特許 7260492 自動車

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-04-10

(45)【発行日】2023-04-18

(54)【発明の名称】自動車

(51)【国際特許分類】

   B60Q 5/00 20060101AFI20230411BHJP

   B60R 19/52 20060101ALI20230411BHJP

   B60K 11/04 20060101ALI20230411BHJP

【ＦＩ】

B60Q5/00 680A

B60Q5/00 620C

B60Q5/00 680D

B60R19/52 M

B60K11/04 H

【請求項の数】 5

(21)【出願番号】P 2020013541

(22)【出願日】2020-01-30

(65)【公開番号】P2021120241

(43)【公開日】2021-08-19

【審査請求日】2022-02-07

(73)【特許権者】

【識別番号】000003207

【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社

(73)【特許権者】

【識別番号】000005348

【氏名又は名称】株式会社ＳＵＢＡＲＵ

(74)【代理人】

【識別番号】110000110

【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】徳山 浩二

(72)【発明者】

【氏名】伊藤 嘉洋

(72)【発明者】

【氏名】鈴木 男

【審査官】上尾 敬彦

(56)【参考文献】

【文献】米国特許出願公開第２０１９／０１７６６９４（ＵＳ，Ａ１）

【文献】特開２００１－１２１９４１（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開昭５６－０７３９５０（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６０Ｑ ５／００

Ｂ６０Ｒ １９／５２

Ｂ６０Ｋ １１／０４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

空気取入口を有するフロントグリルと、
前記フロントグリルの後方に配置されているラジエータと、
前記フロントグリルと前記ラジエータの間に配置されており、前記空気取入口から前記ラジエータに空気を導くエアダクトと、
ホーンと、
を備えており、
前記エアダクトは、前記空気取入口から前記ラジエータに向かって上方に拡がっており、
前記ホーンは、前記エアダクトの外であって前記空気取入口よりも後ろかつ上で前記エアダクトの前に配置されているとともに、車両前方からみたときに前記エアダクトと重なるように配置されている、自動車。

【請求項2】

車両前方からみたときに前記ホーンは前記ラジエータのファンと重ならないように配置されている、請求項１に記載の自動車。

【請求項3】

車両前方からみたときに前記ホーンは前記エアダクトの上角に重なるように配置されている、請求項１または２に記載の自動車。

【請求項4】

前記エアダクトは、車両前方からみたときの上角に窪みが設けられており、前記ホーンは前記窪みに配置されている、請求項１から３のいずれか１項に記載の自動車。

【請求項5】

前記エアダクトは、前記ホーンの後方の面が窪むように湾曲している、請求項１から４のいずれか１項に記載の自動車。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本明細書が開示する技術は、車体の前部にホーンを有する自動車に関する。本明細書が開示する技術は、特に、ホーンの配置に関する。

【背景技術】

【0002】

自動車は、車体の前部（フロントコンパートメント内）にホーンを備えている（例えば特許文献１－４）。車両の前方に大きな音がでるように、ホーンはフロントグリルの空気取入口（エアインテーク）の後方に配置されることがある（例えば、特許文献１、２）。フロントグリルの開口からラジエータまで空気を導くエアダクトを備える自動車の場合、エアダクトの中に向けて音が出るようにホーンを配置することもある（例えば、特許文献３、４）。自動車の盗難防止用のホーンは、ラジエータのファンシュラウドの中に設けられることがある（例えば特許文献５）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１８－１２７０６０号公報

【文献】特開２０１０－１６３０７５号公報

【文献】特開２０１２－０１７０３６号公報

【文献】特開２０１７－００８７４８号公報

【文献】特開平１１－３２１４５８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ラジエータに求められる冷却性能が大きくない場合、フロントグリルの空気取入口は小さくてよい。そうすると、空気取入口に向けてホーンを配置することが難しくなる。一方、エアダクトの中に向けて音を出すようにホーンを配置するにはエアダクトの形状が複雑になる。本明細書は、ホーンの音が車両の前方に効果的に響くようにする新たな構造を提供する。

【課題を解決するための手段】

【0005】

本明細書が開示する自動車は、フロントグリルの空気取入口（エアインテーク）からラジエータに空気を導くエアダクトを備えており、エアダクトは、フロントグリルの空気取入口からラジエータに向かって上方に拡がっている。ホーンは、フロントグリルの開口よりも上でエアダクトの前に配置されている。エアダクトの前にホーンを配置すると、柔らかいエアダクトは共鳴板のように機能し、ホーンの後方へ漏れた音がエアダクトで反射して前方へ広がる。エアダクトの前にホーンを配置することでホーンの音は車両の前方に効果的に響く。

