(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】苗補給システム
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
A01C11/02 350M
A01C11/02 350H
(21)【出願番号】P 2020107682
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤本 周作
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和正
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-205622(JP,A)
【文献】特開平07-163214(JP,A)
【文献】特開2012-024003(JP,A)
【文献】特開平11-155386(JP,A)
【文献】特開平01-181731(JP,A)
【文献】特開平09-070212(JP,A)
【文献】特開平11-155385(JP,A)
【文献】特開2003-250350(JP,A)
【文献】特開平11-318147(JP,A)
【文献】特開昭63-024811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット状苗が載置される苗のせ台から苗を切り出して圃場に植え付ける田植機の前記苗のせ台に前記マット状苗を供給する苗補給システムであって、
前記田植機に搭載され、
苗が育苗されたマット部材のみからなる前記マット状苗を
直接的に格納する予備苗収納部と、
前記苗のせ台に設けられ、前記マット状苗の残量を検知するセンサと、
前記マット状苗の残量が所定量以下となったことを前記センサが検知すると、前記予備苗収納部から前記苗のせ台に前記マット状苗を供給する苗補給装置とを備え、
前記予備苗収納部は、
支持部と、
前記支持部に着脱可能な状態で支持される苗棚とを備え、
前記マット部材は、もみがらがPVAで結合成形されたもみがら成形マットであり、
前記マット状苗は複数粒の種もみが前記マット部材に直接的に播種されて
、前記支持部から搬出された前記苗棚で育苗されたものであ
り、
前記苗棚は、複数の前記マット状苗が直接的に格納された状態で搬送されて、前記支持部に支持される苗補給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植え付ける移植機の苗補給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、田植機は、圃場を走行しながら、植付作業を行う。田植機は、植付装置と、苗のせ台と、予備苗収納部とを備える。植付装置は、苗のせ台に載置されたマット状苗から苗を一株ずつ取り出して圃場に植え付ける。予備苗収納部は、マット状苗が収納されたキャリアを格納する。また、ある種の田植機は、自動走行により、作業走行を行う。このような田植機は、走行経路を算出し、GNSS(Global Navigation Satellite System)等を用いて算出した自機位置に基づいて走行経路に沿った自動走行を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動走行が可能な田植機であっても、予備苗収納部に格納されたキャリアからマット状苗を取り出し、苗のせ台に搬送する作業は手動で行う必要がある。また、キャリアに収納されたマット状苗は、苗の根がキャリアの水抜き穴に絡まっていることもあり、根切り作業を行う必要がある。そのため、自動走行により田植機の作業効率が以前より向上しているとはいえ、依然として、苗のせ台へのマット状苗の搬送等の植付作業中に必要な作業が残っている。
【0005】
本発明は、田植機の作業効率をさらに向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る苗補給システムは、マット状苗が載置される苗のせ台から苗を切り出して圃場に植え付ける田植機の前記苗のせ台に前記マット状苗を供給する苗補給システムであって、前記田植機に搭載され、苗が育苗されたマット部材のみからなる前記マット状苗を直接的に格納する予備苗収納部と、前記苗のせ台に設けられ、前記マット状苗の残量を検知するセンサと、前記マット状苗の残量が所定量以下となったことを前記センサが検知すると、前記予備苗収納部から前記苗のせ台に前記マット状苗を供給する苗補給装置とを備え、前記予備苗収納部は、支持部と、前記支持部に着脱可能な状態で支持される苗棚とを備え、前記マット部材は、もみがらがPVAで結合成形されたもみがら成形マットであり、前記マット状苗は複数粒の種もみが前記マット部材に直接的に播種されて、前記支持部から搬出された前記苗棚で育苗されたものであり、前記苗棚は、複数の前記マット状苗が直接的に格納された状態で搬送されて、前記支持部に支持されたものである。
