝部に挿入可能であり、上記載置部と上記保持部とが上記側壁を挟持することで上記可動手摺が固定されてもよい。
【0009】
上記保持部は、上記倒伏状態において上記側壁の上記外面に配置される保持位置と、上記保持位置から待避して上記側壁の保持が解除される待避位置とに変位可能であり、上記可動手摺は、上記保持部の上記保持位置と上記待避位置との間の変位に連動して、上記起立状態において上記係止部材を上記上段棒状部材に対して固定及び固定解除させる連動機構をさらに有してもよい。
【0010】
上記係止部材は、上記上段棒状部材を収容可能な凹部と、上記凹部に収容された上段棒状部材を固定及び固定解除する押さえ部と、を有してもよい。
【0011】
上記係止部材は、上記浴槽の利用者が把持可能な把持部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように本発明によれば、利用者の入浴時及び入浴中の様々な姿勢、並びに動作に合わせて固定された手摺を有する浴室手摺構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る浴室手摺構造の構成例を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る浴室手摺構造の構成例を示す斜視図である。
【
図3】同実施形態に係る可動手摺の構成例を示す斜視図である。
【
図6】同実施形態に係る可動手摺の中間状態における
図3中のI-I’線に相当する位置での断面図である。
【
図8】同実施形態に係る可動手摺の起立状態における
図3中のI-I’線に相当する位置での断面図である。
【
図9】同実施形態に係る支持部材の構成例を示す背面図である。
【
図10】
図9におけるII-II’線断面図である。
【
図11】同実施形態に係る倒伏状態における固定部材による固定の様子を示す断面図である。
【
図12】同実施形態に係る起立状態における係止部材による固定の様子を示す断面図である。
【
図13】同実施形態に係る起立状態における係止部材による固定の様子を示す断面図である。
【
図14】同実施形態に係る可動手摺の中間状態での動作例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本明細書において、図面に示されたXYZ座標軸を用いて方向を説明する場合、当該座標軸における矢印の方向を正方向としている。例えば、本明細書中で図面におけるX軸の矢印の方向を示すときは+X方向とし、矢印の方向と反対の方向を示すときは、-X方向としている。XYZ座標軸の矢印の向きに限定されず、単に各軸方向に沿った方向を示す場合、X方向等としている。
【0015】
(浴室全体の構造)
まず、
図1および
図2を参照しながら、本発明の一の実施形態に係る浴室手摺構造20の概略構成について説明する。
図1および
図2は、本実施形態に係る浴室手摺構造20の構成例を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る浴槽10は、一例として、浴室内において浴室壁面17に沿うように配置されている。また、浴室内には、利用者の浴槽10への入出槽、または入浴中の姿勢、動作を補助するために浴室手摺構造20が設けられている。浴室手摺構造20は、浴槽10の利用者本人または利用者を介助する人によって使用される。
【0016】
浴槽10は、側壁11の外面に延びる溝部15を有する。つまり、溝部15は、側壁11の外面の一部を構成する。
【0017】
(浴室手摺構造)
浴室手摺構造20は、上段手摺23と、下段手摺21と、可動手摺25とを有する。上段手摺23および下段手摺21は、浴室の浴室壁面17に設けられている。また、下段手摺21には、可動手摺25が設けられている。
図1に示すように、可動手摺25は、浴槽10の上方に手摺棒26が架け渡された倒伏状態で、手摺として使用される。倒伏状態における可動手摺25は、例えば、四肢まひ等、不自由な部位の多い方向けの入出槽時、入浴中の姿勢、動作の保持に用いられる。
【0018】
図2に示すように、可動手摺25は、下段手摺21と上段手摺23との間で手摺棒26が架け渡された起立状態で、手摺として使用される。起立状態における可動手摺25は、例えば、片まひ等、半身が不自由な方向けの入出槽時の姿勢、動作の保持に用いられる。その他、可動手摺25の詳細は後述する。
【0019】
(上下段棒状部材)
下段手摺21および上段手摺23は、浴室壁面17に設置された真直な棒状の部材であり、長手方向の両端部で浴室壁面17に固定されている。下段手摺21は、浴槽10に対して水平方向(
図1におけるY方向)に沿って、延在されている。上段手摺23は、下段手摺21よりも鉛直方向(
