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特許7260482バイオ物質をベースとしたUVコーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】バイオ物質をベースとしたUVコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/14 20060101AFI20230411BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230411BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230411BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20230411BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20230411BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230411BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230411BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230411BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C09D175/14
B32B27/30 A
B32B27/40
C09D4/02
C09D7/47
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/65
C09D175/06
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019555612
(86)(22)【出願日】2018-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 KR2018004530
(87)【国際公開番号】W WO2018194383
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2019-10-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0051609
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510244710
【氏名又は名称】エルエックス・ハウシス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ジョ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンデ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】サム・フン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヘミン・チョ
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-47952(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118655(WO,A1)
【文献】特開2010-95672(JP,A)
【文献】国際公開第2005/019363(WO,A1)
【文献】特開2016-222897(JP,A)
【文献】特開平7-305002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B05D 1/00- 7/26
B32B 27/00- 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオウレタンアクリレートオリゴマー及び石油化学ベースのアクリル系オリゴマーからなるアクリル系オリゴマーと、

バイオアクリル系モノマー及び石油化学ベースのアクリル系モノマーからなるアクリル系モノマーと、
バイオワックスと、
バイオビーズと
光開始剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、及び艶消し剤からなる添加剤と、
を含む、UVコーティング組成物であって、
前記バイオビーズはポリ乳酸ビーズであり、
前記バイオウレタンアクリレートオリゴマーは、バイオベースのポリエステルポリオール、イソシアネート、及びアクリル系モノマーを反応させて製造したものであり、ここで、前記アクリル系モノマーは、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシペンチルアクリレート、ヒドロキシペンチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレートから選択される1種以上であり、
前記石油化学ベースのアクリル系オリゴマーは、脂肪族ウレタンアクリレートであり、
前記バイオアクリル系モノマーは、2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレートから選択される1種以上であり、
前記石油化学ベースのアクリル系モノマーは、メタクリル酸、イソボルニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、N-ビニルホルムアミド、テトラエチレングリコールメタクリレート、トリプロピレングリコールメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジメタクリレート、及びヒドロキシプロピルアクリレートから選択される1種以上であり、
