(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】スライド溝遮蔽ユニット
(51)【国際特許分類】
B60N 2/06 20060101AFI20230411BHJP
A44B 19/26 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B60N2/06
A44B19/26
(21)【出願番号】P 2019219495
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 光
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 恭平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 忠佑
(72)【発明者】
【氏名】刀根 大祐
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-069809(JP,A)
【文献】特開2008-036280(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024273(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/035125(WO,A1)
【文献】特開2019-180674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
A44B 19/00-19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(30)が移動するスライド溝(21)が形成された基体(20)と、前記スライド溝(21)を遮蔽する左右一対のファスナーチェーン(5A,5B)と、前後一対のスライダー組合せ体(6(6A,6B),7(7A,7B))とを備えており、
前記ファスナーチェーン(5A,5B)は、外側縁部(53)が前記基体(20)に固定されたファスナーテープ(51A,51B)と、前記ファスナーテープ(51A,51B)の内側縁部(52)に複数のファスナーエレメント(56)を配設して構成されたファスナーエレメント列(55A,55B)とを備えており、
前記スライダー組合せ体(6(6A,6B),7(7A,7B))は、前記一対のファスナーチェーン(5A,5B)を連結および解除するスライダー(60,70)と、前記スライダー(60,70)に取り付けられた上下案内部材(67,71)とを備えており、
前記スライダー(60,70)は、上板部(61)と、前記上板部(61)に対向した下板部(62)と、前記上板部(61)および前記下板部(62)を連結した左右案内柱部(63)とを有しており、
前記上板部(61)および前記下板部(62)間には、前記左右案内柱部(63)によって左右に分断された二つの溝部(651,652)と、前記二つの溝部(651,652)に連続した一つの溝部(650)によって、前記ファスナーエレメント(56)が通される案内溝(65)が形成されており、
前記上下案内部材(67,71)は、前記スライダー(60,70)がスライド移動する前後方向において前記左右案内柱部(63)に対して前記一つの溝部(650)側とは反対側に配置された上下案内部(64,73)を有しており、
前記上下案内部(64,73)の左右方向における幅寸法(W2)は、前記左右案内柱部(63)の左右方向における幅寸法(W1)よりも大きくされている
ことを特徴とするスライド溝遮蔽ユニット。
【請求項2】
前記上下案内部材(67)は前記左右案内柱部(63)に取り付けられており、
前記上下案内部(64)の少なくとも一部は前記二つの溝部(651,652)の溝開口(651A,652A)側から外部に突出している
ことを特徴とする請求項1に記載のスライド溝遮蔽ユニット。
【請求項3】
前記上下案内部(73)に連続し、且つ、前記スライダー(70)に取り付けられたスライダー取付部(72)を有しており、
前記上下案内部(73)は、前記スライダー(70)の前記左右案内柱部(63)に対して前後方向に対向した中央案内部(74)と、前記中央案内部(74)の下端から左右に延出した下案内部(75)とによって左右の上下案内溝(77,78)を構成しており、
前記中央案内部(74)の左右方向における幅寸法(W2)が前記左右案内柱部(63)の左右方向における幅寸法(W1)よりも大きくされている
ことを特徴とする請求項1に記載のスライド溝遮蔽ユニット。
【請求項4】
前記中央案内部(74)の左右方向における幅寸法(W2)は、前記スライダー(70)から離間するに連れて漸増している
