(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】水性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20230411BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230411BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/73
A61K8/86
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020503555
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007479
(87)【国際公開番号】W WO2019168003
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2018035871
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】王 冕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 繁郎
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-263275(JP,A)
【文献】特開平05-238914(JP,A)
【文献】特開昭60-067404(JP,A)
【文献】特開平10-265336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
A61K 8/19
A61K 8/25
A61K 8/29
A61K 8/73
A61K 8/86
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリビニルアルコール
b)粉末
c)少なくとも2種の多糖増粘剤
d)ビニル系水溶性増粘剤
e)親水性非イオン性界面活性剤
を含有してなり、
前記c)多糖増粘剤が、サクシノグリカンおよびカルボキシメチルセルロースを含むか、またはサクシノグリカン、キサンタンガムおよびカルボキシメチルセルロースを含み、
カルボキシメチルセルロースナトリウムコーティング微結晶セルロースを含まない、水性化粧料。
【請求項2】
粘土鉱物を含有しない、請求項1に記載の水性化粧料。
【請求項3】
前記d)ビニル系水溶性増粘剤がカルボキシビニルポリマーである、請求項1
または2に記載の水性化粧料。
【請求項4】
前記e)親水性非イオン性界面活性剤のHLBが14以上である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の水性化粧料。
【請求項5】
ピールオフパック化粧料である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の水性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性化粧料に関する。さらに詳しくは、ポリビニルアルコールを配合する水性化粧料に粉末成分が高配合されているにもかかわらず、粉末の沈降および凝集が抑制され、分散安定性に優れる水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、肌の調子を整えるあるいは肌を美しく見せるといった通常化粧料に求められる機能に加え、肌に適用した際の外観の目新しさおよび奇抜さも販売価値の重要な要素となっている。例えば、フェイスパック用綿に動物柄などが印刷されたパック化粧料が販売されており、SNS上での反響によりそれら商品の購買が促されているのも事実である。
【0003】
絵柄が印刷されたフェイスパック用綿を用いるほか、上記のような消費者嗜好を満たすものとして、化粧料自体を色剤で着色し、所望の部位に塗布して用いることができる化粧料が考えられる。このような化粧料の実現のためには、従来にない目新しい色彩に着色するために多くの色剤を配合する必要がある。また、環境や人体への安全性に配慮する考えから、着色剤として顔料が好ましく用いられるが、化粧料に顔料を高配合すると経時的な沈降および凝集が生じるという問題がある。
【0004】
従来では、化粧料に配合した顔料の沈降を抑制するために、粘土鉱物と特定の増粘剤とを組み合わせて配合することが提案されている(特許文献1および特許文献2)。
【0005】
一方、肌にハリ感を付与する、被膜を形成させる等の目的で、基礎化粧品やメーキャップ化粧品等に多く用いられる成分としてポリビニルアルコールがある。中でも、皮膚に付着した汚れや古い角質層を取り除く洗浄効果を兼ね備えたピールオフタイプのパック化粧料においては、乾きの早さや乾燥後の剥がれやすさの観点からポリビニルアルコールを主成分としたものが好まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献3においても述べられているように、ポリビニルアルコールを配合した化粧料においては、ポリビニルアルコールに含まれる酢酸残基が経時で加水分解することにより、化粧料のpHが変化し、配合される粉末の凝集や沈降が生じ、組成物の経時安定性が損なわれるといった問題がある。よって、ポリビニルアルコールを配合した化粧料に多くの粉末を安定して配合させるためには、さらなる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-40106
【文献】特開平9-175924
【文献】特開2006-131616
