(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】電源装置及び電源装置を備える車両並びに蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20230411BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230411BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20230411BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230411BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20230411BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230411BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M10/44 P
H01M50/264
H01M50/249
H01M50/251
H01M50/209
H01M50/262 P
(21)【出願番号】P 2019562862
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2018043386
(87)【国際公開番号】W WO2019130937
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2017248346
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】寺内 忍
(72)【発明者】
【氏名】小村 哲司
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-046234(JP,A)
【文献】特開2011-129509(JP,A)
【文献】特開2010-251065(JP,A)
【文献】特表2015-518258(JP,A)
【文献】特開2015-207341(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024433(WO,A1)
【文献】特開2017-152116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20 - 50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレートと、
両端部を一対の前記エンドプレートに連結するバインドバーとを備える電源装置であって、
前記バインドバーが、前記電池積層体の積層方向に伸びる板状バーと、前記板状バーに設けられて、前記エンドプレートの外周面との対向面に向かって突出する係止ブロックを有し、
前記係止ブロックは、
前記電池積層体の積層方向の横幅が前記板状バーの厚さの少なくとも5倍以上あって、前記板状バーの上下幅方向に伸びるブロック状で、前記板状バーに設けてなる固定穴に挿入される状態で、前記固定穴の内周面に固定され、
前記エンドプレートは、前記係止ブロックが案内される嵌合部を外周面に有し、
さらに、前記嵌合部の電池積層体側には、前記係止ブロックと当接するストッパ部を設けており、
前記係止ブロックが前記嵌合部に案内され、かつ前記係止ブロックが前記エンドプレートの外周面
との対向面に固定されており、
前記係止ブロックは、前記嵌合部に係止された状態で、前記嵌合部と前記ストッパ部の隅部に隙間が形成されるよう構成してなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレートと、
両端部を一対の前記エンドプレートに連結するバインドバーとを備える電源装置であって、
前記バインドバーが、前記電池積層体の積層方向に伸びる板状バーと、前記板状バーに設けられて、前記エンドプレートの外周面との対向面に向かって突出する係止ブロックを有し、
前記係止ブロックは、前記電池積層体の積層方向の横幅が前記板状バーの厚さの少なくとも5倍以上あって、前記板状バーの上下幅方向に伸びるブロック状で、
前記板状バーと前記係止ブロックとが同じ金属材で一体構造に成形され、
前記エンドプレートは、前記係止ブロックが案内される嵌合部を外周面に有し、
さらに、前記嵌合部の電池積層体側には、前記係止ブロッ
クと当接するストッパ部を設けており、
前記係止ブロックが前記嵌合部に案内され、かつ前記係止ブロックが前記エンドプレートの外周面
との対向面に固定されており、
前記係止ブロックは、前記嵌合部に係止された状態で、前記嵌合部と前記ストッパ部の隅部に隙間が形成されるよう、前記嵌合部と前記ストッパ部との接合部の角部を傾斜させてなる電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される電源装置であって、
前記ストッパ部の横幅を前記隙間の幅に比べて大きくすることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される電源装置であって、
前記係止ブロックが、複数のボルトを介して前記エンドプレートの外周面に固定されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載される電源装置であって、
前記係止ブロックは、前記ボルトの頭部を案内するガイド凹部を備えており、
前記ガイド凹部は前記ボルトのネジ部を挿通する貫通孔を底に設けており、前記ガイド凹部の底面を前記板状バーの延長ラインよりも前記エンドプレートの外周面との対向面側に位置させて、前記頭部を前記底面に固定してなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項
4または5に記載される電源装置であって、
前記係止ブロックは、前記ボルトの頭部が該係止ブロックの表面から突出するのを阻止するガイド凹部を有し、
前記頭部を前記ガイド凹部に案内してなる前記ボルトが、前記係止ブロックを貫通して前記エンドプレートにねじ込まれてなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載される電源装置であって、