【0007】
このような構成により、マット状苗はキャリア等に納入されない状態で予備苗収納部に格納されるため、キャリアからマット状苗を取出したり、不要となったキャリアを処理したりする必要がなくなり、簡単な構成で予備苗収納部に格納されたマット状苗を苗のせ台に自動的に補給することができる。
【0008】
さらに、簡単な構成で、苗のせ台のマット状苗が不足する前に、予備苗収納部からマット状苗を取り出して苗のせ台に補給することができるため、植付作業を効率的に行うことができる。
【0009】
【0010】
また、マット状苗が格納された苗棚の状態で、マット状苗を田植機に搬入することができる。そのため、マット状苗を予備苗収納部に格納する工程が省かれ、容易かつ効率的に予備苗収納部にマット状苗を格納することができる。その結果、植付作業を効率的に行うことができる。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
また、苗が育苗されたマット状苗を苗棚(予備苗収納部)に移し替える必要がなくなり、植付作業を効率的に行うことができる。
【0015】
【0016】
スポンジ、不織布、および、もみがら成形マットは、保形性が高く、育成容易性が高く、環境負荷が少ない。そのため、スポンジ、不織布、および、もみがら成形マットは、マット状苗のマット部材として適切である。特に、保形性が高いため、キャリアを用いなくても、搬送の際にマット状苗が型崩れすることが少なく、効率的にマット状苗の補給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】田植機の概略構成を例示する左側面図である。
【
図3】苗補給装置の構成を例示する左側面図である。
【
図4】予備苗収納部にマット状苗を補給する構成を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、苗補給システムの実施形態について、図を用いて説明する。以下の説明において、
図1に示す矢印Uの方向を上方、矢印Dの方向を下方、矢印Fの方向を前方、矢印Rの方向を後方とする。また、左方および右方は、前方を向いた状態の左方(
図1における紙面手前向き)および右方(
図1における紙面奥向き)を示す。
【0019】
〔全体構成〕
まず、
図1を用いて苗補給システムを備える田植機の構成例を説明する。田植機は、植付装置2と、左右一対の前輪3と、左右一対の後輪4と、予備苗収納部10と、苗補給装置20とを備える。植付装置2、前輪3、後輪4、予備苗収納部10、および苗補給装置20は、機体に搭載されるエンジン(図示せず)または電動モータ(図示せず)により駆動され、機体フレーム1に支持される。
【0020】
植付装置2は、苗のせ台5と、植付機構6と、フロート7とを備える。植付装置2は、リンク機構8により、昇降可能な状態で機体フレーム1に支持される。
苗のせ台5は、マット状苗30を植え付け条数に応じた数だけ左右に並べて載置する台座である。苗のせ台5は、仕切り板(図示せず)によりマット状苗30の幅に相当する長さに区画され、植付条数に対応する数の区画が機体左右方向に並ぶ。マット状苗30は、各区画に複数枚載置される。さらに、苗のせ台5は、苗のせ台5に載置されるマット状苗30の量を区画毎に検出するセンサ21を備える。例えば、センサ21は各区画の所定の位置に設けられる接触センサである。ある区画のマット状苗30がセンサ21に接触すると、その区画に所定量以上のマット状苗30が載置されていることがわかる。
【0021】
植付機構6は、任意の植付条数に応じた数だけ、区画に対応して左右に並んで設けられる。植付機構6は、機体左右向きの軸芯周りに回転し、苗のせ台5に載置されたマット状苗30から一株分の苗32(
図2参照)を切り取って圃場に植え付ける。例えば、6条植えの田植機の場合、植付機構6および苗のせ台5の区画は6つである。フロート7は、圃場面を整地する。また、田植機は、施肥装置9を備えても良い。施肥装置9は、それぞれの植付機構6が植え付けた苗32(
図2参照)に、肥料貯留部から繰り出された肥料を施す。
【0022】
予備苗収納部10は、植付作業中に、苗のせ台5に補給するためのマット状苗30を予備的に格納する。予備苗収納部10は、後に
図3を用いて詳述するように、機体フレーム1に支持される搭載部(「支持部」に相当)11上に、複数のマット状苗30が搭載された苗棚12が載置支持される構成である。
【0023】
