IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 資生堂の特許一覧

<>
  • 特許-化粧料 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230411BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230411BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/02
A61Q19/00
A61K8/73
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019562148
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048064
(87)【国際公開番号】W WO2019131845
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2017254460
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 敦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 綾野
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/052804(WO,A1)
【文献】特開2001-342125(JP,A)
【文献】特開2011-178681(JP,A)
【文献】特開2009-286757(JP,A)
【文献】特開2011-231061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)および(b)を含むことを特徴とする化粧料;
(a)重量平均分子量が50万~800万であり、直鎖状であって、1質量%溶液とした場合の室温における曳糸長(当該溶液を容器に入れ、そ溶液表面に直径約1cmの丸型円盤を均一に軽く接触させた後、5mm/秒の速度で前記容器を降下させて、当該溶液の糸曳きが切れるまでに前記容器が降下した距離)が10mm以下である、
ポリアクリル酸若しくはその塩、または、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)若しくはその塩、
(b)架橋密度が0.01-1モル%である架橋型水膨潤性ポリマー、または、ゲル化能を有する親水性化合物からなるゲルの破砕により得られるミクロゲル。
【請求項2】
前記成分(b)の架橋型水膨潤性ポリマーが、カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドアルキルスルホン酸/ベヘネス-25架橋コポリマー、アクリルアミドアルキルスルホン酸/ビニルピロリドン架橋コポリマー、アクリルアミドアルキルスルホン酸/アルキルアクリルアミド架橋コポリマーからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記成分(b)のミクロゲルが親水性多糖類であることを特徴とする、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記成分(a)において、分子量が1000万以上である化合物の含有量が10質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2017年12月28日付け出願の日本国特許出願2017-254460号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、化粧料に関し、さらに詳しくは精密合成ポリマーを配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0003】
みずみずしさやのびの良さ、べたつきのなさは多くの化粧料に望まれる性質だが、これらの特性を損なうことなく、さらにリッチ感やコクを発現することは容易ではない。
【0004】
一般に、化粧料のリッチ感はその粘弾性比と相関し、コクは第一法線応力差の勾配によって評価できることが知られている(特許文献1)。
化粧料の粘弾性比や第一法線応力差の勾配は、増粘剤の配合に大きく依存する。化粧料に汎用される増粘剤としては、アニオン性高分子や多糖類が挙げられる。アニオン性高分子は、水を吸うとゲル化して増粘効果を発揮するが、高配合してもリッチ感やコクの発現は難しく、さらに、化粧料においては好ましくない曳糸性(糸を引く性質)を呈する傾向がある。また、多糖類は、皮膚内部に浸透せず肌上に残るため、高配合するとべたつきを呈するという問題がある。
【0005】
このような事情から、化粧料のみずみずしさやのびの良さ、べたつきのなさを損なうことなく、曳糸性がなく、リッチ感とコクを付与できる成分が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-137266号公報
【文献】WO2015/052804号公報
【文献】特許第5076428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術が抱える問題に鑑みてなされたものであり、リッチ感とコクに優れ、曳糸性がなく、みずみずしさやのびの良さ、べたつきのなさにも優れる化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者はこれまで、化粧料に適した増粘剤の開発に取り組み、“重量平均分子量が50万~800万であり、分子量が1000万以上の分子種の含有量が10質量%以下であって、直鎖状である、ポリアクリル酸若しくはその塩、または、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)若しくはその塩”が、化粧料に対し、曳糸性を付与することなく増粘効果を発揮できる増粘剤として使用できることを報告している(特許文献2)。そして、当該効果が得られる理由として、前記“ポリアクリル酸若しくはその塩、または、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)若しくはその塩”が、従来の当該化合物よりも曳糸性が顕著に低減していることを記載している(特許文献2)。
【0009】
前記課題に対して本発明者が鋭意研究を重ねた結果、汎用の増粘剤を溶解した水相に前記“ポリアクリル酸若しくはその塩、または、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)若しくはその塩”を追加すると、粘弾性比と第一法線応力差の勾配がいずれも相乗的に増加し、顕著なリッチ感とコクが発現するようになることを見出した。さらに、前記増粘剤を併用して作製した化粧料は、リッチ感とコクに優れ、曳糸性がなく、みずみずしさやのびの良さ、べたつきのなさにも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 下記成分(a)および(b)を含むことを特徴とする化粧料;
(a)重量平均分子量が50万~800万であり、直鎖状であって、1質量%溶液とした場合の室温における曳糸長(当該溶液の表面に直径約1cmの丸型円盤を均一に軽く接触させた後、5mm/秒の速度で前記容器を降下させて、当該溶液の糸曳きが切れるまでに前記容器が降下した距離)が10mm以下である、
ポリアクリル酸若しくはその塩、または、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)若しくはその塩、
(b)架橋密度が0.01-1モル%である架橋型水膨潤性ポリマー、または、ゲル化能を有する親水性化合物からなるゲルの破砕により得られるミクロゲル。
[2] 前記成分(b)の架橋型水膨潤性ポリマーが、カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドアルキルスルホン酸/ベヘネス-25架橋コポリマー、アクリルアミドアルキルスルホン酸/ビニルピロリドン架橋コポリマー、アクリルアミドアルキルスルホン酸/アルキルアクリルアミド架橋コポリマーからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする、前記[1]に記載の化粧料。