前記係止ブロックが、電池積層方向の横幅を10mm以上としてなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載される電源装置であって、
前記エンドプレートが金属製であることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、該電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、該モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えることを特徴とする電源装置を備える電動車両。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを積層して電池積層体とし、この電池積層体の両端をエンドプレートで保持している電源装置及び電源装置を備える車両並びに蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電源装置は、複数の角形電池セルからなる電池積層体と、電池積層体の両端面に配置される一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートを連結するバインドバーとを備えている(特許文献1参照)。この電源装置は、電池積層体をエンドプレートとバインドバーにより拘束することで、複数の角形電池セルからなる電池積層体を集合化できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の電源装置は、バインドバーやエンドプレートを介して複数の角形電池セルからなる電池積層体を集合化させているため、電池積層体を構成する複数の角形電池セルの膨張が抑制されることになる。つまり、バインドバーやエンドプレートを介して、角形電池セルの膨張を抑制することになるため、バインドバーやエンドプレートに大きな力が加わる。
【0005】
一方で、角形電池セルは、体積あたりのエネルギー密度や重量あたりのエネルギー密度を高くしようとすると、充放電や劣化に伴う寸法変化が大きくなる傾向がある。バインドバーやエンドプレートにかかる負荷は、角形電池セルの膨張量に起因するため、膨張量に伴う寸法変化の大きい角形電池セルを用いる場合には、上記特許文献1の電源装置の構成では、エンドプレートやバインドバーに大きな負荷がかかることになり、エンドプレートやバインドバーが変形したり、破損したりするおそれがある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の重要な目的は、エンドプレートとバインドバーを介して複数の電池セルを集合化する構成としながら、エンドプレートとバインドバーの変形や破損を防止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の電源装置は、複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、前記電池積層体の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレートと、両端部を一対の前記エンドプレートに連結するバインドバーとを備えている。前記バインドバーは、前記電池積層体の積層方向に伸びる板状バーと、前記板状バーに設けられて、前記エンドプレートの外周面との対向面に向かって突出する係止ブロックを有している。前記係止ブロックは、前記電池積層体の積層方向の横幅が前記板状バーの厚さの少なくとも5倍以上であって、前記板状バーの上下幅方向に伸びるブロック状で、前記板状バーに設けてなる固定穴に挿入される状態で、前記固定穴の内周面に固定されている。前記エンドプレートは、前記係止ブロックが案内される嵌合部を外周面に有し、前記嵌合部の電池積層体側には、前記係止ブロックと当接するストッパ部を設けている。電源装置は、前記係止ブロックが前記嵌合部に案内され、かつ前記係止ブロックが前記エンドプレートの外周面との対向面に固定されており、前記係止ブロックは、前記嵌合部に係止された状態で、前記嵌合部と前記ストッパ部の隅部に隙間が形成されるよう構成している。
【0008】
本発明の他の態様の電源装置は、複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、前記電池積層体の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレートと、両端部を一対の前記エンドプレートに連結するバインドバーとを備えている。前記バインドバーは、前記電池積層体の積層方向に伸びる板状バーと、前記板状バーに設けられて、前記エンドプレートの外周面との対向面に向かって突出する係止ブロックを有し、前記係止ブロックは、前記電池積層体の積層方向の横幅が前記板状バーの厚さの少なくとも5倍以上であって、前記板状バーの上下幅方向に伸びるブロック状で、前記板状バーと前記係止ブロックとが同じ金属材で一体構造に成形されている。前記エンドプレートは、前記係止ブロックが案内される嵌合部を外周面に有し、前記嵌合部の電池積層体側には、前記係止ブロックと当接するストッパ部を設けている。電源装置は、前記係止ブロックが前記嵌合部に案内され、かつ前記係止ブロックが前記エンドプレートの外周面との対向面に固定されており、前記係止ブロックは、前記嵌合部に係止された状態で、前記嵌合部と前記ストッパ部の隅部に隙間が形成されるよう構成している。
【0009】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電源装置を備える電動車両は、前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、該電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、該モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えている。