苗補給装置20は、予備苗収納部10と苗のせ台5との間に配置され、予備苗収納部10に格納されているマット状苗30を苗のせ台5に搬送する。ある区画に設けられたセンサ21が、その区画に載置されたマット状苗30が所定量以下になったことを検知すると、苗補給装置20は予備苗収納部10に格納されているマット状苗30を取り出し、取り出したマット状苗30を搬送し、苗のせ台5のその区画にマット状苗30を自動的に補給する。
【0024】
以上のように、本発明の苗補給システムは、苗のせ台5と、予備苗収納部10と、苗補給装置20とを備えて構成される。
【0025】
〔マット状苗〕
次に、
図2を用いてマット状苗30の構成例を説明する。
【0026】
マット状苗30は、マット部材31と苗32とから構成される。マット状苗30は、マット部材31にもみが所定の間隔で保持され、もみが発芽してから苗32が所定の大きさに成長するまで育苗されて生成される。例えば、苗32はマット部材31において水耕栽培等により育苗される。また、マット状苗30は、苗棚12にマット部材31が格納された状態で、発芽から苗32が所定の大きさに成長するまで育苗される。また、マット状苗30は、マット部材31に苗32を備えるだけの構成であり、キャリアには入れられない。
【0027】
ここで、従来のように、マット状苗30がキャリアに納入されていると、苗補給装置20は、予備苗収納部10のキャリアからマット状苗30のみを取出し、苗のせ台5にマット状苗30を補給する必要があった。そのため、苗補給装置20(苗補給システム)の構成が非常に複雑になっていた。
【0028】
これに対して、予備苗収納部10にキャリアを格納せず、マット状苗30のみを格納するため、本実施形態における苗補給装置20(苗補給システム)を簡単な構成で実現される。
【0029】
また、従来のように、キャリア内でマット状苗30を育苗すると、キャリアの水抜き穴に根が絡みついてしまう。キャリアに根が絡みついているため、苗補給装置20は、予備苗収納部10のキャリアに対して、あらかじめ手作業で根切り作業を行う必要があった。
【0030】
本実施形態における苗補給システムでは、キャリアを用いずにマット状苗30を育苗するため、根切り作業を行う必要がなく、苗の補給を効率的に行うことができる。
【0031】
なお、マット部材31は、種々の条件を満たす必要がある。まず、マット状苗30は、キャリアに納入されない状態で搬送されるため、予備苗収納部10に格納されている際や予備苗収納部10から取り出す際、あるいは搬送途中に破損する場合があり、特に角部分が崩れやすい。そのため、マット部材31は、ある程度の保形性が必要となる。
【0032】
また、適度に根が伸長でき、水分や肥料が保持でき、育苗中にもみが持ちあがることが抑制されるといった、育成容易性が必要となる。さらに、マット部材31は苗32と共に圃場に残ることとなるため、環境負荷が少ないといった環境性も必要となる。
【0033】
本実施形態に係るマット状苗30には、土ではなく、以上のような条件を満たすマット部材31が用いられる。例えば、マット部材31として、生分解性プラスチックを発泡成形したスポンジや、パルプが混合された不織布や、もみがらをPVA(Polyvinyl Alcohol)で結合成形したもみがら成形マット等が用いられる。
【0034】
このように、本実施形態に係るマット状苗30は、土ではなく上記のようなマット部材31で苗32を育苗して生成される。そのため、キャリアに納めなくても、保形性を確保することができる。また、本実施形態に係るマット状苗30は、上記のようなマット部材31を用いることにより、適度に根が伸長でき、水分や肥料が保持でき、育苗中にもみが持ちあがることが抑制されて、育成が容易となる。さらに、本実施形態に係るマット状苗30は、上記のようなマット部材31を用いることにより、環境負荷を抑制することもできる。
【0035】
なお、キャリアを用いないとはいえ、苗32の根がマット部材31から大きく張り出すと、苗棚12にからみつく等の不具合が生じる場合がある。そのため、マット部材31の裏面にシートが設けられても良い。また、マット状苗30は、育苗中に肥料が施されても良く、肥料は水と混入して施されても良い。また、植付作業の際に同時に施肥が行われても良いが、予備苗収納部10に格納された状態のマット状苗30に施肥が行われても良い。
【0036】
〔予備苗収納部〕
次に、
図3を用いて予備苗収納部10の構成を説明する。
【0037】
予備苗収納部10は、搭載部11上に苗棚12が載置支持されて構成される。苗棚12は、フレーム体13を備える箱状の棚であり、複数の底板14が上下方向に並んで設けられる。底板14で区切られた苗棚12内のそれぞれの空間には、マット状苗30が1つずつ格納される格納領域15が左右方向に並んで形成される。このような構成により、マット状苗30は、予備苗収納部10の底板14上の格納領域15に、個別に格納される。
