(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】無鉛ガソリン用のアルコールおよびエーテル燃料添加剤
(51)【国際特許分類】
C10L 1/185 20060101AFI20230411BHJP
C10L 1/182 20060101ALI20230411BHJP
C10L 1/16 20060101ALI20230411BHJP
C10L 1/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C10L1/185
C10L1/182
C10L1/16
C10L1/06
(21)【出願番号】P 2019544872
(86)(22)【出願日】2018-02-24
(86)【国際出願番号】 IB2018051167
(87)【国際公開番号】W WO2018154524
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-22
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リアル ギレルモ
(72)【発明者】
【氏名】シャイク カリームディン エム
(72)【発明者】
【氏名】アンサリ ムハンメド ビスミラー
(72)【発明者】
【氏名】バビケル ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】パウル ソマク
(72)【発明者】
【氏名】グンダ カマラカル
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-179603(JP,A)
【文献】特表2014-532705(JP,A)
【文献】特表2017-508725(JP,A)
【文献】特表昭62-502263(JP,A)
【文献】米国特許第05723687(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/185
C10L 1/182
C10L 1/16
C10L 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、およびC4二量体を含むオクタン価向上組成物であって、
前記混合ブタノール組成物がsec-ブタノールおよびtert-ブタノールを含み、
前記C4二量体がジイソブチレンを含
み、
前記メタノールは0.70~2体積パーセントの量で存在し、
前記メチルtert-ブチルエーテルは、65~95体積パーセントの量で存在し、
前記混合ブタノール組成物は、2~35体積パーセントの量で存在し、
前記sec-ブチルエーテルは、0.3~5体積パーセントの範囲で存在することを特徴とするオクタン価向上組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のオクタン価向上組成物であって、前記混合ブタノール組成物が、n-ブタノール、
またはイソブタノール、またはそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする、オクタン価向上組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオクタン価向上組成物であって、メタノールが、
0.70体積パーセント~
0.90体積パーセントの量で存在し;
メチルtert-ブチルエーテルが、
68~
95体積パーセントの量で存在し;
前記混合ブタノール組成物が、
3~
29体積パーセントの量で存在し;あるいは、
sec-ブチルエーテルが、
0.4~
4体積パーセントの範囲で存在する
ことを特徴とするオクタン価向上組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項以上に記載のオクタン価向上組成物であって、前記C4二量体が、0.1~3体積パーセントの範囲で存在することを特徴とする、オクタン価向上組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項以上に記載のオクタン価向上組成物であって、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、tert-アミルアルコール、または前述の少なくとも1つを含む組み合わせをさらに含むことを特徴とする、オクタン価向上組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項以上に記載のオクタン価向上組成物であって、エチルtert-ブチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル、tert-アミルエチルエーテル、tert-ヘキシルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、または前述の少なくとも1つを含む組み合わせをさらに含むことを特徴とする、オクタン価向上組成物。
【請求項7】
ベースガソリン、および請求項1から6のいずれか1項以上に記載のオクタン価向上組成物を含むことを特徴とする、ガソリン組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のガソリン組成物であって、6.0~8.0ポンド毎平方インチのReid蒸気圧;または、前記ベースガソリンのリサーチ法オクタン価より高いリサーチ法オクタン価および前記ベースガソリンのモーター法オクタン価より高いMONを有することを特徴とする、ガソリン組成物。
【請求項9】