図1におけるZ方向)で、上方に設けられるとともに、下段手摺21と平行に設けられている。上段手摺23および下段手摺21は、手摺として用いられる。この場合、上段手摺23および下段手摺21は、金属製の芯棒の周囲が樹脂被膜によって被覆された構造を有している。当該樹脂被膜には、把持をし易くするためのディンプル(凹凸)形状が設けられている。
【0020】
なお、下段棒状部材は、本実施形態に係る下段手摺21に限定されず、可動手摺25の支持部材30が、下段棒状部材の軸方向に沿って移動可能とされればよく、形状は特に限定されない。例えば、支持部材30の移動をガイド可能なレールである。また、上段棒状部材も、本実施形態に係る上段手摺23に限定されず、可動手摺25の支持部材30が、上段手摺23の軸方向に沿って移動可能とされればよく、形状は特に限定されない。例えば、支持部材30の移動をガイド可能なレールである。
【0021】
(可動手摺)
続いて、
図3を参照しながら、可動手摺25について説明する。
図3は、本実施形態に係る可動手摺25の構成例を示す斜視図である。
図3に示すように、可動手摺25は、手摺棒26と、支持部材30と、固定部材40と、係止部材50とを含んで構成されている。可動手摺25は、手摺棒26の基端部側で、支持部材30を介して、下段手摺21に取り付けられている。詳細は後述するが、可動手摺25は、下段手摺21に対して回動可能であり、倒伏状態および起立状態に切り替え可能とされている。また、可動手摺25は、下段手摺21の軸方向に移動可能とされている。一方、可動手摺25の手摺棒26の先端部側には、固定部材40と係止部材50とが取り付けられている。
【0022】
(手摺棒)
手摺棒26は、可動手摺25を手摺として機能させるための棒状部材である。
図3に示すように、手摺棒26は、第1の手摺棒27と第2の手摺棒28とを有している。第1の手摺棒27は、側面視(
図3におけるY方向視)で略L字形状の棒状部材である。第1の手摺棒27は、基端部側で、支持部材30によって支持されている。また、第2の手摺棒28は、真直な棒状部材であり、第1の手摺棒27と略平行に設けられる。
【0023】
手摺棒26に第2の手摺棒28が設けられていることにより、可動手摺25が倒伏状態とされたとき、鉛直方向に対して2段階の高さの固定された手摺が提供される。また、可動手摺25が起立状態とされたときも、浴室壁面17からの距離が2段階の固定された手摺が提供される。この結果、浴槽10の利用者が、自身の体格、使い勝手に応じて、使用する固定された手摺を選択することが可能となり、利便性が向上する。
【0024】
(支持部材)
次に、
図4~8を参照しながら、支持部材30の構成について説明する。
図4は、
図3におけるI-I’断面図である。
図6は、可動手摺25の起立状態と倒伏状態との間の状態において、
図3におけるI-I’断面に相当する位置における断面図である。
図8は、可動手摺25の起立状態において、
図3におけるI-I’断面に相当する位置における断面図である。
図5は、
図4におけるA-A’断面図である。
図7は、
図6におけるB-B’断面図である。支持部材30は、下段手摺21を回転軸として手摺棒26の基端部を回動可能に支持する。また、支持部材30は、下段手摺21の軸方向に移動可能に設けられる。
図4に示すように、支持部材30は、本体部31と、回動支持部材32とを含んで構成される。
【0025】
(本体部)
図4に示すように、本体部31は、後述する筒状部33等を内蔵する筐体状の部材である。本体部31には、
図3に示した開口31Aを介して、下段手摺21が貫通される。すなわち、下段手摺21が、開口31Aに挿通されている。これにより、本体部31は、下段手摺21の軸方向に移動可能となっている。本体部31の内壁には、後述する筒状部33に向かって突出した本体凸部31Bが設けられている。また、本体部31には、正面開口部31Cが設けられており、後述する手摺棒支持部34が、かかる正面開口部31Cから突出している。
【0026】
本体部31は、さらに筒状部33を挟んで本体凸部31Bの反対側に被押圧部35を有する。被押圧部35は、筒状部33の外周面に当接し、筒状部33の外周面に設けられた押圧部33Aによって押圧される部材である。被押圧部35には、筒状部33に向かって突出する突起部35Aが設けられる。突起部35Aは、筒状部33の押圧部33Aまたは緩和部33Bに接触する。被押圧部35の具体例としては、板ばね部材等の弾性体が挙げられる。被押圧部35の長手方向両端部は、本体部31に支持され、被押圧部35の長手方向中間部が、筒状部33に当接している。
【0027】
(回動支持部材)
回動支持部材32は、本体部31に設けられた部材であり、筒状部33と、筒状部33に接続された手摺棒支持部34とを有している。筒状部33は、回動支持部材32の内、本体部31の内部に設けられた、略円筒形状の部位である。筒状部33の内径は、下段手摺21の外径よりもやや大きく設定されており、筒状部33の内周側には、下段手摺21が挿通されている。すなわち、筒状部33は、下段手摺21に回動可能かつ軸方向に移動可能に設けられている。