前記バイオワックスは、50~99重量%のポリアミド11及び1~50重量%のポリアミド10.10の混合物である、UVコーティング組成物。
【請求項2】
前記バイオベースのポリエステルポリオールは、バイオベースのダイマー酸(dimer acid)とバイオベースのジオール(diol)のエステル化反応を通じて製造したものであり、ここで、前記バイオベースのジオールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びダイマージオールから選択される1種以上である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項3】
前記バイオベースのダイマー酸は、エチレン性二重結合を1~4個有する炭素数14~22個の不飽和脂肪酸(X)と、エチレン性二重結合を1~4個有する炭素数14~22個の不飽和脂肪酸(Y)との二量体酸である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸(X)及び(Y)は、テトラデカジエン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデカジエン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、オクタデカトリエン酸、エイコサテトラエン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデセン酸、エイコセン酸及びドコセン酸から選択される1種以上である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項5】
前記不飽和脂肪酸(X)は、エチレン性二重結合を2個有する炭素数14~22個の不飽和脂肪酸であって、テトラデカジエン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデカジエン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、オクタデカトリエン酸及びエイコサテトラエン酸から選択される1種以上である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項6】
前記バイオベースのダイマー酸は、オレイン酸又はリノール酸のそれぞれの二量体であるか、またはオレイン酸及びリノール酸の二量体である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項7】
前記ポリエステルポリオールを製造するための前記バイオベースのダイマー酸とバイオベースのジオールとの含量比は、0.1~1:2である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項8】
前記バイオベースのダイマー酸及びバイオベースのジオールの含量の合計は、前記バイオウレタンアクリル系オリゴマー中の10~90重量%である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項9】
前記ポリエステルポリオールは、分子量(Mw)が500~10,000g/molである、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項10】
前記ポリエステルポリオールは、分子量分布度が1.2~4.0である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項11】
前記イソシアネートは、芳香族ジイソシアネート、芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから選択される1種以上である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項12】
前記イソシアネートと前記ポリエステルポリオールとのモル比は、1000:1.5~7である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項13】
前記アクリル系モノマーは、ヒドロキシ(hydroxy)基を含んでいるアクリレートである、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項14】
前記イソシアネートとアクリル系モノマーとのモル比は、1:0.1~0.3である、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項15】
前記バイオウレタンアクリレートオリゴマーは、分子量(Mw)が1,000~50,000g/molである、請求項1に記載のUVコーティング組成物。
【請求項16】
前記バイオウレタンアクリレートオリゴマーは、UVコーティング組成物中に20~50重量%含まれる、請求項1に記載のUVコーティング組成物。
【請求項17】
前記バイオアクリル系モノマーは、動植物から抽出したアクリル系モノマーである、請求項1に記載のUVコーティング組成物。
【請求項18】
前記バイオアクリル系モノマーは、UVコーティング組成物中に10~30重量%含まれる、請求項1に記載のUVコーティング組成物。
【請求項19】
前記バイオワックスは、UVコーティング組成物中に0.5~15重量%含まれる、請求項1に記載のUVコーティング組成物。
【請求項20】
前記バイオビーズは、UVコーティング組成物中に0.5~15重量%含まれる、請求項1に記載のUVコーティング組成物。
【請求項21】