ことを特徴とする請求項3に記載のスライド溝遮蔽ユニット。
【請求項5】
前記下案内部(75)の上面は、前記スライダー(70)から離間するに連れて上方に向かうように前後方向に対して傾斜した案内上面(751,752)として形成されている
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のスライド溝遮蔽ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、電車などの車両シートにおける座部やヘッドレスト等の移動可能な移動体のスライド移動を案内するスライド溝を遮蔽するスライド溝遮蔽ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車シートを前後方向に移動案内するスライドレール装置(移動案内装置)が知られている(特許文献1参照)。このスライドレール装置は、案内溝(スライド溝)が形成されたロワレール(Lower rail(基体))と、案内溝に沿って前後方向にスライド移動可能に配置されたアッパーレール(Upper rail(移動体))と、案内溝の開口部を挟んでロワレールに装着された左右のサイドカバーと、左右のサイドカバーに保持されたスライドファスナーとを備えている。スライドファスナーは、ファスナーエレメント列が内側縁部に構成された左右のファスナーテープと、左右のファスナーエレメント列を連結する一対のスライダーとを備えており、一対のスライダーはアッパーレールの前後の端部にそれぞれ取り付けられている。左右のサイドカバーは、ファスナーテープをロワレールの幅方向に沿って左右に開閉移動可能に保持している。
【0003】
このように構成されたスライドレール装置では、アッパーレールのスライド移動により、スライド移動方向における前方側のスライダーが左右のファスナーエレメント列の連結を解除し、且つ、スライド移動方向における後方側のスライダーが左右のファスナーエレメント列を連結する。このため、ロワレールの案内溝は、アッパーレールが移動しても左右のファスナーテープによって遮蔽された状態が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のスライドレール装置では、左右のファスナーエレメント列はアッパーレールのスライド移動において左右に離間移動して開き、左右のファスナーエレメント列間にアッパーレールが位置する。このとき、左右のファスナーエレメント列は左右に湾曲されるので、ファスナーテープの内側縁部にある個々のファスナーエレメント(務歯)同士の間隔は狭まった状態となる。この状態のままファスナーエレメントにジュース等の汚れが付着し固化すると、隣り合うファスナーエレメント同士が固着してしまい、移動体であるアッパーレールを円滑にスライド移動させることが困難となるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、移動体を円滑にスライド移動できるスライド溝遮蔽ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスライド溝遮蔽ユニットは、移動体が移動するスライド溝が形成された基体と、前記スライド溝を遮蔽する左右一対のファスナーチェーンと、前後一対のスライダー組合せ体とを備えており、前記ファスナーチェーンは、外側縁部が前記基体に固定されたファスナーテープと、前記ファスナーテープの内側縁部に複数のファスナーエレメントを配設して構成されたファスナーエレメント列とを備えており、前記スライダー組合せ体は、前記一対のファスナーチェーンを連結および解除するスライダーと、前記スライダーに取り付けられた上下案内部材とを備えており、前記スライダーは、上板部と、前記上板部に対向した下板部と、前記上板部および前記下板部を連結した左右案内柱部とを有しており、前記上板部および前記下板部間には、前記左右案内柱部によって左右に分断された二つの溝部と、前記二つの溝部に連続した一つの溝部によって、前記ファスナーエレメントが通される案内溝が形成されており、前記上下案内部材は、前記スライダーがスライド移動する前後方向において前記左右案内柱部に対して前記一つの溝部側とは反対側に配置された上下案内部を有しており、前記上下案内部の左右方向における幅寸法は、前記左右案内柱部の左右方向における幅寸法よりも大きくされている。