[3] 前記成分(b)のミクロゲルが親水性多糖類であることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の化粧料。
[4] 前記成分(a)において、分子量が1000万以上である化合物の含有量が10質量%以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、リッチ感とコクに優れ、曳糸性がなく、みずみずしさやのびの良さ、べたつきのなさにも優れる化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本願実施例で使用した増粘剤について、リッチ感の指標である粘弾性比と、コクの指標である第一法線応力差の勾配を解析した結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。
本書では、“重量平均分子量が50万~800万であり、1質量%溶液とした場合の室温における曳糸長が10mm以下である直鎖状のポリマー”を“精密合成ポリマー”と呼ぶ場合がある。前記“曳糸長”とは、特許文献2で示された方法で測定される値、すなわち、“1質量%のポリマー溶液の表面に直径約1cmの丸型円盤を均一に軽く接触させた後、5mm/秒の速度で前記容器を降下させて、当該溶液の糸曳きが切れるまでに前記容器が降下した距離”として定義される値である。なお、前記曳糸長の規定を満たす重量平均分子量が50万~800万の直鎖状ポリマー”では、通常、“分子量が1000万以上の分子種の含有量”は“10質量%以下”となるので、“分子量が1000万以上の分子種の含有量が10質量%以下”という要件はあってもなくてもよい。
そして、前記精密合成ポリマーの性質を備えるポリアクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)を、各々”精密合成ポリアクリル酸”、” 精密合成PAMPS”と呼ぶ場合がある。ここで、“PAMPS”とは、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)の略記である。
【0014】
精密合成ポリマーは、さらに、重量平均分子量の3倍以上の分子量を有する化合物の含有量が10質量%以下であってもよい。これにより、精密合成ポリマーの曳糸性が一段と低くなる傾向があるからである。
【0015】
[(a)成分]
本発明には、(a)成分として、重量平均分子量が50万~800万であり、1質量%溶液とした場合の室温における曳糸長が10mm以下であって、直鎖状である、
ポリアクリル酸若しくはその塩、または、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)若しくはその塩を用いることができる。すなわち、(a)成分として、精密合成ポリアクリル酸若しくはその塩、または精密合成PAMPS若しくはその塩を用いることができる。
【0016】
前記塩の種類としては、アルカリ金属塩(例として、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、有機アミン塩(例として、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等)、及び、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1、3-プロパンジオール、L-アルギニン、L-リジン、L-アルキルタウリン等の塩基性窒素含有化合物の塩等が挙げられる。このうち、一価のアルカリ金属塩及び有機アミン塩が好ましく、さらに好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、最も好ましくはナトリウム塩である。
【0017】
本発明において、ポリアクリル酸塩又はPAMPS塩とは、ポリアクリル酸又はPAMPSを前記塩基(すなわち、前記アルカリ金属、有機アミン、塩基性窒素含有化合物等)で中和することで得られる化合物、あるいは、前記塩基であらかじめ酸部分を中和したアクリル酸又は2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(以下、AMPSと略記)を重合することで得られる化合物を意味する。
【0018】
精密合成ポリマーの例としては、後述するRAFT重合法によって合成できるものが好ましく、モノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸エステル等のアクリル酸系モノマー、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、カルボキシビニル、ビニルメチルエーテル等のビニル系モノマー、及び、スチレン、ウレタン等を構成単位とするホモポリマー及び/又はその塩、並びに、これらのモノマーとアクリル酸、AMPSから選ばれた2種類以上のモノマーからなるコポリマー及び/又はその塩が挙げられる。このうち、アクリル酸系、又はアクリルアミド系モノマーを構成単位とするものが特に好ましい。また、前記モノマーに、側鎖としてポリエチレングリコール、シリコーン系高分子化合物等が付加されたマクロモノマーも、構成単位として好適に用いることができる。
【0019】
具体的な化合物例としては、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ酢酸ビニル、及びカルボキシビニルポリマー等、並びに、(アクリル酸/アクリル酸アルキル)共重合体、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)共重合体、(アクリル酸アルキル/スチレン)共重合体、ポリアクリル酸エステル共重合体、(ジメチルアクリルアミド/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)共重合体とそれらの塩が挙げられる。
【0020】
本発明に係る化粧料における(a)成分の配合量は、0.005~2質量%、好ましくは0.005~1.5質量%、より好ましくは0.005~1質量%である。配合量が0.005質量%未満であると十分な法線応力が得られない場合があり、2質量%を越えて配合すると法線応力が高すぎてぬるつきが生じる場合がある。
【0021】
・精密合成ポリマーの合成方法
本発明に係る精密合成ポリマーは、公知のリビング重合法により合成することができる。リビング重合には、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、リビングラジカル重合(精密ラジカル重合、又は制御ラジカル重合)が挙げられる。
リビングラジカル重合には、ニトロキシドを介した(ラジカル)重合、又はニトロキシド媒介(ラジカル)重合(NLRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加-開裂連鎖移動(Reversible Addition/Fragmentation Chain Transfer;RAFT)重合等が挙げられる。原子移動ラジカル重合(ATRP)には、電子移動由来アクチベーターATRP、又は電子移動により生成する活性化剤ATRP(AGET ATRP)、電子移動由来再生アクチベーターATRP又は電子移動により再生される活性化剤ATRP(ARGET ATRP)、連続的に活性種を再生するための開始剤ATRP又は活性化剤が定常的に再生する開始剤ATRP(ICAR ATRP)、逆ATRP(Reverse ATRP)が挙げられる。RAFT重合法とは、連鎖移動剤としてRAFT剤を用いるリビングラジカル重合法である。RAFT重合の派生技術として、有機テルルを成長末端とするリビングラジカル重合、又は有機テルル媒介リビングラジカル重合(TERP)、アンチモン媒介リビングラジカル重合(SBRP)、ビスマス媒介リビングラジカル重合(BIRP)が挙げられる。その他のリビングラジカル重合として、ヨウ素移動ラジカル重合(IRP)、コバルト媒介ラジカル重合(CMRP)等が挙げられる。
【0022】
アクリル酸の直接重合は重合の簡便さから好ましいが、触媒などの不溶塩の生成等で重合が困難な場合には、t-ブチルアクリレート、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メチル等の保護アクリル酸エステルを使用し、その後脱保護を行うことで、目的の高分子化合物を得ることができる。
【0023】
