IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユタカ技研の特許一覧

<>
  • 特許-消音器への吸音材充填方法 図1
  • 特許-消音器への吸音材充填方法 図2
  • 特許-消音器への吸音材充填方法 図3
  • 特許-消音器への吸音材充填方法 図4
  • 特許-消音器への吸音材充填方法 図5
  • 特許-消音器への吸音材充填方法 図6
  • 特許-消音器への吸音材充填方法 図7
  • 特許-消音器への吸音材充填方法 図8
  • 特許-消音器への吸音材充填方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】消音器への吸音材充填方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/24 20060101AFI20230411BHJP
   F01N 1/10 20060101ALI20230411BHJP
   F01N 13/18 20100101ALI20230411BHJP
【FI】
F01N1/24 F
F01N1/10 G
F01N13/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020135333
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030975
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 雄介
(72)【発明者】
【氏名】大越 克紀
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 彰人
(72)【発明者】
【氏名】丸山 猛志
(72)【発明者】
【氏名】白井 和行
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3226585(JP,U)
【文献】米国特許第06158547(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル内をセパレータによって複数の消音室に区画し、少なくとも1つの消音室に吸音材を充填して成る消音器への前記吸音材の充填方法であって、
前記シェルの前記吸音材を充填すべき消音室に対応する箇所に孔を形成し、該孔から前記吸音材を前記消音室に向けて噴射して該消音室に前記吸音材を充填した後、前記孔を封孔部材によって前記シェルの外部から封止し、
前記封孔部材は取付ブラケットを兼ねることを特徴とする消音器への吸音材充填方法。
【請求項2】
前記吸音材を充填すべき前記消音室を吸引しながら、前記シェルの外部から前記孔に差し込まれた充填用ノズルから前記吸音材を前記消音室に向けて噴射することによって、該吸音材を前記消音室に充填することを特徴とする請求項1に記載の消音器への吸音材充填方法。
【請求項3】
前記封孔部材の前記シェルの外面に当接する外周フランジ部を前記シェルの外面に溶接することによって、該封孔部材で前記孔を封止することを特徴とする請求項1または2に記載の消音器への吸音材充填方法。
【請求項4】
前記シェルの外面の前記封孔部材の外周フランジ部が当接する部分は、平坦な平面で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の消音器への吸音材充填方法。
【請求項5】
前記封孔部材は、有底カップ状に成形されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の消音器の吸音材充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気音を低減するための消音器への吸音材充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合気の燃焼によって発生する熱エネルギを運動エネルギに変換する内燃エンジンにおいては、排気ガスが触媒コンバータや消音器(サイレンサ)を経て大気中へと排出される。ここで、消音器は、排気ガスが内燃エンジンから排出される際に発生する音(排気音)を低減するとともに、エンジン特性を調整する機能を果たすものである。
【0003】
消音器は、中空容器状のシェルの内部をセパレータ(隔壁)によって複数の消音室に区画し、各消音室に開口する各種パイプ(例えば、インレットパイプやアウトレットパイプ)によって複数の消音室同士を連通させて構成されている。このような消音器においては、内燃エンジンから排出される排気ガスが各種パイプを経て各消音室へと順次流れる過程で該排気ガスが膨張と収縮を繰り返すため、該排気ガスが有する騒音エネルギが減衰して排気音が低減される。