前記アクリル系モノマーは、UVコーティング組成物中に10~30重量%含まれる、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項22】
前記アクリル系オリゴマーは、UVコーティング組成物中に1~20重量%含まれる、請求項に記載のUVコーティング組成物。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載のUVコーティング組成物で形成されたコーティング層を含む基材の製造方法であって、
前記UVコーティング組成物を、酸素雰囲気で仮硬化した後、窒素雰囲気で完全硬化する工程を含む、方法
【請求項24】
前記基材は、PVCフィルムまたはPCフィルムである、請求項23に記載の方法
【請求項25】
前記コーティング層の厚さは2~40μmである、請求項23に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UVコーティング組成物に関し、UVコーティング組成物にバイオ物質を導入することによって、石油化学ベースの従来のUVコーティング組成物と同等レベル以上の物性を有し、かつ環境に優しいUVコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、技術的発展と共に、より良い製品への消費者のニーズが高まるにつれ、各種材料にコーティング塗膜を形成して表面の外観を美麗にすることで消費者のニーズを満たしている。
【0003】
一般的にコーティングとは、物体の表面を他の物質で塗布することを意味し、これを通じて、コーティングされた物体を外部の刺激から保護し、具体的には、傷つき防止、変色防止及び酸化防止などの役割を果たし、コーティングされた物体の外観を長時間きれいに維持できるようにする。
【0004】
コーティング液を物体の表面に塗布した後、硬化させる方法としては、熱硬化方法、光硬化方法、または蒸発乾燥方法を用いており、光硬化方法、特にUV硬化方法は、溶剤を最小化することによって環境汚染を減らすことができ、硬化時間が短く効率的に使用可能であるので広く使用されている。
【0005】
これによる従来の大韓民国公開特許公報第10-1993-0013028号は、紫外線硬化型塗料組成物を開示しているが、コーティング原料として使用される素材は、バイオを全く含まない石油化学ベースのものであって、石油資源の枯渇及び二酸化炭素の排出などの環境的な問題と環境ホルモンを誘発する有害成分が排出されることが大きな問題となり得るため、これに対する代替技術及び製品が早急に確立される必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-1993-0013028号(公開日:1993.07.21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、石油化学ベースの従来のUVコーティング組成物と同等レベル以上の物性を有し、かつ環境に優しいUVコーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
バイオウレタンアクリレートオリゴマー;
バイオモノマー;
バイオワックス;及び
バイオビーズ;を含むUVコーティング組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のUVコーティング組成物は、バイオ物質をベースとしながらも、従来の石油化学ベースのUVコーティング組成物と同等レベル以上の物性を有するという効果がある。
【0010】

本発明のUVコーティング組成物は、バイオ物質をベースとすることによって、従来の石油化学ベースのUVコーティング組成物より環境に優しいという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明について具体的に説明する。
【0012】
本発明は、バイオウレタンアクリレートオリゴマー、バイオモノマー、バイオワックス及びバイオビーズを含むUVコーティング組成物に関する。
【0013】
以下、各組成について具体的に説明する。
【0014】
バイオウレタンアクリレートオリゴマー
【0015】
前記バイオウレタンアクリレートオリゴマー(Bio urethane acrylate Oligomer)は、バイオベースのポリオール(polyol)、イソシアネート(isocyanate)及びアクリル系モノマーを反応させて製造することができる。
【0016】
前記バイオベースのポリオールは、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとに区分することができ、前記ポリエーテルポリオールは、相分離特性及び耐加水分解性などに優れるが、機械的物性が不十分であるため、本発明では、具体的な一実施例としてポリエステルポリオールを用いることができる。前記ポリエステルポリオールは、バイオベースのダイマー酸(dimer acid)とバイオベースのジオール(diol)のエステル化反応を通じて製造することができる。
【0017】
前記バイオベースのダイマー酸(dimer acid)は、植物性油脂から得ることができるものであって、エチレン性二重結合を1~4個有する炭素数14~22個の脂肪酸(以下、「不飽和脂肪酸X」という)、好ましくは、エチレン性二重結合を2個有する炭素数14~22個の脂肪酸と、エチレン性二重結合を1~4個有する炭素数14~22個の脂肪酸(以下、「不飽和脂肪酸Y」という)、好ましくは、エチレン性二重結合を1個又は2個有する炭素数14~22個の脂肪酸とを二重結合部で反応させて得られる二量体酸を使用することができる。
【0018】