【0028】
筒状部33は、軸方向の両端部の外周面に押圧部33A1、33A2を有する。押圧部33A1、33A2は、手摺棒26が倒伏状態または起立状態とされた場合、被押圧部35を押圧する。具体的には、押圧部33A1、33A2は、筒状部33の外周面において、後述する緩和部33Bよりも外径の大きい部位である。特に、押圧部33A1、33A2は、筒状部33の外周面がそのまま用いられる。
【0029】
筒状部33は、軸方向の両端部の外周面において押圧部33A1、33A2と隣接する位置に緩和部33Bを有する。緩和部33Bは、被押圧部35への押圧力を押圧部33A1、33A2による押圧力よりも緩和する。具体的には、緩和部33Bは、筒状部33の外周面において、押圧部33A1、33A2よりも外径の小さい凹状の部位である。より具体的には、
図4に示すように、筒状部33の外周面には、凹状部33D1、33D2が設けられている。筒状部33の凹状部33D1、33D2との間には、
図4に示すように、凸状部33Eが設けられている。かかる凸状部33Eは、中間状態において、本体凸部31Bに当接する。
【0030】
手摺棒支持部34は、回動支持部材32の内、手摺棒26の基端部を支持する部位である。手摺棒支持部34は、本体部31のY方向の中間部分に設けられた凹状の部位に設けられた正面開口部31Cから、本体部31の外方(
図4におけるX方向)へ突出している。手摺棒支持部34は、かかる正面開口部31C内において、手摺棒26の回動に伴って上下に移動可能とされている。このように、手摺棒支持部34を介して可動手摺25の手摺棒26の回動動作が筒状部33に伝達されることにより、筒状部33は、手摺棒26の下段手摺21の軸方向を回動中心とした回動に連動して、回動可能とされている。
【0031】
被押圧部35が板ばね部材とされることで、下段手摺21にディンプル(凹凸形状)が設けられている場合等、下段手摺21の外形寸法が軸方向で変化しても、板ばね部材の弾性変形によって、筒状部33の変位を吸収できる。下段手摺21に設けられたディンプルの凹凸の内、凹または凸のいずれの位置でも筒状部33が下段手摺21に当接され、固定される際、板ばね部材によって挟持力が適切に設定される。特に、下段手摺21の凸の位置において筒状部材が固定される際、板ばね部材によって下段手摺21の樹脂被膜が損傷することを抑制できる。
【0032】
(可動手摺の軸方向の移動規制)
次に、
図4~
図8を参照しながら、支持部材30における下段手摺21の軸方向に沿った移動の規制の具体例について説明する。
図4および
図5に示すように、可動手摺25が倒伏状態とされた場合において、突起部35Aは筒状部33の押圧部33A1に接触し、本体凸部31Bは筒状部33の凹状部33D1に接触している。このため、筒状部33の中心軸は、本体部31の開口31Aに対してX方向に偏心している。これにより、下段手摺21の-X方向側の外周面は、筒状部33の-X方向側の内周面と接触し、下段手摺21の+X方向側の外周面は、本体部31の開口31Aの+X方向側の内周面と接触する。このとき、筒状部33の押圧部33Aによって、被押圧部35が押圧され、本体部31は被押圧部35からの反作用を受ける。これにより、下段手摺21は、筒状部33の内周面と本体部31の開口31Aとにより押圧される。
【0033】
つまり、
図5に示すように、可動手摺25の倒伏状態において、筒状部33の内周面と本体部31の開口31Aとによって、下段手摺21が挟持され、筒状部33および本体部31の軸方向の移動が規制される。このように、支持部材30の軸方向の移動が規制される。
【0034】
図6に示すように、可動手摺25の手摺棒26が中間状態へ回動された場合において、突起部35Aは筒状部33の緩和部33Bに接触し、本体凸部31Bは筒状部33の凸状部33Eに接触している。このため、
図7に示すように、可動手摺25が倒伏状態の場合に比べて、筒状部33の中心軸は、本体部31の開口31Aの中心軸側に寄っている。これにより、筒状部33の内周面と下段手摺21の外周面との間には、周全体に亘って間隙が生じ、本体部31の開口31Aが、下段手摺21から離間する。
【0035】
つまり、
図7に示すように、可動手摺25の中間状態において、筒状部33の内周面と本体部31の開口31Aとによる下段手摺21の挟持が緩和され、筒状部33および本体部31の軸方向の移動規制が解除される。
【0036】
また、
図7に示すように、可動手摺25の中間状態において、筒状部33の緩和部33Bに被押圧部35の突起部35Aが入り込んでいる。この場合において、突起部35Aの側端面(Y方向端面)と緩和部33Bの凹形状の側壁面(Y方向壁面)とが当接し、筒状部33と被押圧部35とが、Y方向に係合した状態となっている。この結果、手摺棒26を介して手摺棒支持部34に軸方向の移動の入力があると、筒状部33から被押圧部35へ力が伝達され、被押圧部35の取り付けられた本体部31も下段手摺21の軸方向に沿って移動する。