【0004】
ところで、消音器には、消音室にグラスファイバなどの吸音材(ロービング材)を充填したものもあり、このような消音器によれば、排気ガスが吸音材を通過または接触することによって吸音されるため、より一層高い消音効果が得られる。このような消音器の製造過程においては、シェル内の消音室に吸音材を充填する工程が必要であり、この吸音材の充填を均一に行うための方法や装置が例えば特許文献1,2において提案されている。
【0005】
すなわち、特許文献1には、円筒状のシェル(ケース)の一対の貫通孔にインナパイプを貫通させた消音器の前記ケースと前記インナパイプの間の内部空間に吸音材(グラスファイバ)を充填する方法及び装置が提案されている。具体的には、インナパイプを正規の固定位置から貫通方向にずらし、このインナパイプがずれることによって開放されたシェルの貫通孔から充填用ノズルをシェル内に差し込み、消音器を回転させながら前記充填用ノズルから吸音材を内部空間に噴射して該内部空間に吸音材を充填する方法及び装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、パイプ(有孔管)のシェルの端壁に開口する端部の一部に充填開口部を形成し、この充填開口部から充填用ノズルを差し込み、この充填用ノズルから吸音材を消音室(内部コンパートメント)に向けて噴射して消音室に該吸音材を充填する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6495567号公報
【文献】特表2004-518063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1において提案された充填方法及び充填装置は、円筒形(軸対称形状)を有するシェルを備える消音器を対象としているため、消音器を支持する支持部として構造が単純で小型のものを使用することができ、消音器をその軸心回りに回転させながら吸音材を充填することができるが、シェル形状が単純な円筒形状(軸対称形状)でない消音器については、その支持構造が複雑化および大型化するとともに、該消音器を回転させながら吸音材を充填することができない。また、インナパイプが直線状のものである場合に限り、該インナパイプを貫通方向にずらすことができるが、一部に屈曲部を有するインナパイプにあっては、これを貫通方向に簡単にずらすことができないという問題がある。
【0009】
特許文献2において提案された充填方法においては、吸音材の充填は、セパレータによって区画されたシェル内の複数の消音室のうちの端部に位置する消音室のみに限定されるという問題がある。また、パイプ(有孔管)の端部に開口する充填開口部の径は、パイプの径によって制限されるため、大きな径の充填開口部を形成することができない。さらに、充填用ノズルを差し込む方向によって充填開口部の方向が決まるため、充填作業が容易ではないという問題もある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、シェル形状やシェル内の構造によらず消音器を安定的に保持して該消音器に吸音材を作業性良く且つ容易に充填することができる消音器への吸音材充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、シェル内をセパレータによって複数の消音室に区画し、少なくとも1つの消音室に吸音材を充填して成る消音器への前記吸音材の充填方法であって、前記シェルの前記吸音材を充填すべき消音室に対応する箇所に孔を形成し、該孔から前記吸音材を前記消音室に向けて噴射して該消音室に前記吸音材を充填した後、前記孔を封孔部材によって前記シェルの外部から封止し、前記封孔部材は取付ブラケットを兼ねることを第1の特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記第1の特徴に加えて、前記吸音材を充填すべき前記消音室を吸引しながら、前記シェルの外部から前記孔に差し込まれた充填用ノズルから前記吸音材を前記消音室に向けて噴射することによって、該吸音材を前記消音室に充填することを第2の特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記第1または第2の特徴に加えて、前記封孔部材の前記シェルの外面に当接する外周フランジ部を前記シェルの外面に溶接することによって、該封孔部材で前記孔を封止することを第3の特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記第3の特徴に加えて、前記シェルの外面の前記封孔部材の外周フランジ部が当接する部分は、平坦な平面で構成されていることを第4の特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記第1~第4の何れかの特徴に加えて、前記封孔部材は、有底カップ状に成形されていることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、シェルに必要十分な大きさの孔を容易に形成することができ、この孔に充填用ノズルを差し込んで吸音材をシェル内の消音室に充填することができ、この場合、充填用ノズルの方向や回動などの自由度が高いため、吸音材の充填を作業性良く且つ容易に行うことができる。