前記において、不飽和脂肪酸Xとして、エチレン性二重結合を2個有する炭素数14~22個の脂肪酸は、テトラデカジエン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデカジエン酸(リノール酸など)、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、オクタデカトリエン酸(リノレン酸など)、エイコサテトラエン酸(アラキドン酸など)などが挙げられる。また、不飽和脂肪酸Yとしては、前記例示されたものに加え、エチレン性二重結合を1個有する炭素数14~22個の脂肪酸としてのテトラデセン酸(ツズ酸(tsuzuic acid)、フィセテリン酸(physeteric acid)、ミリストレイン酸)、ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸など)、オクタデセン酸(オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸など)、エイコセン酸(ガドレイン酸など)、ドコセン酸(エルカ酸、セトレイン酸、ブラシジン酸など)などが挙げられる。
【0019】
本発明では、前記バイオベースのダイマー酸の具体的な一実施例として、オレイン酸又はリノール酸のそれぞれの二量体、またはオレイン酸及びリノール酸の二量体を用いることができる。
【0020】
前記バイオベースのジオール(diol)は、植物の炭素源(グルコースなど)から発酵法により収得されるか、または発酵後に得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物又は環状エーテルを化学反応によってジオール化合物に変換したものであってもよい。
【0021】
前記バイオベースのジオールは、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びダイマージオール(dimer diol)などが挙げられ、本発明では、前記バイオベースのジオールの具体的な一実施例として、トウモロコシから収得した1,3-プロパンジオールが好ましい。
【0022】
前記ポリエステルポリオールを製造するための前記バイオベースのダイマー酸とバイオベースのジオールとの含量比は、0.1~1:2、または0.5~1:2であってもよい。前記範囲外である場合、ポリエステルポリオールの粘度が高くなってしまい、取扱い操作性が低下するか、ウレタン化反応時のゲル化などによって分子量が異常に高いか、分子量分布度が異常に大きいか、または柔軟性や伸度などの物性が低下することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0023】
また、前記バイオベースのダイマー酸及びバイオベースのジオールの含量の合計は、前記バイオウレタンアクリレートオリゴマー中の10~90重量%、または20~80重量%であってもよい。前記範囲未満の場合、バイオベースの物質の含量が少ないため好ましくないことがあり、前記範囲を超える場合、最終バイオウレタンアクリレートオリゴマーの物性が低下することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0024】
前記ポリエステルポリオールは、分子量(Mw)が500~10,000g/mol、1,000~8,000g/mol、または1,500~6,000g/molであってもよい。前記範囲未満の場合、物性が低下することがあり、前記範囲を超える場合、ポリエステルポリオールの粘度が過度に高くなってしまい、取扱いにくいことがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0025】
前記ポリエステルポリオールの分子量分布度(PDI)は、1.2~4.0、1.5~3.5、または1.8~3.0であってもよい。前記範囲未満の場合、ポリエステルポリオールの製造時に経済性が低下することがあり、前記範囲を超える場合、最終バイオウレタンアクリレートオリゴマーの物性が低下することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0026】
前記イソシアネートは、例えば、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水素添加TDI)、1-イソシアネート-3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられ、これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
本発明において、前記イソシアネートの具体的な一実施例として、特に、反応性が高く、耐候性に優れた1-イソシアネート-3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、または1,6-ヘキサメチレンイソシアネート(HDI)を使用することができる。
【0028】
前記イソシアネートとポリエステルポリオールのモル比は、1000:1.5~7、または1000:2~6であってもよい。前記範囲未満の場合、付着性及び物性が不良となることがあり、前記範囲を超える場合、硬化性が低下することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0029】
前記アクリル系モノマーは、アクリル酸またはアクリレート系モノマーであってもよい。
【0030】
前記アクリレート系モノマーは、ヒドロキシ(hydroxy)基を含んでいるアクリレートであり得、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシペンチルアクリレート、ヒドロキシペンチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレートなどがあり、これらをそれぞれ単独または混合して用いることができる。
