IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YKK AP株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-建具 図1
  • 特許-建具 図2
  • 特許-建具 図3
  • 特許-建具 図4
  • 特許-建具 図5
  • 特許-建具 図6
  • 特許-建具 図7
  • 特許-建具 図8
  • 特許-建具 図9
  • 特許-建具 図10
  • 特許-建具 図11
  • 特許-建具 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/52 20060101AFI20230411BHJP
   E05C 1/10 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
E06B9/52 M
E05C1/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019195465
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021067141
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 奈央
(72)【発明者】
【氏名】相澤 隆介
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232218(JP,A)
【文献】特開2004-11111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/52
E05C 1/10
E05C 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体上を転動する戸車を有し、前記戸車の転動によって前記枠体に対して移動する網戸と、前記網戸の移動を規制する自走防止装置とを備えた建具であって、
前記自走防止装置は、
前記枠体及び前記網戸の一方に取り付けられ、前記網戸の移動方向に交差する第1の係合面を有する係合部材と、
前記枠体及び前記網戸の他方に取り付けられ、前記第1の係合面に当接して前記網戸の移動を規制する第2の係合面を有する受け部材とを備え、
前記係合部材は、
前記第1の係合面を有し、上下方向に沿う第1の方向に移動して第1の係合位置に位置付けられ、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に移動して第1の非係合位置に位置付けられる係合部材本体を備え、
前記第1の係合位置は、
前記係合部材本体が前記受け部材に当接して前記第1の方向への移動が規制され、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、
前記第1の非係合位置は、
前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置であり、
前記係合部材本体における上下方向に移動可能とする長さは、
前記戸車を利用して前記網戸の高さを調整可能とする長さと、前記第1の係合位置で前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合う領域における上下方向の長さとを足し合わせた長さ以上に設定されている
ことを特徴とする建具
【請求項2】
前記受け部材は、
前記第2の係合面を有する受け部材本体と、前記受け部材本体を前記第2の方向に付勢する第2の付勢部材とを有するラッチ機構を備え、
前記受け部材本体は、
前記網戸の移動に応じて前記係合部材本体に摺接しつつ、前記第2の付勢部材による付勢力に抗して前記第1の方向に移動して第2の非係合位置に位置付けられた後、前記第2の付勢部材の付勢力によって前記第2の方向に移動して第2の係合位置に位置付けられ、
前記第2の係合位置は、
前記受け部材本体が前記係合部材本体に当接して前記第2の方向への移動が規制され、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、
前記第2の非係合位置は、
前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置である
ことを特徴とする請求項1に記載の建具
【請求項3】
前記係合部材は、
前記係合部材本体を前記第1の方向に付勢する第1の付勢部材を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の建具
【請求項4】
前記係合部材及び前記受け部材のうち、前記枠体に取り付けられる部材は、
室内側から前記枠体に対して固定具にて取り付けられる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の建具
【請求項5】
前記枠体には、
貫通孔が設けられ、
前記係合部材及び前記受け部材のうち、前記枠体に取り付けられる部材は、
前記貫通孔に挿通される突起部を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の建具
【請求項6】
前記係合部材は、
前記枠体に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の建具
【請求項7】
枠体と、前記枠体上を転動する戸車を有し、前記戸車の転動によって前記枠体に対して移動する網戸と、前記網戸の移動を規制する自走防止装置とを備えた建具であって、
前記自走防止装置は、
前記枠体及び前記網戸の一方に取り付けられ、前記網戸の移動方向に交差する第1の係合面を有する係合部材と、
前記枠体及び前記網戸の他方に取り付けられ、前記第1の係合面に当接して前記網戸の移動を規制する第2の係合面を有する受け部材とを備え、
前記係合部材は、
前記第1の係合面を有し、上下方向に沿う第1の方向に移動して第1の係合位置に位置付けられ、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に移動して第1の非係合位置に位置付けられる係合部材本体を備え、
前記第1の係合位置は、
前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、
前記第1の非係合位置は、
前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置であり、
前記受け部材は、
前記第2の係合面を有する受け部材本体と、前記受け部材本体を前記第2の方向に付勢する第2の付勢部材とを有するラッチ機構を備え、
前記受け部材本体は、