【0038】
それぞれの格納領域15には、マット状苗30の存否を検知するセンサ16が設けられる。センサ16は、接触型のセンサであり、底板14に支持される。マット状苗30がセンサ16に接触することにより、苗棚12の所定の格納領域15にマット状苗30が格納されていることが検知される。
【0039】
苗棚12の側面と上面は、必要に応じて板材が設けられても良く、苗棚12の前面と後面はマット状苗30の搬入と搬出のために開放されている。
【0040】
〔苗補給装置〕
次に、
図3を用いて苗補給装置20の構成を説明する。
【0041】
苗補給装置20は、予備苗収納部10と苗のせ台5との間に設けられる支持フレーム22に支持される。支持フレーム22は、予備苗収納部10の上端領域および下端領域の後方にそれぞれ設けられた一対の横フレーム22aと、横フレーム22aに沿って、左右方向に移動可能な縦フレーム22bとを備える。縦フレーム22bは、予備苗収納部10の上部領域の後方から下部領域の後方にわたって設けられる。このような構成により、苗補給装置20は、予備苗収納部10の全ての格納領域の後方位置に移動することができる。
【0042】
苗補給装置20は、テーブル23と、爪体24と、出退機構25と、昇降機構26とを備える。テーブル23は、予備苗収納部10から苗のせ台5にマット状苗30を搬送する際に、マット状苗30を載置保持する部材である。テーブル23は、出退機構25により、予備苗収納部10の格納領域15内に突出する突出位置と、予備苗収納部10に向けて突出しない退避位置との間で姿勢変更される。また、テーブル23は、昇降機構26により、水平姿勢と、後方に向かうほど下がる傾斜姿勢との間で姿勢変更される。爪体24は、テーブル23の前端部領域に設けられ、機体左右向きの軸芯周りに揺動する。爪体24は、揺動することにより、テーブル23から上方に突出する姿勢と、テーブル23から上方に突出しない姿勢に姿勢変更可能に構成される。
【0043】
苗補給装置20は、センサ21により、苗のせ台5のいずれかの区画のマット状苗30が所定量以下となったことが検知されると、予備苗収納部10からマット状苗30を取り出して、苗のせ台5に自動的に補給する。マット状苗30を自動的に補給する制御は、図示しない制御装置により行われる。制御装置は、田植機に搭載されるECU等のプロセッサを備えて構成される。また、このような制御は、ソフトウェアで構成されても良い。この場合、制御に係るプログラムを格納する記憶部(図示せず)が設けられ、ECU等のプロセッサによりプログラムが実行される。
【0044】
センサ21が苗のせ台5のマット状苗30が所定量以下となったことを検知すると、まず、苗補給装置20は、予備苗収納部10のマット状苗30が存在する格納領域15の後方にテーブル23を移動させる。マット状苗30が存在する格納領域15はセンサ16により検知される。
【0045】
次に、苗補給装置20は、出退機構25によりテーブル23を予備苗収納部10の格納領域15の内部まで突出させる。この際、テーブル23は、マット状苗30と底板14との間に挿入され、爪体24がマット状苗30より前方に位置するように、テーブル23が突出される。
【0046】
次に、爪体24がテーブル23から上方に突出する姿勢に姿勢変更され、爪体24で前方からマット状苗30を保持する。
【0047】
次に、テーブル23が退避位置に姿勢変更される。これにより、予備苗収納部10からマット状苗30が取り出される。そして、マット状苗30が所定量以下となった苗のせ台5の区画の直前位置にテーブル23が移動される。
【0048】
最後に、テーブル23が傾斜姿勢に姿勢変更される。これにより、テーブル23に保持されていたマット状苗30が苗のせ台5の所定の区画に滑り落ちて載置される。
【0049】
このように、苗補給装置20は、苗のせ台5に搭載されたマット状苗30が所定量以下となり、植付作業のための苗が不足することが近づいてくると、予備苗収納部10からマット状苗30を取り出し、苗のせ台5まで搬送して、苗のせ台5にマット状苗30を補給する。これにより、苗のせ台5に載置されたマット状苗30が切れることなく、植付作業を継続することができ、作業効率が向上する。また、マット状苗30の不足を自動的に検知し、手作業を経ることなく予備苗収納部10からマット状苗30を自動的に補給することができるため、植付作業を止める必要がなく、作業効率が向上する。さらに、マット状苗30はキャリアを用いずに予備苗収納部10に格納されているため、不要になったキャリアを処理する必要がなく、簡単な構成でマット状苗30の自動補給を行うことができる。
【0050】
〔苗搬入機構〕
次に、