【0010】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電源装置を備える蓄電装置は、前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラを備え、前記電源コントローラが外部からの電力による前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御している。
【発明の効果】
【0011】
以上の電源装置によれば、簡単な構造としながら、比較的大きな負荷がかかる場合であっても、エンドプレートとバインドバーの変形や破損を防止できる特徴がある。それは、以上の電源装置が、エンドプレートの外周面との対向面に向かって突出する係止ブロックをバインドバーに設けると共に、この係止ブロックを板状バーに設けた固定穴に挿入して固定し、あるいは係止ブロックと板状バーとを同じ金属材で一体構造に成形し、エンドプレートには、係止ブロックを案内する嵌合部を外周面に設けて、嵌合部の電池積層体側には係止ブロックと当接するストッパ部を設けて、係止ブロックを嵌合部に案内し、この状態で係止ブロックをエンドプレートの外周面に固定しているからである。
【0012】
さらに、以上の電源装置は、エンドプレートの嵌合部に案内する係止ブロックをエンドプレートに固定するので、エンドプレートとバインドバーとの連結強度を強くしながら、係止ブロックにより、エンドプレートの位置ずれを抑制できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置の斜視図である。
【
図4】
図3に示す電源装置の要部拡大断面図である。
【
図5】
図1に示す電源装置の係止ブロックを示す拡大斜視図である。
【
図6】バインドバーの他の一例を示す要部拡大断面図である。
【
図7】係止ブロックに設けるガイド凹部の他の一例を示す拡大斜視図である。
【
図8】エンドプレートとバインドバーの他の一例を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示すエンドプレートとバインドバーの拡大断面図である。
【
図10】エンドプレートとバインドバーの他の一例を示す拡大断面図である。
【
図11】エンジンとモータで走行するハイブリッドカーに電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図12】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図13】蓄電装置に電源装置を使用する例を示すブロック図である。
【
図14】従来の電源装置のバインドバーの曲げ加工部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の一つの着目点について説明する。多数の電池セルを積層している電源装置は、複数の電池セルからなる電池積層体の両端に配置されるエンドプレートをバインドバーで連結することで、複数の電池セルを拘束するように構成されている。複数の電池セルは、高い剛性をもつエンドプレートやバインドバーを介して拘束されることで、充放電や劣化に伴う電池セルの膨張、変形、相対移動、振動による誤動作などが抑制される。以上の電源装置は、電池セルの積層面の面積を約100平方センチメートルとするもので、電池セルの膨張を抑制することでエンドプレートに1トン以上の強い力が作用することもある。そのため、エンドプレートに固定されているバインドバーには、エンドプレートを介して極めて強い引張力が作用する。
【0015】
電池積層体の両端をエンドプレートで固定する従来の電源装置は、バインドバーの端部を内側に折曲してなる折曲片をエンドプレートの外側面に固定している。以上の構造は、金属板のバインドバーの端部を折曲加工して折曲片として、この折曲片をエンドプレートの外側表面に固定するので、折曲片はバインドバーと同じ厚さの金属板となる。バインドバーは、電池セルの膨張力によって発生する引張力に耐える引張強度の金属板が使用される。金属板の引張強度は曲げ強度に比較して相当に強く、バインドバーには例えば1mm~2mm程度の金属板が使用される。エンドプレートの外側表面に固定される折曲片は、バインドバーの引張力によって曲げ応力が作用するが、エンドプレートに使用される金属板の曲げ応力は引張応力に比較して相当に弱く、折曲片に作用する曲げ応力によって折曲片の曲げ加工部が耐力、破断強度を超えて変形、破壊する。折曲片の曲げ加工部とエンドプレートとの間に隙間がないと、曲げ加工部の内側面がエンドプレートの隅部に接触し、組み立てができない。
【0016】
以上の通り、バインドバーにかかる引張力の増加は、バインドバーの曲げ加工部内側とエンドプレート隅部には、さらに局部的に強大な応力が集中して、バインドバーやエンドプレートを変形し、また損傷する原因となる。以上の実情に鑑みて、バインドバーとエンドプレートの最適化を図り、バインドバーとエンドプレートの応力を耐力以内にする構造を検討することが重要である。
【0017】
本発明のある態様の電源装置は、以下の構成により特定されてもよい。電源装置は、複数の電池セル1を積層してなる電池積層体2と、電池積層体2の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレート3と、両端部を一対のエンドプレート3に連結するバインドバー4とを備えている。バインドバー4は、電池積層体2の積層方向に伸びる板状バー6と、この板状バー6に設けられて、エンドプレート3の外周面との対向面に向かって突出する係止ブロック5を有している。係止ブロック5は、板状バー6に設けてなる固定穴6aに挿入される状態で、固定穴6aの内周面に固定されている。エンドプレート3は、係止ブロック5が案内される嵌合部3aを外周面に有し、嵌合部3aの電池積層体2側には、係止ブロック5と当接するストッパ部3bを設けている。電源装置は、係止ブロック5が嵌合部3aに案内され、かつ係止ブロック5がエンドプレート3の外周面に固定されている。
【0018】