本発明のスライド溝遮蔽ユニットによれば、左右案内柱部によって連結が解除されて左右に分離された左右のファスナーエレメントを、上下案内部によって更に左右に押し拡げることができ、これにより、外側縁部が基体に固定されたファスナーテープに左右方向の撓み変形だけでなく上下方向における一方への撓み変形を生じさせ、ファスナーテープの内側縁部が長手方向に伸ばされるように湾曲変形させることで複数のファスナーエレメント同士の間隔を拡げることができる。このため、ファスナーエレメントにジュース等の汚れが付着して固化しても、隣り合うファスナーエレメント同士が固着することを抑制でき、移動体を円滑にスライド移動させることができる。
【0008】
本発明のスライド溝遮蔽ユニットでは、前記上下案内部材は前記左右案内柱部に取り付けられており、前記上下案内部の少なくとも一部は前記二つの溝部の溝開口側から外部に突出していてもよい。
このような構成によれば、上下案内部の少なくとも一部が前述したように突出しているので、上下案内部によって上下方向における一方に案内される左右のファスナーチェーンがスライダーの上板部および下板部によって拘束されることなく上下方向における一方に捻じれつつ撓み変形を生じさせることができる。
【0009】
本発明のスライド溝遮蔽ユニットでは、前記上下案内部に連続し、且つ、前記スライダーに取り付けられたスライダー取付部を有しており、前記上下案内部は、前記スライダーの前記左右案内柱部に対して前後方向に対向した中央案内部と、前記中央案内部の下端から左右に延出した下案内部とによって左右の上下案内溝を構成しており、前記中央案内部の左右方向における幅寸法が前記左右案内柱部の左右方向における幅寸法よりも大きくされていてもよい。
このような構成によれば、左右案内柱部によって連結が解除されて左右に分離された左右のファスナーエレメントを、上下案内部の中央案内部によって更に左右に押し拡げることができ、これにより、ファスナーテープに左右方向の撓み変形だけでなく上下方向における一方への撓み変形を生じさせ、ファスナーテープの内側縁部が長手方向に伸ばされるように湾曲変形させることで複数のファスナーエレメント同士の間隔を拡げることができる。このため、ファスナーエレメントにジュース等の汚れが付着して固化しても、隣り合うファスナーエレメント同士が固着することを抑制でき、移動体を円滑にスライド移動させることができる。
【0010】
本発明のスライド溝遮蔽ユニットでは、前記中央案内部の左右方向における幅寸法は、前記スライダーから離間するに連れて漸増していてもよい。
このような構成によれば、スライダー側から上下案内部材側に送られるファスナーエレメントを左右の上下案内溝に円滑に送り込むことができ、また、上下案内溝を移動するファスナーエレメントを中央案内部によって徐々に左右に押し拡げることができる。
【0011】
本発明のスライド溝遮蔽ユニットでは、前記下案内部の上面は、前記スライダーから離間するに連れて上方に向かうように前後方向に対して傾斜した案内上面として形成されていてもよい。
このような構成によれば、上下案内溝を移動するファスナーエレメントを案内上面によって上方に案内でき、このため、ファスナーエレメントが複数配設されたファスナーテープの内側縁部を上方に容易に立ち上がらせることができて、複数のファスナーエレメント同士の間隔を拡げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体を円滑にスライド移動できるスライド溝遮蔽ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るスライド溝遮蔽ユニットを示す斜視図。
【
図4】
図1に示すスライド溝遮蔽ユニットの要部を示す説明図。
【
図5】
図1に示すスライド溝遮蔽ユニットの要部を示す説明図。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るスライド溝遮蔽ユニットを示す斜視図。
【
図10】本発明の参考例としてのスライド溝遮蔽ユニットを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、第1実施形態に係るスライド溝遮蔽ユニット10は、基体としてのロワレール20に形成されたスライド溝21(案内溝)に沿って移動体としてのアッパーレール30が移動する移動案内装置としてのスライドレール装置1に設置されている。ここで、スライドレール装置1は、図示しないが、自動車シート(座席)を前後方向にスライド移動するものであり、自動車シートは、座部を形成するシートクッションと、背もたれ部を形成するシートバッグと、搭乗者の頭部を支えるヘッドレストとによって構成されている。