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリビニルアルコールを配合する水性化粧料において、粉末を高配合することができる化粧料に関する。本願発明は、粉末が高配合されているにもかかわらず、経時によっても粉末の沈降および凝集が抑制され、分散安定性に優れる水性化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリビニルアルコールと粉末とを配合する水性化粧料において、少なくとも2種の多糖増粘剤とビニル系水溶性増粘剤と親水性非イオン性界面活性剤とを組み合わせて配合することにより、粉末の経時的沈降および凝集が十分に抑制され、粉末の分散安定性が優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(a)ポリビニルアルコール
(b)粉末
(c)少なくとも2種の多糖増粘剤
(d)ビニル系水溶性増粘剤
(e)親水性非イオン性界面活性剤
を含有してなる、水性化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記構成とすることにより、粉末の経時的沈降および凝集が十分に抑制され、粉末の分散安定性に優れる水性化粧料を得ることができる。また、顔料およびパール剤を高配合することができるため、肌に適用した際に従来にない外観となり、消費者嗜好を満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水性化粧料は、(a)ポリビニルアルコール、(b)粉末、(c)少なくとも2種の多糖増粘剤、(d)ビニル系水溶性増粘剤および(e)親水性非イオン性界面活性剤を含むことを特徴としている。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0013】
<(a)ポリビニルアルコール>
本発明に係る水性化粧料に配合される(a)ポリビニルアルコール(以下、単に「(a)成分」と称する場合がある)は、通常化粧料に用いられるポリビニルアルコールであればよく、特に限定されない。
【0014】
ポリビニルアルコールの重合度は通常4質量%濃度水溶液の20℃における粘度として表され、けん化度は、ポリビニルアルコールの製造時におけるポリ酢酸ビニルのアセチル基のけん化の割合により表される。ポリビニルアルコールとしては、けん化度と粘度の違いにより種種市販されており、例として、ゴーセノールEG-05C(けん化度86.5~89.0モル%、粘度4.2~6.3mPa・s)、ゴーセノールEG-40C(けん化度86.5~89.0モル%、粘度34.4~51.6mPa・s)(いずれも日本合成化学工業社製)、P.V.A EG-40(けん化度86.5~89.0モル%、粘度40.0~46.0mPa・s、富士アミドケミカル社製)等がある。
【0015】
本発明の水性化粧料に配合される(a)成分としては、いずれの粘度のポリビニルアルコールを単独で用いてもよいし、異なる粘度のポリビニルアルコールの2種以上を混合して用いてもよい。異なる粘度のポリビニルアルコールを複数混合して用いる場合には、高粘度のものと低粘度のものとを組み合わせて用いると、粉末の沈降および凝集がさらに抑制される傾向がある。ここで、低粘度のポリビニルアルコールに対する高粘度のポリビニルアルコールの配合比(高粘度ポリビニルアルコール/低粘度ポリビニルアルコール)を1より大きくするのが好ましく、1.5~12とするのがより好ましい。
本発明の化粧料においては、4質量%濃度水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上30mPa・s未満のポリビニルアルコールを低粘度ポリビニルアルコールとし、30mPa・s以上70mPa・s以下のものを高粘度ポリビニルアルコールとする。
【0016】
本発明の水性化粧料における(a)成分の配合量は、化粧料全量に対して、1~40質量%、好ましくは3~35質量%、より好ましくは5~30質量%である。(a)成分の配合量が1質量%未満である場合には十分な被膜が形成されず、40質量%を超えて配合すると水性溶媒に溶解できないなどの点から好ましくない。
【0017】
<(b)粉末>
本発明に係る水性化粧料に配合される(b)粉末(以下、単に「(b)成分」と称する場合がある)は、通常化粧料に用いられるものであって、特に限定するものではないが、顔料、真珠光沢顔料(パール剤)、ラメ剤、機能性顔料などが挙げられる。
【0018】
顔料には有機顔料と無機顔料があり、さらに、無機顔料には、体質顔料、着色顔料、白色顔料等が含まれる。
【0019】
有機顔料としては、限定するものではないが、リソールルビンBCA(赤色202号)、レーキレッドC(赤色203号)、レーキレッドCBA(赤色204号)、リソールレッド(赤色205号)、リソールレッドCA(赤色206号)、リソールレッドBA(赤色207号)、リソールレッドSR(赤色208号)、ブリリアントレーキレッドR(赤色219号)、ディープマルーン(赤色220号)、トルイジンレッド(赤色221号)、パーマトンレッド(赤色228号)、パーマネントオレンジ(だいだい色203号)、ベンチジンオレンジG(だいだい色204号)、ベンチジンエローG(黄色205号)、ブリリアントファストスカーレット(赤色404号)、パーマネントレッドF5R(赤色405号)、ハンザオレンジ(だいだい色401号)、ハンザイエロー(黄色401号)、フタロシアニンブルー(青色404号)等が挙げられる。
【0020】
体質顔料としては、限定するものではないが、マイカ、セリサイト、タルク、カオリンなどの粘土鉱物の粉砕品、無水ケイ酸、酸化セリウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、合成タルク、硫酸バリウム、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0021】