本発明においては、特に高分子量体の精密合成(すなわち、分子量分布の狭い高分子化合物の合成)が可能な点でリビングラジカル重合法が好ましく、さらに、可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT重合法)がより好ましい(特許文献2)。
また、他の重合法では、分岐や架橋といった副次的反応が非常に起きやすいが、リビングラジカル重合法では、分岐や架橋が起きにくいことも知られている。
特に、RAFT重合法は、活性なポリマー末端間で連鎖移動剤(RAFT剤)を交換しながら成長を続ける、いわゆる交換連鎖機構でリビング化を実現する重合法である。RAFT剤がポリマー鎖の生長末端に結合すると休止状態(ドーマント化)となり、外れると生長反応が起こるが、結合の平衡状態が結合側にかなり偏っているため(すなわち、RAFT剤が外れている時間よりも、結合している時間の方が非常に長い)、ポリマー鎖の生長速度は非常に遅く、末端の反応性は低く抑えられる。これにより、各ポリマー鎖における生長反応の足並みが揃い、ポリマーの重合度は基本的に反応時間に比例することになるので、分子量分布の非常に狭いポリマーを得ることができる。また、反応性の低さゆえに、分岐や架橋といった副次的反応が一段と起きにくくなると考えられている。
【0024】
RAFT剤(すなわち、連鎖移動剤)としては、ジチオカルボニル化合物、トリチオカルボニル化合物を好適に用いることができ、さらに好ましくはジチオカルバメート、トリチオカルバメートであり、最も好ましくは4-シアノペンタン酸ジチオベンゾエート、α-(メチルトリチオカルボネート)-S-フェニル酢酸である。重合開始剤は連鎖移動剤と化学構造が近いものが好ましく、アゾ系開始剤が好ましい。重合溶媒は特に限定されず、モノマー、ポリマーへの溶解性が高いものが適宜選択される。重合時間は、数時間から100時間程度が好適である。
【0025】
・分子量測定方法
精密合成ポリマーの分子量は、重量平均分子量については光散乱法、超遠心法、クロマトグラフィー法等、数平均分子量については浸透圧法、クロマトグラフィー法等の公知の方法によって測定することができる。なかでも、少量の試料で簡便に重量平均分子量、数平均分子量、及び分子量分布が得られる点でクロマトグラフィー法が好ましく、さらには、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(以下、GPCと略記)が好適である。
なお、本願で用いる分子量分布は、GPC解析によって得られた重量平均分子量を数平均分子量で除した値である。
【0026】
[(b)成分]
本発明には、(b)成分として、(b)架橋密度が0.01-1モル%である架橋型水膨潤性ポリマー、または、ゲル化能を有する親水性化合物からなるゲルの破砕により得られるミクロゲルを用いることができる。
【0027】
前記架橋型水膨潤性ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸または変性(メタ)アクリル酸をベースとするポリマーが挙げられ、例えば、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)に代表されるアクリル酸の架橋ポリマー、(メタ)アクリル酸とポリアルキレンポリエーテルとのコポリマー、疎水性変性されたポリ(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリレート/C10-30-アルキルアクリレートポリマー、(メタ)アクリレート類/ベヘネス-25メタクリレートコポリマー、(メタ)アクリレート/(メタ)アクリルアミドコポリマー、(メタ)アクリレート/(メタ)アルキルアクリルアミドコポリマー、(メタ)アクリレート/(メタ)ヒドロキエチルアクリルアミドコポリマー、(メタ)アクリレート/ポリアルキレンオキシドアルキル変性(メタ)アクリレート等が例示される。
また、ポリスルホン酸、好ましくはアクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはそれの塩と、環状N-ビニルカルボキシアミド類および線状のN-ビニルカルボキシアミド類から選択される1種類以上のコモノマーとをベースとするコポリマー、または架橋アクリルアミドアルキルスルホン酸コポリマー;アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはそれの塩の架橋したホモポリマー;アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはそれの塩と、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アルキルアクリルアミド、(メタ)ヒドロキシエチルアクリルアミド、ポリアルキレンオキシドアルキル変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびカチオン変性された(メタ)アクリレート類から選択されるコモノマーとのコポリマー等も好適に用いることができる。
【0028】
このうち、カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドアルキルスルホン酸/ベヘネス-25架橋コポリマー、アクリルアミドアルキルスルホン酸/ビニルピロリドン架橋コポリマー、アクリルアミドアルキルスルホン酸/アルキルアクリルアミド架橋コポリマーが特に好適である。
【0029】
前記架橋型水膨潤性ポリマーの架橋密度は、0.01-1モル%、好ましくは0.02-0.8モル%、最も好ましくは0.05-0.5モル%である。なお、本発明においては、水に対して無限膨潤し得るポリマーは不適である。
【0030】
前記ミクロゲルとしては、ゲル化能を有する親水性化合物を水または水性成分に溶解した後、放置冷却して形成したゲルを粉砕して得られるミクロゲルが例示される。
前記ゲル化能を有する親水性化合物としては、ゲル化能を有する水溶性化合物であって、化粧料、医薬品分野で用いられるものであれば特に限定されることはない。具体的には、ゼラチン、コラーゲン等のゲル化能を有する親水性タンパク質や、寒天、カードラン、スクレログルカン、シゾフィラン、ジェランガム、アルギン酸、カラギーナン、マンナン、ペクチン、ヒアルロン酸等の親水性多糖類等が例示される。中でも、ゼラチン、寒天、カードラン、ジェランガム、アルギン酸、カラギーナンは、塩やイオンの影響を受け難く、安定なゲルを調製可能であることから特に好ましく用いることができる。ゲル化能を有する親水性化合物は1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
本発明に係るミクロゲルは、例えば、特許4979095号公報に記載された方法によって製造することができる。具体的には、前記ゲル化能を有する親水性化合物を、水または水性成分に溶解した後、放置冷却して固化させてゲルを形成させる。前記化合物の水または水性成分への溶解は、混合、加熱等によって行うことができる。ゲル化(固化)は、溶解後、加熱を止めてゲル化温度(固化温度)より低温となるまで放置(静置)することにより行ってもよい。
次いで、上記形成されたゲルをホモジナイザー、ディスパー、メカニカルスターラー等で処理して破砕し、所望のミクロゲルを得る。本発明では、ミクロゲルの平均粒径は0.1~1,000μmであることが好ましく、より好ましくは1~300μm程度、さらに好ましくは10~200μm程度である。
【0032】
本発明の化粧料における架橋密度が0.01-1モル%である架橋型水膨潤性ポリマーの配合量は、0.01~2質量%、好ましくは0.02~1.5質量%、より好ましくは0.05~1質量%である。配合量が0.01質量%未満であると十分な増粘効が得られない場合があり、5質量%を越えて配合するとべたつきが生じる場合がある。
また、本発明の化粧料におけるゲル化能を有する親水性化合物からなるゲルの破砕により得られるミクロゲルの配合量は、0.1~5質量%、好ましくは0.15~4質量%、より好ましくは0.2~3質量%である。配合量が0.1質量%未満であると十分なゲル化能が得られない場合があり、5質量%を越えて配合するとざらつきが生じる場合がある。
【0033】
[油分]
本発明に係る化粧料の油相を形成する油分は、化粧料等に従来から使用されている油分から選択することができ、特に限定されるものではない。例えば、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、液体油脂、固体油脂、ロウ類、さらには油溶性薬剤等から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0034】