以下の説明において、スライドレール装置1の前後方向(スライド移動方向)をX軸方向とし、スライドレール装置1の左右方向(幅方向)をY軸方向とし、スライドレール装置1の上下方向(高さ方向)をZ軸方向とする。また、スライド溝遮蔽ユニット10については、説明の便宜上、スライドレール装置1に対する設置状態を基準とし、スライド溝遮蔽ユニット10の前後方向(長さ方向)をX軸方向とし、スライド溝遮蔽ユニット10の左右方向(幅方向)をY軸方向とし、スライド溝遮蔽ユニット10の上下方向(高さ方向)をZ軸方向とする。
【0015】
ロワレール20は、X軸方向に延びて形成されている。X軸方向に沿ったスライド溝21は、ロワレール20の上面で開口した開口部22と、ロワレール20の内部に形成されて開口部22に連続した幅広の溝部23とを有している。
【0016】
アッパーレール30は、自動車シートのシートクッションが取り付けられる取付本体部31と、ロワレール20の溝部23にX軸方向にスライド移動可能に配置されたレール部32とを有しており、レール部32は、取付本体部31から下方に延出した柱部321と、柱部321の下端に連続して溝部23にスライド移動可能に嵌合した嵌合部(図示省略)とを有している。
【0017】
スライド溝遮蔽ユニット10は、前述したロワレール20と、スライド溝21を遮蔽するX軸方向に沿った左右一対のファスナーチェーン5A,5Bと、前後一対のスライダー組合せ体6(6A,6B)とを備えている。ファスナーチェーン5A,5Bは、ファスナーテープ51A,51Bと、ファスナーテープ51A,51BのX軸方向に沿った内側縁部52にそれぞれ構成されたファスナーエレメント列55A,55Bとを有している。本実施形態では、ファスナーテープ51A,51Bは樹脂製の糸が編み込まれた網組織によってX軸方向に沿ってテープ状に形成されているが、これ以外の各種のテープによって構成されていてもよい。ファスナーエレメント列55A,55Bは、ファスナーテープ51A、51Bの内側縁部52に射出成形されてX軸方向に複数配列されたファスナーエレメント56(務歯)によって形成されている。複数のファスナーエレメント56はX軸方向に所定の間隔Cを隔ててそれぞれ配置されている。なお、本実施形態では、射出成形されたファスナーエレメント56としたが、これに限られず、例えばX軸方向にコイル状に連続したコイルエレメントなどの各種のエレメントであってもよい。
【0018】
スライダー組合せ体6は、ファスナーチェーン5A,5Bを連結および解除するX軸方向におけるスライダー60と、スライダー60に取り付けられた上下案内部材67とを備えている。
【0019】
スライダー60は、
図2および
図3に示すように、上板部61と、上板部61に対してZ軸方向に対向した下板部62と、上板部61および下板部62を連結した左右案内柱部63とを有している。なお、上板部61の上面には引手等を連結可能な柱部612が形成されているが省略してもよい。
【0020】
上板部61および下板部62間の間隔寸法はZ軸方向においてファスナーエレメント56の厚さ寸法(Z軸方向の寸法)とほぼ同じ寸法または若干大きい寸法とされている。上板部61および下板部62の間には、
図4および
図5に示すようにファスナーエレメント列55A,55Bが挿通される案内溝65が形成されている。案内溝65のうちX軸方向における一方側の部分は左右案内柱部63によって左右二つの溝部651,652に分断されており、案内溝65のうちX軸方向における他方側の部分は左右二つの溝部651,652に連続した一つの溝部650とされており、これにより、案内溝65は略Y字形状に形成されている。
【0021】
上板部61および下板部62の左右の側縁部には、Z軸方向において互いに接近した側壁部611,621がそれぞれ形成されており、側壁部611,621間にはファスナーテープ51A,51Bがそれぞれ挿通されるスリット66が形成されている。側壁部611,621は、溝部650の左右側縁側に配置されており、溝部650を通る左右のファスナーエレメント56に当接し、これらを互いに接近させて噛合させる構成とされている。
【0022】
左右案内柱部63は、スライダー60のスライド移動によって溝部650にある噛合状態の左右のファスナーエレメント56が当該左右案内柱部63に当たることで、左右のファスナーエレメント56同士の噛合を解除する構成とされており、そのY軸方向における幅寸法W1(
図4参照)は前記噛合を解除できるようにファスナーエレメント56同士を左右に離間できる程度の寸法とされている。
【0023】
