(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】動作用ケーブル装置
(51)【国際特許分類】
F16C 1/10 20060101AFI20230411BHJP
E05B 79/20 20140101ALI20230411BHJP
F16C 1/14 20060101ALI20230411BHJP
E05B 83/24 20140101ALN20230411BHJP
B62D 25/12 20060101ALN20230411BHJP
【FI】
F16C1/10 C
E05B79/20
F16C1/14 Z
E05B83/24 Z
B62D25/12 N
(21)【出願番号】P 2020001532
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 峻輔
(72)【発明者】
【氏名】時政 秀典
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳史
(72)【発明者】
【氏名】佐野 立
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-54800(JP,U)
【文献】特開2017-115955(JP,A)
【文献】実開平1-145559(JP,U)
【文献】実開昭58-101224(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102008034770(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/10, 1/14
E05B 79/20,83/24
B62D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操作装置の操作に連動して当該車両の第1装置及び第2装置を動作させる動作用ケーブル装置であって、
一端が前記第1装置に接続され
、他端に第1球体が接続される第1ケーブルと、
一端が前記第2装置に接続され
、他端に第2球体が接続される第2ケーブルと、
一端が前記操作装置に接続され
、他端に第3球体が接続される第3ケーブルと、
中央部に配置された回転軸の周りで回転可能なリンク部材と、を備え、
前記リンク部材は、前記回転軸の周りに回転可能な2つの板状部材と、前記2つの板状部材の間に挟まれて前記回転軸の方向に延びる2つの円筒部材とを含み、
2つの前記円筒部材は、回転軸の上側に配置される上側円筒部材と、前記回転軸の下側に配置される下側円筒部材とを含み、
前記上側円筒部材は、周方向に延びる第1切欠きと、前記第1切欠きと前記上側円筒部材の軸方向にずれた位置に配置され、前記第1切欠きと周方向の反対方向に延びる第3切欠きと、を備え、
前記下側円筒部材は、前記第1切欠きと周方向の反対方向に延びる第2切欠きを備え、
前記第1球体が、前記第1ケーブルが前記第1切欠きを通るように前記上側円筒部材の中に収容されることにより、前記第1ケーブルの他端
が、前記リンク部材における前記回転軸よりも
上側の第1箇所に接続され
、
前記第2球体が、前記第2ケーブルが前記第2切欠きを通るように前記下側円筒部材の中に収容されることにより、前記第2ケーブルの他端
が、前記リンク部材における前記第1箇所の前記回転軸を挟んで反対側である
下側の第2箇所に接続され、
前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとは、前記リンク部材から反対側に向かって延び、
前記第3球体が、前記第3ケーブルが前記第3切欠きを通るように前記上側円筒部材の中に収容されることにより、前記第3ケーブルの他端
が、前記リンク部材における前記回転軸よりも
上側
で前記第1箇所と前記上側円筒部材の軸方向にずれた第3箇所に接続され、
前記第3ケーブルは、前記リンク部材から前記第1ケーブルとは反対側に向かって延びている、