【0037】
図8に示すように、可動手摺25が起立状態とされると、突起部35Aは筒状部33の押圧部33A2に接触し、本体凸部31Bは筒状部33の凹状部33D2に接触する。押圧部33A2と被押圧部35の突起部35Aとが接触すると、被押圧部35からの反力によって、下段手摺21は筒状部33の内周面と本体部31の開口31Aとにより押圧される。
【0038】
つまり、
図5と同様に、可動手摺25の起立状態において、筒状部33の内周面と本体部31の開口31Aとによって下段手摺21が挟持され、筒状部33および本体部31の軸方向の移動が規制される。この結果、支持部材30の軸方向の移動が規制される。
【0039】
上記の通り、手摺棒26の起立状態、または倒伏状態にある場合に、本体部31の所定部分である開口31Aの内周面と筒状部33の内周面とによって、下段手摺21が挟持され、支持部材30の軸方向の移動が制限される。これにより、可動手摺25の起立状態、倒伏状態にある場合に、支持部材30の軸方向の移動が規制され、可動手摺25の基端部側での固定が強固に行われる。また、下段手摺21が開口31Aの内周面と筒状部33の内周面とによって挟持されて固定されるので、下段手摺21に対し、別途、固定のための構造、加工を加えることなく、可動手摺25の固定を実現できる。
【0040】
また、手摺棒26と連結した回動支持部材32によって、回動に伴い本体部31が変位する結果、開口31Aと筒状部33の内周面とによって下段手摺21が挟持され、支持部材30の軸方向の移動が規制される。これにより、手摺棒26の回動に連動して、可動手摺25の基端部側での固定が実現される。
【0041】
なお、板ばね部材である被押圧部35の強度や、固定ねじによる本体部31への固定位置の調整によって、下段手摺21に対する押圧力を調整することができる。
【0042】
(壁面ローラ)
続いて、
図9、10を参照しながら、支持部材30の構成について説明する。
図9は、本実施形態に係る支持部材30の構成例を示す背面図である。
図10は、実施形態に係る支持部材の構成例を示す断面図であり、
図9におけるII-II’断面図である。
図9に示すように、本体部31には、さらに壁面ローラ37が設けられる。壁面ローラ37は、浴室の浴室壁面17に接触して転動する回転部材である。壁面ローラ37は、本体部31において、浴室の浴室壁面17と対向する位置(手摺棒26側とは反対側の位置)に設けられる。壁面ローラ37は、本体部31においてZ方向に挿通されたピン37Aに対して軸支されている。
図9に示すように、壁面ローラ37は、本体部31に4つ設けられている。壁面ローラ37の外周側は、本体部31の浴室壁面17側の端面よりも、浴室壁面17側に突出している。本体部31と浴室壁面17との間に介在された壁面ローラ37によって可動手摺25の下段手摺21の軸方向に移動がより円滑になる。つまり、下段手摺21と筒状部33との間には隙間があるため、本体部31が浴室壁面17に接触する場合がある。その際、本体部31が移動の抵抗とならないように壁面ローラ37がガイドするので、可動手摺25の位置変更が容易かつ精度よく行える。この結果、固定された手摺が軸方向における最適な位置に提供されるとともに、可動手摺25の軸方向の移動の規制が解除された後、可動手摺25をスムーズに移動可能となる。
【0043】
また、壁面ローラ37は、所定の弾性を有する部材から形成される。例えば、壁面ローラ37は、合成樹脂、合成ゴム等から形成される。壁面ローラ37が所定の弾性を有することにより、可動手摺25が、起立状態または倒伏状態で固定され、本体部31が浴室壁面17へ向かって変位する際、壁面ローラ37が弾性変形し、浴室壁面17の損傷を防ぐことができ、また、可動手摺25の起立状態または倒伏状態において、本体部31が、浴室壁面17に当接することができる。なお、壁面ローラ37の数は、浴室壁面17と本体部31との円滑な摺動を可能にできればよく、特に限定されない。例えば、壁面ローラ37は、本体部31の上下に1つずつ設けられてもよい。
【0044】
(手摺ローラ)
図9、
図10に示すように、本体部31には、さらに手摺ローラ39が設けられている。手摺ローラ39は、本体内部においてX方向に挿通されたピン39Aに対して軸支され、下段手摺21の外周面に当接しながら転動する回転部材である。手摺ローラ39が設けられていることで、可動手摺25の下段手摺21の軸方向の移動がより円滑になり、可動手摺25の水平方向の位置変更が容易かつ精度よく行える。この結果、固定された手摺が軸方向における最適な位置に提供される。
【0045】