着色顔料としては、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄、γ-酸化鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青等が挙げられる。
【0022】
白色顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0023】
真珠光沢顔料(パール剤)としては、二酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)、酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン処理雲母チタン、コンジョウ処理雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ処理雲母チタン、酸化クロム処理雲母チタン、黒酸化チタン雲母チタン、アクリル樹脂被覆アルミニウム末、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化チタン被覆ガラス粉、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等が挙げられる。
【0024】
ラメ剤としては、樹脂や金属粉末を使用することができ、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム積層末、ポリエチレンテレフタレート・金積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレン・ポリエステル積層末、ポリエチレン・ポリエチレンテレフタレート積層末、アクリル樹脂被覆アルミニウム末等が挙げられる。さらに、これらの粉末を法定色素または無機顔料で着色したものを用いることもできる。
【0025】
顔料、パール剤、ラメ剤などの粉末として、親水化処理した粉末を用いてもよい。親水化処理した粉末としては、当分野で知られる親水化処理を施したものを用いることができる。親水化処理は有機処理、無機処理共に可能である。親水化処理剤としては、特に限定されるものではないが、多価アルコール、多糖類、水溶性高分子、金属アルコキシド、水ガラス等が挙げられる。
【0026】
機能性顔料としては、窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体(ハイブリッドファインパウダー)等が挙げられる。
【0027】
本発明の水性化粧料における(b)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.5~3.0質量%、好ましくは1.0~2.0質量%、より好ましくは1.2~1.8質量%である。(b)成分の配合量が0.5質量%未満であると望ましい外観が得られず、化粧料をパック化粧料として調製した場合にマスクがはがれにくくなる傾向がある。3.0質量%を超えて配合すると粉末の沈降やゲル化が生じることが懸念される。
【0028】
<(c)少なくとも2種の多糖増粘剤>
本発明に係る水性化粧料に配合される(c)少なくとも2種の多糖増粘剤(以下、単に「(c)成分」と称する場合がある)は、通常化粧品分野において組成物の粘度を調節する目的で用いられる多糖類であって、限定するものではないが、植物系多糖類、微生物系多糖類、セルロース系多糖類等が挙げられる。
【0029】
植物系多糖類には、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等が含まれる。
微生物系多糖類には、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグリカン、ブルラン等が含まれる。
【0030】
セルロース系多糖類には、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等が含まれる。
【0031】
本発明の水性化粧料においては、上記のような多糖増粘剤から選択される少なくとも2種を組み合わせて用いるのがよく、これらの中でも、キサンタンガム、サクシノグリカンおよびカルボキシメチルセルロースから選択される少なくとも2種を組み合わせて用いるのが好ましい。本発明の水性化粧料においては、少なくとも2種の多糖増粘剤を配合することにより、配合される粉末成分の沈降および凝集が抑制され、分散安定性が良くなる。
【0032】
本発明の水性化粧料における(c)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.01~3.0質量%、好ましくは0.05~2.0質量%、より好ましくは0.1~1.0質量%である。(c)成分の配合量が0.01質量%未満であると粉末の沈降防止に効果がなく、3.0質量%を超えて配合するとゲル化する懸念があることに加え使用性が悪くなるなどの点で好ましくない。
【0033】
<(d)ビニル系水溶性増粘剤>
本発明に係る水性化粧料に配合される(d)ビニル系水溶性増粘剤(以下、単に「(d)成分」と称する場合がある)は、通常化粧品分野において組成物の粘度を調節する目的で用いられる水溶性合成高分子であって、ここではポリビニルアルコール以外のものをいう。(d)成分としては、限定するものではないが、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
【0034】