請求項7から8のいずれか1項以上に記載のガソリン組成物であって、88~110のリサーチ法オクタン価および82~105のモーター法オクタン価を有することを特徴とする、ガソリン組成物。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項以上に記載のガソリン組成物であって、前記混合ブタノール組成物およびメタノールが、前記ガソリン組成物の0.5~10体積パーセントの合計量で存在することを特徴とする、ガソリン組成物。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項以上に記載のガソリン組成物であって、前記sec-ブチルエーテルおよび前記メチルtert-ブチルエーテルが、前記ガソリン組成物の0.02~30体積パーセントの合計量で存在することを特徴とする、ガソリン組成物。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか1項以上に記載のガソリン組成物であって、前記C4二量体が、前記ガソリン組成物の0.01~3体積パーセントで存在することを特徴とする、ガソリン組成物。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか1項以上に記載のガソリン組成物であって、前記ベースガソリンが、60~97体積パーセントで存在することを特徴とする、ガソリン組成物。
【請求項14】
ガソリン組成物を調製する方法であって、ベースガソリン、および請求項1から6のいずれか1項以上に記載のオクタン価向上組成物の成分を混ぜ合わせて、ガソリン組成物を形成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記オクタン価向上組成物が、前記ガソリン組成物中に3体積パーセント~40体積パーセントの量で存在することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ガソリン用燃料添加剤、該添加剤を含むガソリン、および該ガソリンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用の燃料である市販ガソリンは、通常、炭化水素(ベースガソリン)、添加剤およびブレンド剤の混合物である、精製した石油生成物である。添加剤およびブレンド剤、例えばオクタン価向上剤は、ガソリンの性能および安定性を高めるためにベースガソリンに添加される。
【0003】
高度に圧縮する内燃機関において使用される場合、ガソリンは「ノッキング」する傾向がある。空気/燃料混合物の1個以上のポケットが正常燃焼前線のエンベロープの外側で先に発火するために、シリンダ中の空気/燃料混合物の燃焼が点火に応答して正確に始まらない場合に、ノッキングが起こる。アンチノック剤は、オクタン価向上剤としても知られ、エンジンのノッキング現象を低減し、ガソリンのオクタン価を上げる。四エチル鉛およびメチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル(MMT)などの先行オクタン価向上剤は、環境上、健康または他の理由のために段階的になくなったか、またはなくなりつつある。
【0004】
オクタン価向上剤を配合するための使用において存在する好ましい化合物には、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)ならびにn-ブタノールおよびその異性体などのC4含酸素化合物が含まれる。しかし、精油所での大量のこれらの材料の製造および貯蔵は高コストになり得る。さらに、高濃度の添加剤の使用に対する、規制による制約のため、ハイオクタン燃料を製造する精製操業の困難が増し、経費が上がる。ガソリンに匹敵し燃焼効率を上げるオクタン価を有する燃料添加剤または燃料に対するニーズがある。
【0005】
前述のことを考慮すると、費用効果の高いオクタン価向上組成物、および該オクタン価向上組成物を含むガソリン組成物を提供するニーズが依然存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な実施形態において、オクタン価向上添加剤、オクタン価向上添加剤を含むガソリン組成物、およびガソリン組成物を製造する方法が開示される。
【0007】
オクタン価向上添加剤は、sec-ブタノールおよびtert-ブタノールを含む混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、ならびにジイソブチレン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,3,3-トリメチルペンタンを含むC4二量体、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。
【0008】
ガソリン組成物は、ベースガソリン、および本明細書において開示されるオクタン価向上組成物を含む。
【0009】
ガソリン組成物を調製する方法は、ベースガソリンおよび本明細書において開示されるオクタン価向上組成物を混ぜ合わせてガソリン組成物を形成することを含む。
【0010】
ガソリン組成物を調製する方法は、ベースガソリンを、sec-ブタノールおよびtert-ブタノールを含む混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、ならびにジイソブチレン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,3,3-トリメチルペンタンを含むC4二量体、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせと混ぜ合わせることを含む。
【0011】