【0031】
前記イソシアネートとアクリル系モノマーのモル比は、1:0.1~0.3、または1:0.1~0.2であってもよい。前記範囲未満の場合、硬化性が不良となることがあり、前記範囲を超える場合、付着性及び物性が低下することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0032】
前記バイオウレタンアクリレートオリゴマーは、分子量(Mw)が、1,000~50,000g/mol、2,000~40,000g/mol、または3,000~30,000g/molであってもよい。バイオウレタンアクリレートオリゴマーの分子量が前記範囲未満である場合、付着性及び耐候性が低下することがあり、前記範囲を超える場合、耐候性は良好であるが、コーティング液の粘度の増加により作業性が低下することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0033】
また、前記バイオウレタンアクリレートオリゴマーは、UVコーティング組成物中に20~50重量%、または25~40重量%含まれてもよい。バイオウレタンオリゴマーの含量が前記範囲未満である場合、コーティングのレベル性が減少してしまい、付着性が低下することがあり、前記範囲を超える場合、硬化性及び耐光性などの物性が低下することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0034】
バイオモノマー
【0035】
前記バイオモノマーは、動植物から抽出した物質であって、アクリル系モノマーであり得る。前記アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独または混合して用いることができる。
【0036】
前記バイオモノマー以外のモノマーを使用する場合、揮発性あるいは芳香性有機化合物の発生により環境に優しくないので、バイオモノマーを使用することができる。
【0037】
また、前記バイオモノマーは、UVコーティング組成物中に10~30重量%、または15~25重量%含まれてもよい。バイオモノマーの含量が前記範囲未満である場合、塗料の粘度が過度に高くなるため、平滑化が不可能となることがあり、前記範囲を超える場合、UV硬化後にも未反応モノマーが多く残ってしまい、物性が低下することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0038】
バイオワックス
【0039】
前記バイオワックスは、再生可能なポリアミドであり得、例えば、ラクタム又はアミノ酸から収得された脂肪族ポリアミド(例えば、11-アミノウンデカン酸の重縮合によって収得されたポリアミド11)、ジカルボン酸とジアミンの縮合生成物(例えば、デカンジアミンとセバシン酸の縮合生成物であるポリアミド10.10、デカンジアミンと脂肪酸二量体の縮合生成物であるポリアミド10.36)、または前記で言及されたような様々な単量体の重合からもたらされるコポリアミド(例えば、ポリアミド11/10.10、ポリアミド11/10.36、ポリアミド10.10/10.36、11-アミノウンデカン/n-ヘプチル-11-アミノウンデカンコポリアミドなどの2つ以上の単量体を含む再生可能起源のコポリアミド)であってもよい。
【0040】
本発明では、前記バイオワックスの具体的な一実施例として、水分吸収率が低いため成形時の変形に安定したポリアミド11、ポリアミド10.10、またはこれらの組み合わせを使用することができる。このとき、混合使用する場合、ポリアミド11は50~99重量%、及びポリアミド10.10は1~50重量%の割合で使用することができ、前記含量割合で混合して使用する場合、耐衝撃性、耐熱性及び剛性に優れるようになる。
【0041】
前記バイオワックスは、UVコーティング組成物中に0.5~15重量%、または1~10重量%含まれてもよい。前記範囲未満の場合、艶消し効果を有することが難しく、前記範囲を超える場合、粘度及びスリップ性が過度に増加することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0042】
バイオビーズ
前記バイオビーズは、化粧品用として知られているバイオをベースとしたビーズは全て適用可能であり、例えば、球状セルロースビーズ、球状メタクリレートビーズ、ポリ乳酸ビーズなどがあり、本発明では、前記バイオビーズの具体的な一実施例として、シルキー(silk)なタッチ感をさらに付与するためにポリ乳酸ビーズを使用することができる。
【0043】
また、本発明のUVコーティング組成物は、前記バイオビーズを含むことによって、耐久性に優れるという効果がある。
【0044】
前記バイオビーズは、UVコーティング組成物中に0.5~15重量%、または1~10重量%含まれてもよい。前記範囲未満の場合、タッチ感が良くないことがあり、前記範囲を超える場合、粘度が増加してしまい、コーティング性が低下することがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0045】
また、本発明のUVコーティング組成物は、硬化密度、耐光性のために、石油化学ベースのアクリル系モノマー及びアクリル系オリゴマーをさらに含むことができる。
【0046】