本発明の化粧料においては、ビニル系水溶性増粘剤を配合することにより、静置時の粉末の分散性が良くなる効果がある。また、一般に高粘度の製剤を調製できるとして用いられるビニル系水溶性増粘剤を用いることにより、さらに静置時の化粧料の粘度が高まり、粉末成分の凝集が抑制される傾向がある。高粘度の製剤を調製できるとして用いられるビニル系水溶性増粘剤の例としては、カーボポール980(ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)、カーボポール981(ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)、シンタレンK(3V SIGMA社製)、シンタレンL(3V SIGMA社製)が挙げられる。
【0035】
本発明の水性化粧料における(d)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.01~1.0質量%、好ましくは0.02~0.2質量%、より好ましくは0.03~0.1質量%である。(d)成分の配合量が0.01質量%未満であると粉末の分散性に劣り、化粧料全体の静置粘度が低下するため粉末が沈降しやすくなる。0.2質量%を超えて配合すると粉末が凝集される傾向が生じ、1.0質量%を超えると粉末が凝集するので好ましくない。
【0036】
<(e)親水性非イオン性界面活性剤>
本発明に係る水性化粧料に配合される(e)親水性非イオン性界面活性剤(以下、単に「(e)成分」と称する場合がある)は、特に限定するものではないが、POEソルビタンモノオレエ-ト、POEソルビタンモノステアレ-ト、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノラウレ-ト、POEソルビットモノオレエ-ト、POEソルビットペンタオレエ-ト、POEソルビットモノステアレ-ト等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリンモノステアレ-ト、POEグリセリンモノイソステアレ-ト、POEグリセリントリイソステアレ-ト等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエ-ト、POEモノステアレ-ト、POEジステアレ-ト、POEモノジオレエ-ト、ジステアリン酸エチレングリコ-ル等のPOE脂肪酸エステル類、POEラウリルエ-テル、POEオレイルエ-テル、POEステアリルエ-テル、POEベヘニルエ-テル、POE2-オクチルドデシルエ-テル、POEコレスタノ-ルエ-テル等のPOEアルキルエ-テル類、POEオクチルフェニルエ-テル、POEノニルフェニルエ-テル、POEジノニルフェニルエ-テル等のPOEアルキルフェニルエ-テル類、プルロニック(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコ-ル)等のプルロニック型類、POE・POPセチルエ-テル、POE・POP2-デシルテトラデシルエ-テル、POE・POPモノブチルエ-テル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエ-テル等のPOE・POPアルキルエ-テル類、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレ-ト、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレ-ト、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体、ヤシ油脂肪酸ジエタノ-ルアミド、ラウリン酸モノエタノ-ルアミド、脂肪酸イソプロパノ-ルアミド等のアルカノ-ルアミド、POEプロピレングリコ-ル脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸等が挙げられる。本発明の水性化粧料に配合される親水性非イオン性界面活性剤のHLBは14以上であるのが好ましい。これらの中でも、HLBが14以上であるイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が特に好ましい。本発明において使用される非イオン性界面活性剤は単独で配合されても2種以上を組合せて配合されてもよい。
【0037】
本発明の水性化粧料においては、親水性の非イオン性界面活性剤、具体的には、HLBが14以上である非イオン性界面活性剤を配合すると、静置時における化粧料に配合される粉末成分の沈降抑制に寄与する。
【0038】
本発明の水性化粧料における(e)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.1~5.0質量%、好ましくは0.2~2.0質量%である。(e)成分の配合量が0.1質量%未満であると粉末の分散性が劣る傾向がある。
【0039】
本発明の水性化粧料においては、上記(a)~(e)成分を配合することにより、従来よりも多くの粉末が配合されているにもかかわらず、粉末の経時的な沈降・凝集が抑制され、分散安定性に優れるとともに、静置時での粉末の分散性も優れた水性化粧料を得ることができる。
【0040】
本発明の水性化粧料は、用途に応じて好適な粘度が異なるが、例えば、BL型粘度計を用いて30℃の条件下で測定した粘度が70,000mPa・s以下に調製されるのが好ましい。本発明の水性化粧料をピールオフパック化粧料として調製する場合には、化粧料の肌への伸ばしやすさの観点から、20,000~70,000mPa・sの粘度とするのが好ましく、30,000~50,000mPa・sとするのがより好ましい。
【0041】
本発明の水性化粧料は、化粧料の粘度調整のために汎用されている粘土鉱物の配合を必要としない。よって、本発明の水性化粧料は、粘土鉱物を配合しない態様を含む。
【0042】