炭化水素油としては、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、イソパラフィン、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0035】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0036】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等)、分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)-2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0037】
合成エステル油としては、例えば、オクタン酸オクチル、ノナン酸ノニル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ピバリン酸トリプロピレングリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、ジイソステアリン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート-2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0038】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等)、環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、アクリルシリコーン類等が挙げられる。
【0039】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0040】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0041】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0042】
本発明に係る水中油型乳化化粧料の油相には、上記油分以外にも、化粧料に通常用いられる油性成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0043】
[界面活性剤]
本発明には、乳化剤として、種々の界面活性剤及び/または乳化剤を、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0044】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤より任意に選択することができ、全体としてHLB7以上となることが好ましい。ここで、HLBとは、親水性-親油性のバランス(Hydrophilic-Lypophilic Balance)を示す指標であり、本発明においては小田、寺村らによる次式を用いて算出した値である。
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
また、「全体としてのHLBが7以上」とは、例えば、HLBがaである界面活性剤をx質量%とHLBがbである界面活性剤を(100-x)質量%組み合わせて使用した場合、全HLB=a・x/100+b・(100-x)/100とした時の値を意味する。
なお以下の記載において、POEはポリオキシエチレンを、POPはポリオキシプロピレンを、それぞれ意味する。
【0045】
ノニオン界面活性剤としては、例えばPOE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンモノオレート、POE-ソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POE-モノオレエート、POE-ジステアレート、POE-モノジオレーエート、ステアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類、POE-オクチルフェニルエーテル、POE-ノニルフェニルエーテル、POE-ノニルフェニルエーテル、POE-ジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類、ブルロニック等のプルアロニック型類、POE・POP-セチルエーテル、POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油誘導体又は硬化ヒマシ油誘導体、POEソルビットミツロウ等のミツロウラノリン誘導体、グリセリンモノステアリン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類、ジグリセリンジイソステアリン酸エステル、デカグリセリルモノステアリン酸エステル、デカグリセリルモノイソステアリン酸エステル、デカグリセリルモノオレイン酸エステル、デカグリセリルジオレイン酸エステル、デカグリセリルトリイソステアリン酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタントリオレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸、POE変性ジメチルポリシロキサン、POE・POP変性ジメチルポリシロキサン等のジメチコンコポリオール等が挙げられる。
【0046】
アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸カリウム、ベヘニン酸カリウム等の高級脂肪酸塩、POEラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩、N-ステアロイル-L-グルタミン酸モノナトリウム塩等のN-アシル-L-グルタミン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン酸塩、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のアルキルエーテルリン酸塩、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼン、スルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩が挙げられる。
【0047】
カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N、N-ジメチル-3、5-メチレンピペリジニウム)、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0048】
両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N、N、N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミタゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等の、イミダゾリン系両性界面活性剤、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
乳化剤としては、化粧料に通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、高分子乳化剤として機能するポリマーを用いることができる。そのようなポリマーとしては、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が挙げられ、カーボポール(Carbopol)1342、ペミュレン(Pemulen)TR-1、ペミュレン(Pemulen)TR-2の商品名で知られる市販品を使用することができる。
【0050】
[水]
本発明に係る化粧料は、水相成分として水を含有する。当該水は特に限定されることはなく、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を用いることができる。
【0051】