ことを特徴とする動作用ケーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フードオープナ等の操作装置の操作に連動して、2つのフードロック装置等を動作させる動作用ケーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのフードロック装置等である第1装置及び第2装置それぞれに一端が接続された第1ケーブル及び第2ケーブルと、フードオープナ等の操作装置に一端が接続された第3ケーブルと、これら3つのケーブルの他端が接続されたプーリと、を備える動作用ケーブル装置が開示されている。この動作用ケーブル装置では、操作装置が操作されることにより第3ケーブルが引っ張られプーリから引き出されるとともにプーリが回転する。プーリが回転すると、第1ケーブル及び第2ケーブルがプーリに巻き付けられ、第1装置及び第2装置が引っ張られて第1装置及び第2装置が動作する。操作装置の操作が終わると、第3ケーブルは操作前の状態に戻りプーリに再度巻き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の動作用ケーブル装置では、操作装置の操作開始から操作終了までの一連の操作が行われるたびに、上記3つのケーブルそれぞれについてプーリへの巻き付けが発生することになる。ここで、動作用ケーブル装置を小型化しようとして、このプーリの径を小さくすると、上記各ケーブルがプーリに巻き付けられるときに小さい径周りで曲げられ、各ケーブルの耐久性能が低下してしまう。この低下を抑制するため、特許文献1に記載の動作用ケーブル装置では、プーリの径を大きくしなければならず、大型化が避けられない。
【0005】
本発明は、動作用ケーブル装置の大型化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る動作用ケーブル装置は、車両の操作装置の操作に連動して当該車両の第1装置及び第2装置を動作させる動作用ケーブル装置であって、一端が前記第1装置に接続され、他端に第1球体が接続される第1ケーブルと、一端が前記第2装置に接続され、他端に第2球体が接続される第2ケーブルと、一端が前記操作装置に接続され、他端に第3球体が接続される第3ケーブルと、中央部に配置された回転軸の周りで回転可能なリンク部材と、を備え、前記リンク部材は、前記回転軸の周りに回転可能な2つの板状部材と、前記2つの板状部材の間に挟まれて前記回転軸の方向に延びる2つの円筒部材とを含み、2つの前記円筒部材は、回転軸の上側に配置される上側円筒部材と、前記回転軸の下側に配置される下側円筒部材とを含み、前記上側円筒部材は、周方向に延びる第1切欠きと、前記第1切欠きと前記上側円筒部材の軸方向にずれた位置に配置され、前記第1切欠きと周方向の反対方向に延びる第3切欠きと、を備え、前記下側円筒部材は、前記第1切欠きと周方向の反対方向に延びる第2切欠きを備え、前記第1球体が、前記第1ケーブルが前記第1切欠きを通るように前記上側円筒部材の中に収容されることにより、前記第1ケーブルの他端が、前記リンク部材における前記回転軸よりも上側の第1箇所に接続され、前記第2球体が、前記第2ケーブルが前記第2切欠きを通るように前記下側円筒部材の中に収容されることにより、前記第2ケーブルの他端が、前記リンク部材における前記第1箇所の前記回転軸を挟んで反対側である下側の第2箇所に接続され、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとは、前記リンク部材から反対側に向かって延び、前記第3球体が、前記第3ケーブルが前記第3切欠きを通るように前記上側円筒部材の中に収容されることにより、前記第3ケーブルの他端が、前記リンク部材における前記回転軸よりも上側で前記第1箇所と前記上側円筒部材の軸方向にずれた第3箇所に接続され、前記第3ケーブルは、前記リンク部材から前記第1ケーブルとは反対側に向かって延びている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る動作用ケーブル装置によれば、プーリが不要となり装置の大型化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る動作用ケーブル装置を有する車両の前部の模式的な平面図である。
【
図2】
図1の動作用ケーブル装置のうちリンク装置及びその近傍を後方から見た立面図である。
【
図3】
図2におけるA-A線に沿って筐体を破断し、リンク装置の内部を見せた平面図とした図である。
【
図4】
図2における、ケーブル、アウタチューブを省略したB-B断面図である。
【
図5】
図1の動作用ケーブル装置の初期状態からリンク部材が回転したときの様子を示す図である。
【
図6】車両が左ハンドル車であるときの動作用ケーブル装置のうちリンク装置及びその近傍を後方から見た立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態に係る動作用ケーブル装置100を、図面を参照しながら説明する。動作用ケーブル装置100は、