そして、この充填作業は、消音器を回転させることなく、また、シェル形状やシェル内の構造によらず消音器を安定的に保持して行うことができるため、消音器を保持するための保持機構の構造単純化と小型化が図られる。しかも、封孔部材が消音器を取り付けるための取付ブラケットの機能を兼ねるため、部品点数を削減して消音器の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、吸音材を充填すべき消音室を吸引しながら吸音材が充填されるため、吸音材を消音室に効率良く且つ確実に充填することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、封孔部材の外周フランジ部をシェルの外面に溶接することによって、該封孔部材をシェルの外面に固着して孔を封止するようにしたため、封孔部材の剛性が高められる。この結果、封孔部材を薄肉化して軽量化することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、封孔部材の外周フランジ部をシェルの外面の平坦面に密着させた状態で溶接することによって、該封孔部材をシェルの外面に確実に取り付けて孔を当該封孔部材によって封止することができる。また、孔がシェルの外面の平坦面に開口するため、該孔を介しての吸音材の充填作業と充填後の孔の封止に際して封孔部材の位置決め作業が容易化する。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、封孔部材が有底カップ状に成形されているため、この封孔部材がシェルの外面に固着された状態では、この封孔部材の内部と消音室とが連通する。このため、消音器の容量が封孔部材の内部空間の容積分だけ増えて消音効果が高められるとともに、シェルの剛性が封孔部材によって高められる。また、封孔部材とシェルの端部同士を合わせることによって、封孔部材のシェルに対する位置決めが容易化する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】吸音材が充填される前の消音器の破断平面図である。
図2】吸音材が充填される前の消音器の破断斜視図である。
図3】吸音材が充填される前の消音器のシェルに形成された孔に充填用ノズルを差し込む前の状態を示す破断斜視図である。
図4】消音器のシェルに形成された孔に充填用ノズルを差し込んで吸音材を充填している状態を示す破断斜視図である。
図5】吸音材充填後にシェルの孔を封孔部材(取付ブラケット)によって封止した状態を示す消音器の破断平面図である。
図6】吸音材充填後にシェルの孔を封孔部材(取付ブラケット)によって封止した状態を示す消音器の斜視図である。
図7図5の7-7線拡大断面図である。
図8】(a)は封孔部材を斜め上方から見た斜視図、(b)は同封孔部材を斜め下方から見た斜視図である。
図9】取付ブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は吸音材が充填される前の消音器の破断平面図、図2は吸音材が充填される前の消音器の破断斜視図、図3は吸音材が充填される前の消音器のシェルに形成された孔に充填用ノズルを差し込む前の状態を示す破断斜視図、図4は消音器のシェルに形成された孔に充填用ノズルを差し込んで吸音材を充填している状態を示す破断斜視図、図5は吸音材充填後にシェルの孔を封孔部材(取付ブラケット)によって封止した状態を示す消音器の破断平面図、図6は吸音材充填後にシェルの孔を封孔部材(取付ブラケット)によって封止した状態を示す消音器の斜視図、図7図5の7-7線拡大断面図、図8(a)は封孔部材を斜め上方から見た斜視図、図8(b)は同封孔部材を斜め下方から見た斜視図、図9は取付ブラケットの斜視図である。
【0026】
本実施の形態に係る消音器1は、車両の駆動源である不図示の内燃エンジンから排出される排気ガスの音(排気音)を低減するためのものであって、中空容器状のシェル2を備えており、このシェル2内は、図1及び図2に示すように、垂直に起立するセパレータ3によって第1の消音室S1と第2の消音室S2とに区画されている。
【0027】