前記網戸の移動に応じて前記係合部材本体に摺接しつつ、前記第2の付勢部材による付勢力に抗して前記第1の方向に移動して第2の非係合位置に位置付けられた後、前記第2の付勢部材の付勢力によって前記第2の方向に移動して第2の係合位置に位置付けられ、
前記第2の係合位置は、
前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、
前記第2の非係合位置は、
前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置である
ことを特徴とする建具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体上を戸車が転動することで当該枠体に対して移動する網戸の移動を規制する自走防止装置、及び当該自走防止装置を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、網戸の移動を規制する自走防止装置(網戸ロック装置)として、枠体に取り付けられるロック部品と、網戸に取り付けられる受け部品とを備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の自走防止装置では、ロック部品は、ユーザによって上下方向に移動される操作部と、当該操作部と一体となって上下方向に移動可能とし、受け部品に設けられた鉤片が係止される係合部とを備える。そして、ユーザは、操作部を操作することで、係合部に鉤片を係止させる。これにより、網戸の移動が規制される。また、網戸の移動が規制された状態を解除する際には、ユーザは、操作部を操作することで、係合部に鉤片が係止された状態を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6297422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自走防止装置では、戸車を利用して網戸の高さを調整した場合には、ロック部品と受け部品との高さの位置関係が変更されるため、係合部に対して鉤片が係止される長さ(係合部に対する鉤片の引っ掛かり代)が変更される。このため、ユーザは、戸車を利用して網戸の高さを調整した場合には、当該長さを適切な長さとするために、網戸に対する受け部品の取付位置を調整する作業(以下、第1の作業と記載)を行う必要がある。
また、特許文献1に記載の自走防止装置では、ユーザは、網戸の移動を規制する際に、操作部を操作する作業(以下、第2の作業と記載)を行う必要がある。
そこで、第1の作業や第2の作業をユーザに行わせる必要がなく、利便性を向上させることができる技術が要望されている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、利便性を向上させることができる自走防止装置及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体と、前記枠体上を転動する戸車を有し、前記戸車の転動によって前記枠体に対して移動する網戸と、前記網戸の移動を規制する自走防止装置とを備えた建具であって、前記自走防止装置は、前記枠体及び前記網戸の一方に取り付けられ、前記網戸の移動方向に交差する第1の係合面を有する係合部材と、前記枠体及び前記網戸の他方に取り付けられ、前記第1の係合面に当接して前記網戸の移動を規制する第2の係合面を有する受け部材とを備え、前記係合部材は、前記第1の係合面を有し、上下方向に沿う第1の方向に移動して第1の係合位置に位置付けられ、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に移動して第1の非係合位置に位置付けられる係合部材本体を備え、前記第1の係合位置は、前記係合部材本体が前記受け部材に当接して前記第1の方向への移動が規制され、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、前記第1の非係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置であり、前記係合部材本体における上下方向に移動可能とする長さは、前記戸車を利用して前記網戸の高さを調整可能とする長さと、前記第1の係合位置で前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合う領域における上下方向の長さとを足し合わせた長さ以上に設定されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る建具は、枠体と、前記枠体上を転動する戸車を有し、前記戸車の転動によって前記枠体に対して移動する網戸と、前記網戸の移動を規制する自走防止装置とを備えた建具であって、前記自走防止装置は、前記枠体及び前記網戸の一方に取り付けられ、前記網戸の移動方向に交差する第1の係合面を有する係合部材と、前記枠体及び前記網戸の他方に取り付けられ、前記第1の係合面に当接して前記網戸の移動を規制する第2の係合面を有する受け部材とを備え、前記係合部材は、前記第1の係合面を有し、上下方向に沿う第1の方向に移動して第1の係合位置に位置付けられ、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に移動して第1の非係合位置に位置付けられる係合部材本体を備え、前記第1の係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、前記第1の非係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置であり、前記受け部材は、前記第2の係合面を有する受け部材本体と、前記受け部材本体を前記第2の方向に付勢する第2の付勢部材とを有するラッチ機構を備え、前記受け部材本体は、前記網戸の移動に応じて前記係合部材本体に摺接しつつ、前記第2の付勢部材による付勢力に抗して前記第1の方向に移動して第2の非係合位置に位置付けられた後、前記第2の付勢部材の付勢力によって前記第2の方向に移動して第2の係合位置に位置付けられ、前記第2の係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、前記第2の非係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る自走防止装置及び建具によれば、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る建具の縦断面図である。
図2】実施の形態に係る建具の横断面図である。
図3】自走防止装置の構成を示す斜視図である。
図4】自走防止装置の構成を示す斜視図である。
図5】係合部材の構成を示す分解斜視図である。
図6】係合部材の構成を示す分解斜視図である。
図7】係合部材の取付方法を説明する図である。
図8】受け部材の構成を示す分解斜視図である。