さらに、本発明の他の態様の電源装置は、以下の構成により特定されてもよい。複数の電池セル1を積層してなる電池積層体2と、電池積層体2の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレート3と、両端部を一対のエンドプレート3に連結するバインドバー4とを備えている。バインドバー4は、電池積層体2の積層方向に伸びる板状バー6と、この板状バー6に設けられて、エンドプレート3の外周面との対向面に向かって突出する係止ブロック5を有し、板状バー6と係止ブロック5とが同じ金属材で一体構造に成形されている。エンドプレート3は、係止ブロック5が案内される嵌合部3aを外周面に有し、嵌合部3aの電池積層体2側には、係止ブロック5と当接するストッパ部3bを設けている。電源装置は、係止ブロック5が嵌合部3aに案内され、かつ係止ブロック5がエンドプレート3の外周面に固定されている。
【0019】
以上の電源装置は、係止ブロックを嵌合部に案内してストッパ部で位置ずれを阻止し、さらに係止ブロックをエンドプレートに固定するので、従来のバインドバーの折曲片のように曲げ応力で変形することなく、係止ブロックとストッパ部とでバインドバーを変形させることなくエンドプレートに固定できる。とくに、係止ブロックをエンドプレートの嵌合部に案内してストッパ部で位置ずれを阻止するので、バインドバーに作用する強い引張力によるバインドバーとエンドプレートの変形を防止して、エンドプレートの移動を抑制できる。
【0020】
バインドバーは、電池セルの膨化力の反作用として強い引張力が作用するが、従来の電源装置においては、バインドバーの引張力が曲げ加工部において曲げ応力として作用して変形した。曲げ応力でバインドバーが変形すると、曲げ加工部は、
図14において、その内側面をエンドプレート103のコーナー部103aに密着させてバインドバー104は実質的に伸びた状態となる。この状態になると、材料の耐力、強度を超えて、破断する可能性がある。
【0021】
これに対して、以上の電源装置では、バインドバーに設けた係止ブロックをエンドプレートの嵌合部に案内し、さらに、ここに案内された係止ブロックの位置ずれをストッパ部で阻止する。この構造でエンドプレートに固定されるバインドバーは、係止ブロックとエンドプレートとの間に隙間があっても、従来のように折曲片の曲げ応力として支持することなく、係止ブロックを嵌合部に案内してストッパ部で定位置に配置する構造によってバインドバーの剪断応力として支持する。バインドバーは、剪断応力に対する強度が引張力より相当に強く、バインドバーに働く強い引張力で変形することなく、エンドプレートの移動を抑制する。
【0022】
係止ブロック5は、複数のボルト8を介してエンドプレート3の外周面に固定することができる。また、係止ブロック5は、ボルト8の頭部8aが係止ブロック5の表面から突出するのを阻止するガイド凹部5aを有し、頭部8aをガイド凹部5aに案内してなるボルト8を、係止ブロック5を貫通してエンドプレート3にねじ込むことができる。
【0023】
板状バー6と係止ブロック5は、鉄、鉄合金、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金のうちのいずれかとすることができる。さらに、係止ブロック5は、電池積層方向の横幅を10mm以上とすることができる。さらにまた、エンドプレート3は、金属製とすることができる。
【0024】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電源装置を備える電動車両は、電源装置100と、電源装置100から電力供給される走行用のモータ93と、電源装置100及びモータ93を搭載してなる車両本体90と、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。
【0025】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電源装置を備える蓄電装置は、電源装置100と、電源装置100への充放電を制御する電源コントローラ84を備え、電源コントローラ84が外部からの電力による電池セル1への充電を可能とすると共に、電池セル1に対し充電を行うよう制御している。
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0027】
(実施形態1)
図1~
図3に示す電源装置100は、複数の電池セル1を積層している電池積層体2と、この電池積層体2の積層方向の両端部に配置している一対のエンドプレート3と、両端部を一対のエンドプレート3に連結して、複数の電池セル1を積層方向に保持するバインドバー4とを備えている。
【0028】
(電池セル1)
電池セル1は、
図2に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形の電池で、厚さ方向に積層されて電池積層体2としている。電池セル1は、電池ケース10を金属ケースとする非水系電解液電池である。非水系電解液電池である電池セル1は、リチウムイオン二次電池である。ただし、電池セルは、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の二次電池とすることもできる。図の電池セル1は、幅の広い両表面を四角形とする電池で、両表面を対向するように積層して電池積層体2としている。
【0029】
電池セル1は、外形を角形とする金属製の電池ケース10に、電極体(図示せず)を収納して電解液を充填している。金属ケースからなる電池ケース10は、アルミニウムやアルミニウム合金で製造することができる。電池ケース10は、底を閉塞する筒状に金属板をプレス加工している外装缶10Aと、この外装缶10Aの開口部を気密に閉塞している封口板10Bとを備えている。封口板10Bは平面状の金属板で、その外形を外装缶10Aの開口部の形状としている。この封口板10Bはレーザー溶接して外装缶10Aの外周縁に固定されて外装缶10Aの開口部を気密に閉塞している。外装缶10Aに固定される封口板10Bは、その両端部に正負の電極端子13を固定しており、さらに正負の電極端子13の中間にはガス排出口12を設けている。ガス排出口12の内側には、所定の内圧で開弁する排出弁11を設けている。
図2に示す電池積層体2は、複数の電池セル1を、排出弁11を設けた面が略同一面に位置する姿勢で積層して、各電池セル1の排出弁11を同一平面上に配置している。図の電池積層体2は、排出弁11を設けている封口板10Bを上面とする姿勢で、複数の電池セル1を積層している。