【0006】

ホーンは、エアダクト内の空気の流れを邪魔しないように、車両前方からみてエアダクトの上角に重なるように配置されているとよい。あるいは、ホーンは、車両前方からみてラジエータのファンに重ならないように配置されているとよい。「車両前方からみて」とは、「車両の正面視において」と同じ意味である。

【0007】

さらに、車両前方からみてエアダクトの上角に窪みを設け、その窪みにホーンを配置するとよい。エアダクトの上角に窪みを設けても空気の流れにあまり影響を与えない。エアダクトに窪みを設けることで、空間効率よくホーンを配置することができる。

【0008】

本明細書が開示する技術は、特に、フロントグリルの空気取入口がラジエータの高さ方向の中央よりも下に位置している自動車に適している。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】実施例の自動車の斜視図である。

【図2】実施例の自動車の正面図である。

【図3】実施例の自動車の断面図である。

【図4】第１変形例のエアダクトの斜視図である。

【図5】第１変形例のエアダクトを用いた自動車の断面図である。

【図6】第２変形例のエアダクトを用いた自動車の断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

図面を参照して実施例の自動車２を説明する、図１に、自動車２の前部の斜視図を示す。図２に、自動車２の正面図を示す。なお、図１の座標系の「Ｆ」は車両前方へ示し、「Ｖ」は車両上方を示している。座標系の「Ｌ」は、車両の後方から前方をみたときの「左」を示している。以後の図でも、座標系の「Ｆ」、「Ｖ」、「Ｌ」の意味は同じである。

【0011】

自動車２のフロントグリル１０には空気取入口１１が設けられている。なお、図１では、空気取入口１１に設けられる羽板（ルーバー）の図示は省略した。図１では、フロントコンパートメントＦＣに配置されるバンパ３（バンパリインフォースメント３）、エアダクト２０、ラジエータ３０、ホーン４０を点線で示してある。バンパ３の後方にラジエータ３０が配置されている。フロントグリル１０とラジエータ３０の間には、空気取入口１１からラジエータ３０へ空気を導くエアダクト２０が配置されている。

【0012】

図２の一点鎖線は、上下方向におけるラジエータ３０の中心線ＣＬを表している。自動車２の空気取入口１１は、比較的に低い位置に設けられており、上下方向におけるラジエータ３０の中心ＣＬよりも下に設けられている。エアダクト２０は、空気取入口１１から入る空気がラジエータ３０のファン（ラジエータファン３１）の全面に当たるように、前から後に向かうにつれて上方に拡がっている。

【0013】

ホーン４０は、エアダクト２０の前方に配置されている。図１、図２では、ホーン４０を簡略化して描いてある。図示は省略しているが、ホーン４０は、ラジエータ３０を支持するフレーム（例えば、ラジエータサポートなど）に支持される。ホーン４０は、フロントコンパートメントＦＣのなかの構造物に支持されている。

【0014】

図２に示されているように、ホーン４０は、自動車２を正面から見て、ラジエータファン３１と重ならないように配置されている。ホーン４０は、自動車２を前方から見て、エアダクト２０の上角に重なるように配置されている。

【0015】

図３に、自動車２の前部の断面図を示す。図３は、図中の座標系のＦ軸とＶ軸に平行な平面であってホーン４０を横断する平面で自動車２をカットした断面を示している。図示は省略しているが、ホーン４０はラジエータサポートに支持されている。図３では、ラジエータ３０の構造は図示を省略した。

【0016】

図３の太い矢印線は空気の流れを示す。空気取入口１１から流入する空気は、エアダクト２０の前方の入口２０ａから入り、後方の出口２０ｂから出る。先に述べたように、フロントグリル１０の空気取入口１１は、ラジエータ３０の上下方向の中心ＣＬよりも低い位置に設けられている。エアダクト２０の入口２０ａもラジエータ３０の中心ＣＬよりも低い位置に設けられている。出口２０ｂは、ラジエータ３０の全面の全体を覆うように、ラジエータ３０の上下方向の中心ＣＬよりも上まで拡がっている。エアダクト２０は、車両の側方からみたときに、車両の前から後に向かって上方に拡がっている。