図9】自走防止装置の動作を説明する図である。
図10】実施の形態の変形例1を示す図である。
図11】実施の形態の変形例2を示す図である。
図12】実施の形態の変形例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0012】
〔建具の概略構成〕
図1は、本実施の形態に係る建具1の縦断面図である。図2は、本実施の形態に係る建具1の横断面図である。
なお、以下で記載する「見込み方向」は、建具1の奥行きに沿った方向(図1及び図2の矢印Arの方向)である。見込み方向に沿った平面については、見込み面と称し、見込み方向に直交する平面については、見付け面と称する場合がある。
建具1は、引違い窓で構成されている。この建具1は、枠体2と、内障子3と、外障子4と、網戸5とを備える。
【0013】
枠体2は、上枠21、下枠22、図2中、左側に位置する左縦枠23、及び図2中、右側に位置する右縦枠24を枠組みすることによって構成され、建物の開口部(図示略)の縁部に沿うように取り付けられる。
これら各枠部材21~24は、合成樹脂製またはアルミニウム等の金属製の押し出し形材であり、全長に亘って略一様な断面形状を有する。
これら各枠部材21~24のうち、上枠21における室外側の縁部には、下方に向けて突出する室外ヒレ部211が形成されている。また、下枠22における室外側の縁部には、上方に向けて突出する室外ヒレ部221が形成されている。さらに、左縦枠23における室外側の縁部には、図2中、右側に向けて突出する室外ヒレ部231が形成されている。また、右縦枠24における室外側の縁部には、図2中、左側に向けて突出する室外ヒレ部241が形成されている。これら各室外ヒレ部211,221,231,241は、見込み方向の位置が同一である。このため、これら各室外ヒレ部211,221,231,241における室外側の各見付け面は、略面一となる。
なお、各室外ヒレ部211,221,231,241のうち、下枠22に形成された室外ヒレ部221は、網戸5の移動を案内する本発明に係るレールとしての機能を有する。以下では、説明の便宜上、室外ヒレ部221をレール221と記載する。
【0014】
内障子3及び外障子4は、同様の構成を有し、枠体2に対して図2中、左右方向に移動可能にそれぞれ取り付けられている。
【0015】
網戸5は、外障子4よりも室外側に位置し、枠体2に対して図2中、左右方向に移動可能に取り付けられている。この網戸5は、框体51と、網材52とを備える。
框体51は、上框53、下框54、図2中、左側に位置する左縦框55、及び図2中、右側に位置する右縦框56を縦勝ちで框組みすることによって構成されている。そして、各框部材53~56が框組みされることにより、框体51には、室内外を連通する開口が形成される。そして、網材52は、当該開口を覆うように框体51に取り付けられる。
これら各框部材53~56は、合成樹脂製またはアルミニウム等の金属製の押し出し形材であり、全長に亘って略一様な断面形状を有する。
【0016】
上框53は、基部531と、ヒレ部532とを備える。
基部531は、上框53の長手方向に沿って延在する角筒形状を有する。以下では、基部531において、上方の見込み面を構成する壁部を見込み壁部533と記載する。
ヒレ部532は、見込み壁部533における室内側の縁部から室内側に向けて延在する第1のヒレ部534と、当該第1のヒレ部534における室内側の縁部から当該第1のヒレ部534に対して略直角に屈曲して上方に向けて延在する第2のヒレ部535とを備える。
ここで、網戸5が枠体2に対して取り付けられた状態では、第2のヒレ部535は、上枠21に形成された室外ヒレ部211に対して室内側に位置する。そして、当該室外ヒレ部211における下端部は、第2のヒレ部535と、第1のヒレ部534上に取り付けられた取付ブロック536との間に位置付けられる。これにより、網戸5の上部は、見込み方向への移動が規制される。
【0017】
下框54は、基部541と、ヒレ部542とを備える。
基部541は、下框54の長手方向に沿って延在する角筒形状を有する。以下では、基部541において、室内側の見付け面を構成する壁部を見付け壁部543と記載する。
ヒレ部542は、見付け壁部543における室内側の見付け面から室内側に向けて突出する第1のヒレ部544と、当該第1のヒレ部544における室内側の縁部から当該第1のヒレ部544に対して略直角に屈曲して下方に向けて延在する第2のヒレ部545とを備える。
ここで、網戸5が枠体2に対して取り付けられた状態では、第2のヒレ部545は、レール221に対して室内側に位置する。そして、当該レール221の上端部は、第2のヒレ部545と見付け壁部543との間に位置付けられる。
【0018】
また、見付け壁部543及びヒレ部542とで囲まれる空間には、レール221上を転動可能とする戸車57が設けられている。
ここで、網戸5は、戸車57を利用することにより、当該網戸5の高さを調整可能に構成されている。なお、戸車57を利用して網戸5の高さを調整する構造としては、公知の構造を採用することができる。
【0019】
左縦框55は、基部551と、一対のヒレ部552とを備える。
基部551は、左縦框55の長手方向に沿って延在する角筒形状を有する。以下では、基部551において、図2中、左側の見込み面を構成する壁部を見込み壁部553と記載する。
一対のヒレ部552は、見込み壁部553における図2中、左側の見込み面からそれぞれ図2中、左側に延在した部分であり、見込み方向に対向する。
【0020】
右縦框56は、左縦框55に対して図2中、左右対称となる形状を有する。すなわち、右縦框56は、基部551(見込み壁部553を含む)及び一対のヒレ部552とそれぞれ同様の基部561(見込み壁部563を含む)及び一対のヒレ部562を備える。
【0021】
以上説明した建具1において、枠体2及び網戸5には、当該枠体2に対する当該網戸5の図2中、左右方向への移動を規制する自走防止装置6が設けられている。
以下、自走防止装置6の構成について説明する。
【0022】
〔自走防止装置の構成〕
図3及び図4は、自走防止装置6の構成を示す斜視図である。なお、図3及び図4では、説明の便宜上、自走防止装置6とともに、枠体2における右縦枠24と、網戸5における右縦框56とを図示している。
自走防止装置6は、枠体2(右縦枠24)に取り付けられる係合部材7と、網戸5(右縦框56)に取り付けられる受け部材100とを備える。
【0023】
〔係合部材の構成〕
図5及び図6は、係合部材7の構成を示す分解斜視図である。
係合部材7は、右縦枠24における室外ヒレ部241に取り付けられる。この係合部材7は、係合部材本体8と、第1,第2のカバー部材9,10と、固定プレート30と、第1の付勢部材40と、2つの固定ネジSC1とを備える。