上記および他の特徴は以下の発明を実施するための形態によって例示される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、含酸素添加剤の新規の組み合わせ、含酸素添加剤の新規の組み合わせを含むオクタン価向上組成物、および新規のオクタン価向上組成物を含むガソリン組成物が記載される。本発明者らは、本明細書において開示される新規のオクタン価向上組成物を含むガソリン組成物が、上昇したオクタン価を特徴とし、特に自動車市場に向けて、より良好な燃焼および内燃機関の性能の改善を提供することを見いだした。特に、含酸素添加剤の新規の組み合わせを含むガソリン組成物は、単一の含酸素添加剤としてエタノール、MTBEまたはブタノールを含むガソリン組成物と比較して、より良好な性能特性を提供することができる。
【0013】
「燃料用含酸素物質」、「ガソリン用含酸素物質」および単に「含酸素物質」という用語は、1個以上の酸素原子を含み、ガソリンの酸素含有率を上げることによりガソリンのオクタン価を改善するのに効果的なガソリン添加剤の種類を指す。ほとんどの含酸素物質は、アルコールまたはエーテルのいずれか、例えばメタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、n-プロピルアルコール(NPrOH)、イソブタノール(IBA)、n-ブタノール(BuOH)、sec-ブチルアルコール(SBA)、tert-ブチルアルコール(TBA)、またはガソリン等級のtert-ブチルアルコール(GTBA)、tert-アミルアルコール(TAA)もしくはtert-ペンタノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、tert-アミルエチルエーテル(TAEE)、tert-ヘキシルメチルエーテル(THEME)およびジイソプロピルエーテル(DIPE)である。これらの含酸素物質は、当技術分野で公知である、任意の公知で許容できる化学反応および生物学的反応、例えば、MTBEまたはETBEをそれぞれ生成するイソブチレンとメタノールまたはエタノールとの間の化学反応、バイオエタノールを生成する糖の微生物発酵などによって製造することができる。製造プロセスは、純度を上げ、水を除去するために、精製工程、蒸留工程、または脱水工程をさらに含むことができる。
【0014】
含酸素添加剤の新規の組み合わせは、混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテルおよびC4二量体を含む。
【0015】
混合ブタノール組成物はsec-ブタノールおよびtert-ブタノールを含む。sec-ブタノールとtert-ブタノールの相対的割合は様々であってもよく、例えば1:99~99:1、10:90~90:10、または20:80、または80:20、または30:70~70:30のsec-ブタノール:tert-ブタノールの体積比であってもよい。実施形態において、sec-ブタノール:tert-ブタノールの体積比は2:1~3:1である。好ましい体積比は2.4:1である。混合ブタノール組成物は、n-ブタノール、イソブタノール、またはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。n-ブタノール、イソブタノールまたはそれらの組み合わせの量は、1~90体積パーセント(体積%)、1~80体積%または1~70体積%、または1~60体積%、または1~50体積%、または1~40体積%、または1~30体積%、または1~20体積%であってもよい。実施形態において、n-ブタノール、イソブタノールまたはそれらの組み合わせの量は、84体積%である。
【0016】
C4二量体は、ジイソブチレン;2,2,4-トリメチルペンタン;2,3,3-トリメチルペンタン;または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。C4二量体組成物中の前述の成分のそれぞれの相対量について特別な制約はない。
【0017】
混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、およびC4二量体を、ベースガソリンに添加して、ガソリン組成物を形成することができる。混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、およびC4二量体は、それぞれベースガソリンに個々に添加することができる。
【0018】
代替として、混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、およびC4二量体の少なくとも2つを、ブレンドして、予備混合されたオクタン価向上添加剤を形成することができる。幾つかの実施形態において、混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、およびC4二量体は、単一のオクタン価向上組成物中でブレンドされる。オクタン価向上組成物を、次にベースガソリンに添加して、ガソリン組成物を得ることができる。
【0019】
したがって、オクタン価向上組成物は、混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、およびC4二量体を含む。混合ブタノール組成物は、2~35体積%、または3~29体積%、または0.6~30体積%の量でオクタン価向上組成物中に存在することができる。C4二量体は、0.1~3体積%または0.19~2体積%の範囲でオクタン価向上組成物中に存在することができる。メタノールは、0.4体積%~2体積%または0.50体積%~0.9体積%、または0.55体積%~0.80体積%の量でオクタン価向上組成物中に存在することができる。MTBEは、65~99.8体積%、または68~99.3%体積%、または70~95体積%の量でオクタン価向上組成物中に存在することができる。前述の量のそれぞれは、オクタン価向上組成物の合計体積、すなわち、混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、およびC4二量体の合計体積に基づく。