【0030】
互いに積層される複数の電池セル1は、正負の電極端子13を接続して互いに直列及び/又は並列に接続される。電源装置100は、隣接する電池セル1の正負の電極端子13を、バスバー(図示せず)を介して互いに直列及び/又は並列に接続する。隣接する電池セルを互いに直列に接続する電源装置は、出力電圧を高くして出力を大きくでき、隣接する電池セルを並列に接続して、充放電の電流を大きくできる。
【0031】
(電池積層体2)
図2と
図3に示す電池積層体2は、複数の電池セル1を、スペーサ7を介して互いに積層しており、これらの電池セル1を直列に接続している。図の電池積層体2は、互いに隣接する電池セル1同士を逆向きに並べており、その両側において隣接する電極端子13同士をバスバーで連結して、隣り合う2個の電池セル1を直列に接続して、すべての電池セル1を直列に接続している。ただ、本発明は、電池積層体を構成する電池セルの個数とその接続状態を特定しない。
【0032】
電池積層体2は、
図2と
図3に示すように、積層している電池セル1の間にスペーサ7を挟着している。スペーサ7は、隣接する電池セル1を絶縁する。図に示すスペーサ7は、プラスチックを板状に成形した絶縁プレートである。とくに、熱伝導率の小さい材質のプラスチックで成形されるスペーサ7は、隣接する電池セル1の熱暴走を効果的に防止できる効果もある。このスペーサ7は、電池セル1を嵌着して定位置に配置する形状として、隣接する電池セル1を位置ずれしないように積層できる。
【0033】
以上のように、スペーサ7で絶縁して積層される電池セル1は、外装缶をアルミニウムなどの金属製にできる。ただ、電池積層体は、必ずしも電池セルの間にスペーサを介在させる必要はない。例えば、電池セルの外装缶を絶縁材で成形し、あるいは電池セルの外装缶の外周を絶縁シートや絶縁塗料等で被覆する等の方法で、互いに隣接する電池セル同士を絶縁することによって、スペーサを不要とできるからである。さらに、電池セルの間にスペーサを介在させない電池積層体は、電池セルの間に冷却風を強制送風して電池セルを冷却する空冷式を採用することなく、冷媒等を用いて直接冷却する方式を採用して電池セルを冷却できる。
【0034】
(エンドプレート3)
エンドプレート3は、バインドバー4に連結されて、電池積層体2を両端面から挟んで、電池セル1を積層方向に固定している。エンドプレート3の外形は、電池セル1の外形にほぼ等しく、あるいはこれよりもわずかに大きく、両側の外周面にバインドバー4を固定して、電池積層体2の膨化を抑制する四角形の板材である。このエンドプレート3は、全体をアルミニウムやアルミニウム合金、SUS、鉄等の金属製としている。ただし、エンドプレートは、図示しないが、プラスチックに金属板を積層する構造とし、あるいはまた、全体を補強繊維を埋設している繊維強化樹脂成形板としてもよい。
【0035】
エンドプレート3は、電池セル1の表面に、直接にあるいはスペーサを介して面接触状態に密着して、電池セル1を保持する。電源装置100は、組み立て工程において、電池積層体2の両端部にエンドプレート3を配置し、両端のエンドプレート3をプレス機(図示せず)で加圧して、電池セル1を積層方向に加圧する状態に保持し、この状態でエンドプレート3にバインドバー4を固定する。エンドプレート3がバインドバー4に固定された後、プレス機の加圧状態は解除される。
【0036】
エンドプレート3は、バインドバー4に固定されて電池積層体2の膨化力を受け止めて電池セル1を保持する。エンドプレート3は、固定されるバインドバー4に設けている係止ブロック5を確実に連結するために、バインドバー4に設けた係止ブロック5を案内する嵌合部3aを両側の外周面に設けている。さらに、エンドプレート3は、嵌合部3aの電池積層体2側に、係止ブロック5と当接するストッパ部3bを設けている。言い換えると、電池積層体2側にストッパ部3bを設けて、エンドプレート3の両側面に嵌合部3aを設けている。ストッパ部3bは、係止ブロック5がバインドバー4の引張力で移動するのを抑制して、係止ブロック5を定位置に配置する。ストッパ部3bは、係止ブロック5に作用するバインドバー4の引張力で変形しない横幅としている。ストッパ部3bの横幅
(h2)は、バインドバー4の引張力を考慮して最適値に設定されるが、たとえば、エンドプレート3全体をアルミニウム製として、3mm以上、好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上、最適には8mm以上とする。
【0037】
図4は係止ブロック5が嵌合部3aに案内される部分の概略拡大断面図である。この図のエンドプレート3は、嵌合部3aとストッパ部3bとの隅部に隙間16を設けている。
ここに隙間16を設けているエンドプレート3は、ストッパ部3bの横幅(h2)を隙間16の幅(W2)に対して十分に大きく、たとえば10倍よりも大きくする。隙間16の幅(W2)に対して十分に横幅(h2)の広いストッパ部3bは、バインドバー4の引張力Fを剪断応力で支持する。材料が耐える最大剪断力は最大曲げ力に比較して相当に強く、ストッパ部3bの横幅(h2)を隙間16の幅(W2)に比べて大きくして、ストッパ部3bの変形は確実に阻止できる。したがって、嵌合部3aとストッパ部3bの隅部に隙間16を設けるエンドプレート3においては、ストッパ部3bの横幅(h2)を隙間16の幅(W2)の10倍よりも大きくして、バインドバー4の引張力Fをストッパ部3bの剪断応力で支持して、ストッパ部3bの変形を防止する。
【0038】
(バインドバー4)
バインドバー4は、電池積層体2の積層方向に伸びる板状バー6と、この板状バー6の両端に設けてなる係止ブロック5とからなる。図のバインドバー4は、板状バー6の両端部に、エンドプレート3の外周面との対向面に向かって突出する係止ブロック5を設けている。板状バー6は電池積層体2の両側に配置され、係止ブロック5はエンドプレート3の外周面の両側面に固定される。
【0039】
板状バー6は、強い引張力に耐える金属板、たとえば引張強度を400MPa以上とする高張力鋼などの金属板が使用される。高張力鋼の板状バー6は、例えば、厚さを1mm~2mmとして、バインドバー4に作用する引張力に耐える強度を実現できる。