本発明に係る化粧料の水相には、上記水以外にも、化粧料に通常用いられる水性成分、例えば、水溶性アルコール等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0052】
水溶性アルコールとしては、例えば、低級アルコール、多価アルコール、多価アルコール重合体、2価のアルコールアルキルエーテル類、2価アルコールアルキルエーテル類、2価アルコールエーテルエステル、グリセリンモノアルキルエーテル、糖アルコール等が挙げられる。
【0053】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等が挙げられる。
【0054】
多価アルコールとしては、例えば、2価アルコール(例えば、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等)、3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等)、4価アルコール(例えば、ジグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等)、5価アルコール(例えば、キシリトール、トリグリセリン等)、6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等)、多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールートリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリンートリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等)、2価のアルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等)、2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルトリエチレングリコールモノメチルエーテルトリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等)、2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等)、グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等)、糖アルコール(例えば、マルトトリオ-ス、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコ-ス、フルクト-ス、デンプン分解糖、マルト-ス、デンプン分解糖還元アルコール等)、グリソリッド、テトラハイドロフルフリルアルコール、POE-テトラハイドロフルフリルアルコール、POP-ブチルエーテル、POP・POE-ブチルエーテルトリポリオキシプロピレングリセリンエーテル、POP-グリセリンエーテル、POP-グリセリンエーテルリン酸、POP・POE-ペンタンエリスリトールエーテル、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0055】
本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧料に用いられるその他の成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、保湿剤、紫外線吸収剤、薬効成分、経皮吸収促進剤、金属イオン封鎖剤、粉末成分、ビタミン類、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、中和剤、香料、色素等が挙げられる。
【0056】
本発明の化粧料は、化粧水、乳液、美容液、クリーム、化粧下地等の製品形態をとることができる。特に好ましくは、化粧水、乳液、美容液である。
【0057】
本発明にかかる化粧料は、定法に従って作製することができる。例えば、油相成分を混合溶解し、それを攪拌しながら水相成分に添加して乳化させることにより製造してもよい。
【実施例
【0058】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、この実施例により本発明の範囲が限定されるべきものではない。また、本実施例における配合量は、特に断りがない限り、質量%である。
【0059】
最初に、実施例で用いた精密合成ポリアクリル酸ナトリウムの合成方法を示す。
<合成例1>
イオン交換水(9ml)にアクリル酸(2511mg)、及びV-501(0.17mg)を溶解し、CPD(0.17mg)を溶解させたメタノール溶液(1ml)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で24時間重合反応を行った。重合反応後、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.0~7.0に調整した後、精製水に対して4日間透析し、その後凍結乾燥を行うことで精密合成ポリアクリル酸ナトリウム-1(1.82g、収率72%)を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は730万、分子量分布は1.2であった。
【0060】
<合成例2>
イオン交換水(9ml)にアクリル酸(2514mg)、メチレンビスアクリルアミド(9.6μg)、及びV-501(0.17mg)を溶解し、CPD(0.17mg)を溶解させたメタノール溶液(1ml)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で24時間重合反応を行った。重合反応後、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.0~7.0に調整した後、精製水に対して4日間透析し、その後凍結乾燥を行うことで精密合成ポリアクリル酸ナトリウム-2(1.99g、収率79%)を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は326万、分子量分布は1.7であった。
【0061】
<合成例3>
イオン交換水(760g)にアクリル酸(120g)、及びV-501(0.12g)を溶解し、CPD(0.12g)を溶解させたメタノール溶液(95g)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で96時間重合反応を行った。重合反応後、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.0~7.0に調整した後、水/アセトンを用いた際沈殿を行い精製した。その後、減圧乾燥を行うことで、精密合成ポリアクリル酸ナトリウム-3(75.6g、収率63%)を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は69.5万、分子量分布は1.3であった。
【0062】
下表1、2において*でマークしたその他の成分は以下のものである。
*1:ペミュレン TR-2(Pemulen TR-2、BF Goodrich社製))
*2、3:ポリアクリル酸のナトリウム塩(部分中和)
分子量が1000万以上の分子種の含有量と、重量平均分子量の3倍以上の分子量を有する化合物の含有量が、いずれも10質量%超(特許文献2において解析済み)
【0063】
[試験例1]
表1、2に記載した処方の水中油型乳化化粧料(美容液)を下記製造方法に従って作製し、下記方法によって物性を評価した。さらに、下記項目(1)~(6)について、専門パネルを用いた実使用試験を行った。結果を表1、2に合わせて示す。
【0064】
<製造方法>
ジメチコンとトリエチルヘキサノインを混合溶解し(=混合液A)、水酸化カリウム以外の残りの成分を均一に溶解した(=混合液B)。混合液Aを混合液Bに徐添し、ホモジナイザーを用いて混合した。さらに、水酸化カリウムを添加してホモジナイザー処理することで、所定の美容液を得た。
【0065】
<物性評価>
・粘度
各組成物を25℃に保温した後、B型回転粘度計(ビスメトロン粘度計、芝浦システム株式会社製)を用いて1分間回転(12rpm)した後の粘度値(mPa・s)を測定した。
・pH
pHメーター(HORIBA pH METER F-52、株式会社堀場製作所製)を用いて、25℃におけるpHを測定した。
・第一法線応力差の勾配