図1に示すように、車両10に搭載される。なお、車両10は、右ハンドル車であるものとする。以下では、車両10の構成を説明してから、動作用ケーブル装置100の構成を説明する。
【0010】
なお、各図に示す矢印FR、UP、RHは、車両10の進行方向である前方向、上方向、右方向をそれぞれ示している。また、各矢印FR、UP、RHの反対方向は、車両10の後方向、下方向、左方向を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両10の前後方向の前後、車両10の左右方向の左右、車両10の上下方向の上下を示すものとする。左右方向は、車両10の幅方向ともいう。
【0011】
(車両10の構成)
図1に示すように、車両10は、フロントガラス11の前方に、車両10のエンジンルームを覆う、開閉可能なエンジンフード12を備える。車両10は、動作用ケーブル装置100とともにエンジンフード12を開閉するための装置として、左フードロック装置15A、右フードロック装置15B、及び、操作装置としてのフードオープナ16を備える。
【0012】
左右のフードロック装置15A及び15Bは、左右方向に間隔を開けて配置されており、エンジンフード12を閉状態にロックする。なお、エンジンフード12を閉状態にロックすることをフードロックともいう。
【0013】
フードオープナ16は、ドライバ等によりフードロックを解除するときに操作される。フードオープナ16は、車両10の右側の不図示のハンドルの下に配置されている。フードオープナ16は、レバーを備え、当該レバーを引く引き操作により操作される操作装置である。
【0014】
(動作用ケーブル装置100の構成)
動作用ケーブル装置100は、フードオープナ16の引き操作に連動して左右のフードロック装置15A及び15Bを動作させ、フードロックを解除するための装置である。
図1及び
図2に示すように、動作用ケーブル装置100は、左フードロックケーブル110と、右フードロックケーブル120と、オープナケーブル130と、回転可能なリンク部材142を備えるリンク装置140と、を備える。さらに、動作用ケーブル装置100は、
図2及び
図3に示すアウタチューブ160、170、及び、180も備えている。
【0015】
ケーブル110~130それぞれは、少なくとも両端が露出した状態で中空のアウタチューブ160~180それぞれの中を移動可能に通っており、アウタチューブ160~180それぞれにより所定位置に保持されている。なお、オープナケーブル130が中を通るアウタチューブ180は、その途中が右フードロック装置15Bに保持され、ここからフードオープナ16に引き回されている。
【0016】
図1に示すように、左フードロックケーブル110の一端、右フードロックケーブル120の一端、及び、オープナケーブル130の一端は、左フードロック装置15A、右フードロック装置15B、及び、フードオープナ16に、それぞれ接続されている。各ケーブル110~130の他端は、リンク装置140のリンク部材142に接続されている。フードオープナ16が引き操作されたとき、オープナケーブル130が引っ張られ、リンク装置140のリンク部材142を介して、左右のフードロックケーブル110及び120も引っ張られる。その結果、左右のフードロック装置15A及び15Bが動作して、フードロックが解除される。
【0017】
図2~
図4に示すように、左フードロックケーブル110は、可撓性を有する線状のケーブル本体111の他、その他端に、ケーブル本体111の他端に固定された球体112を備える。同様に、右フードロックケーブル120は、ケーブル本体121と球体122とを備え、オープナケーブル130は、ケーブル本体131と球体132とを備える。ケーブル110~130の各他端は、球体112~132それぞれにより、リンク部材142に接続されている。
【0018】
リンク装置140は、
図1に示すように左右のフードロック装置15A及び15Bの間に位置しており、リンク部材142により上記ケーブル110~130の各動きを関連付ける。
図2~
図4に示すように、リンク装置140は、後方が開放した箱型の筐体141と、リンク部材142と、リンク部材142を回転軸Sの周りで回転可能に支持する支持部143と、を備えている。なお、回転軸Sは、リンク部材142の中央を通って前後方向に延びている。
【0019】
筐体141は、側壁141A及び底部141Bを備えている。側壁141Aには、後端から前方に延び、アウタチューブ160~180をリンク装置140に装着するための4つの切り欠き141C~141Fが設けられている。底部141Bには支持部143が設けられている。
【0020】