特に、手摺ローラ39は、下段手摺21の外周面の内、鉛直方向(
図10におけるZ方向)の上方側の外周面に当接するように、配置される。これにより、本体部31を含む可動手摺25の重さによって、手摺ローラ39が下段手摺21に当接しやすくなり、より手摺ローラ39を介した可動手摺25の移動が円滑になる。従って、可動手摺25の水平方向の位置変更が容易かつ精度よく行える。この結果、固定された手摺が軸方向における最適な位置に提供されるとともに、可動手摺25の軸方向の移動の規制が解除された後、可動手摺25をスムーズに移動可能となる。
【0046】
(固定部材)
引き続き、
図3、
図11~
図13を参照しながら、固定部材40について説明する。
図11は、本実施形態に係る倒伏状態における固定部材40による固定の様子を示す断面図であり、
図1におけるIII-III’断面図である。
図12および
図13は、本実施形態に係る起立状態における係止部材50による固定の様子を示す断面図であり、
図2におけるIV-IV’断面図である。
図3に示すように、可動手摺25の先端部側には、固定部材40が設けられている。固定部材40は、可動手摺25の倒伏状態において、可動手摺25の先端部の下方側に位置する。固定部材40は、可動手摺25の倒伏状態において、可動手摺25を浴槽10の側壁11の上部に対して固定する。
【0047】
図11に示すように、固定部材40は、載置部41と、保持部43とを有する。載置部41は、可動手摺25の倒伏状態において浴槽10の側壁11の上壁面13に載置される部位である。可動手摺25は、載置部41を介して浴槽10の上壁面13に載置される。載置部41の上壁面13と対向する面には、合成ゴム等の弾性体から成るシート状部材が取り付けられている。載置部41は、先端が所定の曲率をもって上壁面13側へ向かって湾曲している。
【0048】
保持部43は、可動手摺25の倒伏状態において浴槽10の側壁11の外面に配置可能とされている。保持部43は、載置部41との間で浴槽10の側壁11を保持する。これにより、可動手摺25を浴槽10に対して強固に固定することが可能となる。
【0049】
具体的には、保持部43は、浴槽10の溝部15に挿入可能とされる。より具体的には、保持部43の先端部は、浴槽10の溝部15内に収容され、溝部15の上面と当接する係合部43Aとなっている。これにより、上壁面13に載置された載置部41と保持部43の係合部43Aとが側壁11を挟持することで可動手摺25が固定される。この結果、可動手摺25を浴槽10に対してより強固に固定することが可能となる。
【0050】
固定部材40は、さらに調整機構45を有している。調整機構45は、載置部41に対する保持部43の係合部43Aの位置を調整する機構である。保持部43の位置が調整されることで、固定部材40の挟持力を調節することができ、また、浴槽10の溝部15の位置が変化しても、保持部43の係合部43Aを溝部15内に収容されるようにできる。
【0051】
固定部材40は、さらに回動機構47を有している。回動機構47は、保持部43を回動させるための機構である。固定部材40は、回動機構47によって、待避位置と保持位置との間で回動可能とされている。ここで、保持位置とは、倒伏状態において保持部43が浴槽10の側壁11の外面に配置された位置である。より具体的には、保持位置とは、溝部15内に保持部43の係合部43Aが収容される位置である。また、待避位置とは、可動手摺25の倒伏状態において保持部43が保持位置から待避して浴槽10の側壁11の保持が解除される位置である。より具体的には、待避位置とは、保持部43が保持位置から所定角度(本例は略90度)回動して係合部43Aが溝部15から離脱した位置である。また、保持位置の保持部43が待避位置に向けて略45度回動されることで、可動手摺25が起立状態から倒伏状態へと回動されるとき、保持部43が浴槽10の側壁11と干渉することが防止される。また、可動手摺25の倒伏状態から起立状態へと回動されるときも、保持部43と浴槽10との干渉を防止できる。このように、可動手摺25の起立状態、倒伏状態の切り替えが、スムーズに行われる。なお、固定部材40には、保持部43を保持位置にロック可能なロック手段(図示せず)が設けられている。
【0052】
(係止部材)
図3に示すように、可動手摺25の先端部側には、係止部材50が設けられている。係止部材50は、可動手摺25の倒伏状態において、可動手摺25の先端部の上方側に位置する。係止部材50は、可動手摺25の起立状態において、可動手摺25を上段手摺23に対して固定または固定解除する。
【0053】
係止部材50は、筐体部51を有している。
図12に示すように、可動手摺25の起立状態において、筐体部51の壁部と対向する面には、凹部53が設けられている。凹部53は、断面視(