各組成物の第一法線応力差を算出し、算出した該第一法線応力差を前記ずり速度で除算することによって得られる該第一法線応力差の勾配として算出した(特許文献1参照)。ずり速度100s-1以上における、ずり速度(s-1)に対する第一法線応力差(Pa)測定値をプロットし、線形近似による傾きを、第一法線応力差の傾き(Pa・s)として算出した。
・粘弾性比(tanδ)
1Hzの周波数印加時のひずみ変化に対応する組成物の弾性率変化を測定し、特定ひずみ条件下における損失弾性率G''と貯蔵弾性率G'を算出した。その比として得られる値 G''/G'を粘弾性比とした。
【0066】
<実使用試験>
専門パネル10名に対し、試験組成物を顔に塗布してもらい、(1)リッチ感、(2)コク、(3)みずみずしさ、(4)曳糸性のなさ、(5)のびのよさ、(6)べたつきのなさ、について、当該効果の有無を回答してもらった。回答結果を以下の基準に従って集計し、表中に記載した。
◎:9名以上が、効果があると答えた。
○:7名以上8名以下が、効果があると答えた。
△:5名以上6名以下が、効果があると答えた。
×:4名以下が、効果があると答えた。
本発明においては、◎と○を合格、△と×を不合格とした。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示されているように、増粘剤として、精密合成ポリマーでない(b)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーとカルボキシビニルポリマーとを配合した美容液では、みずみずしさ、曳糸性のなさ、のびの良さ、べたつきのなさの点では優れていたが、十分なリッチ感とコクは得られなかった(比較例1)。これに対し、比較例1の処方に精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例1)を追加した美容液では、粘弾性比(tanδ)と第一法線応力差の勾配が顕著に増加して、みずみずしさ等の効果に加えて、非常に優れたリッチ感とコクが得られるようになった(実施例1)。
【0069】
同様に、増粘剤として、精密合成ポリマーでない(b)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーと、架橋型N,N-ジメチルアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体(比較例2)、(アクリロイルジメチルタウリン酸/VP)コポリマー(比較例3)、(アクリロイルジメチルタウリン塩/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマー(比較例4)、または寒天(比較例5)とを併用した美容液では、いずれにおいても十分なリッチ感とコクは得られなかったが、これらの処方に(a)精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例1)を追加した美容液では、いずれにおいても粘弾性比と第一法線応力差の勾配が顕著に増加して、非常に優れたリッチ感とコクが得られるようになった(実施例2-5)。
【0070】
図1に、(a)成分と(b)成分について、単独または併用した場合の粘弾性比と第一法線応力差の勾配を示す。一般的に、美容液では、図1の第1象限(粘弾性比が1.0より大きく、且つ、第一法線応力差の勾配が0.10より大きい)にプロットされるものは、十分な粘弾性比と第一法線応力差の勾配を有し、リッチ感とコクを発現し得ると判断できる。
【0071】
図1より、(a)成分と(b)成分のいずれについても、単独では第2象限または第3象限にプロットされる。しかしながら、併用すると、x軸及びY軸ともに単独での値を足し合わせたよりも高い値となり、第1象限にプロットされるようになった。
よって、(a)成分と(b)成分を併用すると、両者の間に相乗効果が生じて、粘弾性比と第一法線応力差の勾配が増大することが示された。
【0072】
以上の結果より、化粧料に通常使用される分子制御されていない各種増粘剤に本発明の精密合成ポリマーを追加すると、両者の相乗効果により、系の粘弾性比と第一法線応力差の勾配がいずれも大幅に増加して、みずみずしさやのびの良さ、べたつきや曳糸性のなさを保持したままで、非常に優れたリッチ感とコクが得られるようになることが明らかとなった。
【0073】
[試験例2]
次に、追加するポリマーについて検討した。
具体的には、(a)精密合成ポリアクリル酸ナトリウムだけでなく、通常の方法で合成されたポリアクリル酸ナトリウムを配合して、その効果を比較検討した。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
通常合成されたポリアクリル酸ナトリウム-1を追加した基剤では、粘弾性比に加えて第一法線応力差の勾配が非常に大きく増加し、優れたリッチ感とコクが得られるようになったが、曳糸性が生じ、みずみずしさが損なわれた(比較例6、7)。また、通常合成されたポリアクリル酸ナトリウム-2を追加した基剤では、粘弾性比に加えて第一法線応力差の勾配が非常に大きく増加し、曳糸性が生じて、リッチ感、コク、みずみずしさが損なわれる傾向が見られた(比較例8、9)。
【0076】
よって、前記精密合成ポリアクリル酸ナトリウムを追加することで得られた効果は、当該ポリマーが分子制御されていること、すなわち、重量平均分子量が50万~800万であり、分子量が1000万以上である化合物の含有量が10質量%以下であって、直鎖状であることに起因することが示された。
【0077】
[試験例3]
次に、本発明に係る精密合成ポリマーの乳液に対する効果を検討した。
表3に記載した処方の水中油型乳化化粧料(乳液)を定法に従って作製し、試験例1と同じ方法によって物性及び使用感を評価した。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3に示されるように、増粘剤として精密合成ポリマーでない(b)カルボキシビニルポリマーのみを配合した乳液では、リッチ感、コク、曳糸性のなさ、べたつきのなさでは優れていたが、みずみずしさに劣り、のびの良さも不十分なものがあった(比較例10-12)。これに対し、当該比較例の処方に精密合成ポリアクリル酸ナトリウムを追加した乳液では、当該追加量に応じて粘弾性比(tanδ)と第一法線応力差の勾配が顕著に増加し、リッチ感とコクに一層優れる結果となった(実施例6-11)。さらに、これらの実施例では、みずみずしさとのびの良さも顕著に改善されていた(比較例10に対して実施例6または7、比較例11に対して実施例8または9、比較例12に対して実施例10または11)。
【0080】
よって、乳液においても、本発明に係る(a)成分と(b)成分を併用すると、粘弾性比と第一法線応力差の勾配が増大してリッチ感とコクが亢進し、さらにみずみずしさとのびの良さも付与されることが示された。
【0081】
[試験例4]
さらに、本願で用いたRAFT重合法とは異なる重合法でポリアクリル酸ナトリウムを製造し、曳糸長を測定した。当該方法としては、特許第5076428号公報の実施例1に記載された、連鎖移動剤として2-メルカプトエタノールを用いる重合法を採用した。
【0082】
<ポリアクリル酸ナトリウムの製造方法>
密閉した三ツ口フラスコに98%アクリル酸69g(0.94モル)、36%アクリル酸ナトリウム水溶液245.5g(0.94モル)、純水205gを含む単量体混合物の水溶液を入れ、撹拌しながら、アルゴンで溶存酸素を追い出した。アルゴン置換下で、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を0.14g、2-メルカプトエタノール0.00185gをそれぞれアルゴン置換済みの純水で希釈して1%水溶液としてシリンジで単量体混合物に注入し、水溶液を調製した。
次に、アルゴンで溶存酸素を十分置換した単量体混合物を、85.7φポリスチレン製シャーレに入れ、蓋をして、60℃の恒温槽(ヤマト科学株式会社 型式ADP300)で熱重合した結果、特許第5076428号公報実施例1の記載と同様にゲル状物質が得られた(特許第5076428号公報の実施例1では、UVランプを照射して60℃程度に加温しているが、同様の条件を恒温槽にて再現した)。
残存モノマーを除去するため、ゲル状物質を純水中に撹拌しながら溶解させた後、透析チューブ(Fisherbrand regenerated cellulose ポアサイズ10Å)を用いて透析を行った。透析後、凍結乾燥により(東京理化器械株式会社 FDU2100)白色のポリマー粉末を回収した。