【0020】
オクタン価向上組成物またはその成分は、ベースガソリンに直接添加することができる。しかし、オクタン価向上組成物またはその成分を、鉱油、ナフサ、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの実質的に不活性で、通常液体の有機希釈剤で希釈して、添加剤濃縮物を形成することができる。これらの濃縮物は、0.1~80重量%、または約1重量%~80重量%、または10重量%~80重量%のオクタン価向上組成物を含むことができ、さらに、下記のように当技術分野で公知の1種以上の他の添加剤を含むことができる。15重量%、20重量%、30重量%または50重量%以上などの濃度を使用することができる。濃縮物は、任意の順序で任意の温度、例えば23~70℃で所望の成分を混ぜ合わせることにより調製することができる。
【0021】
また、ベースガソリンおよび本明細書において開示されるオクタン価向上組成物を含むガソリン組成物が開示される。ガソリン組成物において、ベースガソリンは60~97体積%、好ましくは65~95体積%、より好ましくは70~90体積%の量で存在する。オクタン価向上組成物は、それぞれガソリン組成物の合計体積に対して3~40体積%、好ましくは5~35体積%、好ましくは10~30体積%の量でガソリン組成物中に存在することができる。
【0022】
ガソリン組成物は、ベースガソリン、および本明細書において開示されるオクタン価向上組成物の成分を別々にまたは任意の組み合わせて混ぜ合わせることにより調製することができる。
【0023】
混合ブタノール組成物は、それぞれガソリン組成物の合計体積に対して0.5~20体積%、好ましくは0.7~10体積%、より好ましくは0.8~5体積%の合計量で存在することができる。
【0024】
メタノールは、それぞれガソリン組成物の合計体積に対して0.02~0.3体積%、好ましくは0.04~0.25体積%、より好ましくは0.08~0.20体積%の合計量でガソリン組成物中に存在することができる。
【0025】
sec-ブチルエーテルおよびメチルtert-ブチルエーテルは、それぞれガソリン組成物の合計体積に対して0.02~30体積%、好ましくは0.06~26体積%の合計量でガソリン組成物中に存在することができる。
【0026】
C4二量体は、それぞれガソリン組成物の合計体積に対して、0.01~2体積%、好ましくは0.04体積%~1体積%の量でガソリン組成物中に存在することができる。
【0027】
オクタン価向上組成物は、当技術分野で公知の他の添加剤、例えば発泡防止剤、凍結防止剤、追加のアンチノック剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、色安定剤、防蝕剤、清浄剤、分散剤、染料、極圧剤、掃鉛剤、金属不活性化剤は、流動点降下剤、上側シリンダ潤滑剤、粘度向上剤などをさらに含むことができる。そのような添加剤の量は、具体的な添加剤に依存し、当業者によって容易に求めることができる。
【0028】
安定な泡の形成を低減または防止するために使用される発泡防止剤は、シリコーンまたは有機高分子を含む。酸化防止剤、防蝕剤および極圧剤は、塩素化脂肪族炭化水素、有機硫化物およびポリスルフィド、ジヒドロ炭素およびトリヒドロ炭素ホスファイトを含むリンエステル、モリブデン化合物などによって例示される。他の酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール、特にフェノール-OH基に対してオルト位の第三級ブチル基などの第三級アルキル基を有するものなど。
【0029】
清浄剤および分散剤は、灰分生成型または無灰型であってもよい。灰分生成型の清浄剤は、スルホン酸、カルボン酸、フェノール、または少なくとも1個の炭素-リン直接連結を特徴とする有機リン酸との、アルカリもしくはアルカリ土類金属の油溶性の中性および塩基性塩によって例示される。無灰型の清浄剤および分散剤は、燃焼して酸化ホウ素または五酸化リンなどの不揮発性残留物を生成し得るが、しかし、通常は金属を含まず、そのため、燃焼して金属含有灰分を生成しない。例としては、アミン、フェノールおよびアルコールなどの有機ヒドロキシ化合物、ならびに/または塩基性無機物などの窒素含有化合物との、34~54の炭素原子を含有するカルボン酸(またはそれらの誘導体)の反応生成物を含む。
【0030】
粘度向上剤は通常、ポリマー、例えばポリイソブテン、ポリ(メタクリル酸エステル)、水素化ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、エステル化スチレン-無水マレイン酸コポリマー、水素化アルケニルアレーン-共役ジエンコポリマーおよびポリオレフィンである。
【0031】
特に、オクタン価向上組成物は、他の含酸素化合物、例えば他のアルコール、エステルまたはエーテル含酸素物質をさらに含むことができる。含むことができる他のアルコールの例は、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、tert-アミルアルコール、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせである。含むことができる他のエーテルの例は、エチルtert-ブチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル、tert-アミルエチルエーテル、tert-ヘキシルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせである。含むことができるエステルの例は、酢酸イソアミル、酢酸アミル、プロピオン酸イソアミル、ノナン酸イソアミル、酢酸イソブチル、酪酸メチル、カプロン酸メチル、カプリル酸メチル、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせである。これらのさらなる含酸素化合物は、それぞれガソリン組成物の合計体積に対して、0.02~20体積%または0.1~10体積%の量で存在することができる。