図4を用いて、予備苗収納部10にマット状苗30を搬入する苗搬入機構(「搬送装置」に相当)35について説明する。苗補給システムは、苗搬入機構35を含めても良い。
【0051】
苗搬入機構35は、搬送コンベア36と取出し機構37とを備える。取出し機構37は、苗が育苗されたマット状苗30が格納された苗棚12から、マット状苗30を取り出す。搬送コンベア36は、取り出されたマット状苗30を予備苗収納部10まで搬送し、格納領域15に搬入する。
【0052】
例えば、苗棚12が運搬車38により圃場に運ばれる。運搬車38は苗搬入機構35を備える。予備苗収納部10にマット状苗30を搬入する必要のある田植機は、畔際に移動され、運搬車38の苗棚12からマット状苗30が搬入される。この際、取出し機構37は苗棚12からマット状苗30を取り出し、搬送コンベア36にマット状苗30を受け渡す。搬送コンベア36は、受け取ったマット状苗30を予備苗収納部10に搬送し、マット状苗30が格納されていない格納領域15にマット状苗30を搬入する。
【0053】
このような構成により、マット状苗30を予備苗収納部10に自動的に搬入することができ、効率的に植付作業を行うことができる。
【0054】
なお、田植機が施肥装置9を備える場合、運搬車38が搭載する肥料タンク9aから肥料がホース(図示せず)を介して補給されても良い。また、田植機が除草剤等の薬剤散布装置(図示せず)を備える場合、運搬車38が搭載する薬剤タンク39から薬剤がホース(図示せず)を介して補給されても良い。
【0055】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、苗棚12の構成は、複数のマット状苗30を個別に格納できる構成であれば、任意の構成とすることができる。また、苗補給装置20の構成も、予備苗収納部10からマット状苗30を取り出し、苗のせ台5の所定の区画にマット状苗30を補給することができる構成であれば、任意の構成とすることができる。また、施肥装置9の肥料貯留部は任意の位置に設けることができる。
【0056】
(2)上記各実施形態において、予備苗収納部10は搭載部11に着脱可能に支持されても良い。この場合、苗搬入機構35を用いず、マット状苗30が格納された状態で苗棚12が田植機に運ばれ、搭載部11に載置されても良い。苗32の育苗から田植機への搭載までを、苗棚12にマット状苗30が格納された状態で行うことにより、田植機の予備苗収納部10にマット状苗30を搬入する必要がなくなり、マット部材31の保形性を高いレベルで確保する必要性が低減される。
【0057】
(3)上記各実施形態において、予備苗収納部10を設けない構成としても良い。例えば、苗のせ台5に十分な量のマット状苗30を搭載することができる場合、予備苗収納部10は不要となる。この場合、運搬車38により圃場に運ばれたマット状苗30は、直接苗のせ台5に搬入される。例えば、マット状苗30が搭載された苗棚12が運搬車38により圃場に運ばれ、任意の苗搬入機構により、苗棚12から苗のせ台5にマット状苗30が搬入される。
【0058】
(4)上記各実施形態において、マット状苗30は、苗棚12に格納された状態で育苗されて生成されることに限らず、育苗ハウス等の所定の場所で、地面に並べられ、あるいは棚に積層されて苗32が育苗されても良い。マット状苗30の状態で所定の大きさまで苗32が成長すると、マット状苗30は、苗棚12に格納される。
【0059】
(5)上記各実施形態において、センサ21は、苗のせ台5に載置されるマット状苗30の量を検出することができれば、接触センサに限らず任意の構成とすることができる。例えば、センサ21は、カメラと画像診断装置とから構成され、カメラが苗のせ台5を撮影し、画像診断装置が撮影した画像を解析して、苗のせ台5に載置されているマット状苗30の量を検出することができる。
【0060】
(6)上記各実施形態において、田植機は自動走行を行っても良いし、手動走行を行っても良い。自動走行を行う場合、田植機は測位ユニットを備え、全地球航法衛星システム(GNSS)の衛星からの電波を受信して、自車位置を算出する。そして、田植機は、走行経路が設定され、自車位置に基づいて自動走行を行う。また、自動走行は、操縦者が搭乗しない、無人走行で行われても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、苗のせ台に載置されたマット状苗から苗を取り出して植え付ける田植機等の移植機に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
5 苗のせ台
10 予備苗収納部
11 搭載部(支持部)
12 苗棚
20 苗補給装置
21 センサ
30 マット状苗
31 マット部材
32 苗
35 苗搬入機構(搬送装置)