前記アクリル系モノマーは、例えば、メタクリル酸、イソボルニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、N-ビニルホルムアミド、テトラエチレングリコールメタクリレート、トリプロピレングリコールメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エトキシレートネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロポキシレートネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシレートトリメチロールプロパントリメタクリレート、プロポキシレートトリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシレート、プロポキシレートトリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネートトリメタクリレート及びヒドロキシプロピルアクリレートから選択される1種以上を使用することができる。
【0047】
前記アクリル系オリゴマーは、脂肪族ウレタンアクリレートであれば、いずれも使用可能である。
【0048】
前記アクリル系モノマーは、UVコーティング組成物中に10~30重量%、または15~25重量%含まれてもよく、前記アクリル系オリゴマーは、UVコーティング組成物中に1~20重量%、または5~15重量%含まれてもよい。アクリル系モノマー及びアクリル系オリゴマーの含量が前記範囲未満である場合、硬化密度と耐光性のような基本物性が低下することがあり、前記範囲を超える場合、相対的にバイオ物質の含量が減少してしまい、環境に優しくないことがあるため、前記範囲内で使用することができる。
【0049】
また、本発明のUVコーティング組成物は、選択的に光開始剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤及び艶消し剤から選択される1種以上のその他の添加剤をさらに含むことができる。
【0050】
前記光開始剤は、UV樹脂に添加されることで、紫外線光源からエネルギーを吸収して重合反応を開始させる物質であって、紫外線によって活性を帯びる通常の重合開始剤が使用され、前記重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、アントラキノン系、チオキソキサントン系などの化合物が挙げられる。これらは、単独または2つ以上を混合して使用することができるが、これに限定されない。商業的に市販されている重合開始剤の例としては、Irgacure 184(登録商標)、754(登録商標)、819(登録商標)、Darocur 1173(登録商標)、TPO(登録商標)(CIBA GEIGY社製)、Micure CP-4(登録商標)、MP-8(登録商標)、BP(登録商標)、TPO(登録商標)(Miwon商事製)のうち1つ以上を選択して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0051】
前記分散剤は、分散性を高めるために添加されるものであって、BYK社のDISPERBYK-108、109、110、111、180、ANTI-TERRA-U、AFCONA社のAFCONA 4047、TEGODISPERS-710などを例に挙げることができ、これらは、それぞれ単独または混合して用いることができる。
【0052】
前記レベリング剤は、塗膜の外観及び耐摩耗、表面スクラッチ性に影響を及ぼすようになり、リン酸アクリレート(acid value 250)、ポリエーテルシロキサン化合物及びフルオロアルキル化合物からなる群から選択される添加剤を含むことができる。また、商業的に市販中のTEGO Glide 405(登録商標)、410(登録商標)、432(登録商標)、435(登録商標)、440(登録商標)、450(登録商標)、ZG400(登録商標)、TEGO FLOW 300(登録商標)、370(登録商標)、TEGO RAD 2100(登録商標)、2200N(登録商標)、2250(登録商標)、2300(登録商標)、BYK-UV 3500(登録商標)、3510(登録商標)、zonyl 8857(登録商標)、8867(登録商標)から選択して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記消泡剤は、ロールコーティング作業時に発生する気泡をなくすために使用し、TEGO(登録商標)、Airex 920(登録商標)、932(登録商標)、936(登録商標)、955(登録商標)、986(登録商標)、BYK 088(登録商標)、1790(登録商標)、AFCONA 2020(登録商標)、2021(登録商標)、2720(登録商標)、2725(登録商標)及び2038(登録商標)から選択して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
前記艶消し剤は、シリカ系艶消し剤を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0055】
前記その他の添加剤の含量は、UVコーティング組成物の物性に影響を及ぼさない限りにおいて使用することができ、前記言及したその他の添加剤以外に、通常の技術者が必要とする添加剤をさらに含むことができる。
【0056】
本発明は、前記UVコーティング組成物を用いて基材上にコーティング層を形成することができる。
【0057】
前記基材は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルムであり得る。
【0058】
前記コーティング層は、1塗りまたは多塗りで形成されてもよく、コーティング層の厚さは、2~40μm、または3~30μmであってもよい。コーティング層の厚さが前記範囲未満である場合、物性が発現しないことがあり、前記範囲を超える場合、過度に厚くなってしまい、硬化度が低下することがあるため、前記範囲内で形成することができる。
【0059】
本発明のUVコーティング組成物は、グラビア(gravure)、スポンジ(sponge)またはエアーナイフ(air knife)などの方法でコーティングされてもよいが、これに限定されない。