【0032】
他のアンチノック添加剤には、キシレン、ベンゼン、トルエン、アニリンなどが含まれる。
【0033】
ガソリン組成物は、6.0~8.0psi、好ましくは6.5~7.8psiのReid蒸気圧(RVP)を有することを特徴とすることができる。ガソリン組成物はまた、ベースガソリンのリサーチ法オクタン価(RON)より高いRON、およびベースガソリンのモーター法オクタン価(MON)より高いMONを有することを特徴とすることができる。例えば、ガソリン組成物は88~110、好ましくは90~105のRON、および82~105のMONを有することができる。
【実施例】
【0034】
この開示は、非限定的な以下の例によって、さらに例証される。
【0035】
実施例1:燃料添加剤を含むガソリンブレンド
アルコール、エーテルまたはC4二量体から選択された可能性のある様々な添加剤を下記表1に示す特性を有するベースガソリンに添加する。各ガソリンブレンドの組成を表2および3に示す。
【0036】
【0037】
Reid蒸気圧(RvP)、リサーチ法オクタン価(RON)、およびモーター法オクタン価(MON)を各ブレンドについて測定する。
【0038】
RvPはガソリンの揮発性の指標である。それは、試験法ASTM D 323に従って求めて100°F(37.8℃)で液体(例えば、ガソリン)が及ぼす絶対蒸気圧として定義される。
【0039】
RONは、エンジンの低負荷かつ低回転速度でのノッキング挙動を表し、DIN EN ISO 5164(ASTM D 2699)に従って求められる。
【0040】
MONは、エンジンの高負荷かつ高い熱応力での挙動を表し、DIN EN ISO 5163(ASTM D 2700)に従って求められる。
【0041】
ベースガソリンおよびブレンドのそれぞれについての試験結果を下記表2および3に示す。
【0042】
【0043】
【0044】
本開示は以下の態様をさらに包含する。
【0045】
態様1 sec-ブタノールおよびtert-ブタノールを含む混合ブタノール組成物、sec-ブチルエーテル、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、ならびにジイソブチレン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,3,3-トリメチルペンタンを含むC4二量体、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせを含むオクタン価向上組成物。
【0046】
態様2 態様1に記載のオクタン価向上組成物であって、混合ブタノール組成物がn-ブタノール、イソブタノールまたはそれらの組み合わせをさらに含むオクタン価向上組成物。
【0047】
態様3 態様1または2に記載のオクタン価向上組成物であって、メタノールが、0.4体積%~2体積%、0.50体積%~0.9体積%、0.55体積%~0.80体積%の量で存在するオクタン価向上組成物。
【0048】
態様4 態様1から3のいずれか1つ以上に記載のオクタン価向上組成物であって、メチルtert-ブチルエーテルが、65~99.8体積%、68~99.3%体積%、70~95体積%の量で存在するオクタン価向上組成物。
【0049】
態様5 態様1から4のいずれか1つ以上に記載のオクタン価向上組成物であって、混合ブタノール組成物が、2~35体積%、3~29体積%、0.6~30体積%の量で存在するオクタン価向上組成物。
【0050】
態様6 態様1から5のいずれか1つ以上に記載のオクタン価向上組成物であって、sec-ブチルエーテルが、0.3~5体積%、0.4~4体積%の範囲で存在するオクタン価向上組成物。
【0051】
態様7 態様1から6のいずれか1つ以上に記載のオクタン価向上組成物であって、C4二量体が、0.1~3体積%、0.19~2体積%の範囲で存在するオクタン価向上組成物。
【0052】
態様8 態様1から7のいずれか1つ以上に記載のオクタン価向上組成物であって、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、tert-アミルアルコール、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせをさらに含むオクタン価向上組成物。
【0053】
態様9 態様1から8のいずれか1つ以上に記載のオクタン価向上組成物であって、エチルtert-ブチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル、tert-アミルエチルエーテル、tert-ヘキシルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせをさらに含むオクタン価向上組成物。
【0054】
態様10 ベースガソリン、および態様1から9のいずれか1つ以上に記載のオクタン価向上組成物を含むガソリン組成物。
【0055】
態様11 6.0~8.0psiのReid蒸気圧(RVP)を有する態様10に記載のガソリン組成物。
【0056】