図12におけるX-Z平面断面視)で略半円形状を有し、上段手摺23へ向かって開放されている。可動手摺25の起立状態において、凹部53内には上段手摺23が収容される。凹部53の周面の一部には凹部開口53Aが設けられている。かかる凹部開口53Aから後述する押さえ部55が出没可能とされており、可動手摺25の起立状態において上段手摺23に向かって突出可能とされている。
図13に示すように、押さえ部55が凹部開口53Aから突出された状態で、押さえ部55と上段手摺23とが係合する。具体的には、押さえ部55が上段手摺23を押圧する。これにより、凹部53が上段手摺23から外れる方向に移動不能とされるとともに、上段手摺23の軸方向に沿った移動も規制される。この結果、可動手摺25は、上段手摺23に対して固定される。この結果、可動手摺25が起立状態で固定された手摺として機能する。また、押さえ部55が、
図12に示すように凹部開口53A内に没入すると、上段手摺23に対する固定が解除される。
【0054】
(連動機構)
本実施形態に係る浴室手摺構造20の可動手摺25は、さらに連動機構60を備えている。
図12および
図13に示すように、連動機構60は、手摺棒26の先端部側において、固定部材40から係止部材50にかけて設けられている。連動機構60は、保持部43と押さえ部55とを機械的に連結し、保持部43の動作を押さえ部55の動作に連動可能としている。連動機構60は、保持部43の保持位置と、待避位置との間の変位に連動して、可動手摺25の起立状態において、係止部材50を上段手摺23に対して固定及び固定解除させる。
【0055】
具体的には、連動機構60は、一例として、長尺な板状の連結部材61と、断面T字状のガイド部材63と、板状のリンク部材65と、を有している。連結部材61の一端は、固定部材40の回動機構47と連結され、他端は、ガイドピン61Aによりリンク部材65の一端側に連結されている。リンク部材65の他端側は凹部53に対して固定部材40側かつ支持部材30側において係止部材50に対して回動可能に支持されている。
図13に示すように、ガイド部材63にはX方向に延びるガイド孔63Aが設けられている。このガイド孔63Aにはガイドピン61Aが挿通されている。また、ガイド部材63は係止部材50の筐体部51内にZ方向に摺動可能に設けられている。
【0056】
固定部材40の保持部43が保持位置(
図12参照)から待避位置(
図13参照)へと回動されると、固定部材40の回動機構47を介して連結部材61が+X方向に変位する。連結部材61のX方向の変位によって、ガイドピン61Aも+X方向に移動する。ただし、ガイドピン61Aはリンク部材65に対して固定されているため、+X方向の移動に伴いリンク部材65の回動に合わせて+Z方向に変位する。ガイドピン61Aが+X方向かつ+Z方向に変位すると、ガイドピン61Aはガイド孔63Aを+X方向に移動しつつ、ガイド部材63を+Z方向に変位させる。これにより、ガイド部材63に設けられた押さえ部55が凹部53内に突出する。また、ガイドピン61Aがリンク部材65の上死点に位置するので、上段手摺23の-Z方向への反発に抗して強固に上段手摺23を保持することができる。
【0057】
固定部材40の保持部43が待避位置(
図13参照)から保持位置(
図12参照)へと回動されると、固定部材40の回動機構47を介して連結部材61が-X方向に変位する。連結部材61のX方向の変位によって、ガイドピン61Aも-X方向に移動する。ただし、ガイドピン61Aはリンク部材65に対して固定されているため、-X方向の移動に伴いリンク部材65の回動に合わせて-Z方向に変位する。ガイドピン61Aが-X方向かつ-Z方向に変位すると、ガイドピン61Aはガイド孔63Aを-X方向に移動しつつ、ガイド部材63を-Z方向に変位させる。これにより、ガイド部材63に設けられた押さえ部55が凹部53内に突出されなくなる。連動機構60によって、保持部43の変位に連動して、係止部材50の上段手摺23に対する固定およびその解除が実現される。これにより、可動手摺25を起立状態で固定するために、別途操作部を設ける必要がなくなる。また、保持部43の変位に基づいて可動手摺25の固定状態が判別可能となるので、起立状態での可動手摺25の固定し忘れが防止でき、固定が確実に行われる。また、係止部材50における固定、解除が簡便に行われ、可動手摺25の軸方向の移動がしやすくなる。
【0058】
(把持部)
本実施形態に係る浴室手摺構造20の可動手摺25は、さらに把持部70を備えている。
図1及び
図3に示すように、把持部70は、手摺棒26の先端部側に設けられ、浴槽10の利用者によって把持可能とされた部位である。特に可動手摺25が倒伏状態にある場合に、把持部70は、利用者によって手摺として使用される。例えば、入出槽において、浴槽10の側壁11を跨ぐ動作をする時、把持部70は、利用者が体を支えるための手摺として利用される。
【0059】