本発明の化粧料には、上記必須成分以外に、化粧料に通常用いられる成分、例えば、水、油分、アルコール類、保湿剤、親油性界面活性剤、油性活性剤、油相増粘剤、美白剤、抗炎症剤、各種植物抽出液、pH調整剤、分散剤、酸化防止剤、香料、安定化剤等を必要に応じて適宜配合してよい。
【0043】
本発明にかかる水性化粧料は、スキンケア化粧料、肌、唇および爪用のパック化粧料、メーキャップ化粧料等として利用することが可能である。中でも、本発明の化粧料は、適度な粘性を有するので肌へ伸ばしやすく、塗布後の乾燥性に優れるという特徴を有するので、ピールオフタイプのパック化粧料として特に好適である。
【0044】
本発明の化粧料は、粉末を配合する水性化粧料として常法により製造することができる。
【実施例】
【0045】
以下に具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0046】
実施例に先立ち、HLBが異なる界面活性剤について粉末の分散性に対する影響を検討した。具体的には、下記表1に示す成分を混合・溶解して、HLBが異なる界面活性剤を含む試料1~7を調製し、粉末成分の経時的な沈降状態を目視にて観察した。
【0047】
【0048】
配合した界面活性剤のHLBが高いほど、粉末の沈降速度が遅かった。よって、配合する界面活性剤のHLBが高いほど粉末成分の沈降を抑制する効果があることがわかった。
【0049】
次に、下記表2に示す組成を有する試料を調製して、(1)粘度の測定、(2)安定性評価(粉末成分の沈降および凝集、溶液の層分離)を評価した。評価は以下のように行った。
【0050】
(1)粘度の測定
調製した試料を30℃で1日間静置した後、BL型粘度計(ロータNo.6、10回転)により粘度(mPa・s)を測定した。
【0051】
(2)安定性の評価
調製した試料を70℃で3日間静置した後、外観を目視にて観察することによって、粉末成分の沈降および凝集の有無、ならびに試料全体の相分離の有無を評価した。
【0052】
実施例1~4および比較例1~2
下記表2に示す組成のうち、水相成分を加熱混合した後、その他の成分を添加・混合することによって、ピールオフパック化粧料を調製した。
【0053】
【0054】
上記表に示されるように、多糖増粘剤を1種のみ配合した場合(比較例1および2)には、粉末成分の経時的な沈降および凝集が見られ、溶液の分離が観察された。実施例2と比較例2の比較からもわかるように、ポリビニルアルコールの配合量が同じ場合であっても、2種以上の多糖増粘剤を配合することにより、粉末の分散安定性が良くなり、適度な粘度を有する化粧料が得られた。また、実施例1~4の化粧料は肌への伸び広がりも良好であった。なお、粘度の異なるポリビニルアルコールを組み合わせて配合した実施例2~4の化粧料は、単一の粘度のポリビニルアルコールのみを配合した実施例1の化粧料に比して、粉末分散性がさらに優れていた。
【0055】
本発明の化粧料において、多糖増粘剤およびビニル系水溶性増粘剤に代えてその他の水相増粘剤を用いた場合に本発明の化粧料が得られるか否かを検討した。
【0056】
【0057】
表3に示されるように、本発明の化粧料において、多糖増粘剤およびビニル系水溶性増粘剤に代えてその他の水相増粘剤を用いた場合には、粉末の沈降および凝集と、溶液の分離が観察された。よって、本発明の粉末が高配合されたポリビニルアルコール系の化粧料においては、化粧料の粘度調整のために汎用されている粘土鉱物によっては粉末の沈降および凝集が抑制されなかった。
【0058】
よって、本発明の(a)~(e)成分を配合することによって、粉末の経時的沈降および凝集が十分に抑制された、粉末の分散安定性に優れる化粧料を得ることができた。また、得られた化粧料は適度な粘性を有するため、肌への伸び広がりに優れていた。
【0059】
処方例1:ピールオフパック化粧料
配合成分 質量%
イオン交換水 残余
ポリエチレングリコール4000 2
PPG-15ブテス-20 2.5
ダイナマイトグリセリン 3
1,3-ブチレングリコール 4.5
変性アルコール 9
ポリビニルアルコール(粘度40.0~46.0mPa・s) 13.4
サクシノグリカン 0.2
カルボキシメチルセルロース 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.05
PEG-60水添ヒマシ油(HLB14) 0.4
マイカ,酸化鉄,酸化チタンの混合 1.5
クエン酸 0.04
クエン酸ナトリウム 0.16
香料 0.1
フェノキシエタノール 0.5
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1
【0060】
処方例2:ピールオフパック化粧料
配合成分 質量%
イオン交換水 残余
ポリエチレングリコール4000 2
PPG-15ブテス-20 2.5
ダイナマイトグリセリン 3
1,3-ブチレングリコール 4.5
変性アルコール 9
ポリビニルアルコール(粘度40.0~46.0mPa・s) 13.4
サクシノグリカン 0.2
カルボキシメチルセルロース 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.2
PEG-60水添ヒマシ油(HLB14) 0.4
マイカ,酸化鉄,酸化チタンの混合 1.5
クエン酸 0.04
クエン酸ナトリウム 0.16
香料 0.1
フェノキシエタノール 0.5
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1
【0061】
処方例1および2は、上記配合成分のうち水相成分を加熱混合した後、その他の成分を添加・混合することによって、ピールオフパック化粧料を調製した。いずれの処方例の化粧料も、肌への塗り広げに適する粘度を有し、粉末成分の分散安定性にも優れていた。