係合部材本体8は、上下対称となる形状を有する。この係合部材本体8は、ベース部81と、第1~第3の突出部82~84と、鎌部85とを備える。
【0024】
ベース部81は、各板面が室内側及び室外側にそれぞれ臨む姿勢で配置される略平板である。
このベース部81における図5中、左側の縁部の上下方向の略中央部分には、上下方向に延在する切り欠き部811が設けられている。これにより、ベース部81は、室内側から見た場合にコ字形状を有する。以下では、切り欠き部811の縁部のうち、上下方向に延在する縁部を縁部812と記載する。
このベース部81は、上下の各端部813,814が切り欠き部811を有する中央の部分815に対して室内側にオフセットした段付き形状を有する。
また、中央の部分815において、縁部812に対して図5中、右側の位置には、当該中央の部分815の表裏を貫通し、上下方向にそれぞれ延在した一対の第1の長穴816が上下方向に所定の間隔を空けてそれぞれ設けられている。
【0025】
第1~第3の突出部82~84は、縁部812に対して、上方から当該第1~第3の突出部82~84の順に設けられている。
第1,第3の突出部82,84は、縁部812からベース部81に対して略直角に屈曲して室外側に向けてそれぞれ延在した板体であり、同一の形状を有する。
【0026】
第2の突出部83は、第1~第4の延在部831~834を備える。
第1の延在部831は、縁部812からベース部81に対して略直角に屈曲して室外側に向けて延在した板体である。
第2の延在部832は、第1の延在部831における室外側の縁部から当該第1の延在部831に対して略直角に屈曲して図6中、左側に向けてベース部81と略平行に延在した板体である。
第3の延在部833は、第2の延在部832における図6中、左側の縁部から当該第2の延在部832に対して略直角に屈曲して室外側に向けて延在した板体である。
第4の延在部834は、第3の延在部833における室外側の縁部から当該第3の延在部833に対して略直角に屈曲して図6中、右側に向けてベース部81と略平行に延在した板体である。
【0027】
また、第2の突出部83には、第1,第2の開口部835,836が設けられている。
第1の開口部835は、第2,第3の延在部832,833を跨ぎ、当該第2,第3の延在部832,833の表裏を貫通して上下方向に延在した開口部である。
第2の開口部836は、第3,第4の延在部833,834を跨ぎ、当該第3,第4の延在部833,834の表裏を貫通して上下方向に延在した開口部である。以下では、第2の開口部836における縁部のうち、室内側に位置し、上下方向に延在する縁部を縁部837と記載する。
【0028】
鎌部85は、受け部材100に係合する部分である。この鎌部85は、縁部837から第3の延在部833に対して略直角に屈曲して図6中、右側に向けて延在した基部851と、当該基部851の先端から上下方向にそれぞれ張り出した一対の鎌部本体852とを有する略T字状の板体である。
そして、一対の鎌部本体852における図6中、左側の側端部は、図2中、左右方向に略直交する平坦面でそれぞれ構成され、本発明に係る第1の係合面853に相当する。また、一対の鎌部本体852における図6中、右側の側端部は、上側または下側に向かうにしたがって第3の延在部833側に傾斜した傾斜面854でそれぞれ構成されている。
【0029】
第1のカバー部材9は、ベース部81を室内側から覆う部材であり、上下対称となる形状を有する。この第1のカバー部材9は、底面部91と、第1~第3の側壁部92~94とを備える。
底面部91は、各板面が室内側及び室外側にそれぞれ臨む姿勢で配置される略平板であり、ベース部81に対して見込み方向に対向する部分である。この底面部91は、ベース部81に対応させて、上下の各端部911,912が中央の部分913に対して室内側にオフセットした段付き形状を有する。また、中央の部分913において、一対の第1の長穴816に対して見込み方向に対向する位置には、当該第1の長穴816と同一の形状を有する一対の第2の長穴914がそれぞれ設けられている。
【0030】
また、底面部91の室外側の板面において、見込み方向に沿って見た場合に切り欠き部811内に位置する領域には、室外側に向けてそれぞれ突出した一対のフック915が上下方向に所定の間隔を空けて設けられている。
さらに、底面部91の室外側の板面において、一対のフック915の間の位置には、室外側に向けて突出し、第1の付勢部材40の一端が固定される第1の固定用突起916が設けられている。
【0031】
第1の側壁部92は、側壁部本体921と、係止片922とを備える。
側壁部本体921は、底面部91における上側の縁部から室外側に向けて突出した部分である。
係止片922は、側壁部本体921における室外側の縁部から当該側壁部本体921に対して略直角に屈曲して下側に向けて底面部91と略平行に延在した部分である。ここで、係止片922における図6中、左側の領域は、室内側に向けて窪んでいる。以下では、当該図6中、左側の領域(室内側に向けて窪んだ領域)を凹部923と記載する。
【0032】
第2の側壁部93は、底面部91における下側の縁部に設けられ、第1の側壁部92と上下対称となる形状を有する。すなわち、第2の側壁部93は、側壁部本体921及び係止片922(凹部923を含む)とそれぞれ同様の側壁部本体931及び係止片932(凹部933を含む)を備える。
第3の側壁部94は、底面部91における図6中、右側の縁部から室外側に向けて突出するとともに、上下の各端部が第1,第2の側壁部92,93とそれぞれ接続する。
【0033】
以上説明した第1のカバー部材9において、底面部91における上下の各端部911,912と第1,第2の側壁部92,93の各係止片922,932との間には、図5中、右側から第3の側壁部94まで延在したスリットSL1がそれぞれ設けられる。
そして、係合部材本体8は、上下の各端部813,814が図5中、右側からスリットSL1にそれぞれ挿通されることで、第1のカバー部材9に対して取り付けられる。これにより、係合部材本体8及び第1のカバー部材9は、一体化する。
【0034】
第2のカバー部材10は、ベース部81を室外側から覆う部材であり、上下対称となる形状を有する。この第2のカバー部材10は、底面部11と、第1~第3の側壁部12~14とを備える。
底面部11は、各板面が室内側及び室外側にそれぞれ臨む姿勢で配置される略平板であり、ベース部81に対して見込み方向に対向する部分である。
この底面部11における図5中、右側の縁部の上下方向の略中央部分には、上下方向に延在する切り欠き部111が設けられている。ここで、当該切り欠き部111における上下方向の長さ寸法は、第3の延在部833における上下方向の長さ寸法よりも長く設定されている。
【0035】