具体的には、把持部70は、係止部材50の筐体部側壁51Aに設けられている。把持部70は、可動手摺25の倒伏状態で、平面視(
図1におけるZ方向視)で、環状を有するハンドルである。
図1に示すように、把持部70の円弧状の端部は、係止部材50の筐体部側壁51Aに取り付けられ、円弧の中間部を利用者が把持可能とされている。
【0060】
また、把持部70が係止部材50に設けられることにより、浴槽10の側壁11の上方に把持部70が位置する。この結果、側壁11を跨ぐ動作の際に、把持部70が手摺として有効に機能する。さらに、把持部70が係止部材50に設けられることで、可動手摺25の起立状態と倒伏状態との間の位置変更操作において操作がしやすくなり、下段手摺21の軸方向に沿った方向に可動手摺25を移動させる際にも、把持部70を使用できる。
【0061】
(浴室手摺構造の操作例)
続いて、本実施形態に係る浴室手摺構造20の操作例について、
図1、
図2、および
図14を参照しながら、説明する。まず、倒伏状態にある可動手摺25(
図1参照)を、起立状態(
図2参照)へと切り替える操作について説明する。この場合、浴槽10の利用者または介助者(以下、操作者という)は、手摺棒26の先端部側に設けられた固定部材40による固定を解除する。具体的には、固定部材40による浴槽10の側壁11の保持が解除された後、操作者によって、可動手摺25は、下段手摺21を回転軸として、起立状態へと回動される。
【0062】
図2に示すように、可動手摺25が起立状態とされた時、上段手摺23は、係止部材50の凹部53内に収容される。この状態で、操作者によって固定部材40の保持部43の保持位置から待避位置への変位が行われると、係止部材50の凹部53の開放側端部から押さえ部55が突出する。この結果、可動手摺25が、起立状態で上段手摺23に対して固定される。つまり、可動手摺25が起立状態で固定された手摺として機能する。また、ロック手段により保持位置の保持部43がロックされるので、利用者が保持部43に手をかけても、係止部材50が上段手摺23から外れない。
【0063】
次に、起立状態にある可動手摺25(
図2参照)を倒伏状態(
図1参照)に切り替える場合について説明する。まず、操作者によって、ロック手段が解除されて保持部43の待避位置から保持位置への変位が行われる。これにより、係止部材50の押さえ部55が凹部53の開放側端部で突出しなくなり、押さえ部55と上段手摺23の外周面との係合が解除される。つまり、可動手摺25の起立状態での上段手摺23に対する固定が解除される。その後、操作者によって手摺棒26は下段手摺21を回動軸として倒伏状態へと回動される。
【0064】
図1に示すように、可動手摺25が倒伏状態とされた時、固定部材40の載置部41は、浴槽10の上壁面13と当接している。すなわち、可動手摺25の先端部側は、浴槽10の側壁11に対して支持されている。この状態で操作者によって固定部材40の固定操作が行われる。具体的には、固定部材40の保持部43が、溝部15へ掛止される。この結果、載置部41と保持部43とで浴槽10の側壁11が保持され、可動手摺25は浴槽10に固定される。また、倒伏状態の可動手摺25では支持部材30が下段手摺21の軸方向の移動も規制されている。したがって、可動手摺25が倒伏状態で固定された手摺として機能する。
【0065】
続いて、
図14を参照しながら、可動手摺25を下段手摺21に対して移動させ、水平方向(
図14におけるY方向)の位置を変更する操作について説明する。
図14は、実施形態に係る可動手摺の動作例を示す斜視図である。まず、操作者によって、中間状態に手摺棒26が回動される。起立状態または倒伏状態から中間状態へと手摺棒26を回動させると、支持部材30が下段手摺21の軸方向(
図14におけるY方向)の固定が解除される。つまり、この状態では、可動手摺25は、下段手摺21の軸方向に移動可能である。
【0066】
これにより、手摺棒26を浴槽10に架け渡す位置が変更可能となる。これにより、可動手摺25を様々な位置に設けることができ、浴槽10の利用者の姿勢、動作に合わせて固定された手摺が提供される。
【0067】
また、中間状態では、手摺棒26が、浴室壁面17に対して鉛直方向から斜めとなった状態で支持部材30を下段手摺21の軸方向に移動できる。つまり、操作者が、浴室床面19に立った状態のままで、可動手摺25を操作することが可能となる。これにより、可動手摺25の移動に際し、操作者が浴槽10に入って可動手摺25を操作する必要がない。この結果、固定された手摺を水平方向の様々な位置に設けることが容易となる。
【0068】
また、
図14に示すように、可動手摺25の基端部は、手摺棒支持部34において、下段手摺21の軸方向と直交する方向を回転軸として回動可能とされる。これにより、可動手摺25を下段手摺21の軸方向に移動させる際に、下段手摺21との干渉(基端部でのモーメントによる齧り)が起きにくく、円滑な移動が実現される。