上記シェル2は、図6に示すように、上下に2分割された有底カップ状のシェル半体2A,2Bの各開口部周縁2a,2b同士を溶接することによってモナカ状の中空容器として構成されている。なお、各シェル半体2A,2Bは、SUS材などの金属プレートをプレス成形することによって得られる。ここで、消音器1においては、図1及び図2に矢印にて示す方向をそれぞれ「前後」、「左右」及び「上下」方向とする。
【0028】
また、図1及び図2に示すように、シェル2のシェル半体2Bの前端壁の左端側(図1の下側)には、インレットパイプ4が前後方向に貫通して第1の消音室S1に臨んでいる。このインレットパイプ4のシェル半体2Bの前端壁に開口する一端(前端)には、不図示の内燃エンジンの排気系から延びる不図示の排気管が接続されており、同インレットパイプ4の他端(後端)は、セパレータ3に当接してその周囲が固着(溶接)されている。ここで、インレットパイプ4は、多数の円形の小孔4aが形成された多孔管として構成されている。また、セパレータ3は、多数の円形の小孔3aが形成された多孔板(パンチングメタル)として構成されている。
【0029】
また、セパレータ3の右端側には、アウトレットパイプ5がインレットパイプ4と平行に前後方向に貫通しており、このアウトレットパイプ5の一端(前端)は、第1の消音室S1に開口し、他端(後端)は、下側のシェル半体2Bの後端壁に開口している。なお、本実施の形態では、セパレータ3とインレットパイプ4及びアウトレットパイプ5は、シェル2と同様にSUS材などの耐熱性と耐食性の高い金属によって構成されている。
【0030】
ところで、本実施の形態に係る消音器1においては、図5に示すように、第2の消音室S2にグラスファイバなどの吸音材(ロービング材)6が充填されるが、以下、この吸音材6の第2の消音室S2への充填方法について説明する。
【0031】
図1図4に示すように、シェル2(シェル半体2A)の第2の消音室S2に対応する部分の右端側の上面には、円形の孔7が形成されている。消音室S2への吸音材6の充填に際しては、消音器1が下側のシェル半体2Bが下になるように不図示の保持機構の支持台上に載置される。
【0032】
次に、不図示の充填装置から延びる充填用ノズル11を、図3に示すように消音器1のシェル2(シェル半体2A)の上面に開口する孔7の上方から、図4に示すように該充填用ノズル11を孔7に差し込む。すると、図4に示すように、充填用ノズル11の先端が消音器1の第2の消音室S2に開口し、不図示の充電装置を駆動することによって、グラスファイバなどの吸音材6が充填用ノズル11の先端開口部から第2の消音室S2に向けて噴射され、第2の消音室S2に吸音材6が充填される。なお、このとき、図4に示すように、インレットパイプ4にホース12を介して吸引ポンプ13を接続し、該吸引ポンプ13を駆動して消音器1内の第1及び第2の消音室S1,S2を吸引しながら充填用ノズル11によって第2の消音室S2に吸音材6を噴射すれば、該吸音材6が第2の消音室S2に効率良く且つ確実に充填される(図5参照)。ここで、吸引ポンプ13をアウトレットパイプ5に接続しても良く、この状態で吸引ポンプ13を駆動しても第1及び第2の消音室S1,S2を吸引することができる。
【0033】
以上のようにして、消音器1の第2の消音室S2に吸音材6が充填されると、シェル2(シェル半体2A)の上面に開口する孔7が図5及び図6に示すようにキャップとしての封孔部材8によって封止される。
【0034】
上記封孔部材8は、図8に示すように、金属板のプレス成形によって得られる矩形の有底カップ状の蓋部材であって、その開口部の周縁には矩形リング状の外周フランジ部8aが形成されている。
【0035】
ところで、消音器1のシェル2(シェル半体2A)の孔7が形成されている部分は、平坦な平面を成しており、封孔部材8は、シェル2(シェル半体2A)の上面に開口する孔7を上方から塞ぐようにシェル1の上面に被せられる。このとき、シェル2の孔7が開口する部分の周囲は、前述のように平坦な平面を成しているため、封孔部材8を図7に示すようにシェル2の上面に孔7を上方から覆うように被せると、該封孔部材8の外周フランジ部8aがシェル2の上面に密着する。そして、この状態で、封孔部材8の外周フランジ部8aの周囲を溶接すれば、該封孔部材8がシェル2の上面に密着した状態で固着され、シェル2の上面に開口していた孔7が封孔部材8によって封止される。
【0036】
ここで、図8に示すように、封孔部材8の上面の幅方向中央には、横断面半円状の凹溝8bが長手方向に沿って形成されており、この凹溝8bにはフック部材9が嵌め込まれて溶接され、これらの封孔部材8とフック部材9とは、例えば、消音器1を他の部品に取り付けるための取付ブラケット10を構成している。なお、フック部材9は、金属棒を屈曲成形して構成されている。
【0037】