側壁141Aの左壁141AAに切り欠き141C及び141Dが設けられ、左壁141AAに対向する右壁141ABに切り欠き141E及び141Fが設けられている。
図2に示すように、切り欠き141Cと切り欠き141Eとは、回転軸S方向から見たときに回転軸Sよりも上側の位置で対向している。同様に、切り欠き141Dと切り欠き141Fとは、回転軸Sよりも下側の位置で対向している。
【0021】
切り欠き141C、141E、及び、141Fには、アウタチューブ160の接続端161、アウタチューブ180の接続端181、及び、アウタチューブ170の接続端171がそれぞれ嵌め込まれている。
【0022】
図4に示すように、支持部143は、筐体141の底部141Bから後方に突出したボス143Aと、当該ボス143Aに螺合している抜け止め143Bと、を備える。ボス143Aは、底部141Bと一体的に形成されている。ボス143Aは、前端にフランジ143AAを有する円柱形状である。ボス143Aは、リンク部材142の後述の貫通孔142AA及び142BAを貫通し、リンク部材142を、ボス143Aの中心軸を回転軸Sとして回転可能に支持している。リンク部材142は、抜け止め143Bとフランジ143AAとにより、前後方向への移動が規制されている。
【0023】
図2~
図4に示すように、リンク部材142は、リンクの節となる、ベルクランク等の棒状部材である。リンク部材142は、前後方向で対向する後側板状部材142A及び前側板状部材142Bと、これら板状部材142A及び142Bに設けられた溝に嵌め込まれて固定された上側円筒部材142C及び下側円筒部材142Dと、を備える。
【0024】
図4に示すように、前後の板状部材142A及び142Bは、その中央に、支持部143のボス143Aが通る円形の貫通孔142AA及び142BAを備えている。
【0025】
図2~
図4に示すように、上側円筒部材142Cは、回転軸Sよりも上側に位置し、下側円筒部材142Dは、回転軸Sよりも下側に位置している。上下の円筒部材142C及び142Dは、回転軸S方向つまり前後方向に沿って延びた円筒形状を有する。上側円筒部材142Cには、ケーブル110及び130の球体112及び132が収容され、下側円筒部材142Dには、ケーブル120の球体122が収容される。このような収容は、例えば、リンク部材142が組み立てられたあとに行われる。
【0026】
ケーブル110及び130の球体112及び132を上側円筒部材142Cに収容するため、
図2及び
図4に示すように、第1板状部材142Aは、その一端に、直線状の切り欠き142ABと、切り欠き142AB及び上側円筒部材142Cの内部に連通した円形の貫通孔142ACとを備える。さらに、
図3及び
図4に示すように、上側円筒部材142Cは、中心軸方向に沿って延びかつ切り欠き142ABと連通している切り欠き142CAを備える。さらに、上側円筒部材142Cは、後側の位置に、切り欠き142CAから周方向に沿って右回りに延びる切り欠き142CBを備え、前側の位置に、切り欠き142CAから周方向に沿って左回りに延びる切り欠き142CCも備える。なお、切り欠き142CB及び142CCの各長さは、任意である。
【0027】
左フードロックケーブル110の他端である球体112は、第1板状部材142Aの貫通孔142ACを通って上側円筒部材142Cに挿入される。このとき、当該球体112に繋がっているケーブル本体111は、第1板状部材142Aの切り欠き142AB、上側円筒部材142Cの切り欠き142CAを通って、切り欠き142CC内に挿入される。その結果、球体112は、ケーブル本体111が切り欠き142CCを通った状態で上側円筒部材142C内に収容される。これにより、左フードロックケーブル110の他端は、リンク部材142における回転軸Sの上側つまり一端側の上側円筒部材142Cが位置する上側箇所142Pに接続されたことになる。
【0028】
オープナケーブル130の他端である球体132は、左フードロックケーブル110の接続のあと、球体112と同様に、貫通孔142ACを通って上側円筒部材142Cに挿入される。ケーブル本体131は、ケーブル本体111と同様に、切り欠き142AB及び切り欠き142CAを通って、切り欠き142CB内に挿入される。その結果、球体132は、ケーブル本体131が切り欠き142CBを通った状態で上側円筒部材142C内に収容される。これにより、オープナケーブル130の他端は、上側箇所142Pに接続されたことになる。
【0029】
ケーブル120の球体122を下側円筒部材142Dに収容するため、
図2~