【0083】
<物性評価>
・曳糸性
特許文献2に記載された装置及び条件を用いて評価した。具体的には、得られたポリアクリル酸ナトリウムの1質量%水溶液を調製し、室温にて容器内に収容した。当該容器をテクスチャーアナライザー(TA XT PLUS、ステーブルマイクロシステムズ社製)にセットし、前記水溶液の表面に直径約1cmの丸型円盤を均一に軽く接触させた後、5mm/秒の速度で前記容器を降下させて、当該溶液が糸を曳く様子を観察した。当該溶液の糸曳きが切れるまでに前記容器が降下した距離を“曳糸長”として測定した。この曳糸長は、当該高分子化合物の曳糸性の指標となる値で、数値が大きいほど曳糸性が強いことを示す。そして、曳糸長が10mm以下である場合に、低曳糸性と判断した。
【0084】
・水溶液粘度測定
50mlガラス製スクリュー管に純水39.92gを入れ、ポリアクリル酸ナトリウム0.08gを投入し、プラネタリーミキサー(株式会社シンキー ARE-100)にて10分間攪拌し、0.2質量%水溶液を調整した。調製液をB型粘度計にて、20℃、30 rpmの条件で粘度を測定した。
対象として、本願明細書の合成例1に記載された方法で合成した精密合成ポリアクリル酸ナトリウム-1について、50mlガラス製スクリュー管に純水39.92gを入れ、ポリアクリル酸ナトリウム0.08gを投入し、プラネタリーミキサー(株式会社シンキー ARE-100)にて10分間攪拌し、0.2重量%水溶液を調整した。調製を2回繰り返した後、100mLガラス製スクリュー管に試料を合わせ、B型粘度計にて、20℃、30 rpmの条件で粘度を測定した。
【0085】
<結果>
前記RAFT重合法ではない重合法で製造したポリアクリル酸ナトリウムの1%水溶液は、目視でも明らかに曳糸性が認められ(前記測定の過程で、粘っこく、糸を引く様子が観察された)、測定された曳糸長は12mmであった。また、当該ポリアクリル酸ナトリウムの0.2質量%水溶液の粘度は、560mPa・sであった。
これに対し、本願の合成例1の方法で合成した精密合成ポリアクリル酸ナトリウム-1は、目視による曳糸性は全く認められず、曳糸長は6mmであった。また、当該ポリアクリル酸ナトリウムの0.2質量%水溶液の粘度は、64.4mPa・sであった。なお、一般にポリマーの曳糸性は、粘度や粘弾性と相関する傾向があることが知られている。
よって、ポリマーの曳糸性はその合成方法によって大きく異なり、RAFT重合法を用いると、(RAFT剤以外の連鎖移動剤を用いた重合法を用いた場合よりも)曳糸性が非常に低いポリマーが得られることが確認された。
【0086】
以下に、本発明にかかる化粧料の処方例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記化粧料は、特に断りが無い限り、定法に従って製造した。
[処方例1:化粧水]
<処方>
成分 配合量(質量%)
エチルアルコール 5
グリセリン 1
1,3-ブチレングリコール 5
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル
0.2
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.03
トリメチルグリシン 1
ポリアスパラギン酸ナトリウム 0.1
α-トコフェロール2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム
0.1
チオタウリン 0.1
緑茶エキス 0.1
西洋ハッカエキス 0.1
イリス根エキス 1
EDTA3ナトリウム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.05
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例1) 0.01
水酸化カリウム 0.02
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0087】
[処方例2:化粧水]
<処方>
成分 配合量(質量%)
ジプロピレングリコール 5
グリセリン 6
ブチレングリコール 7
ポリエチレングリコール 5
メチルグルセス-10 2
トリエチルヘキサノイン 0.3
PEG-60水添ヒマシ油 0.5
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 0.4
カルボキシビニルポリマー 0.05
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例1) 0.05
水酸化カリウム 0.02
トラネキサム酸 1
アルギン酸ナトリウム 0.1
クエン酸 適量
フェノキシエタノール 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0088】
[処方例3:化粧水]
<処方>
成分 配合量(質量%)
グリセリン 2
1,3-ブチレングリコール 4
エリスリトール 1
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
ジメチルアクリルアミド
架橋型N,N-ジメチルアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例2) 0.03
N-ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルDL-ピロリドンカルボン酸
0.1
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.08
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0089】
[処方例4:化粧水]
<処方>
成分 配合量(質量%)
グリセリン 10
エタノール 5
ジプロピレングリコール 6
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 1
PPG-13デシルテトラデセス-24 0.5
(アクリロイルジメチルタウリン酸/VP)コポリマー 0.05
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例3) 0.03
乳酸 1
トラネキサム酸 2
キサンタンガム 0.1
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0090】
[処方例5:化粧水]
<処方>
成分 配合量(質量%)
ミネラルオイル 0.5
イソステアリルアルコール 0.5
グリセリン 4
ジプロピレングリコール 5
ブチレングリコール 5
ポリエチレングリコール 4
イソステアリン酸 1
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 5
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.3
PEG-30ダイズステロール 1
(アクリロイルジメチルタウリン酸/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマー
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例3) 0.05
トラネキサム酸 1
グリチルリチン酸2K 0.05
クエン酸 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0091】
[処方例6:美白乳液]
<処方>
成分 配合量(質量%)
水添ポリデセン 1
ジメチコン 1
シクロメチコン 2
ベヘニルアルコール 0.2
バチルアルコール 0.1
グリセリン 7
ブチレングリコール 8
エチルヘキサン酸セチル 2
ポリソルベート60 0.1
PEG-60水添ヒマシ油 0.1
アスコルビルグルコシド 2
キサンタンガム 0.05
ポリアクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン共重合体分散液(実分)
2.5
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例1) 0.5
エデト酸二ナトリウム 適量
水酸化カリウム 適量
クエン酸 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