また、底面部11の室内側の板面において、見込み方向に沿って見た場合に第1の開口部835内に位置する領域には、室内側に向けて突出する略円柱状の突起部112が設けられている。ここで、当該突起部112の先端には、図5中、左側に向かうにしたがって室内側に傾斜した傾斜面112aが設けられている。
さらに、底面部11の室内側の板面において、見込み方向に沿って見た場合に切り欠き部811内に位置する領域には、室内側に向けてそれぞれ突出した一対の第2の固定用突起113が上下方向に所定の間隔を空けて設けられている。
【0036】
また、底面部11の室内側の板面において、見込み方向に沿って見た場合に切り欠き部811内に位置する領域であって、一対の第2の固定用突起113を上下方向の両側から挟む位置には、一対のフック受け部114が設けられている。
フック受け部114は、底面部11の室内側の板面から室内側に向けて突出した立上り部115と、当該立上り部115の先端から当該立上り部115に対して略直角に屈曲して上側または下側に向けて延在した係止部116とを有するL字状に形成されている。
【0037】
第1の側壁部12は、底面部11における上側の縁部から室内側に向けて突出した部分である。
この第1の側壁部12における図5中、右側の領域は、基端部分に図5中、右側の端部から左側に向けて延在するスリットSL2を有し、断面略L字状に形成されている。また、第1の側壁部12において、当該図5中、右側の領域は、室外側に向けて窪んでいる。以下では、当該図5中、右側の領域(室外側に向けて窪んだ領域)を凹部121と記載する。
【0038】
第2の側壁部13は、底面部11における下側の縁部に設けられ、第1の側壁部12と上下対称となる形状を有する。すなわち、第2の側壁部13は、スリットSL2及び凹部121とそれぞれ同様のスリットSL2及び凹部131を有する。
第3の側壁部14は、底面部11における図5中、左側の縁部から室内側に向けて突出するとともに、上下の各端部が第1,第2の側壁部12,13とそれぞれ接続する。
【0039】
固定プレート30は、各板面が室内側及び室外側にそれぞれ臨む姿勢で配置される略平板であり、上下対称となる形状を有する。そして、固定プレート30は、上下の各端部が図5中、右側からスリットSL2にそれぞれ挿通されることで、第2のカバー部材10に対して取り付けられる。これにより、固定プレート30及び第2のカバー部材10は、一体化する。
【0040】
この固定プレート30には、表裏をそれぞれ貫通し、一対の固定ネジSC1がそれぞれ螺合されるネジ孔31が上下方向に所定の間隔を空けて設けられている。当該固定ネジSC1は、本発明に係る固定具に相当する。
また、固定プレート30において、一対の固定ネジSC1の間の位置には、突起部112が挿通される切り欠き部32が設けられている。
【0041】
本実施の形態では、第1の付勢部材40は、引張コイルバネで構成され、一端が第1の固定用突起916に固定され、他端が一対の第2の固定用突起113のうち下方に位置する第2の固定用突起113に固定される。そして、第1の付勢部材40は、第1のカバー部材9(係合部材本体8)を常時、下方(第1の係合位置)に向けて付勢する。
【0042】
〔係合部材の取付方法〕
図7は、係合部材7の取付方法を説明する図である。
ここで、右縦枠24における室外ヒレ部241には、表裏をそれぞれ貫通し、一対の固定ネジSC1がそれぞれ挿通される一対のネジ挿通孔242と、突起部112が挿通される貫通孔243とが設けられている(図5図6)。
【0043】
先ず、作業者は、係合部材本体8における上下の各端部813,814をスリットSL1にそれぞれ挿通することで、当該係合部材本体8及び第1のカバー部材9を一体化する。以下では、説明の便宜上、係合部材本体8及び第1のカバー部材9が一体化されたユニットを第1のユニットUT1と記載する。
また、作業者は、固定プレート30における上下の各端部をスリットSL2にそれぞれ挿通することで、当該固定プレート30及び第2のカバー部材10を一体化する。以下では、説明の便宜上、固定プレート30及び第2のカバー部材10が一体化されたユニットを第2のユニットUT2と記載する。
【0044】
次に、作業者は、第2のユニットUT2を第1のユニットUT1に対して組み付ける。
具体的に、作業者は、第1の付勢部材40を第1,第2の固定用突起916,113に固定しつつ、第2,第3の延在部832,833及び鎌部85で囲まれる空間SP1(図6)に第2のユニットUT2を位置付ける。そして、作業者は、切り欠き部111における上下方向に延在する縁部に第3の延在部833をあてがいつつ、第1のユニットUT1に対して第2のユニットUT2を押し付ける。これにより、一対のフック915は、一対のフック受け部114(係止部116)に係止される。すなわち、第1,第2のユニットUT1,UT2は、一対のフック受け部114への一対のフック915の係止により、互いに離間する方向への移動が規制される。また、第1のユニットUT1は、一対のフック915が係止部116に沿って摺動可能となっているため、第2のユニットUT2に対して当該係止部116の延在方向に沿って移動可能とする。そして、この状態では、突起部112は、第1の開口部835を介して、ベース部81及び第1,第2の延在部831,832で囲まれる空間SP2(図6)に突出する。
【0045】
次に、作業者は、互いに組み合わせた第1,第2のユニットUT1,UT2を室外ヒレ部241に対して仮固定する。
具体的に、作業者は、空間SP2に室外ヒレ部241が入り込むように、第1,第2のユニットUT1,UT2を図7中、右側に向けて押し込む。そして、空間SP2に突出した突起部112は、傾斜面112aが室外ヒレ部241における室外側の見付け面上を摺動し、最終的に貫通孔243に挿通される。すなわち、突起部112が貫通孔243に挿通されることで、第1,第2のユニットUT1,UT2は、室外ヒレ部241に対して仮固定される。当該仮固定された状態では、第2のユニットUT2は、貫通孔243に挿通された突起部112によって、室外ヒレ部241における見付け面の面内方向への移動が規制される。一方、第1のユニットUT1は、第2のユニットUT2に対して上下方向(係止部116の延在方向)に移動可能とする。また、当該仮固定された状態では、室外ヒレ部241は、凹部121,131内に位置する。
【0046】
次に、作業者は、室内側からドライバDRを利用して、一対の第1,第2の長穴816,914及び一対のネジ挿通孔242を介して、一対の固定ネジSC1を一対のネジ孔31にそれぞれ螺合する。
以上の作業により、係合部材7は、室外ヒレ部241に取り付けられる。この状態では、第1のユニットUT1は、第1の長穴816の長手方向の長さD0(図9参照)だけ、上下方向に移動可能とする。
【0047】
〔受け部材の構成〕
図8は、受け部材100の構成を示す分解斜視図である。