図4に示すように、第1板状部材142Aは、その他端に、切り欠き142AB及び貫通孔142ACと同形状の切り欠き142AD及び貫通孔142AEを備える。下側円筒部材142Dは、上側円筒部材142Cと同形状に形成されており、上側円筒部材142Cの切り欠き142CA~142CCにそれぞれ対応する切り欠き142DA~142DCを備える。なお、切り欠き142DBは、不図示である。下側円筒部材142Dは、上側円筒部材142Cと反対向きつまり切り欠き142DAが下側を向くように配置されている。切り欠き142DAは、第1板状部材142Aの切り欠き142ADと連通し、下側円筒部材142Dの内部は、貫通孔142AEに連通している。
【0030】
右フードロックケーブル120の他端である球体122は、第1板状部材142Aの貫通孔142AEを通って下側円筒部材142Dに挿入される。このとき、当該球体122に繋がっているケーブル本体121は、第1板状部材142Aの切り欠き142AD、下側円筒部材142Dの切り欠き142DAを通って、切り欠き142DC内に挿入される。その結果、球体122は、ケーブル本体121が切り欠き142DCを通った状態で下側円筒部材142D内に収容される。これにより、右フードロックケーブル120の他端は、リンク部材142における回転軸Sの下側つまり他端側の下側円筒部材142Dが位置する箇所である下側箇所142Rに接続されたことになる。下側箇所142Rは、回転軸Sを挟んで上側箇所142Pの反対側の箇所である。
【0031】
上述のように、切り欠き141Cは、リンク部材142の左側に設けられており、切り欠き141Fは、リンク部材142の右側に設けられている。従って、切り欠き141C及び141Fそれぞれを通る左フードロックケーブル110と右フードロックケーブル120とは、リンク部材142から反対側に向かって延びている。さらに、切り欠き141Eは、リンク部材142の右側に設けられ、回転軸S方向から見て切り欠き141Cと対向している。このため、切り欠き141Eを通るオープナケーブル130と切り欠き141Cを通る左フードロックケーブル110とがリンク部材142から反対側に向かって延び、かつ、オープナケーブル130と右フードロックケーブル120とがリンク部材142から同じ側に向かって延びている。さらに、回転軸S方向から見て対向している切り欠き141Cと切り欠き141Eとは深さが異なっており、これらを通るオープナケーブル130と左フードロックケーブル110の各他端は、回転軸S方向においてずれて、回転軸S方向から見て共通の上側箇所142Pに接続されている。
【0032】
(動作用ケーブル装置100の動作)
動作用ケーブル装置100は、
図1に示すフードオープナ16が引き操作されると、
図2の初期状態から
図5の状態に遷移する。
【0033】
具体的に、
図1に示すフードオープナ16が引き操作されると、当該引き操作に連動して、
図5に示すように、当該フードオープナ16に接続されているオープナケーブル130が引っ張られる。この引っ張りにより、オープナケーブル130が接続されたリンク部材142の上側箇所142Pが引っ張られ、リンク部材142が回転軸Sの周りで右回りに回転する。
【0034】
リンク部材142が回転すると、当該リンク部材142の上側箇所142Pに接続されている左フードロックケーブル110は、リンク部材142からオープナケーブル130とは反対側に向かって延びているため、オープナケーブル130と同方向に引っ張られる。他方、回転軸Sを挟んで上側箇所142Pと反対の下側箇所142Rに接続されている右フードロックケーブル120は、リンク部材142から左フードロックケーブル110の反対側及びオープナケーブル130と同じ側に向かって延びており、オープナケーブル130とは逆方向に引っ張られる。これにより、左右のフードロックケーブル110及び120は、
図1に示す左右のフードロック装置15A及び15Bからそれぞれ離れる方向に引っ張られる。これらの引っ張りにより、左右のフードロック装置15A及び15Bが引っ張られてフードロックを解除するように同時に動作する。当該解除により、エンジンフード12は開かれる。フードオープナ16に対する引き操作が解除されると、動作用ケーブル装置100は、
図2の初期状態に戻る。
【0035】
(動作用ケーブル装置100の効果その1)