図2のバインドバー4は、電池積層体2の片側に配置される板状バー6を、上縁が電池積層体2の上部に、下縁が電池積層体2の下部に配置する上下幅の金属板としている。この電源装置100は、電池積層体2の片側面に1枚の金属板からなる板状バー6を配置している。ただ、図示しないが、電源装置は、電池積層体の片側面に、上下に分割する2枚の金属板からなる板状バーを配置することもできる。
【0040】
図1~
図3のバインドバー4は、板状バー6の両端部に係止ブロック5を固定している。このバインドバー4は、板状バー6の両端部に固定穴6aを設けて係止ブロック5を挿入し、係止ブロック5と固定穴6aの内周面とを溶接して、係止ブロック5を板状バー6に固定している。固定穴6aは板状バー6を貫通して設けられる。このバインドバー4は、
図4の拡大断面図と
図5の拡大斜視図に示すように、係止ブロック5の外形よりもわずかに大きい内形の固定穴6aを板状バー6に設け、この固定穴6aに係止ブロック5を挿入して、固定穴6aの内周縁と係止ブロック5の外周面とを溶接して、係止ブロック5を固定している。
図4の断面図に示す係止ブロック5は、板状バー6の表面から僅かに突出する状態で固定穴6aに挿入され、係止ブロック5の突出部5cの外周面及び板状バー6との間に溶加材15を溶着している。係止ブロック5は全周を固定穴6aに溶接して固定される。この構造は、係止ブロック5と板状バー6とを確実に、しかも強い溶着強度で固定できる。板状バー6の固定穴6aに係止ブロック5を溶接して固定しているバインドバー4は、溶接構造と嵌合構造とで係止ブロック5と板状バー6とが一体構造となるので、固定穴6aを設けた部分の強度は低下しない。固定穴6aに溶接して固定された係止ブロック5は、
図4に示すように、板状バー6に作用する引張力Fの反力Rによって、一方の側面には引張力が、他方の側面には圧縮力が作用する。
【0041】
図6のバインドバー4は、係止ブロック5と板状バー6とを同じ金属材で一体構造に成形して、板状バー6の両端部に係止ブロック5を設けている。このバインドバー4は、金属を押し出し成形して板状バー6の端部に係止ブロック5を設け、あるいは金属を鍛造して板状バー6の端部に係止ブロック5を設けて製作される。このバインドバー4は、係止ブロック5を一体構造とする形状に成形して製造されるので、係止ブロック5を溶接して固定するバインドバー4に比較して、係止ブロック5の連結強度を強くできる特徴がある。
【0042】
係止ブロック5はボルト8を介してエンドプレート3に固定されて、一対のエンドプレート3をバインドバー4で連結する。ボルト8は係止ブロック5を貫通して、エンドプレート3にねじ込まれて、係止ブロック5をエンドプレート3に固定する。この固定構造の電源装置100は、係止ブロック5を確実にエンドプレート3に固定しながら、ボルト8とストッパ部3bとの両方で係止ブロック5の位置ずれを確実に阻止できる。それは、ボルト8が係止ブロック5を嵌合部3aに押し付けて固定して、ストッパ部3bで確実に位置ずれを阻止できると共に、ボルト8の軸力によっても位置ずれを阻止できるからである。
【0043】
係止ブロック5は、ボルト8が表面から突出しないように、ボルト8の頭部8aを案内するガイド凹部5aを設けている。ガイド凹部5aは、ボルト8の頭部8aが係止ブロック5の表面から突出しない深さとしている。ただ、ボルト8の頭部8aが多少突出する構造とすることもできる。ガイド凹部5aはボルト8のネジ部8bを挿通する貫通孔5bを底に設けている。この係止ブロック5は、ボルト8の頭部8aをガイド凹部5aに案内し、ネジ部8bを貫通孔5bに挿通して、エンドプレート3に設けた雌ねじ孔3cにねじ込んでエンドプレート3に固定される。
図5の係止ブロック5は、ボルト8の固定部に複数のガイド凹部5aを設けて、各々のガイド凹部5aにボルト8を案内してエンドプレート3に固定している。この係止ブロック5は、部分的にガイド凹部5aを設けるので全体の強度を強くできる特徴がある。
図7の係止ブロック5は、長手方向に伸びる溝状のガイド凹部5aを設けて、ガイド凹部5aに所定の間隔で複数の貫通孔5bを設けている。この係止ブロック5は、貫通孔5bにネジ部8bを挿通してエンドプレート3に固定される。
この係止ブロック5は、溝状のガイド凹部5aを設けているので、軽量化できる特徴がある。
【0044】
係止ブロック5の電池積層方向の横幅(h1)は、板状バー6に作用する引張力Fで変形しない幅、たとえば、10mm以上に設定される。
図4及び
図6は、係止ブロック5の隅部内側に隙間17がある連結構造を示している。この図において、係止ブロック5の横幅(h1)を、係止ブロック5の隅部内側にできる隙間17の間隔(W1)に比較して十分大きく、たとえば10倍よりも大きくして、バインドバー4の引張力Fを剪断応力として支持できる。たとえば、隙間17の間隔(W1)を1mmとすれば、係止ブロック5の横幅(h1)は10mmとなる。以上の構造にあっては、係止ブロック5は横幅(h1)を約10mmよりも厚くして、板状バー6に作用する引張力Fを剪断力で支持できる。このことから、係止ブロック5の横幅(h1)は、10mm以上として、板状バー6に作用する引張力Fを剪断力で支持して、充分な強度を実現できる。
【0045】
さらに、バインドバー4は、
図8と
図9に示す構造とすることもできる。これらの図に示すバインドバー4は、板状バー6の両端部に固定穴6aを設けて、この固定穴6aに係止ブロック5の一部を挿入して、係止ブロック5と板状バー6とを嵌合構造で固定している。板状バー6は、エンドプレート3の嵌合部3aと対向する両端部において、上下に離して2つの固定穴6aを貫通して設けている。
図8に示す固定穴6aは、上下方向に延びる長円形状としている。
【0046】
係止ブロック5は、