受け部材100は、右縦框56における見込み壁部563及び一対のヒレ部562で囲まれる空間SP3(図4)に配置される。この受け部材100は、支持部材60と、受け部材本体70及び第2の付勢部材102を有するラッチ機構101とを備える。
支持部材60は、ラッチ機構101を支持しつつ、当該ラッチ機構101を見込み壁部563に取り付ける部材であり、見込み方向に直交する平面を基準として対称となる形状を有する。この支持部材60は、対向壁部61と、一対の案内壁部62,63と、取付壁部64とを備える。
【0048】
対向壁部61は、見込み壁部563に対向して配置される平板である。
この対向壁部61において、上側の縁部には、下側に向けて切り欠かれ、網戸5の移動に応じて係合部材7の鎌部85が挿通される切り欠き部611が設けられている。
一対の案内壁部62,63は、対向壁部61における室内側及び室外側の縁部から当該対向壁部61に対して略直角に屈曲して見込み壁部563に向けて(図8中、右側に向けて)それぞれ延在し、一対のヒレ部562にそれぞれ対向する平板である。
これら一対の案内壁部62,63には、それぞれ表裏を貫通し、上下方向にそれぞれ延在する長穴621,631が設けられている。
【0049】
取付壁部64は、バネ固定部641と、受け部材取付部642とを備える。
バネ固定部641は、対向壁部61における下側の縁部から当該対向壁部61に対して略直角に屈曲して見込み壁部563に向けて延在した平板である。
受け部材取付部642は、バネ固定部641における見込み壁部563側の縁部から当該バネ固定部641に対して略直角に屈曲して下側に向けて延在した平板である。
この受け部材取付部642には、受け部材100を見込み壁部563に対して固定する固定ネジ(図示略)が挿通されるネジ挿通孔643が設けられている。
【0050】
受け部材本体70は、移動部材71と、補強部材72とを備える。
移動部材71は、見込み方向に直交する平面を基準として対称となる形状を有する。具体的に、移動部材71は、上側が開口した有底四角筒形状を有する。そして、移動部材71は、対向壁部61及び一対の案内壁部62,63で囲まれる空間SP4に配置される。
この移動部材71の外面において、上側で、かつ、対向壁部61側の角部には、上側に向かうにしたがって見込み壁部563側に傾斜した傾斜面711が設けられている。
また、移動部材71において、一対の案内壁部62,63に対向する外面には、長穴621,631にそれぞれ挿通される案内突起712がそれぞれ設けられている。そして、移動部材71は、空間SP4において、長穴621,631の縁部に案内突起712が摺接しつつ、上下方向に移動可能とする。
さらに、移動部材71において、底面には、下側に向けて突出する固定用突起713が設けられている。
【0051】
補強部材72は、移動部材71内に配置され、当該移動部材71を補強する部材であり、見込み方向に直交する平面を基準として対称となる形状を有する。この補強部材72は、第1~第3の補強壁部721~723を備える。
第1の補強壁部721は、見込み方向に直交する方向に延在した平板である。
この第1の補強壁部721において、見込み壁部563側の板面は、本発明に係る第2の係合面724に相当する。
第2,第3の補強壁部722,723は、第1の補強壁部721における室内側及び室外側の縁部から当該第1の補強壁部721に対して略直角に屈曲して見込み壁部563に向けてそれぞれ延在した平板である。
【0052】
本実施の形態では、第2の付勢部材102は、圧縮コイルバネで構成され、一端が固定用突起713に固定され、他端がバネ固定部641上に固定される。そして、第2の付勢部材102は、受け部材本体70を常時、上方(第2の係合位置)に向けて付勢する。
【0053】
〔自走防止装置の動作〕
次に、上述した自走防止装置6の動作について図9を参照しつつ説明する。
図9は、自走防止装置6の動作を説明する図である。具体的に、図9(a)及び図9(b)は、戸車57を利用することにより網戸5の高さを最も低い位置に調整した状態での自走防止装置6の動作を説明する図である。図9(c)及び図9(d)は、戸車57を利用することにより網戸5の高さを最も高い位置に調整した状態での自走防止装置6の動作を説明する図である。なお、図9では、係合部材本体8が第1の係合位置に位置し、受け部材本体70が第2の係合位置に位置した状態を図示している。
ここで、第1の係合位置とは、係合部材本体8(鎌部85)が受け部材100(受け部材本体70)に当接して下方向(本発明に係る第1の方向に相当)への移動が規制され、第1,第2の係合面853,724が網戸5の移動方向(図9(a),図9(c)中、左右方向)に対向する位置である。また、第2の係合位置とは、受け部材本体70が係合部材本体8(鎌部85)に当接して上方向(本発明に係る第2の方向に相当)への移動が規制され、第1,第2の係合面853,724が網戸5の移動方向に対向する位置である。
【0054】
網戸5(受け部材100)を右縦枠24に向けて移動(図9(a),図9(c)中、右方向に移動)させていくと、鎌部85における下方の鎌部本体852の傾斜面854と受け部材本体70における傾斜面711とが当接する。網戸5を右縦枠24に向けてさらに移動させると、当該傾斜面854,711同士が互いに摺接しつつ、係合部材本体8は、第1の付勢部材40による付勢力に抗して、上方向に移動して、第1,第2の係合面853,724が網戸5の移動方向に重なり合わない第1の非係合位置に位置付けられる。一方、受け部材本体70は、第2の付勢部材102による付勢力に抗して、下方向に移動して、第1,第2の係合面853,724が網戸5の移動方向に重なり合わない第2の非係合位置に位置付けられる。そして、網戸5を右縦枠24に向けてさらに移動させた結果、当該鎌部本体852が当該傾斜面711を乗り越えると、係合部材本体8は、第1の付勢部材40の付勢力によって、下方向に移動し、移動部材71の内部に挿通される。同様に、受け部材本体70は、第2の付勢部材102の付勢力によって、上方向に移動する。そして、係合部材本体8及び受け部材本体70は、図9(a)または図9(c)に示す第1,第2の係合位置にそれぞれ位置付けられる。これにより、網戸5(受け部材100)を左縦枠23に向けて移動(図9(a),図9(c)中、左方向に移動)させると、第2の係合面724が第1の係合面853に当接して、当該網戸5の移動が規制される。
【0055】
図9(a)または図9(c)に示した網戸5の左縦枠23に向かう移動が規制された状態を解除する場合には、ユーザは、第1の付勢部材40による付勢力に抗して、第1のカバー部材9(係合部材本体8)を上方向に手で押し上げる。これにより、係合部材本体8は、第1の非係合位置に位置付けられる。すなわち、網戸5の左縦枠23に向かう移動が規制された状態が解除される。
【0056】