動作用ケーブル装置100は、上記動作の説明のように、フードオープナ16が引き操作されたときのオープナケーブル130の引っ張りを、リンク部材142により、左右のフードロックケーブル110及び120に対する引っ張りに変換することができ、左右のフードロック装置15A及び15Bを同時に動作させてフードロックを解除できる。そして、動作用ケーブル装置100では、前記の変換を、リンク部材142により行っており、当該リンク部材142は、プーリ等のように、フードオープナ16が操作されるたびに、各ケーブル110~130が巻き付けられる部材ではない。従って、各ケーブル110~130の巻き付けによる耐久性能の低下を考慮せずに、リンク部材142を小型化でき大型化が抑制される。これにより、リンク部材142を有するリンク装置140ないし動作用ケーブル装置100を小型化でき大型化が抑制される。また、オープナケーブル130と左フードロックケーブル110の各他端は、回転軸S方向から見て共通の上側箇所142Pに接続されているので、オープナケーブル130が引っ張られたときの引っ張り力が左フードロックケーブル110に効率的に伝達される。
【0036】
ケーブル110~130は、防錆及び強度の優れた材料で形成することが望ましいが、このような材料で形成されたケーブル110~130は曲げにくく、従来のようにプーリを採用する場合には、耐久性能等を満足するために当該プーリを大型化せざるを得ない。動作用ケーブル装置100のように、リンク部材142を採用することで、ケーブル110~130を曲げる必要がなく、ケーブル110~130の材料によらず動作用ケーブル装置100の小型化が可能となっている。また、ケーブル110~130は、直線に近い状態で使用されるため、プーリを使用したときに比べて摺動損失が少ない。さらに、プーリの場合には、ケーブル110~130をプーリに巻き付ける作業が必要なるが、リンク部材142では当該作業が不要になり、動作用ケーブル100の組付け性が向上する。
【0037】
ケーブル本体111~131は、上側円筒部材142C又は下側円筒部材142Dが備える周方向に延びた切り欠き142CB、142CC、142DCをそれぞれ通っているため、リンク部材142が回転したときに、球体112~132は、上側円筒部材142C又は下側円筒部材142Dに対して相対回転し、ケーブル本体111~131は、切り欠き142CB、142CC、142DC内をそれぞれ移動できる。従って、リンク部材142が回転したときに、ケーブル本体111~131に余計な負荷が掛からず、ケーブル本体111~131の耐久性の低下が抑制される。このように、リンク部材142は、当該リンク部材142が回転したときにケーブル110~130が移動可能な切り欠き又は貫通孔を、ケーブル110~130の各他端との接続箇所に備えるとよい。
【0038】
(車両10が左ハンドル車である場合)
動作用ケーブル装置100は、車両10が左ハンドル車であっても搭載される。この場合、
図6に示すように、オープナケーブル130が中を通るアウタチューブ180の接続端181は、リンク装置140の筐体141の切り欠き141Dに嵌め込まれる。オープナケーブル130の球体132は、球体122のあとに、第1板状部材142Aの貫通孔142AEを通って下側円筒部材142Dに挿入される。このとき、当該球体132に繋がっているケーブル本体131は、第2板状部材142Bの切り欠き142AD及び下側円筒部材142Dの切り欠き142DAを通って、切り欠き142DB内に挿入される。これにより、球体132は、ケーブル本体121が切り欠き142DBを通った状態で下側円筒部材142D内に収容される。これにより、オープナケーブル130の他端は、第2箇所142Rに接続されたことになる。上述のように、切り欠き141Dは、リンク部材142の左側に設けられており、オープナケーブル130は、リンク部材142から、左フードロックケーブル110と同じ側かつ右フードロックケーブル120の反対側に向かって延びている。フードオープナ16が引き操作されたときの動作は、オープナケーブル130が左方向に引っ張られる以外、上記実施の形態と同様である。
【0039】
(動作用ケーブル装置100の効果その2)