図9に示すように、板状バー6の内側であって、固定穴6aを含む領域に配置されると共に、固定穴6aと対向する部分に、外側方向(係止ブロック5の厚さ方向)に突出する嵌合凸部5fを形成して設けている。嵌合凸部5fは、固定穴6aの内形に沿う外形に形成されている。この嵌合凸部5fは、例えば、貫通孔である固定穴6aを設けた板状バー6の内側面に係止ブロック5を配置した状態で、固定穴6aと対向する領域を内側からパンチング等のプレス加工をすることにより、係止ブロック5の一部を外側方向に突出させて固定穴6aに沿う形状に形成される。係止ブロック5は、パンチングにより形成される嵌合凸部5fが、固定穴6aに隙間なく圧入されることで、板状バー6に嵌合構造で連結される。ただ、係止ブロック5は、あらかじめ所定の形状に形成された嵌合凸部5fを固定穴6aに挿入することにより、板状バー6に嵌合状態で連結することもできる。さらに、係止ブロック5は、プレス加工によらず、削り出しや、鋳造により嵌合凸部5fを形成することもできる。
【0047】
さらに、
図8に示すバインドバー4は、嵌合構造で連結される嵌合部の上下、すなわち、固定穴6aの上下において、スポット溶接により板状バー6と係止ブロック5とを溶着している。
図8では、このスポット溶接による溶接痕26をクロスハッチングで示している。このように、嵌合構造と溶接構造とを併用して係止ブロック5を板状バー6に固定する構造は、係止ブロック5をさらに強固に板状バー6に固定できる。このバインドバー4も、前述のように、係止ブロック5の横幅(h1)を10mm以上として、板状バー6に作用する引張力Fを剪断力で支持して、充分な強度を実現できる。このバインドバー4は、図示しないが、前述のバインドバーと同様に、係止ブロックを貫通するボルトを介してエンドプレートに固定し、あるいは、板状バーと係止ブロックを貫通するボルトを介してエンドプレートに固定してもよい。
【0048】
さらに、バインドバー4は、
図10に示すように、係止ブロック5とエンドプレート3のストッパ部3bとを係止構造で連結することもできる。
図10に示すエンドプレート3は、ストッパ部3bの先端部であって係止ブロック5と対向する対向面にアンダーカット形状のカット面3hを形成して設けている。また、係止ブロック5は、嵌合部3aとストッパ部3bとの隅部に嵌入される係止凸部5gを電池積層体2側に形成している。この係止凸部5gは、ストッパ部3bと対向する対向面を、カット面3hに沿う係止面5hとしている。この係止構造によると、バインドバー4が電池積層体2の側面方向に外れるのを有効に防止しながら、バインドバー4の両端部に固定された係止ブロック5とストッパ部3bとの連結強度を強くして安定して締結できる。ただ、バインドバー4とエンドプレート3の係止構造は、係止ブロック5とストッパ部3bの対向面において、何れか一方に凸部を設け、他方に凹部を設けてこれらを嵌合する構造とすることも、何れか一方に上下方向に延びる凸条を設け、他方に上下方向に延びる凹部または溝部を設けてこれらを嵌合する構造とすることもできる。
【0049】
図10のバインドバー4は、電源装置の組み立て工程において、電池積層体2の両端部に配置したエンドプレート3をプレス機(図示せず)で加圧して、電池セル1を積層方向に加圧する状態でエンドプレート3の嵌合部3aに係止凸部5gを案内し、一対のエンドプレート3に両端の係止ブロック5を係止した後、プレス機の加圧状態を解除して、電池積層体2を所定の圧力で加圧状態に保持する。なお、バインドバー4は、プレス機で加圧される電池積層体2に対して上下方向にスライドさせることで電池セル1を過圧することなく連結できる。ただ、バインドバー4は、電池積層体2を積層方向に多少過圧して両端のエンドプレート3の間隔を係止凸部5gの突出量分だけ状態で短くした状態で係止凸部5gを嵌合部3aに案内した後、プレス機の加圧状態を解除して所定の加圧状態で保持することもできる。なお、バインドバーは、一方の端部のみを以上の係止構造でエンドプレートに連結して、他方の端部はボルトを介してエンドプレートに固定することもできる。
【0050】
図1と
図2に示す電源装置100は、電池積層体2を載置しているベースプレート9を備える。このベースプレート9は、エンドプレート3を固定している。エンドプレート3は、ベースプレート9に固定するために、電池セル1と平行な方向に延びる、図において上下方向に延びる貫通孔3dを両側に設けている。この貫通孔3dには固定ネジ23が挿入され、固定ネジ23は先端部をベースプレート9に固定して、エンドプレート3をベースプレート9に固定する。固定ネジ23は、ベースプレート9に設けた雌ねじ孔9aにねじ込まれて、ベースプレート9に固定され、あるいはベースプレートの底面に設けたナットにねじ込まれて、ベースプレートに固定される。また、バンドバーに締結部を設けてベースプレートに締結してもよい。
【0051】
図11に示すように、車両に搭載されて、車両を走行させるモータ93に電力を供給する電源装置100は、ベースプレート9を車両のシャーシ92とすることができる。この電源装置100は、車両のシャーシ92の上に載せられ、エンドプレート3に設けた貫通孔3dに固定ネジ23を挿通し、固定ネジ23をシャーシ92に設けた雌ねじ孔(図示せず)にねじ込んで、車両のシャーシ92に固定される。以上の電源装置100は、ベースプレート9を車両のシャーシ92とするが、ベースプレートは必ずしも車両のシャーシには特定しない。たとえば、
図12に示すように、金属板でベースプレート9を製作して、このベースプレート9の上に電源装置100を固定することができる。この電源装置100は、ベースプレート9を車両のシャーシ92の上に固定して、車両に搭載できる。
【0052】
以上の電源装置100は、以下の工程で組み立てられる。
(1)所定の個数の電池セル1を、間にスペーサ7を介在させる状態で、電池セル1の厚さ方向に積層して電池積層体2とする。
(2)電池積層体2の両端にエンドプレート3を配置し、一対のエンドプレート3を両側からプレス機(図示せず)で押圧して、エンドプレート3でもって、電池積層体2を所定の圧力で加圧し、電池セル1を圧縮して加圧状態に保持する。
(3)電池積層体2をエンドプレート3で加圧する状態で、一対のエンドプレート3にバインドバー4を連結して固定する。バインドバー4は、両端の係止ブロック5が一対のエンドプレート3の嵌合部3aに案内されるように配置されると共に、係止ブロック5を貫通するボルト8をエンドプレート3の雌ねじ孔3cにねじ込んで固定される。固定後、加圧状態は開放される。