本実施の形態では、係合部材本体8における上下方向に移動可能とする長さD0は、戸車57を利用して網戸5の高さを調整可能とする長さD1と、第1の係合位置で第1,第2の係合面853,724が網戸5の移動方向に重なり合う領域における上下方向の長さD2(第1,第2の係合面853,724の引っ掛かり代)とを足し合わせた長さ以上に設定されている。なお、当該長さD0としては、当該長さD1及び当該長さD2の他、想定される施工誤差分の長さを加味しても構わない。
【0057】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
図10は、図2に対応した図であって、本実施の形態の変形例1を示す図である。
上述した実施の形態では、係合部材7を右縦枠24の室外ヒレ部241に取り付け、受け部材100を右縦框56における空間SP3に配置したが、これに限らない。例えば、図10に示すように、図2に示した係合部材7の上下を反転させて当該係合部材7を左縦枠23の室外ヒレ部231に取り付け、図2に示した受け部材100を当該図2中の左右で反転させて左縦框55における見込み壁部553及び一対のヒレ部552で囲まれる空間に配置しても構わない。この場合には、網戸5は、自走防止装置6によって右縦枠24に向けた移動が規制される。
【0058】
上述した実施の形態では、係合部材7が枠体2に取り付けられ、受け部材100が網戸5に取り付けられていたが、これに限らず、逆に、係合部材7が網戸5に取り付けられ、受け部材100が枠体2に取り付けられた構成を採用しても構わない。
上述した実施の形態では、本発明に係る第1の方向を下方向とし、本発明に係る第2の方向を上方向としていたが、これに限らず、逆に、本発明に係る第1の方向を上方向とし、本発明に係る第2の方向を下方向としても構わない。
上述した実施の形態では、受け部材100は、ラッチ機構101を採用していたが、これに限らず、受け部材本体70が支持部材60に対して移動不能に固定された構成を採用しても構わない。
上述した実施の形態において、第1の付勢部材40を設けなくても構わない。
【0059】
図11及び図12は、本実施の形態の変形例2を示す図である。具体的に、図11及び図12は、本変形例2に係る係合部材本体8Aの構成を示す分解斜視図である。
上述した実施の形態に係る係合部材本体8では、ベース部81と第2の突出部83(鎌部85を含む)とが一体形成されていたが、これに限らない。例えば、図11または図12に示した本変形例2に係る係合部材本体8Aのように、ベース部81と第2の突出部83(鎌部85を含む)とを別体で構成しても構わない。なお、当該係合部材本体8Aには、上述した実施の形態で説明した第1,第3の突出部82,84が設けられていない。
【0060】
具体的に、係合部材本体8Aを構成するベース部81は、上述した実施の形態で説明したベース部81に対して、第1の取付片817が追加されている。
第1の取付片817は、縁部812の上下方向略中央部分から図11中、左側に張り出した板体である。また、第1の取付片817には、表裏をそれぞれ貫通し、一対の固着具SC2がそれぞれ挿通される第1の挿通孔818が上下方向に所定の間隔を空けて設けられている。
同様に、係合部材本体8Aを構成する第2の突出部83は、上述した実施の形態で説明した第2の突出部83に対して、第2の取付片838が追加されている。
第2の取付片838は、第1の延在部831における室内側の縁部から当該第1の延在部831に対して略直角に屈曲して図11中、左側に延在した板体である。また、第2の取付片838には、表裏をそれぞれ貫通し、一対の固着具SC2がそれぞれ挿通される第2の挿通孔839が上下方向に所定の間隔を空けて設けられている。
そして、第2の突出部83は、第1,第2の取付片817,838を見込み方向に重ね合わせた状態で各一対の第1,第2の挿通孔818,839に一対の固着具SC2をそれぞれ挿通した後、当該一対の固着具SC2の端部をそれぞれ潰すことでベース部81に対して固定(カシメ固定)される。
【0061】
本発明に係る自走防止装置は、枠体上を戸車が転動することで前記枠体に対して移動する網戸の移動を規制する自走防止装置であって、前記枠体及び前記網戸の一方に取り付けられ、前記網戸の移動方向に交差する第1の係合面を有する係合部材と、前記枠体及び前記網戸の他方に取り付けられ、前記第1の係合面に当接して前記網戸の移動を規制する第2の係合面を有する受け部材とを備え、前記係合部材は、前記第1の係合面を有し、上下方向に沿う第1の方向に移動して第1の係合位置に位置付けられ、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に移動して第1の非係合位置に位置付けられる係合部材本体を備え、前記第1の係合位置は、前記係合部材本体が前記受け部材に当接して前記第1の方向への移動が規制され、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、前記第1の非係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置であり、前記係合部材本体における上下方向に移動可能とする長さは、前記戸車を利用して前記網戸の高さを調整可能とする長さと、前記第1の係合位置で前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合う領域における上下方向の長さとを足し合わせた長さ以上に設定されていることを特徴とする。
【0062】
本発明では、係合部材本体における上下方向に移動可能とする長さは、戸車を利用して網戸の高さを調整可能とする長さと、第1の係合位置で第1,第2の係合面が網戸の移動方向に重なり合う領域における上下方向の長さ(第1,第2の係合面の引っ掛かり代)とを足し合わせた長さ以上に設定されている。このため、戸車を利用して網戸の高さが調整され、係合部材と受け部材との高さの位置関係が変更されたとしても、第1の係合位置での第1,第2の係合面の引っ掛かり代を常時、同一の長さに維持することができる。
したがって、戸車を利用して網戸の高さを調整した場合に、係合部材と受け部材との高さの位置関係を調整する作業(上述した第1の作業)をユーザに行わせる必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0063】
また、本発明は、上述した自走防止装置において、前記受け部材は、前記第2の係合面を有する受け部材本体と、前記受け部材本体を前記第2の方向に付勢する第2の付勢部材とを有するラッチ機構を備え、前記受け部材本体は、前記網戸の移動に応じて前記係合部材本体に摺接しつつ、前記第2の付勢部材による付勢力に抗して前記第1の方向に移動して第2の非係合位置に位置付けられた後、前記第2の付勢部材の付勢力によって前記第2の方向に移動して第2の係合位置に位置付けられ、前記第2の係合位置は、前記受け部材本体が前記係合部材本体に当接して前記第2の方向への移動が規制され、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、前記第2の非係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置であることを特徴とする。