上下案内部材67は、左右案内柱部63のうちX軸方向における一方側(溝部651,652の溝開口651A,652A側)の部分に取り付けられており、上板部61から下板部62までZ軸方向に延びている。上下案内部材67は、周面641が円弧状に形成された上下案内部64と、左右案内柱部63の前記部分が配置される取付溝部68とを有している。上下案内部64の一部は、上板部61および下板部62のY軸方向における中央部分よりもX軸方向における一方側(X軸方向において左右案内柱部63に対して溝部650とは反対側)に突出している。この上下案内部64のY軸方向における幅寸法W2は、外側縁部53がロワレール20に固定されたファスナーテープ51A,51BにZ軸方向の撓み変形が生じる程度にファスナーエレメント56を左右に押し拡げる幅寸法とされており、前記幅寸法W1よりも大きい。
図5に示すように、左右のファスナーテープ51A,51Bの外側縁部53がロワレール20に固定される部分の間のY軸方向における間隔寸法W3と幅寸法W2との寸法関係は、本実施形態では「W2/W3≧15%」とされている。なお、上下案内部64の左右案内柱部63に対する左右一方側の幅寸法差と左右他方側の幅寸法差は同じである。
【0024】
前述したスライド溝遮蔽ユニット10は、次のようにスライドレール装置1に設置される。
左右のファスナーテープ51A,51Bは、スライド溝21を上方から覆って配置されてロワレール20に固定される。ここで、ファスナーテープ51A,51Bは、それぞれのX軸方向に沿った外側縁部53に図示しない左右のサイドカバー(サイド部材)が固着され、左右のサイドカバーがロワレール20に取り付けられることによって当該ロワレール20に固定されてもよく、また、外側縁部53がロワレール20に対して直接に接着されてもよい。なお、本実施形態では、ファスナーテープ51A,51Bの外側縁部53はロワレール20に対してY軸方向に不動に固定されている。このため、左右のファスナーテープ51A,51Bは、上下案内部材67の上下案内部64によって幅寸法W2分が左右に分離されると上下一方(本実施形態では上方)に捻じれつつ撓み変形する。
X軸方向における前後のスライダー組合せ体6A,6Bは、アッパーレール30の取付本体部31における前後の端部に取り付けられている。左右のファスナーエレメント列55A,55BはX軸方向における前後のスライダー60によって連結されており、前後のスライダー60間だけは前記連結が解除されて開口されている。この開口にはアッパーレール30の柱部321が貫通している。ファスナーチェーン5A,5Bは、前記開口部分において上向きに撓み変形されて設置されている。このため、スライダー組合せ体6がスライド移動すると、ファスナーチェーン5A,5Bは上下案内部材67によって上方に案内されるようになっている。
このようにスライド溝遮蔽ユニット10は、設置される。
【0025】
次に、第1実施形態に係るスライド溝遮蔽ユニット10の動作について説明する。
まず、自動車シートがX軸方向に移動操作されることで、アッパーレール30がスライド溝21に沿ってX軸方向にスライド移動する。このとき、スライド移動の前方側に位置するスライダー組合せ体6(ここでは、説明の便宜上、スライダー組合せ体6Aとする)がX軸方向に前進移動することで、噛合状態にある左右のファスナーエレメント56がスライダー60の溝部650から溝部651,652に移動されながら左右案内柱部63によって連結解除され、左右に分離される。一方、スライド移動の後方側に位置するスライダー組合せ体6(ここでは説明の便宜上スライダー組合せ体6Bとする)がX軸方向に前進移動することで、分離状態にある左右のファスナーエレメント56がスライダー60の溝部651,652を通って溝部650に移動されながら左右の側壁部611,621によって互いに接近されて連結し、噛合状態となる。噛合状態となった後はスライダー60の溝部650から抜け出てスライド溝21を遮蔽した状態となる。
【0026】
前述したようにスライダー組合せ体6がX軸方向にスライド移動すると、左右のファスナーチェーン5A,5Bはスライダー組合せ体6によって次のように案内される。
まず、スライダー組合せ体6がX軸方向における一方側に移動し、噛合状態のファスナーエレメント列55A,55Bが溝部650に入り、溝部651,652に送られる際には幅寸法W1を有する左右案内柱部63によって噛合解除されて左右に分離される。スライダー組合せ体6が更にX軸方向における一方側に移動すると、左右のファスナーエレメント56が、上下案内部材67の上下案内部64の周面641に当接して左右に更に押し拡げられながら離間する。このように左右のファスナーエレメント56が左右に幅寸法W2分を大きく離間すると、外側縁部53がロワレール20に固定された左右のファスナーテープ51A,51Bが大きく撓められる。