(4)電池積層体2の両側部において、互いに隣接する電池セル1の対向する電極端子13同士をバスバー(図示せず)で連結する。バスバーは、電極端子13に固定されて、電池セル1を直列に接続し、あるいは直列と並列に接続する。バスバーは、電極端子13に溶接され、あるいはネジ止めされて電極端子13に固定される。
(5)電池積層体2をベースプレート9の上面に配置して固定する。
【0053】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源装置に最適である。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの電動車両の電源として使用される。
【0054】
(ハイブリッド車用電源装置)
図11に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体90と、車両本体90を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94と、モータ93とエンジン96で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【0055】
(電気自動車用電源装置)
また
図12に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体90と、車両本体90を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【0056】
(蓄電用電源装置)
さらに、本発明は電源装置の用途を電動車両に搭載する電源装置には特定せず、たとえば、太陽光発電、風力発電などの自然エネルギーを蓄電する蓄電装置用の電源装置として使用でき、また深夜電力を蓄電する蓄電装置用の電源装置のように、大電力を蓄電する全ての用途に使用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を
図13に示す。なお、
図13に示す蓄電装置としての使用例では、所望の電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の蓄電装置80を構築した例として説明する。
【0057】
図13に示す蓄電装置80は、複数の電源装置100をユニット状に接続して電源ユニット82を構成している。各電源装置100は、複数の電池セルが直列及び/又は並列に接続されている。各電源装置100は、電源コントローラ84により制御される。この蓄電装置80は、電源ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。
このため蓄電装置80は、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して蓄電装置80と接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、蓄電装置80の電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから蓄電装置80への充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、蓄電装置80から負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、蓄電装置80への充電を同時に行うこともできる。
【0058】
蓄電装置80で駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して蓄電装置80と接続されている。蓄電装置80の放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、蓄電装置80からの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、蓄電装置80の電源コントローラ84によって制御される。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。
図13の例では、UARTやRS-232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0059】
各電源装置100は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、入出力端子DIと、異常出力端子DAと、接続端子DOとを含む。入出力端子DIは、他の電源装置100や電源コントローラ84からの信号を入出力するための端子であり、接続端子DOは他の電源装置100に対して信号を入出力するための端子である。また異常出力端子DAは、電源装置100の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電源装置100同士を直列、並列に接続するための端子である。また電源ユニット82は、並列接続スイッチ85を介して出力ラインOLに接続されて互いに並列に接続されている。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0061】
100…電源装置、1…電池セル、2…電池積層体、3…エンドプレート、3a…嵌合部、3b…ストッパ部、3c…雌ねじ孔、3d…貫通孔、3h…カット面、4…バインドバー、5…係止ブロック、5a…ガイド凹部、5b…貫通孔、5c…突出部、5f…嵌合凸部、5g…係止凸部、5h…係止面、6…板状バー、6a…固定穴、7…スペーサ、8…ボルト、8a…頭部、8b…ネジ部、9…ベースプレート、9a…雌ねじ孔、10…電池ケース、10A…外装缶、10B…封口板、11…排出弁、12…ガス排出口、13…電極端子、15…溶加材、16…隙間、17…隙間、23…固定ネジ、26…溶接痕、80…蓄電装置、82…電源ユニット、84…電源コントローラ、85…並列接続スイッチ、90…車両本体、92…シャーシ、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ96…エンジン97…車輪、103…エンドプレート、103a…コーナー部、104…バインドバー、EV…車両、HV…車両、LD…負荷、CP…充電用電源、DS…放電スイッチ、CS…充電スイッチ、OL…出力ライン、HT…ホスト機器、DI…入出力端子、DA…異常出力端子、DO…接続端子