而して、図5に示すように第2の消音室S2に吸音材6が充填され、この吸音材6が充填された後にシェル2の上面に開口する孔7が取付ブラケット10を構成する封孔部材8によって封止された消音器1において、不図示の内燃エンジンから排出される排気ガスは、インレットパイプ4から第1の消音室S1に導入される。すなわち、インレットパイプ4を流れる排気ガスは、該インレットパイプ4に形成された多数の小孔4aから第1の消音室S1へと流出し、この第1の消音室S1へと流れ込んだ排気ガスは、セパレータ3の小孔3aを介して吸音材6に接触して吸音されつつ、アウトレットパイプ5へと流れ込んで最終的には大気中に排出される。
【0038】
以上のように、内燃エンジンから排出される排気ガスは、消音器1を通過する過程で膨張と収縮を繰り返すことによって騒音エネルギが減衰されるとともに、吸音材6によって吸音されるため、排気音が低減されて静音化が図られる。
【0039】
以上において、本実施の形態においては、消音器1のシェル2(シェル半体2A)に必要十分な大きさの孔7を容易に形成することができ、この孔7に充填用ノズル11を差し込んで吸音材6をシェル2内の第2の消音室S2に充填することができる。この場合、充填用ノズル11の方向や回動などの自由度が高いため、吸音材6の充填を作業性良く且つ容易に行うことができる。そして、この充填作業は、消音器1を回転させることなく、シェル2の形状やシェル2内の構造によらず消音器1を安定的に保持して行うことができるため、消音器1を保持するための保持機構の構造単純化と小型化が図られる。
【0040】
また、消音器1の第2の消音室S2への吸音材6の充填が終了すると、封孔部材8の外周フランジ部8aをシェル2の上面に溶接することによって、該封孔部材8をシェル2の上面に固着して孔7を封止するようにしたため、封孔部材8の剛性が高められる。この結果、封孔部材8を薄肉化して軽量化することができる。
【0041】
さらに、本実施の形態においては、封孔部材8の外周フランジ部8aをシェル2の外面の平坦面に密着させた状態で溶接することによって、該封孔部材8をシェル2の上面に確実に取り付けて孔7を当該封孔部材8によって封止することができる。この場合、孔7がシェル2の上面の平坦面に開口するため、該孔7を介しての吸音材6の充填作業と充填後の孔7の封止に際して封孔部材8の位置決め作業が容易化する。
【0042】
また、封孔部材8が有底カップ状に成形されているため、この封孔部材8がシェル2の上面に固着された状態では、図7に示すように、この封孔部材8の内部と第1及び第2の消音室S1,S2とが連通する。このため、消音器1の容量が封孔部材8の内部空間の容積分だけ増えて消音効果が高められるとともに、シェル2の剛性が封孔部材8によって高められる。そして、封孔部材8とシェル2の端部同士を合わせることによって、封孔部材8のシェル2に対する位置決めが容易化する。
【0043】
そして、本実施の形態においては、封孔部材8とフック部材9が例えば消音器1を取り付けるための取付ブラケット10として構成されているため、部品点数を削減して消音器1の軽量化とコストダウンを図ることができるという効果が得られる。
【0044】
なお、以上はシェル2の内部が1つのセパレータ3によって2つの第1及び第2の消音室S1,S2とに区画されている消音器1の第2の消音室S2への消音材6の充填方法について説明したが、本発明は、シェルの内部が2以上の複数のセパレータによって3つ以上の複数の消音室に区画されている消音器において任意の消音室に吸音材を充填する場合についても同様に適用可能である。
【0045】
また、本発明は、シェルの内部にインレットパイプやアウトレットパイプの他、インナパイプなどを含む複数のパイプが設けられた消音器における消音室への吸音材の充填方法に対しても同様に適用可能である。
【0046】
さらに、以上は本発明を車両のエンジンから排出される排気ガスの音(排気音)を低減するための消音器への吸音材充填方法に適用した形態について説明したが、本発明は、エンジン以外の他の任意の機器から排出される排気ガスの音(排気音)を低減するための消音器への吸音材充填方法に対しても同様に適用可能である。
【0047】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 消音器
2 シェル
3 セパレータ
3a セパレータの小孔
4 インレットパイプ
5 アウトレットパイプ
6 吸音材
7 孔
8 封孔部材
8a 封孔部材の外周フランジ部
9 フック部材
10 取付ブラケット
11 充填用ノズル
12 ホース
13 吸引ポンプ
S1 第1の消音室
S2 第2の消音室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9