【0017】

エアダクト２０の上部２１は平坦面になっており、ホーン４０は、エアダクト２０の平坦な上部２１の前方に位置している。ホーン４０のスイッチ（不図示）を入れると、ダイヤフラム４２が振動し、音が出る。ホーン４０はダイヤフラム４２が前を向き、ケース４３が後方に位置するように車体に取り付けられている。ホーン４０のケース４３の後部には孔が設けられており、後方にも音が漏れる。

【0018】

エアダクト２０は比較的に柔らかい樹脂で作られている。ホーン４０の後方へ漏れる音によって、エアダクト２０の上部２１が振動する。エアダクト２０は共鳴板のように機能し、ホーン４０の音を前方へ反射する。後方へ漏れるホーン４０の音は、エアダクト２０で反射して前方へ広がる。図３に示されているように、自動車２の前部９は、ホーン４０の前方で閉じられており、ホーン４０の音が外へ響き難い。しかし、エアダクト２０が共鳴板の役割を果たし、ホーン４０の音を前方へ反射するので、ホーン４０の音が自動車２の前方に効果的に響く。

【0019】

図３のホーン４０はケース４３に孔が設けられているが、ケースの孔は必ずしも必要でない。

【0020】

（第１変形例）図４と図５を参照してエアダクトの変形例（エアダクト１２０）を採用した自動車２ａを説明する。図４は、エアダクト１２０の斜視図であり、図５は、自動車２ａの前部の断面図である。図４には、ホーン４０とラジエータ３０も図示してある。図４では、ホーン４０を簡略化して描いてある。

【0021】

エアダクト１２０は、車の前方から後方に向けて上方に拡がっているとともに、正面からみたときの上角に窪み１２１が設けられている。ホーン４０は、窪み１２１の前に配置されている。図５において、二点鎖線Ｂは、図３のエアダクト２０の上角の輪郭を示している。図３と比較すると理解できるように、ホーン４０の位置が後退している。エアダクト１２０の上角に窪み１２１を設け、その窪み１２１にホーン４０を配置することで、フロントコンパートメントＦＣの空間を有効に使うことができる。ホーン４０は前方の一部が窪み１２１からはみ出ていてもよい。なお、二点鎖線Ｂは、左右の窪み１２１の間におけるエアダクト１２０の輪郭にも相当する。

【0022】

先に述べたように、窪み１２１は、車の前方からみてエアダクト１２０の上角に設けられる。上角は、車両前方からみてラジエータファン３１と重ならないので、窪み１２１はラジエータファン３１への空気供給量にほとんど影響を与えない。図示は省略しているが、ホーン４０はラジエータサポートに支持されている。

【0023】

（第２変形例）図６に、第２変形例のエアダクト２２０を示す。図６は、エアダクト２２０を採用した自動車２ｂの前部の断面図である。エアダクト２２０は、第１変形例のエアダクト１２０と同様に、車両前方からみたときに上角に窪み２２１が設けられており、そこにホーン４０が配置されている。図５と同様に、二点鎖線Ｂは、左右の窪み２２１の間におけるエアダクト１２０の輪郭に相当する。

【0024】

窪み２２１の底面２２１ａ（エアダクト２２０のホーン４０に対向する部位）が、車両後方に窪むように湾曲している。エアダクト２２０のホーン４０に対向する部位（底面２２１ａ）を湾曲させることで、ホーン４０の音が効果的に前方へ向けて反射する。エアダクト２２０において、ホーン４０の後方の面は、放物曲面であるとなお一層よい。

【0025】

実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例の自動車は、２個のホーン４０を有している。自動車は、１個のホーンのみを有していてもよい。実施例の自動車は、車両を正面からみてエアダクトの左右の上角のそれぞれにホーンが配置されている。自動車は、自動車を正面からみてエアダクトの左右いずれかの上角のみにホーンを配置してもよい。その場合、エアダクトの左右いずれかの上角に窪みを設け、その窪みにホーンを配置してもよい。

【0026】

本明細書が開示する技術は、特にフロントグリルの空気取入口が自動車正面の下の方に設けられている車に適している。しかし、本明細書が開示する技術は、空気取入口の位置とサイズに限定されない。

【0027】

以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

【符号の説明】

【0028】

２、２ａ、２ｂ：自動車 ３：バンパ（バンパリインフォースメント） １０：フロントグリル １１：空気取入口 ２０、１２０、２２０：エアダクト ３０：ラジエータ ３１：ラジエータファン ４０：ホーン ４２：ダイヤフラム ４３：ケース １２０、２２１：窪み ＦＣ：フロントコンパートメント

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】