態様12 態様10または11記載のガソリン組成物であって、ベースガソリンのリサーチ法オクタン価(RON)より高いRON、およびベースガソリンのモーター法オクタン価(MON)より高いMONを有するガソリン組成物。
【0057】
態様13 態様10から12のいずれか1つ以上に記載のガソリン組成物であって、88~110のRONおよび82~105のMONを有するガソリン組成物。
【0058】
態様14 態様10から13のいずれか1つ以上に記載のガソリン組成物であって、混合ブタノール組成物およびメタノールが、ガソリン組成物の0.5~10体積%、0.9~5体積%の合計量で存在するガソリン組成物。
【0059】
態様15 態様10から14のいずれか1つ以上に記載のガソリン組成物であって、sec-ブチルエーテルおよびメチルtert-ブチルエーテルが、ガソリン組成物の0.02~30体積%、好ましくは0.06~26体積%の合計量で存在するガソリン組成物。
【0060】
態様16 態様10から15のいずれか1つ以上に記載のガソリン組成物であって、C4二量体が、ガソリン組成物の0.01~3体積%、好ましくは0.04体積%~1体積%で存在するガソリン組成物。
【0061】
態様17 態様10から16のいずれか1つ以上に記載のガソリン組成物であって、ベースガソリンが、60~97体積%、好ましくは65~95体積%、より好ましくは70~90体積%で存在するガソリン組成物。
【0062】
態様18 ベースガソリン、および態様1から9のいずれか1つ以上に記載のオクタン価向上組成物の成分を混ぜ合わせて、ガソリン組成物を形成することを含む、ガソリン組成物を調製する方法。
【0063】
態様19 態様18に記載の方法であって、オクタン価向上組成物が、3体積%~40体積%、または好ましくは5体積%~35体積%、好ましくは10体積%~30体積%の量でガソリン組成物中に存在する方法。
【0064】
態様20 態様20に記載の方法であって、混合ブタノール組成物は、ガソリン組成物中に0.5~20体積%、好ましくは0.7~10体積%、より好ましくは0.8~5体積%の合計量で存在する方法。
【0065】
態様21 態様18から20のいずれか1つ以上に記載の方法であって、メタノールが、0.02~0.3体積%、好ましくは0.04~0.25体積%、より好ましくは0.08~0.20体積%の合計量でガソリン組成物中に存在する方法。
【0066】
態様22 態様18から21のいずれか1つ以上に記載の方法であって、sec-ブチルエーテルおよびメチルtert-ブチルエーテルが、ガソリン組成物の0.02~30体積%、好ましくは0.06~26体積%の合計量でガソリン組成物中に存在する方法。
【0067】
態様23 態様18から22のいずれか1つ以上に記載の方法であって、C4二量体が、0.01~2体積%、好ましくは0.04体積%~1体積%の量でガソリン組成物中に存在する方法。
【0068】
態様24 態様18から23のいずれか1つ以上に記載の方法によって製造されたガソリン組成物。
【0069】
組成物および方法、ならびに物品は、代替として、本明細書において開示される任意の好適な材料、工程または成分を含み、それらからなり、または本質的にそれらからなることができる。組成物、方法および物品は、さらにまたは代替として、組成物、方法および物品の機能または目標の達成に、他の点では必要でない任意の材料(または化学種)、工程または成分を欠くように、または実質的に含まないように処方することができる。
【0070】
本明細書において開示される範囲はすべて、終点を包括し、終点は独立して互いに併合可能である(例えば、「最大25重量%、または、より具体的には、5重量%~20重量%」という範囲は、終点および「5重量%~25重量%」などの範囲の中間値すべてを包括する)。「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、アロイ、反応生成物などを包括する。用語「a」、「an」および「the」は、本明細書においてほかに指示されないか、または文脈が明確に矛盾するのでない限り、量の制約を意味せず、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。ほかに明示されない限り、「or」は「and/or」を意味する。本明細書全体を通して「幾つかの実施形態」、「実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して記載される具体的な要素が、本明細書において記載される少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態に存在してもよいが、存在しなくてもよいことを意味する。さらに、記載される要素が、様々な実施形態において任意の適切な方式で組み合わせられてもよいことは理解されるべきである。
【0071】
本明細書において引用される試験法はすべて、本出願の優先日の時点で有効なものである。
【0072】
ほかに定義されない限り、本明細書において使用される技術および科学用語は、本出願が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。すべての引用された特許、特許出願、および他の参考文献は、その全体を本願に引用して援用する。しかし、本出願における用語が、援用される参考文献の用語と矛盾するかまたは対立する場合、本出願からの用語は、援用される参考文献からの対立する用語に優先する。
【0073】
具体的な実施形態が記載されているが、現在は予見されないか、または予見することができない、代替、変形、修正、改善、および実質的な均等物が、出願人または他の当業者に想起されてもよい。したがって、出願され、補正されてもよい添付される特許請求の範囲は、そのような代替、変形、修正、改善、および実質的な均等物をすべて包含するように意図される。