動作用ケーブル装置100は、アウタチューブ180の接続端181及びオープナケーブル130の他端の接続箇所を変えるだけで、左右どちらのハンドル車にも搭載される。このように、リンク装置140は、オープナケーブル130が、リンク部材142から左フードロックケーブル110とは反対側に延びるように接続可能な接続箇所と、オープナケーブル130が、リンク部材142から右フードロックケーブル120とは反対側に延びるように接続可能な接続箇所と、を備えるとよい。さらに、この実施の形態では、左右のフードロックケーブル110及び120がそれぞれ通る切り欠き141C及び141Fが、オープナケーブル130が通り得る切り欠き141D及び141Eよりも深く形成されており、ケーブル110及び120の各球体112及び122からなる各他端が、オープナケーブル130よりも先にリンク部材142に接続される。これにより、車両10が右ハンドル車でも左ハンドル車でも、オープナケーブル130の接続前まで、動作用ケーブル装置100の組付け方法を共通化できる。このように、リンク装置140は、ケーブル110及び120の各球体112及び122からなる各他端がオープナケーブル130の他端よりも先に接続される構造であるとよい。また、上記のように、オープナケーブル130が中を通るアウタチューブ180は、その途中が右フードロック装置15Bに保持されているが、右フードロック装置15Bにもアウタチューブ180を保持可能にすることで、車両10が右ハンドル車でも左ハンドル車でも、左右のフードロック装置15A及び15Bを共通化できる。
【0040】
(変形例)
動作用ケーブル装置100の構成は適宜変更できる。例えば、動作用ケーブル装置100を構成する各部材の形状は、上記に限らず適宜の形状を採用できる。具体的に、リンク部材142は、回転軸S方向から見て屈曲したベルクランク等により構成されてもよい。さらに、動作用ケーブル装置100は、左右のフードロック装置15A及び15B以外の装置を動作させるものであってもよい。この場合、ケーブル110~130の各一端の接続先が変更される。このように、動作用ケーブル装置100は、車両の操作装置の操作に連動して当該車両の第1装置及び第2装置を動作させる動作用ケーブル装置であって、一端が前記第1装置に接続される第1ケーブルと、一端が前記第2装置に接続される第2ケーブルと、一端が前記操作装置に接続される第3ケーブルと、中央部に配置された回転軸の周りで回転可能なリンク部材と、を備え、前記第1ケーブルの他端は、前記リンク部材における前記回転軸よりも一端側の第1箇所に接続されており、前記第2ケーブルの他端は、前記リンク部材における前記第1箇所の前記回転軸を挟んで反対側である他端側の第2箇所に接続され、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとは、前記リンク部材から反対側に向かって延び、前記第3ケーブルの他端は、前記リンク部材における前記回転軸よりも前記一端側の第3箇所に接続され、前記第3ケーブルは、前記リンク部材から前記第1ケーブルとは反対側に向かって延びている、ようにすればよい。第1箇所及び第3箇所は、上記実施の形態の上側箇所142Pのように、回転軸S方向から見て同じ箇所であってもよいし、異なる箇所でもよい。第1ケーブル~第3ケーブルは、リンク部材から前記した方向に延びた後、途中で異なる方向に曲がっていてもよい。また、反対側は、180度反対方向でなくてもよい。第1ケーブル~第3ケーブルは、ワイヤで構成されたものを含む。
【0041】
車両10が右ハンドルの場合には、上記実施の形態の左フードロックケーブル110、右フードロックケーブル120、オープナケーブル130、上側箇所142P、下側箇所142Rが、上記の第1ケーブル、第2ケーブル、第3ケーブル、第1箇所及び第3箇所、第2箇所にそれぞれ相当する。車両10が左ハンドルの場合には、上記実施の形態の左フードロックケーブル110、右フードロックケーブル120、オープナケーブル130、上側箇所142P、下側箇所142Rが、上記の第2ケーブル、第1ケーブル、第3ケーブル、第2箇所、第1箇所及び第3箇所にそれぞれ相当する。
【符号の説明】
【0042】
10 車両、11 フロントガラス、12 エンジンフード、15A 左フードロック装置、15B 右フードロック装置、16 フードオープナ、100 動作用ケーブル装置、110 左フードロックケーブル、120 右フードロックケーブル、130 オープナケーブル、111,121,131 ケーブル本体、112,122,132 球体、140 リンク装置、141 筐体、141A 側壁、141AA 左壁、141AB 右壁、141B 底部、141C~141F 切り欠き、142 リンク部材、142A 第1板状部材、142B 第2板状部材、142C 上側円筒部材、142D 下側円筒部材、142AA,142AC,142AE,142BA 貫通孔、142AB,142AD,142CA~142CC,142DA~142DC 切り欠き、142P 上側箇所、142R 下側箇所、143 支持部、143A ボス、143AA フランジ、143B 抜け止め、160,170,180 アウタチューブ、161,171,181 接続端、S 回転軸。