酸化鉄 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0092】
[処方例7:乳液]
<処方>
成分 配合量(質量%)
カルボキシデシルトリシロキサン 1
ジメチコン 1.5
シクロメチコン 2.5
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1
ベヘニルアルコール 1
バチルアルコール 1
グリセリン 2
ジプロピレングリコール 7
ステアリン酸グリセリル(SE) 1
ステアリン酸PEG-5グリセリル 0.5
トラネキサム酸 2
カルボマー 0.1
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例2) 0.3
水酸化カリウム 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
酸化鉄 適量
フェノキシエタノール 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0093】
[処方例8:乳液]
<処方>
成分 配合量(質量%)
水添ポリデセン 2
ワセリン 1
ジメチコン 1
エタノール 2
ベヘニルアルコール 1.2
グリセリン 8
ブチレングリコール 4
ステアリン酸 0.5
ベヘニン酸 0.5
セテス-25 0.3
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 0.3
架橋型N,N-ジメチルアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体
0.5
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例2) 0.8
4-メトキシサリチル酸カリウム塩 1
トラネキサム酸 2
酢酸トコフェロール 1
水酸化カリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0094】
[処方例9:乳液]
<処方>
成分 配合量(質量%)
ワセリン 5
ベヘニルアルコール 0.5
バチルアルコール 0.5
グリセリン 7
1,3-ブチレングリコール 7
1,2-ペンタンジオール 1
キシリット 3
ポリエチレングリコール20000 2
硬化油 2
ホホバ油 2
スクワラン 5
イソステアリン酸 0.5
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 0.4
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.01
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
トリメチルグリシン 3
アルブチン 3
酵母エキス 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
チオタウリン 0.1
クララエキス 0.1
クインスシードエキス 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.2
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例3) 0.3
水酸化カリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
ベンガラ 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0095】
[処方例10:乳液]
<処方>
成分 配合量(質量%)
ジメチルポリシロキサン 3
デカメチルシクロペンタシロキサン 4
エタノール 5
グリセリン 6
1,3-ブチレングリコール 5
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 3
ヒマワリ油 1
スクワラン 2
水酸化カリウム 0.1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
ビワ葉エキス 0.1
L-グルタミン酸ナトリウム 0.05
ウイキョウエキス 0.1
酵母エキス 0.1
ラベンダー油 0.1
ジオウエキス 0.1
ジモルホリノピリダジノン 0.1
キサンタンガム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例1) 0.5
ベンガラ 適量
黄酸化鉄 適量
パラベン 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0096】
[処方例11:乳液]
<処方>
成分 配合量(質量%)
ジメチコン 2
エタノール 3
ベヘニルアルコール 1
グリセリン 3
ジプロピレングリコール 5
ブチレングリコール 3
トリエチルヘキサノイン 1
ステアロイルメチルタウリンNa 0.1
クエン酸 0.18
クエン酸ナトリウム 0.02
トラネキサム酸 2
キサンタンガム 0.05
(アクリロイルジメチルタウリン酸/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマー
0.5
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例1) 0.5
フェノキシエタノール 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0097】
[処方例12:乳液]
<処方>
成分 配合量(質量%)
ジメチルポリシロキサン 3
メチルフェニルポリシロキサン 3
エタノール 5
グリセリン 4
ジプロピレングリコール 5
1,3-ブチレングリコール 5
コハク酸ジ2-エチルヘキシル 3.5
水酸化カリウム 0.1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
チオタウリン 0.1
エデト酸三ナトリウム 0.1
4-t-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン 3
パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 3
酸化鉄 0.01
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
(アクリロイルジメチルタウリン酸/VP)コポリマー
0.05
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例2) 0.5
パラベン 適量
香料 適量
精製水 残余
合計 100.0
【0098】
[処方例13:ジェル]
<処方>
成分 配合量(質量%)
ジメチルポリシロキサン 5
グリセリン 2
1,3-ブチレングリコール 5
ポリエチレングリコール1500 3
ポリエチレングリコール20000 3
オクタン酸セチル 3
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
アスコルビン酸グルコシド 2
酢酸トコフェロール 0.1
オウゴンエキス 0.1
ユキノシタエキス 0.1
エデト酸三ナトリウム 0.1
キサンタンガム 0.3
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05
寒天末 1.5
精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(合成例1) 0.2
フェノキシエタノール 適量
ジブチルヒドロキシトル 適量
精製水 残余
合計 100.0
<製法>
常法に従い、半透明乳化組成物を製造後、30℃以下に冷却してゲル化させ、十分に固まったところでディスパーを用いてゲルを破砕してミクロゲル(平均粒径70μm)とした後、脱気してジェル状製品を得た。
【0099】
[処方例14:美容液]
<処方>
成分 配合量(質量%)
エタノール 10
PPG-13デシルテトラデセス-24 0.1
サリチル酸 0.5
トラネキサム酸 1
キサンタガム 0.2
ジェランガム 0.5
塩化ナトリウム 0.9
水酸化カリウム 適量
ピロ亜硫酸ナトリウム 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
精製水 残余
合計 100.0
図1