【0069】
(作用効果)
本実施形態に係る浴室手摺構造20によれば、可動手摺25の起立状態においては、主に入出槽時に利用者が利用可能であり、可動手摺25の倒伏状態においては入浴中に利用者が利用することができる。したがって、利用者の入浴時及び入浴中の様々な姿勢、並びに動作に合わせて固定された手摺を提供することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る浴室手摺構造20によれば、起立状態と倒伏状態とで固定された手摺を別々に設けずに済み、浴室内の省スペース化も実現される。
【0071】
また、本実施形態に係る浴室手摺構造20によれば、可動手摺25が起立状態にある場合に、本体部31によって下段手摺21が押圧され、筒状部33の軸方向の移動が制限される。これにより、可動手摺25が起立状態にある場合に、筒状部33を含めた支持部材30の軸方向の移動が規制され、可動手摺25の基端部側での固定が簡便に行われる。また、可動手摺25が倒伏状態にある場合にも同様に、筒状部33の軸方向の移動が制限されることにより、筒状部33を含めた支持部材30の軸方向の移動が規制され、可動手摺25の基端部側での固定が簡便に行われる。
【0072】
また、本実施形態に係る浴室手摺構造20によれば、手摺棒26と連結した回動支持部材32によって回動に伴い本体部31が変位する結果、開口31Aによって下段手摺21が押圧され、支持部材30の軸方向の移動が規制される。これにより、手摺棒26の回動に連動して可動手摺25の基端部側での固定が実現されるので、可動手摺25の軸方向の移動の規制、その解除が簡便に行われる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、上記実施形態において、把持部70が環状のハンドルである例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、把持部は、水平方向に延在された平板状に形成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態において、固定部材40の保持部43が浴槽10の溝部15に係合する例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、保持部43は浴槽10の側壁11の外面および/または内面を押圧することにより、可動手摺25が倒伏状態において、浴槽10に固定される構成を有することも可能である。
【0076】
また、上記実施形態において、浴槽10に溝部15が設けられている例を示したが、本発明は、かかる例に限定されず、浴槽10には溝部15が設けられなくてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、浴室手摺構造20に可動手摺25が1つ設けられている例を示したが、本発明は、かかる例に限定されず、可動手摺25が複数設けられてもよい。
【0078】
また、上記実施形態において、被押圧部35が板ばね部材である例を示したが、これに限定されず、被押圧部35が押圧部33Aからの作用に対して反作用を生じさせることができればよく、また、被押圧部35に突起部35Aを設けなくともよい。また、上記実施形態において、開口31Aの内周面が、下段手摺21に当接する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本体部31の内部において、下段手摺21の外周面に対向する位置に設けられた突出部位が、下段手摺21に当接し、筒状部33の内周面との間で下段手摺21を挟持するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 浴槽 35 被押圧部
11 側壁 35A 突起部
13 上壁面 37 壁面ローラ
15 溝部 37A ピン
17 浴室壁面 39 手摺ローラ
19 浴室床面 39A ピン
20 浴室手摺構造 40 固定部材
21 下段手摺(下段棒状部材) 41 載置部
23 上段手摺(上段棒状部材) 43 保持部
25 可動手摺 43A 係合部
26 手摺棒 45 調整機構
27 第1の手摺棒 47 回動機構
28 第2の手摺棒 50 係止部材
30 支持部材 51 筐体部
31 本体部 51A 筐体部側壁
31A 開口 53 凹部
31B 本体凸部 53A 凹部開口
31C 正面開口部 55 押さえ部
32 回動支持部材 60 連動機構
33 筒状部 61 連結部材
33A1、33A2 押圧部 61A ガイドピン
33B 緩和部 63 ガイド部材
33C 中央部 63A ガイド孔
33D1、33D2 凹状部 65 リンク部材
33E 凸状部 70 把持部
34 手摺棒支持部