【0060】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0061】
〔実施例1〕
バイオウレタンアクリレートオリゴマーの製造
バイオベースのダイマー酸として、植物ベースの不飽和脂肪酸である2分子のリノール酸を重合して製造されたダイマージリノール酸(Croda社、PRIPOL)5gと、バイオベースのジオールとして、植物ベースのグルコースを発酵後に精製して収得した1,3-プロパンジオール(1,3-propane diol)(Dupont社、Susterra(登録商標))10gを反応器に入れ、150℃で生成される水を留去しながら重合して、分子量が2000~5000g/molであるバイオベースのポリエステルポリオールを製造した。このように製造されたポリエステルポリオール10gにイソシアネート(IPDI)20g及びアクリル酸10gと反応させることで、分子量が4000~20,000g/molであるバイオベースのウレタンアクリレートオリゴマーを製造した。
【0062】
〔実施例2〕
UVコーティング組成物の製造
下記の表1のような組成を用いて、実施例及び比較例によるUVコーティング組成物を製造した。
【0063】
実施例のバイオウレタンアクリレートオリゴマーは、前記実施例1で製造したバイオウレタンアクリレートオリゴマーを使用した。
【0064】
【表1】
【0065】
〔実施例3〕
UVコーティング組成物の物性測定
【0066】
<実験例1>
前記表1の実施例及び比較例の配合比で製造したUVコーティング組成物の粘度(作業性)及びこれにより形成された塗膜の物性を、下記のように測定した。
【0067】
(光沢)
10~20μmの厚さでPVCフィルムにコーティングした後、Hg Lampで酸素雰囲気で150~200mJで仮硬化し、Hg Lampで窒素雰囲気で500mJで完全硬化した後に、光沢機(60゜Gloss)で測定して光沢を評価した。
【0068】
(硬化性)
10~20μmの厚さでPVCフィルムにコーティングした後、PETフィルムに貼り合わせ、Hg Lampで酸素雰囲気で150~200mJで仮硬化し、Hg Lampで窒素雰囲気で500mJで完全硬化した後に、耐溶剤性(MEK)で硬化性を評価した。
【0069】
(付着性)
10~20μmの厚さでPVCフィルムにコーティングした後、Hg Lampで酸素雰囲気で150~200mJで仮硬化し、Hg Lampで窒素雰囲気で500mJで完全硬化した後に、硬化した塗膜にクロスカッティング(Cross Cutting)テスト方法を行い、このとき、ガラステープを使用した。試片に形成された膜又は層を1mm×1mmのサイズで100個の碁盤目状の切片に切断した後、切片上にガラステープを付着した後に剥がし、剥離される切片の個数を測定して付着性を評価した。
【0070】
(汚染性)
10~20μmの厚さでPVCフィルムにコーティングした後、Hg Lampで酸素雰囲気で150~200mJで仮硬化し、Hg Lampで窒素雰囲気で500mJで完全硬化した後に、油性マジック汚染30秒後、乾拭きにより除去した後、目視判定して評価した。
【0071】
(耐溶剤性)
10~20μmの厚さでPVCフィルムにコーティングした後、Hg Lampで酸素雰囲気で150~200mJで仮硬化し、Hg Lampで窒素雰囲気で500mJで完全硬化した後に、ガーゼにMEK(methyl ethyl ketone)を付けた後、ガーゼを塗膜が形成された試片に一定の力を加えて20回擦った後、Hazeが変わるか否かを目視で判別して評価した。
【0072】
(耐スチーム性)
10~20μmの厚さでPVCフィルムにコーティングした後、Hg Lampで酸素雰囲気で150~200mJで仮硬化し、Hg Lampで窒素雰囲気で500mJで完全硬化した後に、(株)ハン・ギョンヒ生活科学のスチーム掃除機を用いて、20分(1cycle)間、UV硬化された塗膜上に放置した後、UVクラックの有無を通じて評価した。
【0073】
(作業性)
粘度計(Brookfield、DV-I prime、USA)測定条件は、常温(25℃基準)でSpindle 64を使用して30rpmの条件で行った。
【0074】
(臭気性)
韓国の悪臭工程試験方法のうち、官能試験方法に従って、男性3人、女性2人でパネルを構成し、直接臭いを嗅いで評価した。下記の表2は、直接官能評価による悪臭度を示したもので、0から6まで計7段階に区分し、数値が増加するほど悪臭がひどいことを示す。
【0075】
【表2】
【0076】
光沢、硬化性、付着性、汚染性、耐溶剤性、耐スチーム性、作業性及び臭気性の評価結果は、下記の表3の通りであった。
【0077】
【表3】
【0078】
前記表3から確認されるように、実施例のUVコーティング組成物は、光沢、硬化性、付着性、汚染性、耐溶剤性、作業性が、比較例のUVコーティング組成物と同等レベルであり、耐スチーム性はさらに優れることが確認できた。また、比較例に比べて臭気性が低いことがわかった。
【0079】
<実験例2>
下記の表4は、本発明のUVコーティング組成物の実施例と比較例のTVOC(総揮発性有機化合物)、Toluene(トルエン)及びFormaldehyde(ホルムアルデヒド)の放出量を比較した試験結果資料である。
【0080】
【表4】
【0081】
前記表4に記載されたように、本発明の実施例によるUVコーティング組成物と従来のUVコーティング組成物を‘室内空気質工程試験基準(環境部告示第2010-24号)’による試験方法を通じてTVOC、Toluene及びFormaldehydeの放出量を比較試験した結果、本発明の実施例のUVコーティング組成物が、TVOC、Toluene及びFormaldehydeの放出量が著しく低減し、環境配慮性能が改善されたことが分かる。