本発明では、受け部材は、上述したラッチ機構を備える。このため、網戸を移動させれば、受け部材本体は、第2の非係合位置から第2の係合位置へと自動的に移動する。このため、網戸の移動を規制するための操作(上述した第2の作業)をユーザに行わせる必要がなく、利便性をさらに向上させることができる。
【0064】
ところで、受け部材における受け部材本体が第1の方向や第2の方向に移動不能に構成されている場合には、係合部材と当該受け部材とを係合させる際、比較的に強い力で網戸を移動させる必要がある。
これに対して、本発明では、係合部材における係合部材本体と受け部材における受け部材本体との双方を第1の方向や第2の方向に移動可能に構成している。このため、比較的に弱い力で網戸を移動させても、係合部材と受け部材とを係合させることができ、利便性をさらに向上させることができる。
【0065】
また、本発明は、上述した自走防止装置において、前記係合部材は、前記係合部材本体を前記第1の方向に付勢する第1の付勢部材を有することを特徴とする。
本発明では、係合部材は、上述した第1の付勢部材を有する。このため、ユーザは、係合部材本体を第2の方向に移動させることで網戸の移動が規制された状態を解除した後、当該係合部材本体が第1の付勢部材の付勢力によって自動的に元の位置に戻るため、当該係合部材本体を第1の方向に移動させなくてもよい。したがって、利便性をさらに向上させることができる。
【0066】
また、本発明は、上述した自走防止装置において、前記係合部材及び前記受け部材のうち、前記枠体に取り付けられる部材は、室内側から前記枠体に対して固定具にて取り付けられることを特徴とする。
本発明によれば、係合部材及び受け部材のうち枠体に取り付けられる部材が上述したように取り付けられるため、固定具を室外側に落としてしまうことがなく、取付作業を容易に行うことができる。このため、利便性をさらに向上させることができる。
【0067】
また、本発明は、上述した自走防止装置において、前記枠体には、貫通孔が設けられ、前記係合部材及び前記受け部材のうち、前記枠体に取り付けられる部材は、前記貫通孔に挿通される突起部を備えることを特徴とする。
本発明によれば、上述した突起部を上述した貫通孔に挿通すれば、係合部材及び受け部材のうち、枠体に取り付けられる部材を当該枠体に対して仮固定することができる。このため、利便性をさらに向上させることができる。
【0068】
また、本発明は、上述した自走防止装置において、前記係合部材は、前記枠体に取り付けられていることを特徴とする。
本発明によれば、受け部材に対して比較的に重くなる係合部材が枠体に取り付けられるため、比較的に軽量な当該受け部材を網戸に取り付けることができる。このため、網戸を軽量なものとし、当該網戸の移動を円滑に行うことができる。
【0069】
また、本発明に係る自走防止装置は、枠体上を戸車が転動することで前記枠体に対して移動する網戸の移動を規制する自走防止装置であって、前記枠体及び前記網戸の一方に取り付けられ、前記網戸の移動方向に交差する第1の係合面を有する係合部材と、前記枠体及び前記網戸の他方に取り付けられ、前記第1の係合面に当接して前記網戸の移動を規制する第2の係合面を有する受け部材とを備え、前記係合部材は、前記第1の係合面を有し、上下方向に沿う第1の方向に移動して第1の係合位置に位置付けられ、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に移動して第1の非係合位置に位置付けられる係合部材本体を備え、前記第1の係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、前記第1の非係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置であり、前記受け部材は、前記第2の係合面を有する受け部材本体と、前記受け部材本体を前記第2の方向に付勢する第2の付勢部材とを有するラッチ機構を備え、前記受け部材本体は、前記網戸の移動に応じて前記係合部材本体に摺接しつつ、前記第2の付勢部材による付勢力に抗して前記第1の方向に移動して第2の非係合位置に位置付けられた後、前記第2の付勢部材の付勢力によって前記第2の方向に移動して第2の係合位置に位置付けられ、前記第2の係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に対向する位置であり、前記第2の非係合位置は、前記第1の係合面と前記第2の係合面とが前記移動方向に重なり合わない位置であることを特徴とする。
【0070】
本発明では、受け部材は、上述したラッチ機構を備える。このため、網戸を移動させれば、受け部材本体は、第2の非係合位置から第2の係合位置へと自動的に移動する。このため、網戸の移動を規制するための操作(上述した第2の作業)をユーザに行わせる必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0071】
ところで、受け部材における受け部材本体が第1の方向や第2の方向に移動不能に構成されている場合には、係合部材と当該受け部材とを係合させる際、比較的に強い力で網戸を移動させる必要がある。
これに対して、本発明では、係合部材における係合部材本体と受け部材における受け部材本体との双方を第1の方向や第2の方向に移動可能に構成されている。このため、比較的に弱い力で網戸を移動させても、係合部材と受け部材とを係合させることができ、利便性をさらに向上させることができる。
【0072】
本発明に係る建具は、枠体と、前記枠体上を転動する戸車を有し、前記戸車の転動によって前記枠体に対して移動する網戸と、前記網戸の移動を規制する自走防止装置とを備え、前記自走防止装置は、上述した自走防止装置であることを特徴とする。
本発明に係る建具は、上述した自走防止装置を備えるため、上述した自走防止装置と同様の作用及び効果を奏する。
【符号の説明】
【0073】
1 建具、2 枠体、5 網戸、6 自走防止装置、7 係合部材、8,8A 係合部材本体、40 第1の付勢部材、57 戸車、70 受け部材本体、100 受け部材、101 ラッチ機構、102 第2の付勢部材、112 突起部、243 貫通孔、724 第2の係合面、853 第1の係合面、SC1 固定ネジ(固定具)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12