そして、左右のファスナーテープ51A,51Bが溝開口651A,652Aから出た部分は、上板部61および下板部62がないのでこれらに拘束されることなく上下に向かう撓み変形が可能となる。ここで、第1実施形態では、左右のファスナーチェーン5A,5Bのうちアッパーレール30が貫通した開口部分において上向きに撓んで設置されているので、左右のファスナーテープ51A,51Bが溝開口651A,652Aから出た部分は下方ではなく上方に向かって捻じれつつ撓み変形する。これにより、左右のファスナーテープ51A,51Bの内側縁部52は上方に向かって撓み変形し、その長手方向に伸ばされるように上方に向かって凸曲状に湾曲変形する。このため、例えば左右のファスナーチェーン5A,5Bが左右に離間して開かれる場合には、左右のファスナーテープ51A,51Bの内側縁部52がその長手方向に縮むように湾曲変形して複数のファスナーエレメント56間の間隔が狭められる場合と比べて、内側縁部52が湾曲変形しながら伸ばされて複数のファスナーエレメント56間の間隔Cが拡げられるので、ファスナーエレメント56にジュース等が付着し乾燥しても、隣り合うファスナーエレメント56同士が固着することを抑制でき、アッパーレール30を円滑にスライド移動させることができる。
【0027】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図6において、第2実施形態に係るスライド溝遮蔽ユニット10Bは、第1実施形態に係るスライド溝遮蔽ユニット10と比べて、スライダー組合せ体6(6A,6B)ではなくスライダー組合せ体7(7A,7B)を備える構成が相違し、そのほかの構成は共通する。
【0028】
スライダー組合せ体7(7A,7B)は、
図7および
図8に示すように、スライダー70と、上下案内部材71とを備えている。スライダー70は、前述したスライダー60と同様に構成されているので、スライダー70の各構成については、スライダー60の各構成と同符号を図面に付して詳細な説明を省略する。
【0029】
上下案内部材71は、スライダー70に取り付けられる略ブロック状のスライダー取付部72と、スライダー70の左右案内柱部63に対してX軸方向に対向して配置される上下案内部73とを有している。
【0030】
スライダー取付部72は、その下面側に配置されるスライダー70取り付けられている。例えば、スライダー取付部72は、スライダー70の柱部612に係合する係合突起などを備え、この係合突起の係合によってスライダー70に取付けられてもよく、接着剤によってスライダー70に取付けられていてもよく、ボルトやピンによってスライダー70に取付けられてもよく、各種の取付形態を適用可能である。スライダー取付部72は、スライダー70のX軸方向における寸法よりも大きい寸法とされており、スライダー70のX軸方向における一方側(左右案内柱部63がある側)に突出している。なお、スライダー取付部72には、上板部61の柱部612が挿入される孔721が形成されているが、柱部612がない場合には孔721の構成を省略してもよい。
【0031】
上下案内部73は、
図7から
図9に示すように、スライダー取付部72のうちスライダー70に対してX軸方向における一方側に突出した部分に連続した中央案内部74と、中央案内部74の下端から左右に延出した下案内部75とを有している。また、スライダー取付部72の下面のうち前記下案内部75に対してZ軸方向に対向する部分は、スライダー70からX軸方向における一方側に向かうに連れて(スライダー70からX軸方向に離れるに連れて)上方に向かうようにX軸方向に対して斜め上に傾斜した左右の傾斜面761,762とされている。
【0032】
中央案内部74はX軸方向に沿った左右の案内側面741,742を有しており、案内側面741,742間のY軸方向における幅寸法W2は、ファスナーテープ51A,51BにZ軸方向の撓み変形が生じる程度にファスナーエレメント56を左右に押し拡げる幅寸法とされており、スライダー70の左右案内柱部63における幅寸法W1よりも大きい。また、幅寸法W2はスライダー70からX軸方向に離れるに連れて漸増しており、このため、スライダー70側から上下案内部材71側に送られるファスナーエレメント56を左右の上下案内溝77,78に円滑に送り込むことができ、また、上下案内溝77,78を移動するファスナーエレメント56を中央案内部74によって徐々に左右に押し拡げることができる。
【0033】
下案内部75は中央案内部74の下部からY軸方向において左右に突出して形成されている。下案内部75の左右の上面は、スライダー70からX軸方向における一方側に向かうに連れて(スライダー70からX軸方向に離れるに連れて)上方に向かうようにX軸方向に対して斜め上に傾斜した左右の案内上面751,752として形成されている。このため、上下案内溝77,78を移動するファスナーエレメント56を案内上面751,752によって上方に案内でき、このため、ファスナーエレメント56が複数配設されたファスナーテープ51A,51Bの内側縁部52を上方に容易に立ち上がらせることができて、複数のファスナーエレメント56同士の間隔Cを拡げることができる。
【0034】
傾斜面761,762は、案内上面751,752とZ軸方向に対向して配置されており、案内上面751,752と同じ傾斜角度とされている。傾斜面761および案内上面751間の間隔寸法と傾斜面762および案内上面752間の間隔寸法とは、ファスナーエレメント56の厚さ寸法(Z軸方向の寸法)とほぼ同じ寸法または若干大きい寸法とされている。
【0035】
このように構成された上下案内部材71では、案内側面741、案内上面751および傾斜面761が連続した上下案内溝77と、案内側面742、案内上面752および傾斜面762が連続した上下案内溝78とが形成されている。
図9において右側に位置する上下案内溝77にはファスナーエレメント列55Aのファスナーエレメント56が通される。
図9において左側に位置する上下案内溝78にはファスナーエレメント列55Bのファスナーエレメント56が通される。
【0036】
スライダー組合せ体7がX軸方向に前進移動すると、左右のファスナーチェーン5A,5Bはスライダー組合せ体7によって次のように案内される。
まず、スライダー組合せ体7がX軸方向における一方側に移動し、噛合状態のファスナーエレメント列55A,55Bがスライダー70の溝部650に入り、溝部651,652に送られる際には幅寸法W1を有する左右案内柱部63によって噛合解除されて左右に分離される。スライダー組合せ体7が更にX軸方向における一方側に移動すると、左右のファスナーエレメント56が溝部651,652から出て上下案内部73の上下案内溝77,78に入る。
【0037】
上下案内溝77では、ファスナーエレメント56が案内側面741に当接して中央案内部74からY軸方向に離れる側(
図9において右側)に案内されると共に、案内上面751に当接して斜め上に案内される。傾斜面761は、案内上面751と同様に傾斜しているので、案内上面751に斜め上に案内されるファスナーエレメント56との干渉が抑えられている。このようにファスナーエレメント56が上下案内溝77に案内されることによって撓められ、右側のファスナーテープ51Aは右側に湾曲されつつ、その内側縁部52が上方に立ち上げられる。これにより、内側縁部52は
図6に示すようにその長手方向に伸ばされるように上方に向かって凸曲状に撓み、内側縁部52に取り付けられた複数のファスナーエレメント56同士の間隔Cは拡げられる。
【0038】
一方、上下案内溝78では、ファスナーエレメント56が案内側面742に当接して中央案内部74からY軸方向に離れる側(
図9において左側)に案内されると共に、案内上面752に当接して斜め上に案内される。傾斜面762は、案内上面752と同様に傾斜しているので、案内上面752に斜め上に案内されるファスナーエレメント56との干渉が抑えられている。このようにファスナーエレメント56が上下案内溝78に案内されることによって撓められ、左側のファスナーテープ51Bは左側に湾曲されつつ、その内側縁部52が上方に立ち上げられる。これにより、内側縁部52は
図6に示すようにその長手方向に伸ばされるように上方に向かって凸曲状に撓み、内側縁部52に取り付けられた複数のファスナーエレメント56同士の間隔Cは拡げられる。
【0039】
このように左右のファスナーチェーン5A,5Bが左右に離間して開かれる場合には、左右のファスナーテープ51A,51Bの内側縁部52が湾曲変形しながら伸ばされて複数のファスナーエレメント56間の間隔Cが拡げられるので、ファスナーエレメント56にジュース等が付着し乾燥しても、隣り合うファスナーエレメント56同士が固着することを抑制でき、アッパーレール30を円滑にスライド移動させることができる。
なお、上下案内部材71に案内上面751,752や傾斜面761,762がなくても、中央案内部74が幅寸法W2を有するので、スライダー組合せ体7のスライド移動において左右のファスナーチェーン5A,5Bを左右に大きく離間させることで上下の撓み変形を生じさせることができ、左右のファスナーチェーン5A,5Bのうちアッパーレール30が貫通した開口部分が上方に撓んで設置されている場合には左右のファスナーチェーン5A,5Bを上方に撓み変形させられる。
【0040】
また、スライダー組合せ体7がX軸方向に後退移動すると、左右のファスナーチェーン5A,5Bのファスナーエレメント56は、上下案内溝77,78を通った後にスライダー70の溝部651,652に入り、続いて溝部650に送り込まれながら噛合する。
【0041】
第1、第2実施形態によれば、前述したように上下案内部材67,71によって左右のファスナーチェーン5A,5Bを上方に案内することで、複数のファスナーエレメント56同士の間隔Cを拡げることができ、ファスナーエレメント56にジュース等の汚れが付着して固化しても、隣り合うファスナーエレメント56同士が固着することを抑制できて、移動体としてのアッパーレール30を円滑にスライド移動させることができる。
【0042】
[変形例]
第1、第2実施形態では、スライダー組合せ体6,7は、ファスナーエレメント56をZ軸方向において上方に案内する構成とされているが、これに限らず、例えば左右のファスナーチェーン5A,5Bのうちアッパーレール30が貫通した開口部分を下向きに撓ませて設置することで、スライダー組合せ体6,7によって左右のファスナーチェーン5A,5Bを下方に案内して下向きに撓み変形させる構成とされていてもよい。このとき、スライダー組合せ体6の上下設置向きは変更しなくてよいが、スライダー組合せ体7の上下設置向きは逆向きとされる。
【0043】
第1実施形態では、上下案内部64の周面641は円弧状に形成されることで、ファスナーエレメント56に削られるおそれのあるエッジをなくしているが、これに限らず、周面641が十分な摩耗耐性を有していれば直線状等に形成してもよい。
【0044】
第2実施形態では、上下案内部材71の中央案内部74の幅寸法W2はスライダー70からX軸方向に離間するに連れて漸増しているが、漸増せずに一定であってもよい。
【0045】
第2実施形態では、下案内部75の案内上面751,752はスライダー70からX軸方向に離間するに連れてX軸方向に対して上方に傾斜しているが、これに限らず、X軸方向と平行に沿っていてもよい。
【0046】
第1、第2実施形態では、スライド溝遮蔽ユニット10,10Bが自動車シートをスライド移動するスライドレール装置1に設けられているが、このほか、例えば座席のヘッドレスト(枕)のスライド移動を案内するスライド溝を遮蔽するユニットとして設けてもよく、このように各種の移動体の移動を案内するスライド溝を遮蔽するユニットとして用いることができる。
【0047】
[参考例]
左右のファスナーテープ51A,51Bの内側縁部52をZ軸方向における一方側に案内して複数のファスナーエレメント56同士の間隔Cを拡げるものの参考例としては、例えば
図10に示すスライド溝遮蔽ユニット10Dが挙げられる。スライド溝遮蔽ユニット10Dは、スライド溝遮蔽ユニット10と比べて、上下案内部材67を有していないスライダー9(9A,9B)を採用しており、前後一対のスライダー9A,9Bに前記幅寸法W2以上の寸法を有する上下案内部材11が設置されている。スライダー9は、スライダー60と比べて、上下案内部64を有していない点を除いて同様に構成されている。上下案内部材11は
図10では円柱状に形成されているが、これに限られずに種々の形状で形成可能である。スライド溝遮蔽ユニット10Dでは、左右のファスナーチェーン5A,5Bはスライダー9A,9B間において上下案内部材11によって左右に大きく拡げられ、ファスナーテープ51A,51Bは左右に湾曲変形しながら内側縁部52が上方に立ち上げられ、これにより、複数のファスナーエレメント56同士の間隔Cが拡げられる。
【符号の説明】
【0048】
1…スライドレール装置、10,10B,10D…スライド溝遮蔽ユニット、11,67,71…上下案内部材、20…ロワレール(基体)、21…スライド溝、22…開口部、23,650~652…溝部、30…アッパーレール(移動体)、31…取付本体部、32…レール部、321,612…柱部、51A,51B…ファスナーテープ、52…内側縁部、53…外側縁部、55A,55B…ファスナーエレメント列、56…ファスナーエレメント、5A,5B…ファスナーチェーン、6(6A,6B),7(7A,7B)…スライダー組合せ体、60,70,9(9A,9B)…スライダー、61…上板部、611,621…側壁部、62…下板部、63…左右案内柱部、64,73…上下案内部、641…周面、65…案内溝、651A,652A…溝開口、66…スリット、72…スライダー取付部、721…孔、74…中央案内部、741,742…案内側面、75…下案内部、751,752,…案内上面、761,762…傾斜面、77,78…上下案内溝、W1,W2…幅寸法。